説明

原子炉停止装置

【課題】原子力施設の異常発生時において、多様な手段により、原子炉を停止させることができる原子炉停止装置を提供する。
【解決手段】原子炉と、燃料集合体に対し制御棒16を抜差し方向へ駆動可能な制御棒駆動装置17と、制御棒駆動装置17へ電力を供給可能な電源31と、制御棒駆動装置17と電源31との間に設けられた電力変換装置32と、を備えた原子力施設の異常発生時に、原子炉の核反応を停止させる原子炉停止装置47において、制御棒駆動装置17は、電力供給が遮断されると、制御棒16を燃料集合体に差し込んで原子炉の核反応を停止させ、電力変換装置32と制御棒駆動装置17との間に設けられた原子炉トリップ遮断器45と、原子炉トリップ遮断器45を制御して、制御棒駆動装置17への電力供給を遮断する安全保護系設備43と、電力変換装置32を制御して、制御棒駆動装置17への電力供給を遮断するCCF設備44と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉を有する原子力施設の異常発生時に、原子炉を停止させる原子炉停止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような原子炉停止装置として、例えば、特許文献1に示す中央制御室外原子炉停止装置が知られている。この中央制御室外原子炉停止装置は、原子炉を安全に停止するための補機を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−12595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、原子炉を安全に停止する補機として、原子炉を停止する原子炉トリップ遮断器が用いられる。原子炉トリップ遮断器は、原子炉の炉心に挿入される制御棒を駆動する制御棒駆動装置へ供給される電力を遮断可能に構成されている。制御棒駆動装置は、電力の供給が遮断されると、制御棒を炉心に挿入することで、原子炉を停止させる。よって、異常発生時において、原子炉停止装置は、原子炉トリップ遮断器により、制御棒駆動装置へ供給される電力を遮断することで、原子炉を停止させている。
【0005】
このとき、原子炉トリップ遮断器は、原子炉を安全に停止させるための安全保護系設備によって制御されている。安全保護系設備がデジタル設備で構成される場合、安全保護系設備に共通要因故障(Common Cause Failure)等の不具合が発生すると、異常発生時において、安全保護系設備は、原子炉トリップ遮断器を作動させることが困難な場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、原子力施設の異常発生時において、多様な手段により、原子炉を停止させることができる原子炉停止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の原子炉停止装置は、燃料集合体に抜差しされる制御棒を内部に格納可能な原子炉と、制御棒を抜差し方向へ駆動可能な制御棒駆動装置と、制御棒駆動装置へ向けて電力を供給可能な電源と、制御棒駆動装置と電源との間に設けられ、電源から供給された電力を変換して制御棒駆動装置へ向けて供給可能な電力変換装置と、を備えた原子力施設の異常発生時に、原子炉の核反応を停止させる原子炉停止装置において、制御棒駆動装置は、電力供給が遮断されると、制御棒を燃料集合体に差し込んで、原子炉の核反応を停止させており、電力変換装置と制御棒駆動装置との間に介設され、電力変換装置から制御棒駆動装置へ供給される電力を遮断可能な遮断器と、原子力施設の異常発生時に、遮断器を制御して、制御棒駆動装置への電力供給を遮断する主停止制御装置と、原子力施設の異常発生時に、電力変換装置を制御して、制御棒駆動装置への電力供給を遮断する補助停止制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、共通要因故障等の不具合により主停止制御装置に不具合が発生し、且つ、原子力施設に異常が発生した場合、主停止制御装置は、遮断器を制御して、制御棒駆動装置への電力供給を遮断することが困難な場合がある。この場合、主停止制御装置に代わって、補助停止制御装置が、電力変換装置を制御して、制御棒駆動装置への電力供給を遮断することができる。これにより、主停止制御装置の不具合により、遮断器による電力の遮断が困難な場合も、遮断器とは異なる電力変換装置により、電力の遮断を行うことができるため、多様な手段により、原子炉を好適に停止することができる。
【0009】
この場合、電力変換装置は、電源から供給された電力を蓄電する蓄電手段を有しており、蓄電手段は、電力供給の遮断後、少なくとも遮断器および主停止制御装置へ向けて電力を供給することが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、電力変換装置において電力遮断が行われた後でも、電力変換装置の蓄電手段は、遮断器を介して制御棒駆動装置へ向けて電力を供給することができる。
【0011】
この場合、主停止制御装置に接続され、原子力施設の運転状態を検出する検出センサをさらに備え、主停止制御装置は、検出センサから発せられた検出信号を受信すると共に、受信した検出信号を補助停止制御装置へ向けて送信することが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、主停止制御装置へ入力される検出信号と、補助停止制御装置へ入力される検出信号とを同じものとすることができる。このため、主停止制御装置および補助停止制御装置は、同じ検出信号に基づいて、原子炉を停止するか否かを判断することができるため、原子炉停止の判断を二重に行うことができ、これにより、原子炉停止の判断を精度良く行うことが可能となる。
【0013】
この場合、主停止制御装置は、受信した検出信号に基づいて、原子炉の核反応を停止させると判断した場合、第1原子炉停止信号を遮断器へ向けて発信し、補助停止制御装置は、受信した検出信号に基づいて、原子炉の核反応を停止させると判断した場合、第2原子炉停止信号を電力変換装置へ向けて発信し、遮断器は、第1原子炉停止信号を受信すると、制御棒駆動装置への電力供給を遮断すると共に、補助停止制御装置へ向けてブロック信号を発信し、補助停止制御装置は、受信したブロック信号に基づいて、電力変換装置へ向けて発信される第2原子炉停止信号をブロックするブロック回路を有していることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、主停止制御装置により遮断器を介して電力遮断を行った場合、補助停止制御装置は、ブロック信号を受信するため、電力変換装置を介して電力遮断を行わない。これにより、主停止制御装置が正常に作動する場合、補助停止制御装置は、電力変換装置を制御して、制御棒駆動装置への電力供給を遮断することがない。
【0015】
この場合、補助停止制御装置は、主停止制御装置が検出信号を受信してから、遮断器が補助停止制御装置へ向けてブロック信号を発信するまでの遅延時間分、電力変換装置へ向けて第2原子炉停止信号を発信する時間を遅らせるディレイ回路を有していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、ディレイ回路は、遮断器が補助停止制御装置へ向けてブロック信号を発信する遅延時間分、補助停止制御装置から電力変換装置へ向けて第2原子炉停止信号が発信されることはない。このため、主停止制御装置は、原子炉を停止すると判断した場合、補助停止制御装置から発信される第2原子炉停止信号をブロックして、第1原子炉停止信号を伝達することができる。また、主停止制御装置に発生した不具合により、主停止制御装置が、原子炉を停止しないと判断する一方で、補助停止制御装置が、原子炉を停止すると判断した場合、補助停止制御装置は、第2原子炉停止信号を電力変換装置へ伝達することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の原子炉停止装置によれば、主停止制御装置に不具合が発生しても、主停止制御装置と異なる補助停止制御装置により、原子炉を停止することができるため、多様な手段により、原子炉を好適に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施例に係る原子炉停止装置を備えた原子力施設を模式的に表した概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る原子炉停止装置周りの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る原子炉停止装置について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0020】
図1は、本実施例に係る原子炉停止装置を備えた原子力施設を模式的に表した概略構成図である。本発明に係る原子炉停止装置47(図2参照)は、原子炉5を停止させるものであり、原子炉5としては、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられている。この加圧水型の原子炉5を用いた原子力施設1は、原子炉5を含む一次冷却系3と、一次冷却系3と熱交換する二次冷却系4とで構成されており、一次冷却系3には、一次冷却材が流通し、二次冷却系4には、二次冷却材が流通している。
【0021】
一次冷却系3は、原子炉5と、コールドレグ6aおよびホットレグ6bから成る冷却材配管6a,6bを介して原子炉5に接続された蒸気発生器7とを有している。また、ホットレグ6bには、加圧器8が介設され、コールドレグ6aには、冷却材ポンプ9が介設されている。そして、原子炉5、冷却材配管6a,6b、蒸気発生器7、加圧器8および冷却材ポンプ9は、原子炉格納容器10に収容されている。
【0022】
原子炉5は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は一次冷却材で満たされている。そして、原子炉5内には、多数の燃料集合体15が収容されると共に、燃料集合体15の核分裂を制御する多数の制御棒16が各燃料集合体15に抜差し可能に設けられている。そして、この制御棒16は、燃料集合体15に対し、制御棒駆動装置17により抜差し方向に駆動される。制御棒駆動装置17により制御棒16が燃料集合体15へ差し込まれると、燃料集合体15における核反応は低下して停止する。一方で、制御棒駆動装置17により制御棒16が引き抜かれると、燃料集合体15における核反応は増大して臨界状態となる。また、この制御棒駆動装置17は、電力の供給が遮断され、電力喪失状態となると、制御棒16を燃料集合体15に差し込むように構成されている。
【0023】
制御棒16により核分裂反応を制御しながら燃料集合体15を核分裂させると、この核分裂により熱エネルギーが発生する。発生した熱エネルギーは一次冷却材を加熱し、加熱された一次冷却材は、ホットレグ6bを介して蒸気発生器7へ送られる。一方、コールドレグ6aを介して蒸気発生器7から送られてきた一次冷却材は、原子炉5内に流入して、原子炉5内を冷却する。
【0024】
ホットレグ6bに介設された加圧器8は、高温となった一次冷却材を加圧することにより、一次冷却材の沸騰を抑制している。また、蒸気発生器7は、高温高圧となった一次冷却材を、二次冷却材と熱交換させることにより、二次冷却材を蒸発させて蒸気を発生させ、且つ、高温高圧となった一次冷却材を冷却している。各冷却材ポンプ9は、一次冷却系3において一次冷却材を循環させており、一次冷却材を各蒸気発生器7からコールドレグ6aを介して原子炉5へ送り込むと共に、一次冷却材を原子炉5からホットレグ6bを介して各蒸気発生器7へ送り込んでいる。
【0025】
ここで、原子力施設1の一次冷却系3における一連の動作について説明する。原子炉5内の核分裂反応により発生した熱エネルギーにより、一次冷却材が加熱されると、加熱された一次冷却材は、各冷却材ポンプ9によりホットレグ6bを介して各蒸気発生器7に送られる。ホットレグ6bを通過する高温の一次冷却材は、加圧器8により加圧されることで沸騰が抑制され、高温高圧となった状態で、各蒸気発生器7に流入する。各蒸気発生器7に流入した高温高圧の一次冷却材は、二次冷却材と熱交換を行うことにより冷却され、冷却された一次冷却材は、各冷却材ポンプ9によりコールドレグ6aを介して原子炉5に送られる。そして、冷却された一次冷却材が原子炉5に流入することで、原子炉5が冷却される。つまり、一次冷却材は、原子炉5と蒸気発生器7との間を循環している。なお、一次冷却材は、冷却材および中性子減速材として用いられる軽水である。
【0026】
二次冷却系4は、蒸気管21を介して各蒸気発生器7に接続されたタービン22と、タービン22に接続された復水器23と、復水器23と各蒸気発生器7とを接続する給水管26に介設された給水ポンプ24と、を有している。そして、上記のタービン22には、発電機25が接続されている。
【0027】
ここで、原子力施設1の二次冷却系4における一連の動作について説明する。蒸気管21を介して各蒸気発生器7から蒸気がタービン22に流入すると、タービン22は回転を行う。タービン22が回転すると、タービン22に接続された発電機25は、発電を行う。この後、タービン22から流出した蒸気は復水器23に流入する。復水器23は、その内部に冷却管27が配設されており、冷却管27の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管28が接続され、冷却管27の他方には冷却水を排水するための排水管29が接続されている。そして、復水器23は、タービン22から流入した蒸気を冷却管27により冷却することで、蒸気を液体に戻している。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ24により給水管26を介して各蒸気発生器7に送られる。各蒸気発生器7に送られた二次冷却材は、各蒸気発生器7において一次冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0028】
図2は、本実施例に係る原子炉停止装置周りの構成図である。図2に示すように、原子力施設1は、原子力施設1に電力を供給する電源31と、電源31から供給された電力を変換する電力変換装置32とを備えている。電力変換装置32は、いわゆるフライホイール付きのMGセットであり、制御棒駆動装置17や後述する原子炉トリップ遮断器45等の各設備へ向けて電力を供給している。電力変換装置32は、モータMと、発電機Gと、モータMと発電機Gとの間に配設されたフライホイールFとを有している。モータMは、電源31に接続されており、電源31から供給される電力により界磁電流が発生することで回転可能となっている。発電機Gは、フライホイールFを介してモータMに接続されており、モータMが回転することによって発電する。フライホイールFは、蓄電手段として機能しており、モータMによりフライホイールFを回転させることで、蓄電可能となっている。また、電力変換装置32は、電源31から供給される電力を遮断する遮断回路33を有しており、後述するCCF設備44に接続されている。
【0029】
従って、電源31から電力が供給されると、供給された電力は、電力変換装置32に供給される。電力変換装置32は、供給された電力の一部を使用してフライホイールFを回転させることにより蓄電を行う一方で、供給された残りの電力を使用してモータMを回転させ、これにより、発電機Gによる発電を行う。一方で、電力変換装置32は、遮断回路33により電源31から供給される電力を遮断して電力喪失状態となった場合であっても、フライホイールFが回転しているため、一時的に発電することが可能となる。なお、本実施例の電力変換装置32では、蓄電手段としてフライホイールFを適用したが、これに限らず、例えば、蓄電手段としてモータMと発電機Gとの間に配設される流体継手を適用してもよい。
【0030】
このように構成された原子力施設1には、上記した原子炉5や、上記の各種ポンプや図示しないバルブ等の各機器の作動を制御する制御システム40が配設されている。制御システム40は、図示しない中央制御設備と、図示しないプラント制御設備と、安全保護系設備(主停止制御装置)43と、CCF設備(補助停止制御装置)44とを有している。
【0031】
図示は省略するが、中央制御設備は、原子力施設1の運転状況を表示する表示装置や、原子力施設1を操作する操作装置等が設けられている。そして、原子力施設1を運転するオペレータは、表示装置を視認して原子力施設1の運転状況を把握し、操作装置を適宜操作することで、原子力施設1を運転する。プラント制御設備は、中央制御設備の操作装置から出力された操作信号に基づいて、原子力施設1の原子炉5や各機器の運転を制御している。
【0032】
図2に示すように、安全保護系設備43は、原子力施設1に異常が発生した場合、原子力施設1が安全に停止するように、原子力施設1に設けられた各機器を制御している。CCF設備44は、安全保護系設備43を補助するバックアップ設備となっており、安全保護系設備43に不具合等が生じた場合、原子力施設1が安全に停止するように、原子力施設1に設けられた各機器を制御している。
【0033】
ここで、原子力施設1の制御システム40は、原子炉5に異常が発生した場合を想定して、原子炉5の核反応を非常停止させる原子炉停止装置47を有している。原子炉停止装置47は、上記の安全保護系設備43と、上記のCCF設備44と、電力変換装置32と制御棒駆動装置17とを接続する電力供給ラインLに設けられた原子炉トリップ遮断器45と、を備えている。
【0034】
安全保護系設備43は、CPU等の演算装置やHDD等の記憶装置を搭載した、いわゆるデジタル設備であり、演算装置により記憶装置に記憶された各種プログラムを実行することで、原子力施設1の安全保護系を制御可能な設備となっている。なお、安全保護系とは、原子炉5の核反応を停止させる、原子力施設1を冷却する、原子力施設1からの放射性物質の漏洩を防ぐという機能を有する機能系統である。そして、安全保護系設備43は、確実に作動可能で、且つ、厳しい環境下においても作動可能なように、動作保証が高いものとなっている。
【0035】
安全保護系設備43には、原子力施設1内に配設された各種検出センサ50が接続されており、各種検出センサ50から出力された検出信号に基づいて、原子力施設1に異常が発生したか否かを判断している。そして、安全保護系設備43は、原子力施設1に異常が発生したと判断した場合、原子炉5を停止させるための第1原子炉停止信号T1を原子炉トリップ遮断器45へ向けて発信する。
【0036】
CCF設備44は、安全保護系設備43に共通要因故障(Common Cause Failure)等の不具合が発生することを想定して設けられている。CCF設備44は、アナログ設備であり、スイッチやリレー等の電気回路部品を用い、各接点を電線でつなぐことにより構成されている。ここで、共通要因故障とは、共通の要因で故障することであり、特に、デジタル設備において用いられる演算装置等のハードウェアが共通の要因により故障したり、あるいはソフトウェアがバグ等の共通の要因により実行されなかったりすることである。
【0037】
CCF設備44には、各種検出センサ50から、安全保護系設備43を介して検出信号が入力されており、この検出信号に基づいて、原子力施設1に異常が発生したか否かを判断している。そして、CCF設備44は、原子力施設1に異常が発生したと判断した場合、原子炉5を停止させるための第2原子炉停止信号T2を電力変換装置32へ向けて発信する。
【0038】
また、CCF設備44には、ディレイ回路53およびブロック回路54が設けられている。ブロック回路54は、入力されるブロック信号Bに基づいて、CCF設備44から電力変換装置32へ向けて発信される第2原子炉停止信号T2をブロックしている。ディレイ回路53は、安全保護系設備43に検出信号が入力されてから、ブロック回路54へブロック信号Bが入力されるまでの遅延時間分、CCF設備44から電力変換装置32へ向けて発信される第2原子炉停止信号T2の伝達を遅らせている。
【0039】
原子炉トリップ遮断器45は、安全保護系設備43から発信された第1原子炉停止信号T1に基づいて、電力変換装置32から制御棒駆動装置17へ供給される電力を遮断するものである。また、原子炉トリップ遮断器45は、安全保護系設備43から第1原子炉停止信号T1を受信した場合、CCF設備44から発信される第2原子炉停止信号T2をブロックするためのブロック信号Bを、CCF設備44へ向けて発信する。このため、CCF設備44のブロック回路54は、原子炉トリップ遮断器45からブロック信号Bが入力されると、CCF設備44からの第2原子炉停止信号T2の発信をブロックする。
【0040】
続いて、原子炉停止装置47により原子炉5を停止する一連の動作について説明する。ここで、安全保護系設備43に共通要因故障等の不具合が発生した場合と、安全保護系設備43に不具合が発生していない場合とに分けて説明する。先ず、後者の場合について説明する。原子炉停止装置47は、各種検出センサ50から安全保護系設備43に検出信号が入力されると、安全保護系設備43は、入力された検出信号をCCF設備44へ送信すると共に、入力された検出信号に基づいて、原子炉5を停止するか否かを判断する。
【0041】
安全保護系設備43は、原子炉5を停止すると判断した場合、第1原子炉停止信号T1を原子炉トリップ遮断器45へ送信する。原子炉トリップ遮断器45は、第1原子炉停止信号T1が入力されると、電力変換装置32から制御棒駆動装置17へ至る電力供給ラインLを遮断する。また、原子炉トリップ遮断器45は、第1原子炉停止信号T1が入力されると、CCF設備44へ向けてブロック信号Bを発信する。
【0042】
原子炉トリップ遮断器45により電力供給ラインLが遮断されると、制御棒駆動装置17への電力供給が遮断される。すると、制御棒駆動装置17は、電力喪失状態となるため、制御棒16が燃料集合体15へ挿入され、これにより、原子炉5の核反応は停止する。
【0043】
一方、CCF設備44は、安全保護系設備43から入力された検出信号に基づいて、原子炉5を停止するか否かを判断する。CCF設備44は、原子炉5を停止すると判断した場合、第2原子炉停止信号T2を電力変換装置32の遮断回路33へ送信しようとするが、このとき、ディレイ回路53が、遅延時間分、第2原子炉停止信号T2の発信を遅らせる。この後、CCF設備44に原子炉トリップ遮断器45からブロック信号Bが入力されると、ブロック回路54が第2原子炉停止信号T2をブロックするため、第2原子炉停止信号T2は、電力変換装置32に発信されない。
【0044】
これにより、原子炉停止装置47は、安全保護系設備43に共通要因故障が発生していない場合、安全保護系設備43から発信された第1原子炉停止信号T1に基づいて、原子炉トリップ遮断器45が、電力供給ラインLを遮断することで、原子炉5を停止させることができる。一方で、原子炉トリップ遮断器45からCCF設備44へ向けてブロック信号Bが発信されるため、電力変換装置32は、遮断回路33による電力供給ラインLの遮断を行わない。
【0045】
次に、安全保護系設備43に共通要因故障等の不具合が発生した場合について説明する。原子炉停止装置47は、各種検出センサ50から安全保護系設備43に検出信号が入力されると、安全保護系設備43は、入力された検出信号をCCF設備44へ送信すると共に、入力された検出信号に基づいて、原子炉5を停止するか否かを判断する。
【0046】
このとき、安全保護系設備43は、不具合が発生しているため、原子炉5を停止するか否かの判断を好適に行うことが困難となっている。このため、安全保護系設備43は、原子炉5を停止しなければならない場合であっても、第1原子炉停止信号T1を原子炉トリップ遮断器45へ送信しない虞がある。一方で、検出信号が入力されたCCF設備44は、入力された検出信号に基づいて、原子炉5を停止するか否かを判断する。
【0047】
安全保護系設備43が、第1原子炉停止信号T1を原子炉トリップ遮断器45へ送信しない場合、原子炉トリップ遮断器45には、第1原子炉停止信号T1が入力されないため、電力変換装置32から制御棒駆動装置17へ至る電力供給ラインLは遮断されない。また、原子炉トリップ遮断器45は、CCF設備44へ向けてブロック信号Bを発信しない。
【0048】
一方、CCF設備44は、原子炉5を停止すると判断した場合、第2原子炉停止信号T2を電力変換装置32の遮断回路33へ送信しようとするが、このとき、ディレイ回路53が、遅延時間分、第2原子炉停止信号T2の発信を遅らせる。この後、ブロック回路54にブロック信号Bが入力されなければ、CCF設備44は、電力変換装置32へ第2原子炉停止信号T2を送信する。電力変換装置32は、第2原子炉停止信号T2が入力されると、遮断回路33により電源31からモータMへ流れる電力を遮断し、モータMにおける界磁電流を遮断する。モータMの界磁電流が遮断されると、モータMの回転は停止するが、フライホイールFは回転し続ける。このため、電力変換装置32では、モータMが停止した後も一時的に発電機Gによる発電を行うことで、制御棒駆動装置17、原子炉トリップ遮断器45や安全保護系設備43へ向けて電力を供給する。
【0049】
電力変換装置32の遮断回路33による電力遮断後に、制御棒駆動装置17への電力供給が遮断されると、制御棒駆動装置17は、電力喪失状態となる。このため、制御棒駆動装置17は、制御棒16を燃料集合体15へ挿入することにより、原子炉5の核反応を停止させる。
【0050】
これにより、原子炉停止装置47は、安全保護系設備43に不具合が発生した場合であっても、CCF設備44により電力変換装置32において電力を遮断することで、原子炉5を停止することができる。一方で、安全保護系設備43から原子炉トリップ遮断器45へ向けて第1原子炉停止信号T1が発信されないため、原子炉トリップ遮断器45は、電力供給ラインLの遮断を行わない。
【0051】
以上の構成によれば、原子炉停止装置47は、安全保護系設備43が共通要因故障等の不具合によって、原子炉トリップ遮断器45による電力遮断を行うことが困難な場合であっても、CCF設備44が作動することで、原子炉トリップ遮断器45とは異なる電力変換装置32により、電力供給ラインLを遮断して、制御棒駆動装置17への電力供給を遮断することができる。これにより、安全保護系設備43に不具合が発生しても、原子炉停止装置47は、多様な手段で、制御棒駆動装置17への電力供給を遮断し、原子炉5の核反応を好適に停止させることができる。
【0052】
また、電力変換装置32は、フライホイールFを有しているため、電力変換装置32が電力喪失状態となったとしても、一時的に制御棒駆動装置17や原子炉トリップ遮断器45へ向けて電力を供給することができる。このため、CCF設備44による電力遮断が実行された後でも、原子炉トリップ遮断器45による電力遮断を実行可能に維持することができる。
【0053】
また、原子炉停止装置47は、各種検出センサ50から発せられた検出信号を安全保護系設備43で受信した後、この検出信号を安全保護系設備43からCCF設備44へ向けて伝達することができる。これにより、安全保護系設備43およびCCF設備44は、同じ検出信号に基づいて、原子炉5を停止するか否かを判断することができるため、原子炉5の停止の判断を二重に行うことができ、原子炉5の停止の判断を精度良く行うことが可能となる。
【0054】
また、原子炉トリップ遮断器45は、CCF設備44から電力変換装置32へ向けて発信される第2原子炉停止信号T2をブロックするためのブロック信号Bを、CCF設備44へ向けて発信することができる。これにより、原子炉停止装置47は、安全保護系設備43が正常に動作する場合、安全保護系設備43により原子炉トリップ遮断器45を介して電力遮断を行う一方で、CCF設備44により電力変換装置32を介して電力遮断を行わない。
【0055】
また、CCF設備44は、ディレイ回路53を有しているため、ディレイ回路53は、原子炉トリップ遮断器45がブロック信号BをCCF設備44へ向けて発信するまでの遅延時間分、第2原子炉停止信号T2を遅らせることができる。これにより、原子炉停止装置47は、安全保護系設備43が原子炉5を停止すると判断した場合、CCF設備44から発信される第2原子炉停止信号T2をブロックして、第1原子炉停止信号T1を伝達することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係る原子炉停止装置は、原子炉を停止するための設備がデジタル設備およびアナログ設備で構成される場合において有用であり、特に、原子炉トリップ遮断器を用いずに原子炉を停止する場合に適している。
【符号の説明】
【0057】
1 原子力施設
3 一次冷却系
4 二次冷却系
5 原子炉
7 蒸気発生器
8 加圧器
15 燃料集合体
16 制御棒
17 制御棒駆動装置
22 タービン
25 発電機
31 電源
32 電力変換装置
33 遮断回路
40 制御システム
43 安全保護系設備
44 CCF設備
45 原子炉トリップ遮断器
47 原子炉停止装置
50 検出センサ
53 ディレイ回路
54 ブロック回路
M モータ
G 発電機
F フライホイール
L 電力供給ライン
T1 第1原子炉停止信号
T2 第2原子炉停止信号
B ブロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体に抜差しされる制御棒を内部に格納可能な原子炉と、
前記制御棒を抜差し方向へ駆動可能な制御棒駆動装置と、
前記制御棒駆動装置へ向けて電力を供給可能な電源と、
前記制御棒駆動装置と前記電源との間に設けられ、前記電源から供給された電力を変換して前記制御棒駆動装置へ向けて供給可能な電力変換装置と、を備えた原子力施設の異常発生時に、前記原子炉の核反応を停止させる原子炉停止装置において、
前記制御棒駆動装置は、電力供給が遮断されると、前記制御棒を前記燃料集合体に差し込んで、前記原子炉の核反応を停止させており、
前記電力変換装置と前記制御棒駆動装置との間に介設され、前記電力変換装置から前記制御棒駆動装置へ供給される電力を遮断可能な遮断器と、
前記原子力施設の異常発生時に、前記遮断器を制御して、前記制御棒駆動装置への電力供給を遮断する主停止制御装置と、
前記原子力施設の異常発生時に、前記電力変換装置を制御して、前記制御棒駆動装置への電力供給を遮断する補助停止制御装置と、を備えたことを特徴とする原子炉停止装置。
【請求項2】
前記電力変換装置は、前記電源から供給された電力を蓄電する蓄電手段を有しており、
前記蓄電手段は、電力供給の遮断後、少なくとも前記遮断器および前記主停止制御装置へ向けて電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の原子炉停止装置。
【請求項3】
前記主停止制御装置に接続され、前記原子力施設の運転状態を検出する検出センサをさらに備え、
前記主停止制御装置は、前記検出センサから発せられた検出信号を受信すると共に、受信した前記検出信号を前記補助停止制御装置へ向けて送信することを特徴とする請求項1または2に記載の原子炉停止装置。
【請求項4】
前記主停止制御装置は、受信した前記検出信号に基づいて、前記原子炉の核反応を停止させると判断した場合、第1原子炉停止信号を前記遮断器へ向けて発信し、
前記補助停止制御装置は、受信した前記検出信号に基づいて、前記原子炉の核反応を停止させると判断した場合、第2原子炉停止信号を前記電力変換装置へ向けて発信し、
前記遮断器は、前記第1原子炉停止信号を受信すると、前記制御棒駆動装置への電力供給を遮断すると共に、前記補助停止制御装置へ向けてブロック信号を発信し、
前記補助停止制御装置は、受信した前記ブロック信号に基づいて、前記電力変換装置へ向けて発信される前記第2原子炉停止信号をブロックするブロック回路を有していることを特徴とする請求項3に記載の原子炉停止装置。
【請求項5】
前記補助停止制御装置は、前記主停止制御装置が前記検出信号を受信してから、前記遮断器が前記補助停止制御装置へ向けて前記ブロック信号を発信するまでの遅延時間分、前記電力変換装置へ向けて前記第2原子炉停止信号を発信する時間を遅らせるディレイ回路を有していることを特徴とする請求項4に記載の原子炉停止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−122907(P2012−122907A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275120(P2010−275120)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)