説明

原子炉圧力容器内で蒸気乾燥器アセンブリを安定させる方法および装置

【課題】原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリを安定させる装置および方法を提供すること。
【解決手段】乾燥器アセンブリ18にそれを原子炉圧力容器10に対して安定化させる力38を加えるように寸法設定され原子炉圧力容器10に配置されたばね36を含む、原子炉の原子炉圧力容器10内で乾燥器アセンブリ18を安定させる装置および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は原子炉に関し、より具体的には、原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリを安定させる装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本項の記述は、単に本開示に関係する背景情報を提供するものであり、必ずしも従来技術を構成するものではない。
【0003】
沸騰水型原子炉(BWR)などの原子炉の原子炉圧力容器(RPV)は、通常、ほぼ円筒形の形状を有し、下蓋および取外し可能な上蓋によって両端が閉じられている。通常、上部ガイドが原子炉圧力容器内の炉心板の上方に離間して置かれる。炉心シュラウドまたはシュラウドが通常、炉心を囲み、シュラウド支持構造によって支持されている。シュラウドは、ほぼ円筒形の形状を有し、炉心板と上部ガイドの両方を囲みかつ支持する。円筒形の原子炉圧力容器と円筒形状のシュラウドの間には、ある空間、すなわちアニュラス部が存在する。
【0004】
炉心内で熱が生成され、炉心を通り循環して上昇した水が、少なくとも部分的に水蒸気に変換される。シュラウドの頂部に置かれた気水分離器が、水蒸気と水を分離する。残留水分が、分離器アセンブリの上方に置かれた蒸気乾燥器によって水蒸気から取り除かれる。水を取り除かれた水蒸気は、原子炉圧力容器の上蓋近傍の蒸気出口を通って容器から出る。
【0005】
通常、原子炉圧力容器は、容器閉鎖ボルトによって原子炉圧力容器に固定された上蓋を含む。従来型の蒸気乾燥器が、気水分離器から出た水蒸気中に同伴される残留水分を取り除くために、原子炉圧力容器内に配置されている。蒸気乾燥器は、乾燥器支持スカートによって位置決めされ、この支持スカートは、容器のシェルに取り付けられた4〜6個の乾燥器支持ブラケット上に載っている。また、冷却材喪失事故(LOCA)条件の間は、蒸気乾燥器押さえ用アセンブリによって、蒸気乾燥器の上向きの変位が制限される。蒸気乾燥器の押さえ用アセンブリはしばしば、蒸気乾燥器吊上げ棒に取り付けられた対応する蒸気乾燥器吊上げ棒アイボルトを介して蒸気乾燥器に連結された複数のRPV蒸気乾燥器押さえブラケットを含む。従来型のBWR蒸気乾燥器用の一般的な蒸気乾燥器押さえ用アセンブリは、原子炉圧力容器の上蓋の内側に取り付けられた4個の RPV 蒸気乾燥器押さえブラケットを含む。通常、原子炉の構築時、対応する蒸気乾燥器吊上げ棒アイボルトは、原子炉圧力容器と蒸気乾燥器吊上げ棒の間の熱膨張差を許容するために、これらのアイボルトの上面が蒸気乾燥器押さえブラケットの底面に対して約1.27cm(1/2インチ)から2.54cm(1インチ)の隙間を有するように調整される。
【0006】
しかし、従来型のBWR型の蒸気乾燥器は、運転中、振動運動を示すことがあり、この振動運動は、原子炉圧力容器内で蒸気乾燥器を支持する蒸気乾燥器支持ブラケットの異常な磨耗、または場合によってはその上部軸受け面のひび割れとして表現される。これらの磨耗およびひび割れは、乾燥器が、その支持ブラケットと不均一に接触することによって揺動していることを示唆している。現在の乾燥器押さえ用アセンブリは、一般に蒸気配管の破損事故(すなわち、冷却材喪失事故(LOCA))の間だけ機能するためのものであり、この場合、乾燥器は、蒸気乾燥器の乾燥器支持リングを支持するその支持ブラケットから完全に離昇する。したがって、乾燥器押さえ用アセンブリは、正常運転中の蒸気乾燥器の振動運動を防ぐための安定化支持体として有効ではない。
【0007】
定格超過パワー運転(定格パワー出力を超えるパワーでの運転)を行う運転中の原子炉プラントは、水蒸気流および乾燥器上の圧力降下の増大により、蒸気乾燥器の振動運動の影響をより受けやすくなることがあるという懸念がさらにある。蒸気乾燥器アセンブリおよび/またはその支持ブラケットは、このような振動運動中、磨耗し、あるいはその他の形で損傷することがある。それが起こると、蒸気乾燥器および/または押さえブラケットが不均一に位置することにより、蒸気乾燥器の振動運動がさらに強められ、この振動運動および損傷は、原子炉の運転が進むにつれて増大する。
【0008】
通常、蒸気乾燥器アセンブリは、原子炉の定期的な燃料補給用運転停止保守時に、点検される。損傷または支持ブラケットとの不均一な接触が観察される場合、必要とされる是正処置を評価するために、蒸気乾燥器揺動試験が使用されてきた。RPV上部シェルに取り付けられた対合する蒸気乾燥器支持ブラケットの間にあり乾燥器および乾燥器支持リングを支持するそれぞれの接触面における、不均一性の量および場所が試験によって求められる。この試験は、乾燥器の揺動を引き起こすことによって実施され、これは、シムを支持ブラケットの一箇所に挿入すること、および、ある偏心位置で、次いで対角線上でそれに対向する位置で、乾燥器の頂部に傾斜(tipping)重量を加えることを含むことができる。傾斜の量は、乾燥器吊上げ棒の頂部の相対運動を記録するダイアルインジケータを用いて測定される。この試験手順が、様々なシムおよび重み位置を用いて繰り返される。測定値は、乾燥器の柔軟性および支持ブラケットの不均等な間隔によるたるみ効果(effects of sagging)を含むので、磨耗または不均一性の量を求めるためには、調整計算が必要になる。
【特許文献1】米国特許第3,296,081号公報
【特許文献2】米国特許第4,053,355号公報
【特許文献3】米国特許第4,801,422号公報
【特許文献4】米国特許第5,513,229号公報
【特許文献5】米国特許第3,706,921号公報
【特許文献6】米国特許第4,282,061号公報
【特許文献7】米国特許第4,690,794号公報
【特許文献8】米国特許第5,519,740号公報
【特許文献9】米国特許第5,581,586号公報
【特許文献10】米国特許第5,984,504号公報
【特許文献11】米国特許第6,590,952号公報
【特許文献12】米国特許第6,650,722号公報
【特許文献13】米国特許第6,798,859号公報
【特許文献14】米国特許第2002/0122520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この試験で、磨耗または支持ブラケットへの乾燥器アセンブリの不均一な着座が示された場合、通常、1つまたは複数の乾燥器支持リング接触面または軸受け面の底部を研磨することによって、調整が行われる。一般に、試験および研磨プロセス中は、原子炉圧力容器内でさらなる原子炉の保守または是正を行えず、また試験が完了するまで蒸気乾燥器を取り外すことはできない。したがって、乾燥器アセンブリおよび支持ブラケットに対する試験および改変は、原子炉保守中のクリティカルパス要素であり、そのため、原子炉がオフライン状態になる時間が増大する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者らは、蒸気乾燥器の振動およびその結果として生じる損傷を低減または解消すると、蒸気乾燥器アセンブリの寿命を延ばし、乾燥器支持測定に必要なクリティカルパスの存続時間を短縮し、原子炉保守の時間を短縮することができることを認識している。本発明者らは、原子炉の原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリを安定させる装置および方法の設計に成功した。これには、既存の原子炉のレトロフィットまたは改変を含むことができる。蒸気乾燥器の改良された安定性を実現することによる、種々の利点としては、1つまたは複数の原子炉アセンブリの動作の改善、保守時間の短縮、および保守コストの低減をあげることができる。
【0011】
一態様によれば、原子炉の原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリを安定させる装置は、乾燥器アセンブリにそれを原子炉圧力容器に対して安定化させる力を加えるように寸法設定され原子炉圧力容器内に配置されたばねを含む。
【0012】
別の態様によれば、原子炉の原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリを安定させる装置は、原子炉圧力容器の上蓋の押さえブラケットに結合された反動アーム、および
反動アームに結合され、乾燥器アセンブリを下向きに予負荷してそれを原子炉圧力容器の蒸気乾燥器支持ブラケットに押し付けるように位置決めされたばねを含む。
【0013】
別の態様によれば、原子炉の原子炉圧力容器内で、安定化手段は、乾燥器アセンブリにそれを原子炉圧力容器に対して安定させる力を加える。
【0014】
さらに別の態様によれば、原子炉の原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリを安定させるための方法は、原子炉圧力容器内で、安定化力によって乾燥器アセンブリに予負荷を加えることを含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、原子炉の運転中に乾燥器アセンブリを安定させるように原子炉の原子炉圧力容器を改変する方法は、原子炉圧力容器と乾燥器アセンブリの間のばねを、原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリに安定化力をもたらすように位置決めすることを含む。
【0016】
別の態様によれば、原子炉の運転中に乾燥器アセンブリを安定させるように原子炉の原子炉圧力容器を改変する方法は、原子炉圧力容器と乾燥器アセンブリの間のばねを、乾燥器アセンブリの支持体に付加剛性を与えるように位置決めし、原子炉圧力容器内で乾燥器を上向きに移動しないように安定させることを含む。
【0017】
本発明のさらなる諸態様は、一部は明白であり、一部は以下で説明する。本発明の様々な態様は、個別にまたは互いに組み合わせて実施することができることを理解されたい。また、詳細な説明および図面は、本発明の特定の例示的実施形態を示しているが、これらは例示のためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を通じて、対応する参照番号は、同じまたは相当する部品および特徴を示すことを理解されたい。
【0019】
以下の説明は、例示的な性質にすぎず、本発明の開示、あるいは開示の適用または用途を制限するものではない。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、原子炉の原子炉圧力容器(RPV)では、安定化アセンブリなどの安定化手段は、乾燥器アセンブリにそれを原子炉圧力容器に対して安定化させる力を加えるように構成されている。
【0021】
図1を参照すると、沸騰水型原子炉用の原子炉圧力容器(RPV)の上部は、本発明の例示的一実施形態による蒸気乾燥器安定化装置および方法を含む。原子炉圧力容器(RPV)10は、基礎閉鎖蓋ボルト14を介してRPV上部シェル11に固定された内部表面13を有する上蓋12を含む。従来型のBWRのRPV10内の構成部品のいくつかは、明確にするために取り除いてあるが、図1には上蓋12を貫通するヘッドスプレーノズル16、気水分離器(図示せず)から出た水蒸気中に同伴される残留水分を取り除くための従来型の乾燥器アセンブリ18、蒸気乾燥器押さえ用アセンブリ20、および蒸気出口ノズル22を示す。スプレーノズル16は、乾燥器アセンブリ18から出た、水が取り除かれた水蒸気をRPV10から出力タービン発生器および関連する下流の電力分配システム(図示せず)へと運ぶ。蒸気乾燥器から出た水蒸気−水混合物24から取り除かれた残留水分、すなわち凝縮水は、乾燥器アセンブリ18内のドレンチャネル26を介して原子炉へ戻される。
【0022】
蒸気乾燥器アセンブリ18は、蒸気乾燥器アセンブリ18をRPV上部シェル11内の乾燥器支持ブラケット28上に取り付けるための乾燥器支持リング27を含む。蒸気乾燥器押さえ用アセンブリ20は、対応する蒸気乾燥器吊上げ棒アイボルト32およびその先の蒸気乾燥器吊上げ棒34を介して乾燥器アセンブリ18に連結された複数のRPV蒸気乾燥器押さえブラケット30を含むことができる。乾燥器アセンブリ18用の一般的な蒸気乾燥器押さえ用アセンブリ20は、RPV10の上蓋12の内部表面13に取り付けられた4個のRPV蒸気乾燥器押さえブラケット30を含み、押さえブラケット30は、乾燥器アセンブリ18を設置するために使用される同数の吊上げ棒34に対応する。
【0023】
図1の例示的な実施形態で示すように、蒸気乾燥器押さえ用アセンブリ30のうちの1つまたは複数は、乾燥器押さえ用アセンブリ20に取り付けられた安定化アセンブリ36を含む。安定化アセンブリ36は、(矢印38で示すように)乾燥器アセンブリ18に安定化力38をもたらすように適合され、そのように乾燥器押さえブラケット30と吊上げ棒34および/または吊上げ棒アイボルト32の間に配置される。安定化アセンブリ36によって吊上げ棒アイボルト32に加えられる安定化力38は、乾燥器アセンブリ18にかかる安定化力を生み出す。安定化力38はまた、乾燥器支持リング27を乾燥器支持ブラケット28に押し付けて安定させる働きもする。乾燥器アセンブリ18と乾燥器支持ブラケット28の間のこの安定化力38を、安定化力40として図1に示す。この例示的実施形態では、安定化アセンブリ36は、乾燥器押さえ用アセンブリ20に結合されている。しかし、他の1つまたは複数の実施形態では、安定化アセンブリ36を、他の構造と結合することができ、あるいは、RPV内でまた乾燥器アセンブリ18に対して他の位置関係で配置させることができることを理解されたい。
【0024】
いくつかの実施形態では、安定化力38および40は、熱膨張中でさえも加えられるかなり大きな下向きの力になることが望まれる。安定化力38および40は、しばしば、乾燥器支持ブラケット28での乾燥器アセンブリ18のいかなる揺動も防止することが望まれる。一実施形態では、好ましいばね力は、乾燥器の重量の約1/4〜1/2、または1本の吊上げ棒34につき約9080kg(20,000ポンド)である。この好ましいばね力は、乾燥器アセンブリ18の運動を有効に抑止するには十分であるが、ばね力に反発するのに使用可能な上蓋12および閉鎖ボルト14の予荷重を組み合わせた重量に比べて大きくない。
【0025】
いくつかの実施形態では、安定化力38および安定化力40は、1つまたは複数の安定化アセンブリ36にかかる変位制限力でよい。例えば、いくつかの実施形態では、安定化アセンブリ36は、乾燥器アセンブリ18が静止したまたは正常な位置にあるとき、下向きの力を加えなくてもよい。このような実施形態では、安定化力36は、乾燥器アセンブリ18が上向きに動いたときに安定化力38を加えるように構成されている。例えば、この動きは、乾燥器支持リング27が乾燥器支持ブラケット28から上向きに移動することを含むことができる。この場合、蒸気乾燥器18の望ましくない運動を抑制するのは、安定化アセンブリ36の付加剛性である。
【0026】
他の実施形態では、設置された全ての安定化アセンブリ36が、RPV10の組立て後の正常運転中、安定化力38を加えるように構成されている。例えば、これは連続的な下向きの力でよい。このような実施形態では、上蓋12および乾燥器押さえ用アセンブリ20が配置されている結果、安定化アセンブリ36に予負荷を加えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、安定化アセンブリ36は、上蓋12が毎回の燃料補給後にRPV10上に置かれるとき、上蓋12と乾燥器アセンブリ18の間で圧縮される1つまたは複数のばね(図示せず)を含むことができる。このような圧縮ばねは、連続的に下向きに安定化力38を乾燥器吊上げ棒アイボルト32に与え、それによって、乾燥器アセンブリ18の乾燥器支持リング27と乾燥器支持ブラケット28の間に下向きの安定化力40を加え続ける。
【0027】
図2および図3は、一例示的実施形態による、乾燥器安定化アセンブリ36の2つの図(図2は側面図、図3は正面図)を示す。図2に示すように、乾燥器安定化アセンブリ36は、乾燥器押さえブラケット30を介して上蓋12に結合することができる。1つまたは複数の反動アーム202が、ピボット軸204の周りで乾燥器押さえブラケット30に回転可能に結合される。反動アーム202は、図3に示すように、乾燥器押さえブラケット30によって規定され、取り付け穴203を貫通して配置された締結具206によって乾燥器押さえブラケット30に結合されている。締結具206は、どのようなタイプの適切な締結具でもよく、例えば、ボルトとナットのアセンブリを含むことができる。図3に示すように、一実施形態では、取り付け穴203はボルト締結具206を受ける。第1反動アーム202Aが、乾燥器押さえブラケット30の第1側面に配置され、第2反動アーム202Bが、乾燥器押さえブラケット30の第2側面に配置される。締結具またはボルトが、2つの反動アーム202Aおよび202Bを乾燥器押さえブラケット30に結合するように位置決めされる。
【0028】
ばね208が連結締結具210を介して反動アーム202に結合されている。ばね208は、どのようなタイプのばねあるいは弾性装置またはアセンブリでもよく、図2には、例としてのみであるが、渦巻きばねとして示されている。ばね208は、原子炉内でばねとして使用するのに適したどのような高強度耐食性弾性材料製でもよい。例えば、ばね208は、X−750合金などのニッケルクロム鉄合金製でよい。連結締結具210は、どのようなトルク伝達締結具でもよく、図2および図3に示すように、一体になった四角のラグ(lug)を含むことができる。ばね208が渦巻きばねであるとき、連結締結具210は、ばねの中心が連結締結具210の周りを回転しないように、ばね208の中央部に固定して結合することができる。押さえブラケット30に接して巻かれた渦巻きばねの形の高力合金を使用すると、コンパクトな外形をもたらすことができ、その結果、RPV10を出る乾燥器アセンブリ18からの水蒸気の流路の閉塞を最小限に抑えることができる。
【0029】
ばね208は、乾燥器押さえブラケット30の下面214と乾燥器吊上げ棒アイボルト32の頂面216の間に配置された突出端212を含むことができる。ばね208は、突出端212が低い位置かつ取り付けられた位置218Bにある、自由な状態218Aを有するものとして図示されている。取り付けられた位置218Bでは、突出端212の下面が上面216に対して圧縮され、ばね208は、位置218Bへと弾性的にゆるめられている。取り付けられた位置218Bでは、安定化空隙220が、突出端212と乾燥器押さえブラケット30の下面214の間に画成されている。安定化空隙220は、安定化アセンブリ36が下向きの安定化力38を与えることを可能にしながら、ばね208および乾燥器吊上げ棒アイボルト32が上方に屈曲できるような様々な距離でよい。この空隙の大きさは、ばねの寸法設定に合わせ、原子炉の起動および運転停止などの過渡状態時の乾燥器アセンブリ18と上蓋12の間の膨張差を受け入れるように、予め決定することができる。いくつかの実施形態では、安定化空隙220は、約1.27cm(1/2インチ)でよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、反動アーム202は、第1反動アーム部分と、反動アーム202を形成するように第1反動アーム部にほぼ平行に位置決めされた第2反動アーム部分とを含むことができる。第1反動アーム部は、乾燥器押さえブラケット30の第1側面およびばね208の第1側面に配置することができる。第2反動アーム部分は、乾燥器押さえブラケット30の第2側面およびばね208の第2側面に配置することができる。このようにして、ばね208および乾燥器押さえブラケット30は、反動アーム202の2つの部分、すなわち締結具206と連結締結具210の間に保持されて、少なくとも部分的に安定化アセンブリ36を形成する。
【0031】
いくつかの例示的実施形態では、安定化アセンブリ36は、上蓋12と乾燥器吊上げ棒アイボルト32の間に下向きの力(連続的な下向きの力でよい)を加え、それによって、安定化力38を乾燥器アセンブリ18に加える。ばね208は、安定化アセンブリ36を設置し反動アーム202Aおよび202Bを乾燥器押さえブラケット30およびばね208に結合した後、自由な状態218Aに置くことができる。安定化アセンブリ36は、ばね208が、ばね208と押さえブラケット30の側面との間の接触によって乾燥器吊上げ棒アイボルト32と係合するように、正しく位置合わせされた状態で支持されるように構成することができる。ばね208は、上蓋12をRPV10上に下ろしたとき、取り付けられた位置218Bで圧縮される。
【0032】
いくつかの実施形態では、構築および設置中に新しいRPV10に安定化アセンブリ36を設置することができる。他の実施形態では、既存の原子炉および原子炉圧力容器(RPV)への改変として安定化アセンブリ36を設置することができる。
【0033】
例えば、一実施形態では、原子炉の運転中に乾燥器アセンブリを安定させるように原子炉の原子炉圧力容器(RPV)を改変する方法は、原子炉圧力容器内で乾燥器アセンブリに安定化力をもたらすように、原子炉圧力容器と乾燥器アセンブリの間にばねを位置決めすることを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、ばね208を原子炉圧力容器10の上蓋12の押さえブラケット30に取り付けること、および上蓋12を原子炉圧力容器10上に置くことを含む。このように、安定化力38は、蒸気乾燥器押さえブラケット30を押し付ける連続的な下向きの安定化力、または乾燥器アセンブリ18の上向きの動きを抑制する変位制限力のどちらでもよい。後者の実施形態は、乾燥器アセンブリ18の支持体に付加剛性を与え、それによってRPV10内で乾燥器アセンブリ18を上向きに移動しないように安定させる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、ばねの一部分を、押さえブラケット30の一部分と蒸気乾燥器吊上げ棒34の間に置くことを含む。このようにすると、上蓋12を原子炉圧力容器10上に置いたとき、ばね208は、蒸気乾燥器吊上げ棒34と接触することによって偏向され、それによって乾燥器吊上げ棒を、したがって乾燥器アセンブリ18を押し付ける下向きの安定化力38を生み出すことができる。
【0036】
例えば、図4は、乾燥器アセンブリ18を安定させる本方法を用いて改変することができる、従来型の原子炉圧力容器400を示す。このRPV400は、上記RPV10の改変前の形である。従来型のRPV400の場合と同様に、乾燥器アセンブリ18は、正常運転中でも、あるいは乾燥器支持ブラケット28からの乾燥器の上向きの移動中でも、乾燥器支持リング27を介して乾燥器支持ブラケット28に安定化力なしに取り付けられている。従来型のRPV400では、乾燥器アセンブリ18はかなりの重量を有し、この重量は、RPV上側シェル11に取り付けられた複数の乾燥器支持ブラケット28上に対応する乾燥器支持リング27を着座させることによって、乾燥器アセンブリ18の底部で支持されている。4個の蒸気乾燥器吊上げ棒34は、乾燥器アセンブリ18の事故状態時の押さえ用装置として使用される。蒸気乾燥器吊上げ棒34の上向きの変位は、RPV400の上蓋12の内側に取り付けられた4個の押さえブラケット30によって制限される。乾燥器押さえブラケット30は通常、吊上げ棒アイボルト32との間に約1.27(1/2インチ)〜2.54cm(1インチ)の隙間または空隙402を有する。空隙402は通常、RPV10と蒸気乾燥器吊上げ棒34の間の差のある熱膨張を可能にし、一般に、それぞれの蒸気乾燥器吊上げ棒アイボルト32をその上面が所望の空隙402を形成するように調整することによって構築中に形成される。したがって、乾燥器押さえブラケット30は、乾燥器支持ブラケット28上で揺動する乾燥器アセンブリ18によって発生する通常運転時の動きを抑止しない。
【0037】
しかし、RPV400は、上記で説明し、図5および図6にさらに示すように、原子炉の保守手順中に改変することができる。図5は、取り付けられた位置にある従来型の原子炉圧力容器400乾燥器保持ブラケット30を、乾燥器吊上げ棒アイボルト32に対して示す。図に示すように、乾燥器保持ブラケット30は下面504を有する下部502を含み、下面504は、乾燥器吊上げ棒アイボルト32の頂面216と共に空隙402を形成するように下向きに延在している。安定化アセンブリ36を受け入れるように乾燥器保持ブラケット30を改変するために、下部502が下面214まで短縮される。除去部分602の量は、測定装置または測定用具を所定の位置に置いて、1回または複数回上蓋12を持ち上げそれを戻して、所要の除去部分602の必要な量を求めることによって決定することができる。あるいは、所要の除去部分602の量は、容器閉鎖部の密封面(図示せず)の上方のそれぞれの乾燥器吊上げ棒アイボルト32の高さ、およびそれと対合する上蓋の密封面(図示せず)の上方のそれぞれの押さえブラケット30の高さを測定することによって求めることができる。これは、上蓋12を戻さずに実施することができる。
【0038】
図6に示すように、下部502の除去部分602が、乾燥器保持ブラケット30から除去されて、より大きな空隙604が形成される。除去部分602は、研磨、のこ引き、またはフライス削りを含む従来のどのような切断方法によって除去してもよい。新しいより大きな空隙604は、乾燥器保持ブラケット30と乾燥器吊上げ棒アイボルト32の間にばね208の突出端212を受け入れ(例えば図2に示すように)、所望の安定化空隙220を形成するように寸法設定される。
【0039】
さらに、図6に示すように、乾燥器保持ブラケット30に取り付け穴203を、ドリル穿孔しあるいは別の方法で機械切削することができる。取り付け穴203は、締結具206を受け入れ、また、1つまたは複数の反動アーム202用のピボット軸204を提供するような形状である。
【0040】
図6に示すように乾燥器保持ブラケット30を改変した後、図に示し、図2および図3に関して上述した安定化アセンブリを、乾燥器押さえブラケット30およびRPV400の頂部に戻された上蓋12に結合することができる。このようにして、図1に示す安定化アセンブリ36が実施される。
【0041】
図示した改変は、安定化アセンブリの構造、位置決めおよび設計によって変わり得ることを理解されたい。この改変方法は、原子炉圧力容器、乾燥器アセンブリ、および安定化アセンブリの様々な設計のうちの1つを対象とするものにすぎない。これらの教示に整合する他のかかる実行形態も、本開示の範囲に含まれるものとみなされる。
【0042】
本発明の要素または特徴、あるいはその実施形態を説明するとき、冠詞「1つ」、「その」、および「前記」は、要素または特徴のうちの1つまたは複数が存在することを意味するものとする。用語「備えている」、「含んでいる」および「有している」は、包括的であり、具体的に説明されたもの以外にも追加の要素または特徴が存在してもよいことを意味するものとする。
【0043】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の例示的実施形態および実行形態に様々な変更を加えることができることを当業者なら認識するであろう。したがって、上記の説明に含まれ、添付の図面に示す全ての事項は、限定の意味ではなく例示的なものと解釈すべきである。
【0044】
さらに、本明細書に記載される工程または段階は、説明または図示された特定の順序で実行することが必ず要求されていると解釈すべきでないことを理解されたい。また、追加のまたは代替の工程または段階を使用してよいことも理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一例示的実施形態による、RPV内に蒸気乾燥器を含む沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器(RPV)の上部を示す図である。
【図2】本発明の一例示的実施形態による、RPV内の蒸気乾燥器用の安定化装置の側面斜視図である。
【図3】図2に示す一例示的実施形態による、安定化装置の正面斜視図である。
【図4】RPV内に蒸気乾燥器を含む沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器(RPV)の従来の上部を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による改変前の従来型の蒸気乾燥器押さえブラケットおよび吊上げ棒アイボルトの側面図である。
【図6】本発明の一実施形態による、押さえブラケットの改変を示した、蒸気乾燥器押さえブラケットおよび吊上げ棒アイボルトの側面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 原子炉圧力容器(RPV)
11 RPV上部シェル
12 上蓋
14 閉鎖蓋ボルト
14 ヘッドスプレーノズル
18 乾燥器アセンブリ
20 押さえ用アセンブリ
22 蒸気出口ノズル
24 水蒸気−水混合物
26 ドレンチャネル
27 乾燥器支持リング
28 乾燥器支持ブラケット
30 押さえブラケット
32 吊上げ棒アイボルト
34 蒸気乾燥器吊上げ棒
36 安定化アセンブリ
38、40 安定化力
202 反動アーム
202A 第1反動アーム
202B 第2反動アーム
203 アセンブリ取り付け穴
204 ピボット軸
206 締結具
208 ばね
210 連結締結具
212 突出端
214 下面
216 頂面
218A 自由な状態
218B 取り付けられた状態
220 安定化空隙
400 RPV
402 空隙
502 下部
504 下面
602 除去部分
604 より大きな空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の原子炉圧力容器10内で乾燥器アセンブリ18を安定させる装置であって、前記乾燥器アセンブリ18にそれを前記原子炉圧力容器10に対して安定化させる力38を加えるように寸法設定され前記原子炉圧力容器10内に配置されたばね36を備える装置。
【請求項2】
前記ばね36が、正常運転中、前記乾燥器アセンブリ18に連続的な安定化予負荷を与えるように予負荷されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ばね36が、前記原子炉圧力容器10の上蓋12に結合され、前記上蓋12を前記原子炉圧力容器10上に置いたとき、前記乾燥器アセンブリ18に下向きの予負荷された力38をもたらし、それを前記乾燥器アセンブリ18の蒸気乾燥器支持ブラケット28に押し付けるように予負荷されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ばね36が、前記乾燥器アセンブリ18と前記原子炉圧力容器10の上蓋12の間に配置され、前記乾燥器アセンブリ18の上向きの垂直移動中のみ、乾燥器アセンブリ18に下向きの力38を加えるように構成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ばね36が、前記原子炉圧力容器10の上蓋12の押さえブラケット30と前記乾燥器アセンブリ18の吊上げ棒34の間に配置され、前記押さえブラケット30から前記吊上げ棒34にかけて下向きの安定化力38をもたらし、前記装置がさらに、前記ばね36が安定化空隙内へと上向きに屈曲できるように寸法設定された安定化空隙を備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記押さえブラケット30に結合された第1部分および前記ばね36に結合された第2部分を有する反動アームをさらに備え、前記反動アームが、押さえブラケット30に対して下向きの安定化力38をもたらすべく前記ばね36を位置決めするように構成されることを特徴とする請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−183273(P2007−183273A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−353560(P2006−353560)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY