説明

原子炉格納容器の冷却方法及び原子炉格納容器冷却装置

【課題】原子炉格納容器の外面を冷却ができ、この冷却に用いた冷却水を再利用できる原子炉格納容器の冷却方法を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器6が、原子炉圧力容器2を配置するドライウェル43を形成するドライウェル容器44、ドライウェル容器44に接続されてドライウェル43に連絡されている複数の排出管9、及び各排出管9が挿入されてドライウェル容器44の底部を取り囲み圧力抑制プール11を形成する環状の圧力抑制室8を有する。ドライウェル容器44を取り囲む、生体遮へい壁16とドライウェル容器44との間に形成される環状の隙間26内に冷却水を供給する。ドライウェル容器44を冷却しながら隙間26内を落下する冷却水が、圧力抑制室8が設置される環状の圧力抑制室設置室28に回収される。圧力抑制室設置室28に回収された冷却水を隙間26内に供給し、上記の冷却に再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の冷却方法及び原子炉格納容器冷却装置に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な原子炉格納容器の冷却方法及び原子炉格納容器冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉では、複数の燃料集合体が装荷された炉心を内蔵する原子炉が、密封容器である原子炉格納容器内に配置されている。原子炉格納容器は、原子炉建屋内に配置される。このように原子炉は原子炉格納容器及び原子炉建屋によって取り囲まれており、万が一、原子炉内から放射性物質が漏洩した場合でも、この放射性物質が外部の環境に漏洩することを防止している。
【0003】
例えば、冷却材喪失事故(LOCA)が発生して原子炉内の高温高圧の冷却水が原子炉に接続される配管(例えば、主蒸気配管)の破断個所から蒸気となって原子炉格納容器のドライウェル内に噴出する。このとき、温度が上昇する原子炉格納容器の冷却の一例が、特開平6−59073号公報に記載されている。
【0004】
特開平6−59073号公報に記載された沸騰水型原子炉の原子炉格納容器の冷却では、原子炉建屋内に設置された円筒状の第1及び第2エンクロージャによって形成される複数の環状通路内に、冷却空気を流している。第1エンクロージャ(コンクリート製)が原子炉格納容器を取り囲んでおり、環状の第1冷却空気流路が原子炉格納容器の外面と第1エンクロージャの内面の間に形成される。第2エンクロージャが第1エンクロージャを取り囲んでおり、環状の第2冷却空気流路が第1エンクロージャの外面と第2エンクロージャの内面の間に形成される。第1冷却空気流路の上端部が原子炉建屋の屋根に設けられた空気出口部に連絡され、第2冷却空気流路の上端部が原子炉建屋の屋根に設けられた空気入口部に連絡される。第1冷却空気流路及び第2冷却空気流路は、それぞれの下端部で互いに連絡されている。
【0005】
LOCAが発生したとき、原子炉格納容器内のドライウェルに放出された蒸気により原子炉格納容器が加熱され、原子炉格納容器の熱により第1冷却空気流路内の空気が加熱されて上昇し、この空気が原子炉建屋の屋根に設けられた空気出口部から外部環境に排気される。第1冷却空気流路内で空気の上昇が発生すると、原子炉建屋の屋根に設けられた空気入口部から外部の温度の低い空気(冷却空気)が、第2冷却空気流路内に流入して第2冷却空気流路内を下降し、さらに第2冷却空気流路の下端部において第1冷却空気流路内に流入する。この温度の低い空気は、第1冷却空気流路内を上昇するに伴って原子炉格納容器を冷却する。
【0006】
加圧水型原子炉の原子炉格納容器についても、原子炉格納容器の外面を空気で冷却することが提案されている(特開平2−296196号公報及び特開平5−87967号公報参照)。いずれも、原子炉格納容器とこの原子炉格納容器を収納している遮蔽建屋の間に、冷却空気を下降させる環状の第2冷却空気流路及び冷却空気を上昇させる環状の第1冷却空気流路を形成している。第1冷却空気流路が原子炉格納容器の外面に接触しており、第2冷却空気流路が第1冷却空気流路を取り囲んでいる。第2冷却空気流路内を下降する冷却空気は、第2冷却空気流路の下端部において第1冷却空気流路に流入し、原子炉格納容器を冷却しながら第1冷却空気流路内を上昇して外部環境に排気される。
【0007】
特開平2−296196号公報では、第1冷却空気流路の出口部で原子炉格納容器の上方に、水供給源からの水を原子炉格納容器の頂部の外面に向かって放出する水供給装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−59073号公報
【特許文献2】特開平2−296196号公報
【特許文献3】特開平5−87967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開平6−59073号公報、特開平2−296196号公報及び特開平5−87967号公報に記載された原子炉格納容器の冷却は、冷却空気を用いた空冷を主体にしている。このため、原子炉格納容器の外側に、原子炉格納容器の軸方向において冷却空気を下降させる第2冷却空気流路、及び第2冷却空気流路の下端部に連絡されて第2冷却空気流路から供給された冷却空気を上昇させる第1冷却空気流路を形成し、第1冷却空気流路を原子炉格納容器の外面に接触させ、第1冷却空気流路内を上昇する冷却空気によって原子炉格納容器を冷却している。
【0010】
しかしながら、原子炉格納容器の冷却効率は、空冷に比べて水冷で高くなる。特開平2−296196号公報は、原子炉格納容器の頂部付近で第1冷却空気流路の出口部に水供給源からの水を放出する水供給装置を設けて、原子炉格納容器を水冷することを記載している。この水供給装置から原子炉格納容器の頂部に向かって放出された水は、原子炉格納容器の熱によって蒸発する。もし、水供給装置から原子炉格納容器の頂部に向かって放出された水が原子炉格納容器の外面に沿って第1冷却空気流路内を落下して第1冷却空気流路の下端部に溜まる場合は、この溜まった水によって第2冷却空気流路から第1冷却空気流路への冷却空気の流入が阻害される。
【0011】
本発明の目的は、原子炉格納容器の外面を水冷することができ、この冷却に用いた冷却水を再利用することができる原子炉格納容器の冷却方法及び原子炉格納容器冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉圧力容器が配置されるドライウェルを内部に形成するドライウェル容器、ドライウェル容器に接続されてドライウェルに連絡されている複数の排出管、及びそれぞれの排出管が挿入されてドライウェル容器の底部を取り囲み、内部に圧力抑制プールが形成された環状の圧力抑制室を有する原子炉格納容器を冷却する方法であって、
ドライウェル容器を取り囲む、原子炉建屋の一部である生体遮へい壁とドライウェル容器との間に形成される環状の第1隙間内に冷却水を供給し、
ドライウェル容器を冷却しながら第1隙間内を落下する冷却水が、排出管の周囲に形成される環状の第2隙間を通って、環状の圧力抑制室が設置される、ドライウェル容器の底部を取り囲む環状の圧力抑制室設置室に回収され、
圧力抑制室設置室に回収された冷却水を第1隙間内に供給することにある。
【0013】
ドライウェル容器を取り囲む、原子炉建屋の一部である生体遮へい壁とドライウェル容器との間に形成される環状の第1隙間内に冷却水を供給し、ドライウェル容器を冷却しながら第1隙間内を落下する冷却水を、圧力抑制室設置室に回収するので、ドライウェル容器の外面を冷却することができ、かつ、この冷却用いた冷却水を圧力抑制室設置室に容易に回収することができるため、回収された冷却水をドライウェル容器の冷却に再利用することができる。また、圧力抑制室設置室に設置された圧力抑制室を圧力抑制室設置室内に回収した冷却水で冷却することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原子炉圧力容器を収納するドライウェル容器の外面を冷却することができ、かつ、圧力抑制室設置室に回収された冷却水をドライウェル容器の冷却に再利用することができる。さらに、圧力抑制室設置室に設置された圧力抑制室を圧力抑制室設置室に回収した冷却水で冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施例である、原子炉建屋内に配置された原子炉格納容器冷却装置の構成図である。
【図2】図1のII部の拡大図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0017】
本発明の好適な一実施例である原子炉格納容器の冷却方法を、図1、図2及び図3を用いて説明する。
【0018】
本実施例の原子炉格納容器の冷却方法が適用される沸騰水型原子炉の概略構造、及び原子炉格納容器冷却装置31が配置される原子炉建屋13の概略構造を、図1を用いて説明する。
【0019】
原子炉1は、原子炉圧力容器2及びこの原子炉圧力容器2内に配置された炉心4を有する。複数の燃料集合体(図示せず)が炉心4に装荷される。上蓋3が原子炉圧力容器2のフランジに取り外し可能に取り付けられている。原子炉圧力容器2を取り囲む鋼製の原子炉格納容器6は、ドライウェル43を内部に形成するドライウェル容器44、及び圧力抑制室8を有する。原子炉圧力容器2は、ドライウェル43内に配置され、ドライウェル43内に設置された円筒状のペデスタル12上に据え付けられている。原子炉格納容器6の上端にも、上蓋7が取り外し可能に取り付けられる。リング状の圧力抑制室8がドライウェル容器44の底部の周囲を取り囲んでいる。ドライウェル容器44の底部付近に接続されて放射状に配置された複数の排出管9が、圧力抑制室8を貫通して圧力抑制室8内に達している。冷却水が充填された圧力抑制プール11が圧力抑制室8内に形成される。複数の下降管10は排出管9に連絡され、これらの下降管10の下部が圧力抑制プール11の冷却水に浸漬されている。原子炉格納容器6は、原子炉建屋13内でコンクリートマット30の上に据え付けられている。
【0020】
原子炉建屋13内には、一番下の階(地下)に環状の圧力抑制室設置室28が形成されている。圧力抑制室8が圧力抑制室設置室28内に配置される。原子炉建屋13の一部である生体遮へい壁16が、ドライウェル容器44を取り囲んでいる。原子炉ウェル14が、原子炉建屋13内で原子炉圧力容器2の真上に形成される。原子炉の運転中には、冷却水が原子炉ウェル14に充填されていなく、上蓋3,7は原子炉ウェル14内に配置される。遮蔽蓋15は、原子炉の運転中においては上蓋7を覆うように原子炉ウェル14の上端部に設置され、原子炉の定期検査期間中においては原子炉ウェル14を解放するために原子炉ウェル14の上端部から取り外される。
【0021】
原子炉の運転が停止された後に原子炉の定期検査を行うとき、上蓋3,7が原子炉圧力容器2及び原子炉格納容器6から取り外され、原子炉ウェル14内に冷却水が充填される。この冷却水が、原子炉圧力容器2と原子炉格納容器6の間、及び原子炉格納容器6と生体遮へい壁16の間に落下するのを防止するため、原子炉ウェルシール装置17が設けられている。環状の原子炉ウェルシール装置17は、原子炉ウェル14の内面と原子炉格納容器6の上端部の間及び原子炉格納容器6の上端部と原子炉圧力容器2の上端部の間に配置され、それらの間をシールしている(図2参照)。
【0022】
原子炉ウェルシール装置17を、図2を用いて具体的に説明する。原子炉ウェルシール装置17は、環状のシールプレート18,19,21及び22、及び円筒状のベローズ20及び23を有する。シールプレート18及び19及びベローズ20は、原子炉ウェル14の内面と原子炉格納容器6の上端部の間に配置され、原子炉格納容器6を取り囲んでいる。シールプレート18及び19は水平方向に配置され、シールプレート18の外周が原子炉ウェル14の内面に取り付けられ、シールプレート18の下方に配置されたシールプレート19の内周が原子炉格納容器6の外面に取り付けられる。ベローズ20の上端がシールプレート18の内周に取り付けられ、ベローズ20の下端がシールプレート19の外周に取り付けられる。シールプレート21及び22は水平方向に配置され、シールプレート21の外周が原子炉格納容器6の内面に取り付けられ、シールプレート21の下方に配置されたシールプレート22の内周が原子炉圧力容器2に取り付けられる。ベローズ23の上端がシールプレート21の内周に取り付けられ、ベローズ23の下端がシールプレート22の外周に取り付けられる。
【0023】
原子炉の定期検査時において、遮蔽蓋15及び上蓋3,7が取り外されて、原子炉ウェル14内に冷却水が充填された場合には、この冷却水は、原子炉ウェルシール装置17の上方に存在し、原子炉ウェルシール装置17よりも下方に落下しない。
【0024】
生体遮へい壁16の上端面24が、原子炉ウェル14の内面と原子炉格納容器6の間で原子炉ウェルシール装置17の下方に存在する。原子炉格納容器6を取り囲む環状の領域25が、原子炉ウェル14の内面、原子炉ウェルシール装置17、原子炉格納容器6の外面、及び生体遮へい壁16の上端面24によって取り囲まれて形成される。
【0025】
原子炉格納容器6のドライウェル容器44を取り囲む環状の隙間26が、生体遮へい壁16の内面とドライウェル容器44の外面の間に形成される。各排出管9の周囲にも、コンクリートマット30との間で、排出管9を取り囲んでいる環状の隙間27が形成されている。隙間26の上端部が領域25に連絡され、隙間26の上端が全周に亘って領域25に解放されている。隙間26の下端部が各隙間27に連絡され、これらの隙間27の下端が圧力抑制室設置室28に解放されている。
【0026】
本実施例の原子炉格納容器の冷却方法に用いられる原子炉格納容器冷却装置31を、図1を用いて説明する。原子炉格納容器冷却装置31は、冷却水供給配管32,37、冷却水ポンプ36、開閉弁34,39、熱交換器(冷却器)35、分岐配管33A,33B、貯水タンク38、制御装置40及び水位計41を備えている。開閉弁34、熱交換器35及び冷却水ポンプ36が、上流から下流に向かってこの順番に、冷却水供給配管32に設けられる。冷却水供給配管32の上流端が、圧力抑制室設置室28内で、圧力抑制室設置室28の内面と圧力抑制室8の外面の間に配置される。冷却水供給配管32は、原子炉建屋13内に配置される。
【0027】
複数の分岐配管33(例えば、分岐配管33A,33B等の6本の分岐配管)が、冷却水供給配管32の上流端部に接続される。複数の開口部(例えば、6個の開口部42A〜42F)が、生体遮へい壁16の上端面24に形成されている。(図3参照)。生体遮へい壁16の上端面24に形成される開口部42は、例えば、4個であってもよい。分岐配管33A,33B等の6本の分岐配管33が、それぞれ、生体遮へい壁16内を通って生体遮へい壁16の上端面24に形成された開口部42A〜42Fまで達している。分岐配管33Aの端部が上端面24に形成された開口部42Aに連絡され、分岐配管33Bの端部が上端面24に形成された開口部42Dに連絡される。同様に、残りの4本の分岐配管33の端部が、別々に、上端面24に形成された開口部42B,42C,42E及び42Fに連絡されている。
【0028】
貯水タンク38が、原子炉建屋13の外側で地面の上に設置されている。開閉弁39が設けられた冷却水供給配管37の一端が貯水タンク38に接続され、冷却水供給配管37の他端が熱交換器35と冷却水ポンプ36の間で冷却水供給配管32に接続される。
【0029】
水位計41が、圧力抑制室設置室28の天井に設けられ、その天井を貫通して圧力抑制室設置室28の内面と圧力抑制室8の外面の間に配置される。原子炉建屋13の外に設置された制御装置40が水位計41に接続される。
【0030】
本実施例の原子炉格納容器の冷却方法について、詳細に説明する。図1に示す沸騰水型原子炉で、万が一、冷却材喪失事故が発生した場合を想定する。原子炉圧力容器2内の高温高圧の冷却水が、ドライウェル43内における原子炉圧力容器2に接続された主蒸気配管の破断個所から高温の蒸気となって噴出される。噴出された高温の蒸気は、ドライウェル43から排出管9を通り、下降管10に導かれる。この蒸気は、下降管10から、原子炉格納容器6内に形成された圧力抑制プール11の冷却水中に放出され、凝縮される。上記の凝縮によって原子炉格納容器内の圧力が低下する。
【0031】
主蒸気配管の破断個所から放出された高温の蒸気は、ドライウェル43内に充満し、鋼製の原子炉格納容器6を加熱する。この結果、原子炉格納容器6の温度が上昇する。冷却材喪失事故が発生したとき、冷却材喪失事故発生の信号(例えば、ドライウェル43の圧力高の信号または原子炉水位低の信号)が制御装置40に入力される。制御装置40は、開閉弁39を開いて開閉弁34を閉じ、冷却水ポンプ36を駆動する。
【0032】
貯水タンク38内の冷却水が、冷却水供給配管37内を通って冷却水供給配管32内に導かれ、各分岐配管33を通して開口部42A〜42Fから吐出される。貯水タンク38内には予め外部水源から冷却水が供給され、貯水タンク38内が冷却水で満たされている。開口部42A〜42Fから吐出されて領域25内に供給された冷却水は、領域25から環状の隙間26内に供給されて、ドライウェル容器44の部分の外面に沿って落下する。開口部42A〜42Fのそれぞれから排出された冷却水が流入する領域25は、隙間26に冷却水を供給するヘッダとして機能する。このため、領域25内の冷却水は、原子炉格納容器6の全周に亘って、隙間26内に供給され、隙間26内を落下する冷却水は、原子炉格納容器6の全周において、ドライウェル容器44の外面に接触し、この外面を冷却しながら、隙間26の下端部に到達する。冷却水は、さらに、隙間27を通って排出管27を冷却しながら圧力抑制室設置室28内に流入する。圧力抑制室設置室28において、冷却水は、圧力抑制室設置室28の内面と圧力抑制室8の外面の間の空間に充填される。
【0033】
領域25及び隙間26への冷却水の供給により、貯水タンク38内の冷却水の水位が下限値よりも低下した場合には、冷却水が、外部水源から貯水タンク38内に供給される。
【0034】
貯水タンク38から領域25への冷却水の供給が継続して行われるため、隙間26,27を落下して圧力抑制室設置室28内に達する冷却水により、圧力抑制室設置室28内で圧力抑制室8の外側における水位が上昇する。水位計41は、この水位を計測して水位信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、入力した水位信号が水位上限値に到達したとき、開閉弁34を開いて開閉弁39を全閉状態にする。
【0035】
このため、隙間26,27を通して圧力抑制室設置室28内に流入した冷却水、すなわち、圧力抑制室設置室28内で圧力抑制室8の外側に存在する冷却水が、冷却水供給配管32内に吸引され、冷却水ポンプ36で昇圧され、各分岐配管33を通して領域25内に供給される。圧力抑制室設置室28内の冷却水は、冷却水供給配管32内を流れる間に、熱交換器35で冷却され、温度が低下する。この温度が低下した冷却水が、開口部42A〜42Fのそれぞれから領域25内に導かれ、四方より隙間26内に流入する。冷却水は、ドライウェル容器44の外面に沿って落下し、原子炉格納容器6のドライウェル容器44を冷却する。さらに、冷却水は、隙間27内を流れて排出管9の外面を冷却する。やがて、冷却水は、圧力抑制室設置室28内に戻される。圧力抑制室設置室28内の冷却水は、冷却水供給配管32、各分岐管33、領域25及び隙間26,27によって構成される閉ループ内を循環しながら、原子炉格納容器6を継続して冷却する。圧力抑制室8が圧力抑制室設置室28内に存在する冷却水中に埋没される。このため、圧力抑制室8も圧力抑制室設置室28内に存在する冷却水によって冷却され、ドライウェル43から流入した蒸気を凝縮することによって温度が上昇した圧力抑制プール11内の冷却水も圧力抑制室設置室28内に存在する冷却水によって冷却される。
【0036】
圧力抑制室設置室28内の冷却水が隙間26に供給されている間は、開閉弁39が閉じているので、貯水タンク38内の冷却水は、隙間26に供給されない。何らかの原因で、水位計41で測定された水位が下限値未満になったとき、制御装置40が開閉弁39を開いて開閉弁34を全閉状態にする。このとき、貯水タンク38内の冷却水が隙間26に供給される。
【0037】
本実施例によれば、貯水タンク38内の冷却水及び圧力抑制室設置室28内の冷却水が領域25から隙間26,27に供給されるので、冷却材喪失事故等の原子炉格納容器6の温度が上昇する事故時において、原子炉格納容器6を冷却することができる。特に、隙間26の上端が、周方向の全周に亘って、原子炉ウェルシール装置17と生体遮へい壁16の上端面24の間に形成された、原子炉格納容器6を取り囲む環状の領域25に連絡され、さらに冷却水を領域25に排出する開口部42が複数個(例えば、6個)形成されているので、領域25に供給された冷却水を、隙間26の周方向により均一に供給することができる。隙間26,27内を原子炉格納容器6の周方向の全周に亘って原子炉格納容器6の外面を冷却しながら落下する全冷却水を、圧力抑制室8が配置された圧力抑制室設置室28内に回収することができる。
【0038】
本実施例は、圧力抑制室設置室28内に回収された冷却水によって、圧力抑制室8を冷却することができ、さらに、圧力抑制室8内に形成された圧力抑制プール11内の冷却水も冷却することができる。圧力抑制プール11内の冷却水を冷却することができるので、ドライウェル43から圧力抑制室8内の圧力抑制プール11の冷却水に放出される蒸気を長時間にわたって効率良く凝縮させることができる。このため、ドライウェル43内の圧力の低減度合いを増加させることができる。
【0039】
本実施例は、圧力抑制室設置室28を、圧力抑制室8を設置する領域、及びドライウェル容器44を冷却した冷却水の回収領域として利用しており、さらには、圧力抑制室設置室28内に設置した圧力抑制室8を冷却するためにも利用している。
【0040】
本実施例は、圧力抑制室設置室28内に冷却水供給配管32を設置しているので、原子炉建屋13の外部に設けられた貯水タンク38から原子炉格納容器6の冷却ために隙間26,27に供給されて圧力抑制室設置室28内に回収された冷却水を、原子炉格納容器6の冷却に再利用することができる。このため、原子炉建屋13外から冷却水供給配管37を通して隙間26に供給した冷却水を有効利用することができる。また、圧力抑制室設置室28内の冷却水の水位を測定する水位計41、及び開閉弁39と開閉弁34の開閉の切り替えを行う制御装置40を設けているので、貯水タンク38から隙間26への冷却水の供給を、圧力抑制室設置室28から隙間26への冷却水の供給に短時間に切り替えることができる。
【0041】
隙間26,27内を流れる冷却水は、ドライウェル43から外部に向かう放射線を遮へいする。また、圧力抑制室8が圧力抑制室設置室28内に存在する冷却水中に水没するので、圧力抑制室8内から放出される放射線を圧力抑制室設置室28内の冷却水で遮へいすることができる。特に、ドライウェル43から圧力抑制室8内の圧力抑制プール11の冷却水中に放出される蒸気は放射性物質を含んでおり、この蒸気を凝縮する圧力抑制プール11の冷却水に含まれる放射性物質の濃度が増大する。圧力抑制プール11の冷却水に含まれる放射性物質から放出される放射線は、隙間26,27を通過して圧力抑制室8と圧力抑制室設置室28の間に蓄えられる冷却水によって効果的に遮へいすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…原子炉、2…原子炉圧力容器、4…炉心、6…原子炉格納容器、8…圧力抑制室、11…圧力抑制プール、13…原子炉建屋、14…原子炉ウェル、16…生体遮へい壁、17…原子炉ウェルシール装置、18,19,21,22…シールプレート、20,23…ベローズ、24…生体遮へい壁の上端面、25…領域、26,27…隙間、28…圧力抑制室設置室、31…原子炉格納容器冷却装置、32,37…冷却水供給配管、34,39…開閉弁、35…熱交換器、36…冷却水ポンプ、38…貯水タンク、40…制御装置、41…水位計、42A〜42F…開口部、43…ドライウェル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器が配置されるドライウェルを内部に形成するドライウェル容器、前記ドライウェル容器に接続されて前記ドライウェルに連絡されている複数の排出管、及びそれぞれの前記排出管が挿入されて前記ドライウェル容器の底部を取り囲み、内部に圧力抑制プールが形成された環状の圧力抑制室を有する原子炉格納容器を冷却する方法であって、
前記ドライウェル容器を取り囲む、原子炉建屋の一部である生体遮へい壁と前記ドライウェル容器との間に形成される環状の第1隙間内に冷却水を供給し、
前記ドライウェル容器を冷却しながら前記第1隙間内を落下する前記冷却水が、前記排出管の周囲に形成される環状の第2隙間を通って、前記環状の圧力抑制室が設置される、前記ドライウェル容器の底部を取り囲む環状の圧力抑制室設置室に回収され、
前記圧力抑制室設置室に回収された前記冷却水を前記第1隙間内に供給することを特徴とする原子炉格納容器の冷却方法。
【請求項2】
前記第1隙間への前記冷却水の供給は、前記ドライウェル容器の外側において、前記ドライウェル容器の真上に形成された原子炉ウェルの内壁と前記ドライウェル容器の間をシールする原子炉ウェルシール装置と、この原子炉ウェルシール装置よりも下方に位置した、前記生体遮へい体の上端面との間に形成され、かつ前記第1隙間の上端が前記ドライウェル容器の周方向の全周に亘って解放されている環状領域に、前記冷却水を供給することによって行われる請求項1に記載の原子炉格納容器の冷却方法。
【請求項3】
前記環状領域への前記冷却水の供給は、前記ドライウェル容器の周方向において、前記生体遮へい体の上端面に形成された複数の開口を通して行われる請求項2に記載の原子炉格納容器の冷却方法。
【請求項4】
前記圧力抑制室設置室に回収された前記冷却水の前記第1隙間内への供給は、この冷却水を冷却した後に行う請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子炉格納容器の冷却方法。
【請求項5】
前記第1隙間内への前記冷却水の供給は、前記原子炉建屋外から供給される冷却水によって行い、前記圧力抑制室設置室内に回収された前記冷却水の水位が設定水に到達したとき、前記原子炉建屋外から前記第1隙間内への前記冷却水の供給を停止し、前記圧力抑制室設置室から前記第1隙間内への前記冷却水の供給が行われる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子炉格納容器の冷却方法。
【請求項6】
原子炉圧力容器が配置されるドライウェルを内部に形成するドライウェル容器、前記ドライウェル容器に接続されて前記ドライウェルに連絡されている複数の排出管、及びそれぞれの前記排出管が挿入されて前記ドライウェル容器の底部を取り囲み、内部に圧力抑制プールが形成された環状の圧力抑制室を有する原子炉格納容器が内部に設置され、前記ドライウェル容器との間に前記ドライウェル容器を取り囲む環状の隙間を形成して前記ドライウェル容器を取り囲む環状の生体遮へい壁を有し、前記環状の圧力抑制室が設置される、前記ドライウェル容器の底部を取り囲む環状の圧力抑制室設置室が内部に形成される原子炉建屋内に設置されて、前記圧力抑制室設置室内に一端部が挿入され、前記圧力抑制室設置室内に回収された冷却水を導く第1冷却水供給配管と、
前記第1冷却水供給配管に設けられた第1開閉弁及び冷却装置と、
前記第1開閉弁及び前記冷却装置の下流で前記第1冷却水供給配管に設けられたポンプと、
前記第1開閉弁及び前記冷却装置の下流で前記ポンプの上流で前記第1冷却水供給配管に接続されて第2開閉弁が設けられ、前記原子炉建屋の外部から前記原子炉建屋の内部に伸びて前記原子炉建屋の外部からの冷却水を導く第2冷却水供給配管と、
前記ポンプの下流で前記第1冷却水供給配管に接続され、かつ前記ドライウェル容器の外側において、前記ドライウェル容器の真上に形成された原子炉ウェルの内壁と前記ドライウェル容器の間をシールする原子炉ウェルシール装置と、この原子炉ウェルシール装置よりも下方に位置した、前記生体遮へい体の上端面との間に形成され、前記第1隙間の上端が前記ドライウェル容器の周方向の全周に亘って解放されている環状領域に連絡される複数の分岐配管とを備えたことを特徴とする原子炉格納容器冷却装置。
【請求項7】
前記圧力抑制室設置室内の前記冷却水の水位を測定する水位計と、前記水位計で測定された水位が設定水位まで上昇したとき、前記第1開閉弁を開いて前記第2開閉弁を閉じる制御装置とを備えた請求項6に記載の原子炉格納容器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233700(P2012−233700A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100274(P2011−100274)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】