説明

原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備

【課題】原子力発電プラントの全交流電源喪失時のような無電源状態においても隔離時復水器プールに水を供給する手段を提供することで、原子炉の炉心を長期に亘って安定して冷却可能とする原子炉炉心冷却システムを提供する。
【解決手段】内部に隔離時復水器を配置し該隔離時復水器を水没させ得る冷却水と安全弁とを有する耐圧型の隔離時復水器プールと、耐圧型の隔離時復水器プールの気相部で発生する蒸気により駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンの蒸気出口に接続され蒸気タービンの排気を大気開放する蒸気タービン下流配管と、蒸気タービンの回転軸と機械的に接続された注水ポンプと、耐圧型の隔離時復水器プールに冷却水を補給するための水源と、耐圧型の隔離時復水器プールから前記水源方向への冷却水の移動を阻止するために注水ポンプ下流配管に設けた逆止弁とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備に係り、更に詳しくは、全交流電源喪失時において、原子炉炉心を長期に亘って安定して冷却する隔離時復水器を備える原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの全交流電源喪失時においても、スクラム後の炉心で発生する崩壊熱を除去することで原子炉圧力容器内の冷却材のインベントリを維持可能とするための隔離時復水器とその配管系統が例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている隔離時復水器は、隔離時復水器プール内のプール水中に浸漬されている。隔離時復水器プールの上側の内部空間は、蒸気排出配管を通して外部に連通している。隔離時復水器の上側の蒸気室は、蒸気導入弁を有する蒸気配管を介して原子炉圧力容器に接続した主蒸気配管に接続している。また、隔離時復水器の下側の水室は戻り弁を有する凝縮水戻り管を介して原子炉圧力容器に接続している。隔離時復水器の蒸気室と水室とは、複数の伝熱管で連結されている。
【0004】
上述した隔離時復水器を備えた配管系統において、隔離時復水器は蒸気導入弁及び凝縮水戻り弁を開くことで、原子炉圧力容器内の蒸気を、蒸気配管を通して隔離時復水器に導く。隔離時復水器内に引き込んだ蒸気は、隔離時復水器プール内の水で冷やされて凝縮水となる。この凝縮水は自重を駆動力として凝縮水戻り管を通して原子炉圧力容器内に戻される。このように、隔離時復水器を使用すれば、原子力発電プラントの全交流電源喪失時においても、主復水器の代わりに原子炉圧圧力容器内で発生した蒸気を水に戻して、原子炉圧力容器内に供給することが可能となり、原子炉圧力容器内の冷却材の水位を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-344496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術によれば、隔離時復水器を用いて原子炉圧力容器内で発生した蒸気を水に戻すことで原子炉圧力容器内の冷却材の水位を維持できるので、炉心の水面上への露出による燃料破損を防ぐことができる。
【0007】
しかしながら、炉心の崩壊熱を受けて隔離時復水器プール内の水が長期に亘って沸騰すると、沸騰によって発生した蒸気は、蒸気排出配管から大気中に放出されるため、隔離時復水器プール内の水の水位が低下する。このことにより、隔離時復水器が水面上に露出すると、水面上に露出した部分の水冷ができなくなり、隔離時復水器の除熱性能が低下する。
【0008】
原子力発電プラントの全交流電源喪失時には、隔離時復水器プールに水を供給できないので、隔離時復水器プール内の水の水位が低下し続けると、原子炉圧力容器内の冷却材の水位を維持できなくなる虞がある。
【0009】
本発明は上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、原子力発電プラントの全交流電源喪失時のような無電源状態においても、隔離時復水器プールに水を供給することで、原子炉の炉心を長期に亘って安定して冷却可能とする原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、蒸気を凝縮させて水に戻すための複数本の伝熱管を有する隔離時復水器と、原子炉圧力容器と前記隔離時復水器とを接続し、前記原子炉圧力容器内で発生する蒸気を前記隔離時復水器に導く蒸気引き込み管と、前記原子炉圧力容器と前記隔離時復水器とを接続し、前記隔離時復水器で凝縮した水を前記原子炉圧力容器に戻す凝縮水戻り管とを備えた原子炉炉心冷却システムであって、内部に前記隔離時復水器を配置し該隔離時復水器を水没させ得る冷却水と、内部の圧力を規定圧力以下に保持可能な安全弁とを有する耐圧型の隔離時復水器プールと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部で発生する蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部と前記蒸気タービンの蒸気入口とを接続する蒸気タービン上流配管と、前記蒸気タービンの蒸気出口に接続され前記蒸気タービンの排気を大気開放する蒸気タービン下流配管と、前記蒸気タービンの回転軸と機械的に接続された注水ポンプと、前記耐圧型の隔離時復水器プールに冷却水を補給するための水源と、前記水源と前記注水ポンプの入口とを接続する注水ポンプ上流配管と、前記注水ポンプの出口と前記耐圧型の隔離時復水器プールとを接続する注水ポンプ下流配管と、前記耐圧型の隔離時復水器プールから前記水源方向への冷却水の移動を阻止するために前記注水ポンプ下流配管に設けた逆止弁とを備えたものとする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記注水ポンプ下流配管は、前記耐圧型の隔離時復水器プールにおける前記隔離時復水器を水没させ得る冷却水の水位である初期水位より下方の低い位置で前記耐圧型の隔離時復水器プールに接続されることを特徴とする。
【0012】
更に、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記上流タービン配管に前記蒸気タービンへ流入する蒸気流量を制限するためのオリフィス構造を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記蒸気タービンの回転軸に機械的に接続された発電機と、前記発電機の出力により充電可能なバッテリと、前記水源の圧力を検出する第1の圧力センサと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力を検出する第2の圧力センサと、前記蒸気タービンの回転数を検出する回転数センサと、前記バッテリの出力を電源として、前記第1の圧力センサが検出した前記水源の圧力と前記第2の圧力センサが検出した前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力と前記回転数センサが検出した前記蒸気タービンの回転数とを取込み、前記蒸気タービンの回転数を制御する流量制御装置をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
更に、第5の発明は、第4の発明において、前記蒸気タービン上流配管に、前記流量制御装置によって開度制御可能な流量調整弁を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明のいずれかにおいて、前記蒸気タービンの回転軸に機械的に接続された発電機と、前記発電機の出力により充電可能なバッテリと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部と液相部の差圧を検出する差圧センサと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力を検出する圧力センサと、前記バッテリの出力を電源として、前記差圧センサが検出した前記耐圧型の隔離時復水器プールの差圧と前記圧力センサが検出した前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力とを取込み、前記水源から前記耐圧型の隔離時復水器プールへの注水量を制御する水位制御装置をさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
更に、第7の発明は、第6の発明において、前記蒸気タービンの回転軸と前記注水ポンプとを直結する軸に、前記水位制御装置によって接離可能なクラッチ構造を設けたことを特徴とする。
【0017】
また、第8の発明は、原子力発電プラント設備であって、第1乃至第7の発明のいずれかを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原子力発電プラントの全交流電源喪失が発生しても、隔離時復水器プールへの注水を更に確実に行うことができるので、原子炉の炉心を長期に亘って安定して冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第1の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図2】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第2の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図3】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第3の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図4】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第3の実施の形態を構成する流量制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。
【図5】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第4の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図6】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第4の実施の形態を構成する水位制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。
【図7】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第5の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図8】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第5の実施の形態を構成する流量・水位制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。
【図9】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第6の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図10】本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の第6の実施の形態を構成する流量・水位制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の原子炉炉心冷却システム及びこれを用いた原子力発電プラント設備の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第1の実施の形態を示すシステム系統図である。原子炉炉心冷却システムにおいて、原子炉圧力容器6に直接接続された高圧系統を1次系と称し、大気に接続された低圧系統を2次系と称する。
【0022】
図1において、1次系は、隔離時復水器1と、原子炉圧力容器6から隔離時復水器1へ蒸気を引き込むための蒸気引き込み管2と、隔離時復水器1で凝縮した水を原子炉圧力容器6に戻すための凝縮水戻り管3と、蒸気引き込み管2に設置した上流側隔離弁4と、凝縮水戻り管3に設置した隔離時復水器制御弁5とから構成されている。
【0023】
原子炉圧力容器6内には炉心10が設置されている。炉心10は原子炉圧力容器6内の冷却材によって冷却される。
【0024】
隔離時復水器1は、原子炉圧力容器6内の冷却材の水位11より上方に設置していて、上部側に設けられ蒸気引き込み管2が接続される蒸気室1aと、下部側に設けられ凝縮水戻り管3が接続される水室1bと、蒸気室1aと水室1bとを連結するように垂直方向に配設される複数の伝熱管1cとを備えている。原子炉圧力容器6における凝縮水戻り管3の接続部位は、蒸気引き込み管2の接続部位より下方の位置に設けられている。原子力発電プラントの通常運転時は、上流側隔離弁4を常時開状態、隔離時復水器制御弁5を常時閉状態に管理している。隔離時復水器1は隔離時復水器制御弁5を開くことで起動する。
【0025】
2次系は、安全弁12を備えて、隔離時復水器1をプール水8の中に水没させて配置した耐圧型の隔離時復水器プール24と、耐圧型の隔離時復水器プール24で発生した蒸気の系統である蒸気タービン系統100と、耐圧型の隔離時復水器プール24への冷却水の系統である注水系統200とから構成されている。耐圧型の隔離時復水器プール24は、内部の圧力を規定圧力以下に保持可能な安全弁を備えた耐圧容器で構成されている。
【0026】
蒸気タービン系統100は、蒸気タービン13と、一端側を耐圧型の隔離時復水器プール24の上部の気相部に接続し、他端側を蒸気タービン13の蒸気入口に接続する蒸気タービン上流配管14と、一端側を蒸気タービン13の蒸気出口に接続し、他端側を大気に開放する蒸気タービン下流配管15とを備えている。蒸気タービン上流配管14の流路抵抗は、耐圧型の隔離時復水器プール24の耐圧定格圧力時の蒸気の流量が蒸気タービン13の最大回転数以下になるように予め調整されている。
【0027】
注水系統200は、蒸気タービン13の回転軸と連結軸17を介して機械的に接続された注水ポンプ16と、耐圧型の隔離時復水器プール24より下方に配置され、内部に冷却水18を蓄えた復水貯蔵タンク19(水源)と、冷却水18中に一端側を水没するように復水貯蔵タンク19に接続し、他端側を注水ポンプ16の入口側に接続する注水ポンプ上流配管20と、注水ポンプ上流配管20の一端側に設けた取水口21と、一端側を注水ポンプ16の出口側に接続し、他端側を耐圧型の隔離時復水器プール24に接続する注水ポンプ下流配管22と、注水ポンプ下流配管22の耐圧型隔離時復水器プール24近傍に設けられ、耐圧型の隔離時復水器プール24から復水貯蔵タンク19への水の逆流を防止する逆止弁23とを備えている。耐圧型の隔離時復水器プール24において、注水ポンプ下流配管22の他端側が接続される部位は、耐圧型の隔離時復水器プール24のプール水8の初期水位より下方に配置している。
【0028】
次に、本実施の形態において、原子力発電プラントで全交流電源喪失が発生して原子炉がスクラムし、原子炉圧力容器6が隔離された場合の動作について説明する。
【0029】
1次系では、原子炉圧力容器6が隔離されると、原子炉圧力容器6内の炉心10部で発生する崩壊熱を除去するために、通常時は閉止している隔離時復水器制御弁5を開く。上流側隔離弁4が通常時開状態のため、原子力発電プラントの通常運転中は、隔離時復水器1中には凝縮水がたまった状態となっているが、隔離時復水器制御弁5を開くと、この凝縮水が隔離時復水器1内の水位と原子炉圧力容器6内の冷却材の水位11との水頭差を駆動力として原子炉圧力容器6に流入し、隔離時復水器1が起動する。
【0030】
隔離時復水器1の起動後は、蒸気引き込み管2を介して原子炉圧力容器6内で発生する蒸気を隔離時復水器1の蒸気室1aに引き込み、隔離時復水器1の伝熱管1cを介して隔離時復水器プール24内のプール水8と熱交換することで伝熱管1c内の蒸気を凝縮水に戻して水室1bに蓄える。水質に蓄えられた凝縮水は、凝縮水戻り管3を介して原子炉圧力容器6に戻される。本系統の駆動力は、隔離時復水器1と原子炉圧力容器6内の冷却材の水位11との水頭差であり、本系統の駆動抵抗は蒸気が配管内を流れる際の摩擦抵抗や局所抵抗である。本系統の駆動力は自然に発生する力であり、ポンプ等の動的機器を必要としないため、隔離時復水器1は全交流電源喪失時にも使用可能である。1次系について、本実施の形態と従来例の構成とは同一であるため、他の実施の形態においては1次系の説明を省略する。
【0031】
2次系では、隔離時復水器1内の蒸気を凝縮するにつれて蒸気のエネルギーが耐圧型隔離時復水器プール24内のプール水8に移行し、プール水温が上昇して沸騰に至る。沸騰によって発生した蒸気は、蒸気タービン13を回して仕事をした後に大気開放される。蒸気タービン13の回転力は、連結軸17を介して注水ポンプ16を駆動し、得られた駆動力を用いて復水貯蔵タンク水18を耐圧型の隔離時復水器プール24へ注水することができる。このように、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第1の実施の形態を用いれば、原子炉の炉心10を長期に亘って安定して冷却することが可能となる。
【0032】
本実施の形態の蒸気タービン13を回して仕事をした後の蒸気を、蒸気タービン下流配管15を通して大気へ開放する方式とした理由を説明する。
例えば、蒸気タービン13を回した後の蒸気を、大気開放する代わりに、冷却水18を蓄えた復水貯蔵タンク19(水源)に導けば、タービン13を回した後の蒸気を水に戻せる分だけ冷却水を長期間供給できるように考えられる。しかし、この様な構成には、以下の問題が生じる。
(1)隔離時復水器1で除熱されたエネルギ(蒸気)が、蒸気タービン上流配管14、蒸気タービン13、蒸気タービン下流配管15、冷却水18、注水ポンプ上流配管21、注水ポンプ16、及び注水ポンプ下流配管22を経由して再び原子炉炉心冷却システムに戻ってしまうため、除熱性能が損なわれてしまう。
(2)蒸気タービン13を回した後の蒸気を復水貯蔵タンク19内の冷却水18に導くことで冷却水18の沸騰が生じる。冷却水18の沸騰が生じると、発生する水蒸気によって建屋内の視界が悪化すると共に、建屋内が高温高湿の環境となることが想定される。この結果、例えば、復水貯蔵タンク19への外部からの注水作業が困難になる恐れがあり、原子炉炉心冷却システムの設置目的に適合しない事態を招いてしまう。
【0033】
上述した本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第1の実施の形態によれば、原子力発電プラントの全交流電源喪失が発生しても、耐圧型の隔離時復水器プール24への注水を更に確実に行うことができるので、原子炉の炉心10を長期に亘って安定して冷却することが可能となる。
【0034】
また、上述した本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第1の実施の形態によれば、注水ポンプ下流配管22を耐圧型の隔離時復水器プール24のプール水8の初期水位より下方に接続しているため、耐圧型の隔離時復水器プール24への注水過多によって耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位が初期水位以上に上昇すると、注水ポンプ下流配管22接続位置より上方の水頭が抵抗となって注水流量が低下する。これにより、耐圧型隔離時復水器プール24内のプール水8のオーバーフローを防止することができる。また、注水ポンプ下流配管22に逆止弁23を設置しているので、万が一、注水ポンプ下流配管22が破損したとしても、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の流出を防止することができる。
【0035】
また、上述した本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第1の実施の形態によれば、復水貯蔵タンク19は、原子炉圧力容器6内の冷却材の水位11よりも上方に設置する耐圧型隔離時復水器プール24よりも下方に設置するためにアクセス性が良く、消防車等による復水貯蔵タンク19への追加注水が比較的容易である。そのため、復水貯蔵タンク19に追加注水し続けることで、水源の枯渇の危惧なく継続的に原子炉の炉心10を長期に亘って安定して冷却することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では復水貯蔵タンク19の冷却水18が枯渇すると耐圧型の隔離時復水器プール24への注水ができなくなるが、例えば機器プールや貯水槽等に水源を切り替えることで、復水貯蔵タンク19の冷却水18が枯渇した後も原子炉の炉心10を安定して冷却することができる。
【0037】
なお、本実施の形態においては、隔離時復水器1の伝熱管1cを垂直方向に配設する構成となっているが、これに限るものではない。例えば、伝熱管1cを水平方向に配設する横置き型の隔離時復水器1であっても同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0038】
以下、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図2は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第1の実施の形態を示すシステム系統図である。図2において、図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図2に示す本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第1の実施の形態においては、蒸気タービン上流配管14の流路抵抗を、耐圧型の隔離時復水器プール24の耐圧定格圧力時の蒸気の流量が蒸気タービン13の最大回転数以下になるように予め調整しておく方式の場合を説明したが、本実施の形態においては、図2に示すように、蒸気タービン上流配管14に流量を制限するためのプレート型のオリフィス25を設置している。
【0040】
本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0041】
また、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第2の実施の形態によれば、オリフィス25の絞り口径等の設計によって蒸気タービン13の回転数を調節することができるので、システムの設計が容易になり、原子炉炉心冷却システムの生産性が向上する。
【実施例3】
【0042】
以下、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。図3は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第3の実施の形態を示すシステム系統図である。図3において、図1及び図2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図3に示す本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第1の実施の形態においては、蒸気タービン13の回転数制御方法として、蒸気タービン上流配管14の流路抵抗を予め調整する例を示したが、本実施の形態においては、流量制御装置26を有する流量制御系統を設けている。
【0044】
流量制御系統は、流量制御装置26の電源を供給するバッテリ27と、蒸気タービン13の回転軸に軸を介して機械的に接続され、その出力でバッテリ27を充電可能とする発電機28と、蒸気タービン上流配管14に設けられ、蒸気タービン13へ流入する蒸気量を調節可能とする電動式の流量調節弁29と、復水貯蔵タンク19に設けられ、冷却水18中に水没している取水口21位置の圧力を検出する圧力センサ30と、蒸気タービン13の回転軸近傍に設けられ、蒸気タービン13の回転数を検出する回転数センサ31と、耐圧型の隔離時復水器プール24に設けられ、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力を検出する圧力センサ32とを備えている。
【0045】
圧力センサ30が検出した復水貯蔵タンク19の取水口21位置の圧力と、回転数センサ31が検出した蒸気タービン13の回転数と、圧力センサ32が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力は、流量制御装置26に入力される。流量制御装置26は、これらの入力信号に基づいて流量調節弁29へ開度指令を出力することで、蒸気タービン13の回転数を制御する。このことにより、蒸気タービン13に直結した給水ポンプ16の注水流量が制御できる。
【0046】
次に、流量制御装置26の処理内容を図4を用いて説明する。図4は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第3の実施の形態を構成する流量制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
流量制御装置26は、図4に示すように、注水ポンプ16の必要水頭を演算する制御ブロック33と、蒸気タービン目標回転数を演算する制御ブロック34と、蒸気タービン回転数差分を演算する制御ブロック35と、流量調整弁29の開度差分を演算する制御ブロック36とを備えている。
【0048】
図3に戻り、本実施の形態において、注水ポンプ16により、復水貯蔵タンク19の冷却水18を耐圧型の隔離時復水器プール24へ供給するためには、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相位置の圧力と復水貯蔵タンク19における取水口21位置の圧力との圧力差及び水頭差に打ち勝つだけの動力を蒸気タービン13で発生させる必要がある。
【0049】
そこで、図4に示すように、制御ブロック33において、注水ポンプ16の必要水頭である差圧を演算する。具体的には、圧力センサ32が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力値から圧力センサ30が検出した復水貯蔵タンク19の取水口21位置の圧力値を減算し、復水貯蔵タンク19と耐圧型の隔離時復水器プール24の設置位置の高低差に相当する水頭値(定数)を加算することで差圧を算出する。制御ブロック33で算出した差圧は、制御ブロック34に入力する。
【0050】
制御ブロック34では、入力値である差圧を基に蒸気タービン目標回転数を演算する。制御ブロック34は、予め設定された特性を有する関数発生器であって、入力である差圧と出力である蒸気タービン目標回転数の特性は、試験等の結果に基づいて事前に設定されている。制御ブロック34で算出した蒸気タービン目標回転数は、制御ブロック35に入力する。
【0051】
制御ブロック35では、蒸気タービン目標回転数とともに、回転数センサ31が検出した蒸気タービン13の実回転数を入力し、蒸気タービン目標回転数から蒸気タービン13の実回転数を減算して回転数差分を算出する。回転数差分が正であれば更に蒸気タービン13の実回転数を上げる必要があり、逆の場合は蒸気タービン13の実回転数を下げる必要がある。制御ブロック35で算出した回転数差分は、制御ブロック36に入力する。
【0052】
制御ブロック36では、入力値である回転数差分を流量調整弁29の開度差分に変換し、流量調整弁29への開トルクまたは閉トルクを算出する。制御ブロック36は、予め設定された特性を有する関数発生器であって、図4に示すように、入力の回転数差分の0近傍の所定範囲に出力0のデッドバンドを設け、所定範囲を超えた正側の回転数差分の入力に応じて開方向のトルクを漸増させ、所定範囲を超えた負側の回転数差分の入力に応じて閉方向のトルクを漸増させる特性が設定されている。換言すると、入力である回転数差分が正の場合は、流量調整弁29を開く方向のトルクを、入力である回転数差分が負の場合は、流量調整弁29を閉める方向のトルクを算出する。また、デッドバンドが設定されているので、回転数差分がデッドバンド内(許容範囲内)にある場合には、出力であるトルクを0として流量調整弁29の開度を固定する制御を行う。
【0053】
なお、本実施の形態においては、蒸気タービン13の目標回転数の算出に、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相圧力を用いるため、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位が上昇して注水ポンプ下流配管22の吐出口が水没する場合の水没分水頭が演算に含まれない。水没分水頭は注水流量を低下させる方向であるため、第1の実施の形態と同様に、プール水8の水位が上昇すると自動的に注水量が低下する。これにより、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位は自動的に調整され、オーバーフローを防止することができる。
【0054】
上述した本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0055】
また、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第3の実施の形態によれば、蒸気タービン13の回転数制御方法として流量制御装置26を有する流量制御系統を設けたので、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相位置の圧力と復水貯蔵タンク19における取水口21位置の圧力との圧力差及び水頭差に打ち勝つだけの動力を蒸気タービン13で確実に発生できる。このことにより、復水貯蔵タンク19の冷却水18の耐圧型の隔離時復水器プール24への供給が安定する。この結果、原子炉の炉心10の長期に亘る冷却がより安定化する。
【実施例4】
【0056】
以下、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第4の実施の形態を図面を用いて説明する。図5は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第4の実施の形態を示すシステム系統図である。図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図5に示す本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第1の実施の形態においては、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位制御方法として、水頭を利用した静的な方法を例に説明したが、本実施の形態においては、水位制御装置37を有する水位制御系統を設けている。
【0058】
水位制御系統は、水位制御装置37の電源を供給するバッテリ27と、蒸気タービン13の回転軸に軸を介して機械的に接続され、その出力でバッテリ27を充電可能とする発電機28と、蒸気タービン13の回転軸と注水ポンプ16とを機械的に接続する連結軸17に設けられ、開閉動作することにより、蒸気タービン13の回転軸と注水ポンプ16との切離し/接続(接離)の切換えを行うクラッチ39と、耐圧型の隔離時復水器プール24に設けられ、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力を検出する圧力センサ32と、耐圧型の隔離時復水器プール24に設けられ、耐圧型の隔離時復水器プール24内のコラプス水位に相当する差圧を検出する差圧センサ38とを備えている。
【0059】
差圧センサ38は、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力と液相部の圧力とを検出してこれらの差圧を出力する。このため、耐圧型の隔離時復水器プール24の気相部の部位に接続した一方の検出配管と、耐圧型の隔離時復水器プール24の液相部の部位に接続した他方の検出配管とを備えていて、これらの検出配管が接続された部位間の距離を差圧センサ38の測定区間幅Hとしている。
【0060】
圧力センサ32が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力と、差圧センサ38が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の差圧とは、水位制御装置37に入力される。水位制御装置37は、これらの入力信号に基づいてクラッチ39へ開閉指令を出力することで、クラッチ39の接離動作を切り替えて注水ポンプ16の駆動を制御する。この結果、耐圧型の隔離時復水器プール24内のコラプス水位が制御できる。コラプス水位とは、水面下の蒸気ボイドが全て水面上に抜けた場合の水位を意味する。水面下に蒸気ボイドがある時に実際に形成される水位(実水位)は、蒸気ボイドの体積分だけコラプス水位よりも高くなる。水面下に蒸気ボイドが無い場合のみ、実水位=コラプス水位となる。
【0061】
次に、水位制御装置37の処理内容を図6を用いて説明する。図6は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第4の実施の形態を構成する水位制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。図6において、図1乃至図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0062】
水位制御装置26は、図6に示すように、飽和水密度を演算する制御ブロック40と、飽和蒸気密度を演算する制御ブロック41と、蒸気タービン回転数差分を演算する制御ブロック42と、コラプス水位Lを演算する制御ブロック42と、水位差分を演算する制御ブロック43と、クラッチ39の開閉動作信号を演算する制御ブロック44とを備えている。
【0063】
図5に戻り、本実施の形態において、耐圧型の隔離時復水器プール24における飽和水の密度及び飽和蒸気の密度は、耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相位置の圧力によって変化する。
【0064】
そこで、図6に示すように、制御ブロック40において飽和水の密度を、制御ブロック41において飽和蒸気の密度を演算する。制御ブロック40は、圧力―飽和水密度の特性を有する関数発生器であり、圧力センサ32が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力値が入力されている。制御ブロック41は、圧力―飽和蒸気密度の特性を有する関数発生器であり、圧力センサ32が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の気相部の圧力値が入力されている。制御ブロック40,41で算出した各密度は、制御ブロック42に入力する。
【0065】
制御ブロック42では、制御ブロック40,41で算出した各密度とともに、差圧センサ38が検出した耐圧型の隔離時復水器プール24内の差圧を入力し、コラプス水位Lを算出する。具体的には、以下の式(1)の演算を行う。
L=(ΔP−ρgH)/(ρ−ρ)・・・・(1)
ここで、ΔPは耐圧型の隔離時復水器プール24内の差圧、ρは飽和蒸気の密度、ρは飽和水の密度、Hは差圧センサ38の測定区間幅(定数)、gは重力加速度(定数)とする。制御ブロック42で算出したコラプス水位Lは、制御ブロック43に入力する。
【0066】
制御ブロック43では、コラプス水位Lとともに、目標水位(定数)を入力し、目標水位から演算したコラプス水位Lを減算して水位差分を算出する。水位差分が正であれば注水ポンプ16を回して耐圧型の隔離時復水器プール24へ注水する必要があり、逆の場合は注水を止める必要がある。制御ブロック43で算出した水位差分は、制御ブロック44に入力する。
【0067】
制御ブロック44では、入力値である水位差分をクラッチ39の開閉信号に変換し、クラッチ39への開または閉の動作指令を算出する。制御ブロック44は、予め設定された特性を有する関数発生器であって、図6に示すように、入力である水位差の0近傍の所定範囲に出力0のデッドバンドを設け、所定範囲を超えた正側の水位差の入力に応じて閉信号(1)を、所定範囲を超えた負側の水位差分の入力に応じて開信号(−1)を出力させる特性が設定されている。換言すると、入力である水位差が正の場合は、閉信号(1)を出力し、クラッチ39を接続動作させて注水ポンプ16と蒸気タービン13の回転軸とを接続させ、入力である水位差が負の場合は、開信号(−1)を出力し、クラッチ39を切離し動作させて注水ポンプ16と蒸気タービン13の回転軸とを切り離させている。また、デッドバンドが設定されているので、水位差分がデッドバンド内(許容範囲内)にある場合には、出力信号を0としてクラッチ39の状態を維持する制御を行う。すなわち、注水している時は注水状態、注水停止時は停止状態を維持する。この結果、目標水位近傍においては、クラッチ39の頻繁な接離動作の発生が防止できる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、クラッチ39を用いて注水ポンプ16の起動/停止を制御しているので、クラッチ39が切れて注水ポンプ16が止まっている時間帯であっても蒸気タービン13は回り続けているため、蒸気タービン13に直結した発電機28によりバッテリ27を充電することができる。この結果、長期に亘る運転の場合であっても、バッテリ27の電圧低下を防ぐことができる。
【0069】
上述した本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第4の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0070】
また、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第4の実施の形態によれば、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位制御方法として、水位制御装置37を有する水位制御系統を設けたので、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位を適切に制御することができ、オーバーフロー等の不測の事態の発生を防止することができる。このことにより、復水貯蔵タンク19の冷却水18の耐圧型の隔離時復水器プール24への供給が安定する。この結果、原子炉の炉心10の長期に亘る冷却がより安定化する。
【0071】
また、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第4の実施の形態によれば、注水ポンプ16が止まっている時間帯であっても、蒸気タービン13に直結した発電機28によりバッテリ27を充電することができるので、原子炉炉心冷却システムを長期に亘って運転する場合であっても、バッテリ27の電圧低下を防ぐことができる。この結果、原子炉の炉心10を長期に亘って安定して冷却することができる。
【実施例5】
【0072】
以下、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第5の実施の形態を図面を用いて説明する。図7は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第5の実施の形態を示すシステム系統図、図8は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第5の実施の形態を構成する流量・水位制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。図7及び図8において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0073】
図7及び図8に示す本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第5の実施の形態は、第3の実施の形態における流量制御系統と第4の実施の形態における水位制御系統を組み合わせたものであって、流量制御装置26と水位制御装置37とに代えて、流量制御装置26と水位制御装置37の機能を備えた流量・水位制御装置45を備えている。
【0074】
本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第5の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0075】
また、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第5の実施の形態によれば、上述した第3の実施の形態と第4の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【実施例6】
【0076】
以下、本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第6の実施の形態を図面を用いて説明する。図9は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第6の実施の形態を示すシステム系統図、図10は本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第6の実施の形態を構成する流量・水位制御装置の処理内容を示す制御ブロック図である。図9及び図10において、図1乃至図8に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0077】
図9に示す本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第6の実施の形態は、大略第5の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第5の実施の形態においては、蒸気タービン13の回転軸と注水ポンプ16とを機械的に接続する連結軸17にクラッチ39を設け、クラッチを開閉動作することにより、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位制御を行うが、本実施の形態においては、クラッチ39を設けず、蒸気タービン13の回転数のみを制御することで、蒸気タービン13の回転数、及び耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位の両者を制御する。
【0078】
本実施の形態においては、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位が目標水位範囲より上に達した場合に、流量調整弁29を強制的に閉止して蒸気タービン13及び注水ポンプ16を停止させるロジックが設けられている。具体的には、第5の実施の形態における流量・水位制御装置45において、クラッチ39の開閉動作信号を演算する制御ブロック44を削除し、コラプス水位Lが目標水位より上に達したときに切換え信号を出力する制御ブロック50と、強制全閉指令を出力する制御ブロック51と、制御ブロック50の切換え信号に応じて全閉指令または流量制御指令のいずれかを出力する制御ブロック52とを追加して構成されている。
【0079】
制御ブロック50は、制御ブロック43で算出された目標水位とコラプス水位Lとの水位差分を入力して、コラプス水位Lが目標水位より上に達したときに出力信号を1として出力する。制御ブロック50は、予め設定された特性を有する関数発生器であって、図10に示すように、入力の水位差が0を超えたときに1を出力し、それ以外は0を出力する特性が設定されている。制御ブロック50の出力信号は、制御ブロック52の切換え部に入力する。
【0080】
制御ブロック51は、流量調整弁29の全閉相当のトルク指令を出力する信号発生器であって、制御ブロック52の一方の選択部に入力する。
【0081】
制御ブロック52は、制御ブロック50の出力信号を切換え部、制御ブロック51の出力信号を一方の選択部、制御ブロック36で算出された流量調整弁29への開トルクまたは閉トルクの出力信号を他方の選択部へそれぞれ入力し、切換え部の信号に応じて2つの選択信号のいずれかを出力する。切換え部の信号が1のとき(コラプス水位Lが目標水位より上に達したとき)には、制御ブロック51の流量調整弁29の全閉相当のトルク指令を選択して出力し、切換え部の信号が0のとき(コラプス水位Lが目標水位より下に至るとき)には、制御ブロック36の流量調整弁29への開トルクまたは閉トルク指令を選択して、流量調整弁29へ出力する。
【0082】
このように流量・水位制御装置45を構成したので、コラプス水位Lが目標水位範囲より上に達したときには、流量調整弁29を強制的に閉止する。流量調整弁29の強制閉止によって注水ポンプ16を停止させるので、耐圧型の隔離時復水器プール24内のプール水8の水位の過度な増加を抑制することができる。逆に、コラプス水位Lが目標水位範囲より下に至るときには、制御ブロック33,34,35,36からなる流量制御系統を用いて、流量調整弁29の開度を動的に制御することができる。
【0083】
本発明の原子炉炉心冷却システム及び原子力発電プラント設備の第6の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と第5の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0084】
なお、上述した本発明の原子炉炉心冷却システムの実施の形態は、原子力発電プラント設備に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 隔離時復水器
2 蒸気引き込み管
3 凝縮水戻り管
4 上流側隔離弁
5 隔離時復水器制御弁
6 原子炉圧力容器
8 隔離時復水器プール水
10 炉心
11 原子炉圧力容器内の冷却材の水位
12 安全弁
13 蒸気タービン
14 蒸気タービン上流配管
15 蒸気タービン下流配管
16 注水ポンプ
17 連結軸
18 復水貯蔵タンクの冷却水
19 復水貯蔵タンク
20 注水ポンプ上流配管
21 取水口
22 注水ポンプ下流配管
23 逆止弁
24 耐圧型の隔離時復水器プール
25 オリフィス
26 流量制御装置
27 バッテリ
28 発電機
29 流量調整弁
30 圧力センサ
31 回転数センサ
32 圧力センサ
37 水位制御装置
38 差圧センサ
39 クラッチ
45 流量・水位制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を凝縮させて水に戻すための複数本の伝熱管を有する隔離時復水器と、原子炉圧力容器と前記隔離時復水器とを接続し、前記原子炉圧力容器内で発生する蒸気を前記隔離時復水器に導く蒸気引き込み管と、前記原子炉圧力容器と前記隔離時復水器とを接続し、前記隔離時復水器で凝縮した水を前記原子炉圧力容器に戻す凝縮水戻り管とを備えた原子炉炉心冷却システムであって、
内部に前記隔離時復水器を配置し該隔離時復水器を水没させ得る冷却水と、内部の圧力を規定圧力以下に保持可能な安全弁とを有する耐圧型の隔離時復水器プールと、
前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部で発生する蒸気により駆動する蒸気タービンと、
前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部と前記蒸気タービンの蒸気入口とを接続する蒸気タービン上流配管と、前記蒸気タービンの蒸気出口に接続され前記蒸気タービンの排気を大気開放する蒸気タービン下流配管と、
前記蒸気タービンの回転軸と機械的に接続された注水ポンプと、
前記耐圧型の隔離時復水器プールに冷却水を補給するための水源と、前記水源と前記注水ポンプの入口とを接続する注水ポンプ上流配管と、前記注水ポンプの出口と前記耐圧型の隔離時復水器プールとを接続する注水ポンプ下流配管と、
前記耐圧型の隔離時復水器プールから前記水源方向への冷却水の移動を阻止するために前記注水ポンプ下流配管に設けた逆止弁とを備えた
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉炉心冷却システムにおいて、
前記注水ポンプ下流配管は、前記耐圧型の隔離時復水器プールにおける前記隔離時復水器を水没させ得る冷却水の水位である初期水位より下方の低い位置で前記耐圧型の隔離時復水器プールに接続される
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原子炉炉心冷却システムにおいて、
前記上流タービン配管に前記蒸気タービンへ流入する蒸気流量を制限するためのオリフィス構造を設けた
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の原子炉炉心冷却システムにおいて、
前記蒸気タービンの回転軸に機械的に接続された発電機と、前記発電機の出力により充電可能なバッテリと、前記水源の圧力を検出する第1の圧力センサと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力を検出する第2の圧力センサと、前記蒸気タービンの回転数を検出する回転数センサと、前記バッテリの出力を電源として、前記第1の圧力センサが検出した前記水源の圧力と前記第2の圧力センサが検出した前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力と前記回転数センサが検出した前記蒸気タービンの回転数とを取込み、前記蒸気タービンの回転数を制御する流量制御装置をさらに備えた
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項5】
請求項4に記載の原子炉炉心冷却システムにおいて、
前記蒸気タービン上流配管に、前記流量制御装置によって開度制御可能な流量調整弁を設けた
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の原子炉炉心冷却システムにおいて、
前記蒸気タービンの回転軸に機械的に接続された発電機と、前記発電機の出力により充電可能なバッテリと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部と液相部の差圧を検出する差圧センサと、前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力を検出する圧力センサと、前記バッテリの出力を電源として、前記差圧センサが検出した前記耐圧型の隔離時復水器プールの差圧と前記圧力センサが検出した前記耐圧型の隔離時復水器プールの気相部の圧力とを取込み、前記水源から前記耐圧型の隔離時復水器プールへの注水量を制御する水位制御装置をさらに備えた
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項7】
請求項6に記載の原子炉炉心冷却システムにおいて、
前記蒸気タービンの回転軸と前記注水ポンプとを直結する軸に、前記水位制御装置によって接離可能なクラッチ構造を設けた
ことを特徴とする原子炉炉心冷却システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の原子炉炉心冷却システムを備えたことを特徴とする原子力発電プラント設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−104729(P2013−104729A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247577(P2011−247577)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)