原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法およびその装置
【課題】原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を、非破壊で評価する。
【解決手段】セシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め(S12)、セシウム134のガンマ線強度C4とC7との比(C4/C7)およびBUGとから初期プルトニウム富化度εMを求め(S13)、中性子束ΦとC4との比(Φ/C4)と、BUGおよびεMとから、核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよびPu242の組成割合P2Mとを求め(S14)、中性子実効増倍率kを求め(S16)、式Φ=S・P/(1−k)から中性子放出率Sを求め(S17)、初期プルトニウム富化度εMと初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める(S18)。
【解決手段】セシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め(S12)、セシウム134のガンマ線強度C4とC7との比(C4/C7)およびBUGとから初期プルトニウム富化度εMを求め(S13)、中性子束ΦとC4との比(Φ/C4)と、BUGおよびεMとから、核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよびPu242の組成割合P2Mとを求め(S14)、中性子実効増倍率kを求め(S16)、式Φ=S・P/(1−k)から中性子放出率Sを求め(S17)、初期プルトニウム富化度εMと初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める(S18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子炉燃料の燃焼度を非破壊で評価する方法およびそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軽水炉燃料ではウラン酸化物(UO2)を用いたウラン燃料が用いられてきた。ウラン燃料を軽水炉で燃焼させた使用済燃料(使用済ウラン燃料)の場合には、放出される自発中性子を測定して使用済ウラン燃料の燃焼度を評価する非破壊燃焼度評価方法が知られている。
【0003】
使用済ウラン燃料での主な中性子放出核種はキュリウム244(Cm244)である。ウラン燃料でのCm244はウラン238(U238)の6回の中性子吸収捕獲反応により生成され、照射済ウラン燃料ではCm244の生成量は燃焼度の約4乗に比例する。軽水炉ウラン燃料では、その燃焼特性を利用して中性子束を測定して燃焼度を非破壊的に評価することができるようになっている。
【0004】
また、使用済ウラン燃料の燃焼度を、使用済燃料中に蓄積した核分裂生成物(FP)が放出するガンマ線を測定して評価する非破壊燃焼度評価方法が知られている。FPのうちセシウム137(Cs137)は、半減期が約30年と比較的長く、ウラン235(U235)とプルトニウム239(Pu239)の核分裂収率が比較的近い値であり、その生成量が燃焼度とほぼ比例する。このため、Cs137が放出するエネルギーが662keVのガンマ線をガンマ線スペクトル測定検出器で測定し、Cs137のガンマ線強度から燃焼度を評価する使用済ウラン燃料の燃焼度評価方法が知られている。
【0005】
また、FPのうちセシウム134(Cs134)は、核分裂で生成したセシウム133(Cs133)がさらに中性子吸収捕獲して生成するので、核分裂を含めて中性子と2回相互作用するため、燃焼度のほぼ2乗に比例して生成する。同様に、ユーロピウム154(Eu154)は、核分裂で生成したユーロピウム153(Eu153)がさらに中性子吸収捕獲して生成するので燃焼度のほぼ2乗に比例して生成する。Cs134は796keVなどいくつかのエネルギーのガンマ線を放出する。またEu154は、1274keVなどいくつかのエネルギーのガンマ線を放出する。Cs134のガンマ線強度とCs137のガンマ線強度との比(C4/C7)、あるいはEu154のガンマ線強度とCs137のガンマ線強度との比(E4/C7)から燃焼度を評価する非破壊燃焼度評価方法が知られている。
【0006】
ただし、C4/C7やE4/C7と燃焼度との相関関係は、ウラン燃料の初期の濃縮度などに依存するので、予め計算に基づいて相関関係の初期濃縮度等パラメータの依存性を把握しておく必要がある。
【0007】
以上のように、使用済ウラン燃料の中性子測定によって行う非破壊燃焼度評価方法やガンマ線スペクトル測定によって行う非破壊燃焼度評価方法が知られているが、これらの複数の評価手法があることは、核燃料取り扱い施設の臨界安全管理に燃焼度クレジットを取り入れる際に有用である。燃焼度クレジットとは、原子炉燃料の内蔵する核分裂性物質が燃焼によって減少することによって、取り扱い体系の反応度が低下する効果を、核燃料取り扱い施設の臨界安全管理に考慮することである。燃焼度クレジットを取り入れない場合では、使用済燃料も未燃焼と同等の核分裂性物質量を元に臨界安全設計を行う。これに対し、燃焼度クレジットを取り入れた場合には、燃焼によって減少した核分裂性物質量を元に臨界安全設計を行うので、同等の設備において核燃料の取り扱い量を増加させることができ、経済的な効果が大きい。
【0008】
しかしながら、臨界安全管理に関するため、燃焼度クレジットを取り入れる場合には、核分裂性物質量の減少を確認する目的で、使用済燃料の燃焼度を測定によって確認することが望まれる。このとき、測定による確認をより確実に行うために、複数の測定原理に基づく燃焼度評価方法を取り入れることはさらに望ましいことである。
【0009】
上述のように、使用済ウラン燃料の場合には、照射された原子炉燃料のガンマ線スペクトルを測定する非破壊燃焼度評価方法と自発中性子を測定する非破壊燃焼度評価方法とが知られ、燃焼度クレジットを取り入れた臨界安全管理に供することができる。
【0010】
ところで、使用済燃料の再処理によってプルトニウム(Pu)が大量に抽出される点に着目し、ウラン資源の有効利用を図る観点から、Puを富化したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の軽水炉での再利用が開始されている。
【0011】
MOX燃料を軽水炉で燃焼させた場合、ウラン燃料と異なり、使用済MOX燃料からの自発中性子は、燃焼度などの燃焼度特性との関係が複雑である。
【0012】
MOX燃料などのPuを富化した酸化物の使用済燃料(以下使用済燃料という)の場合にも、主な中性子放出核種がCm244であることは使用済ウラン燃料と同様である。しかし、Puが多くの核種で構成されているため、Cm244の生成に関する燃焼特性は複雑である。Pu239からPu242までのPuの各種同位体は複数回の中性子吸収捕獲することによりCm244の生成に寄与し、それぞれの同位体でCm244を生成するまでの中性子吸収捕獲の回数が異なる。
【0013】
Puの初期の富化度εと初期のPuに占めるプルトニウム239(Pu239)とプルトニウム241(Pu241)からなる核分裂性Puの組成割合fとが、Cm244の燃焼特性を評価するために有用なパラメータであるとして、εとfとをパラメータとした自発中性子測定法による燃焼度の評価方法が知られている。特にPu同位体のうち最小回の中性子吸収捕獲でCm244を生成するPu242に着目し、Pu242に起因して生成するCm244量をPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fとの関数として取り扱うことによって、測定した中性子放出率を補正する方法がある。
【0014】
また、MOX燃料などの初期にPuを含有する使用済燃料のガンマ線のうちCs137の生成特性とCs134やEu154の生成特性は異なっている。Cs137の燃焼に伴う生成特性は、使用済ウラン燃料の場合と同様に燃焼度とほぼ比例する。一方、Cs134やEu154の生成特性は、使用済ウラン燃料で初期濃縮度等の依存性を有するのと同様、MOX燃料の場合には初期のPu富化度εや初期のPu組成の依存性があるため、使用済ウラン燃料の場合よりも複雑となる。
【0015】
しかしながら、少なくともCs137のガンマ線を測定することにより、ガンマ線スペクトルを測定して初期にPuを含む原子炉燃料の燃焼度を評価することはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3651716号公報
【特許文献2】特許第3628111号公報
【特許文献3】特許第1741226号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Journal of Nuclear Science and Technology. vol.30, p.48 (1993),"Basic Studies on Neutron Emission-Rate Method for Burnup Measurement of Spent Light-Water-Reactor Fuel Bundle”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
MOX燃料などの初期にプルトニウムを含む使用済燃料の取り扱い施設の臨界安全管理に燃焼度クレジットを取り入れるとき、使用済燃料の燃焼度を複数の非破壊測定により評価することが望ましい。また、使用済ウラン燃料の場合と同様にガンマ線スペクトル測定と中性子測定などの複数の測定によって評価することが望ましい。
【0019】
中性子測定によって使用済燃料の燃焼度を評価するには、Cm244の生成に関する特性を把握する必要がある。Puを初期成分として含む原子炉燃料では、大きく2つのCm244の生成ルートが考えられる。ひとつは、Pu241が約14年の半減期でβ崩壊して生成したアメリシウム241(Am241)がさらに3回の中性子吸収捕獲を行う生成ルートである。あとひとつは、プルトニウム242(Pu242)が2回の中性子吸収捕獲し、アメリシウム243(Am243)を介してCm244となるルートである。
【0020】
MOX燃料の場合には、初期にPu、特にPu242を含む。このため、Am243を介するルートによってCm244が生成される。このため、MOX燃料においてCm244の燃焼特性を評価するときに、富化度εと核分裂性Pu組成割合fのみを利用し、計算に基づいたPu242に起因するCm244生成量の割合を補正する間接的な方法では、測定精度が不十分である可能性がある。
【0021】
また、富化度εおよび核分裂性Pu組成割合fの燃料情報を知る必要があるので、これらの情報が間違っている場合には、燃焼度の測定精度が不十分となる可能性がある。さらに、これらの情報が無い場合には燃焼度評価ができない。
【0022】
そこで、本発明は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を中性子測定によって非破壊で評価する際に、評価精度を高めること、また、燃料の初期組成の仕様に関する情報を測定によって確認して評価精度を高めること、さらに、燃料の初期組成の仕様に関する情報が無い場合でも燃焼度を評価できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法の他の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、を有し、前記評価部は、前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、前記原子炉燃料の中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置の他の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、を有し、前記評価部は、前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、前記原子炉燃料の中性子束Φとユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で測定する際に、中性子測定による燃焼度の評価精度を高めることができ、また、燃料の初期組成の仕様に関する情報が無い場合でも、ガンマ線スペクトル法と自発中性子放出率測定法の複数の測定法によって燃焼度評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態のフロー図である。
【図2】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態に用いる非破壊燃焼度評価装置を評価対象原子炉燃料とともに示すブロック図である。
【図3】原子炉燃料における主なアクチニド核種の生成過程を示す図である。
【図4】原子炉燃料の中性子放出率の燃焼変化の例を示すグラフである。
【図5】原子炉燃料の中性子放出率の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図6】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数αと(P2/f2)の関係の例を示すグラフである。
【図7】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数βと(P2/f2)の関係の例を示すグラフである。
【図8】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数α0と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図9】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数α1と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図10】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数β0と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図11】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数β1と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図12】原子炉燃料のCs137濃度の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図13】原子炉燃料のCs134濃度とCs137濃度との比の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図14】原子炉燃料のプルトニウム富化度とCs134濃度とCs137濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図15】原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合とCs134濃度とCs137濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図16】原子炉燃料の中性子放出率とCs134濃度との比の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図17】原子炉燃料の中性子放出率とEu154濃度との比の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図18】原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合と中性子放出率とCs134濃度との比および中性子放出率とEu154濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図19】原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合と中性子放出率とCs134濃度との比および中性子放出率とEu154濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図20】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第2の実施の形態における中性子測定により燃焼度を算出するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の校正には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明はこれらの各実施の形態には限定されない。
【0030】
[第1の実施の形態]
図2は、本発明に係る原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法の一実施の形態に用いる非破壊燃焼度評価装置を測定対象の原子炉燃料とともに示すブロック図である。
【0031】
この非破壊燃焼度評価装置20は、原子炉燃料10の燃焼度を非破壊で評価する。原子炉燃料10は、原子炉で照射された後、原子炉から取り出されて一定期間置かれる。その後測定体系に設置される。
【0032】
測定対象の原子炉燃料10は、たとえば複数の燃料棒12を互いに並行に配列して正方格子状に束ねたものである。燃料棒12の両端は、タイプレート16で支持されている。また、両端部のタイプレート16の間の複数の位置には、燃料棒12の軸に垂直な面内での移動を制限するスペーサ18が設けられている。燃料棒12は、たとえば核燃料物質を焼き固めたペレットをジルコニウム合金製の被覆管に収めて両端を封じたものである。燃料棒12が配列された正方格子の一部には、内部に水が流れる水管が配置されてもよい。
【0033】
非破壊燃焼度測定装置20は、中性子検出器22と、ガンマ線スペクトル検出器23とデータ処理器26とを有している。中性子検出器22は、検出器が測定対象の原子炉燃料10の側面に向かうように配置されて、原子炉燃料10の自発中性子を検出器する。中性子検出器22は、測定した中性子の計数をデータ処理器26に伝達する。
【0034】
ガンマ線スペクトル検出器23は、検出器が測定対象の原子炉燃料10の側面に向かうように配置されて、原子炉燃料10の自発ガンマ線を検出器するが、ガンマ線スペクトル検出器23と原子炉燃料10との間には、原子炉燃料10においてガンマ線測定を行う部位を限定するために、ガンマ線をコリメートするコリメータ25を置いてもよい。ガンマ線スペクトル検出器23は、測定したガンマ線スペクトルデータをデータ処理器26に伝達する。
【0035】
データ処理器26は、評価部31と、記憶部34と、制御部35とを有している。中性子検出器22から伝達された中性子の計数は、記憶部34に記憶される。また、ガンマ線スペクトル検出器23から伝達されたガンマ線スペクトルのデータも、記憶部34に記憶される。評価部31は、評価対象の原子炉燃料10の燃焼度を評価する。制御部35は評価部31を制御する。データ処理器26は、たとえば1台のコンピュータ上に構築される。
【0036】
原子炉燃料10が原子炉で照射された後、原子炉から取り出されて一定期間置かれた後、測定体系位置に設置されて燃焼度を評価するための測定を行う。原子力発電所や再処理施設において照射済みの原子炉燃料10は放射線遮蔽のために水中で貯蔵され、扱われる。このため、燃焼度評価のための測定は通常、水中において行われる。また、評価された燃焼度を1体の原子炉燃料10と対応させるためには、1体ごとに原子炉燃料10の測定が行われる。
【0037】
中性子測定は中性子検出器22を原子炉燃料10の側面近傍に設置して行われる。測定された中性子信号や中性子計数率は中性子束に比例し、中性子検出器の検出感度によって中性子束と関係付けられる。すなわち中性子測定とは中性子信号あるいは中性子計数率から燃料集合体近傍の中性子束を測定することである。
【0038】
図3は原子炉燃料における主なアクチニド核種の生成過程を示す図である。図3には、ウランおよびPuに起因するアクチニドの生成過程の主なものが示されている。
【0039】
使用済ウラン燃料での主な中性子放出核種はキュリウム244(Cm244)である。図3のアクチニド生成過程に示すように、ウラン燃料でのCm244はウラン238(U238)の6回の中性子捕獲反応(図3中に右矢印「→」(n、γ)で示す)により生成され、照射済みウラン燃料ではCm244の生成量は燃焼度の約4乗に比例する。
【0040】
一方、MOX燃料などのPuを富化した酸化物の使用済燃料の場合にも、主な中性子放出核種がCm244であることは同様である。しかし、Puが多くの核種で構成されているため、Cm244の生成に関する燃焼特性は複雑である。図3に示すように、Pu239からPu242までのPuの各種同位体は複数回の中性子吸収捕獲することによりCm244の生成に寄与し、それぞれの同位体でCm244を生成するまでの中性子吸収捕獲の回数が異なる。この図3を吟味し計算に基づく検討を行った。その結果Cm244の生成過程には大きく2つのルートがあることがわかった。
【0041】
一方は、Pu241が約14年の半減期でβ崩壊して生成したAm241がさらに3回の中性子吸収捕獲を行う生成ルートである。他方は、Pu242が2回の中性子吸収捕獲し、Am243を介してCm244となるルートである。そして、初期にPu、特にPu242を含む原子炉燃料でCm244が生成されるルートは、ほとんどがAm243を介するルートであることがわかった。これらのことから、Puを初期に含む原子炉燃料の中性子放出率Sは初期Pu中に占めるPu242組成割合P2に強く依存していることがわかる。
【0042】
図4は、原子炉燃料の中性子放出率の燃焼変化の例を示すグラフである。図4に示された中性子放出率は、Puを初期成分として含むMOX燃料とPuを初期成分として含まないUO2燃料とについて、それぞれ冷却期間5年とした場合の計算例である。
【0043】
図4から、MOX燃料の中性子放出量は、UO2燃料に比べて多く、燃焼度の概ね2乗に比例して増加することが分る。UO2燃料では初期にPuを含まないため、上述の2つのCm244生成ルートはともにCm244の生成に寄与していると考えられ、また生成量もMOX燃料に比べると少ない。
【0044】
しかし、MOX燃料の場合には、初期にPu、特にPu242を含むためCm244の生成はほとんどがAm243を介するルートによっており、Cm244生成量が多くなっていることが計算に基づく検討によって明らかになった。このことは、MOX燃料においてCm244の燃焼特性を評価するときに、Pu242の量を直接のパラメータとして評価したほうが測定精度を向上することができることを意味している。
【0045】
Pu242からCm244になるには2回の中性子吸収捕獲を経る。このため、Cm244の生成量は初期Pu中に占めるPu242の組成割合P2と原子炉の中性子束φの2乗の積にほぼ比例すると考えられる。一方、燃焼度BUは核分裂数の累積によるものであるから、初期Pu中に占める核分裂性Pu(Pu239とPu241の和)の組成割合fとφの積にほぼ比例するものと考えられる。ここで、中性子放出率SがほぼCm244の生成量で決まるものと仮定すると、これらの関係の概略式は、
S∝P2・φ2 (式1)
BU∝f・φ (式2)
となる。
【0046】
(式1)を(式2)の2乗で除すことによってφを消去すると、
S∝(P2/f2)・BU2 (式3)
なる関係が得られる。
【0047】
従来のウラン燃料における自発中性子放出率法における燃焼度評価方法では、
S=α・BUβ (式4)
なる関係式に基づいて行われる。あるいは、この式を踏襲した使用済ウラン燃料の燃焼度評価方法が知られている。しかし、この式を踏襲した従来の評価方法において、係数αおよび係数βは、初期Pu富化度εと初期核分裂性Pu組成割合fのみを考慮していたが、P2を直接のパラメータとしていなかった。
【0048】
そこで、(式3)と(式4)の類似性を基に検討すると、係数αは(P2/f2)なるパラメータに比例すると考えられる。また、係数βは、概ね2に近い値であると考えられる。これらのことより、(式4)を基にして、それぞれの係数を(P2/f2)をパラメータとして扱うことがCm244生成の燃焼特性を扱うときに有効であることがわかる。
【0049】
図5は、原子炉燃料の中性子放出率の燃焼度変化をプルトニウム富化度εおよびPu組成割合fをパラメータとして計算した結果を示すグラフである。この図は、初期にPuを含む原子炉燃料の冷却期間5年のときの中性子放出率と燃焼度との関係を、初期Pu富化度εとPuの各同位体の組成割合fを変えた複数種類の場合について計算した例である。
【0050】
図6は、本実施の形態における係数αと(P2/f2)との関係の例を示すグラフである。図6では、初期プルトニウム富化度εをパラメータとして、εが、2.5%、3.5%、4.5%、5.5%、6.5%の場合についての各曲線を示している。
【0051】
図7は、本実施の形態における係数βと(P2/f2)との関係の例を示すグラフである。図7では、図6と同様に、εが、2.5%、3.5%、4.5%、5.5%、6.5%の場合についての各曲線を示している。
【0052】
図5に示すように、縦軸および横軸をともに対数目盛としてグラフ化したとき、ほぼ直線となるので、(式4)の関係となっていることがわかる。これらの各直線について(式4)の関数形で近似式を求め、算出された係数αを(P2/f2)を横軸にプロットしたものが図6であり、係数βを(P2/f2)を横軸にプロットしたものが図7である。図7の横軸は対数目盛である。係数αは、前述のごとく(P2/f2)にほぼ比例している。また、係数βは2よりは小さいが、(P2/f2)が小さいときには概ね2で、(P2/f2)の対数とともに直線的に減少していくことがわかった。
【0053】
このように、係数αは(P2/f2)の1次関数で、係数βは(P2/f2)の対数の1次関数でよく表現できるが、富化度εによっても変化する。そこで、係数αを
α=α1・(P2/f2)+α0 (式5)
なる(P2/f2)の1次式で表す。また、係数βを
β=β1・ln(P2/f2)+β0 (式6)
なるln(P2/f2)の1次式で表す。このとき、それぞれの係数α0、α1、β0、β1をεの関数として扱う。
【0054】
図8は、本実施の形態における係数α0と富化度εとの関係の例を示すグラフである。図9は、本実施の形態における係数α1と富化度εとの関係の例を示すグラフである。図10は、本実施の形態における係数β0と富化度εとの関係の例を示すグラフである。図11は、本実施の形態における係数β1と富化度εとの関係の例を示すグラフである。
【0055】
係数α0、α1、β0、β1の関数形は、これらの係数の富化度εの依存性に応じて決めることができる。たとえば、図8は、α0をεの1次式で表した例、図9はα1をεの3次式で表した例、図10はβ0をεの2次式で表した例、また、図11はβ1をεの2次式で表した例である。
【0056】
このように、初期にPuを含む原子炉燃料の燃焼度BUと中性子放出率の関係は、パラメータ(P2/f2)を用いて精度良く評価できる。
【0057】
以上は、(式3)と(式4)とからパラメータ(P2/f2)に着目した評価である。
【0058】
一方、プルトニウム富化度εをプルトニウム組成fやP2に掛けて、次の(式7)や(式8)のように表すこともできる。
【0059】
S∝ε・P2・φ2 (式7)
BU∝ε・f・φ (式8)
(式7)を(式8)の2乗で除すことによってφを消去すると、
S∝(P2/ε/f2)・BU2 (式9)
なる関係が得られる。(式9)から、パラメータ(P2/ε/f2)を用いて燃焼度を評価することもできる。
【0060】
一方、ガンマ線スペクトル測定では、照射された原子炉燃料10に蓄積されたFPが放出するガンマ線をガンマ線スペクトル検出器で測定し、測定データをピーク解析することによって、特定のエネルギーのガンマ線強度を求め、FP核種ごとのガンマ線エネルギーに応じたガンマ線強度を得る。ひとつのFP核種につき放出されるガンマ線エネルギーは複数の場合もある。
【0061】
FP核種のうちCs137は、初期にPuを含むMOX燃料などの場合にも、使用済ウラン燃料の場合と同様に、燃焼度とほぼ比例して増加する。図12は、Cs137の濃度の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えて計算した結果のグラフである。図12は、εとfの組み合わせが、(2.5wt%、71%)、(4.5wt%、80%)、(4.5wt%、71%)、(4.5wt%、59%)、(6.5wt%、71%)の5通りのデータをプロットしたものである。しかし、これら5とおりのデータは区別できない程度に重なっている。図12のように、原子炉燃料に蓄積するCs137の濃度はεやfが変わってもほとんど変化せず、また、燃焼度とよく比例して増加する。
【0062】
このため、ガンマ線スペクトル測定で測定されたCs137ガンマ線強度から燃焼度BUGを精度良く評価することができる。Cs137の放出する662keVのガンマ線の強度をCs137のガンマ線強度とすることができる。
【0063】
図13は、FP核種のうちCs134濃度とCs137の濃度との比の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えた計算結果のグラフである。Cs134濃度とCs137濃度との比は、燃焼度に対して、若干上に凸の曲線で増加するが、初期Pu富化度εや核分裂性Pu組成割合fの依存性がある。特にεの依存性が大きい。εやfをもとにして、Cs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比の測定値から燃焼度を評価することもできる。
【0064】
一方、Cs134濃度とCs137濃度との比の燃焼度変化の特性が初期の燃料組成、特にPu富化度εに対して大きな依存性を持つことを利用して、ガンマ線スペクトル測定で得られるCs134ガンマ線強度(C4)とCs137ガンマ線強度(C7)との比(C4/C7)およびCs137ガンマ線強度(C7)から評価された燃焼度BUGを元にεGを求めることができる。
【0065】
図14は、初期核分裂性Pu組成割合fが71%で、燃焼度30GWd/t場合のCs134濃度とCs137濃度との比について、Pu富化度εを変化させた計算結果のグラフである。εが増加するにつれてこの比は減少していく。
【0066】
また、図15は、初期Pu富化度εが4.5wt%で、燃焼度30GWd/t場合のCs134濃度とCs137濃度との比について、核分裂性Pu組成割合fを変化させた計算結果のグラフである。fが増加するにつれてこの比は減少していくが、εに対する変化に比べてfに対する依存性は小さい。
【0067】
これらの関係を利用して、ガンマ線スペクトル測定で得られるCs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比(C4/C7)と、Cs137のガンマ線強度(C7)から評価された燃焼度BUGとを元にεMを求めることができる。そして、中性子測定で得られる中性子束Φから燃焼度BUNを評価するときに用いるεを求めることができる。また、燃料の製造情報に基づいてPu富化度εが得られる場合は、測定によって得られた値によりこれを確認することができる。
【0068】
次に、ガンマ線スペクトル測定で得られるガンマ線強度と中性子測定で得られる中性子束Φとを関係づけた測定値について検討した。
【0069】
上述したように、FP核種のうちCs134やEu154は、燃焼度のほぼ2乗に比例して生成、蓄積していく。また、MOX燃料など初期にPuを含む燃料では、中性子を主に放出するCm244は燃焼度のほぼ2乗に比例して生成、蓄積する。このことから、Cs134のガンマ線強度(C4)やEu154のガンマ線強度(E4)と中性子束Φとの比は、燃焼度に対する変化が小さいことが考えられる。
【0070】
図16は、中性子放出率とCs134濃度との比の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えて計算した結果のグラフである。また、図17は、中性子放出率とEu154濃度との比の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えて計算した結果のグラフである。
【0071】
図16および図17のように、中性子放出率とCs134濃度の比や中性子放出率とEu154濃度の比は、燃焼度がある程度高い場合には、燃焼度による変化が小さい。また、核分裂性Pu組成割合fが比較的高い場合にはPu富化度εに対する依存性も小さい。ところが核分裂性Pu組成割合fやPu242組成割合P2に対しては依存性が大きい。fとP2は独立のパラメータではなく、Pu全体に対するそれぞれの部分の割合であるから、fが大きいときP2は相対的に小さい。
【0072】
図18は、初期プルトニウム富化度εが4.5wt%で、燃焼度30GWd/t場合の中性子放出率とCs134濃度の比および中性子放出率とEu154濃度の比について、核分裂性Pu組成割合fを変化させた計算結果のグラフである。fが増加するにつれてこれらの比は減少していく。
【0073】
図19は、初期プルトニウム富化度εが4.5wt%で、燃焼度30GWd/t場合の中性子放出率とCs134濃度の比および中性子放出率とEu154濃度の比について、Pu242組成割合P2を変化させた計算結果のグラフである。P2が増加するにつれてこれらの比は比例的に増加していく。
【0074】
これらの関係を利用して、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134のガンマ線強度(C4)との比(Φ/C4)と前述したBUGおよびεMとから、核分裂性Pu組成割合fMとPu242組成割合P2Mを求めることができる。ここで、Pu富化度はεMでなく、燃料製造時の情報として提供されるεを用いてもかまわない。
【0075】
上記核分裂性Pu組成割合fMとPu242組成割合P2Mを求めるに当たり、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134のガンマ線強度(C4)との比(Φ/C4)の代わりに、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるEu154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)を用いることもできる。
【0076】
このように、中性子測定で得られる中性子束Φから燃焼度BUNを評価するときに用いるfおよびP2を求めることができる。また、燃料の製造情報に基づいてPu富化度εおよびPu242組成割合P2が得られる場合は、測定によって得られた値によりこれらを確認することができる。Cs134は多数のエネルギーのガンマ線を放出するが、796keVあるいは605keVのガンマ線が測定に適している。少なくともひとつのエネルギーのガンマ線の強度をCs134のガンマ線強度(C4)とする。他のエネルギーのガンマ線であってもかまわない。
【0077】
Eu154も多数のエネルギーのガンマ線を放出するが、1274keVのガンマ線が測定に適している。少なくともひとつのエネルギーのガンマ線の強度をEu154のガンマ線強度(E4)とする。他のエネルギーのガンマ線であってもかまわない。
【0078】
図1は、本実施の形態の非破壊燃焼度評価のフロー図である。
【0079】
本実施の形態の非破壊燃焼度評価方法では、上述の関係を利用して、ガンマ線スペクトル測定法によってCs137のガンマ線強度(C7)の測定値から燃焼度BUGを評価し、また、自発中性子放出率法によって中性子束Φの測定値から燃焼度BUNを評価する。このとき、自発中性子測定法でΦからBUNを評価する際に用いる初期プルトニウム富化度εを、ガンマ線スペクトル測定法によるCs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比(C4/C7)を元に求め、初期プルトニウム中に占める核分裂性Puの組成割合fと、初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2とを、中性子束測定値ΦとCs134ガンマ線強度(C4)との比(Φ/C4)または、ΦとEu154ガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)を元に求める。ここで、燃料の製造情報に基づいて初期プルトニウム富化度ε、初期プルトニウム中に占める核分裂性Puの組成割合fおよび初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2が得られる場合は、測定によって得られた値によりこれらを確認することができる。
【0080】
まず、測定体系に評価対象の原子炉燃料10を設置して、その原子炉燃料10の自発中性子を検出し、中性子束Φを測定する(中性子束測定工程S11)。測定された中性子束Φは、記憶部34に記憶される。また、ガンマ線スペクトル検出器により原子炉燃料10の自発ガンマ線を検出器してガンマ線スペクトルを測定する(ガンマ線スペクトル測定工程S11)。測定されたガンマ線スペクトルは記憶部34に記憶される。
【0081】
ガンマ線スペクトル測定で得られるCs137ガンマ線強度(C7)を元に、燃焼度BUGを求める(第1燃焼度算出工程S12)。C7とBUGとは比例関係にあるので、比例定数を計算あるいは測定によって予め決定する。あるいは、燃焼度のわかった同一形式の原子炉燃料を予め測定することによって決定してもよい。C7に比例定数を掛けることによって燃焼度BUGが求められる。
【0082】
次に、BUGおよびガンマ線スペクトル測定で得られるCs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比(C4/C7)を元に、初期プルトニウムの富化度εMを求める(プルトニウム富化度算出工程S13)。与えられた燃焼度BUGのとき、図14のごとく、(C4/C7)はPu富化度εに対して直線的に減少する関係がある。予め計算によって、
(C4/C7)=Aε・ε+Bε (式10)
なる関係式を作成しておく。このとき係数Aεと係数Bεは燃焼度と核分裂Pu組成割合fとの関数である。fは、燃料製造時の情報を用いても良いが、図15に示すように、(C4/C7)のfによる依存性は小さいので、測定対象燃料の設計上の典型的な値を用いても実用上かまわない。さらに、次の工程で得られるfMをもって、本工程に立ち戻って再計算することもできる。
【0083】
BUGとfから係数AεおよびBεを求め、ガンマ線スペクトル測定で得られる(C4/C7)の測定値から(式10)によってPu富化度εMを算出する。
【0084】
次に、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134(C4)との比(Φ/C4)を元に、初期プルトニウム中に占める核分裂性Pu組成割合fMと、初期プルトニウム中に占めるPu242組成割合P2とを求める(Pu242組成割合算出工程S14)。
【0085】
上記説明で、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134(C4)との比(Φ/C4)の代わりに、中性子測定で得られる中性子束Φと中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるEu154(E4)との比(Φ/E4)を用いることもできる。
【0086】
与えられた燃焼度BUGとεMのとき、図18のごとく、(Φ/C4)あるいは(Φ/E4)は核分裂性Pu組成割合fに対して直線的に減少する関係がある。予め計算によって、
(Φ/C4)=Af・f+Bf (式11)
なる関係式を作成しておく。このとき係数Afと係数Bfは燃焼度とプルトニウム富化度εとの関数である。(Φ/E4)の場合も同様である。
【0087】
また、与えられた燃焼度BUGとεMのとき、図19のごとく、(Φ/C4)あるいは(Φ/E4)はPu242組成割合P2に対して比例的に増加する関係がある。予め計算によって、
(Φ/C4)=A2・P2 (式12)
なる関係式を作成しておく。このとき係数A2は燃焼度とプルトニウム富化度εとの関数である。(Φ/E4)の場合も同様である。
【0088】
BUGとεMから係数Af、BfおよびA2を求め、(Φ/C4)の測定値から(式11)からfMを、(式12)からP2Mを算出する。εMの代わりに燃料製造時情報として提供されるプルトニウム富化度εを用いてもよい。
【0089】
これまでの工程で、プルトニウム富化度εと核分裂性Pu組成割合fおよびPu242組成割合P2を測定値から算出し、これらの製造時情報が無い場合は次の工程で用いることができる。あるいは、製造時情報がある場合には、その情報が正しいことの確認に用いることもできる。
【0090】
次に、以下は、中性子測定法によって中性子束Φから燃焼度を算出する工程である。まず、係数αおよび係数βを決定する(計数算出工程S15)。係数αおよび係数βは、原子炉燃料10の初期プルトニウム富化度εと、原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fと、原子炉燃料10の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2との関数である。より具体的には、予め係数α0、α1、β0、β1の関数として決定し、これらの係数と、パラメータ(P2/f2)を用いて、(式5)および(式6)から係数α、βを求める。
【0091】
係数αおよび係数βの算出は、評価部31が行う。算出された係数αおよび係数βは、記憶部34に記憶される。
【0092】
測定体系に設置された原子炉燃料10の中性子実効増倍率kを求める(中性子実効増倍率算出工程S16)。この実効中性子増倍率kは、評価部31が計算によって決定する。あるいは、測定対象である原子炉燃料10とは別の同じ形式の原子炉燃料を別途測定しておくことにより決めることもできる。
【0093】
比例係数をP、中性子放出率をSとすると、中性子束Φと中性子放出率Sとは次の関係で表される。
【0094】
Φ=S・P/(1−k) (式13)
そこで、(式13)の関係から、工程S11で測定された中性子束Φと、工程S16で決定されたkとを用いて中性子放出率Sを求める(中性子放出率算出工程S17)。比例係数Pは、測定体系を構成する燃料集合体、燃料棒、燃料ペレットの寸法や材質、密度の情報に基づいて計算により予め決めることができる。これらの情報は、予め記憶部34に記憶させておく。中性子放出率Sの計算は、評価部31が行う。
【0095】
次に、工程S3で求めた中性子放出率Sから(式4)の関係を用いて燃焼度BUNが求められる(第2燃焼度算出工程S18)。(式4)は変形すると、
BUN=exp{(ln(S)−ln(α))/β} (式14)
となる。燃焼度の算出は、評価部31が行う。
【0096】
以上により、中性子束Φの測定値から燃焼度BUNが評価される。
【0097】
このように、本実施の形態では、ガンマ線スペクトル測定値と中性子測定値とから、燃料製造時の燃料組成情報ε、fおよびP2を算出する。また、中性子束Φの測定値から燃焼度BUNを評価する際に用いる係数αおよび係数βを、パラメータ(P2/f2)を用いて表現している。つまり、初期Pu中のPu242組成割合を燃焼度の評価パラメータとして考慮している。このため、本実施の形態によれば、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する際に、燃料製造時の燃料組成情報が無い場合の測定を可能とするか、情報を確認した上で、評価精度を高めることができる。
【0098】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、中性子実効増倍率kを計算あるいは測定で決めたが、個々の原子炉燃料10を測定するときには、その燃焼度に応じて測定体系の中性子実効増倍率が変化する。測定体系は水中に置かれた燃料集合体1体の体系が通常である。
【0099】
この体系の中性子実効増倍率は、燃料集合体の形状と燃料内に残存する核分裂性物質量および燃料内に蓄積した核分裂生成物を含む中性子吸収物質の量で決まる。核分裂性物質および中性子吸収物質の量は、初期の燃料に含まれる核分裂性物質を含めた燃料を構成する物質の条件を元に、燃焼度に応じた変化を計算することができる。
【0100】
燃焼度が高くなると、核分裂性物質量は減少し、中性子吸収物質量は増加する。これらの物質量をもとに測定体系の中性子実効増倍率を計算することによって、燃焼度と中性子実効増倍率との関係式を予め求めておく。一般に中性子実効増倍率は燃焼度に応じてほぼ直線的に減少していく。そこで前記関係式は、燃焼度の1次式として求めておくことで目的を達成することができるが、他の関数形を用いて精度向上を図ることもできる。
【0101】
中性子放出率SはCm244の生成量によっているが、測定燃料が原子炉から取り出されて測定に供するまでの冷却期間が短いときには、キュリウム242(Cm242)が放出する中性子の影響を補正する必要がある。Cm242は半減期約160日で減衰するので、冷却期間が3年以上の場合には中性子束測定値に影響を及ぼさない。しかし、冷却期間が短い場合には測定された中性子束SにはCm242の放出する中性子の成分が含まれている。また、Cm244も半減期約18年で減衰する。
【0102】
前述の中性子放出率Sと燃焼度との関係は、Cm244を主な放出源とする中性子放出率をもとに評価する。たとえば、図5に示したように冷却期間5年での計算値をもとに作成した関係式は実用的である。このとき、冷却期間に応じて中性子放出率測定値を補正することによって測定精度を向上させることができる。
【0103】
冷却期間を変えて中性子放出率を計算し、前記関係式が基づく冷却期間における中性子放出率との比を、冷却期間に応じた補正係数を減衰補正係数Tcとすることができる。
【0104】
さらに、沸騰水型原子炉においては炉心の高さ位置によって冷却水中の気泡(ボイド)濃度が異なる。これはボイド率分布と呼ばれ、炉心上部でボイド率が高くなるほど水素による中性子減速能力が低下して熱中性子割合が低くなる。このため、炉心上部でボイド率が高くなるほど熱外領域の共鳴捕獲によるCm244の生成量が多くなる。
【0105】
燃料集合体の測定高さ位置によってボイド率が異なるため、同じ燃焼度であっても中性子放出率が異なる。この影響についても、相関式は燃料集合体高さ位置のほぼ中央部分のボイド率約40%の条件での計算結果に基づいて作成し、測定が燃料集合体高さ位置の中央部からずれる場合については測定高さ位置に応じた補正を行うことで測定精度を向上させることができる。
【0106】
燃料集合体の底部ではボイド率0%、中央部で約40%、上部で約70%と、高さ位置に応じてボイド率は緩やかに変化することが知られている。ボイド率に応じたCm244の生成量あるいは中性子放出率を計算し、関係式の元としたCm244量あるいは中性子放出率との比率をボイド補正係数Vとすることができる。
【0107】
図20は、本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第2の実施の形態の中性子測定によって燃焼度BUNを求めるフロー図である。
【0108】
本実施の形態では、第1の実施の形態と、冷却期間および中性子測定位置のボイド率に応じた補正を行う点、および中性子実効増倍率が収束するまで繰り返し計算を行う点で異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態の非破壊燃焼度評価装置20とほぼ同じ装置を用いる。ただし、評価部31の機能が部分的に追加されている。
【0109】
本実施の形態でも、まず、各種係数を求める(S21)。本実施の形態では、係数αおよびβに加えて、上述の減衰補正係数Tcとボイド補正係数Vを算出する。減衰補正係数Tcおよびボイド補正係数Vの算出は評価部31が行う。
【0110】
また、第1の実施の形態と同様に、測定体系に評価対象の原子燃料10を設置して、その原始燃料10の自発中性子を測定し、中性子束Φを測定する(中性子束測定工程S22)。測定された中性子束Φは、記憶部34に記憶される。
【0111】
次に中性子実効増倍率kを導出する(中性子実効増倍率算出工程S23)。中性子束実効増倍率kの導出は、第1の実施の形態と同様の方法で行ってもよいが、本実施の形態では、中性子実効増倍率kについての収束計算を行うため、最初のステップでの中性子実効増倍率kとしては、たとえば0.5程度の暫定初期値を与えてもよい。この中性子実効増倍率kの導出は、評価部31が行う。
【0112】
この中性子実効増倍率kを用いて、減衰補正係数Tcとボイド補正係数VをΦに掛けて補正し、中性子放出率Sを次式により算出する(中性子放出率算出工程S24)。
【0113】
S=Φ・Tc・V・(1−k)/P (式15)
中性子放出率Sの計算は、評価部31が行う。
【0114】
次に、求められた中性子放出率Sから燃焼度を求める(燃焼度算出工程S25)。燃焼度BUの算出は、評価部31が行う。このとき、燃焼度BUは、(式4)あるいは(式14)によって求め、係数αは(式5)、係数βは(式6)のように、それぞれ(P2/f2)の関数である。
【0115】
求めた燃焼度BUから第2ステップの中性子実効増倍率を再評価する(中性子実効増倍率再評価工程S26)。中性子実効増倍率kの再評価は、評価部31が行う。
【0116】
個々の原子炉燃料10を測定するときには、その燃焼度に応じて測定体系の中性子実効増倍率が変化する。この体系の実効増倍率は、燃料集合体の形状と燃料内に残存する核分裂性物質および燃料内に蓄積した核分裂生成物を含む中性子吸収物質の量で決まる。核分裂性物質および中性子吸収物質の量は、初期の燃料に含まれる核分裂性物質を含めた燃料を構成する物質の条件を元に、燃焼度に応じた変化を計算することができる。そこで、燃料集合体BUに応じた核分裂性物質および中性子吸収物質の量を算出し、これらの量に基づいて中性子実効増倍率の再評価値k1を求める。
【0117】
次に、この再評価値k1を中性子放出率Sの算出に用いた中性子実効増倍率kと比較する(比較工程S27)。この再評価値k1と中性子放出率算出工程S24で用いた中性子実効増倍率kとの差の絶対値(|k1−1|)が所定の判定値未満である場合には、中性子実効増倍率についての収束計算が終了し、そのときの燃焼度BUを最終評価値とする。
【0118】
一方、|k1−1|が所定の判定値以上である場合には、中性子放出率算出工程S24で用いる中性子実効増倍率kを再評価値k1に置き換える(中性子実効増倍率置換工程S28)。その後、中性子放出率算出工程S24、燃焼度算出工程S25、中性子実効増倍率再評価工程S26および比較工程S27を、中性子放出率算出工程S24で用いた中性子実効増倍率kとの差の絶対値(|k1−1|)が所定の判定値未満となるまで繰り返す。|k1−1|が所定の判定値未満であるかの判定および繰り返し計算の制御は、制御部35が行う。なお、図示を省略するが、繰り返し回数が所定制限回数を超えたら、繰返しをやめる。
【0119】
本実施の形態では、中性子束Sの測定値から燃焼度BUを評価する際に用いる係数αおよび係数βを、パラメータ(P2/f2)を用いて表現している。つまり、初期Pu中のPu242組成割合を燃焼度評価パラメータとして考慮している。このため、本実施の形態によれば、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する際に、評価精度を高めることができる。
【0120】
さらに、本実施の形態では、中性子放出率Sの算出に用いる中性子実効増倍率の評価精度が向上するため、燃焼度BUの評価精度が向上する。また、中性子束Φを、減衰補正係数Tcおよびボイド補正係数Vで補正して中性子放出率Sを算出しているため、原子炉から取り出されてからの冷却期間および中性子測定位置のボイド率に応じた補正がされており、燃焼度BUの評価精度が向上する。
【0121】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
10 原子炉燃料
12 燃料棒
16 タイプレート
18 スペーサ
20 非破壊燃焼度評価装置
22 中性子検出器
23 ガンマ線スペクトル検出器
25 コリメータ
26 データ処理器
31 評価部
34 記憶部
35 制御部
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子炉燃料の燃焼度を非破壊で評価する方法およびそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軽水炉燃料ではウラン酸化物(UO2)を用いたウラン燃料が用いられてきた。ウラン燃料を軽水炉で燃焼させた使用済燃料(使用済ウラン燃料)の場合には、放出される自発中性子を測定して使用済ウラン燃料の燃焼度を評価する非破壊燃焼度評価方法が知られている。
【0003】
使用済ウラン燃料での主な中性子放出核種はキュリウム244(Cm244)である。ウラン燃料でのCm244はウラン238(U238)の6回の中性子吸収捕獲反応により生成され、照射済ウラン燃料ではCm244の生成量は燃焼度の約4乗に比例する。軽水炉ウラン燃料では、その燃焼特性を利用して中性子束を測定して燃焼度を非破壊的に評価することができるようになっている。
【0004】
また、使用済ウラン燃料の燃焼度を、使用済燃料中に蓄積した核分裂生成物(FP)が放出するガンマ線を測定して評価する非破壊燃焼度評価方法が知られている。FPのうちセシウム137(Cs137)は、半減期が約30年と比較的長く、ウラン235(U235)とプルトニウム239(Pu239)の核分裂収率が比較的近い値であり、その生成量が燃焼度とほぼ比例する。このため、Cs137が放出するエネルギーが662keVのガンマ線をガンマ線スペクトル測定検出器で測定し、Cs137のガンマ線強度から燃焼度を評価する使用済ウラン燃料の燃焼度評価方法が知られている。
【0005】
また、FPのうちセシウム134(Cs134)は、核分裂で生成したセシウム133(Cs133)がさらに中性子吸収捕獲して生成するので、核分裂を含めて中性子と2回相互作用するため、燃焼度のほぼ2乗に比例して生成する。同様に、ユーロピウム154(Eu154)は、核分裂で生成したユーロピウム153(Eu153)がさらに中性子吸収捕獲して生成するので燃焼度のほぼ2乗に比例して生成する。Cs134は796keVなどいくつかのエネルギーのガンマ線を放出する。またEu154は、1274keVなどいくつかのエネルギーのガンマ線を放出する。Cs134のガンマ線強度とCs137のガンマ線強度との比(C4/C7)、あるいはEu154のガンマ線強度とCs137のガンマ線強度との比(E4/C7)から燃焼度を評価する非破壊燃焼度評価方法が知られている。
【0006】
ただし、C4/C7やE4/C7と燃焼度との相関関係は、ウラン燃料の初期の濃縮度などに依存するので、予め計算に基づいて相関関係の初期濃縮度等パラメータの依存性を把握しておく必要がある。
【0007】
以上のように、使用済ウラン燃料の中性子測定によって行う非破壊燃焼度評価方法やガンマ線スペクトル測定によって行う非破壊燃焼度評価方法が知られているが、これらの複数の評価手法があることは、核燃料取り扱い施設の臨界安全管理に燃焼度クレジットを取り入れる際に有用である。燃焼度クレジットとは、原子炉燃料の内蔵する核分裂性物質が燃焼によって減少することによって、取り扱い体系の反応度が低下する効果を、核燃料取り扱い施設の臨界安全管理に考慮することである。燃焼度クレジットを取り入れない場合では、使用済燃料も未燃焼と同等の核分裂性物質量を元に臨界安全設計を行う。これに対し、燃焼度クレジットを取り入れた場合には、燃焼によって減少した核分裂性物質量を元に臨界安全設計を行うので、同等の設備において核燃料の取り扱い量を増加させることができ、経済的な効果が大きい。
【0008】
しかしながら、臨界安全管理に関するため、燃焼度クレジットを取り入れる場合には、核分裂性物質量の減少を確認する目的で、使用済燃料の燃焼度を測定によって確認することが望まれる。このとき、測定による確認をより確実に行うために、複数の測定原理に基づく燃焼度評価方法を取り入れることはさらに望ましいことである。
【0009】
上述のように、使用済ウラン燃料の場合には、照射された原子炉燃料のガンマ線スペクトルを測定する非破壊燃焼度評価方法と自発中性子を測定する非破壊燃焼度評価方法とが知られ、燃焼度クレジットを取り入れた臨界安全管理に供することができる。
【0010】
ところで、使用済燃料の再処理によってプルトニウム(Pu)が大量に抽出される点に着目し、ウラン資源の有効利用を図る観点から、Puを富化したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の軽水炉での再利用が開始されている。
【0011】
MOX燃料を軽水炉で燃焼させた場合、ウラン燃料と異なり、使用済MOX燃料からの自発中性子は、燃焼度などの燃焼度特性との関係が複雑である。
【0012】
MOX燃料などのPuを富化した酸化物の使用済燃料(以下使用済燃料という)の場合にも、主な中性子放出核種がCm244であることは使用済ウラン燃料と同様である。しかし、Puが多くの核種で構成されているため、Cm244の生成に関する燃焼特性は複雑である。Pu239からPu242までのPuの各種同位体は複数回の中性子吸収捕獲することによりCm244の生成に寄与し、それぞれの同位体でCm244を生成するまでの中性子吸収捕獲の回数が異なる。
【0013】
Puの初期の富化度εと初期のPuに占めるプルトニウム239(Pu239)とプルトニウム241(Pu241)からなる核分裂性Puの組成割合fとが、Cm244の燃焼特性を評価するために有用なパラメータであるとして、εとfとをパラメータとした自発中性子測定法による燃焼度の評価方法が知られている。特にPu同位体のうち最小回の中性子吸収捕獲でCm244を生成するPu242に着目し、Pu242に起因して生成するCm244量をPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fとの関数として取り扱うことによって、測定した中性子放出率を補正する方法がある。
【0014】
また、MOX燃料などの初期にPuを含有する使用済燃料のガンマ線のうちCs137の生成特性とCs134やEu154の生成特性は異なっている。Cs137の燃焼に伴う生成特性は、使用済ウラン燃料の場合と同様に燃焼度とほぼ比例する。一方、Cs134やEu154の生成特性は、使用済ウラン燃料で初期濃縮度等の依存性を有するのと同様、MOX燃料の場合には初期のPu富化度εや初期のPu組成の依存性があるため、使用済ウラン燃料の場合よりも複雑となる。
【0015】
しかしながら、少なくともCs137のガンマ線を測定することにより、ガンマ線スペクトルを測定して初期にPuを含む原子炉燃料の燃焼度を評価することはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3651716号公報
【特許文献2】特許第3628111号公報
【特許文献3】特許第1741226号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Journal of Nuclear Science and Technology. vol.30, p.48 (1993),"Basic Studies on Neutron Emission-Rate Method for Burnup Measurement of Spent Light-Water-Reactor Fuel Bundle”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
MOX燃料などの初期にプルトニウムを含む使用済燃料の取り扱い施設の臨界安全管理に燃焼度クレジットを取り入れるとき、使用済燃料の燃焼度を複数の非破壊測定により評価することが望ましい。また、使用済ウラン燃料の場合と同様にガンマ線スペクトル測定と中性子測定などの複数の測定によって評価することが望ましい。
【0019】
中性子測定によって使用済燃料の燃焼度を評価するには、Cm244の生成に関する特性を把握する必要がある。Puを初期成分として含む原子炉燃料では、大きく2つのCm244の生成ルートが考えられる。ひとつは、Pu241が約14年の半減期でβ崩壊して生成したアメリシウム241(Am241)がさらに3回の中性子吸収捕獲を行う生成ルートである。あとひとつは、プルトニウム242(Pu242)が2回の中性子吸収捕獲し、アメリシウム243(Am243)を介してCm244となるルートである。
【0020】
MOX燃料の場合には、初期にPu、特にPu242を含む。このため、Am243を介するルートによってCm244が生成される。このため、MOX燃料においてCm244の燃焼特性を評価するときに、富化度εと核分裂性Pu組成割合fのみを利用し、計算に基づいたPu242に起因するCm244生成量の割合を補正する間接的な方法では、測定精度が不十分である可能性がある。
【0021】
また、富化度εおよび核分裂性Pu組成割合fの燃料情報を知る必要があるので、これらの情報が間違っている場合には、燃焼度の測定精度が不十分となる可能性がある。さらに、これらの情報が無い場合には燃焼度評価ができない。
【0022】
そこで、本発明は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を中性子測定によって非破壊で評価する際に、評価精度を高めること、また、燃料の初期組成の仕様に関する情報を測定によって確認して評価精度を高めること、さらに、燃料の初期組成の仕様に関する情報が無い場合でも燃焼度を評価できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法の他の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、を有し、前記評価部は、前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、前記原子炉燃料の中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置の他の一つの態様は、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、を有し、前記評価部は、前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、前記原子炉燃料の中性子束Φとユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で測定する際に、中性子測定による燃焼度の評価精度を高めることができ、また、燃料の初期組成の仕様に関する情報が無い場合でも、ガンマ線スペクトル法と自発中性子放出率測定法の複数の測定法によって燃焼度評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態のフロー図である。
【図2】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態に用いる非破壊燃焼度評価装置を評価対象原子炉燃料とともに示すブロック図である。
【図3】原子炉燃料における主なアクチニド核種の生成過程を示す図である。
【図4】原子炉燃料の中性子放出率の燃焼変化の例を示すグラフである。
【図5】原子炉燃料の中性子放出率の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図6】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数αと(P2/f2)の関係の例を示すグラフである。
【図7】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数βと(P2/f2)の関係の例を示すグラフである。
【図8】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数α0と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図9】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数α1と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図10】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数β0と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図11】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第1の実施の形態における係数β1と富化度εの関係の例を示すグラフである。
【図12】原子炉燃料のCs137濃度の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図13】原子炉燃料のCs134濃度とCs137濃度との比の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図14】原子炉燃料のプルトニウム富化度とCs134濃度とCs137濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図15】原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合とCs134濃度とCs137濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図16】原子炉燃料の中性子放出率とCs134濃度との比の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図17】原子炉燃料の中性子放出率とEu154濃度との比の燃焼変化をプルトニウム富化度およびPu組成をパラメータとして計算した結果を示すグラフである。
【図18】原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合と中性子放出率とCs134濃度との比および中性子放出率とEu154濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図19】原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合と中性子放出率とCs134濃度との比および中性子放出率とEu154濃度との比の関係の例を示すグラフである。
【図20】本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第2の実施の形態における中性子測定により燃焼度を算出するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の校正には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明はこれらの各実施の形態には限定されない。
【0030】
[第1の実施の形態]
図2は、本発明に係る原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法の一実施の形態に用いる非破壊燃焼度評価装置を測定対象の原子炉燃料とともに示すブロック図である。
【0031】
この非破壊燃焼度評価装置20は、原子炉燃料10の燃焼度を非破壊で評価する。原子炉燃料10は、原子炉で照射された後、原子炉から取り出されて一定期間置かれる。その後測定体系に設置される。
【0032】
測定対象の原子炉燃料10は、たとえば複数の燃料棒12を互いに並行に配列して正方格子状に束ねたものである。燃料棒12の両端は、タイプレート16で支持されている。また、両端部のタイプレート16の間の複数の位置には、燃料棒12の軸に垂直な面内での移動を制限するスペーサ18が設けられている。燃料棒12は、たとえば核燃料物質を焼き固めたペレットをジルコニウム合金製の被覆管に収めて両端を封じたものである。燃料棒12が配列された正方格子の一部には、内部に水が流れる水管が配置されてもよい。
【0033】
非破壊燃焼度測定装置20は、中性子検出器22と、ガンマ線スペクトル検出器23とデータ処理器26とを有している。中性子検出器22は、検出器が測定対象の原子炉燃料10の側面に向かうように配置されて、原子炉燃料10の自発中性子を検出器する。中性子検出器22は、測定した中性子の計数をデータ処理器26に伝達する。
【0034】
ガンマ線スペクトル検出器23は、検出器が測定対象の原子炉燃料10の側面に向かうように配置されて、原子炉燃料10の自発ガンマ線を検出器するが、ガンマ線スペクトル検出器23と原子炉燃料10との間には、原子炉燃料10においてガンマ線測定を行う部位を限定するために、ガンマ線をコリメートするコリメータ25を置いてもよい。ガンマ線スペクトル検出器23は、測定したガンマ線スペクトルデータをデータ処理器26に伝達する。
【0035】
データ処理器26は、評価部31と、記憶部34と、制御部35とを有している。中性子検出器22から伝達された中性子の計数は、記憶部34に記憶される。また、ガンマ線スペクトル検出器23から伝達されたガンマ線スペクトルのデータも、記憶部34に記憶される。評価部31は、評価対象の原子炉燃料10の燃焼度を評価する。制御部35は評価部31を制御する。データ処理器26は、たとえば1台のコンピュータ上に構築される。
【0036】
原子炉燃料10が原子炉で照射された後、原子炉から取り出されて一定期間置かれた後、測定体系位置に設置されて燃焼度を評価するための測定を行う。原子力発電所や再処理施設において照射済みの原子炉燃料10は放射線遮蔽のために水中で貯蔵され、扱われる。このため、燃焼度評価のための測定は通常、水中において行われる。また、評価された燃焼度を1体の原子炉燃料10と対応させるためには、1体ごとに原子炉燃料10の測定が行われる。
【0037】
中性子測定は中性子検出器22を原子炉燃料10の側面近傍に設置して行われる。測定された中性子信号や中性子計数率は中性子束に比例し、中性子検出器の検出感度によって中性子束と関係付けられる。すなわち中性子測定とは中性子信号あるいは中性子計数率から燃料集合体近傍の中性子束を測定することである。
【0038】
図3は原子炉燃料における主なアクチニド核種の生成過程を示す図である。図3には、ウランおよびPuに起因するアクチニドの生成過程の主なものが示されている。
【0039】
使用済ウラン燃料での主な中性子放出核種はキュリウム244(Cm244)である。図3のアクチニド生成過程に示すように、ウラン燃料でのCm244はウラン238(U238)の6回の中性子捕獲反応(図3中に右矢印「→」(n、γ)で示す)により生成され、照射済みウラン燃料ではCm244の生成量は燃焼度の約4乗に比例する。
【0040】
一方、MOX燃料などのPuを富化した酸化物の使用済燃料の場合にも、主な中性子放出核種がCm244であることは同様である。しかし、Puが多くの核種で構成されているため、Cm244の生成に関する燃焼特性は複雑である。図3に示すように、Pu239からPu242までのPuの各種同位体は複数回の中性子吸収捕獲することによりCm244の生成に寄与し、それぞれの同位体でCm244を生成するまでの中性子吸収捕獲の回数が異なる。この図3を吟味し計算に基づく検討を行った。その結果Cm244の生成過程には大きく2つのルートがあることがわかった。
【0041】
一方は、Pu241が約14年の半減期でβ崩壊して生成したAm241がさらに3回の中性子吸収捕獲を行う生成ルートである。他方は、Pu242が2回の中性子吸収捕獲し、Am243を介してCm244となるルートである。そして、初期にPu、特にPu242を含む原子炉燃料でCm244が生成されるルートは、ほとんどがAm243を介するルートであることがわかった。これらのことから、Puを初期に含む原子炉燃料の中性子放出率Sは初期Pu中に占めるPu242組成割合P2に強く依存していることがわかる。
【0042】
図4は、原子炉燃料の中性子放出率の燃焼変化の例を示すグラフである。図4に示された中性子放出率は、Puを初期成分として含むMOX燃料とPuを初期成分として含まないUO2燃料とについて、それぞれ冷却期間5年とした場合の計算例である。
【0043】
図4から、MOX燃料の中性子放出量は、UO2燃料に比べて多く、燃焼度の概ね2乗に比例して増加することが分る。UO2燃料では初期にPuを含まないため、上述の2つのCm244生成ルートはともにCm244の生成に寄与していると考えられ、また生成量もMOX燃料に比べると少ない。
【0044】
しかし、MOX燃料の場合には、初期にPu、特にPu242を含むためCm244の生成はほとんどがAm243を介するルートによっており、Cm244生成量が多くなっていることが計算に基づく検討によって明らかになった。このことは、MOX燃料においてCm244の燃焼特性を評価するときに、Pu242の量を直接のパラメータとして評価したほうが測定精度を向上することができることを意味している。
【0045】
Pu242からCm244になるには2回の中性子吸収捕獲を経る。このため、Cm244の生成量は初期Pu中に占めるPu242の組成割合P2と原子炉の中性子束φの2乗の積にほぼ比例すると考えられる。一方、燃焼度BUは核分裂数の累積によるものであるから、初期Pu中に占める核分裂性Pu(Pu239とPu241の和)の組成割合fとφの積にほぼ比例するものと考えられる。ここで、中性子放出率SがほぼCm244の生成量で決まるものと仮定すると、これらの関係の概略式は、
S∝P2・φ2 (式1)
BU∝f・φ (式2)
となる。
【0046】
(式1)を(式2)の2乗で除すことによってφを消去すると、
S∝(P2/f2)・BU2 (式3)
なる関係が得られる。
【0047】
従来のウラン燃料における自発中性子放出率法における燃焼度評価方法では、
S=α・BUβ (式4)
なる関係式に基づいて行われる。あるいは、この式を踏襲した使用済ウラン燃料の燃焼度評価方法が知られている。しかし、この式を踏襲した従来の評価方法において、係数αおよび係数βは、初期Pu富化度εと初期核分裂性Pu組成割合fのみを考慮していたが、P2を直接のパラメータとしていなかった。
【0048】
そこで、(式3)と(式4)の類似性を基に検討すると、係数αは(P2/f2)なるパラメータに比例すると考えられる。また、係数βは、概ね2に近い値であると考えられる。これらのことより、(式4)を基にして、それぞれの係数を(P2/f2)をパラメータとして扱うことがCm244生成の燃焼特性を扱うときに有効であることがわかる。
【0049】
図5は、原子炉燃料の中性子放出率の燃焼度変化をプルトニウム富化度εおよびPu組成割合fをパラメータとして計算した結果を示すグラフである。この図は、初期にPuを含む原子炉燃料の冷却期間5年のときの中性子放出率と燃焼度との関係を、初期Pu富化度εとPuの各同位体の組成割合fを変えた複数種類の場合について計算した例である。
【0050】
図6は、本実施の形態における係数αと(P2/f2)との関係の例を示すグラフである。図6では、初期プルトニウム富化度εをパラメータとして、εが、2.5%、3.5%、4.5%、5.5%、6.5%の場合についての各曲線を示している。
【0051】
図7は、本実施の形態における係数βと(P2/f2)との関係の例を示すグラフである。図7では、図6と同様に、εが、2.5%、3.5%、4.5%、5.5%、6.5%の場合についての各曲線を示している。
【0052】
図5に示すように、縦軸および横軸をともに対数目盛としてグラフ化したとき、ほぼ直線となるので、(式4)の関係となっていることがわかる。これらの各直線について(式4)の関数形で近似式を求め、算出された係数αを(P2/f2)を横軸にプロットしたものが図6であり、係数βを(P2/f2)を横軸にプロットしたものが図7である。図7の横軸は対数目盛である。係数αは、前述のごとく(P2/f2)にほぼ比例している。また、係数βは2よりは小さいが、(P2/f2)が小さいときには概ね2で、(P2/f2)の対数とともに直線的に減少していくことがわかった。
【0053】
このように、係数αは(P2/f2)の1次関数で、係数βは(P2/f2)の対数の1次関数でよく表現できるが、富化度εによっても変化する。そこで、係数αを
α=α1・(P2/f2)+α0 (式5)
なる(P2/f2)の1次式で表す。また、係数βを
β=β1・ln(P2/f2)+β0 (式6)
なるln(P2/f2)の1次式で表す。このとき、それぞれの係数α0、α1、β0、β1をεの関数として扱う。
【0054】
図8は、本実施の形態における係数α0と富化度εとの関係の例を示すグラフである。図9は、本実施の形態における係数α1と富化度εとの関係の例を示すグラフである。図10は、本実施の形態における係数β0と富化度εとの関係の例を示すグラフである。図11は、本実施の形態における係数β1と富化度εとの関係の例を示すグラフである。
【0055】
係数α0、α1、β0、β1の関数形は、これらの係数の富化度εの依存性に応じて決めることができる。たとえば、図8は、α0をεの1次式で表した例、図9はα1をεの3次式で表した例、図10はβ0をεの2次式で表した例、また、図11はβ1をεの2次式で表した例である。
【0056】
このように、初期にPuを含む原子炉燃料の燃焼度BUと中性子放出率の関係は、パラメータ(P2/f2)を用いて精度良く評価できる。
【0057】
以上は、(式3)と(式4)とからパラメータ(P2/f2)に着目した評価である。
【0058】
一方、プルトニウム富化度εをプルトニウム組成fやP2に掛けて、次の(式7)や(式8)のように表すこともできる。
【0059】
S∝ε・P2・φ2 (式7)
BU∝ε・f・φ (式8)
(式7)を(式8)の2乗で除すことによってφを消去すると、
S∝(P2/ε/f2)・BU2 (式9)
なる関係が得られる。(式9)から、パラメータ(P2/ε/f2)を用いて燃焼度を評価することもできる。
【0060】
一方、ガンマ線スペクトル測定では、照射された原子炉燃料10に蓄積されたFPが放出するガンマ線をガンマ線スペクトル検出器で測定し、測定データをピーク解析することによって、特定のエネルギーのガンマ線強度を求め、FP核種ごとのガンマ線エネルギーに応じたガンマ線強度を得る。ひとつのFP核種につき放出されるガンマ線エネルギーは複数の場合もある。
【0061】
FP核種のうちCs137は、初期にPuを含むMOX燃料などの場合にも、使用済ウラン燃料の場合と同様に、燃焼度とほぼ比例して増加する。図12は、Cs137の濃度の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えて計算した結果のグラフである。図12は、εとfの組み合わせが、(2.5wt%、71%)、(4.5wt%、80%)、(4.5wt%、71%)、(4.5wt%、59%)、(6.5wt%、71%)の5通りのデータをプロットしたものである。しかし、これら5とおりのデータは区別できない程度に重なっている。図12のように、原子炉燃料に蓄積するCs137の濃度はεやfが変わってもほとんど変化せず、また、燃焼度とよく比例して増加する。
【0062】
このため、ガンマ線スペクトル測定で測定されたCs137ガンマ線強度から燃焼度BUGを精度良く評価することができる。Cs137の放出する662keVのガンマ線の強度をCs137のガンマ線強度とすることができる。
【0063】
図13は、FP核種のうちCs134濃度とCs137の濃度との比の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えた計算結果のグラフである。Cs134濃度とCs137濃度との比は、燃焼度に対して、若干上に凸の曲線で増加するが、初期Pu富化度εや核分裂性Pu組成割合fの依存性がある。特にεの依存性が大きい。εやfをもとにして、Cs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比の測定値から燃焼度を評価することもできる。
【0064】
一方、Cs134濃度とCs137濃度との比の燃焼度変化の特性が初期の燃料組成、特にPu富化度εに対して大きな依存性を持つことを利用して、ガンマ線スペクトル測定で得られるCs134ガンマ線強度(C4)とCs137ガンマ線強度(C7)との比(C4/C7)およびCs137ガンマ線強度(C7)から評価された燃焼度BUGを元にεGを求めることができる。
【0065】
図14は、初期核分裂性Pu組成割合fが71%で、燃焼度30GWd/t場合のCs134濃度とCs137濃度との比について、Pu富化度εを変化させた計算結果のグラフである。εが増加するにつれてこの比は減少していく。
【0066】
また、図15は、初期Pu富化度εが4.5wt%で、燃焼度30GWd/t場合のCs134濃度とCs137濃度との比について、核分裂性Pu組成割合fを変化させた計算結果のグラフである。fが増加するにつれてこの比は減少していくが、εに対する変化に比べてfに対する依存性は小さい。
【0067】
これらの関係を利用して、ガンマ線スペクトル測定で得られるCs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比(C4/C7)と、Cs137のガンマ線強度(C7)から評価された燃焼度BUGとを元にεMを求めることができる。そして、中性子測定で得られる中性子束Φから燃焼度BUNを評価するときに用いるεを求めることができる。また、燃料の製造情報に基づいてPu富化度εが得られる場合は、測定によって得られた値によりこれを確認することができる。
【0068】
次に、ガンマ線スペクトル測定で得られるガンマ線強度と中性子測定で得られる中性子束Φとを関係づけた測定値について検討した。
【0069】
上述したように、FP核種のうちCs134やEu154は、燃焼度のほぼ2乗に比例して生成、蓄積していく。また、MOX燃料など初期にPuを含む燃料では、中性子を主に放出するCm244は燃焼度のほぼ2乗に比例して生成、蓄積する。このことから、Cs134のガンマ線強度(C4)やEu154のガンマ線強度(E4)と中性子束Φとの比は、燃焼度に対する変化が小さいことが考えられる。
【0070】
図16は、中性子放出率とCs134濃度との比の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えて計算した結果のグラフである。また、図17は、中性子放出率とEu154濃度との比の燃焼度による変化を、初期のPu富化度εと核分裂性Pu組成割合fをいくつか変えて計算した結果のグラフである。
【0071】
図16および図17のように、中性子放出率とCs134濃度の比や中性子放出率とEu154濃度の比は、燃焼度がある程度高い場合には、燃焼度による変化が小さい。また、核分裂性Pu組成割合fが比較的高い場合にはPu富化度εに対する依存性も小さい。ところが核分裂性Pu組成割合fやPu242組成割合P2に対しては依存性が大きい。fとP2は独立のパラメータではなく、Pu全体に対するそれぞれの部分の割合であるから、fが大きいときP2は相対的に小さい。
【0072】
図18は、初期プルトニウム富化度εが4.5wt%で、燃焼度30GWd/t場合の中性子放出率とCs134濃度の比および中性子放出率とEu154濃度の比について、核分裂性Pu組成割合fを変化させた計算結果のグラフである。fが増加するにつれてこれらの比は減少していく。
【0073】
図19は、初期プルトニウム富化度εが4.5wt%で、燃焼度30GWd/t場合の中性子放出率とCs134濃度の比および中性子放出率とEu154濃度の比について、Pu242組成割合P2を変化させた計算結果のグラフである。P2が増加するにつれてこれらの比は比例的に増加していく。
【0074】
これらの関係を利用して、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134のガンマ線強度(C4)との比(Φ/C4)と前述したBUGおよびεMとから、核分裂性Pu組成割合fMとPu242組成割合P2Mを求めることができる。ここで、Pu富化度はεMでなく、燃料製造時の情報として提供されるεを用いてもかまわない。
【0075】
上記核分裂性Pu組成割合fMとPu242組成割合P2Mを求めるに当たり、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134のガンマ線強度(C4)との比(Φ/C4)の代わりに、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるEu154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)を用いることもできる。
【0076】
このように、中性子測定で得られる中性子束Φから燃焼度BUNを評価するときに用いるfおよびP2を求めることができる。また、燃料の製造情報に基づいてPu富化度εおよびPu242組成割合P2が得られる場合は、測定によって得られた値によりこれらを確認することができる。Cs134は多数のエネルギーのガンマ線を放出するが、796keVあるいは605keVのガンマ線が測定に適している。少なくともひとつのエネルギーのガンマ線の強度をCs134のガンマ線強度(C4)とする。他のエネルギーのガンマ線であってもかまわない。
【0077】
Eu154も多数のエネルギーのガンマ線を放出するが、1274keVのガンマ線が測定に適している。少なくともひとつのエネルギーのガンマ線の強度をEu154のガンマ線強度(E4)とする。他のエネルギーのガンマ線であってもかまわない。
【0078】
図1は、本実施の形態の非破壊燃焼度評価のフロー図である。
【0079】
本実施の形態の非破壊燃焼度評価方法では、上述の関係を利用して、ガンマ線スペクトル測定法によってCs137のガンマ線強度(C7)の測定値から燃焼度BUGを評価し、また、自発中性子放出率法によって中性子束Φの測定値から燃焼度BUNを評価する。このとき、自発中性子測定法でΦからBUNを評価する際に用いる初期プルトニウム富化度εを、ガンマ線スペクトル測定法によるCs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比(C4/C7)を元に求め、初期プルトニウム中に占める核分裂性Puの組成割合fと、初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2とを、中性子束測定値ΦとCs134ガンマ線強度(C4)との比(Φ/C4)または、ΦとEu154ガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)を元に求める。ここで、燃料の製造情報に基づいて初期プルトニウム富化度ε、初期プルトニウム中に占める核分裂性Puの組成割合fおよび初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2が得られる場合は、測定によって得られた値によりこれらを確認することができる。
【0080】
まず、測定体系に評価対象の原子炉燃料10を設置して、その原子炉燃料10の自発中性子を検出し、中性子束Φを測定する(中性子束測定工程S11)。測定された中性子束Φは、記憶部34に記憶される。また、ガンマ線スペクトル検出器により原子炉燃料10の自発ガンマ線を検出器してガンマ線スペクトルを測定する(ガンマ線スペクトル測定工程S11)。測定されたガンマ線スペクトルは記憶部34に記憶される。
【0081】
ガンマ線スペクトル測定で得られるCs137ガンマ線強度(C7)を元に、燃焼度BUGを求める(第1燃焼度算出工程S12)。C7とBUGとは比例関係にあるので、比例定数を計算あるいは測定によって予め決定する。あるいは、燃焼度のわかった同一形式の原子炉燃料を予め測定することによって決定してもよい。C7に比例定数を掛けることによって燃焼度BUGが求められる。
【0082】
次に、BUGおよびガンマ線スペクトル測定で得られるCs134ガンマ線強度とCs137ガンマ線強度との比(C4/C7)を元に、初期プルトニウムの富化度εMを求める(プルトニウム富化度算出工程S13)。与えられた燃焼度BUGのとき、図14のごとく、(C4/C7)はPu富化度εに対して直線的に減少する関係がある。予め計算によって、
(C4/C7)=Aε・ε+Bε (式10)
なる関係式を作成しておく。このとき係数Aεと係数Bεは燃焼度と核分裂Pu組成割合fとの関数である。fは、燃料製造時の情報を用いても良いが、図15に示すように、(C4/C7)のfによる依存性は小さいので、測定対象燃料の設計上の典型的な値を用いても実用上かまわない。さらに、次の工程で得られるfMをもって、本工程に立ち戻って再計算することもできる。
【0083】
BUGとfから係数AεおよびBεを求め、ガンマ線スペクトル測定で得られる(C4/C7)の測定値から(式10)によってPu富化度εMを算出する。
【0084】
次に、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134(C4)との比(Φ/C4)を元に、初期プルトニウム中に占める核分裂性Pu組成割合fMと、初期プルトニウム中に占めるPu242組成割合P2とを求める(Pu242組成割合算出工程S14)。
【0085】
上記説明で、中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるCs134(C4)との比(Φ/C4)の代わりに、中性子測定で得られる中性子束Φと中性子測定で得られる中性子束Φとガンマ線スペクトル測定で得られるEu154(E4)との比(Φ/E4)を用いることもできる。
【0086】
与えられた燃焼度BUGとεMのとき、図18のごとく、(Φ/C4)あるいは(Φ/E4)は核分裂性Pu組成割合fに対して直線的に減少する関係がある。予め計算によって、
(Φ/C4)=Af・f+Bf (式11)
なる関係式を作成しておく。このとき係数Afと係数Bfは燃焼度とプルトニウム富化度εとの関数である。(Φ/E4)の場合も同様である。
【0087】
また、与えられた燃焼度BUGとεMのとき、図19のごとく、(Φ/C4)あるいは(Φ/E4)はPu242組成割合P2に対して比例的に増加する関係がある。予め計算によって、
(Φ/C4)=A2・P2 (式12)
なる関係式を作成しておく。このとき係数A2は燃焼度とプルトニウム富化度εとの関数である。(Φ/E4)の場合も同様である。
【0088】
BUGとεMから係数Af、BfおよびA2を求め、(Φ/C4)の測定値から(式11)からfMを、(式12)からP2Mを算出する。εMの代わりに燃料製造時情報として提供されるプルトニウム富化度εを用いてもよい。
【0089】
これまでの工程で、プルトニウム富化度εと核分裂性Pu組成割合fおよびPu242組成割合P2を測定値から算出し、これらの製造時情報が無い場合は次の工程で用いることができる。あるいは、製造時情報がある場合には、その情報が正しいことの確認に用いることもできる。
【0090】
次に、以下は、中性子測定法によって中性子束Φから燃焼度を算出する工程である。まず、係数αおよび係数βを決定する(計数算出工程S15)。係数αおよび係数βは、原子炉燃料10の初期プルトニウム富化度εと、原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fと、原子炉燃料10の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2との関数である。より具体的には、予め係数α0、α1、β0、β1の関数として決定し、これらの係数と、パラメータ(P2/f2)を用いて、(式5)および(式6)から係数α、βを求める。
【0091】
係数αおよび係数βの算出は、評価部31が行う。算出された係数αおよび係数βは、記憶部34に記憶される。
【0092】
測定体系に設置された原子炉燃料10の中性子実効増倍率kを求める(中性子実効増倍率算出工程S16)。この実効中性子増倍率kは、評価部31が計算によって決定する。あるいは、測定対象である原子炉燃料10とは別の同じ形式の原子炉燃料を別途測定しておくことにより決めることもできる。
【0093】
比例係数をP、中性子放出率をSとすると、中性子束Φと中性子放出率Sとは次の関係で表される。
【0094】
Φ=S・P/(1−k) (式13)
そこで、(式13)の関係から、工程S11で測定された中性子束Φと、工程S16で決定されたkとを用いて中性子放出率Sを求める(中性子放出率算出工程S17)。比例係数Pは、測定体系を構成する燃料集合体、燃料棒、燃料ペレットの寸法や材質、密度の情報に基づいて計算により予め決めることができる。これらの情報は、予め記憶部34に記憶させておく。中性子放出率Sの計算は、評価部31が行う。
【0095】
次に、工程S3で求めた中性子放出率Sから(式4)の関係を用いて燃焼度BUNが求められる(第2燃焼度算出工程S18)。(式4)は変形すると、
BUN=exp{(ln(S)−ln(α))/β} (式14)
となる。燃焼度の算出は、評価部31が行う。
【0096】
以上により、中性子束Φの測定値から燃焼度BUNが評価される。
【0097】
このように、本実施の形態では、ガンマ線スペクトル測定値と中性子測定値とから、燃料製造時の燃料組成情報ε、fおよびP2を算出する。また、中性子束Φの測定値から燃焼度BUNを評価する際に用いる係数αおよび係数βを、パラメータ(P2/f2)を用いて表現している。つまり、初期Pu中のPu242組成割合を燃焼度の評価パラメータとして考慮している。このため、本実施の形態によれば、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する際に、燃料製造時の燃料組成情報が無い場合の測定を可能とするか、情報を確認した上で、評価精度を高めることができる。
【0098】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、中性子実効増倍率kを計算あるいは測定で決めたが、個々の原子炉燃料10を測定するときには、その燃焼度に応じて測定体系の中性子実効増倍率が変化する。測定体系は水中に置かれた燃料集合体1体の体系が通常である。
【0099】
この体系の中性子実効増倍率は、燃料集合体の形状と燃料内に残存する核分裂性物質量および燃料内に蓄積した核分裂生成物を含む中性子吸収物質の量で決まる。核分裂性物質および中性子吸収物質の量は、初期の燃料に含まれる核分裂性物質を含めた燃料を構成する物質の条件を元に、燃焼度に応じた変化を計算することができる。
【0100】
燃焼度が高くなると、核分裂性物質量は減少し、中性子吸収物質量は増加する。これらの物質量をもとに測定体系の中性子実効増倍率を計算することによって、燃焼度と中性子実効増倍率との関係式を予め求めておく。一般に中性子実効増倍率は燃焼度に応じてほぼ直線的に減少していく。そこで前記関係式は、燃焼度の1次式として求めておくことで目的を達成することができるが、他の関数形を用いて精度向上を図ることもできる。
【0101】
中性子放出率SはCm244の生成量によっているが、測定燃料が原子炉から取り出されて測定に供するまでの冷却期間が短いときには、キュリウム242(Cm242)が放出する中性子の影響を補正する必要がある。Cm242は半減期約160日で減衰するので、冷却期間が3年以上の場合には中性子束測定値に影響を及ぼさない。しかし、冷却期間が短い場合には測定された中性子束SにはCm242の放出する中性子の成分が含まれている。また、Cm244も半減期約18年で減衰する。
【0102】
前述の中性子放出率Sと燃焼度との関係は、Cm244を主な放出源とする中性子放出率をもとに評価する。たとえば、図5に示したように冷却期間5年での計算値をもとに作成した関係式は実用的である。このとき、冷却期間に応じて中性子放出率測定値を補正することによって測定精度を向上させることができる。
【0103】
冷却期間を変えて中性子放出率を計算し、前記関係式が基づく冷却期間における中性子放出率との比を、冷却期間に応じた補正係数を減衰補正係数Tcとすることができる。
【0104】
さらに、沸騰水型原子炉においては炉心の高さ位置によって冷却水中の気泡(ボイド)濃度が異なる。これはボイド率分布と呼ばれ、炉心上部でボイド率が高くなるほど水素による中性子減速能力が低下して熱中性子割合が低くなる。このため、炉心上部でボイド率が高くなるほど熱外領域の共鳴捕獲によるCm244の生成量が多くなる。
【0105】
燃料集合体の測定高さ位置によってボイド率が異なるため、同じ燃焼度であっても中性子放出率が異なる。この影響についても、相関式は燃料集合体高さ位置のほぼ中央部分のボイド率約40%の条件での計算結果に基づいて作成し、測定が燃料集合体高さ位置の中央部からずれる場合については測定高さ位置に応じた補正を行うことで測定精度を向上させることができる。
【0106】
燃料集合体の底部ではボイド率0%、中央部で約40%、上部で約70%と、高さ位置に応じてボイド率は緩やかに変化することが知られている。ボイド率に応じたCm244の生成量あるいは中性子放出率を計算し、関係式の元としたCm244量あるいは中性子放出率との比率をボイド補正係数Vとすることができる。
【0107】
図20は、本発明に係る非破壊燃焼度評価方法の第2の実施の形態の中性子測定によって燃焼度BUNを求めるフロー図である。
【0108】
本実施の形態では、第1の実施の形態と、冷却期間および中性子測定位置のボイド率に応じた補正を行う点、および中性子実効増倍率が収束するまで繰り返し計算を行う点で異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態の非破壊燃焼度評価装置20とほぼ同じ装置を用いる。ただし、評価部31の機能が部分的に追加されている。
【0109】
本実施の形態でも、まず、各種係数を求める(S21)。本実施の形態では、係数αおよびβに加えて、上述の減衰補正係数Tcとボイド補正係数Vを算出する。減衰補正係数Tcおよびボイド補正係数Vの算出は評価部31が行う。
【0110】
また、第1の実施の形態と同様に、測定体系に評価対象の原子燃料10を設置して、その原始燃料10の自発中性子を測定し、中性子束Φを測定する(中性子束測定工程S22)。測定された中性子束Φは、記憶部34に記憶される。
【0111】
次に中性子実効増倍率kを導出する(中性子実効増倍率算出工程S23)。中性子束実効増倍率kの導出は、第1の実施の形態と同様の方法で行ってもよいが、本実施の形態では、中性子実効増倍率kについての収束計算を行うため、最初のステップでの中性子実効増倍率kとしては、たとえば0.5程度の暫定初期値を与えてもよい。この中性子実効増倍率kの導出は、評価部31が行う。
【0112】
この中性子実効増倍率kを用いて、減衰補正係数Tcとボイド補正係数VをΦに掛けて補正し、中性子放出率Sを次式により算出する(中性子放出率算出工程S24)。
【0113】
S=Φ・Tc・V・(1−k)/P (式15)
中性子放出率Sの計算は、評価部31が行う。
【0114】
次に、求められた中性子放出率Sから燃焼度を求める(燃焼度算出工程S25)。燃焼度BUの算出は、評価部31が行う。このとき、燃焼度BUは、(式4)あるいは(式14)によって求め、係数αは(式5)、係数βは(式6)のように、それぞれ(P2/f2)の関数である。
【0115】
求めた燃焼度BUから第2ステップの中性子実効増倍率を再評価する(中性子実効増倍率再評価工程S26)。中性子実効増倍率kの再評価は、評価部31が行う。
【0116】
個々の原子炉燃料10を測定するときには、その燃焼度に応じて測定体系の中性子実効増倍率が変化する。この体系の実効増倍率は、燃料集合体の形状と燃料内に残存する核分裂性物質および燃料内に蓄積した核分裂生成物を含む中性子吸収物質の量で決まる。核分裂性物質および中性子吸収物質の量は、初期の燃料に含まれる核分裂性物質を含めた燃料を構成する物質の条件を元に、燃焼度に応じた変化を計算することができる。そこで、燃料集合体BUに応じた核分裂性物質および中性子吸収物質の量を算出し、これらの量に基づいて中性子実効増倍率の再評価値k1を求める。
【0117】
次に、この再評価値k1を中性子放出率Sの算出に用いた中性子実効増倍率kと比較する(比較工程S27)。この再評価値k1と中性子放出率算出工程S24で用いた中性子実効増倍率kとの差の絶対値(|k1−1|)が所定の判定値未満である場合には、中性子実効増倍率についての収束計算が終了し、そのときの燃焼度BUを最終評価値とする。
【0118】
一方、|k1−1|が所定の判定値以上である場合には、中性子放出率算出工程S24で用いる中性子実効増倍率kを再評価値k1に置き換える(中性子実効増倍率置換工程S28)。その後、中性子放出率算出工程S24、燃焼度算出工程S25、中性子実効増倍率再評価工程S26および比較工程S27を、中性子放出率算出工程S24で用いた中性子実効増倍率kとの差の絶対値(|k1−1|)が所定の判定値未満となるまで繰り返す。|k1−1|が所定の判定値未満であるかの判定および繰り返し計算の制御は、制御部35が行う。なお、図示を省略するが、繰り返し回数が所定制限回数を超えたら、繰返しをやめる。
【0119】
本実施の形態では、中性子束Sの測定値から燃焼度BUを評価する際に用いる係数αおよび係数βを、パラメータ(P2/f2)を用いて表現している。つまり、初期Pu中のPu242組成割合を燃焼度評価パラメータとして考慮している。このため、本実施の形態によれば、原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する際に、評価精度を高めることができる。
【0120】
さらに、本実施の形態では、中性子放出率Sの算出に用いる中性子実効増倍率の評価精度が向上するため、燃焼度BUの評価精度が向上する。また、中性子束Φを、減衰補正係数Tcおよびボイド補正係数Vで補正して中性子放出率Sを算出しているため、原子炉から取り出されてからの冷却期間および中性子測定位置のボイド率に応じた補正がされており、燃焼度BUの評価精度が向上する。
【0121】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
10 原子炉燃料
12 燃料棒
16 タイプレート
18 スペーサ
20 非破壊燃焼度評価装置
22 中性子検出器
23 ガンマ線スペクトル検出器
25 コリメータ
26 データ処理器
31 評価部
34 記憶部
35 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、
前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、
前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、
を有することを特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項2】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、
前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、
前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、
を有することを特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項3】
原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εとし、原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合をfとし、原子炉燃料の初期Pu242の組成割合をP2とするとき、
前記第2燃焼度算出工程の前に、前記係数αおよび係数βがいずれもεおよびP2/f2の関数であるとして前記係数αおよび係数βを算出する係数算出工程をさらに有すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項4】
前記係数算出工程では、前記係数αおよび係数βは、式F2=P2/f2で求められるF2およびεの関数である係数α0、係数α1、係数β0および係数β1を用いて、式α=α1・F2+α0および式β=β1・F2+β0から求めること、を特徴とする請求項3に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項5】
前記第2燃焼度算出工程の後に、当該第2燃焼度算出工程で求められた前記燃焼度BUNに基づいて中性子実効増倍率の再評価値k1を求める中性子実効増倍率再評価工程と、
前記中性子実効増倍率再評価工程で得られた再評価値k1と前記中性子実効増倍率kとの差の絶対値を所定の判定値とを比較する比較工程と、
をさらに有し、
前記比較工程の結果が、前記差の絶対値が前記所定の判定値より大きい場合に、前記実効増倍率を前記再評価値k1に置き換えて、前記中性子放出率算出工程、第2燃焼度算出工程、中性子実効増倍率再評価工程および比較工程を順次繰り返すこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項6】
前記繰り返しが所定回数を超えたときに繰り返しを止めること、を特徴とする請求項5に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項7】
前記原子炉の停止から前記中性子測定工程までの時間の経過による前記原子炉燃料の中性子放出率の減衰および前記中性子束の測定部位の前記原子炉燃料の高さ位置での前記原子炉中でのボイド率の影響に基づいて前記中性子束Φを補正する補正工程をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項8】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、
前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、
を有し、
前記評価部は、
前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、
前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、
前記原子炉燃料の中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、
前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置。
【請求項9】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、
前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、
を有し、
前記評価部は、
前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、
前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、
前記原子炉燃料の中性子束Φとユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、
前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置。
【請求項1】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料の非破壊燃焼度評価方法において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、
前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、
前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、
を有することを特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項2】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子測定工程と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル測定工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求める第1燃焼度算出工程と、
前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料初期プルトニウム富化度εMを求めるプルトニウム富化度算出工程と、
前記中性子測定工程で測定された中性子束Φと前記ガンマ線スペクトル測定工程で測定されたユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求めるPu242組成割合算出工程と、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求める中性子実効増倍率算出工程と、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求める中性子放出率算出工程と、
前記プルトニウム富化度算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記Pu242組成割合算出工程で求められた前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める第2燃焼度算出工程と、
を有することを特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項3】
原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εとし、原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合をfとし、原子炉燃料の初期Pu242の組成割合をP2とするとき、
前記第2燃焼度算出工程の前に、前記係数αおよび係数βがいずれもεおよびP2/f2の関数であるとして前記係数αおよび係数βを算出する係数算出工程をさらに有すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項4】
前記係数算出工程では、前記係数αおよび係数βは、式F2=P2/f2で求められるF2およびεの関数である係数α0、係数α1、係数β0および係数β1を用いて、式α=α1・F2+α0および式β=β1・F2+β0から求めること、を特徴とする請求項3に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項5】
前記第2燃焼度算出工程の後に、当該第2燃焼度算出工程で求められた前記燃焼度BUNに基づいて中性子実効増倍率の再評価値k1を求める中性子実効増倍率再評価工程と、
前記中性子実効増倍率再評価工程で得られた再評価値k1と前記中性子実効増倍率kとの差の絶対値を所定の判定値とを比較する比較工程と、
をさらに有し、
前記比較工程の結果が、前記差の絶対値が前記所定の判定値より大きい場合に、前記実効増倍率を前記再評価値k1に置き換えて、前記中性子放出率算出工程、第2燃焼度算出工程、中性子実効増倍率再評価工程および比較工程を順次繰り返すこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項6】
前記繰り返しが所定回数を超えたときに繰り返しを止めること、を特徴とする請求項5に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項7】
前記原子炉の停止から前記中性子測定工程までの時間の経過による前記原子炉燃料の中性子放出率の減衰および前記中性子束の測定部位の前記原子炉燃料の高さ位置での前記原子炉中でのボイド率の影響に基づいて前記中性子束Φを補正する補正工程をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の原子炉燃料非破壊燃焼度評価方法。
【請求項8】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、
前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、
を有し、
前記評価部は、
前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、
前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、
前記原子炉燃料の中性子束Φと前記C4との比(Φ/C4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、
前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置。
【請求項9】
原子炉に装荷される前にプルトニウムを含有する原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置において、
前記原子炉燃料が原子炉で照射された後に原子炉から取り出されて測定体系に設置された状態で前記原子炉燃料の自発中性子からなる中性子束Φを測定する中性子検出器と、
前記原子炉燃料の自発ガンマ線からなるガンマ線のエネルギースペクトルを測定するガンマ線スペクトル検出器と、
前記中性子検出器で測定される中性子測定値と前記ガンマ線スペクトル検出器で測定されるガンマ線スペクトル測定値とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された中性子測定値およびガンマ線スペクトル測定値に基づいて前記原子炉燃料が原子炉で照射された後の燃焼度を非破壊で評価する評価部と、
を有し、
前記評価部は、
前記原子炉燃料のセシウム137のガンマ線強度C7から燃焼度BUGを求め、
前記原子炉燃料のセシウム134のガンマ線強度C4と前記C7との比(C4/C7)および前記BUGとから前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMを求め、
前記原子炉燃料の中性子束Φとユーロピウム154のガンマ線強度(E4)との比(Φ/E4)と、前記BUGおよび前記εMとから、前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占める核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび前記原子炉燃料の初期プルトニウム中に占めるPu242の組成割合P2Mとを求め、
前記測定体系に設置された前記原子炉燃料の中性子実効増倍率kを求め、
比例係数をPとする式Φ=S・P/(1−k)からΦおよびkを用いて前記原子炉燃料の中性子放出率Sを求め、
前記原子炉燃料の初期プルトニウム富化度εMと前記原子炉燃料の初期核分裂性プルトニウムの組成割合fMおよび初期Pu242の組成割合P2Mとの関数である係数αおよび係数βを用いて式S=α・BUβから燃焼度BUNを求める機能を有すること、を特徴とする原子炉燃料非破壊燃焼度評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−220297(P2012−220297A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85208(P2011−85208)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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