説明

原子炉遠隔停止装置及びプログラム

【課題】制御対象となる機器の誤操作を引き起こすことなく、制御機能及び監視機能を、中央制御室から同時に切り替えることができる原子炉遠隔停止技術を提供する。
【解決手段】原子炉遠隔停止装置10は、第1状態又は第2状態を指示するスイッチ信号pを出力する操作スイッチ12Aと、機器40を第1状態又は第2状態に制御する制御信号cを機器40に送信する送信部17と、制御信号cを出力する駆動制御部13と、監視信号sを機器40から受信する受信部16と、監視信号sを入力して機器40を監視させる監視部11と、スイッチ信号p及び監視信号sを取得しそれぞれの状態が一致しているか否かを判定する判定部14と、制御信号cの出力元及び監視信号sの出力先を中央制御室30側から駆動制御部13及び監視部11へ切り替える切替部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の中央制御室の室外で実行される原子炉遠隔停止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、運転員が中央制御室から退避しなければならないような緊急事態が発生することを想定している。その場合、運転員が中央制御室から退避しても、その外部から原子炉を冷温停止させるのに最低限必要な機器の制御(例えば弁の開閉、ポンプ起動・停止等)やこれら機器の制御状態を監視する原子炉遠隔停止装置(RSS;以下、「遠隔装置」ともいう)が設置されている。そして、いざ緊急事態が発生した場合は、中央制御室から遠隔装置に機器制御の操作主体が切り替わる。
【0003】
ところで、機器制御の操作主体が中央制御室から遠隔装置に切り替わるのに従って、機器の制御状態も切り替わる可能性がある。その場合、弁の開閉やポンプの起動・停止の誤動作によりプラントが意図しない運転状態に陥ることが懸念される。
そこで、機器の監視機能のみを切り替える遠隔装置が開示されている(例えば、特許文献1)。この遠隔装置によれば、運転員が、遠隔装置における操作スイッチの状態と機器の制御状態とが一致することを確認してから、機器制御の操作主体を切り替えるので、上述したような誤動作が生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−333195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、監視機能のみを遠隔装置に切り替える場合、一時的ではあるが、制御は中央制御室、監視は遠隔装置のように、機器に対する監視と制御がそれぞれ分離した状態になる。このように制御と監視を同時に行えない状態を避けるために、制御及び監視は同時に切替えられるのが望ましい。
一方において、中央制御室から遠隔装置に制御が切り替えられるのは緊急事態が生じた時である。このため遠隔装置において、運転員が機器の制御状態を確認し、操作スイッチの状態を修正する機能が具備されていることが望ましい。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、制御対象となる機器の誤操作を引き起こすことなく、制御機能及び監視機能を、中央制御室から同時に切り替えることができる原子炉遠隔停止技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る原子炉遠隔停止装置は、少なくとも第1状態又は第2状態を指示するスイッチ信号を出力する操作スイッチと、機器を第1状態又は第2状態に制御する制御信号を前記機器に送信する送信部と、前記第1状態を指示する信号を入力すると前記第1状態の制御信号を出力し前記第2状態を指示する信号を入力すると前記第2状態の前記制御信号を出力する駆動制御部と、前記機器が前記第1状態か又は前記第2状態かを示す監視信号を前記機器から受信する受信部と、前記監視信号を入力して前記機器が前記第1状態か又は前記第2状態かを監視させる監視部と、前記スイッチ信号及び前記監視信号を取得しそれぞれの状態が一致しているか否かを判定する判定部と、前記制御信号の出力元及び前記監視信号の出力先を中央制御室側から前記駆動制御部及び前記監視部へ切り替える切替部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、制御対象となる機器の誤操作を引き起こすことなく、制御機能及び監視機能を、中央制御室から同時に切り替えることができる原子炉遠隔停止技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る原子炉遠隔停止装置の第1実施形態を示すブロック図。
【図2】第1実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明に係る原子炉遠隔停止装置の第2実施形態を示すブロック図。
【図4】第2実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る原子炉遠隔停止装置の第3実施形態を示すブロック図。
【図6】第3実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を示すフローチャート。
【図7】本発明に係る原子炉遠隔停止装置の第4実施形態を示すブロック図。
【図8】第4実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を示すフローチャート。
【図9】(A1)(A2)第1,第2,第4実施形態に適用される操作スイッチの概要図、(B1)(B2)第3実施形態に適用される操作スイッチの概要図、(C)各実施形態に適用される切替部の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係る原子炉遠隔停止装置10は、少なくとも第1状態又は第2状態を指示するスイッチ信号pを出力する操作スイッチ12A(12)と、機器40を第1状態又は第2状態に制御する制御信号cを機器40に送信する送信部17と、第1状態を指示する信号pを入力すると前記第1状態の制御信号cを出力し前記第2状態を指示する信号pを入力すると前記第2状態の制御信号cを出力する駆動制御部13と、機器40が前記第1状態か又は前記第2状態かを示す監視信号sを機器40から受信する受信部16と、監視信号sを入力して機器40が前記第1状態か又は前記第2状態かを監視させる監視部11と、スイッチ信号p及び監視信号sを取得しそれぞれの状態が一致しているか否かを判定する判定部14と、制御信号cの出力元及び監視信号sの出力先を中央制御室30側から駆動制御部13及び監視部11へ切り替える切替部20と、を備えている。
【0011】
このように、原子炉遠隔停止装置10が構成されることにより、原子炉が通常の運転状態にあるときは、機器40の制御及び監視は、この中央制御室30において行われる。そして、緊急事態が発生したときは、切替部20を操作して、機器40の制御及び監視を遠隔装置10において実施する。
【0012】
切替部20は、図9(C)に示されるように、遠隔装置(RSS)側又は中央制御室側(中央)の位置に、つまみ24が回転するものである。つまり、原子炉の通常運転時は、このつまみ24を”中央”位置に設定し、運転員が中央制御室から退避するような緊急事態が発生したときは、つまみ24を”RSS”位置に設定する。
このような、切替部20のつまみ24の操作に同期して、切替回路23(図1)に設けられる第1切替器21及び第2切替器22が同時に切り替わる。
【0013】
ところで、中央制御室30には、原子炉遠隔停止装置10に配置されているものと同様の機能を有する監視部31と、操作スイッチ32と、駆動制御部33とが備えられている。これにより、原子炉の通常運転時(切替部20のつまみ24の設定が”中央”側のとき)は、中央制御室30において、機器40の制御及び監視が行われる。
この場合、第1切替器21は接点a1に接続され、機器40の監視信号sは、中央制御室30の監視部31で監視され、第2切替器22は接点b1に接続されて、中央制御室30の操作スイッチ32及び駆動制御部33による制御信号cが機器40に送信される。
【0014】
緊急事態発生時(切替部20のつまみ24の設定が”RSS”側のとき)は、遠隔装置10において、機器40の制御及び監視が行われる。
この場合、第1切替器21は接点a2に接続され、機器40の監視信号sは、遠隔装置10の監視部11で監視され、第2切替器22は接点b2に接続されて、遠隔装置10の操作スイッチ12及び駆動制御部13による制御信号cが機器40に送信される。
これにより、切替部20における設定が、中央制御室30側から遠隔装置10側に切り替わったあとは、中央制御室30側では、機器40の制御のみならず監視も行うことが不可能になる。
【0015】
機器40は、監視信号出力部41と、駆動部42とを有しており、例えば、回転機であったり弁であったりする。ここで、機器40が回転機である場合は、その制御状態として停止(第1状態)と運転(第2状態)との二通りがある。そして、機器40が弁である場合は、その制御状態として全閉(第1状態)と全開(第2状態)との二通りがある。
【0016】
監視信号出力部41は、機器40の制御状態(第1状態又は第2状態)を示す監視信号sを受信部16に出力する。この監視信号sは、切替部20により設定される出力先の監視部11又は監視部31のいずれかに出力される。
監視部11,31は、モニタ画面やチェックランプ等で実現されるものであり、運転員の視認により、機器40の制御状態が第1状態又は第2状態のいずれであるかを認識させる。
【0017】
駆動部42は、送信部17からの制御信号cを入力して機器40を第1状態又は第2状態にする。この制御信号cは、切替部20により設定される出力元の駆動制御部13又は駆動制御部33のいずれかから送信されたものである。
【0018】
操作スイッチ12A(12)は、図9(A1)(A2)に示されるように、機器の第1状態又は第2状態に対応する位置に、つまみ25が回転するものである。つまり、機器40を第1状態又は第2状態に制御するために運転員により操作されるものである。
【0019】
つまみ25が第1状態の位置に設定されているときは、第1状態を指示するスイッチ信号p(図1)が送信され、これを入力した駆動制御部13は、機器40を第1状態にする制御信号cを出力する。また、つまみ25が第2状態の位置に設定されているときは、第2状態を指示するスイッチ信号pが送信され、これを入力した駆動制御部13は、機器40を第2状態にする制御信号cを出力する。
【0020】
判定部14は、操作スイッチ12から送信されるスイッチ信号p及び機器40から送信される監視信号sが、共に第1状態、共に第2状態、いずれか一方のみが第1状態(第2状態)のいずれの組み合わせであるかを判断する。そして、これら組み合わせに応じて各実施形態で述べられる種々のアクションが実行される。
【0021】
第1実施形態における原子炉遠隔停止装置10では、判定部14で取得されたスイッチ信号p及び監視信号sにおける状態が一致していないと判定された場合に警告動作をする警告部15が備えられている。
【0022】
警告部15は、スイッチ信号p及び監視信号sのうちいずれか一方が第1状態で他方が第2状態の組み合わせであった場合に、判定部から警告信号kを受信して警報や警告灯等を動作させて、その旨を運転員に知らせる。そして、運転員は、この警告が解除されるように、操作スイッチ12の位置を変更することで、機器40の制御状態と操作スイッチ12の操作状態とを一致させる。
そして、切替部20で、操作主体を中央制御室30から遠隔装置10に切り替えるため、機器40の制御状態が誤って切り替わることが防止される。
【0023】
図2のフローチャートに基づいて(適宜、図1参照)、第1実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を説明する。
通常運転をしている原子炉に緊急事態が発生したとする。この時点において、切替部20(切替回路23)は、図1に示されるように、中央制御室30側が操作主体になるように設定されている。そして運転員は、中央制御室30から遠隔装置10に移動して、遠隔装置10をスタンバイさせる。
【0024】
操作スイッチ12は、第1状態又は第2状態の指示されたスイッチ信号pを出力しており、このスイッチ信号pを判定部14が取得する(S11)。
なお、この時点では、中央制御室30から送信される制御信号cにより機器40が第1状態又は第2状態に制御されており、判定部14は、機器40の制御状態を示す監視信号sを受信部16から取得する(S12)。
【0025】
そして、判定部14は、取得したスイッチ信号p及び監視信号sのそれぞれの状態が一致しているか否かを判定し、一致している場合、警告部15は動作しない(S13;Yes)。この場合、駆動制御部13に第1状態を指示するスイッチ信号pが入力されていれば第1状態の制御信号cが出力され、第2状態を指示するスイッチ信号pが入力されていれば第2状態の制御信号cが出力される。このように、操作スイッチ12が出力するスイッチ信号pに対応する制御信号cが駆動制御部13から出力される(S14)。
【0026】
その後、運転員が手動で切替部20を遠隔装置10が操作主体となるように切り替えれば(S15)、切替回路23の第1切替器21及び第2切替器22は、それぞれ接点a2,b2の側に同時に接続される。
これにより、遠隔装置10の監視部11で機器40の監視をすることができ(S16)、遠隔装置10の操作スイッチ12で機器40を制御することができる(S17)。
【0027】
一方、判定部14で、不一致であると判定された場合(S13;No)、判定部14から警告信号kが出力されて警告部15が動作する(S18)。そして、運転員が操作スイッチ12の状態を変更することにより(S19)、警告信号kの出力が停止される(S20)。その後の動作フローは、(S11)に移ることになる。
【0028】
このように、遠隔装置10に操作主体を切り替える前に、操作スイッチ12の操作状態と機器40の制御状態との不一致が警告されるので、この不一致を解消させたうえで、機器40の制御と監視を同時に遠隔装置10の側に切り替えることができる。
【0029】
(第2実施形態)
図3に示すように第2実施形態に係る原子炉遠隔停止装置10は、さらに第1状態及び第2状態のいずれかに待機設定されたスイッチ信号pを保存する保存部18を備えている。判定部14は、保存部18からスイッチ信号pを取得するように構成されている。なお、図3において図1と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0030】
操作主体を遠隔装置10に切り替える場合は、原子炉を停止させる機能が運転中であることは稀であるため、遠隔装置10の操作スイッチ12は、運用上、各機器40が待機状態となるように、予め位置設定される場合がある。
そのような待機状態となるように設定されたスイッチ信号pを保存部18に蓄積し、判定部14は、操作スイッチ12の操作状態にかかわらず、保存部18に蓄積されているスイッチ信号pと監視信号sとの一致性を判定することになる。
【0031】
図4のフローチャートに基づいて第2実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を説明する。第2実施形態では、判定部14は、スイッチ信号pを操作スイッチ12からではなく、保存部18から取得する(S11)。そして、(S12),(S13;Yes)〜(S17)のフローは、第1実施形態の場合と同様なので該当する説明を援用する。
【0032】
一方、判定部14で、不一致であると判定された場合(S13;No)、判定部14から警告信号kが出力されて警告部15が動作する(S18)。そして、運転員が操作スイッチ12の状態を確認し(S19A)、必要に応じて変更することにより(S19B)、警告信号kの出力が停止される(S20)。そして、その後の動作フローはS14に移ることになる。
これにより、運転員は予め定義された機器の待機状態と実際の機器の制御状態とを比較して、両者が異なっていることを把握することができる。
【0033】
(第3実施形態)
図5に示すように第3実施形態に係る原子炉遠隔停止装置10において、操作スイッチ12B(12)は、第1状態及び第2状態に加えてさらに第3状態を指示するスイッチpを出力し、判定部14は、前記第3状態を指示するスイッチ信号pを取得した場合に、取得した監視信号sに対応する制御信号cを駆動制御部13から出力させることとした。なお、図5において図1と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0034】
操作スイッチ12Bは、図9(B1)(B2)に示されるように、第1状態及び第2状態の間に、第3状態が位置している。そして、それぞれの状態の位置につまみ25が回転する。
また操作スイッチ12Bは、回転させたつまみ25がその位置に留まり続ける位置保持型である場合の他に、手動で第1状態又は第2状態にした状態から手を離すと第3状態に戻るスプリングリターン型のものが採用される。
【0035】
このように、操作スイッチ12Bが第3状態を指示するようにしたことによって、操作主体を遠隔装置10に切り替える時に、機器40の制御状態が不明である場合であっても、操作スイッチ12Bを第3状態に設定した状態で切替部20を操作すれば、その前後で機器40の制御状態が変更することを防止する。
さらに、スプリングリターン型の操作スイッチ12Bを採用することによって、運転員は、操作スイッチ12Bの操作状態と機器40の制御状態とが一致しているか否かについて、意識する必要がなくなる。
【0036】
また、判定部14に自己保持回路を具備させ、操作スイッチ12Bが、第3状態にスプリングリターンした場合、スプリングリターンする前に設定されていた第1状態又は第2状態の制御信号cを駆動制御部13から出力させる。
これにより、機器40の制御状態を維持させるために、運転員が操作スイッチ12Bのつまみ25を押え続ける必要がなくなる。一度、第1状態又は第2状態に設定すれば、その後、第3状態にスプリングリターンしても、機器40の制御状態は維持されることになる。
【0037】
図6のフローチャートに基づいて第3実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を説明する(適宜、図5参照)。なお、(S11)(S12)のフロー及び操作スイッチ12Bの設定が第1状態又は第2状態の場合(S21;No)の以降のフローは、第1実施形態の場合と同様なので重複説明を省略する。
【0038】
操作スイッチ12Bの設定が第3状態の場合は(S21;Yes)、判定部14で取得された監視信号sに対応する制御信号cが駆動制御部13から出力される(S22)。なお、操作スイッチ12Bにスプリングリターン型のものが採用されている場合は、常時(S21;Yes)のフローとなる。
【0039】
このために、その後、運転員が切替部20を遠隔装置10が操作主体となるように切り替えても(S23)、機器40の制御状態が変更されることはない。そして、遠隔装置10の監視部11で機器40の監視をすることができ(S24)、運転員が手動で操作スイッチ12Bの設定を第1状態又は第2状態にすることにより、遠隔装置10で機器40を制御することができる(S25)。
【0040】
なお、(S25)において、自己保持回路を有するスプリングリターン型の操作スイッチ12Bが採用されている場合、操作主体の切り替え後に、運転員がつまみ25を第1状態又は第2状態に一時的に設定すると、スプリングリターンにより第3状態に設定が変わっても、機器40の制御状態は維持されることになる。
【0041】
(第4実施形態)
図7に示すように第4実施形態に係る原子炉遠隔停止装置10において、判定部14は、取得されたスイッチ信号p及び監視信号sにおける状態が一致していない場合に、監視信号sに対応する制御信号cを駆動制御部13から出力させるインターロック機能を有している。そして、このインターロック機能を解除してスイッチ信号pに対応する制御信号cを駆動制御部13から出力させるインターロック解除部19を備えている。なお、図7において図1と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0042】
図8のフローチャートに基づいて第4実施形態の原子炉遠隔停止装置の動作を説明する(適宜、図7参照)。なお、(S11)(S12)のフローは、第1実施形態の場合と同様なので重複説明を省略する。
操作主体が遠隔装置10に切り替えられる前は、機器40は、中央制御室30側から送信される制御信号cにより制御され、その制御状態に対応する監視信号sを出力している。判定部14は、取得したこの監視信号sに対応する制御信号cを駆動制御部13から出力させる(S31)。
【0043】
このために、その後、運転員が切替部20を遠隔装置10が操作主体となるように切り替えても(S32)、操作スイッチ12の設定が機器40の制御状態に反映されることはない。しかし、遠隔装置10の監視部11において機器40の制御状態を監視できるようにはなっている(S33)。そして、インターロックが解除されるまでは、この状態が維持される(S34;No)。そして、インターロックが解除されると(S34;Yes)、操作スイッチ12の設定に従って機器40の制御状態が変更される。
【0044】
さらに、機器40の制御状態と操作スイッチ12の操作状態とが不一致であっても、切り替え後に、監視をしながら操作スイッチ12の操作状態を機器40の制御状態に一致させることができる。この場合、その後にインターロックを解除しても、機器40の制御状態が変更されることはない。
【0045】
本発明は前記した実施形態に限定されるものでなく、共通する技術思想の範囲内において、適宜変形して実施することができる。
例えば、原子炉遠隔停止装置は、各手段を各機能プログラムとしてコンピュータによって実現することも可能である。このために、本発明は、各機能プログラムを結合した原子炉遠隔停止プログラムの発明として実施することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…原子炉遠隔停止装置(遠隔装置)、11…監視部、12(12A,12B)…操作スイッチ、13…駆動制御部、14…判定部、15…警告部、16…受信部、17…送信部、18…保存部、19…インターロック解除部、20…切替部、21…第1切替器、22…第2切替器、23…切替回路、24,25…つまみ、30…中央制御室、31…監視部、32…操作スイッチ、33…駆動制御部、40…機器、41…監視信号出力部、42…駆動部、a1,a2,b1,b2…接点、p…スイッチ信号、s…監視信号、c…制御信号、k…警告信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1状態又は第2状態を指示するスイッチ信号を出力する操作スイッチと、
機器を第1状態又は第2状態に制御する制御信号を前記機器に送信する送信部と、
前記第1状態を指示する信号を入力すると前記第1状態の制御信号を出力し前記第2状態を指示する信号を入力すると前記第2状態の前記制御信号を出力する駆動制御部と、
前記機器が前記第1状態か又は前記第2状態かを示す監視信号を前記機器から受信する受信部と、
前記監視信号を入力して前記機器が前記第1状態か又は前記第2状態かを監視させる監視部と、
前記スイッチ信号及び前記監視信号を取得しそれぞれの状態が一致しているか否かを判定する判定部と、
前記制御信号の出力元及び前記監視信号の出力先を中央制御室側から前記駆動制御部及び前記監視部へ切り替える切替部と、を備えることを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉遠隔停止装置において、
前記判定部で取得された前記スイッチ信号及び前記監視信号における前記状態が一致していないと判定された場合に警告動作をする警告部を備えることを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の原子炉遠隔停止装置において、
第1状態及び第2状態のいずれかに待機設定された前記スイッチ信号を保存する保存部を備え、
前記判定部は、前記保存部から前記スイッチ信号を取得することを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の原子炉遠隔停止装置において、
前記操作スイッチはさらに第3状態を指示するスイッチ信号を出力し、
前記判定部は、前記第3状態を指示する前記スイッチ信号を取得した場合に、取得した前記監視信号に対応する前記制御信号を前記駆動制御部から出力させることを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の原子炉遠隔停止装置において、
前記操作スイッチは、前記第1状態又は前記第2状態から前記第3状態へスプリングリターンすることを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項6】
請求項5に記載の原子炉遠隔停止装置において、
前記判定部は、前記第3状態にスプリングリターンした場合、スプリングリターンする前の前記第1状態又は前記第2状態の制御信号を前記駆動制御部から出力させることを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の原子炉遠隔停止装置において、
前記判定部は、取得された前記スイッチ信号及び前記監視信号における前記状態が一致していない場合に、前記監視信号に対応する前記制御信号を前記駆動制御部から出力させるインターロック機能を有し、
このインターロック機能を解除して前記スイッチ信号に対応する前記制御信号を前記駆動制御部から出力させるインターロック解除部を備えることを特徴とする原子炉遠隔停止装置。
【請求項8】
コンピュータを、
少なくとも第1状態又は第2状態を指示するスイッチ信号を出力する手段、
機器を第1状態又は第2状態に制御する制御信号を前記機器に送信する手段、
前記第1状態を指示する信号を入力すると前記第1状態の制御信号を出力し前記第2状態を指示する信号を入力すると前記第2状態の前記制御信号を出力する手段、
前記機器が前記第1状態か又は前記第2状態かを示す監視信号を前記機器から受信する手段、
前記監視信号を入力して前記機器が前記第1状態か又は前記第2状態かを監視させる手段、
前記スイッチ信号及び前記監視信号を取得しそれぞれの状態が一致しているか否かを判定する手段、
前記制御信号の出力元及び前記監視信号の出力先を中央制御室側から前記駆動制御部及び前記監視部へ切り替える手段、として機能させることを特徴とする原子炉遠隔停止プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−132839(P2012−132839A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286492(P2010−286492)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】