説明

原子移動ラジカル重合を使用して調製されるヒドロキシル官能性ポリマーを含む、熱硬化性組成物

【課題】原子移動ラジカル重合を使用して調製されるヒドロキシル官能性共重合体(従って、この共重合体は、十分規定された分子量およびポリマー鎖構造、ならびに狭い分子量分布を有する)を含む熱硬化組成物、を開発すること
【解決手段】以下を含む熱硬化性組成物を提供する:(a)ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下での原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ヒドロキシ官能性ポリマー。さらに、本発明によって、本発明の組成物を使用して基材をコーティングする方法、および、このような方法によってコーティングされた基材、ならびにカラープラスクリア複合コーティングを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、1つ以上の架橋剤および1つ以上のヒドロキシル官能性ポリマーを有する熱硬化性(硬化可能)組成物に関する。ヒドロキシル官能性ポリマーは、原子移動ラジカル重合によって調製され、そして、十分規定されたポリマー鎖構造、分子量および分子量分布を有する。本発明はまた、基材をコーティングする方法、この方法によってコーティングされる基材、およびカラープラスクリア複合コーティング構成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
硬化可能組成物による環境破壊を減少すること(すなわち、硬化可能コーティング組成物を塗布する間、揮発性有機化合物の大気中への放出に関連する)は、近年、進行中の調査および開発の分野である。従って、部分的に、それらの実質的に低い揮発性有機物含量(VOC)のために、高固液コーティング組成物(high solid liquid
coating composition)への関心が強くなり、このことにより、有意に、塗布プロセス中での空気放出を減少する。
【0003】
低いVOCコーティング組成物は、使用される比較的大量のコーティングのために、自動車の相手先商標製造製品(original equipment manufacture)(OEM)市場で、特に所望される。しかし、低いVOCレベルの要求に加えて、自動車製造は、使用されるコーティングの非常に厳しい性能要求を有する。例えば、自動車OEM透明性トップコートは、典型的に、良好な外装耐久性、ならびに卓越した光沢および外観の組み合わせを有することが要求される。
【0004】
ヒドロキシル官能性ポリマーを含有する熱硬化性コーティングが、自動車OEMプライマーコートおよびトップコートとして広く使用されている。このようなコーティング組成物は、典型的に、ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤、およびヒドロキシル官能性ポリマーを含む。このようなコーティング組成物に使用されるヒドロキシル官能性ポリマーは、典型的には、標準的な、すなわち、非リビングラジカル重合法(これは、分子量、分子量分布およびポリマーサ構造の制御をほとんど提供しない)によって調製される。
【0005】
物理的特性、例えば、所定のポリマーの粘度は、直接的にその分子量に関係し得る。より高い分子量は、典型的に、例えば、より高いTg値および粘度と関連する。広い分子量分布(例えば、2.0または2.5を超える多分散性指標(PDI)を有する)を有するポリマーの物理的特性は、それを含む種々のポリマー種の間の不確定の相互作用の個々の物理的特性の平均として特徴付けられ得る。このように、広い分子量分布を有するポリマーの物理的特性は可変であり得、そして制御することが困難であり得る。
【0006】
ポリマーのポリマー鎖構造、または構成は、ポリマー骨格または鎖に沿ったモノマー残基の配列として記述され得る。標準的なラジカル重合技術によって調製されるヒドロキシル官能性共重合体は、異なる個々のヒドロキシル当量およびポリマー鎖構造を有するポリマー分子の混合物を含む。このような共重合体において、ヒドロキシル官能基は、ポリマー鎖に沿ってランダムに配置される。さらに、官能基の数は、ポリマー分子の間に等しく分けられない。その結果、いくつかのポリマー分子は、実際にヒドロキシル基を有し得ない。熱硬化性組成物において、3次元架橋ネットワークの形成は、官能基当量およびそれを含む個々のポリマー分子の構成に依存する。反応性官能基をほとんど、または全く有しない(または、ポリマー鎖に沿ったそれらの位置のために、架橋反応に恐らく参加しない官能基を有する)ポリマー分子は、3次元架橋ネットワークの形成に、ほとんど、または全く寄与せず、その結果、架橋密度が減少し、最終的に形成された重合体(例えば、硬化性または熱硬化性コーティング)の最適な物理的特性より低くなる。
【0007】
より低いゼロVOCレベルおよび好ましい性能特性の組合わせを有する新しく、そして改善された熱硬化性組成物の引き続く開発が、所望される。特に、熱硬化性組成物を開発することが所望され、この組成物は、十分に規定された分子量およびポリマー鎖構造、ならびに狭い分子量分布(例えば、2.5より低いPDI値)を有するヒドロキシル官能性ポリマーを含む。
【0008】
特許文献1および特許文献2および特許文献3は、原子移動ラジカル重合(ATRP)と称されるラジカル重合を記載する。ATRPプロセスは、リビングラジカル重合として記載され、このリビングラジカル重合は、予測可能な分子量および分子量分布を有するポリマーの形成を生じる。これらの刊行物のATRPプロセスはまた、制御された構造(すなわち、制御可能な位相幾何、組成など)を有する高度に均一な生成物を提供するように記載される。これらの特許刊行物はまた、ATRPによって調製されたポリマーを記載し、このポリマーは、例えば、ペイントおよびコーティング用の広い種々の適用において有用である。
【特許文献1】国際公開第97/18247号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,763,548号明細書
【特許文献3】米国特許第5,789,487号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
原子移動ラジカル重合を使用して調製されるヒドロキシル官能性共重合体(従って、この共重合体は、十分規定された分子量およびポリマー鎖構造、ならびに狭い分子量分布を有する)を含む熱硬化組成物、を開発することが望ましい。このような組成物は、低粘度に起因する低VOCレベル、および特にコーティング用途における好ましい性能特性の組み合せを有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明によると、以下の項目1〜66が提供され、上記目的が達成される。
【0011】
(項目1) 以下を含む熱硬化性組成物であって:
(a)ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ヒドロキシル官能性ポリマーであって、ここで該ポリマーは、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
−{(M)−(G)
または−{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有さない)であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有する)であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造に存在する残基の1ブロックに生じる残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxは、該ヒドロキシル官能性ポリマーが少なくとも250の数平均分子量を有するように、各構造に関してそれぞれ独立して選択される、
熱硬化性組成物。
【0012】
(項目2) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量および2.0未満の多分散性指数を有する、熱硬化性組成物。
【0013】
(項目3) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記開始剤が、直鎖または分枝鎖の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸エステル、高分子化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、各々が少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する、熱硬化性組成物。
【0014】
(項目4) 項目3に記載の熱硬化性組成物であって、前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C〜C−アルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、ベンジルハライド、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、熱硬化性組成物。
【0015】
(項目5) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記ポリマーが、116〜10,000g/当量のヒドロキシル当量を有する、熱硬化性組成物。
【0016】
(項目6) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、pおよびqはそれぞれ独立して、各xセグメントおよび各構造に関して0〜100の範囲内であり、ここで、pおよびqの合計は、各xセグメントに関して0よりも大きく、そしてqは、少なくとも1つのxセグメントに関して0よりも大きい、熱硬化性組成物。
【0017】
(項目7) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで各構造に関するxは独立して、少なくとも1〜100の範囲である、熱硬化性組成物。
【0018】
(項目8) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、Mが、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、およびオレフィンのうち少なくとも1つから誘導される、熱硬化性組成物。
【0019】
(項目9) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、Mが、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、不飽和芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、熱硬化性組成物。
【0020】
(項目10) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
またはφ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、rおよびsはそれぞれ独立して、0〜100の範囲であり;φは前記ラジカル移動可能基を含まない前記開始剤の残基であるか、または該残基から誘導され;xは、少なくとも1〜100の範囲であり;pおよびqはそれぞれ独立して、各xセグメントに関して0〜100の値の範囲内であり;pおよびqの合計は、各xセグメントに関して0よりも大きく;qは、少なくとも1つのxセグメントに関して0よりも大きく;zは、少なくとも1であり;Tは該開始剤の該ラジカル移動可能基であるか、該ラジカル移動可能基から誘導され;そして、該ヒドロキシル官能性ポリマーが2.0未満の多分散性指数を有する、
熱硬化性組成物。
【0021】
(項目11) 項目10に記載の熱硬化性組成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量および1.8未満の多分散性指数を有する、熱硬化性組成物。
【0022】
(項目12) Tがハライドである、項目10に記載の熱硬化性組成物。
【0023】
(項目13) Tが脱ハロゲン化後反応から誘導される、項目10に記載の熱硬化性組成物。
【0024】
(項目14) 項目13に記載の熱硬化性組成物であって、前記脱ハロゲン化後反応が、前記ヒドロキシル官能性ポリマーと、制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物との接触工程を包含する、熱硬化性組成物。
【0025】
(項目15) 項目14に記載の熱硬化性組成物であって、前記制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物が、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロぺニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの組み合せ、からなる群から選択される、熱硬化性組成物。
【0026】
(項目16) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記架橋剤が、ポリイソシアネート、ならびにメチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラストから選択される、熱硬化性組成物。
【0027】
(項目17) 前記架橋剤がブロックポリイソシアネートである、項目16に記載の熱硬化性組成物。
【0028】
(項目18) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物、からなる群から選択される、熱硬化性組成物。
【0029】
(項目19) 前記ヒドロキシル官能性ポリマーが1.50未満の多分散性指数を有する、項目1に記載の熱硬化性組成物。
【0030】
(項目20) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、(b)におけるヒドロキシル基の、(a)における反応性官能基に対する当量比が、1:0.5〜1:1.5の範囲内である、熱硬化性組成物。
【0031】
(項目21) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、該熱硬化性組成物中の樹脂固体の全重量に基づいて、(a)が10〜90重量%の量で存在し、そして(b)が10〜90重量%の量で存在する、熱硬化性組成物。
【0032】
(項目22) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、Gが、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され、該モノマーは、ヒドロキシアルキル基に2〜4個の炭素原子を有するヒドロキシルアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートから選択される、熱硬化性組成物。
【0033】
(項目23) 基材をコーティングする方法であって、該方法は以下:
(a)該基材に熱硬化性組成物を塗布する工程、
(b)実質的な連続フィルムの形態で該基材上に該熱硬化性組成物を合着させる工程、および
(c)該熱硬化性組成物を硬化する工程、
を包含し、ここで該熱硬化組成物が以下:
(i)ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(ii)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ヒドロキシル官能性ポリマー、
を含有し、ここで、該ポリマーが以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
−{(M)−(G)
または−{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有さない)であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有する)であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造に存在する残基の1ブロックに生じる残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxは、該ヒドロキシル官能性ポリマーが少なくとも250の数平均分子量を有するように、各構造に関してそれぞれ独立して選択される、方法。
【0034】
(項目24) 項目23に記載の方法であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量、および2.0未満の多分散性指数を有する、方法。
【0035】
(項目25) 項目23に記載の方法であって、前記開始剤が、直鎖または分枝鎖の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸エステル、高分子化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、各々が少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する、方法。
【0036】
(項目26) 項目25に記載の方法であって、前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C〜C−アルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、ベンジルハライド、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物、からなる群から選択される、方法。
【0037】
(項目27) 項目23に記載の方法であって、前記ポリマーが、116〜10,000g/当量のヒドロキシル当量を有する、方法。
【0038】
(項目28) 項目23に記載の方法であって、pおとびqはそれぞれ独立して、各xセグメントおよび各構造に関して0〜100の範囲であり、ここで、pおよびqの合計は、各xセグメントに関して0よりも大きく、そしてqは、少なくとも1つのxセグメントに関して0よりも大きい、方法
(項目29) 項目23に記載の方法であって、各構造に関してxは独立して、少なくとも1〜100の範囲内である、方法。
【0039】
(項目30) 項目23に記載の方法であって、Mが、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、およびオレフィンのうち少なくとも1つから誘導される、方法。
【0040】
(項目31) 項目23に記載の方法であって、Mが、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、不飽和芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、方法。
【0041】
(項目32) 項目23に記載の方法であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
またはφ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、rおよびsはそれぞれ独立して、0〜100の範囲であり;φは前記ラジカル移動可能基を含まない前記開始剤の残基であるか、または該残基から誘導され;xは、少なくとも1〜100の範囲であり;pおよびqはそれぞれ独立して、各xセグメントに関して0〜100の値の範囲内であり;pおよびqの合計は、各xセグメントに関して0よりも大きく;qは、少なくとも1つのxセグメントに関して0よりも大きく;zは、少なくとも1であり;Tは該開始剤の該ラジカル移動可能基であるか、該ラジカル移動可能基から誘導され;そして、該ヒドロキシル官能性ポリマーが2.0未満の多分散性指数を有する、方法。
【0042】
(項目33) 項目32に記載の方法であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量および1.8未満の多分散性指数を有する、方法。
【0043】
(項目34) Tがハライドである、項目32に記載の方法。
【0044】
(項目35) Tが脱ハロゲン化後反応から誘導される、項目32に記載の方法。
【0045】
(項目36) 項目35に記載の方法であって、前記脱ハロゲン化後反応が、前記ヒドロキシル官能性ポリマーと、制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物との接触工程を包含する、方法。
【0046】
(項目37) 項目36に記載の方法であって、前記制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物が、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロぺニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの組み合せ、からなる群から選択される、方法。
【0047】
(項目38) 項目23に記載の方法であって、前記架橋剤が、ポリイソシアネート、ならびにメチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラストから選択される、方法。
【0048】
(項目39) 項目23に記載の方法であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物、からなる群から選択される、方法。
【0049】
(項目40) 前記ヒドロキシル官能性ポリマーが1.50未満の多分散性指数を有する、項目23に記載の方法。
【0050】
(項目41) 項目23に記載の方法であって、(ii)におけるヒドロキシル基の、(i)における反応性官能基に対する当量比が、1:0.5〜1:1.5の範囲内である、方法。
【0051】
(項目42) 項目23に記載の方法であって、前記熱硬化性組成物中の樹脂固体の全重量に基づいて、(i)が10〜90重量%の量で該熱硬化性組成物中に存在し、そして(ii)が10〜90重量%の量で該熱硬化性組成物中に存在する、方法。
【0052】
(項目43) 項目23に記載の方法であって、Gが、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され、該モノマーは、ヒドロキシアルキル基に2〜4個の炭素原子を有するヒドロキシルアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートから選択される、方法。
【0053】
(項目44) 項目23に記載の方法であって、前記熱硬化性組成物が、クリアコートとして、カラーベースコート上に塗布され、カラープラスクリア複合コーティングを形成する、方法。
【0054】
(項目45) 項目23に記載の方法によってコーティングされた基材。
【0055】
(項目46) 多成分複合コーティング構成物であって、該構成物は、色素性フィルム形成組成物によって堆積されるベースコート、および該ベースコート上に塗布される透明性トップコートを含み、ここで、該透明性トップコートは、クリアフィルム形成組成物によって堆積され、以下:
(a)ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ヒドロキシル官能性ポリマー、を含む熱硬化性組成物であり、ここで、該ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
−{(M)−(G)
または−{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有さない)であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有する)であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造に存在する残基のブロックに生じる残基の平均数を表し;そしてp、q、およびxは、該ヒドロキシル官能性ポリマーが少なくとも250の数平均分子量を有するように、各構造に関してそれぞれ独立して選択される、構成物。
【0056】
(項目47) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量、および2.0未満の多分散性指数を有する、構成物。
【0057】
(項目48) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記開始剤が、直鎖または分枝鎖の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸エステル、高分子化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、各々が少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する、構成物。
【0058】
(項目49) 項目48に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C〜C−アルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、ベンジルハライド、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物、からなる群から選択される、構成物。
【0059】
(項目50) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記ポリマーが、116〜10,000g/当量のヒドロキシル当量を有する、構成物。
【0060】
(項目51) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、pおよびqはそれぞれ独立して、各xセグメントおよび各構造に関して0〜100の範囲内であり、ここで、pおよびqの合計は、各xセグメントに関して0よりも大きく、そしてqは、少なくとも1つのxセグメントに関して0よりも大きい、構成物。
【0061】
(項目52) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、各構造に関してxは独立して、少なくとも1〜100の範囲である、構成物。
【0062】
(項目53) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、Mが、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、およびオレフィンのうち少なくとも1つから誘導される、構成物。
【0063】
(項目54) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、Mが、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、不飽和芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、構成物。
【0064】
(項目55) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
またはφ−[{(G)−(M)−(G)−T]
を含み、
ここで、rおよびsはそれぞれ独立して、0〜100の範囲であり;φは前記ラジカル移動可能基を含まない前記開始剤の残基であるか、または該残基から誘導され;xは、少なくとも1〜100の範囲であり;pおよびqはそれぞれ独立して、各xセグメントに関して0〜100の値の範囲内であり;pおよびqの合計は、各xセグメントに関して0よりも大きく;qは、少なくとも1つのxセグメントに関して0よりも大きく;zは、少なくとも1であり;Tは該開始剤の該ラジカル移動可能基であるか、または該ラジカル移動可能基から誘導され;そして、該ヒドロキシル官能性ポリマーが2.0未満の多分散性指数を有する、構成物。
【0065】
(項目56) 項目55に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量および1.8未満の多分散性指数を有する、構成物。
【0066】
(項目57) Tがハライドである、項目55に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0067】
(項目58) Tが脱ハロゲン化後反応から誘導される、項目55に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0068】
(項目59) 項目58に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記脱ハロゲン化後反応が、前記ヒドロキシル官能性ポリマーと、制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物との接触工程を包含する、構成物。
【0069】
(項目60) 項目59に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物が、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロぺニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの組み合せ、からなる群から選択される、構成物。
【0070】
(項目61) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記架橋剤が、ポリイソシアネート、ならびにメチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラストから選択される、構成物。
【0071】
(項目62) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記ヒドロキシル官能性ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物、からなる群から選択される、構成物。
【0072】
(項目63) 前記ヒドロキシル官能性ポリマーが1.50未満の多分散性指数を有する、項目46に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0073】
(項目64) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、(b)におけるヒドロキシル基の、(a)における反応性官能基に対する当量比が、1:0.5〜1:1.5の範囲内である、構成物。
【0074】
(項目65) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、前記クリアフィルム形成組成物中の樹脂固体の全重量に基づいて、(a)が10〜90重量%の量で該クリアフィルム形成組成物中に存在し、そして(b)が10〜90重量%の量で該クリアフィルム形成組成物中に存在する、構成物。
【0075】
(項目66) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、Gが、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され、該モノマーは、ヒドロキシアルキル基に2〜4個の炭素原子を有するヒドロキシルアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートから選択される、構成物。
【0076】
本発明に従って、以下を含む熱硬化性組成物が提供される:
(a)ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ヒドロキシル官能性ポリマーであって、ここで上記ポリマーは、少なくとも1つの以下のポリマー鎖構造を含み:
−{(M)−(G)
または−{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有さない)であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有する)であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造に存在する残基のブロックに生じる残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxは、上記ヒドロキシル官能性ポリマーが少なくとも250の数平均分子量を有するように、各構造に関してそれぞれ独立して選択される。
【0077】
また、本発明によって、本発明の組成物を使用して基材をコーティングする方法、このような方法でコーティングされる基材、およびカラープラスクリア複合コーティング構成物が提供される。
【0078】
実施例以外において、または他に指示しない場合、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量を表現する全ての数、反応条件などは、用語「約」によって、全ての場合において改変されるものとして理解されるべきである。
(詳細な説明)
本明細書中に使用される、用語「ポリマー」は、ホモ重合体(すなわち、単一のモノマー種から作製されるポリマー)と共重合体(すなわち、2以上のモノマー種から作製されるポリマー)の両方の言及を意味する。
【0079】
本発明の組成物に使用されるヒドロキシル官能性ポリマーは、少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下での原子移動ラジカル重合によって調製される非ゲル化ポリマーである。このポリマーは、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含む:
(I) −{(M)−(G)
または (II) −{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有さない)であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有する)であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造に存在する残基のブロックに生じる残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxは、上記ヒドロキシル官能性ポリマーが少なくとも250、好ましくは少なくとも1000、そしてより好ましくは少なくとも2000の数平均分子量(M)を有するように、各構造に関してそれぞれ独立して選択される。ヒドロキシル官能性ポリマーは、また、典型的に、16,000未満、好ましくは10,000未満、そしてより好ましくは5000未満のMを有する。ヒドロキシル官能性ポリマーのMは、これらの値の任意の組み合せの間の範囲(記載の値を含む)であり得る。他に記載されない限り、本明細書中および特許請求の範囲に記載の全ての分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。構造IおよびIIがこのポリマーにおける「xセグメント」を規定することに留意されたし。
【0080】
構造IおよびIIにおいて示されるような下付文字pおよびqは、各ポリマー構造中の残基のブロックにおいて生じる残基の平均数を表す。典型的に、一般的なポリマー構造IおよびIIの各々について、pおよびqはそれぞれ独立して、0以上、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも5の値を有する。また、一般的なポリマー構造IおよびIIの各々について、下付文字pおよびqはそれぞれ独立して、典型的に100未満、好ましくは20未満、そしてより好ましくは15未満の値を有する。下付文字pおよびqの値は、記載された値を含む、これらの値の任意の組み合わせ間の範囲であり得る。さらに、ポリマーにおいて、pとqとの和は、xセグメント内で0よりも大きく、そしてqは、ポリマーにおける少なくとも1つのxセグメント内で0よりも大きい。
【0081】
構造IおよびIIに示される下付文字xは典型的に、少なくとも1の値を有する。また、下付文字xは典型的に、100未満、好ましくは50未満、そしてより好ましくは10未満の値を有する。下付文字xの値は、記載された値を含む、これらの値の任意の組み合わせ間の範囲であり得る。さらに、ポリマー分子中で、1より多い構造Iおよび/またはIIが生じる場合、xは、各構造について異なる値を有し得(pおよびqのように)、グラジエント共重合体のような様々なポリマー構成を可能にする。
【0082】
一般構造IおよびIIの−(M)−部分は、(1)単一のタイプのM残基のホモブロック(pユニットの長さである)、(2)2つのタイプのM残基の交互ブロック、(3)2以上のタイプのM残基のポリブロック、または(4)2以上のタイプのM残基のグラジエントブロックを表す。例示のために、M−ブロックが、例えば、10モルのメチルメタクリレートから調製される場合、構造IおよびIIの−(M)−部分は、メチルメタクリレートの10残基のホモブロックを表す。M−ブロックが、例えば5モルのメチルメタクリレートおよび5モルのブチルメタクリレートから調製される場合、一般構造IおよびIIの−(M)−部分は、当業者に公知であるように調製条件に依存して以下を表す:(a)合計で10残基(すなわちp=10)を有する、メチルメタクリレートの5残基およびブチルメタクリレートの5残基のジブロック;(b)合計で10残基を有する、ブチルメタクリレートの5残基およびメチルメタクリレートの5残基のジブロック;(c)メチルメタクリレート残基またはブチルメタクリレート残基のいずれかで始まり、合計で10残基を有する、メチルメタクリレート残基およびブチルメタクリレート残基の交互ブロック;または(d)メチルメタクリレート残基またはブチルメタクリレート残基のいずれかで始まり、合計で10残基を有する、メチルメタクリレート残基およびブチルメタクリレート残基のグラジエントブロック。
【0083】
ポリマー鎖構造IおよびIIの−(G)−部分は、−(M)−部分の様式と同じ様式で記載され得る。
【0084】
以下は、一般的なポリマー鎖構造IおよびIIによって表される種々のポリマー構成を例示することを目的として示される。
【0085】
(ホモブロックポリマー構成:)
xが1であり、pが0であり、qが5である場合、一般的なポリマー鎖構造Iは、5G残基のホモブロックを表し、より詳細には以下の一般式IIIによって示される:
III
−(G)−(G)−(G)−(G)−(G)−。
【0086】
(ジブロック共重合体構成:)
xが1であり、pが5であり、qが5である場合、一般的なポリマー鎖構造Iは、5M残基および5G残基のジブロックを表し、より詳細には以下の一般式IVによって示される:
IV
−(M)−(M)−(M)−(M)−(M)−(G)−(G)−(G)−(G)−(G)−。
【0087】
(交互共重合体構成:)
xが1より大きく(例えば5)、pおよびqが各x−セグメントについてそれぞれ1である場合、ポリマー鎖構造Iは、M残基およびG残基の交互ブロックを表し、より詳細には以下の一般式Vによって示される:

−(M)−(G)−(M)−(G)−(M)−(G)−(M)−(G)−(M)−(G)−。
【0088】
(グラジエント共重合体構成:)
xが1より大きく(例えば4)、pおよびqが各x−セグメントについてそれぞれ独立して例えば1〜3の範囲内である場合、ポリマー鎖構造Iは、M残基およびG残基のグラジエントブロックを表し、より詳細には以下の一般式VIによって示される:
VI
−(M)−(M)−(M)−(G)−(M)−(M)−(G)−(G)−(M)−(G)−(G)−(M)−(G)−(G)−(G)−。
【0089】
グラジエント共重合体は、ATRP法によって2つ以上のモノマーから調製され得、ポリマー骨格に沿って、次第に、そして対称的かつ予測可能な様式で変化する構成を有するように一般的に記載される。グラジエント共重合体は、ATRP法により、(a)重合過程の間、反応媒体に供給されるモノマー比を変えることによって、(b)異なる重合速度を有するモノマーを含むモノマー供給を使用して、または(c)(a)および(b)の組み合わせで調製され得る。グラジエント共重合体は、国際特許公開WO97/18247の頁72〜78にさらに詳細に記載される。
【0090】
一般的なポリマー鎖構造IおよびIIの残基Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導される。本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「エチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマー」などの用語は、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、オレフィンおよび他のラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含むことを意味する。
【0091】
Mが誘導され得るビニルモノマーのクラスには、(メト)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライドおよびカルボン酸のビニルエステルが挙げられるがこれらには限定されない。本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「(メト)アクリレート」などの用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を意味する。好ましくは、残基Mは、アルキル基において1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステルおよびオレフィンの少なくとも1つから誘導される。残基Mが誘導され得る、アルキル基において1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレートの具体例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:メチル(メト)アクリレート、エチル(メト)アクリレート、プロピル(メト)アクリレート、イソプロピル(メト)アクリレート、ブチル(メト)アクリレート、tert−ブチル(メト)アクリレート、2−エチルへキシル(メト)アクリレート、ラウリル(メト)アクリレート、イソボルニル(isobornyl)(メト)アクリレート、シクロへキシル(メト)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロへキシル(メト)アクリレートおよびイソブチル(メト)アクリレート。
【0092】
残基Mはまた、1個より多い(メト)アクリレート基を有するモノマー(例えば、無水(メト)アクリル酸およびジエチレングリコールビス((メト)アクリレート))から選択され得る。残基Mはまた、分枝モノマーとして働き得る、ラジカル移動可能基を含むアルキル(メト)アクリレート(例えば、2−(2−ブロモプロピオノキシ)エチルアクリレート)から選択され得る。
【0093】
Mが誘導され得るビニル芳香族モノマーの具体的な例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:スチレン、p−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびジビニルナフタレン。Mが誘導され得るビニルハライドには以下が挙げられるが、これには限定されない:ビニルクロリドおよびビニリデンフルオリド。Mが誘導され得るカルボン酸のビニルエステルには、以下が挙げられるが、これには限定されない:ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、VERSATIC Acid(VERSATIC Acidは、三級脂肪族カルボン酸の混合物であり、Shell Chemical Companyから入手可能)のビニルエステルなど。
【0094】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「オレフィン」などの用語は、石油留分をクラッキングすることによって得られる、1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素を意味する。Mが誘導され得るオレフィンの具体例には以下が挙げられるが、これには限定されない:プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソブチレンおよびジイソブチレン。
【0095】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「(メト)アリルモノマー(単数または複数)」は、置換および/または非置換のアリル官能性を含むモノマー、すなわち、以下の一般式VIIによって示される1つ以上のラジカルを意味する:
VII
C=C(R)−CH
ここで、Rは、水素、ハロゲンまたはC〜Cアルキル基である。最も一般的には、Rは、水素またはメチル基である。(メト)アリルモノマーの例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:(メト)アリルアルコール;(メト)アリルエーテル(例えば、メチル(メト)アリルエーテル);カルボン酸の(メト)アリルエステル(例えば、(メト)アリルアセテート);(メト)アリルベンゾエート);(メト)アリルn−ブチレート;VERSATIC Acidの(メト)アリルエステルなど。
【0096】
Mが誘導され得る、他のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーには、以下が挙げられるが、これには限定されない:環状無水物(例えば、無水マレイン酸、無水1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸および無水イタコン酸);不飽和であるがα,β−エチレン性不飽和を有さない、酸のエステル(例えば、ウンデシレン酸のメチルエステル);およびエチレン性不飽和二塩基酸のジエステル(例えば、ジエチルマレアート)。
【0097】
上記構造中に(G)として示されるモノマーブロックは、一つのタイプのモノマーまたは2つ以上のモノマーの混合から誘導され得る。上記で議論したように、このような混合物は、モノマー残基のブロックであり得るか、またはそれらは交互残基であり得る。
【0098】
一般的なポリマー鎖構造IおよびIIの残基Gは、ヒドロキシル官能性を有するモノマーから誘導され得る。典型的には、残基Gは、少なくとも1つのヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタアクリレートから誘導され、これらは、2〜4個の炭素原子をそのヒドロキシアルキル基内に有し、例として以下が挙げられる:ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、ヒドロキシブチル(メト)アクリレート、など。あるいは、残基Gは、アリルアルコールおよびビニルアルコールから誘導され得る。あるいは、ヒドロキシル官能性は、後反応(例えば、まず、エポキシまたは酸官能性ポリマーを調製し、そしてそれを酸官能性(ポリマーがエポキシ官能性である場合)またはエポキシ官能性(ポリマーが酸官能性である場合)化合物と反応させ、二級ヒドロキシル官能性を有するポリマーを形成することによって)によってポリマーに組み込まれ得る。
【0099】
好ましくは、ポリマーは、以下のポリマー鎖構造の少なくとも1つを含む:
(VIII)φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
または(IX) φ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、下付文字rおよびsは、MおよびG残基のそれぞれのブロック中に生じる残基の平均数を表す。一般構造VIIIおよびIXの−(M)−および−(G)−部分は、部分−(M)−および−(G)−に関して本明細書中、上記に記載されるような意味と同様な意味を有する。部分φは、ラジカル移動可能基を有さない開始剤の残基であるか、またはその開始剤の残基から誘導され;p、qおよびxは、上記で定義された通りであり;zは、少なくとも1であり;Tは開始剤のラジカル移動可能基であるか、そのラジカル移動可能基から誘導され;そして、エポキシ官能性ポリマーが2.5未満、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.8未満、そしてさらにより好ましくは1.5未満の多分散性指数を有する。
【0100】
構造VIIIおよびIXがそのポリマー自体を表し得るか、また、あるいはこれらの構造の各々がポリマーの末端セグメントを包含し得ることが理解されるべきである。例えば、このポリマーが、1つのラジカル移動可能基を有する開始剤を使用してATRPによって調製され、そしてzが1である場合、構造VIIIおよびIXのいずれかは、完全な直鎖ポリマーを表し得る。しかし、ヒドロキシル官能性ポリマーが、スターポリマーまたは他の分枝鎖ポリマーである場合(ここで、分枝鎖ポリマーのいくつかはヒドロキシル官能性を有さなくても良い)、一般ポリマー鎖構造VIIIおよびIXは、ヒドロキシル官能性ポリマーの一部を表す。
【0101】
一般ポリマー構造VIIIおよびIXの各々について、下付文字rおよびsの各々は、独立して、0またはそれよも大きい値を有する。下付文字rおよびsの各々は、独立して、各一般ポリマー構造VIIIおよびIXについて、典型的には100未満、好ましくは50未満、そしてより好ましくは10未満の値を有する。rおよびsの値は、それぞれ、これらの値の任意の組み合せの間の範囲(記載の値を含む)であり得る。
【0102】
ヒドロキシル官能性ポリマーは、典型的に、少なくとも116g/当量、好ましくは少なくとも200g/当量のヒドロキシル当量を有する。ポリマーのヒドロキシル当量はまた、好ましくは10,000g/当量未満、好ましくは5000g/当量未満、そしてより好ましくは1000g/当量未満である。ヒドロキシル官能性ポリマーのヒドロキシル当量は、これらの値の任意の組み合せとの間の範囲(記載の値を含む)であり得る。本明細書中で使用されるように、ヒドロキシル官能性当量は、ASTM E222−94に従って決定される。
【0103】
上記のように、本発明の熱硬化性組成物中に使用されるヒドロキシル官能性ポリマーは、原子移動ラジカル重合によって調製される。ATRP法は、「リビング重合(living polymerization)」(すなわち、本質的に連鎖移動がなく本質的に連鎖停止がなく増える、鎖成長重合)として記載される。ATRPによって調製されるポリマーの分子量は、反応物の化学量論(すなわち、モノマー(単数または複数)および開始剤(単数または複数)の初期濃度)によって制御され得る。さらに、ATRPはまた、例えば、狭い分子量分布(例えば、2.5未満のPDI値)およびうまく定義されたポリマー鎖構造(例えば、ブロック共重合体および交互共重合体)を包含する特徴を有する、ポリマーを提供する。
【0104】
ATRPプロセスは、一般に、以下の工程を包含するとして説明され得る:開始系の存在下で、1つ以上のラジカル重合可能モノマーを重合する工程;ポリマーを形成する工程;および形成されたポリマーを単離する工程。開始系は、以下を含む:ラジカル移動可能な原子または基を有する開始剤;遷移金属化合物(すなわち、触媒)(これは、上記開始剤を用いる可逆酸化還元サイクルに関与する);およびリガンド(これは、遷移金属化合物と配位する)。ATRPプロセスは、国際特許公開WO97/18247ならびに米国特許第5,763,548号および同第5,789,487号にさらに詳細に記載される。
【0105】
本発明のヒドロキシル官能性ポリマーの調製において、開始剤は、直鎖または分枝の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、高分子化合物およびそれらの混合物からなる群から選択され得、これら各々は、少なくとも1つのラジカル移動可能基を有し、これは、典型的に、ハロ基である。開始剤はまた、官能基(例えば、ヒドロキシル基)で置換され得る。さらなる有用な開始剤および種々のラジカル移動可能基(それらと会合し得る)は、国際特許公開WO97/18247の第42〜45頁に記載される。
【0106】
ラジカル移動可能基を有する高分子化合物(オリゴマー性化合物を含む)は、開始剤として使用され得、そして本明細書中で「マクロ開始剤(macroinitiator)」として言及される。マクロ開始剤の例としては、カチオン重合によって調製され、そして末端ハライド(例えば、クロリド)を有するポリスチレン、ならびに2−(2−ブロモプロピオノキシ(bromopropionoxy)エチルアクリレートおよび1つ以上のアルキル(メト)アクリレート(例えば、ブチルアクリレート)のポリマー(従来の非リビングラジカル重合によって調製される)が挙げられるが、これらに限定されない。マクロ開始剤は、グラフトポリマー(例えば、グラフト化されたブロック共重合体および、くし型(comb)共重合体)を調製するための、ATRPプロセスにおいて使用され得る。マクロ開始剤のさらなる議論は、米国特許第5,789,487号に見受けられる。
【0107】
好ましくは、開始剤は、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム(haloform)、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜Cカルボン酸のC〜Cアルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C〜Cアルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、ベンジルハライド、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。特に好ましい開始剤は、ジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートである。
【0108】
本発明のヒドロキシル官能性ポリマーの調製において使用され得る触媒は、開始剤および成長ポリマー鎖を用いる、酸化還元サイクルに関与し得る任意の遷移金属化合物を含む。遷移金属化合物がポリマー鎖との直接炭素−金属結合を形成しないことが好ましい。本発明において有用である遷移金属触媒は、以下の一般式X:
(X)
TMn+
によって表され得る。ここで、TMは、遷移金属であり、nは、0〜7の値を有する遷移金属上の形式電荷であり、そしてQは、対イオンまたは共有結合成分である。遷移金属(TM)の例としては、Cu、Au、Ag、Hg、Pd、Pt、Co、Mn、Ru、Mo、Nb、FeおよびZnが挙げられるが、これらに限定されない。Qの例としては、ハロゲン、ヒドロキシ、酸素、C〜Cアルコキシ、シアノ、シアネート(cyanato)、チオシアネート、およびアジドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい遷移金属は、Cu(I)であり、そしてQは、好ましくは、ハロゲン(例えば、クロリド)である。従って、遷移金属触媒の好ましいクラスは、ハロゲン化銅(例えば、Cu(I)Cl)である。遷移金属触媒が少量(例えば、1モル%)の酸化還元結合体(例えば、Cu(II)Cl(Cu(I)Clが使用される場合))を含むこともまた好ましい。本発明のヒドロキシル官能性ポリマーの調製において有用なさらなる触媒は、国際特許公開WO97/18247の第45および46頁に記載される。酸化還元結合体は、国際特許公開WO97/18247の第27〜33頁に記載される。
【0109】
本発明のヒドロキシル官能性ポリマーの調製において使用され得るリガンドは、1つ以上の窒素、酸素、リンおよび/またはイオウ原子(これらは、遷移金属触媒化合物に例えばσおよび/またはπ結合を介して配位され得る)を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用なリガンドのクラスとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:非置換および置換のピリジンおよびビピリジン;ポルフィリン;クリプタンド;クラウンエーテル、例えば、18−クラウン−6;ポリアミン、例えば、エチレンジアミン;グリコール、例えば、エチレングリコールのようなアルキレングリコール;一酸化炭素;ならびに配位モノマー、例えば、スチレン、アクリロニトリルおよびヒドロキシアルキル(メト)アクリレート。リガンドの好ましいクラスは、置換されたビピリジン、例えば、4,4’−ジアルキル−ビピリジル(bypyridyl)である。本発明のエポキシ官能性ポリマーの調製において使用され得るさらなるリガンドは、国際特許公開WO97/18247の第46〜53頁に記載される。
【0110】
本発明のヒドロキシル官能性ポリマーの調製において、開始剤、遷移金属化合物およびリガンドの量ならびに相対比は、ATRPが最も効果的に行われるものである。使用される開始剤の量は、広範に変化し得、そして典型的に反応媒体中に10−4モル/リットル(M)〜3M(例えば、10−3M〜10−1M)の濃度で存在する。ヒドロキシル官能性ポリマーの分子量は、開始剤およびモノマー(単数または複数)の相対濃度に直接関連し得、開始剤のモノマーに対するモル比は、ポリマー調製において重要な因子である。開始剤のモノマーに対するモル比は、典型的に、10−4:1〜0.5:1(例えば、10−3:1〜5×10−2:1)の範囲内である。
【0111】
本発明のヒドロキシル官能性ポリマーの調製において、遷移金属化合物の開始剤に対するモル比は、典型的に、10−4:1〜10:1(例えば、0.1:1〜5:1)の範囲である。リガンドの遷移金属化合物に対するモル比は、典型的に、0.1:1〜100:1(例えば、0.2:1〜10:1)の範囲内である。
【0112】
本発明の熱硬化性組成物において有用であるヒドロキシル官能性ポリマーは、溶媒の非存在下で(すなわち、塊状重合プロセスによって)調製され得る。一般に、ヒドロキシル官能性ポリマーは、溶媒(典型的に、水および/または有機溶媒)の存在下で調製される。有用な有機溶媒のクラスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エーテル、環式エーテル、C〜C10アルカン、C〜Cシクロアルカン、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、アミド、ニトリル、スルホキシド、スルホンおよびそれらの混合物。超臨界溶媒(例えば、CO、C〜Cアルカンおよびフルオロカーボン)がまた、使用され得る。溶媒の好ましいクラスは芳香族炭化水素溶媒であり、その特に好ましい例はキシレン、およびSOLVESSO 100(Exxon Chemical Americaから市販されている芳香族溶媒のブレンド)である。さらなる溶媒は、国際特許公開WO97/18247の第53〜56頁にさらに詳細に記載される。
【0113】
ヒドロキシル官能性ポリマーは、典型的に、25℃〜140℃(好ましくは、50℃〜100℃)の範囲内の反応温度、ならびに1〜100気圧(通常、大気圧)の範囲内の圧で調製される。原子移動ラジカル重合は、典型的に、24時間未満(例えば、1時間と8時間との間)で完了する。
【0114】
本発明の熱硬化組成物を使用する前に、ATRP遷移金属触媒およびその関連のリガンドは、典型的に、ヒドロキシル官能性ポリマーから分離または除去される。これは、しかし、本発明の要件ではない。ATRP触媒の除去は、公知の方法(例えば、触媒結合剤の、ポリマー、溶媒および触媒の混合物への添加、続く濾過、を包含する)を用いて達成される。適切な触媒結合剤の例としては、例えば、アルミナ、シリカ、クレイ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ポリマー、溶媒およびATRP触媒の混合物は、触媒結合剤の床(bed)を通過され得る。あるいは、ATRP触媒は、インサイチュで酸化され得、そしてヒドロキシル官能性ポリマー中に保持され得る。
【0115】
ヒドロキシル官能性ポリマーは、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。ポリマーの形状または全体的構成は、その調製において使用される開始剤およびモノマーの選択によって制御され得る。直鎖ヒドロキシル官能性ポリマーは、1または2つのラジカル移動可能基を有する開始剤(例えば、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネートおよびα,α’−ジクロロキシレン)を使用することによって調製され得る。分枝鎖ヒドロキシル官能性ポリマーは、分枝鎖モノマー(すなわち、ラジカル移動可能基または1より多いエチレン性不飽和ラジカル重合可能基を含むモノマー(例えば、2−(2−ブロモプロピオノキシ)エチルアクリレート、p−クロロメチルスチレンおよびジエチレングリコールビス(メタクリレート)))を使用することによって調製され得る。超分枝鎖ヒドロキシル官能性ポリマーは、使用される分枝モノマーの量を増加させることによって調製され得る。
【0116】
スターヒドロキシル官能性ポリマーは、3以上のラジカル移動可能基を有する開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)を使用して調製され得る。当業者に公知のように、スターポリマーは、コア−アームまたはアーム−コア法によって調製され得る。コア−アーム法において、スターポリマーは、多官能性開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)の存在下でモノマーを重合させることによって調製される。類似の組成物および構成のポリマー鎖またはアームは、コア−アーム法において、開始剤コアから成長する。
【0117】
アーム−コア方法において、このアームは、コアから別に調製され、必要に応じて、異なる組成物、構成、分子量およびPDIを有し得る。アームは、異なるヒドロキシル当量を有し得、あるものは任意のヒドロキシル官能基なしで調製され得る。アームの調製の後に、これらは、コアに接続される。
【0118】
グラフトポリマー形態のヒドロキシル官能性ポリマーは、本明細書中で前述されたように、マクロ開始剤を使用して調製され得る。グラフト、分枝鎖、超分枝鎖およびスターポリマーは、国際特許公開WO97/18247の頁79〜91にさらに詳細に記載される。
【0119】
本発明に有用なヒドロキシル官能性ポリマーの多分散性指数(PDI)は、典型的に、2.5未満であり、より典型的には、2.0未満であり、好ましくは1.8未満(例えば1.5)である。本明細書中および特許請求の範囲で使用されるように、「多分散性指数」は、以下の等式により決定される:(重量平均分子量(M)/数平均分子量(M))。単分散(monodisperse)ポリマーは、1.0のPDIを有する。
【0120】
構造VIIIおよびIX中で示される、記号φは、ラジカル移動可能基を含有しない開始剤の残基であるか、またはこれから誘導され、これは最も頻繁には、スルホニル基またはマロネートである。例えば、ヒドロキシル官能性ポリマーが臭化ベンジルによって開始される場合、記号φ、より詳細にはφ−は、以下の構造の残基:
【0121】
【化1】

である。
記号φはまた、開始剤の残基から誘導され得る。例えば、エポキシ官能性ポリマーが、エピクロロヒドリンを使用して開始される場合、記号φ、より詳細にはφ−は、2,3−エポキシ−プロピル残基:
【0122】
【化2】

である。次いで、この2,3−エポキシ−プロピル残基は、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル残基に変換され得る。開始剤残基の誘導または変換は、好ましくは、ポリマー骨格に沿ったヒドロキシル官能基の損失が最小であるATRPプロセスの地点(例えば、ヒドロキシル官能基を有する残基のブロックの取り込みの前)で行われる。
【0123】
一般式VIIIおよびIXにおいて、下付文字zは、φに結合したヒドロキシル官能性ポリマー鎖の数と等しい。下付文字zは少なくとも1であり、そして広範な値を有し得る。くし型(comb)ポリマーまたはグラフトポリマーの場合、φは、いくつかのラジカル移動可能なペンダント基を有するマクロ開始剤であり、zは、10を越す値、例えば、50、100または1000を有し得る。典型的に、zは、10未満であり、好ましくは、6未満、そしてより好ましくは、5未満である。本発明の好ましい実施態様において、zは1または2である。
【0124】
一般式VIIIおよびIXの記号Tは、開始剤のラジカル移動可能基であるか、またはこれから誘導される。例えば、ヒドロキシル官能性ポリマーがジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートの存在下で調製される場合、Tはラジカル移動可能ブロモ基であり得る。
【0125】
ラジカル移動可能基は必要に応じて、(a)除去されるか、または(b)別の部分に化学的に変換され得る。(a)または(b)のいずれかにおいて、記号Tは、本明細書中で、開始剤のラジカル移動可能基から誘導されると考えられる。ラジカル移動可能基は、求核性化合物(例えば、アルカリ金属アルコキシレート)との置換によって除去され得る。本発明において、ラジカル移動可能基が除去されるか、または化学的に変換される方法がまた、ポリマーのヒドロキシル官能基に対して比較的穏やかであることが所望される。
【0126】
本発明の好ましい実施態様において、ラジカル移動可能基はハロゲンであり、このハロゲンは穏やかな脱ハロゲン化反応により除去され得、この反応はポリマーのヒドロキシル官能基を減らさない。この反応は典型的に、ポリマーが形成した後、少なくともATRP触媒の存在下で、後反応として実施される。好ましくは、脱ハロゲン化後反応は、ATRP触媒およびその対応するリガンドの両方の存在下で行われる。
【0127】
穏やかな脱ハロゲン化反応は、本発明のハロゲン末端ヒドロキシル官能性ポリマーを、1つ以上のエチレン性不飽和化合物と接触させることによって行われる。エチレン性不飽和化合物は、原子移動ラジカル重合が行われる条件下のスペクトルの少なくとも一部分で容易にラジカル重合し得ず、本明細書中以下で、「制限ラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物」(LRPEU化合物)と称される)。本明細書中で使用される「ハロゲン末端」および類似の用語は、例えば、分枝鎖ポリマー、くし型ポリマーおよびスターポリマーとして表される、ペンダントハロゲンもまた含むことを意味する。
【0128】
いずれの理論にも縛られることを意図しないが、手近な証拠に基づいて、ハロゲン末端ヒドロキシル官能性ポリマーと1つ以上のLRPEU化合物との間の反応は、(1)末端ハロゲン基の除去、および(2)少なくとも1つの炭素−炭素二重結合の付加(ここで、末端炭素−ハロゲン結合は切れる)を生じると考えられる。脱ハロゲン化反応は典型的に、0℃〜200℃の範囲の温度(例えば、0℃〜160℃)、0.1〜100気圧の範囲の圧力(例えば、0.1〜50気圧)で行われる。この反応はまた、典型的には、24時間未満(例えば、1時間と8時間との間)で行われる。LRPEU化合物は、化学量論的な量より少ない量で添加され得るが、好ましくは、ヒドロキシル官能性ポリマー中に存在する末端ハロゲンのモルに対して少なくとも化学量論的な量で添加される。化学量論的な量より多く添加される場合、LRPEU化合物は、典型的に、5モル%を超えない量(例えば、1〜3モル%)で存在し、末端ハロゲンの全モルを越す。
【0129】
穏やかな条件下で、本発明の組成物のヒドロキシル官能性ポリマーを脱ハロゲン化するのに有用な、制限ラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物には、以下の一般式XIIで表される化合物が挙げられる:
【0130】
【化3】

一般式XIIにおいて、RおよびRは、同一であるかまたは異なる有機基、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基;アリール基;アルコキシ基;エステル基;アルキル硫黄基;アシルオキシ基;および窒素含有アルキル基であり得、ここで、RおよびR基のうち少なくとも一方は有機基であり、一方、他方は有機基または水素であり得る。例えば、RまたはRの一方がアルキル基である場合、他方はアルキル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アレーン、硫黄含有アルキル基、または窒素含有アルキル基および/もしくは窒素含有アリール基であり得る。R基は同一であるか、または水素もしくは低級アルキルから選択される異なる基であり得、ヒドロキシル官能性ポリマーの末端ハロゲンとLRPEU化合物との間の反応が阻止されないように選択される。また、R基はRおよび/またはR基に結合され、環式化合物を形成し得る。
【0131】
LRPEU化合物はハロゲン基を含有しないことが好ましい、適切なLRPEU化合物の例には、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例には、イタコン酸ジメチルおよびジイソブテン(2,4,4−トリメチル−1−ペンタン)が挙げられる。
【0132】
例示の目的のために、ハロゲン末端ヒドロキシル官能性ポリマーとLRPEU化合物(例えば、α−メチルスチレン)との間の反応は、以下の一般スキーム1で要約される。
【0133】
一般スキーム1
【0134】
【化4】

一般スキーム1において、P−Xは、ハロゲン末端ヒドロキシル官能性ポリマーを表す。
【0135】
上記に示したように、ヒドロキシル官能性ポリマーは、以下から選択される多数のポリマー構造のいずれかを有し得る:直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラジエントポリマー、およびグラフトポリマー。これらのポリマーの1つ以上の異なるタイプの混合物が本発明の組成物中に使用され得る。
【0136】
ヒドロキシル官能性ポリマーは、本発明の熱硬化性組成物において、樹脂結合剤または添加剤として、別個の樹脂結合剤と組み合わせて使用され得、これは、原子移動ラジカル重合または従来の重合方法によって調製され得る。添加剤として使用される場合、本明細書中に記載されるようなヒドロキシル官能性ポリマーは、少ない官能性(例えば、単官能性)および対応して高い当量を有する。あるいは、反応性希釈剤としての使用のような他の用途の場合、添加剤は対応して低い当量を有する高い官能性であり得る。
【0137】
ヒドロキシル官能性ポリマーは典型的に、本発明の熱硬化性組成物中に、熱硬化性組成物の樹脂固体の全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%(添加剤として使用される場合)、好ましくは、少なくとも10重量%(樹脂結合剤として使用される場合)、より好ましくは少なくとも25重量%の量で存在する。また、熱硬化性組成物は、典型的に、熱硬化性組成物の樹脂固体の全重量に基づいて、99.5重量%未満、好ましくは、90重量%未満、より好ましくは、75重量%未満の量で存在するヒドロキシル官能性ポリマーを含有する。ヒドロキシル官能性ポリマーは、本発明の熱硬化性組成物中に、これらの値の任意の組み合せの間の範囲の量で存在し得る(記載の値を含む)。
【0138】
本発明の熱硬化性組成物は、ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤をさらに含む。適切は架橋剤の例には、メチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含有するアミノプラスト、ならびにポリイソシアネートが挙げられる。
【0139】
アミノプラストは、ホルムアルデヒドとアミンまたはアミドとの反応から得られる。最も一般的なアミンまたはアミドは、メラミン、ウレアまたはベンゾグアナミンであり、これらが好ましい。しかし、他のアミンまたはアミドとの縮合体(例えば、グリコールウリル(glycoluril)のアルデヒド縮合体)が使用され得、これらの縮合体は、粉末コーティングに有用な高融解結晶生成物を与える。使用されるアルデヒドは、最も頻繁には、ホルムアルデヒドであるが、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、およびベンズアルデヒドのような他のアルデヒドが使用され得る。
【0140】
アミノプラストは、メチロール基を含み、そして好ましくは、これらの基の少なくとも一部は、硬化応答を改変するためにアルコールでエーテル化される。任意の一価アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノールおよびヘキサノールを含む)がこの目的のために用いられ得る。
【0141】
好ましくは、使用されるアミノプラストは、1〜4個の炭素原子を含むアルコールでエーテル化された、メラミン、ウレア−またはベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合体である。
【0142】
他の適切な架橋剤には、ポリイソシアネートが挙げられる。このポリイソシアネート架橋剤は、実質的に遊離イソシアネート基を有さない、十分にキャップされたポリイソシアネートであり得るか、またはこれは、遊離イソシアネート官能性を含み得る。遊離イソシアネート基により、周囲と同じぐらい低い温度での組成物の硬化が可能になる。架橋剤が遊離イソシアネート基を含む場合、フィルム形成組成物は、好ましくは、貯蔵安定性を保持するために2パッケージ組成物(一方のパッケージは、架橋剤を含有し、他方はヒドロキシル官能性ポリマーを含有する)である。
【0143】
ポリイソシアネートは、脂肪族または芳香族ポリイソシアネート、あるいはその2つの混合物であり得る。ジイソシアネートが好ましいが、より高分子のポリイソシアネートが、ジイソシアネートの代わりかまたはそれと組み合わせて使用され得る。
【0144】
適切な脂肪族ジイソシアネートの例は、直鎖脂肪族イソシアネート(例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)である。脂環式ジイソシアネートもまた使用され得る。例には、イソホロンジイソシアネート、および4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。適切な芳香族ジイソシアネートの例は、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、および2,4−または2,6−トルエンジイソシアネートである。適切なより高分子のポリイソシアネートの例は、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。ジイソシアネートのビウレットおよびイソシアヌレート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート)(それらの混合物を含む)もまた適切である。
【0145】
イソシアネートプレポリマー、例えば、ポリイソシアネートと、ポリオール(例えばネオネオペンチルグリコールおよびトリメチロールプロパン)またはポリマーポリオール(例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール(NCO/OH当量比が1より大きい)との反応生成物もまた使用され得る。
【0146】
任意の適切な脂肪族、脂環式または芳香族アルキルモノアルコール、あるいはフェノール性化合物が、本発明の組成物において、キャップポリイソシアネート架橋剤用のキャッピング剤として使用され得、例えば、以下が挙げられる:低級脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、およびn−ブタノール);脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール);芳香族アルキルアルコール(例えば、フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノール);ならびにフェノール性化合物(例えば、フェノール自体、ならびに例えばクレゾールおよびニトロフェノールのような置換フェノール(ここで置換基はコーティング作用に影響を与えない))。グリコールエーテルもまたキャッピング剤として使用され得る。適切なグリコールエーテルには、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。
【0147】
他の適切なキャッピング剤には、オキシム(例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(例えば、ε−カプロラクタム)、ならびにアミン(例えば、ジブチルアミン)が挙げられる。
【0148】
架橋剤は典型的には、本発明の熱硬化性組成物中に、組成物の全樹脂固体重量を基準にして、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも25重量%の量で存在する。架橋剤はまた、典型的には、この組成物中に、組成物の全樹脂固体重量を基準にして、90重量%未満、好ましくは、75重量%未満の量で存在する。本発明の熱硬化性組成物中に存在する架橋剤の量は、これらの値の任意の組み合わせ間の範囲であり得る(記載した値を含む)。
【0149】
ポリマー中のヒドロキシル基対架橋剤中の反応性官能基の当量比は、典型的には、1:0.5〜1:1.5、好ましくは、1:0.8〜1:1.2の範囲内である。
【0150】
通常、熱硬化性組成物は、好ましくは、架橋剤とポリマー(単数または複数)上の反応性基との硬化を促進するために、触媒を含む。アミノプラストの硬化に適切な触媒には、酸(例えば、リン酸および硫酸)、または置換スルホン酸が挙げられる。例には、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フェニル酸リン酸塩、エチルヘキシル酸リン酸塩などが挙げられる。イソシアネートの硬化に適切な触媒には、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートなど)が挙げられる。触媒は通常、熱硬化性組成物中の樹脂固体の全重量を基準にして、約0.05〜約5.0重量%、好ましくは、約0.25〜約2.0重量%の量で存在する。
【0151】
本発明の熱硬化性組成物は、好ましくは、フィルム形成(コーティング)組成物として使用され、そしてこれは、このような組成物において従来的に使用される補助成分を含み得る。任意の成分(例えば、可塑剤、界面活性剤、チキソトロピック剤(thixotropic agent)、脱気剤(anti−gassing agent)、有機共溶媒、フローコントロール剤、酸化防止剤、UV光吸収剤、および当該分野で従来的な類似の添加剤)が、この組成物に含まれ得る。これらの成分は、樹脂固体の全重量を基準にして、典型的には、約40重量%までの量で存在する。
【0152】
本発明の熱硬化性組成物は、典型的に、液体であり、そして水系であり得るが、通常は溶媒系である。適切な溶媒キャリアには、様々なエステル、エーテルおよび芳香族溶媒(これらの混合物を含む)が挙げられ、これらはコーティング処方物の分野で公知である。組成物は、典型的に、約40〜80重量%の全固体含量を有する。
【0153】
本発明の熱硬化性組成物は、表面コーティングで従来的に使用される着色顔料を含み得、そしてモノコート(monocoat)、すなわち、色素性コーティングとして使用され得る。適切な着色顔料には、例えば、無機顔料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、塩化鉛およびカーボンブラック)、ならびに有機顔料(例えば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン)が挙げられる。上記の顔料の混合物もまた使用され得る。適切なメタリック顔料には、特に、アルミニウムフレーク、臭化銅フレークおよび金属酸化物被覆マイカ、ニッケルフレーク、スズフレークならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0154】
一般に、顔料は、コーティング固体の全重量を基準にして、約80重量%までの量で、コーティング組成物に組み込まれる。メタリック顔料は、コーティング固体の全重量を基準にして、約0.5〜約25重量%の量で使用される。
【0155】
上記のように、本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化性組成物を基材に塗布する工程、この熱硬化性組成物を、実質的な連続フィルムの形態でこの基材に合着する工程、およびこの熱硬化性組成物を硬化する工程、を包含する方法において使用され得る。
【0156】
これらの組成物は、これらが接着する様々な基材(木材、金属、ガラスおよびプラスチックを含む)に塗布され得る。これらの組成物は、従来の手段(ブラッシング、浸漬、フローコーティング、噴霧などを含む)によって塗布され得るが、これらは、噴霧によって最も頻繁に塗布される。エアスプレーおよび静電スプレー用の通常のスプレー技術および装置、ならびに手動方法または自動方法のいずれかが使用され得る。
【0157】
組成物を基材に塗布した後、この組成物を合着して、基材上に実質的な連続フィルムを形成する。典型的には、このフィルム厚は、約0.01〜5ミル(約0.254〜約127ミクロン)、好ましくは、約0.1〜約2ミル(約2.54〜約50.8ミクロン)の厚さである。このフィルムは、加熱または空気乾燥時間によって溶媒(すなわち、有機溶媒および/または水)をフィルムから除去することで、基材の表面上に形成される。好ましくは、加熱はごく短時間であり、任意の連続的に塗布されたコーティングが、組成物を溶解することなく、確実にフィルムに塗布され得るのに十分である。適切な乾燥条件は、特定の組成物に依存するが、一般に、約68〜250°F(20〜121℃)の温度で、約1〜5分の乾燥時間が適切である。最適な外観を創るために、組成物の1つ以上のコートが塗布され得る。コーティング間で、すでに塗布されたコーティングがフラッシュされ得る;すなわち、約1〜20分間、周囲条件に曝される。
【0158】
本発明のフィルム形成組成物は、好ましくは、多成分複合コーティング構成物におけるクリアコート層(例えば、「カラープラスクリア」コーティングシステム)(これは、少なくとも1つの色素性または着色ベースコート、および少なくとも1つのクリアトップコートを含む)として使用される。この実施態様において、クリアフィルム形成組成物は、本発明の熱硬化性組成物を含み得る。
【0159】
カラープラスクリアシステム中のベースコートのフィルム形成組成物は、コーティング塗布、特に、自動車の塗装に有用な、任意の組成物であり得る。ベースコートのフィルム形成組成物は、樹脂結合剤、および着色剤として作用する顔料を含む。特に有用な樹脂結合剤は、アクリルポリマー、ポリエステル(アルキドを含む)、およびポリウレタンである。原子移動ラジカル重合を使用して調製されるポリマーはまた、ベースコートにおける樹脂結合剤として使用され得る。
【0160】
ベースコート組成物は溶媒系または水系であり得る。カラープラスクリア構成物中の水系ベースコートは、米国特許第4,403,003号に開示され、そしてこれらのベースコートを調製する際に使用される樹脂組成物は、本発明の実施において使用され得る。また、水系ポリウレタン(例えば、米国特許第4,147,679号に従って調製されるような水系ポリウレタン)は、ベースコートにおいて樹脂結合剤として使用され得る。さらに、水系コーティング(例えば、米国特許第5,071,904号に記載されるような水系コーティング)は、ベースコートとして使用され得る。
【0161】
これらのベースコートは、ベースコートに色を与える顔料を含む。適切な顔料には、上記のような顔料が挙げられる。一般に、顔料は、コーティング固体の重量を基準にして、約1〜80重量%の量で、コーティング組成物に組み込まれる。メタリック顔料は、コーティング固体の重量を基準にして、約0.5〜25重量%の量で用いられる。
【0162】
所望ならば、ベースコート組成物は、実施される表面コーティングの分野に周知の、上記の物質を含有する、さらなる物質を含み得る。これらの物質は、コーティング組成物の全重量の、40重量%までを構成し得る。
【0163】
ベースコーティング組成物は、従来の手段によって、これらの組成物が接着する種々の基材に塗布され得るが、これらは、最も頻繁に、スプレーによって塗布される。エアスプレーおよび静電スプレーのための通常のスプレー技術および装置、ならびに手動方法または自動方法のいずれかが使用され得る。
【0164】
ベースコート組成物を基材に塗布している間、ベースコートのフィルムが基材上で形成される。典型的には、ベースコート厚は、約0.01〜5ミル(0.254〜127ミクロン)、好ましくは、0.1〜2ミル(2.54〜50.8ミクロン)の厚さである。
【0165】
ベースコートを基材に塗布した後、クリアコートがベースコートに確実に塗布され得るのに十分であるが、ベースコートを完全に硬化させるのに不十分である加熱または空気乾燥時間によって、ベースコートフィルムから溶媒を除去することにより、ベースコート組成物を溶解することなく、フィルムが基材の表面上に形成される。1つ以上のベースコートおよび複数のクリアコートが、最適な外観を創るために塗布され得る。通常、コート間で、すでに塗布されたコートがフラッシュされる。
【0166】
クリアトップコート組成物は、任意の従来のコーティング技術(例えば、ブラッシング、スプレー、浸漬またはフローイング)によって、ベースコート基材に塗布され得るが、優れた光沢のため、スプレー塗布が好ましい。任意の公知のスプレー技術(例えば、圧縮エアスプレー、静電スプレー)、および手動方法または自動方法のいずれかが用いられ得る。
【0167】
クリアコート組成物がベースコートに塗布された後、コーティングされた基材は、コーティング層(単数または複数)を硬化するために加熱され得る。硬化の実施において、溶媒は除去され、そしてこの組成物中のフィルム形成物質は架橋される。加熱または硬化の実施は通常、少なくとも周囲温度(遊離ポリイソシアネート架橋剤の場合)〜350°F(周囲温度〜177℃)の範囲の温度で行われるが、それより低いかまたは高い温度が、架橋機構を活性化するために必要に応じて使用され得る。
【0168】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明され、これらの実施例は、そこにおける多数の改変および変更が当業者に明らかであるため、例示のみであることが意図される。他に記載しない限り、全ての部およびパーセントは重量による。
【0169】
(合成比較例Aおよび合成実施例B〜C)
合成比較例Aおよび合成実施例B〜Cは、コーティング組成物の比較例1および実施例2〜3で使用されるヒドロキシル官能性ポリマーの調製を記載する。比較例Aのヒドロキシル官能性ポリマーは、非リビングラジカル重合によって調製される比較ポリマーである。実施例BおよびCのヒドロキシル官能性ポリマーは、本発明の熱硬化性コーティング組成物において有用なポリマーの代表である。比較例Aおよび実施例B〜Cのポリマーの物理的特性を表1にまとめる。
【0170】
合成比較例Aおよび合成実施例B〜Cにおいて、以下のモノマーの略語が使用される:イソブチルメタクリレート(IBMA);およびヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)。比較例Aおよび実施例B〜Cの各ポリマーを、モノマーの全重量を基準にして、60重量%のIBMAモノマーおよび40重量%のHPMAモノマーを含むモノマーから調製した。各実施例BおよびCに示されるブロック共重合体構造は、代表的なブロック共重合体の一般式である。
【0171】
(比較例A)
比較ヒドロキシル官能性ポリマーを、表Aにおいて列挙した成分から、標準的な(すなわち、非制御あるいは非リビング)ラジカル重合によって調製した。
【0172】
【表1】

(a)2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)開始剤(E.I.du Pont de Nemours and Companyから購入)。
【0173】
充填物1を、2リットルの丸底フラスコ中で、窒素ブランケット下、大気圧で、還流温度まで加熱し、このフラスコは、ロータリーブレードアジテーター、還流冷却器、温度計、ならびに温度コントローラを通してフィードバックループにおいて共に連結される加熱マントル、窒素入口ポート、および2つの添加ポートを備えていた。還流条件下の間、充填物2を、上記のフラスコへ、3時間にわたって供給した。充填物2の添加が完了すると、フラスコの内容物をさらに1時間還流した。このフラスコの内容物を、次いで、100℃まで冷却し、充填物3を10分かけて添加し、続いて、100℃で2時間維持した。フラスコの内容物を冷却し、そして適切な容器に移した。
【0174】
(実施例B)
本発明の熱硬化性組成物に有用なヒドロキシル官能性トリブロック共重合体を、表Bにおいて列挙した成分から、原子移動ラジカル重合によって調製した。この実施例のヒドロキシル官能性ブロック共重合体を、以下のように図式で要約する:
(HPMA,IBMA)−(IBMA)−(HPMA)
【0175】
【表2】

(b)臭化銅(II)は、フレークの形態であり、Aldrich Chemical Companyから得た。
(c)銅粉末は、25ミクロンの平均粒子サイズ、1g/cmの密度を有し、OMG Americasから購入した。
【0176】
充填物1を、2リットル4つ口フラスコ中で、50℃まで加熱し、そしてこの温度で1時間維持し、このフラスコは、モータ駆動ステンレス鋼攪拌ブレード、水冷式冷却器、ならびに温度フィードバック制御デバイスによって接続された加熱マントルおよび温度計を備えていた。このフラスコの内容物を、25℃まで冷却し、そして充填物2を10分間にわたって添加した。次いで、充填物3を、15分間にわたって添加し、続いて、フラスコの内容物を70℃まで加熱し、そしてこの温度で2時間維持した。この2時間の維持が完了すると、フラスコの内容物を80℃まで加熱し、次いで、充填物4を15分間にわたって添加し、続いて80℃で2時間維持した。次に、フラスコの内容物を70℃の温度まで冷却し、そして充填物5を15分にわたって添加し、続いて、70℃で3時間維持した。この3時間の維持が完了すると、200gのキシレンおよび100gのMAGNESOL合成ケイ酸マグネシウム(The Dallas Group of Americaから購入)を、このフラスコに添加し、続いて、70℃で30分間混合した。フラスコの内容物を濾過し、そして濾過した樹脂を、全固体が、全重量を基準にして70重量%になるまで真空ストリップした。
【0177】
(実施例C)
本発明の熱硬化性組成物に有用な、ヒドロキシル官能性トリブロック共重合体を、原子移動ラジカル重合によって、表Cに列挙する成分から調製した。この実施例のヒドロキシル官能性ブロック共重合体を、以下のように図式で要約する:
(IBMA)−(HPMA)−(IBMA)
【0178】
【表3】

充填物1を、実施例Bに記載のように、装着した2リットルの4つ口フラスコ中で70℃に加熱して、この温度で1時間維持した。このフラスコの内容物を25℃まで冷却し、そして充填物2を10分間にわたって添加し、続いて、充填物3を15分間にわたって添加した。この充填物3の添加が完了するとすぐ、フラスコの内容物を80℃まで加熱し、そしてこの温度に2時間維持した。この2時間の維持が完了すると、フラスコの内容物を70℃まで冷却し、そして充填物4を15分間にわたって添加し、続いて、70℃で2時間維持した。次に、フラスコの内容物を80℃まで加熱し、そして充填物5を15分間にわたって添加し、続いて、80℃で2時間維持した。この2時間の維持が完了すると、200gのキシレンおよび100gのMAGNESOL合成ケイ酸マグネシウム(The Dallas Group of Americaから購入)を、このフラスコに添加し、続いて、70℃で30分間混合した。フラスコの内容物を濾過し、そして濾過した樹脂を、全固体が、全重量を基準にして70重量%になるまで真空ストリップした。
【0179】
【表4】

(d)数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
(e)全重量を基準にした%重量固体は、0.2gのサンプルから、110℃/1時間で測定した。
【0180】
(コーティング組成物比較例1および実施例2〜3)
実施例2および3は、本発明に従う代表的な熱硬化性コーティング組成物であり、一方、比較例1のコーティング組成物は比較例である。これらのコーティング組成物を、表2に列挙される成分から調製した。
【0181】
【表5】

(f)Cytec Industriesから購入したCYMEL 1130メラミン架橋剤。
(g)ポリ(ブチルアクリレート)フロー添加剤は、全重量を基準にして、キシレン中60重量%の固体であり、Mn=6700およびMw=2600を有する。
(h)ドデシルベンゼンスルホン酸。
(i)Ciba−Geigy Corp.から購入したTINUVIN 328紫外線安定剤。この会社は、これを2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tertアミルフェニル]−2−H−ベンゾトリアゾールであると記載する。
【0182】
コーティング組成物比較例1および実施例2〜3の成分を、それぞれ、適切な容器中で十分混合する。液体コーティング組成物の物理的特性を測定し、その結果を表3にまとめる。まず、試験パネルを白色ベースコート(DCT−6640 白色ベースコート、PPG Industries,Incから購入)でコーティングし、これを93℃で5分間乾燥した。比較例1および実施例2〜3の液体コーティング組成物を、この白色ベースコーティングされた試験パネルにスプレー塗布し、そして141℃で30分間硬化した。この硬化したコーティングの物理的特性を測定し、その結果を表4にまとめる。
【0183】
【表6】

(j)コーティング組成物の%重量固体は、100℃で60分間測定した。
(k)粘度は、液体コーティング組成物が、充填されたNumber 4 Ford Cup(Gardner Labから市販される)からドレインするのにかかる時間を測定することによって決定した。
【0184】
【表7】

(l)メーカーの提案した操作方法に従って、BYK Gardner Haze−Gloss Meterを使用して、20°光沢値を得た。
(m)硬化コーティング像の明瞭さ(DOI)の値は、メーカーが提案した操作方法に従って、DORIGON II DOIメーターを使用して得た。より大きなDOI値は、より滑らかなコーティングを表す。
(n)硬化したコーティングのヌープ硬度を、American Standard Test Method(ASTM) D 1474−92に従って、Tukon Microhardness Tester Model300(Wilson Instruments,Division of Instron Corporation製)を使用して、測定した。この微小硬度テスターを、圧子(indentor)で25g重で作動させた。より大きいヌープ硬度値はより硬いコーティングを表す。10以上のヌープ硬度値が一般に、所望であると考えられる。
(o)光沢保持%は、硬化コーティングの傷試験(mar testing)(BYK Gardner Haze−Gloss Meterを使用する)の前と後にとった20°光沢測定値を比較することによって決定した。コーティングされた試験パネルに、BON−AMI研磨クレンザー(Bon−Ami Company製)を軽く振りかけ、この振りかけられた試験パネルを、次いで、Atlas AATCC Mar Tester Model CM−5(Atlas Electrical Devices Co.製)で30サイクル作動させた。この傷テスターを、フェルト布を傷テスターの円筒状アクリルフィンガーにかぶせて作動させた。新しいフェルト布での覆いを、10サイクルの傷テスター操作毎に使用した。30サイクルの傷試験が完了すると、この試験パネルを冷水道水でリンスし、乾燥し、20°光沢の読み取りを行い、そして光沢保持%を以下の式を使用して計算した:(傷つけた20°光沢の読み取り/本来の20°光沢の読み取り)×100。
(p)硬化フィルムの鉛筆硬度を、軟らかい芯を有する鉛筆からより硬い芯を有する鉛筆まで、一連の鉛筆でフィルム表面をスクラッチする試みによって手動で測定する。最も軟らかい〜最も硬い鉛筆硬度系列は、以下の通りである:4B、3B、2B、B、F、HB、H、2H、3H、4H、5H。表4に列挙された鉛筆硬度は、溶媒処理したフィルム表面をスクラッチしなかった、最も硬い鉛筆の硬度である。
(q)約1〜1.5cmの直径を有するキシレン滴を、3分間硬化フィルムの表面にのせた。キシレン滴をこのフィルムからふき取り、そしてこの滴があったフィルムの鉛筆硬度を、本明細書中、前述のように測定した。
【0185】
表4にまとめられた結果は、本発明に従う熱硬化性コーティング組成物(すなわち、実施例2および3)が、比較組成物(すなわち、比較例1)から得られた硬化コーティングの特性と同様の特性を有する硬化コーティングを提供することを示す。さらに、表3にまとめられた結果は、同じ粘度において、本発明に従う液体コーティング組成物(すなわち、実施例2および3)が、比較液体コーティング組成物(すなわち、比較例1)より高い%重量固体を有することを示す。
【0186】
本発明を、その特定の実施態様の具体的な詳細を参照して記載した。このような詳細が、添付の特許請求の範囲に含まれる限りを除き、そして特許請求の範囲に含まれる程度までを除き、本発明の範囲の限定であるとみなされることは、意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む熱硬化性組成物であって:
(a)ヒドロキシル基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ヒドロキシル官能性ポリマーであって、ここで該ポリマーは、以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
−{(M)−(G)
または−{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有さない)であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの残基(ヒドロキシル官能性を有する)であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造に存在する残基の1ブロックに生じる残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxは、該ヒドロキシル官能性ポリマーが少なくとも250の数平均分子量を有するように、各構造に関してそれぞれ独立して選択される、
熱硬化性組成物。

【公開番号】特開2008−260959(P2008−260959A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201340(P2008−201340)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【分割の表示】特願2004−278574(P2004−278574)の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】