説明

原料処理装置の有価金属回収方法及び装置

【課題】原料中に含まれる有価金属を回収し得、限られた資源の有効利用を図り得る原料処理装置の有価金属回収方法及び装置を提供する。
【解決手段】ダウンカマー7途中にハロゲン化合物を添加しガス化炉2で燃料(原料)と反応させ、燃料(原料)中に含まれる有価金属の高沸点化合物を燃焼炉5で沸点の低いハロゲン化塩に変換して燃焼排ガス(高温ガス)側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段15と、媒体分離装置8で流動媒体が分離された燃焼排ガス(高温ガス)中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料処理装置の有価金属回収方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低品位の重質油や今まであまり利用されていなかったペトロコークス等を燃料として使用することが提案されている。しかし、これらの燃料中には、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の金属類が含まれており、これらの燃料を通常のボイラ等で燃焼させた場合、バナジウムとナトリウムやカリウムによって生成される低融点化合物によって、下流のボイラチューブに高温腐食が生じる問題が懸念される。
【0003】
前述の如き低品位の燃料は、ガス化することによって高品位な燃料に変換することが可能となるため、従来においては、例えば、高温ガス化装置内で、高温(およそ1100〜1300[℃])のもと、前記燃料(原料)と酸素とを部分酸化反応[C+1/2・O2→CO]させることにより可燃性のガス化ガスを生成したり、或いは、ガス化炉と燃焼炉とを備えたいわゆる二塔式の低温ガス化装置において、前記ガス化炉の内部で、ガス化炉の底部へ供給される蒸気や燃料(原料)自体から蒸発する水分の存在下で低温(およそ800〜900[℃])を保持することにより水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]を生じさせ、H2やCO等の可燃性のガス化ガスを生成する技術の開発が進められている。
【0004】
尚、重質油を部分酸化によってガス化する装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開平7−150148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の如き高温ガス化装置において重質油やペトロコークス等の燃料を使用した場合、高温でのガス化であるため、燃料中に含まれる金属類が気化してガス化ガス側へ移行し、製品となる精製ガスの品位を低下させるだけでなく、ガス精製部の構成機器(例えば、ボイラチューブ)の劣化を早めるという問題があった。
【0006】
又、低温ガス化装置において重質油やペトロコークス等の燃料を使用した場合、低温でガス化を行うため、ガス化ガス側への金属類の移行は抑制され、製品となる精製ガスの品位を低下させたり、ガス精製部の構成機器(例えば、ボイラチューブ)の劣化を早めるという問題は生じにくいが、ガス化残渣としての可燃性固形分を流動媒体と一緒に燃焼炉へ導き、該燃焼炉の流動層で燃焼させると、金属類が流動媒体と一緒に系内を循環し続け、その回収が困難となっていた。
【0007】
因みに、前記燃料中に含まれるニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の金属類のうち、特にニッケル(Ni)、バナジウム(V)等は有価金属であって、稀少価値が高く、産業上さまざまな方面で使われており、うまく濃縮回収できると、利用価値が高い。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、原料中に含まれる有価金属を回収し得、限られた資源の有効利用を図り得る原料処理装置の有価金属回収方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原料を加熱処理する際に高温ガスが発生する原料処理装置の有価金属回収方法であって、
ハロゲン化合物を添加して原料と反応させ、該原料中に含まれる有価金属の高沸点化合物を沸点の低いハロゲン化塩に変換して高温ガス側への移行率を増やした後、該高温ガス中から前記ハロゲン化塩をダスト分離手段で分離回収することを特徴とする原料処理装置の有価金属回収方法にかかるものである。
【0010】
又、本発明は、原料を加熱処理する際に高温ガスが発生する原料処理装置の有価金属回収装置であって、
ハロゲン化合物を添加して原料と反応させ、該原料中に含まれる有価金属の高沸点化合物を沸点の低いハロゲン化塩に変換して高温ガス側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段と、
前記高温ガス中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段と
を備えたことを特徴とする原料処理装置の有価金属回収装置にかかるものである。
【0011】
前記原料処理装置の有価金属回収装置においては、前記原料処理装置を、
流動用反応ガスにより流動層を形成して投入される原料としての燃料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、
該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ流動用反応ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行い、高温ガスとしての燃焼排ガスが発生する燃焼炉と、
該燃焼炉から導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体を前記ガス化炉に供給する媒体分離装置と
を備えた二塔式の低温ガス化装置とし、
前記媒体分離装置で流動媒体が分離された燃焼排ガスを前記ダスト分離手段へ導入することができる。
【0012】
又、前記原料処理装置の有価金属回収装置においては、前記媒体分離装置で分離した流動媒体にハロゲン化合物を添加してガス化炉へ投入することが有効となる。
【0013】
前記原料処理装置の有価金属回収装置においては、前記燃料にハロゲン化合物を添加してガス化炉へ投入することもできる。
【0014】
前記原料処理装置の有価金属回収装置においては、前記ガス化炉で生成された可燃性固形分及び流動媒体にハロゲン化合物を添加して燃焼炉へ導入するようにしても良い。
【0015】
一方、前記原料処理装置の有価金属回収装置においては、前記ダスト分離手段を、前記ハロゲン化塩の沸点より低い温度に調節可能なサイクロン、フィルタ、バグフィルタ、電気集塵器の少なくとも一つとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の原料処理装置の有価金属回収方法及び装置によれば、原料中に含まれる有価金属を回収し得、限られた資源の有効利用を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明を実施する形態の第一例として二塔式の低温ガス化装置を示すものであって、該二塔式の低温ガス化装置は、
蒸気、及び空気又は酸素等の流動用反応ガスにより流動媒体(硅砂、石灰石等)の流動層1を形成して投入される原料としての燃料(重質油やペトロコークス等)のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉2と、
該ガス化炉2で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入管3から導入され且つ流動用反応ガスにより流動層4を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行い、高温ガスとしての燃焼排ガスが発生する燃焼炉5と、
該燃焼炉5から燃焼排ガス管6を介して導入される燃焼排ガス(高温ガス)より流動媒体を分離し該分離した流動媒体をダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に供給するホットサイクロン等の媒体分離装置8と、
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスより流動媒体を分離して前記ガス化炉2へ戻すホットサイクロン等の媒体分離装置9と
を備えてなる構成を有している。
【0019】
尚、図1中、11は前記ガス化炉2の底部へ導入される蒸気及び流動用反応ガスを流動層1内へ均一に吹き込むための分散板、12は前記ガス化炉2内部における導入管3が接続される部分を下方のみが開放されるように覆うことにより流動層1内の流動媒体が導入管3へ直接流出することを防止するための仕切壁、13は前記燃焼炉5の底部へ導入される流動用反応ガスを流動層4内へ均一に吹き込むための分散板、14はガス化炉2へ原料としての燃料を供給するための燃料供給管である。
【0020】
そして、本図示例の場合、前記媒体分離装置8で分離した流動媒体をガス化炉2へ導くダウンカマー7途中にハロゲン化合物を添加し前記ガス化炉2で燃料(原料)と反応させ、該燃料(原料)中に含まれる有価金属の高沸点化合物を前記燃焼炉5で沸点の低いハロゲン化塩に変換して前記燃焼排ガス(高温ガス)側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段15と、
前記媒体分離装置8で流動媒体が分離された燃焼排ガス(高温ガス)中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段16と
を備えるようにしてある。
【0021】
前記ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)、フッ素(F2)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、フッ化水素(HF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化アンモニウム(NH4F)、臭化水素(HBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化カルシウム(CaBr2)、臭化アンモニウム(NH4Br)、ヨウ化水素(HI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)等を用いることができる。
【0022】
ここで、前記燃焼炉5での可燃性固形分の燃焼(およそ900〜1000[℃])により重質油やペトロコークス等の燃料中に含まれていたニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の金属類はそれぞれ主に、酸化ニッケル(NiO)(融点は1984[℃])、五酸化バナジウム(V25)(融点は690[℃])、炭酸ナトリウム(Na2CO3)(融点は851[℃])、炭酸カリウム(K2CO3)(融点は891[℃])等の状態で存在していると考えられ、前記ハロゲン化合物として塩化水素(HCl)を用いた場合、高沸点化合物としての前記酸化ニッケル(NiO)は、下記の反応式
2HCl+NiO→NiCl2+H2
で示される如く、塩化ニッケル(NiCl2)(973[℃]で昇華する)のような沸点の低いハロゲン化塩に変換される。
【0023】
一方、前記ダスト分離手段16は、前記ハロゲン化塩の沸点より低い温度に調節可能なサイクロン、フィルタ、バグフィルタ、電気集塵器の少なくとも一つとすることができるが、本図示例の場合、900〜1000[℃]程度の燃焼排ガスを800[℃]程度に冷却する熱交換器17と、前記塩化ニッケル(NiCl2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)等を捕集可能なフィルタ18と、前記800[℃]程度に冷却された燃焼排ガスを更に600[℃]以下に冷却する熱交換器19と、前記五酸化バナジウム(V25)を捕集可能なバグフィルタ20(電気集塵器でも可)とから構成してある。
【0024】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0025】
前述の如き二塔式の低温ガス化装置では、ガス化炉2において、蒸気、及び空気又は酸素等の流動用反応ガスにより流動層1が形成されており、ここに重質油やペトロコークス等の燃料を燃料供給管14から投入すると、該燃料は部分酸化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体と共に導入管3から、流動用反応ガスにより流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入され、該可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの燃焼排ガスは、燃焼排ガス管6を介してホットサイクロン等の媒体分離装置8へ導入され、該媒体分離装置8において、前記燃焼排ガスより流動媒体が分離され、該分離された流動媒体はダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0026】
そして、本図示例の場合、前記ダウンカマー7途中にハロゲン化合物添加手段15により塩化水素(HCl)等のハロゲン化合物が添加され前記ガス化炉2で燃料(原料)と反応し、該燃料(原料)中に含まれる酸化ニッケル(NiO)等の有価金属の高沸点化合物が、前記燃焼炉5での可燃性固形分の燃焼(およそ900〜1000[℃])により塩化ニッケル(NiCl2)のような沸点の低いハロゲン化塩に変換されて前記燃焼排ガス(高温ガス)側へ移行する形となる。
【0027】
仮に、前記ハロゲン化合物添加手段15により塩化水素(HCl)等のハロゲン化合物が添加されない場合には、高沸点化合物としての酸化ニッケル(NiO)は、その融点が1984[℃]であることから、内部の温度がおよそ800〜900[℃]程度となっているガス化炉2では勿論のこと、内部の温度がおよそ900〜1000[℃]程度となっている燃焼炉5でもガスやミストになることはなく、媒体分離装置8において燃焼排ガスより分離され、流動媒体と一緒に系内を循環し続けることになるが、前記塩化水素(HCl)等のハロゲン化合物の添加によって前記酸化ニッケル(NiO)は、塩化ニッケル(NiCl2)(973[℃]で昇華する)のような沸点の低いハロゲン化塩に変換されることにより、前記燃焼炉5において気化し、気化したハロゲン化塩が媒体分離装置8において流動媒体より分離され、燃焼排ガスと共にダスト分離手段16へ導かれる。
【0028】
前記ダスト分離手段16においては、900〜1000[℃]程度の燃焼排ガスが熱交換器17で800[℃]程度まで冷却されることにより、燃焼排ガスに同伴され且つ気化していた塩化ニッケル(NiCl2)等のハロゲン化塩が固化して粉体となり、フィルタ18において分離回収される。尚、融点が851[℃]の炭酸ナトリウム(Na2CO3)や、融点が891[℃]の炭酸カリウム(K2CO3)等も、前記ハロゲン化塩と同様、前記燃焼炉5において気化し媒体分離装置8において流動媒体より分離され、燃焼排ガスと一緒にダスト分離手段16へ導かれ、該ダスト分離手段16の熱交換器17を通過後、固化して粉体となり、フィルタ18において分離回収される。
【0029】
前記塩化ニッケル(NiCl2)等のハロゲン化塩、並びに炭酸ナトリウム(Na2CO3)や炭酸カリウム(K2CO3)等が分離回収された燃焼排ガスは、熱交換器19で更に600[℃]以下まで冷却されることにより、燃焼排ガスに同伴され且つ気化していた融点が690[℃]の五酸化バナジウム(V25)が固化して粉体となり、バグフィルタ20において分離回収される。
【0030】
因みに、前記ガス化炉2の内部では、ガス化炉2の底部へ供給される蒸気や燃料(原料)自体から蒸発する水分の存在下で低温(およそ800〜900[℃])が保持されると共に、燃料の熱分解によって生成したガスや、その残渣燃料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。尚、前記ガス化炉2の内部では、三酸化バナジウム(V23)等も生成されるが、この融点は1970[℃]と非常に高いため、ガスやミストになることはなく、三酸化バナジウム(V23)等がガス化ガス側へ移行する心配はない。
【0031】
又、前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、ホットサイクロン等の媒体分離装置9で流動媒体が分離され、該媒体分離装置9で分離された流動媒体は、前記ガス化炉2に戻される。
【0032】
こうして、図1に示す例のように、前記ダウンカマー7途中にハロゲン化合物を添加し前記ガス化炉2で燃料(原料)と反応させ、該燃料(原料)中に含まれる有価金属の高沸点化合物を前記燃焼炉5で沸点の低いハロゲン化塩に変換して前記燃焼排ガス(高温ガス)側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段15と、前記媒体分離装置8で流動媒体が分離された燃焼排ガス(高温ガス)中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段16とを備えることにより、燃料(原料)中に含まれるニッケル(Ni)やバナジウム(V)等の有価金属を回収し得、限られた資源の有効利用を図り得る。
【0033】
図2は本発明を実施する形態の第二例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図2に示す如く、前記燃料供給管14途中にハロゲン化合物を添加して前記ガス化炉2へ投入するようハロゲン化合物添加手段15を構成した点にある。
【0034】
本図示例の場合、前記燃料供給管14途中にハロゲン化合物添加手段15により塩化水素(HCl)等のハロゲン化合物が添加され前記ガス化炉2で燃料(原料)と反応し、該燃料(原料)中に含まれる酸化ニッケル(NiO)等の有価金属の高沸点化合物が、前記燃焼炉5での可燃性固形分の燃焼(およそ900〜1000[℃])により塩化ニッケル(NiCl2)のような沸点の低いハロゲン化塩に変換されて前記燃焼排ガス(高温ガス)側へ移行する、即ち前記ハロゲン化塩が前記燃焼炉5において気化し、気化したハロゲン化塩が媒体分離装置8において流動媒体より分離され、燃焼排ガスと一緒にダスト分離手段16へ導かれ、該ダスト分離手段16においては、900〜1000[℃]程度の燃焼排ガスが熱交換器17で800[℃]程度まで冷却されることにより、燃焼排ガスに同伴され且つ気化していた塩化ニッケル(NiCl2)等のハロゲン化塩、並びに炭酸ナトリウム(Na2CO3)や炭酸カリウム(K2CO3)等固化して粉体となり、フィルタ18において分離回収され、前記塩化ニッケル(NiCl2)等のハロゲン化塩、並びに炭酸ナトリウム(Na2CO3)や炭酸カリウム(K2CO3)等が分離回収された燃焼排ガスは、熱交換器19で更に600[℃]以下まで冷却されることにより、燃焼排ガスに同伴され且つ気化していた五酸化バナジウム(V25)が固化して粉体となり、バグフィルタ20において分離回収される。
【0035】
こうして、図2に示す例のように、燃料供給管14途中にハロゲン化合物を添加し前記ガス化炉2で燃料(原料)と反応させ、該燃料(原料)中に含まれる有価金属の高沸点化合物を沸点の低いハロゲン化塩に変換して前記燃焼排ガス(高温ガス)側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段15と、前記媒体分離装置8で流動媒体が分離された燃焼排ガス(高温ガス)中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段16とを備えるようにしても、図1に示す例の場合と同様、燃料(原料)中に含まれるニッケル(Ni)やバナジウム(V)等の有価金属を回収し得、限られた資源の有効利用を図り得る。
【0036】
図3は本発明を実施する形態の第三例であって、図中、図1及び図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1及び図2に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図3に示す如く、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分及び流動媒体を燃焼炉5へ導く導入管3途中にハロゲン化合物を添加するようハロゲン化合物添加手段15を構成した点にある。
【0037】
本図示例の場合、前記導入管3途中にハロゲン化合物添加手段15により塩化水素(HCl)等のハロゲン化合物が添加されて燃焼炉5へ導入され、前記燃料(原料)中に含まれる酸化ニッケル(NiO)等の有価金属の高沸点化合物が、前記燃焼炉5での可燃性固形分の燃焼(およそ900〜1000[℃])により塩化ニッケル(NiCl2)のような沸点の低いハロゲン化塩に変換されて前記燃焼排ガス(高温ガス)側へ移行する、即ち前記ハロゲン化塩が前記燃焼炉5において気化し、気化したハロゲン化塩が媒体分離装置8において流動媒体より分離され、燃焼排ガスと一緒にダスト分離手段16へ導かれ、該ダスト分離手段16においては、900〜1000[℃]程度の燃焼排ガスが熱交換器17で800[℃]程度まで冷却されることにより、燃焼排ガスに同伴され且つ気化していた塩化ニッケル(NiCl2)等のハロゲン化塩、並びに炭酸ナトリウム(Na2CO3)や炭酸カリウム(K2CO3)等固化して粉体となり、フィルタ18において分離回収され、前記塩化ニッケル(NiCl2)等のハロゲン化塩、並びに炭酸ナトリウム(Na2CO3)や炭酸カリウム(K2CO3)等が分離回収された燃焼排ガスは、熱交換器19で更に600[℃]以下まで冷却されることにより、燃焼排ガスに同伴され且つ気化していた五酸化バナジウム(V25)が固化して粉体となり、バグフィルタ20において分離回収される。
【0038】
こうして、図3に示す例のように、導入管3途中にハロゲン化合物を添加して前記燃焼炉5へ導き、前記燃料(原料)中に含まれる有価金属の高沸点化合物を沸点の低いハロゲン化塩に変換して前記燃焼排ガス(高温ガス)側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段15と、前記媒体分離装置8で流動媒体が分離された燃焼排ガス(高温ガス)中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段16とを備えるようにしても、図1及び図2に示す例の場合と同様、燃料(原料)中に含まれるニッケル(Ni)やバナジウム(V)等の有価金属を回収し得、限られた資源の有効利用を図り得る。
【0039】
尚、本発明の原料処理装置の有価金属回収方法及び装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、ガス化ガスが生成されるガス化炉と、高温ガスとしての燃焼排ガスが発生する燃焼炉とを備えた二塔式の低温ガス化装置に限らず、単なる流動層燃焼炉或いはコークス炉(熱分解炉)等のように、原料を加熱処理する際に高温ガスが発生する原料処理装置であれば、どのような装置にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を実施する形態の第一例を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明を実施する形態の第二例を示す全体概要構成図である。
【図3】本発明を実施する形態の第三例を示す全体概要構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1 流動層
2 ガス化炉
3 導入管
4 流動層
5 燃焼炉
6 燃焼排ガス管
7 ダウンカマー
8 媒体分離装置
9 媒体分離装置
14 燃料供給管
15 ハロゲン化合物添加手段
16 ダスト分離手段
17 熱交換器
18 フィルタ
19 熱交換器
20 バグフィルタ(又は電器集塵器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を加熱処理する際に高温ガスが発生する原料処理装置の有価金属回収方法であって、
ハロゲン化合物を添加して原料と反応させ、該原料中に含まれる有価金属の高沸点化合物を沸点の低いハロゲン化塩に変換して高温ガス側への移行率を増やした後、該高温ガス中から前記ハロゲン化塩をダスト分離手段で分離回収することを特徴とする原料処理装置の有価金属回収方法。
【請求項2】
原料を加熱処理する際に高温ガスが発生する原料処理装置の有価金属回収装置であって、
ハロゲン化合物を添加して原料と反応させ、該原料中に含まれる有価金属の高沸点化合物を沸点の低いハロゲン化塩に変換して高温ガス側への移行率を増やすハロゲン化合物添加手段と、
前記高温ガス中から前記ハロゲン化塩を分離回収するダスト分離手段と
を備えたことを特徴とする原料処理装置の有価金属回収装置。
【請求項3】
前記原料処理装置を、
流動用反応ガスにより流動層を形成して投入される原料としての燃料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、
該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ流動用反応ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行い、高温ガスとしての燃焼排ガスが発生する燃焼炉と、
該燃焼炉から導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体を前記ガス化炉に供給する媒体分離装置と
を備えた二塔式の低温ガス化装置とし、
前記媒体分離装置で流動媒体が分離された燃焼排ガスを前記ダスト分離手段へ導入するようにした請求項2記載の原料処理装置の有価金属回収装置。
【請求項4】
前記媒体分離装置で分離した流動媒体にハロゲン化合物を添加してガス化炉へ投入するようにした請求項3記載の原料処理装置の有価金属回収装置。
【請求項5】
前記燃料にハロゲン化合物を添加してガス化炉へ投入するようにした請求項3記載の原料処理装置の有価金属回収装置。
【請求項6】
前記ガス化炉で生成された可燃性固形分及び流動媒体にハロゲン化合物を添加して燃焼炉へ導入するようにした請求項3記載の原料処理装置の有価金属回収装置。
【請求項7】
前記ダスト分離手段を、前記ハロゲン化塩の沸点より低い温度に調節可能なサイクロン、フィルタ、バグフィルタ、電気集塵器の少なくとも一つとした請求項2〜6のいずれか一つに記載の原料処理装置の有価金属回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−223070(P2008−223070A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61728(P2007−61728)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】