説明

原稿分離機構

【課題】複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を継続して好適に分離することが可能な新たな原稿分離機構を提供することを目的とする。
【解決手段】複数枚重なり合った原稿300から一枚の原稿300Aを分離し、搬送する原稿分離機構100であって、分離ローラ102と分離片104と付勢部106とを有する。分離ローラ102は、複数枚重なり合った原稿300から原稿300Aを分離し、分離された原稿300Aを回転しながら搬送する。分離片104は、分離ローラ102の外周面に近接して配置され、分離ローラ102によって搬送される原稿300Aに付着した原稿300Bを、原稿300Aから分離する。付勢部106は、分離ローラ102の外周面に交差する方向に分離片104を付勢し、かつ分離ローラ102の外周面側に分離片104を押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を分離し、搬送する原稿分離機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
用紙搬送装置の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の用紙搬送装置は、用紙収容部に収容された用紙を給送する上下方向へ可動な送りローラと、用紙収容部の用紙給送側に出没するストッパーとを備える。そして、該ストッパーの出没と、送りローラの上下方向の移動とが連動できるようにされている。特許文献1の用紙搬送装置は、給送手段を備える。給送手段は、該送りローラの送り方向前方に、二軸間に張設されたベルトに重送防止ローラを圧接する。該重送防止ローラは、ストッパーの突出又は没入作動に連動して一定角度回転付勢される。特許文献1の用紙搬送装置によれば、重送防止ローラを自動的に一定角度づつ回転することができる。
【0003】
また、用紙分離機構の提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の用紙分離機構は、セパレートローラと、パッド取付面に取り付けた分離パッドをセパレートローラに圧接するパッドピースとを備える。特許文献2の用紙分離機構は、セパレートローラの回転により該セパレートローラと分離パッドの圧接部を用いて搬送される複数の用紙を分離する。特許文献2の用紙分離機構では、パッドピースのパッド取付面が湾曲面形状に形成されている。特許文献2の用紙分離機構は、パッドピースをセパレートローラの回転に伴い揺動可能となるように支持する揺動機構を備えている。また、揺動するパッドピースを、このパッドピースがセパレートローラの回転により揺動する方向と逆方向に付勢する第1の付勢手段を備えている。さらに、パッドピースを付勢して分離パッドをセパレートローラに圧接する第2の付勢手段を備えている。なお、第1の付勢手段及び第2の付勢手段は、パッドピースを弾発するコイルスプリングであるとされている。特許文献2の用紙分離機構によれば、例えば、第1,第2の付勢手段の付勢力を調節することで、用紙分離能力を精細に調整することが可能となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−140426号公報
【特許文献2】特開2008−24495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を分離し、搬送する原稿分離機構では、原稿を分離するための分離機構部分が原稿との接触によって次第に摩耗する。特許文献1のような構成では、長期に亘って安定した重送防止効果を得るために、重送防止ローラを回転させるための特別な機構が必要となる。したがって、例えば、装置が複雑化し大型となる場合がある。また、特許文献2は、分離パッドが摩耗した場合について考慮されていない。
【0006】
本発明は、複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を継続して好適に分離することが可能な新たな原稿分離機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を分離し、搬送する原稿分離機構であって、複数枚重なり合った原稿から第1原稿を分離し、分離された前記第1原稿を回転しながら搬送する分離ローラと、前記分離ローラの外周面に近接して配置され、前記分離ローラによって搬送される前記第1原稿に付着した第2原稿以降の原稿を、前記第1原稿から分離する分離片と、前記分離ローラの外周面に交差する方向に前記分離片を付勢し、かつ前記分離ローラの外周面側に前記分離片を押し出す付勢部とを有することを特徴とする原稿分離機構である。これによれば、分離片の摩耗に対し、好適な分離を継続的に実現することができる。
【0008】
この原稿分離機構は、次のような構成とすることもできる。すなわち、前記付勢部による押出方向に、前記分離片をガイドするガイド部を有することを特徴としてもよい。これによれば、分離片を一定の方向に押し出すことができる。
【0009】
また、前記付勢部による付勢方向および押出方向に、前記分離片をガイドするガイド部を有することを特徴としてもよい。これによれば、分離片を一定の方向に付勢し押し出すことができる。
【0010】
また、前記分離ローラの回転方向によって決定付けられる前記第1原稿の搬送方向の下流側から前記分離片を支持する支持部を有することを特徴としてもよい。これによれば、分離片が搬送方向の下流側に変形することを防止することができる。
【0011】
また、前記付勢部は、弾性部材であることを特徴としてもよい。これによれば、弾性部材の弾性力によって好適な付勢力を得ることができる。
【0012】
また、前記分離片は、前記分離ローラの外周面に近接する先端側から、前記付勢部の側に向けて、前記第2原稿以降の原稿との間で生じる摩擦力が増加するように形成されていることを特徴としてもよい。これによれば、分離片の摩耗に対し、継続的に一定の摩擦力を得ることができる。
【0013】
また、前記付勢部は、前記分離ローラの外周面に交差する方向に、前記分離片を付勢する第1付勢部と、前記第1付勢部による付勢方向に交差する方向で、前記分離ローラの外周面側に前記分離片を付勢し押し出す第2付勢部とを有することを特徴としてもよい。これによれば、分離片の摩耗に対し、好適な分離を継続的に実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を継続して好適に分離することが可能な新たな原稿分離機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はスキャナ装置の外観を示す図であり、(b)は図1(a)に示すA−A断面図であってスキャナ装置の内部構成の概略を示す図である。
【図2】(a)は、図1(b)に示すスキャナ装置が有する原稿分離機構および給紙トレイの斜視図であって、(b)は図2(a)のX矢視図である。
【図3】図2に示すB−B断面図である。
【図4】支持部を分離ローラの外周面に近接させた原稿分離機構を示す拡大図である。
【図5】他の分離片を有する原稿分離機構を示す拡大図である。
【図6】さらに他の分離片を有する原稿分離機構を示す拡大図である。
【図7】(a)は他の原稿分離機構の斜視図であり、(b)は図7(a)のY矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略しまたは他の構成などに置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0017】
本実施形態の原稿分離機構100は、コピー機、プリンタまたはファクシミリ装置などに採用することができる。また、原稿分離機構100は、図1に示すようなスキャナ装置20に採用することができる。以下、原稿分離機構100を有するスキャナ装置20を例に説明する。
【0018】
スキャナ装置20は、図1(a)に示すような外観を有する。図1(a)に示すように、スキャナ装置20は、給紙トレイ120と、排紙トレイ170とを有し、図1(b)に示すように、その内部に原稿分離機構100などを有する。給紙トレイ120には、読取(スキャン)対象の原稿(用紙)300がセットされる。給紙トレイ120には、例えば、原稿300が複数枚重なり合った状態でセットされる。原稿分離機構100は、給紙トレイ120にセットされた原稿300を排紙トレイ170に搬送する。具体的には、原稿分離機構100は、給紙トレイ120に複数枚重なり合った原稿300を分離する。原稿分離機構100の詳細な説明は、後述する。排紙トレイ170は、原稿分離機構100により分離され、スキャナ装置20内の所定のローラにより排紙された原稿300を受ける。
【0019】
そして、スキャナ装置20は、その内部に図1(b)のように、原稿分離機構100と、ラインフィードローラ(以下、「LFローラ」ともいう。)130と、画像読取部140A,140Bと、排紙ローラ150と、ピンチローラ(従動ローラ)160A,160Bとを有する。
【0020】
LFローラ130は、原稿300Aを画像読取部140A,140B側に搬送する。原稿300Aは、後述する原稿分離機構100が有する分離ローラ102によって分離され搬送されてきた一枚の原稿である。LFローラ130は、搬送される原稿300Aの一方の面の側に設置されている。LFローラ130は、軸部132に支持されている。ピンチローラ160Aは、搬送される原稿300Aの原稿面においてLFローラ130が配置される面とは異なる他方の面の側に配置される。つまり、ピンチローラ160Aは、LFローラ130に対向して設置されている。ピンチローラ160Aは、軸部162Aに支持され、LFローラ130に従動して回転する。LFローラ130とピンチローラ160Aとは、分離ローラ102によって分離され搬送されてきた一枚の原稿300Aを挟持し、画像読取部140A,140B側に搬送する。この搬送は、原稿300Aが挟持された状態で、LFローラ130を支持した軸部132がモータなどの回転駆動機構によって回転し、これにともないLFローラ130が回転して実現される。この際、ピンチローラ160Aは、LFローラ130に従動して回転する。なお、図1(b)のLFローラ130およびピンチローラ160A内に記載の矢印は、LFローラ130およびピンチローラ160Aの回転方向を示すものである。
【0021】
画像読取部140A,140Bは、搬送されてきた原稿300Aに記録されている画像を読み取る。画像読取部140A,140Bは、例えばCIS(Contact Image Sensor)を含む。なお、CCD(Charged Coupled Device)としてもよい。画像読取部140Aは、搬送されてきた原稿300Aの一方の面の側に設けられ、この他方の面、例えば表面を読み取る。画像読取部140Bは搬送されてきた原稿300Aの一方の面の側に設けられ、この一方の面、例えば裏面を読み取る。スキャナ装置20では、画像読取部140A,140Bによって両面読取機能が実現される。
【0022】
排紙ローラ150は、画像読取部140A,140Bを通過して搬送されてきた一枚の原稿300Aを、搬送方向の下流側に搬送する。つまり、排紙ローラ150は、搬送されてきた原稿300Aを、搬送方向の下流側に設置されている排紙トレイ170側に搬送する。排紙ローラ150は、搬送される原稿300Aの一方の面の側に設置されている。排紙ローラ150は、軸部152に支持されている。ピンチローラ160Bは、搬送される原稿300Aの原稿面において排紙ローラ150が配置される面とは異なる他方の面の側で配置される。つまり、ピンチローラ160Bは、排紙ローラ150に対向して設置されている。ピンチローラ160Bは、軸部162Bに支持され、排紙ローラ150に従動して回転する。排紙ローラ150とピンチローラ160Bとは、画像読取部140A,140Bを通過して搬送されてきた一枚の原稿300Aを挟持し、排紙トレイ170側に搬送する。この搬送は、原稿300Aが挟持された状態で、排紙ローラ150を支持した軸部152がモータなどの回転駆動機構によって回転し、これにともない排紙ローラ150が回転して実現される。この際、ピンチローラ160Bは、排紙ローラ150に従動して回転する。なお、図1(b)の排紙ローラ150およびピンチローラ160B内に記載の矢印は、排紙ローラ150およびピンチローラ160Bの回転方向を示すものである。
【0023】
排紙トレイ170は、排紙ローラ150とピンチローラ160Bとによって搬送され、排出された原稿300Aを受ける。これによって原稿300Aの読取動作が終了する。給紙トレイ120に複数枚の原稿300がセットされている場合、原稿分離機構100によって既に搬送された原稿300Aとは異なる原稿300が順次連続して搬送される。順次搬送される原稿300に記録された画像が読み取られる。そして、順次、排紙トレイ170に排出される。排出された原稿300は、排紙トレイ170に積層される。なお、図1(a)に示すスキャナ装置20は、排紙トレイ170が収納された状態にある。スキャナ装置20において、上述した読取動作が実行される場合、排紙トレイ170は、図1(a)に示す「引出方向」に引き出され、伸長した状態で利用される。
【0024】
次に、図1(b)に示す原稿分離機構100について、図2(a),(b)および図3を用いて説明する。原稿分離機構100は、図2(a),(b)および図3に示す分離ローラ102と分離片104と付勢部106とを有する。図2(a)に示すように、給紙トレイ120には、原稿300が積層されている。原稿分離機構100は、図2(a),(b)に示すように給紙トレイ120に対して、原稿300が搬送される搬送方向の下流の所定の位置に設置されている。詳細には、原稿分離機構100は、図2(b)に示す搬送される原稿300の原稿面上の搬送方向に垂直な方向における給紙トレイ120の中心部を含む位置に配置される。原稿分離機構100は、積載される原稿300から原稿300Aを分離する。原稿300Bは、図3に示すように給紙トレイ120にセットされた原稿300のうち、分離ローラ102と原稿300Aとが接する第1面とは異なる他方の第2面側の原稿である。つまり、原稿300Bは、原稿300Aが分離された以降に、原稿分離機構100により分離される原稿である。
【0025】
分離ローラ102は、図3に示すように、原稿300がセットされる側の給紙トレイ120の面に、分離ローラ102の外周面の一部が突出するように設置されている。換言すれば、上述したLFローラ130および排紙ローラ150などと同一の側に、分離ローラ102は設置されている。分離ローラ102は、軸部108に支持される。軸部108はモータなどの回転駆動機構に連結されている。回転駆動機構が駆動しこれにともない軸部108が回転すると、分離ローラ102も、図1(b)および図3の分離ローラ102内に記載の矢印の方向に回転する。軸部108により分離ローラ102が回転することで、分離ローラ102は、給紙トレイ120に複数枚重なり合った状態でセットされた原稿300から、原稿300Aを分離する。分離片104を用いた原稿300Aの分離方法の詳細は後述する。そして、分離ローラ102は、分離された原稿300Aを回転方向によって決定付けられる方向(搬送方向)に搬送する。すなわち、分離ローラ102は、原稿300AをLFローラ130側に搬送する。分離ローラ102の外周面は、シリコンゴムなどのゴムなどによって形成されている。
【0026】
分離片104は、分離ローラ102によって搬送される原稿300Aに付着した原稿300Bを、原稿300Aから分離する。分離片104は、ゴムなどの弾性部材によって形成されている。分離片104の一端部である先端部は、分離ローラ102の外周面に近接(接触した状態を含む)して配置されている。具体的に、分離片104の先端部は、分離ローラ102の外周面に押圧された状態で配置されている。付勢部106は、分離ローラ102の外周面に交差する方向に分離片104を付勢し、かつ分離ローラ102の外周面側に分離片104を押し出す。付勢部106は、弾性部材によって形成されている。例えば、図3に示すようにコイルばねによって形成されている。分離ローラ102と、付勢部106によって分離ローラ102の外周面側に付勢された分離片104とによって、原稿300Aは分離される。分離された一枚の原稿300Aは、分離ローラ102と分離片104との間を通過する。そして、原稿300Aは、上述したとおり分離ローラ102の回転に応じてLFローラ130側に搬送される。本実施形態では、分離片104は、付勢部106により付勢される付勢方向に沿って伸びた形状をしている。
【0027】
原稿分離機構100は、また、装着部110とガイド部112と支持部114とを有する。装着部110は凹状の形状を有する。装着部110は、付勢方向に凹状の状態で配置される。装着部110は、分離ローラ102の外周面側に近接して配置される分離片104の後端部に取り付けられる。分離片104の後端部は、分離片104の先端部と反対側の他端部である。ガイド部112は断面U字状の形状を有する。ガイド部112は、装着部110に後端部が取り付けられた分離片104を収容する。分離片104が収容された状態で、ガイド部112の側壁部112Hと、装着部110の外周が嵌合した状態となる。側壁部112Hは、分離片104を収容しているガイド部112の内部の側面である。付勢部106は、付勢方向において装着部110とガイド部112との間の空間113に圧縮された状態で配置されている。分離片104の後端部が取り付けられた装着部110は、付勢部106の付勢力を受け、ガイド部112の側壁部112Hに沿って移動する。コイルばねなどによる付勢部106は、この空間113に配置された状態で、分離ローラ102の外周面に交差する方向に、装着部110を介して分離片104を付勢する。そして、付勢部106は、分離ローラ102の外周面側に分離片104を押し出す。
【0028】
すなわち、ガイド部112は、分離片104が分離ローラ102の外周面の所定の位置に向かって付勢されかつ押し出されるように、分離片104をガイドする。換言すれば、分離片104は、ガイド部112詳細にはガイド部112の側壁部112Hによって付勢方向および押出方向にガイドされた状態で設置されている。そして、分離片104は、側壁部112Hに沿った方向に付勢され押し出される。したがって、原稿分離機構100によれば、分離片104、より詳細には分離片104の先端部は、分離ローラ102の外周面の所定の位置に、好適に押圧された状態で安定的に配置される。
【0029】
原稿分離機構100では、図3に示すように、分離片104と付勢部106とが同一の直線L上に配置された状態でガイド部112に収容されている。そのため、付勢部106による分離片104の付勢方向および押出方向は、この直線Lに一致する。なお、この直線Lは、分離片104の先端部が配置される所定の位置をとおる直線である。原稿分離機構100は、図3に示す構成の他、分離片104が直線L上に配置され、付勢部106が直線Lに平行または交差する別の直線上に配置された状態でガイド部112に収容された構成としてもよい。この場合、ガイド部112は、付勢部106による押出方向に分離片104をガイドする。付勢方向は、直線Lに一致する押出方向と平行、または交差する関係になる。
【0030】
側壁部112Hの分離ローラ102の外周面側である先端部は、分離片104側に向かった構成を有する。側壁部112Hの先端部のうち、特に分離ローラ102の回転方向によって決定付けられる原稿300Aの搬送方向の下流側に配置された部分は、支持部114として機能する。すなわち、支持部114は、分離片104をこの位置で支持し、分離片104が搬送方向に変形することを防止する。
【0031】
ここで、図3に示す構成では、直線Lを基準として、分離片104の搬送方向の下流側の面側には、支持部114と、これに対向する分離ローラ102の外周面との間に所定のスペースが形成される。このスペースを利用し、支持部114が分離片104を支持する位置は、図3に示す位置と比較し、図4に示すような分離ローラ102の外周面により接近させた位置としてもよい。このような構成によれば、より好適に分離片104の搬送方向の下流側への変形を防止することができる。
【0032】
以上説明した本実施形態の原稿分離機構100によれば、分離片104の先端部が摩耗しても、分離片104が付勢部106によって付勢されかつ押し出される。そのため、分離片104と、原稿300Aに付着した原稿300Bとの間で所定の摩擦力を継続して生じさせることができる。したがって、好適な分離を継続的に実現することができる。
【0033】
本実施形態の原稿分離機構100は、次のような構成としてもよい。例えば、上記では分離片104は、単一の材質によって一体形成された構成とし、かつその形状が一定の厚みt(図3参照)を有する板状とした。ここで、付勢部106を、図3などに示すようなコイルばねなどの弾性部材とした場合、分離片104は、原稿300Aとの摩擦によって摩耗すると、付勢部106による付勢力によって押し出される。これにともない、付勢部106の圧縮量が少なくなり、付勢部106の付勢力が減少する。この結果、分離片104と原稿300Bとの間に生じる摩擦力が低下し、所定の条件下においては好適な分離を継続することが困難となる場合もあり得る。
【0034】
そこで、このような場合に対応すべく、本実施形態の分離片104は、例えば、図5に示すように、厚みが漸次増加するような形状を有する分離片1042としてもよい。分離片1042は、分離ローラ102の外周面側に近接して配置される先端部から、これと反対側の後端部、すなわち付勢部106の側に向け、厚みが漸次増加する。図5に示すような形状によれば、分離片1042が摩耗し、付勢力が減少したとしても、原稿300Bとの接触面積が増加する。そのため、分離片1042と原稿300Bとの間で、一定の摩擦力を好適に発生させることができる。なお、分離片1042の厚みは、図5のような形状の他、階段状に増加するような構成としてもよい。
【0035】
この他、本実施形態の分離片104は、摩擦係数がそれぞれ異なる複数の部材または材質を組み合わせて、例えば、図6に示すように3つの部材1044A,1044B,1044Cを組み合わせて一体とした形状を有する分離片1044としてもよい。この場合、付勢部106側に配置される部分を形成する部材ほど、摩擦係数が高くなるように設定される。具体的に、摩擦係数は、部材1044Cが最も高く、部材1044Aが最も低い。上述した構成により、分離片1044が摩耗し、付勢力が減少したとしても、付勢部106側に配置される部分を形成する部材ほど摩擦係数が高いため、分離片1044と原稿300Bとの間で、一定の摩擦力を好適に発生させることができる。なお、図5および図6の構成を複合した構成の分離片としてもよい。
【0036】
また、上記では付勢部106が、コイルばねなどの弾性部材によって形成された原稿分離機構100を例に説明した。付勢部106による付勢方向および/または押出方向が重力方向である場合、付勢部106は、例えば、所定の質量を有する錘としてもよい。
【0037】
さらに、上記では、付勢部106による分離片104の付勢方向および押出方向が直線Lに一致するまたは付勢方向が押出方向に平行となる原稿分離機構100を例に説明した。このような構成の他、図7(a),(b)に示す原稿分離機構400としてもよい。原稿分離機構400は、分離ローラ402と分離片404と第1付勢部406Aと軸部408と第2付勢部406Bと装着部410とガイド部412と当接部416と収容部418とを有する。
【0038】
分離ローラ402は、原稿分離機構100における分離ローラ102に相当する。分離ローラ402は、分離ローラ102と同様に設置され機能する。分離片404は、原稿分離機構100における分離片104に相当する。分離片404は、分離片104と同様に機能する。軸部408は、原稿分離機構100における軸部108に相当する。軸部408は、軸部108と同様に設置され機能する。第1付勢部406Aは、後述するような構成によって、分離ローラ402の外周面に近接して配置された分離片404の先端部を、分離ローラ402の外周面に交差する方向に付勢する。第2付勢部406Bは、第1付勢部406Aによる付勢方向に交差する方向に、分離片404の先端部が分離ローラ402の外周面に近接して配置されるように分離片404を付勢し押し出す。原稿分離機構400では、本実施形態の原稿分離機構100が有する付勢部106に相当する構成が、2個の第1付勢部406Aおよび第2付勢部406Bによって実現される。第1付勢部406Aと第2付勢部406Bとは、図7(a),(b)に示すようにコイルばねなどの弾性部材によって形成されている。
【0039】
装着部410は、凹状の形状を有する。装着部410は、分離片404の先端部と反対側の後端部に取り付けられる。装着部410には、凸部4102が形成されている。ガイド部412は、装着部410に後端部が取り付けられた分離片404を収容する。ガイド部412には、凸部4102に対応した位置にガイド溝414が形成されている。当接部416は、第2付勢部406Bによる付勢によって分離片404が、分離ローラ402の外周面の所定の位置を越えて飛び出すことを防止する。また、当接部416は、第1付勢部406Aによる付勢力を分離片404に作用させる。収容部418は、第1付勢部406Aを収容する。
【0040】
原稿分離機構400では、分離片404は、分離片404の先端部が、分離ローラ402の外周面に沿った状態、換言すれば、分離ローラ402の外周面の接線方向またはこれに近似した方向に配置される。第2付勢部406Bは、付勢方向において装着部410とガイド部412との間の空間413に圧縮された状態で配置されている。コイルばねなどによって形成された第2付勢部406Bは、この空間413に配置された状態で、前述の状態の分離片404を、分離ローラ402の外周面側に付勢し押し出す。
【0041】
装着部410に後端部が取り付けられた分離片404が、ガイド部412に収容された状態で、凸部4102は、ガイド溝414に挿入されている。したがって、原稿分離機構400においても、分離片404は、第2付勢部406Bによる付勢方向および押出方向にガイドされている。すなわち、分離片404は、ガイド溝414に沿った方向に付勢され押し出される。
【0042】
第2付勢部406Bによって付勢され押し出された分離片404の先端部の先端面は、分離ローラ402の外周面に近接した状態(接触した状態を含む)に配置される。そして、先端面は、断面L字状の当接部416の一辺416Aに突き当たる。これによって、第2付勢部406Bによる付勢にともなう分離片404の飛び出しが防止される。
【0043】
原稿300Aが搬送される搬送面に垂直な方向において、分離ローラ402と対向する位置には、収容部418が配置されている。収容部418は、第1付勢部406Aを収容している。第1付勢部406Aにより付勢される分離片404は、当接部416の他辺416Bと接した状態となる。第1付勢部406Aは、収容部418に収容された状態で、当接部416の他辺416Bとの間で圧縮され、分離ローラ402の外周面に交差する方向に、当接部416の他辺416Bを介して分離片404の先端部を付勢する。
【0044】
原稿分離機構400では、このような構成によって、分離片404の先端部が、分離ローラ402の外周面の所定の位置に、好適に押圧された状態で安定的に配置される。図1〜図6で記載した構成と比較すると、図7に示す構成では、分離片404が摩耗したとしても、第1付勢部406Aによる付勢力が減少することがない。このため、原稿分離機構400は、原稿分離機構100と同等の優れた機能を発揮することができるとともに、付勢力が減少せずに安定して原稿300Aを分離することができる。
【符号の説明】
【0045】
100,400 原稿分離機構
102,402 分離ローラ
104,1042,1044,404 分離片
106 付勢部
406A 第1付勢部
406B 第2付勢部
120 給紙トレイ
300,300A,300B 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚重なり合った原稿から一枚の原稿を分離し、搬送する原稿分離機構であって、
複数枚重なり合った原稿から第1原稿を分離し、分離された前記第1原稿を回転しながら搬送する分離ローラと、
前記分離ローラの外周面に近接して配置され、前記分離ローラによって搬送される前記第1原稿に付着した第2原稿以降の原稿を、前記第1原稿から分離する分離片と、
前記分離ローラの外周面に交差する方向に前記分離片を付勢し、かつ前記分離ローラの外周面側に前記分離片を押し出す付勢部とを有することを特徴とする原稿分離機構。
【請求項2】
前記付勢部による押出方向に、前記分離片をガイドするガイド部を有することを特徴とする請求項1に記載の原稿分離機構。
【請求項3】
前記付勢部による付勢方向および押出方向に、前記分離片をガイドするガイド部を有することを特徴とする請求項1に記載の原稿分離機構。
【請求項4】
前記分離ローラの回転方向によって決定付けられる前記第1原稿の搬送方向の下流側から前記分離片を支持する支持部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の原稿分離機構。
【請求項5】
前記付勢部は、弾性部材であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の原稿分離機構。
【請求項6】
前記分離片は、前記分離ローラの外周面に近接する先端側から、前記付勢部の側に向けて、前記第2原稿以降の原稿との間で生じる摩擦力が増加するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の原稿分離機構。
【請求項7】
前記付勢部は、前記分離ローラの外周面に交差する方向に、前記分離片を付勢する第1付勢部と、前記第1付勢部による付勢方向に交差する方向で、前記分離ローラの外周面側に前記分離片を付勢し押し出す第2付勢部とを有することを特徴とする請求項1に記載の原稿分離機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−173695(P2011−173695A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39484(P2010−39484)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】