説明

原稿読取装置

【課題】 原稿読取動作時に電気基板や画像読取素子から発生する熱や、振動の影響を抑制し、良好に画像を読み取ることができるようにする。
【解決手段】 原稿台に載置された原稿を、読取素子が保持された枠体を移動させながら読み取る原稿読取装置において、前記読取素子が固定される固定部材と、前記枠体を移動させる枠体駆動手段とを有し、前記固定部材は、第1の固定手段により部分的に固定されると共に、該第1の固定手段に固定される位置より端部側の位置において前記固第1の固定手段より弾性の高い第2の固定手段により固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿台に載置された原稿を読取素子が保持された枠体を移動させながら読み取る原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読取装置は、原稿を載置する原稿台ガラス、原稿に光を照射する光源、原稿からの拡散光を結像させるレンズ、結像した光を読み取るCCD等の画像読取素子、画像読取素子を駆動するための電装基板を有する。そして、画像読取装置の組み立て時に、原稿台ガラス・レンズ・画像読取素子の位置関係が調整され、レンズ・画像読取素子の位置関係がずれないように、レンズおよび読取素子が他の部材に固定されている。
【0003】
図5に、光源501、レンズ502、画像読取素子503、電装基板504を一体的に保持して原稿をスキャンする一体光学系を用いた、画像読取装置の走査ユニットを示す。この走査ユニットは画像読取素子503と電装基板504が、画像読取素子503と電装基板504との間に位置する保持部材505に固定されている。そして、保持部材の端部がキャリッジ枠体にはんだ付けにより固定されている。
【0004】
また、特許文献1には、CCD近傍のみで、CCDを保持するスペーサと電装基板をビス止め固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−245098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示した走査ユニットでは、保持部材の端部がはんだ付けによって固定されているので、スキャン動作時に電装基板および画像読取素子が発熱すると、その熱で保持部材が膨張し保持部財が反ってしまう。保持部材に反りが発生すると、レンズに対する画像読取素子の位置がずれてしまい、ピントや倍率がずれてしまう。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法では電装基板の端部が固定されていないため、原稿を走査するためにCCDが固定された一体光学系を移動させると、振動が発生する。そして、この振動によりCCDの位置が微小に変化してしまい、読み取った画像に揺れが発生するなどの不具合が起こる可能性があった。
【0008】
本発明は、原稿読取動作時に電気基板や画像読取素子から発生する熱や、振動の影響を抑制し、良好に画像を読み取ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本願請求項1記載の発明は、原稿台に載置された原稿を、読取素子が保持された枠体を移動させながら読み取る原稿読取装置において、前記読取素子が固定される固定部材と、前記枠体を移動させる枠体駆動手段とを有し、前記固定部材は、第1の固定手段により部分的に固定されると共に、該第1の固定手段に固定される位置より端部側の位置において前記固第1の固定手段より弾性の高い第2の固定手段により固定されることを特徴とする。
【0010】
本願請求項5記載の発明は、原稿台に載置された原稿を、読取素子が保持された枠体を移動させながら読み取る原稿読取装置において、原稿が載置される前記原稿台と、前記原稿を照明する光源と、前記枠体に固定された、前記原稿からの光を結像させる結像手段と、前記結像された光を受光し光電変換する前記読取素子と、前記読取素子を駆動するための回路が配置された電装基板と、前記読取素子が固定された固定部材と、前記光源、前記結像手段、前記支持部材、前記読取素子、前記電装基板および前記固定部材を一体的に保持する枠体と、前記枠体を移動させる枠体駆動手段とを有し、前記固定部材における前記読取素子の近傍において該固定部材は前記枠体と固着され、該固定部材における端部において該固定部材は前記枠体に弾性的に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿読取動作時に電気基板や画像読取素子から発生する熱や、振動の影響を抑制し、良好に画像を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態の画像読取装置の構成を説明する図である。
【図2】第1の実施の形態におけるキャリッジ枠体内のCCD付近の構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態における電装基板とCCD固定板とレンズ固定バネの構成を説明するための斜視図である。
【図4】第2の実施の形態におけるにおけるキャリッジ枠体内のCCD付近の構成を示す斜視図である。
【図5】従来の画像読取装置の走査ユニットの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
図1に、第1の実施の形態にかかる画像読取装置の構成の概略を示す。
【0014】
原稿台ガラス101は原稿が載置される。枠体102は原稿台ガラスを支持する。走査ユニット103は、原稿台ガラス101に載置された原稿を走査するために、ベルト104の移動に基づき、ベルトを駆動する2つのプーリ105の間を移動する。モータ106はプーリ105の1つを回転駆動する。
【0015】
走査ユニット103は、キャリッジ枠体107、原稿を照明する光源108、原稿で拡散した光を導く反射ミラー109、110、111、光を結像するレンズ112、結像した光を光電変換して読み取る読取素子であるCCD113、CCD113を駆動する電装基板114を有する。そして、これらの部品はキャリッジ枠体107上に一体的に搭載されている。キャリッジ枠体107は、これらの部品を支持しながら、移動する必要があるので、複雑な形状を実現しつつ軽量化が可能な樹脂成型によって形成される。
【0016】
画像読取装置が原稿台ガラス101に載置された原稿の画像を読み取る際は、光源108によって原稿を照明しながら、モータ106を回転させ、プーリ105およびベルト104によって走査ユニット103を原稿に沿って移動させる。原稿に当たった光源108からの光は原稿面で拡散し、反射ミラー109、110、111によってレンズ112に導かれ、レンズ112によってCCD113に結像され、CCD113によって光電変換される。そして、CCD113から画像データが出力される。
【0017】
図2はキャリッジ枠体107内のCCD113付近の斜視図である。図3は電装基板114とCCD固定板203とレンズ固定バネ202の構成を説明するための図である。
【0018】
レンズ支持板201はレンズ112を支持する支持板であり、キャリッジ枠体107にビスを用いて固定されている。レンズ固定バネ202はレンズ112をレンズ支持板201に固定するバネである。CCD固定板203はCCD113および電装基板114を支持する支持板である。CCD固定バネ204、205はCCD固定板203にCCDを固定するバネである。
【0019】
レンズ支持板201およびCCD固定板203は、変形や振動が生じると画像の劣化を招くため、強度を保つために金属で形成される。CCD固定板203にCCD固定バネ204、205によって固定されたCCD113は、CCD固定板203を挟んだ状態で、電気的に接続されるように電装基板114とハンダ付けされる。
【0020】
電装基板114には、CCD113の駆動を制御するための電気信号を生成する回路およびCCD113から入力した画像信号を処理する回路が配置されており、電装基板114の長さはCCD113の長さと比べて大幅に長い。
【0021】
ピントや倍率などの走査ユニットの光学性能を調整する際は、CCD113とレンズ112の位置関係を調整する。そのために、CCD固定板203または電装基板114を調整用工具にチャッキングさせ移動させることにより、所定の光学性能が達成される位置にCCD113を移動させる。工具によるチャッキングとして、磁力によるチャックや、エアー吸引によるチャックが一般に知られている。しかしながら、電装基板は金属ではないので磁力ではチャックできず、基板表面には回路を構成する素子が実装されて凹凸があるためエアー吸引でもチャックできない。そこで、本実施の形態ではCCD固定板203を電装基板114よりさらに長くして、その両端部を工具にてチャックする。CCD固定板203は強度を確保するために金属で形成されており、そして、表面に凹凸もない。したがって、CCD固定板203は磁力およびエアー吸引のいずれでもチャックすることができる。
【0022】
チャッキングされたCCD固定板203を移動させることにより、ピントや倍率などの光学性能が所定の値になるように、レンズ112とCCD113の相対位置関係を調整する。
【0023】
レンズ支持板201およびCCD固定板203には、CCD固定板203をレンズ支持板201に固定するための突起部206、207がCCD113の近傍に設けられ、対向する2つの突起部の間には隙間が存在する。本実施の形態では、CCD113はCCD固定板203の中央部付近に固定される。ピントや倍率などの光学性能が所定の値になるように調整されたレンズ112とCCD113の相対位置関係を保つために、レンズ支持板201とCCD固定板203に設けられた突起部206・207の間の隙間にハンダを流し込み、融着させて固定する。この方法によれば、簡単な構成で、CCD固定板203をレンズ支持板201の相対位置関係を3次元的に調整および固定することができる。
【0024】
CCD固定板203の両端部では、レンズ支持板201が取り付けられているキャリッジ枠体107とCCD固定板203との間に弾性を有する樹脂接着剤を流し込み、CCD固定板203をキャリッジ枠体107に弾性的に取り付ける。
【0025】
ハンダは樹脂製接着剤などと比較して強度が高く、線膨張係数も低いため、CCD固定板203とレンズ支持板201との間をハンダを用いて固着させることで、樹脂製接着剤を用いた場合に比べ、衝撃によるCCD113の位置ずれを小さくすることができる。突起部206・207がCCD113の近傍に設けられており、強度が高いハンダによって固着されているので、CCD駆動時の発熱などによるレンズ支持板201およびCCD固定板203の熱膨張の影響でCCDの位置がずれるのを抑制することができる。
【0026】
CCD固定板203の端部を弾性を有する樹脂接着剤にてキャリッジ枠体107に固定することで、樹脂接着剤の弾性によって、走査ユニットの動作、特に加減速時に発生する振動がCCD固定板203に伝わるのを抑制することができる。
【0027】
金属で形成されており、かつ、熱発生源であるCCD113および電装基盤114と接しているCCD固定板203は、CCD113および電装基板114で発生した熱の放熱を行う。しかしながら、CCD固定板203はこの熱により膨張してしまう。本実施の形態では、CCD固定板203をキャリッジ枠体に弾性体を用いて固定しているので、ハンダによって固定した場合に比べて、CCD固定板203が膨張によって反ることを抑制することができる。
【0028】
よって、CCD固定板203が反ることによってCCD113の位置がずれることを抑制することができる。
【0029】
このように、CCD固定板203とレンズ支持板201はハンダにより固着し、CCD固定板203とキャリッジ枠体107は樹脂接着剤により固定することにより、発熱および振動によってレンズ112とCCD113の相対位置関係が変わることを抑制することができる。すなわち、本実施の形態によれば、連続動作時の発熱や走査時の振動で画像が劣化するのを防止し、常に良好な画像を得ることが可能となる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図4を用いて第2の実施の形態について説明する。
図4は図1におけるキャリッジ枠体107のCCD113付近の斜視図である。
【0031】
第2の実施の形態では、レンズ112はレンズ固定バネ202によりキャリッジ枠体に固定されている。そして、キャリッジ枠体107にはCCD固定板203を取り付けるための金属製の取り付け板401、402がビスによって固定されている。第1の実施の形態と同様に、CCD113はCCD固定板203にCCD固定バネによって固定された状態で、CCD固定板203を間に挟んだ状態で、電気的に接続されるように、電装基板(不図示)とハンダ付けされる。
【0032】
取り付け板401、402およびCCD固定板203には、CCD固定板を取り付け板401、402に固定するための突起部403、404がCCD114の直近に設けられ、対向する突起部の間には隙間が存在する。ピントや倍率などの光学性能が所定の値になるように、レンズ112とCCD113の相対位置関係を調整し、取り付け板401、402とCCD固定板203に設けられた突起部403、404の間の隙間にハンダを流し込み、融着させて固定する。
【0033】
CCD固定板203の両端部は、第1の実施の形態と同様に、キャリッジ枠体107とCCD固定板203との間に弾性を有する樹脂接着剤を流し込み、キャリッジ枠体107に弾性的に取り付ける。
【0034】
CCD固定板203および取り付け板401、402は強度を確保できる金属で形成され、キャリッジ枠体107は複雑な形状を実現しつつ軽量化が可能な樹脂成型によって形成される。
【0035】
このように、第2の実施形態では、CCD113の近傍ではCCD固定板203とレンズを支持しているキャリッジ枠体107とをハンダにより固着し、CCD固定板203の端部ではCCD固定板203とキャリッジ枠体107とを樹脂接着剤により固定する。この構成により第1の実施形態と同様に、連続動作時の発熱や走査時の振動で画像が劣化するのを防止し、常に良好な画像を得ることが可能となる。
【0036】
なお、第1および第2の実施の形態では、画像読取素子としてCCDを用いたがCMOSなど他の画像読取素子を用いてもかまわない。
【0037】
また、CCD固定板203の両端部を弾性的に固定する方法としては、弾性体、例えばゴムブッシュを介してCCD固定板をキャリッジ枠体にビス止めするような構成を用いてもかまわない。
【0038】
また、第1の実施の形態におけるレンズ支持板201とCCD固定板203の固定および第2の実施の形態における取り付け板401、402とCCD固定板203の固定は、強度が高い固定方法であればよく、ハンダのかわりにビスを用いるなど金属部材を介して固定する他の方法を用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0039】
101 原稿台ガラス
102 枠体
103 走査ユニット
104 ベルト
105 プーリ
106 モータ
107 キャリッジ枠体
108 光源
109、110、111 反射ミラー
112 結像レンズ
113 CCD
114 電装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に載置された原稿を、読取素子が保持された枠体を移動させながら読み取る原稿読取装置において、
前記読取素子が固定される固定部材と、
前記枠体を移動させる枠体駆動手段とを有し、
前記固定部材は、第1の固定手段により部分的に固定されると共に、該第1の固定手段に固定される位置より端部側の位置において前記固第1の固定手段より弾性の高い第2の固定手段により固定されることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
さらに、前記原稿が載置される前記原稿台と、
前記原稿を照明する光源と、
前記原稿からの光を結像させる結像手段と、
前記枠体に固定された前記結像手段を支持する支持部材と、
前記結像された光を受光し光電変換する前記読取素子と、
前記読取素子が固定された固定部材と、
前記光源、前記結像手段、前記支持部材、前記読取素子、前記電装基板および前記固定部材を一体的に保持する枠体とを有し、
前記第1の固定手段は前記固定部材と前記支持部材とを金属を介して固定し、前記第1の固定手段は前記固定部材と前記枠体とを弾性的に固定することを特徴とする原稿読取装置。
【請求項3】
前記固定部材と前記支持部材はハンダを用いて固定されることを特徴とする請求項2記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記固定部材と前記支持部材は前記固定部材に固定された前記読取素子近傍において固定され、前記固定部財と前記枠体は前記固定部材の端部において固定されることを特徴とする請求項2または3に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
原稿台に載置された原稿を、読取素子が保持された枠体を移動させながら読み取る原稿読取装置において、
原稿が載置される前記原稿台と、
前記原稿を照明する光源と、
前記枠体に固定された、前記原稿からの光を結像させる結像手段と、
前記結像された光を受光し光電変換する前記読取素子と、
前記読取素子を駆動するための回路が配置された電装基板と、
前記読取素子が固定された固定部材と、
前記光源、前記結像手段、前記支持部材、前記読取素子、前記電装基板および前記固定部材を一体的に保持する枠体と、
前記枠体を移動させる枠体駆動手段とを有し、
前記固定部材における前記読取素子の近傍において該固定部材は前記枠体と固着され、該固定部材における端部において該固定部材は前記枠体に弾性的に固定されることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項6】
前記枠体は金属性の取付部を有し、
前記固定部材は前記取付部と金属を介して固定されることを特徴とする請求項5記載の原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253457(P2012−253457A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122752(P2011−122752)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】