説明

参照電極

【課題】参照電極の内部電解液中の銀イオン溶出の抑制が可能となり、液絡部等の表面に難溶性の銀化合物が生成されることによって生じる電位変動を抑える.
【解決手段】銀/塩化銀電極からなる内部電極21と、当該内部電極21に接触する内部電解液22と、当該内部電解液22を収容する収容体23とを備え、前記収容体23が、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部液中に銀/塩化銀電極からなる内部電極を設けた参照電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の参照電極としては、特許文献1に示すように、銀/塩化銀電極からなる内部電極と、この内部電極に接触する高濃度(1mol/L以上、飽和を含む。)のKCl等の内部電解液と、この内部電解液を収容するものであり、この内部電解液を試料溶液に接液させるための液絡部を有する収容体とを備えたものがある。
【0003】
そして、従来の参照電極においては、銀/塩化銀電極から銀イオンが溶出したり、内部液中の高濃度Clイオンと反応することによりクロロ銀錯形成アニオン(AgCl等)などのアニオン性銀錯イオンが生成される。そして、このクロロ銀錯形成アニオンが液絡部において、塩化物イオン濃度の低い溶液に接すると接液界面に塩化銀(AgCl)が再析出されて、液絡部が閉塞してしまい、電極性能が低下してしまうという問題がある。
【0004】
そして近年では、上記の問題を解消するために、特許文献2に示すように、内部電解液内に銀イオンを吸着する銀イオン吸着物質を設けたものが考えられている。この銀イオン吸着物質に溶出した銀イオンを吸着することによって、液絡部が塩化銀によって目詰まりしないように構成している。
【0005】
しかしながら、上記のように内部電解液内に銀イオン吸着物質を設ける等の銀イオントラップ構造を有するものでは、参照電極の構成が複雑になるだけでなく、参照電極の肥大化を招く、あるいは参照電極のコンパクト化を妨げる要因となる。また、このように銀イオントラップ構造を有する参照電極は、内部電極である銀/塩化銀電極から溶出した銀イオンを液絡部から外部に流出させないという観点からなされたものであり、銀イオントラップ構造の効能が低下した場合、定期的に内部電解液を交換しなければ、やはり液絡部が塩化銀によって目詰まりしてしまい、参照電極自体を交換する必要があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−340914号公報
【特許文献2】特許第4054246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、銀/塩化銀電極からの銀イオンの溶出を防ぐと共に、その参照電極表面に塩化銀が析出することを防止することによって、参照電極電位の長期安定化を図り、乾燥により参照電極の内部液が減少した場合であっても電位の復帰時間を短縮した参照電極を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る参照電極は、銀/塩化銀電極からなる内部電極と、当該内部電極に接触する内部電解液と、当該内部電解液を収容する収容体とを備え、前記収容体が、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで「収容体がアニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されている」とは、(ア)収容体の一部がその材料からなり、その他の部分がアニオン伝導性もカチオン伝導性も水分透過性も有しない材料からなること、(イ)収容体全体がアニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されていることの他、(ウ)収容体全体として水分透過性を有するが、収容体の一部がアニオン伝導性を有さずカチオン伝導性を有するとともに、その他の部分がアニオン伝導性及びカチオン伝導性で孔を有しない材料からなることを含む概念である。
【0010】
このようなものであれば、収容体がアニオン伝導性を有さないので、塩化物イオンと銀/塩化銀電極から溶出した銀イオンとの反応で生成されるクロロ銀錯形成アニオン等のアニオン性銀錯イオンの溶出を抑えることができる。これにより、参照電極の内部電解液中の銀イオン溶出の抑制が可能となり、液絡部等の表面に難溶性の銀化合物が生成されることによって生じる電位変動を抑えることができる。
【0011】
ここでクロロ銀錯形成アニオン等のアニオン性銀錯イオンは収容体外部に流出せず、内部電解液中で飽和する。したがって、クロロ銀錯形成アニオン(アニオン性銀錯イオン)は、内部電解液中への溶解反応は平衡に達する。このため塩化銀から溶出する銀イオンは低濃度で維持されて、内部電解液中には拡散しないと考えられる。これにより、比較的塩化銀層が薄い銀/塩化銀電極の採用することができる、あるいは銀/塩化銀電極を長寿命化させることができる。
【0012】
より詳細に言うと、収容体内部での化学反応AgCl+Cl→AgClは、アニオン錯体形成により、反応は右方向に進む。しかしながら、収容体はアニオンを通過させないので、上記反応は直ぐに平衡に達する。つまり、AgCl+Cl⇔AgClなる反応は平衡し、塩化銀から溶出する銀イオンは溶解度積に依存された濃度になる(10−5Mol/L程度のAgイオン濃度が維持される。)。
【0013】
また本発明によれば、収容体がアニオン伝導性を有さずカチオン伝導性を有することから、電極電位に影響を与える硫化物、沃化物や臭化物イオンが収容体を通過しないので、これらのアニオンによる共存影響を受けない。そして、収容体内外に生じる電位差は、内部電解液のカチオン濃度に依存する。これにより、内部電解液に塩化カリウムなど塩化物と沈殿反応し、液絡部閉塞による測定誤差を排除できる。内部電解液が例えば高濃度(例えば3.3mol/L)のKCl又はKNO溶液であれば、通常、参照電極は高濃度(例えば3.3mol/L)のKCl溶液に浸されるので、Kイオン濃度(活量)が収容体の内外で同じとなり、収容体に生じる電位はゼロとなる。内部液に硝酸カリウムを用いた場合には、上述した塩化物と沈殿反応等を生じてしまうサンプルの測定が可能となる。
【0014】
さらに本発明によれば、収容体を水分透過性を有する材料から形成していることにより、収容体の内部電解液が蒸発により液量が減少した場合であっても、所望の電解液に浸すだけで、蒸気圧バランスによって収容体内部に水を浸透させることができる。これにより、参照電極を所望の電解液に浸すだけで、内部電解液を元の状態に戻すことができると共に、基準電位を短時間に復帰させることができる。さらに、収容体を所望の電解液に浸すだけで良いので、復帰作業を簡単且つ短時間に行うことができる。
【0015】
その上、収容体をアニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料で形成するだけで良いので、組立工数の省力化による生産コストの低減化も可能となる。
【0016】
本発明の効果を一層顕著にするためには、前記収容体全体が、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されていることが望ましい。
【0017】
組立工数の省力化及び生産コストの低減化を可能にするための具体的な実施の態様としては、前記収容体が、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成された有底の管状体であることが望ましい。
【0018】
また本発明に係る参照電極は、銀からなる電極本体と、塩化銀及び電解質の共融塩からなり、前記電極本体を被覆する共融塩層と、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料からなり、前記共融塩層を被覆する外部被覆層とを有することを特徴とする。
【0019】
銀/塩化銀電極は、紫外線(最大吸収波長220nm)により電極電位に大きく影響を与えることが知られており、この紫外線による銀/塩化銀電極への影響を小さくするためには、前記塩化銀共融塩に硫化銀が含まれていることが望ましい。これならば硫化銀が紫外線を吸収することから、銀/塩化銀電極への紫外線の影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、銀/塩化銀電極からの銀イオンの溶出を防ぐと共に、その参照電極表面に塩化銀が析出することを防止することができるとともに、参照電極電位の長期安定化を図り、乾燥により参照電極の内部液が減少した場合であっても電位の復帰時間を短縮した参照電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の複合電極の構成を概略的に示す全体概略図。
【図2】同実施形態の参照電極の構成を概略的に示す全体概略図。
【図3】同実施形態の参照電極の先端部を示す部分拡大断面図。
【図4】同実施形態の参照電極の電極電位及び参照電極の抵抗を測定した結果を示す図。
【図5】同実施形態の参照電極及び従来の参照電極のKCl濃度に対する電位挙動を示す図。
【図6】同実施形態の塩化銀より難溶性のハロゲン化銀を形成するハロゲンイオンの共存影響を示す図。
【図7】直射日光下における参照電極の影響を示す図。
【図8】参照電極の乾燥後の電位復帰を示す図。
【図9】参照電極乾燥前後における電極電位及び内部抵抗の変化を示す図。
【図10】変形実施形態に係る参照電極を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る参照電極(以下、比較電極ともいう。)を有する複合電極の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係る比較電極2は、図1に示すように、pH電極3と一体となって複合電極100を構成している。そして、この複合電極100は、少なくとも円筒状のpH電極支持管101と、その外周を取り巻くように比較電極支持管102とが一体に設けられて構成されている。なお、これらpH電極支持管101及び比較電極支持管102はいずれも同一組成のガラスから構成されている。
【0024】
前記比較電極支持管102の外周壁には液絡部103が設けてあり、比較電極支持管102よりも若干先端部が突出させてあるpH電極支持管101の先端部には応答ガラス膜104が接合されている。
【0025】
前記比較電極支持管102及びpH電極支持管101には、比較電極2及びpH電極3がそれぞれ収容してあり、内部液として例えばpH7の高濃度(3.33mol/L)のKCl溶液が充填してある。なお、比較電極支持管102の内部液として例えば1.0mol/Lの硝酸カリウムを用いても良い。これら比較電極2及びpH電極3には、それぞれ図示しないリード線が接続してあり、それらリード線はケーブル束105としてpH電極支持管101の基端部から外部に延出し図示しないpH計本体に接続されるようにしてある。
【0026】
しかして比較電極2は、図2及び図3に示すように、銀/塩化銀電極からなる内部電極21と、当該内部電極21に接触する内部電解液22と、当該内部電解液22を収容する収容体23とを備えている。
【0027】
内部電極21は、その先端部分が外部に露出するように保持管24によって保持されている。また内部電極21の後端部にリード線(不図示)が接続されている。
【0028】
内部電解液22は、高濃度(3.33mol/L)のKCl溶液である。なお、内部電解液22としては、高濃度のカチオンを含むものであればKCl溶液に限られない。
【0029】
収容体23は、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料、具体的にはフッ素系樹脂である、例えばフレミオン(旭硝子株式会社製、登録商標)から形成されている。本実施形態の収容体23は、その全体がフレミオンから形成されており、具体的にはフレミオンから形成された有底の管状体である。
【0030】
この収容体23は、内部電極21を保持する保持管24の先端部に接続されて、保持管24から外部に露出している内部電極21の先端部分を被覆するとともに、収容体23内部に収容された内部電解液22が内部電極21の先端部分に接触するようにする。
【0031】
次にこのように構成した比較電極2の製造方法について図3を参照して簡単に説明する。
【0032】
例えば直径1mmのフレミオン中空糸チューブを長さ10mmに切断し、一方の端面をヒートシール等により閉塞させて収容体形成品を形成する。
【0033】
上記のとおり加工された収容体形成品を、3.33mol/L KCl(AgCl常温飽和)溶液に2時間程度浸す。このとき、前記3.33mol/L KCl(AgCl常温飽和)溶液のpHは、フレミオンの官能基SO−HがSO−Kにイオン交換されることにより、pH6程度からpH2程度に変化する。
【0034】
前記収容体形成品を前記3.33mol/L KCl(AgCl常温飽和)溶液から回収し、純水で洗浄後60℃乾燥器などで乾燥させる。これにより前記収容体23が形成される。
【0035】
一方、例えば直径0.6mmの銀線201にOリング202を装着し、保持管24であるポリイミドチューブに挿入して、当該ポリイミドチューブ24に銀線201を固定する。このとき、銀線201の先端部分は、ポリイミドチューブ24から所定長さ露出した状態である。
【0036】
銀線201の先端部約4mmを3.33mol/L KCl(AgCl常温飽和又は1mol/L)溶液中に浸し、印加電圧約1.3〜1.5Vで10分程度陽極酸化させて、銀線部を電解により塩化銀化させ、純水にて洗浄を行ない暗室保管する。これにより銀/塩化銀電極21が形成される。
【0037】
前記収容体23に3.33mol/L KCl(AgCl常温飽和)溶液を下部シール面から3mm程度注入する。
【0038】
そして、銀線201、Oリング202及びポリイミドチューブ24を固定し、例えば一液性シリコンRTV接着剤203をOリング202下部に充填し、収容体23をポリイミドチューブ24に差し込んで固定し、2〜3時間乾燥させて硬化を行なう。上記のように製作した比較電極2は、3.33mol/L KCl溶液中に浸して保管する。
【0039】
次にこのように構成した比較電極2の各性能についての実験例を示す。
【0040】
<基本性能について>
本実施形態の比較電極2の電極電位(Vs、3.33mol/L KCl/AgCl/Ag(基準電極)、Ag/AgCl/3.33mol/L KCl/3.33mol/L KCl)及び比較電極2の抵抗(in3.33mol/L KCl)を25℃を測定した結果及び室温放置1カ月後における電極電位及び抵抗を図4に示す。
【0041】
本実施形態の比較電極2は、基準電極に対しその基準電位が2mV以下であり、そのばらつきも小さく良好な結果であった。また、収容体23の電気抵抗値も1kΩ以下であり、液絡部103のセラミック抵抗値が付加されても所定の規格値(例えば10kΩ未満)はクリアできる。また、電極電位の経時的な挙動に関しては、1ヵ月間3.33mol/L KCl溶液中に浸漬放置において、殆ど変動が見られず良好な結果が得られた。なお抵抗に関しては全体的に若干低くなる傾向があり、ばらつきも低減していることから、性能上何ら支障がでるものではない。
【0042】
<KCl溶液中の電極電位について>
フレミオン製の収容体23はカチオン伝導性があり、収容体23の内外でカチオン濃度が異なると拡散電位に基づく機構により、収容体23の内外で電位差が発生するものと考えられる。本実施形態の比較電極2の場合、3.33mol/L KCl溶液中に浸されるので、Kイオン濃度(活量)が内外で同じ濃度となるので、収容体23の内外で電位差は発生しない。但し、当該電位差は内部液のKイオン濃度の変化により変動するものと判断される。この場合、収容体23の内部にある銀/塩化銀電極21は3.33mol/L KCl(AgCl常温飽和)溶液中に浸されているので、一定電位を示す。本実施形態の比較電極2は、フレミオン製の収容体23はカチオンに応答することから、通常の銀/塩化銀電極の電位応答の挙動と逆の方向に電位変化することが予測され、今回の実験によりそれが実証できた(図5参照)。
【0043】
<アニオン影響について>
内部液中にヨウ化カリウム試薬を添加し、約0.1mol/L共存させたときの比較電極2の電極電位を測定した。この測定結果を図6に示す。従来の比較電極におけるヨウ化物イオンの影響は著しいが、フレミオン製の収容体23を用いた比較電極2は殆ど電極電位に影響がなかった。これはフレミオンがアニオンを通過させないことを立証している。電極電位はプラス側に若干変動しているが、これはKイオン濃度が増加したことに起因している可能性が高い。また、硫化物イオンが銀/塩化銀電極と反応し、表面が硫化銀となり、電位に大きく影響を及ぼし測定不可となる共存物質として知られている。
【0044】
<紫外線の影響について>
銀/塩化銀電極は、紫外線(最大吸収波長220nm)により電極電位に大きく影響を与えることが知られている。これをなくすために通常参照電極の構造や塩化銀に硫化銀を加えることなどで、紫外線を吸収する工夫がなされている。電位影響度は直射日光下で、塩化銀の銀化反応によりプラス方向に数100mVの電位シフトが発生する場合がある。(直射日光下での紫外線量は2〜3.5mW/cmであり、室内では0.1mW/cmである。)
【0045】
これを踏まえ直射日光下における比較電極の影響を調べた。本実施形態の参照電極2を3.33mol/L KCl溶液に浸漬して、暗箱内に入れた場合と、屋上で直射日光下に置いた場合とで測定した結果を図7に示す。その結果、直射日光下での電位変動は0.5mV以内であり、紫外線の影響は認められなかった。
【0046】
<乾燥影響について>
本実施形態の比較電極2を60℃乾燥機に3日間放置し、完全に内部電解液22を蒸発させた。フレミオン製の収容体23自体には孔は開いていないが、収容体23内外の蒸気圧が異なる場合、水蒸気圧を平衡にさせる機能がある。従って、収容体23外の湿度が低いときには、内部電解液22は水蒸気として収容体23外へ飛散する。反対に内部電解液22が乾燥した時は3.33mol/L KCl溶液に浸すと、収容部23内は湿潤となり内部の結晶固化されたKClは溶解し、3.33mol/L KCl溶液に復帰する。
【0047】
収容体23内部を乾燥させて、KClの結晶が固化状態で存在していた。これを3.33mol/L KCl溶液中に浸したときの復帰時間を測定した。図8及び図9から乾燥後における電位及び内部抵抗の復帰時間は、3タイプ共に30分後には10mV、1kΩ以内に収まった。これは従来の銀イオントラップ構造を有する参照電極に対し、乾燥復帰が早いことから改善効果が著しいことがわかる。なお、図8の縦軸における#2565Aは、株式会社堀場製作所製の比較電極である。
【0048】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る比較電極2によれば、収容体23がアニオン伝導性を有さないので、塩化物イオンと銀/塩化銀電極21から溶出した銀イオンとの反応で生成されるクロロ銀錯形成アニオンの溶出を抑えることができる。これにより、比較電極表面に難溶性の銀化合物が生成されることによって生じる電位変動を抑えることができる。その他収容体23の外部に存在するアニオンによって生じる電位変動も抑えることができる。
【0049】
また、塩化銀から溶出する銀イオンは低濃度で維持されて、内部電解液22中には拡散しないと考えられる。これにより、比較的塩化銀層が薄い銀/塩化銀電極21の採用することができる、あるいは銀/塩化銀電極21を長寿命化させることができる。
【0050】
さらに、収容体23がアニオン伝導性を有さずカチオン伝導性を有することから、収容体23に生じる電位は、内部電解液22のカチオン濃度に依存する。その上、収容体23を水分透過性を有する材料から形成していることにより、参照電極2を所望の電解液に浸すだけで、内部電解液22を元の状態に戻すことができると共に、基準電位を復帰させることができる。ここで、収容体23を所望の電解液に浸すだけで良いので、復帰作業を簡単且つ短時間に行うことができる。
【0051】
加えて、収容体23をアニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料で形成するだけで、上記各効果とともに、組立工数の省力化による生産コストの低減化も可能となる。
【0052】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記実施形態では、収容体がフレミオンからなるものであったが、ナフィオン(登録商標)を用いても良い。
【0054】
また、前記実施形態の収容体は全体がフレミオンから形成されており、収容体全体としてアニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有するように構成されているが、収容体の一部がアニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有するように構成し、その他の部分が少なくともアニオン伝導性を有さないように構成しても良い。
【0055】
さらに、前記実施形態では参照電極及び作用電極が一体となった複合電極であったが、参照電極単体として構成したものであっても良い。
【0056】
その上、前記実施形態では、内部電解液を収容体で収容する構成であったが、その他、図10に示すように、参照電極2xが、銀からなる電極本体2x1と、塩化銀及び電解質の共融塩からなり、電極本体2x1を被覆する共融塩層2x2と、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料からなり、共融塩層2x2を被覆する外部被覆層2x3とを有するものであっても、前記実施形態の参照電極2と同様の効果を奏する。なお、共融塩としては、例えば塩化銀にKClを数%加えたものが考えられる。電極本体2x1を共融塩層2x2により被覆する方法としては、例えばディップコーティングが考えられる。また、共融塩に紫外線を吸収する物質、例えば硫化銀を加えることで、より一層紫外線の影響を低減することができる。
【0057】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
100・・・複合電極
2 ・・・参照電極(比較電極)
3 ・・・作用電極(pH電極)
21 ・・・内部電極
22 ・・・内部電解液
23 ・・・収容体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀/塩化銀電極からなる内部電極と、当該内部電極に接触する内部電解液と、当該内部電解液を収容する収容体とを備え、
前記収容体が、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されていることを特徴とする参照電極。
【請求項2】
前記収容体全体が、アニオン伝導性を有さず、カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料から形成されている請求項1記載の参照電極。
【請求項3】
銀からなる電極本体と、
塩化銀及び電解質の共融塩からなり、前記電極本体を被覆する共融塩層と、
カチオン伝導性及び水分透過性を有する材料からなり、前記共融塩層を被覆する外部被覆層とを有する参照電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−141295(P2012−141295A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268123(P2011−268123)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)