説明

双方向回線の通信装置

【課題】 無線回線に接続される複数の通信端末の間でセンタを介して双方向通信を行う
無線回線が使用できないとき、無線回線から一般回線(NTT)に自動的に切替えられるようにする。
【解決手段】 双方向回線の通信装置において、着信側の通信端末が通話中の場合または
通話チャンネルが使用中の場合以外の場合、無線回線を一般電話回線28よりも優先的に使用できるように、通信端末に無線回線に加えて一般電話回線28を接続し、着信側の通信端末が通話中の場合または通話チャンネルが使用中の場合、着信側の通信端末を無線回線から一般電話回線28に自動的に切替えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は双方向回線の通信装置に係り、特に、多チャンネルの中から目的の接続相手を高速に検索できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なCATV回線は単方向であるが、今後は双方向に切り替わりつつある。単方向のCATVの場合、加入者は、放送局から送出される放送/データを受信するのみであるが、双方向のCATVの場合は、「1つのチャンネルにおいて、送信できるのは常に1台のみ」という原則があるものの、加入者はセンタまたは他の加入者に放送/データを送信することができる。
【0003】
CATV回線で双方向通信を行うためには上り、下りの帯域にそれぞれ双方向チャンネルを設定する。このチャンネル数をいくつに設定するかは、双方向サービスを同時に受けることができる利用者の数、最繁時の呼量、呼損率、回線保留時間などによって決定される。例えば、一つの空きチャンネルで通信端末の占有できるデータ通信用伝送周波数帯域幅は6MHzなので、通話チャンネル帯域幅を12.5kHzとした場合、6MHz÷12.5kHz=480となり、理論的には480本の通話チャンネルが得られる。
【0004】
通常、CATV回線における利用可能なチャンネルは、図8の通りであるが、実際に運用している放送局の場合、通常の地上波(TV放送)以外にUHF局、衛星放送局、独自で運営している番組、市町村の緊急放送番組などを放送しているために、多目的に利用可能な空きチャンネルは次第に減少している。その限られた空きチャンネルの中で、種々のサービスを行うためには多数の通信端末をCATV回線に接続する必要がある。
【0005】
従来、CATV回線における回線の接続方法として、図9に示すように、1つのチャンネルに1台の通信端末A、B…を専用に配置し1対1で通信する方法がある。これによれば1つのチャンネルに1台の通信端末が専用に配置されているので、接続に要する時間は非常に短くて済むが、空きチャンネル数の制限から、多数の通信端末で使用できない。また、決められた通信端末間でしか通信を行うことができない。電車の座席にたとえれば、予約すれば誰でも座れるという指定席ではなく、決まった人が座る固定席になる。
【0006】
そこでMCA(Multi Channel Access)と呼ばれる手法が考えられた。これは上り/下り回線に設定されたデータ通信用伝送周波数帯域を等間隔の周波数スロットに分割し、図9(b)に示すように、問合せチャンネルを使った通信端末A、B…からの回線接続要求に基づきセンタ71が空きチャンネルをサーチし、その空きチャンネルを通話チャンネルとして通信端末A、B…に割り当て、各通信端末の送信機及び受信機がその周波数を取得して相互に通信を行うものである。MCAは自由席にたとえられる。自由席の場合、空きを探して端から空席を検索することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したMCAでは、任意の通信端末間で通信を行うことができるというメリットはあるが、接続する通信端末数の増加と、サーチするチャンネル数によっては、接続に要する時間が長くかかるという欠点がある。これはちょうど自由席の場合、端から空席を検索することになるので、人数が多い場合、なかなか空きがみつからないということと対応する。
【0008】
実際の運用で考えた場合、例えばCATV回線を使用した在宅医療システムの場合に、上述したCATVの原則があるので、病院に設置したホスト局が、CATV回線上の多数の医療通信端末を、順にポーリングし、データ収集する必要がある。このような場合、データ収集する回数に比例した時間がかかり、例えば32Kバイト程度のデータを通信するのに9600BPSを想定すると約35秒かかることになる。MCAにおける回線接続のロス時間を約25秒と仮定した場合、このロス時間に上記の約35秒を加えて1件当たりのデータ収集のための所要時間を約1分とすると、500件のデータ収集のために約8時間20分かかることになる。しかし回線接続ロスが5秒程度に短縮されれば、同じ500件のデータ収集でも、約5時間30分で終了することになる。したがって回線接続ロスの短縮化が切に望まれるところである。
【0009】
また、MCAの場合、チャンネルに接続できる通信端末の数はチャンネルの本数が限度となるが、利用可能な空きチャンネルが減少しているため、近い将来通信端末の接続数が不足することが予想され、種々のサービスを受けられなくなるおそれがある。
【0010】
さらに、MCAの場合、通信開始時の空きチャンネルの検索や、通信端末同士で通信するときのチャンネルの確定等の作業をすべてセンタが負担し、センタを介してお互いの通信端末に通知するようになっているため、センタに大規模な設備を必要とするという問題もある。
【0011】
なお、上述した問題は、双方向CATV回線に限定されず、双方向無線回線についても共通する。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消して、回線接続ロスが短く接続相手を高速に検索することが可能な双方向回線の通信装置を提供することにある。また、本発明の目的は、上記目的に加えて少ないチャンネルを多数の通信端末で使用できる双方向回線の通信装置を提供することにある。また、本発明の目的は、センタの作業の一部を通信端末に負担させることにより、センタを簡単な設備で稼働できるようにした双方向回線の通信装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、CATV回線が使用できないとき、CATV回線から一般回線(NTT)に自動的に切替えられるようにした双方向回線の通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、CATV回線の上り/下りの空き回線に、双方向通信を行うためのデータ通信用伝送周波数帯域をそれぞれ設定して、該データ通信用伝送周波数帯域を使ってCATV回線で接続されたセンタと複数の通信端末間、または複数の端末同士で双方向通信を行う双方向システムにおいて、上記上り/下りの空き回線にそれぞれ設定されたデータ通信用伝送周波数帯域を、通話チャンネル帯域幅で等間隔に分割することにより、通話を行うための通話チャンネルをn回線、通話のための問合せを行うための問合せチャンネルを少なくとも1回線設定し、上記複数の通信端末のそれぞれに固有の認識番号を付け、上記n回線の通話チャンネルを認識番号を付けた各通信端末に割り振って、各通信端末の認識番号と割り振られた通話チャンネルとを対応させたデータベースを上記センタに設定する。
【0014】
通話の発信側の通信端末をA、着信側の通信端末をGとした場合、通信端末Aからセンタに対して、通信端末Gに割り振られている通話チャンネルを知るために、上記問合せチャンネルを通じて通信端末Gの認識番号を通知し、通信端末Gの認識番号を通知されたセンタは、上記データベースから上記通信端末Gの認識番号に対応する通話チャンネルを検索し、通信端末Gの認識番号に対応する通話チャンネルが見つかり、かつ該通話チャンネルに対応する認識番号をもつ通信端末Gが話中でない場合に、その通信端末Gの通話チャ
ンネルを通信端末Aに通知し、該通信端末Gの通話チャンネルを受け取った通信端末Aは、該通信端末Gの通話チャンネルを通じて通信端末Gへ発信動作する。
【0015】
通信端末Gが着信動作したら、通信端末Aは通信端末Aの認識番号に対応する通話チャンネルを通信端末Gに通知し、該通話チャンネルを通知された通信端末Gは、当該通信端末Aの通話チャンネルを通じて通信端末Aに対して送信動作をするようにして、通信端末Aと通信端末Gの通話を実現する双方向回線の通信装置である。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記n回線の通話チャンネル以上にシステム全体の通信端末の数が増加した場合に、上記データベースを書き替えることにより、1つの通話チャンネルに複数の通信端末を割り当て、これをグループとし、そのグループ内で通信端末Aが発信動作をする際に、該グループに割り当てられた通話チャンネルをグループ内の他の通信端末Bが使用している場合、通信端末Aは該グループに割り当てられた通話チャンネルに±1〜±m(mはnより小さい整数で、前記1つの通話チャンネルの周波数の移動範囲内の値)チャンネルを加えた程度の範囲で通話チャンネルの空きを確認し、空いている場合に、通信端末Aの通話チャンネルを、その空いている通話チャンネルに変更し直す。
【0017】
この変更に伴って、通信端末Aは問合せチャンネルを通じてセンタに通信端末Aの変更した通話チャンネルを通知し、データベースを更新し、当該通話チャンネルを使用して通信端末Gへ発信動作するようにし、その後、発信側の通信端末Aと着信側の通信端末Gとの間で、お互いに固有の認識番号の確認をして、一致した場合に、通信端末Aと通信端末Gの通話を実施し、当該通話終了後であって、通信端末Bの通信終了後、変更した通信端末Aの通話チャンネルとデータベースを元の通話チャンネルに戻すようにした双方向回線の通信装置である。
【0018】
第3の発明は、第1または第2の発明において、着信側の通信端末Gが通話中の場合または通話チャンネルが使用中の場合以外の場合、CATV回線を一般電話回線よりも優先的に使用できるように、通信端末にCATV回線に加えて一般電話回線を接続し、着信側の通信端末Gが通話中の場合または通話チャンネルが全て使用中の場合、着信側の通信端末GをCATV回線から一般電話回線に自動的に切替えるようにした双方向回線の通信装置である。
【0019】
第4の発明は、第1ないし第3の発明において、CATV回線に代えて無線回線とした双方向回線の通信装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、CATV回線が使用できないとき、CATV回線から一般回線(NTT)に自動的に切替えられるようできる。したがって、利用者を待たせることがない。
【0021】
また、本発明によれば、通信端末の数が増加した場合には、1つの通話チャンネルに複数の通信端末を割り当て、通話チャンネルの使用状況によって、割り当てられた通話チャンネル以外に、自らチャンネルを移動してチャンネル接続に幅をもたせるようにしたので、少ないチャンネルを多数の通信端末で使用でき、しかも接続相手を高速で検索できるために、利用者を待たせることがない。また、そのために必要な初期投資も、センタ内にデータベースを設置し、状況に応じて内容を変更するだけでよいので、安価に構成することができる。
【0022】
また、本発明によれば、センタの作業の一部を通信端末に負担させるようにしたので、センタの設備を簡素化でき、センタを安価に構成することができる。
【0023】
また、本発明によれば、CATV回線が全て使用されている時、または着信側の通信端末が通話中の時、一般公衆回線に自動的に切替えるようにしたので、通信サービスをより向上できる。
【0024】
更に、本発明によれば双方向CATV回線に限定されず、双方向無線回線にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の双方向回線の通信装置を、双方向CATV回線に適用した実施の形態を図面を用いて説明する。
【0026】
図7のように、通信端末から放送局への信号(上り信号)と、放送局から通信機端末への信号(下り信号)は、60MHzを境目にして区別されている。TV放送番組や衛星放送番組等の放送は下り信号であり、ホームセキュリティに関わる通報、在宅医療システムのデータ、家庭用テレビゲームや通信カラオケの要求等は上り信号である。CATV回線で接続されたセンタと複数の通信端末間、または複数の端末同士で双方向通信を行うために、図7の点線で示すように、CATV回線の上り/下りの空きチャンネルに、双方向通信を行うための上りのデータ通信用伝送周波数帯域51と、下りのデータ通信用伝送周波数帯域52をそれぞれ設定する。
【0027】
設定したデータ通信用伝送周波数帯域幅を、通話チャンネル帯域幅で等間隔に分割することにより、多数のチャンネルを得る。このうち通話を行うための通話チャンネルをn回線設定し、各通信端末からの通話チャンネルの情報を受け渡すための問合せチャンネルを少なくとも1回線設定する。なお、データ通信用伝送周波数帯域幅を6MHz、通話チャンネル帯域幅を12.5kHzとすると、得られるチャンネルは既述したように480本となるが、このうちの幾本かは問合せチャンネルとし、残りを通話チャンネルとする。
【0028】
ここで図1(a)に示すように、不特定の通信相手をCATV回線上から検索するために、通信端末A、B…の数量が少ないうちは、1つの通話チャンネル(送信/受信の通話チャンネル)に1台の通信端末を割り当てる。ここでS1〜Snは通話チャンネル、R1は
問合せチャンネルである。
【0029】
また、n回線の通話チャンネルS1〜Sn以上にシステム全体の通信端末A、B…の台数が増加してきたら、図1(b)に示すように、その増加の数に応じて1つの通話チャンネルに複数台割当て、これをグループと考える。例えば2〜3台である。
【0030】
このような通話チャンネルの通信端末への割り当ては後述するデータベースにより管理する。
【0031】
各通信端末のそれぞれには固有の認識番号IDを付ける。そしてn回線の通話チャンネルS1〜Snを各通信端末A、B…の固有の認識番号IDに割り当て、その割り当てた通話チャンネルと認識番号とを対応させたデータベース3を作り、センタ1のシステム管理用のコンピュータ2上に設定しておく。
【0032】
図2は図1(a)に対応するデータベース3の具体例を示す。2つの空きチャンネルをそれぞれ480の本のチャンネルに分け、受信/送信周波数を各通信端末の認識番号IDに割り当てたものである。受信周波数と送信周波数とは対になっていて、受信周波数は送信周波数を一定の割合で周波数変換したものである。この一定の割合は、どこの放送局でも共通という訳ではなく、設置する放送局によって固有の値となる。図2の場合、上り周
波数に94MHzを加算した周波数が下りとして戻ってくるようにしてある。
【0033】
表中において、ID0000 0000〜0000 0007に割り当てている受信/送信周波数は、問合せ周波数用や、システムの管理用、緊急放送用として使用する。なお、在宅医療システムを考えた場合、通信端末の固有の認識番号IDは、家庭の電話番号(例えば、03(3981)4131)の下8桁(39814131)と共通にしておけば、非常に分かりやすい。
【0034】
さて、図1(a)において、通話の発信側の通信端末をA、着信側の通信端末をGとした場合、通信端末Aからセンタ1に対して、通信端末Gに割り振られている通話チャンネルS7を知るために、問合せチャンネルR1を通じて通信端末Gの認識番号007を通知する
。通信端末Gの認識番号007を通知されたセンタ1は、データベース3から通信端末Gの
認識番号007に対応する通話チャンネルS7を検索し、通信端末Gの認識番号007に対応す
る通話チャンネルS7が見つかり、かつ通話チャンネルS7に対応する認識番号007をもつ
通信端末Gが話中でない場合に、その通信端末Gの通話チャンネルS7を通信端末Aに通
知する。
【0035】
通信端末Gの通話チャンネルS7を受け取った通信端末Aは、通信端末Gの通話チャン
ネルS7を通じて通信端末Gへ発信動作する。通信端末Gが着信動作したら、通信端末A
は通信端末Aの認識番号000に対応する通話チャンネルS1を通信端末Gに通知する。通話チャンネルS1を通知された通信端末Gは、通信端末Aの通話チャンネルS1を通じて通信端末Aに対して送信動作をするようにして、通信端末Aと通信端末Gの通話を実現する。
【0036】
また、図1(b)においては、グループ内で通信端末Aが発信動作をする際に、このグループに割り当てられた通話チャンネルS4をグループ内の他の通信端末Bが使用してい
る場合、通信端末Aは該グループに割り当てられた通話チャンネルS4に±1〜±m(m
はnより小さい整数で、前記1つの通話チャンネルの周波数の移動範囲内の値)チャンネルを加えた程度の範囲で通話チャンネルの空きを確認する。空いている場合に、通信端末Aの通話チャンネルS4を、その空いている通話チャンネル、例えばS3に変更し直すと共に、問合せチャンネルR1を通じてセンタ1に通信端末Aの変更した通話チャンネルS3を通知し、通信端末Gへ発信動作する。その後、発信側の通信端末Aと着信側の通信端末Gとの間で、お互いに固有の認識番号000、026の確認をして、一致した場合に、通信端末Aと通信端末Gの通話を実施する。通話終了後であって、グループ内の他の通信端末Bの通信終了後に、変更した通信端末Aの通話チャンネルS3を元の通話チャンネルS4に戻し、同時に問合せチャンネルを使用してセンタ1のデータベース3を更新する。
【0037】
本発明は、電車の座席にたとえれば、ちょうど予約席ということになる。図1(a)は、1つのチャンネルに1人のみ予約した場合である。しかし、通常通信は一日中するわけではないので、1つのチャンネルを1人に常に占有させることは効率の点からあまり好ましくない。そこで、図1(b)のように、予約席をグループ席のように扱う。チャンネル当たりの通話量を見て、1つのチャンネルに数人の予約を割り当てる。予約された席を見て、誰も使用していなければ、そのまま使用する。誰か先に使用していれば、その予約された席の近くの空きを検索する。自分の予約席が使用中の場合でも、すぐそばの席は高い確率で空いていることが多い。この場合、検索範囲が広い程「空き」を発見するまでの時間はかかるが、検索範囲が狭いほど「空き」を発見するまでの時間はかからない。
【0038】
ここで、グループに割り当てられた通話チャンネルS4をグループ内の他の通信端末B
が使用している場合に、グループに割り当てられた通話チャンネルS4に加えて移動する
チャンネル数を±1〜±m(mはnより小さい整数で、前記1つの通話チャンネルの周波数の移動範囲内の値)の範囲としたのは、接続ロスを減少して検索の高速化を図るためであり、m=nとするとMCAと同じになって接続ロスが大きくなり、m=0だと図1(a
)の状態と変らないためである。実用的には±1〜±3程度が好ましい。
【0039】
本発明は、センタではなく通信端末Aに、通信開始時の空きチャンネルの検索や、通信端末Aの認識番号000に対応する通話チャンネルS1を通信端末Gに通知したり、グループに割り当てられた通話チャンネルS4に±1〜±m(mはnより小さい整数で、前記1つ
の通話チャンネルの周波数の移動範囲内の値)チャンネルを加えた程度の範囲で通話チャンネルの空きを確認したり、通信端末同士で通信するときのチャンネルの確定作業等を、センタに代わって負担させるようにしたので、センタの負担が減り、センタを簡単な設備で稼働させることができる。なお、これにより通信端末の負担が増えるが、その負担増加は通信端末を構成する電子デバイスの高度化、高機能化、低価格化により容易に吸収できる。
【0040】
以下、双方向CATV回線の通信システムを具体的に説明する。
【0041】
図3に示すように、センタ1はCATV放送設備4と管理用コンピュータ2を有する。このセンタ1に対して無線または有線のCATV回線5にて複数の通信端末6…が接続される。複数の通信端末6は、任意の通信端末6同士がデータの送信/受信をし、またセンタ1の管理用コンピュータ2からの通信に対してデータを送信/受信する機能を有する。通信端末6は、少なくとも送信周波数及び受信周波数を、CPUに独自に搭載しているソフトウェア、または管理用コンピュータからセットできる機構、例えばPLLに特定の周波数を固定するためのプリセット機構を持っている。
【0042】
通信端末6からは、CPU7よりモデム8を通じて送信データを送出する。送信データは、モデム8を通じてLPF9に入り、LPF9で高域の不要な成分を除去した後、FM変調器10で指定のFM放送帯にFM変調し、そのFM信号はBPF11を通すことにより不要波を除去される。不要波を除去された信号は、混合器12によって、PLL13で送信周波数設定信号に合わせ込められたVCO14の発振信号と混合されて、予めCATVで設定された調整用の周波数に変換される。変換後LPF15で高域の不要な成分を除去してから、RFAMP16に送られてセンタ1に送出するために必要な所定のレベルまで増幅される。RFAMP16の利得は、CPU7からモデム8を通じて供給されるAGC電圧により制御される。増幅された信号は、送信制御信号によって閉制御された流合雑音による伝送エラーから守るためのRFGATESWITCH17を通り、DUPLEXER18を経由して、CATV回線5を通じてセンタ1に送られる。
【0043】
一方、センタ1から出力されたデータ信号は、DUPLEXER18から通信端末6に入力され、混合器19で発振器20の信号と混合され、データ信号のキャリアが設定された受信周波数と一致するとき混合器19から取り出される。なお、発振器20の周波数は、発振器20で作られた局部発振信号と受信周波数設定信号をPLL21により位相検波し、その誤差電圧を取り出して発振器20にフィードバックして制御される。
【0044】
混合器19から出力された信号は、1段目のBPF22を通すことにより第1中間周波信号(10.7MHz)が取り出され、さらに2段目のBPF23で隣接妨害除去のためIF中心周波数±455kHzで所定レベル以上の選択度特性を取られる。そしてFMDET24で周波数の変化を電圧の変化として検出し、その検出信号の一部はスケルチ回路25で無用の雑音を除去し、LPF26を通して高域の不要な成分を取り除いた後、受信データとしてモデム8を通じてCPU7に取り込まれ処理される。
【0045】
上述したような環境の整備されたCATV回線で、図1(b)に示すように1つのチャンネルに複数の通信端末が接続されている場合に、実際に発信側の通信端末(以下、呼局という)が着信側の通信端末(以下、被呼局という)と回線を接続して通信する手順は、
一部省略してあるが、およそ図4のようになる。なお、ここでは便宜上、チャンネルに付す上り/下りを送信/受信と呼び変え、送信/受信の限定を付していないチャンネルは、送信/受信の両方を意味することとする。
【0046】
(1)呼局は、送信を開始し(401)、被呼局を選択したのち(402)、受信周波数を予め割り当てられている幾つかの送信問合せチャンネルのうちの1つの周波数に受信側のPLL21を設定(プリセット)し、DUPLEXER18を通じて受信されるキャリアの有無をCPU7で判定し、その1つの周波数の送信問合せチャンネルが他の通信端末に使用されていないかを確認する(403)。これは1つの通話チャンネルに複数台の通信端末が割り当てられている場合、同時に1台以上の通信端末が同じチャンネルに送信できないために、必ず確認する必要がある。使用中であれば、受信周波数の設定を送信問合せチャンネルの次の周波数に設定し同じように確認していく。
【0047】
ここで、未使用の送信問合せチャンネルが確認できれば、確認を停止し、その送信問合せチャンネルの周波数をCPU7に記憶し、それと同じ値の周波数を、送信側のPLL13に送信周波数として設定し、その送信問合せチャンネルに対して送信動作可能とする。また、受信側に受信問合せチャンネルを設定するために、上記送信周波数を一定の割合で周波数変換した受信周波数を受信側のPLL21に設定して問合せ回答受信の準備をする。なお、全て使用中であれば、話中である旨、呼局の使用者に通知し終了する(405)。
【0048】
(2)呼局は、DUPLEXER18を介し上記した送信問合せチャンネルを通じて、被呼局の周波数の問合せデータをセンタ1に対して送信する(404)。センタでは、システム管理用のコンピュータ2上のデータベースから、被呼局の受信/送信の通話チャンネルに関する情報と、現在被呼局が通話中か否かの情報を、受信問合せチャンネルを通して受信側からCPU7にもらう(406)。この時点で、被呼局が存在するか(412)、被呼局は使用中ではないか(413)を判断して、被呼局が未登録の場合、あるいは話中の場合は、いずれも話中である旨、呼局の使用者に通知して終了する(405)。
【0049】
(3)呼局は、次に、予め割り当てられている送信通話チャンネルをメインとし、その送信通話チャンネルが同じグループ内の他の通信端末に使用されていないかを(1)と同じ要領で確認する。これも1つの通話チャンネルに複数台の通信端末が割り当てられている場合、同時に1台以上の通信端末が同じチャンネルに送信できないために、確認する必要がある。
【0050】
(4)ここで、その送信通話チャンネルが使用されている場合は、受信側のPLL21の受信周波数設定値を移動し、メインの送信通話チャンネルの前後の数チャンネル、例えばメインの送信通話チャンネルに±1〜±3チャンネルを加えた範囲のチャンネルの使用状態を順次確認し、その中から未使用送信通話チャンネルを検出し確定する(図1(b)参照)。この時点で全て使用中であれば、話中である旨、呼局の使用者に通知し、終了する。
【0051】
(5)呼局は、通話チャンネルをCPU7に記憶し、送信通話チャンネルの周波数をPLL13に送信周波数として設定し、システム管理用コンピュータ2から通知された、通話相手である被呼局に割り当てられている通話チャンネルに対して、発信操作をする(407)。
【0052】
ここに通信を確立させるために送信するデータは、呼局側の固有認識番号ID、被呼局側の固有認識番号ID、呼局側の送信/受信通話チャンネル、将来拡張用の予備データ、通信内容の正確さの確認のためのチェックサムデータなどである。ここで呼局側が相手の
IDと自分のIDを送るのは、使用するアプリケーションでそれを利用することがあるからである。
【0053】
(6)受信待機状態(415)にある被呼局Bは、呼局からのデータを受付けた後(416)、送られてきた固有認識番号IDをチェックし(417)、そのIDが自分の固有認識番号IDと一致しない場合は、着信を放棄し、次の固有認識番号IDのフレームが来るまで待つ。一致した被呼局は、呼局へ通話の開始を許可したことを通知する(418)。同時に、被呼局側の送信/受信通話チャンネルなどの情報も併せて通知する。ここで被呼局がIDの確認をするのは、1つの通話チャンネルに他の通信端末が接続されている可能性があり、その中から目的の1台を選定する必要があるからである。
【0054】
なお、着信側に複数の通信端末が接続されている場合に、受信した複数の通信端末は自分のID以外が来たときには、それ以降、その通信回線が通信終了するまで、次の(a)または(b)の動作を行う。
【0055】
(a)送信したい場合既述したように、設定されている通話チャンネルの±1〜±3程度の範囲を空きを検索し、発信動作に移行する。
【0056】
(b)受信待ちの場合問合せチャンネルの中に設定された呼出チャンネルを利用して受信し続け、自分が呼出されるまで待機する。ここで他の通信端末から呼出されない場合には、本来割り当てられている通話チャンネルの通話が終了すれば、その割り当てられている通話チャンネルで待つ。他の通信端末から呼出された場合は、呼出チャンネルを使って割り当てられている通話チャンネルの±1〜±3の範囲で空きを検索し、その結果をセンタに報告し、自分はその空きチャンネルを受信し、呼出されるのを待つ。通話が終われば、本来割り当てられている通話チャンネルで次の呼出しを待つ。
【0057】
(7)被呼局からの許可通知を呼局が受領したら呼局、被呼局とも回線をオープンし(409、419)、通話/通信を開始する(410、420)。
【0058】
(8)通話終了後に、呼局の移動した通話チャンネルは、また元の設定値に戻す。ここで通話チャンネルを元の設定値に戻すのは、CATV放送局に加入した通信端末に割り振られたチャンネルに片寄りができないようにするためである。たまたま発見した「空き」の席を自分の予約席と設定してしまうと、1つの座席に対する予約の人数に片寄りができ、不都合になるからである。
【0059】
上述したように、通信におけるシステムを管理するコンピュータ2上に、通信端末の固有の認識番号と周波数の対応をデータベース化して持たせ、通信端末からの要求に応じて接続相手の通信端末に関する通信に必要なデータをデータベースを利用して受け渡しするようにしたので、目的の接続相手を高速に検索できる。
【0060】
またデータベースの内容を書き替えるだけで、通信端末の接続関係を容易に変更することができるので、不特定の通信相手をCATV回線上から検索するために、通信端末の数量が少ないうちは1つのチャンネルに1台を、また数量が増えてきたら2〜3台の通信端末を1つのチャンネルに割り当てることができる。特に、1つのチャンネルに複数台の通信端末を割り当てた場合には、チャンネル数以上の数の通信端末を接続することができるので、近い将来、増大する通信端末に対しても、減少する空きチャンネルにも対応できる。
【0061】
さらに、2〜3台の通信端末を1つのチャンネルに割り当てた場合、回線の使用状況によって予め設定されたチャンネルが使用されているときは、自らチャンネルを移動し、移
動範囲内で空きチャンネルを見つけるようにしたので、全てのチャンネルを移動していくMCAと比較して、目的の接続相手をより高速で検索できる。このため、例えばCATV回線を使用した在宅医療システムで、病院に設置したホスト局が、CATV回線上の多数の医療通信端末を順にポーリングし、データを収集する必要がある場合でも、回線接続ロスが短縮されるので、データ収集に時間がかからなくなる。
【0062】
また、本発明は双方向CATV回線に限定されず、双方向無線回線にも適用できる。両者は有線か無線かの違いがあるだけで、回路的/構成的には差がないからである。
【0063】
なお、上記実施の形態では、1つの通話チャンネルに複数台の通信端末を割り当ててグループ化したが、このグループは固定化したものではない。通信端末のチャンネルへの割り振りは、データベースを書き替えることにより自由に変更でき、その変更はCATVの使用頻度に応じて弾力的に行うことができる。極端な例では、あるチャンネルの通信端末は、1日のうち過半数の時間を通信に使用するのであれば、そのチャンネルは、その通信端末1台のみに割り振るようにし、他のチャンネルで殆ど使用頻度のないようなチャンネルには数台の通信端末を割り当てるようにすることもできる。センタ1の管理用コンピュータ2は、このようにチャンネルの割り当てを計画して、全ての通信端末が同じチャンスで通話できるようにする。
【0064】
また、図1(b)に示す実施の形態では、便宜上、着信側のチャンネルに1つの通信端末Zしか接続されていない場合について説明したが、複数の通信端末A、Bが接続された発信側と同じく、着信側にも通信端末Z以外の他の通信端末が複数接続されている場合にも、本発明を適用できることはもちろんである。
【0065】
ところで、上述した図4の通信手順では、通話チャンネルが全て使用中、または相手が通話中の場合、話中である旨、呼局の使用者に通知し終了するようになっている。しかしながらこの場合、通信を終了させてしまうのではなく、塞がっているCATV回線から一般電話回線(NTT)に自動的に切り替わるようにすれば非常に便利である。そこで図5のように通信端末6の要部を改善して、図3の通信端末6内のCPU7にCATV回線モデム8に加えて一般電話回線モデム27を接続した。この接続は、一般電話回線28に対してCATV回線5を優先的に使用できるようにし、もしCATV回線5の相手が通話中の場合、または通話チャンネルが全て使用中の場合は、一般電話回線28の発信に自動的に切替える。図6を用いてこの切替え処理の流れを説明する。なお、図6において図4と対応する部分には同一符号を付して示す。
【0066】
被呼局が使用中ではない場合(413)、センタは図4の場合と同じく被呼局のチャンネルを呼局に通知(414)する。しかし、被呼局が使用中、すなわち被呼局が通話中、またはCATV回線の通話チャンネルが全て使用中の場合、センタは、既に登録してあるデータベースより一般公衆回線の電話番号を検索して呼局へ通知する(421)。呼局は検索されたその一般公衆回線の電話番号を受信する(422)。呼局は、ここで「話中のため一般公衆回線に接続します。」旨を使用者に通知した後(423)、CATV回線を終了する(424)。呼局が422にて受信した一般公衆回線電話番号に自動発信する(425)。以降は通常の電話処理と同じである。
【0067】
このようにCATV回線が塞がっているとき、一般公衆回線に自動的に切替えるようにしたので、CATV回線が塞がっていても、通話/通信が確保できるのでサービスを一層向上でき、頗る便利である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の双方向回線の通信装置のシステムの原理図であり、(a)は1本の通話チャンネルに1台の通信端末が割り当てられる場合の説明図、(b)は通話チャンネル以上にシステム全体の通信端末の数が増加して、1本の通話チャンネルに複数台の通信端末が割り当てられる場合の説明図である。
【図2】本実施の形態のデータベースの具体例を示す通信端末固有の番号(ID)と受信周波数、送信周波数の対応表である。
【図3】本実施の形態の双方向回線の通信装置を実施するためのCATV回線で接続されたセンタ側と通信端末側のシステム構成図である。
【図4】本実施の形態による発信側の通信端末が着信側の通信端末とセンタを介して回線を接続するまでの処理の流れを示す説明図である。
【図5】本実施の形態による一般電話回線モデムが追加された通信端末の要部構成図である。
【図6】図5の実施の形態によるCATV回線が全て使用されている時、又は通話中の時、CATV回線から一般公衆回線に自動的に切替え接続する処理の流れを示す説明図である。
【図7】我国の双方向伝送路の帯域分割例を示す説明図である。
【図8】我国のチャンネルCATV受信周波数一覧表である。
【図9】従来例のシステムの原理図を示し、(a)は1対1方式、(b)はMCAシステムである。
【符号の説明】
【0069】
1 センタ
3 データベース
5 CATV回線
7 CPU
8 CATV回線モデム
27 一般回線モデム
28 一般電話回線
A、B、G 通信端末
S1〜Sn 通話チャンネル
R1 問合せチャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線回線と一般電話回線とが切り替え自在に接続される複数の通信端末と、複数の通信端末の間で前記無線回線を介して双方向通信を行わせるセンタと、前記センタに設けられ前記複数の通信端末の一般公衆回線の電話番号を登録したデータベースとを備え、前記センタを介して前記無線回線に接続される複数の通信端末間で双方向通信を行う双方向回線の通信装置において、
前記センタは、発信側の通信端末から回線を接続しようとする着信側の通信端末が通話中または通話チャンネルが使用中か否かを判断し、
前記着信側の通信端末が通話中または通話チャンネルが使用中の場合以外の場合、前記発信側の通信端末から前記着信側の通信端末に、前記一般電話回線よりも優先的に前記無線回線を接続させるようにし、
前記着信側の通信端末が通話中または通話チャンネルが使用中の場合、前記発信側の通信端末から前記着信側の通信端末に、前記無線回線から前記一般電話回線に自動的に切り替えさせて、前記一般電話回線を接続させるようにし、
前記着信側通信端末の一般公衆回線の電話番号を前記データベースから検索して、発信側の通信端末から、検索された前記一般公衆回線の電話番号をもつ前記着信側通信端末に自動発信させるようにした
双方向回線の通信装置。
【請求項2】
前記センタは、前記着信側の通信端末を前記無線回線から前記一般電話回線に自動的に切替え接続させる際、前記発信側の通信端末へ一般公衆回線に切替え接続する旨のメッセージを通知するようにした請求項1に記載の双方向回線の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−312438(P2007−312438A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225535(P2007−225535)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【分割の表示】特願2004−45566(P2004−45566)の分割
【原出願日】平成9年3月11日(1997.3.11)
【出願人】(391065769)株式会社セタ (89)
【Fターム(参考)】