説明

双極性帯電量の測定方法および測定装置

【課題】まさつ電気等は電荷帯電と双極性帯電との共存体であるが、現在、双極性帯電量を測定する器具類は発明されていない。
【解決手段】電荷帯電量をQ、双極性帯電量を(±q)であらわすと帯電量は[Qと(±q)]であらわされる。α線等で帯電体を除電すると、Qは消滅し(±q)のみが残る。(+q)または(−q)のみを反対極性のイオンで除電すると、(+q)または(−q)のみの電荷帯電体となる。これをファラデーケージ等で測定し、(±q)と記録し、帯電量は[Qと±(q)]と表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電気の測定方法および測定装置に関する
【背景技術】
【0002】
双極性帯電量および電荷帯電量という用語は、電気・静電気関係の資料や図書、たとえば電気磁気学教科書や学会が編集している静電気ハンドブック・電気工学ハンドブックなどには記載されていない用語で、出願に際し、説明の最も難しいところである。双極性帯電量および電荷帯電量という用語の意味を理解するために必要な難問と用語の概要を以下に説明する。
【発明の概要】
【0003】
静電気には不可触問題と言われている図1の難題が存在する。図1は、誘電率εとεの誘電体が界面で接触し、界面上に点電荷が存在する場合で、この図は電気磁気学教科書・静電気ハンドブック等の専門書には記載されていない。
図1で、1は誘電率εの誘電体、2は誘電率εの誘電体、3は誘電体1と2との接触する界面、4は点電荷である。なお、図1のεの誘電体中に誘電率εの球がおかれ、界面上に点電荷が位置する場合、点電荷の替わりに双極子が位置する場合なども教科書等には記載されていない。
理由は、正解または近似解が得られていないためらしい。
【0004】
静電界には縦波静電界と横波静電界との2つがあり、縦波静電界測定器は市販されているが、横波静電界測定器は未だに発明されていない。ただし、縦波静電界、横波静電界という用語は、日本語で書かれた教科書・ハンドブック等には記載されていない。
電気磁気学教科書の第一章またはその次には、点電荷がつくる電界、双極子がつくる電界の数式表示およびそれの説明図が記載されている。説明図から、直観で、点電荷がつくる静電界は縦波静電界、双極子がつくる電界は縦波静電界と横波静電界との共存であることがわかる。
なお、横波静電界測定器が入手できないということは、縦波静電界測定器で[縦波静電界と横波静電界とが共存]している静電気を測定している、ということで、横波静電界は積み残された状態で放置されている。静電気放電、静電凝集、静電汚損、デバイスの誤動作や損傷に不分明な点が多い理由の一つである。
【0005】
電荷帯電、双極性帯電という用語は、電気磁気学教科書や静電気ハンドブックに記載されていない。これは、以下の理由によるとおもわれる。
電荷Qを物体に与えると帯電量Qの帯電体が生じ、周辺に電界が形成される。(+qと(−q)の両電荷がつくる双極子を絶縁物に与えると、帯電量(±q)の帯電体がなる。現在、帯電量を測定する装置としてはファラデーケージや静電気測定器のみで、(±q)を測定する測定器は発明されていない。したがって、前者を電荷Qを与えた場合の帯電すなわち電荷帯電、後者を(±q)の双極子を与えた場合の帯電すなわち双極性帯電と明確に区別すると、(±q)の双極性帯電量の測定方法も明示せざるを得なくなる。すなわち、両者を区別する名称づけまでには踏み込みにくい状態にある。これが、電荷帯電、双極性帯電という用語を教科書等で使用しにくい理由であると思われる。
本発明の目的は、縦波静電界と横波静電界、双極性帯電と電荷帯電という用語を提案し、本発明の双極性帯電量測定器及び別の発明としての電界分布可視化装置および横波静電界測定器とあわせて、静電気の定量表示を明確化するところにある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、静電界には縦波静電界と横波静電界とがあり、帯電には、電荷帯電と双極性帯電とがある。一方、測定器としては、縦波静電界測定器は市販されているが、横波静電界測定器は発明されていない。また、電荷帯電量を測定するファラデーケージや静電気測定器は市販されているが、双極性帯電量を測定する装置は発明されていない。
この状態を克服するには、横波静電界測定器と双極性帯電量および電荷分布可視化装置を発明すればよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ファラデーケージや静電気測定器は電荷量Qを測定できるが、(±q)の双極性電荷量は測定できない。そこで、双極性帯電体の(±q)の(+q)または(−q)のいずれか一方のみを除電すれば、残された(−q)または(+q)はファラデーケージまたは静電気測定器で測定できる。すなわち、双極性帯電を電荷帯電に変換すればよい。
除電とは、正電荷(+q)と負電荷(−q)とが吸引し、両者が合体すると再結合で消滅する現象を利用して帯電体の電荷を除去する方法のことで、種々の除電装置が市販されている。
【0008】
図2は、双極性帯電を電荷帯電に変換するための除電をおこなう作業とそれに使用する装置の説明図で、(a)はイオン空間容器、(b)は除電状態の説明図である。5は、接地された導体容器、6はコロナ放電電極、7は放電用直流高電圧電源、8はスイッチ、9は双極性帯電体、10はマイナスイオン、11は導体容器内面にマイナスイオンによって誘発したプラス電荷である。なお、この図は、放電電極極性がマイナスであるので、空気イオン等の極性の符号はそれに合致するようにした。
装置の作業手順は下記のようにすすめる。図(a)でスイッチ8を閉じると放電極から放電が生じ、容器内は図では電源電圧が負であるから、負イオン空間が形成される。負イオン空間が十分形成されて後、スイッチを開き、放電電極を容器からはずす。放電電極を除去された容器内は閉じられた負イオン空間となる。時間とともにイオンは外壁方向に移動し、接地された容器壁に吸収される。(b)図は双極性帯電体をイオン空間に納入した状態で、帯電体の(±q)とイオン空間のイオンと容器壁面の電荷との間で吸引と反撥が生じる。図2では、イオン空間は負性であるから、双極子電荷(±q)の(+q)が除去され、残余のマイナスイオンは壁面に吸収される。すなわち、双極子帯電体は(−q)の電荷帯電体となる。
電荷帯電体となった帯電体を容器から取出し、静電気測定器またはファラデーケージで電荷量(−q)を測定し、(±q)の双極性帯電樽と記録する。
【発明の効果】
【0009】
従来は、帯電体の電荷帯電量を静電気測定器等で測定して帯電量とし、双極性帯電量は測定対象外としてきた。本発明により、電荷帯電量も双極性帯電量も測定できるので、従来の不具合の一つが解消できる。
なお、横波静電界測定器と電荷分布可視化装置が別に発明されているので、これと、本発明とを併用すると、静電気応用であれば荷電状態の均一性の評価、生産現場における静電気除去では除去の均一性の評価や除去不良度の検出、帯電防止加工等であれば、帯電防止力を抵抗値で評価する従来方法の低信頼性に替わる方法としての帯電性評価など、静電気関係に種々の変革をもたらす。
【0010】
本発明は、双極性帯電量の測定に関するものである。しかし、その本質は静電気測定技術の枠内のみならず、静電気または帯電の概念の正常化につながる。すなわち、静電気の源泉である帯電状態は電荷分布で、電荷分布測定法は従来から重視されてきた。しかし、その中身としての電荷帯電と双極性帯電の量的関係は測定技術の未完成からあまり検討されてはいない。本発明では、測定手順そのものが電荷帯電と双極性帯電を意識させる。すなわち、測定は以下のように進行する。
(1)試料を静電気測定器またはファラデーケージで測定して、電荷帯電量Qを求める。この操作は、従来の帯電測定そのものである。
(2)α線などで試料上の電荷帯電量を除去し、双極性帯電体(±q)に変換する。
(3)双極性帯電体の正電荷(+q)または負電荷(−q)のいずれか一方の極性電荷のみを除電し、双極性帯電体を(+q)または(−q)の電荷帯電体に変換する。
(4)静電気測定器またはファラデーケージで(+q)または(−q)を測定する。
(5)(1)と(4)を総合し、電荷帯電量Q、双極性帯電量(±q)と記録する。
すなわち、Qと(±q)という意識が確立する。ただし、静電気の帯電体には種々の形態があるので、使用する器具はそれに合うように変形する必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の原理には下記の弱点がある。すなわち、図2(b)の9が無帯電の固体であれば、図2(b)の状態では負イオン濃度に応じた負の帯電体となり、なにがしかの双極性帯電体として測定される。これの補正は、容器内にイオン濃度測定器を設置し、双極性帯電体を電荷帯電体に変換する変換操作に習熟することが第一である。つぎに、複数の試料を使用して、(+q)の電荷帯電体と(−q)の電荷帯電体の両方に変換した時の双極性帯電量を比較して測定値を決める第2の補正を併用して、本発明の弱点を克服する。
実際問題としては、静電気は空間に分布した現象で、帯電体の総電荷量のみでは判断できない現象であるから、前述したように、電荷分布可視化装置と併用して実験はすすめられる。したがって、これによっても本発明の弱点は克服される。
【0012】
高密度除電をおこない双極性帯電が残留していないことをダストフィギュアー法で検査している半導体デバイス工程で、静電気障害らしきものが再発するようになった。本発明で双極性帯電の残留状態を再検査したところ、残留が認められた。除電装置の再調整をおこなった。デバイスは導体・半導体・絶縁物の微細構造の複合材である。そのために、比重と体積の大きな二酸化鉛粉と硫黄粉は空気イオンに比して検出不良が生じやすいことが判明した。
【0013】
従来の高密度除電では効果が薄いと高度化された新しい高機能性フィルムの除電工程で指摘を受けた。ダストフィギュアー法での検査に替えて本発明の検査をおこなったところ、残留双極性帯電が検出された。ダストフィギュアー法は、体積、質量に伴う慣性力が検出誤差を伴うことが判明した。更なる高密度除電装置を開発することになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】誘電率ε1とε2の二つの誘電体が接する界面上におかれた点電荷
【図2】双極性帯電を電荷帯電に変換するための単極性イオン空間容器(a)と容器内に双極性帯電体が置かれた状態(b)
【符号の説明】
【0016】
1:誘電率εの誘電体
2:誘電率εの誘電体
3:誘電体1と誘電体2の界面
4:点電荷
5:接地された導体容器
6:コロナ放電電極
7:放電用高電圧直流電源
8:スイッチ
9:双極性帯電体
10:マイナスイオン
11:容器内面にマイナスイオンにより誘起されたプラス電荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双極性帯電体の正または負の一方を除去して双極性帯電体を電荷帯電体に変換し、電荷量測定装置でそれを測定して双極性帯電量を測定する方法
【請求項2】
双極性帯電体の正または負の一方の電荷を除去する装置と電荷量測定装置とを組み合わせて双極性帯電量を測定する装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−57648(P2013−57648A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209835(P2011−209835)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(591275894)
【Fターム(参考)】