説明

反射を抑制した接着剤保護用コーティング

本開示は、300nm未満のレーザ系において使用するための、種々の種類の基板に適用可能な薄膜に関する。この薄膜(57)は、選択された材料から成るブロッキング層(54)と、1〜7層の選択された材料から成るマッチング構造(56)とで構成される。ブロッキング層は、300nm未満のレーザ光を、基板(52)をホルダに接合するために使用される接着剤(60)へと透過させないように、あるいはその透過を最小限に抑えるようにする役割を果たす。マッチング層は、ブロッキング層(54)から基板(52)へと戻る300nm未満のレーザ光の内部反射率を最小にする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、Jay F. AnzellottiおよびHorst Schreiberの発明者名で2009年11月25日に出願された米国仮特許出願第61/264419号の優先権の利益を、米国特許法第119条(e)の下で主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ホルダと、紫外線(UV)硬化性接着剤を用いてホルダ内に接着保持されるコーティングされた光学素子とを有する光学アセンブリにおいて、反射を抑制する方法に関する。特に、光学素子上のコーティングにより、迷光の接着剤への透過と、光学素子内への光の後方反射とを抑制する。
【背景技術】
【0003】
エキシマレーザはマイクロリソグラフィ産業において選択されている光源である。例えば、パルスエネルギー密度(フルエンス)が20mJ/cm2超、パルス波長が250nm未満(例えば、193nm以下)であるような高出力レーザを使用すると、レーザリソグラフィ系内で使用されている材料を劣化させる可能性がある。接着剤、例えばUV硬化性接着剤が、光学系中のホルダ内で深紫外線(DUV)光学素子を保持するために使用されている。こういった接着剤は、典型的には水銀i線のUV放射(〜365nm)を用いて硬化されるが、DUV迷光(例えば、250nm未満)に絶えず曝されると徐々に破壊される可能性があり、光学部品のマウントを不安定なものとし最終的には系の早期故障を引き起こし得る。特許文献1には、光学部品が接着剤と接するその光学部品上の位置に単一層の薄膜を堆積させて用いたものが記述されている。この層は、光学系の波長を透過しない(ブロックする)がUV硬化プロセス用の波長を透過するような、誘電材料で構成されている。ただし、誘電性コーティングから光学部品内への後方反射が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,097,536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、迷光に関する懸念から、コーティングにより反射されて部品内へと戻る光の量を低減することが望ましい。したがって本開示は、1以上の追加の層をブロッキング誘電体層と部品との間に加えて使用し、著しく反射率を低減させるものに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、300nm未満のレーザ系において使用するための、種々の種類の基板に適用可能な薄膜に関する。この薄膜は、選択された材料から成るブロッキング層と、1〜7層の選択された材料から成るマッチング構造とで構成される。ブロッキング層は、300nm未満のレーザ光を、基板をホルダに接合するために使用される接着剤へと透過させないように、あるいはその透過を最小限に抑えるようにする役割を果たす。マッチング層は、ブロッキング層から基板へと戻る300nm未満のレーザ光の内部反射率を最小にする。一実施の形態においては、300nm未満の光を透過しないが、波長が300nmを超える、例えば接着剤を硬化させる365nmの光を透過するような材料で、ブロッキング層は作製される。別の実施形態においては、250nm未満の光を透過しないが、波長が250nmを超える、例えば接着剤を硬化させる365nmの光を透過する選択された材料で、ブロッキング層は作製される。本書において開示される薄膜は、レーザ系において使用されるレンズ、プリズム、およびウィンドウ上で使用することができる。
【0007】
接着剤のUV硬化を必要としない用途では、UVを透過しない、金属または他の非透過性材料を、接着剤を保護するために適用してもよい。この場合、本書において開示する方法と同じ方法を用いて、著しく反射率を低減させることも可能である。
【0008】
接着剤がUV硬化を必要としない用途であっても、光学素子をホルダに接着接合するプロセスの可視フィードバックをオペレータが得るためには、可視的な透過が要求される。この場合のブロッキング層は、薄いものであり、かつ可視光を透過するが300nm未満の光は透過しない。
【0009】
一実施の形態において、本開示は、レーザ光の入口用の面および出口用の面と、これらの面により画成される縁端部とを有している、成形光学素子に関し、前記素子は、基板と、縁端部の少なくとも一部の上に堆積された薄膜とからなり、前記薄膜は、基板の上に堆積された少なくとも1つの屈折率マッチング材料の少なくとも1つの層と、前記少なくとも1つのマッチング層の上に堆積されたブロッキング層材料とから構成されたものである。一実施の形態において、薄膜は、1〜7層の少なくとも1つの屈折率マッチング層と1層のブロッキング層とから成り、前記屈折率マッチング層の夫々の厚さは5nmから50nmの範囲内であり、かつ前記ブロッキング層の厚さは20nmから400nmの範囲内である。別の実施形態において、薄膜は、1〜4層の少なくとも1つの屈折率マッチング材料の層と1層のブロッキング層とから成り、前記屈折率マッチング層の夫々の厚さは5nmから50nmの範囲内であり、かつ前記ブロッキング層の厚さは20nmから400nmの範囲内である。前述の屈折率マッチング材料の層は、Nb25、Al23、HfO2、SiO2、Y23、MgF2、LaF3、GdF3、AlF3、Ta25、およびTiO2、およびその混合物、から成る群から選択された、交互の屈折率マッチング材料で構成される。ブロッキング材料は、NiCrと、Nb25と、TiO2と、TaO2と、さらにNi、Cr、Al、およびTiから成る群から選択された金属と、そしてその混合物とから成る群から選択される。基板は、シリカ、石英ガラス、高純度石英ガラス、フッ素ドープ石英ガラス、フッ化カルシウム、およびフッ化マグネシウムから成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】複数のマッチング層56を備えている基板52と、ブロッキング層54と、そして光学素子50をホルダ(図示していない)に接合するための、ブロッキング層の少なくとも一部に設けられている接着剤60とから構成されている、光学素子50を示す図、およびその拡大図
【図2】コーティングされている基板およびコーティングされていない基板の、外側表面に内側からぶつかる266nmの光に関し、入射角に対する平均偏光の反射率をモデル化して示したグラフ
【図3】コーティングされている基板およびコーティングされていない基板の、外側表面に内側からぶつかる266nmの光に関し、入射角に対する平均偏光の反射率をモデル化して示したグラフ
【図4】プリズムを示した図であって、ブロッキング層とマッチング層とを含む薄膜が、プリズム基板とプリズムの各端部上の吸収コーティングとの間にどのようにして挿入され得るかを示した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本書において説明する光学素子およびそのコーティングは、波長300nm未満で、すなわち、例えば限定するものではないが、266nm、248nm、および198nmで動作する、レーザ系において使用するためのものである。この光学素子コーティングは、300nm未満の光をコーティングに通さないようにブロックすると同時に、300nmを超える光をコーティングに通すことができる。本書において「ブロッキング、またはブロッキング材料、あるいはブロッキング層」とは、300nm未満の光波長をブロックまたは吸収する材料である。250nm未満の波長に対しては、例えばTa25などの材料をブロッキング材料として使用することができる。ただし、一般的にレーザにおいて使用されている、例えば257nmや266nmなどのより高い波長では、例えば限定するものではないが、Nb25やTiO2などのより吸収端の長い材料が必要となる。さらに、本書において「マッチング材料またはマッチング層」とは、基板のアドミタンスに合致するように吸収層のアドミタンスを変更するものである。アドミタンスと屈折率は概して同じ意味の用語であるが、アドミタンスの方が複数の層および角度にまで及び得るため的確である。
【0012】
図1は、300nm未満のレーザ系において使用するための、ホルダ内の光学素子50を示したものであり、ホルダの一部が数字53で表されている。このホルダは、連続的なものでもよいし、あるいは素子50の縁端部付近で分割されているものでもよい。素子50の縁端部を(括弧および矢印51で示すように)拡大図に示し、本書における開示を説明する。
【0013】
拡大図に示したように、この光学素子は、1〜7層のマッチング材料56(3層が示されている)とブロッキング層54とから成る薄膜57を備えた、基板52で構成されている。一実施の形態において、マッチング層の数は1〜4層の範囲内である。本書において開示されるブロッキング層およびマッチング層は、ホルダ内に保持されることになる素子の縁端部周りに堆積される。ブロッキング層54は、レーザ光が、光学素子の縁端部をホルダ(図1の拡大図には示されていない)に接合するために使用される接着剤60へと透過しないように、あるいはその透過を最小にするのに役立つ。マッチング層は、ブロッキング層から基板へと戻る反射率を最小にする。マッチング層が最初に基板に適用され、その後ブロッキング層がマッチング層の上に適用される。光学素子はこうして、基板52と、マッチング層56およびブロッキング層54から成る薄膜57との組合せで構成される。光学素子は、接着剤材料60を用いてホルダにマウントすることができる。接着剤はブロッキング層の上に図示のように部分的に、あるいはブロッキング層上の連続コーティングとして適用される。さらに、図1において矢印59は、基板52の内側表面にぶつかってこの表面に反射されたレーザ「迷」光を表している。
【0014】
ブロッキング層54は、この光学素子を使用しているレーザ光学系の波長を透過しないが、一般にはおよそ365nmの水銀i線である、UV硬化プロセスの波長の光は透過することができる。しかしながら動作中、素子を通過したレーザ光がブロッキング層にぶつかり、ブロッキング層によって光学素子へと戻るよう反射されることがある。そのため、反射率を大幅に低減するよう、あるいは反射をなくすよう、光学素子の基板とブロッキング層との間に1つまたは複数の選択された材料を配置する。これらの用途において、接着剤のUV硬化が必要でない場合には、ブロッキング層は金属層でもよいし、あるいはUV透過性ではない材料の層でもよい。ブロッキング層を堆積するために使用し得る堆積方法の例としては、限定するものではないが、化学蒸着、プラズマイオンアシスト蒸着、抵抗加熱を用いた真空蒸着、イオンスパッタリング、および当技術において既知の他の堆積方法が挙げられる。
【0015】
マッチング層の材料は、Al23、HfO2、Y23、およびSiO2(例えば限定するものではないが、石英ガラス、フッ素ドープ石英ガラス、および高純度石英ガラス)、およびその混合物、から成る群から選択された、少なくとも1つの材料である。著しい吸収性を有する酸化物を薄膜内の極薄い層に使用してもよく、こういった材料の例として挙げられるのは、限定するものではないが、Nb25、Ta25、およびTiO2、およびその混合物である。マッチング層構造内で使用可能なさらなる材料として、金属フッ化物、例えば限定するものではないが、MgF2、LaF3、GdF3、およびAlF3、およびその混合物が挙げられる。マッチング構造内のマッチング層の夫々の厚さは、5nmから120nmの範囲内でもよく、またこのマッチング層は当技術において既知の方法で堆積させることができる。一実施の形態において、マッチング構造内のマッチング層の夫々の厚さは、5nmから50nmの範囲内でもよい。著しい吸収性を有する酸化物がマッチング層構造内で使用されるとき、これらの材料の厚さは前述の範囲の下端で、例えば、5〜25nmである。この堆積方法の例としては、限定するものではないが、化学蒸着、プラズマイオンアシスト蒸着、抵抗加熱を用いた真空蒸着、イオンスパッタリング、および当技術において既知の他の堆積方法が挙げられる。マッチング層およびブロッキング層は、全縁端部すなわち全端部の周りに適用してもよいし、あるいは縁端部すなわち端部の周りに分割して適用してもよい。層が縁端部(または他の表面)の周りに分割して適用されるときには、層が適用されないエリアを、素子を保持しかつコーティング層が適用されないエリアを遮る、固定具を用いて覆ってもよい。
【0016】
ブロッキング層は、Nb25、TiO2、Ta25、およびNiCr、並びにNi、Cr、Al、およびTiなどの金属、さらに例えばNiCrなどのCrとこれらとの混合物、から成る群から選択された少なくとも1つの材料である。ブロッキング層材料の厚さは20nmから400nmの範囲内であり、またブロッキング層は当技術において既知の方法で堆積させることができる。ブロッキング材料は、300nm未満で高吸収であるように選択され、また高吸収のものほどブロッキング層をより薄くすることができる。この堆積方法の例としては、限定するものではないが、化学蒸着、プラズマイオンアシスト蒸着、抵抗加熱を用いた真空蒸着、イオンスパッタリング、および当技術において既知の他の堆積方法が挙げられる。
【0017】
基板材料は、300nm未満の光に対して透過性のある任意の材料とすることができ、この基板の例としては、限定するものではないが、シリカ、石英ガラス、HPFS(登録商標)(コーニング社の高純度石英ガラス)、フッ化カルシウム、およびフッ化マグネシウムが挙げられる。
【0018】
動作的には、マッチング層とブロッキング層との組合せは以下のように機能する。ブロッキング層、例えばNb25層は、300nm未満の波長をブロックすると同時に、光学素子をホルダに接合するために使用される任意の接着剤を硬化させることができるよう、365nm(水銀i線、これでUV硬化性接着剤の硬化が典型的に行われる)の適度な透過(50%超)を維持する。レーザの動作中、ブロッキング層は、300nm未満のレーザ光が接着剤に衝突すること、そして例えば接着剤材料の接合を破壊させることにより接着剤を劣化させることをさらに防ぐ。マッチング層は、ブロッキング層から基板へと反射して戻る、そして最終的には光学系からレーザ光の動作範囲へと反射される、300nm未満のレーザ光の量を大幅に減少させる。ただしマッチング層は、硬化波長の透過を適切に維持するように作られる。例えば、単一のマッチング層として使用されるニオブ層は、およそ40度の入射角まで約70%の光を透過させる。
【0019】
一般に、レーザ光は図1に両矢印58で示した方向に移動する。しかしながらレーザ迷光が、表面から、特に基板または光学素子の表面にコーティングが適用されているエリアから、またはホルダによって基板または光学素子が適切な位置に保持されている場合、その保持されているエリアから拡散されて、系内に生じる可能性がある。迷光はさらに、光学素子のバルク材料から生じることがあるし、素子の表面から生じることもあり、あるいは透過素子を通過している光から生まれる鏡面反射(「ゴースト」とも呼ばれる)によって生じることもある。レーザ迷光が基板とブロック層(マッチング材料は存在していない)とのブロック界面に到達すると、レーザ迷光は反射されて基板へと戻る可能性がある。迷光が光学素子から出て、例えばフォトマスクに衝突すると、画成される回路または素子の定義付けが迷光によって低下する可能性がある。この迷光の入射角は、その光学系の具体的な詳細に完全に依存する。結果的に、この詳細は光学系毎に異なり得るため、迷光により生じる反射率の問題を回避する単一の手法を有していることが望ましい。図1の矢印59は、迷光がどのように基板の内側から反射されるかを示したものである。
【0020】
図2は、基板の外側表面に内側からぶつかる266nmのレーザ光に関し、入射角に対する平均偏光の反射率をモデル化して示したものである。ブロッキング層およびマッチング層は上述のように堆積された。図2に示した曲線は以下のようなものである。
【0021】
曲線10:コーティングなし[基板のみ]
曲線12:300nm厚のNb25層(20)のみを備えた基板
[基板/300nmNb25
曲線14:25nm厚のHfO2マッチング層(22)と300nm厚のNb25ブロッキング層(20)とを備えた基板
[基板/25nmHfO2/300nmNb25
曲線16:交互のAl23層(24)およびHfO2層(22)(基板に適用される最初の層はAl23層である)から構成される4層のマッチング構造と、300nm厚のNb25ブロッキング層(20)とを備えた基板。この例において使用される具体的な厚さは、Al23が25nm、HfO2が52nm、Al23が64nm、およびHfO2が48nmである。
【0022】
[基板/25nmAl23/52nmHfO2/64nmAl23/28nmHfO2/300nmNb25
基板52は全ての事例において石英ガラスであった。Nb25層は266nmを吸収し、モデル化された透過率<0.1%である。
【0023】
反射率20%を基準点として用いると、図2のデータは、コーティングされていない基板の曲線10では入射角〜40°未満で、基板の外側表面に内側からぶつかる光のおよそ20%未満が反射されることを示している。角度が40°を超えると、反射率の量は、およそ100%の光が反射されるおよそ42°になるまで急増する。単一のNb25層でコーティングされた曲線12の基板では、角度が60°に至るまで、基板の外側表面に内側からぶつかる光の20%未満が反射される。角度が60°を超えると反射率の割合が増加し、90°で100%の反射率に到達する。基板上をHfO2マッチング層でコーティングし、さらにHfO2層の上をNb25ブロッキング層でコーティングした曲線14の基板では、角度がおよそ75°に至るまでは基板の外側表面に内側からぶつかる光の20%未満を反射する。交互のAl23(24)およびHfO2(22)マッチング層を最初に適用して4層のマッチング構造を形成し(基板に適用される最初の層はAl23層である)、続いてこの4層のAl23/HfO2/Al23/HfO2構造の上にNb25ブロッキング層を設けた基板を示している曲線16では、角度が85°に至るまでは基板の外側表面に内側からぶつかる光の20%未満を反射する。すなわち図2のデータは、基板とブロッキング層との間に1つまたは複数のマッチング層を挿入することにより、迷光の内部反射率を著しく減少させることが可能であることを明確に示している。
【0024】
図3は、基板の外側表面に内側からぶつかる266nmの光に関し、入射角に対する平均偏光の反射率をモデル化したものである。図示のプロットは吸収コーティングに対するものである。
【0025】
曲線30:300nm厚の金属アルミニウム(Al、(28))コーティングの下に10nm厚のNiCrブロッキング層(26)を備えた基板
[基板/NiCr/Al]
曲線32:300nm厚のAlコーティング(28)の下に10nm厚のNiCrブロッキング層(26)を備え、基板とAlブロッキング層との間に13nm厚のNb25(20)マッチング層を備えた基板
[基板/Nb25/NiCr/アルミニウム]
曲線34:300nm厚のAlのAlコーティング(28)の下に10nm厚のNiCrブロッキング層(26)を備え、Nb25層(22)とAl23層(24)とから構成される2層のマッチング構造を基板とブロッキング層との間に備えた基板。Al23層およびNb25層の厚さは夫々66nmおよび11nmであった。
【0026】
[基板/66nmAl23/11nmNb25/10nmNiCr/300nmAl]
基板は全ての事例において石英ガラスであった。
【0027】
反射率20%を基準点として用いると、図3のデータは、曲線30が0°から90°の間の全ての角度においてこの値を超えることを示し、これはかなり量の光が基板表面とぶつかっていることを示している。基板とアルミニウム層との間にブロッキング層を組み込むと、曲線32で示されているように、角度0°から45°の間でおよそ5%まで反射率が減少する。曲線32はその後上昇して約70°で20%の反射率となり、さらに上昇を続けて90°で100%の反射率となる。曲線30および32に対し、Nb25およびAl23のマッチング層が基板とブロッキング層との間に組み込まれている曲線34では、0°からおよそ77°の間でおよそ3%未満の反射率を呈し、およそ85°の角度で20%の反射率に上昇し、さらにその後90°の角度で100%の反射率まで上昇した。
【0028】
図4はプリズム60を示したものであり、その端部61には、基板52とアルミニウム(Al)28の外層との間にマッチング層とブロッキング層とを挿入して備えている。端部の側面図は、基板52、Nb25(22)およびAl23(24)のマッチング層、NiCr(26)のブロッキング層、およびAl(28)の外層の位置付けを示している。このコーティングの反射率は、図3に曲線34で示されている。
【0029】
例えば限定するものではないが、Nb25などの材料は、ブロッキング層としても、あるいはマッチング層としても使用し得るが、層の厚さは用途に応じて変化し得ることに留意されたい。例えば、図2における曲線16のNb25ブロッキング層の厚さは300nmであるが、これに対しNb25をマッチング層として使用した図3における曲線34では、Nb25の厚さは11nmである。
【0030】
本発明について、限られた数の実施形態を参照してこれまで説明してきたが、本書において開示した本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることは、本開示から利益を得る当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0031】
50 光学素子
52 基板
54 ブロッキング層
56 マッチング層
57 薄膜
60 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の入口用の面および出口用の面と、さらに該面により画成される縁端部とを有している、成形光学素子であって、該素子が、基板と、前記縁端部の少なくとも一部の上に堆積された薄膜とからなり、該薄膜が、前記基板の上に堆積された少なくとも1つの屈折率マッチング材料の少なくとも1つの層と、該少なくとも1つのマッチング層の上に堆積されたブロッキング層材料とから構成されたものであり、
前記薄膜が、1〜7層の前記少なくとも1つの屈折率マッチング層と1層のブロッキング層とから成り、前記屈折率マッチング層の夫々の厚さが5nmから50nmの範囲内であり、かつ前記ブロッキング層の厚さが20nmから400nmの範囲内であり、さらに、
前記屈折率マッチング材料の層が、Nb25、Al23、HfO2、SiO2、Y23、MgF2、LaF3、GdF3、AlF3、Ta25、およびTiO2、およびその混合物、から成る群から選択された、交互の屈折率マッチング材料で構成されることを特徴とする成形光学素子。
【請求項2】
前記薄膜が、1〜4層の前記少なくとも1つの屈折率マッチング材料の層と1層のブロッキング層とから成り、前記屈折率マッチング層の夫々の厚さが5nmから50nmの範囲内であり、かつ前記ブロッキング層の厚さが20nmから400nmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の成形光学素子。
【請求項3】
前記ブロッキング材料が、NiCrと、Nb25と、TiO2と、TaO2と、さらにNi、Cr、Al、およびTiから成る群から選択された金属と、そしてその混合物とから成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の成形光学素子。
【請求項4】
前記ブロッキング材料が、NiCrと、Nb25と、TiO2と、TaO2と、さらにNi、Cr、Al、およびTiから成る群から選択された金属と、そしてその混合物とから成る群から選択されることを特徴とする請求項2記載の成形光学素子。
【請求項5】
前記基板が、シリカ、石英ガラス、高純度石英ガラス、フッ素ドープ石英ガラス、フッ化カルシウム、およびフッ化マグネシウムから成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の成形光学素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−512465(P2013−512465A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541108(P2012−541108)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/056920
【国際公開番号】WO2011/066143
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】