説明

反射シート

【課題】液晶用バックライトの輝度を向上させて、液晶画面をより鮮明かつ見やすくすることができる反射シートを提供すること。
【解決手段】本発明の反射シートは、少なくともポリプロピレン樹脂(D)を含有する表層部と、ポリプロピレン樹脂(A)、該ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶性である少なくとも1種の樹脂(B)、及び相溶化剤としての熱可塑性エラストマー(C)、を含有し、内部に孔を有する内層部と、を備え、表層部及び内層部の少なくとも2層から構成されるとともに、内層部100重量部に対して熱可塑性エラストマー(C)0.3重量%〜20重量%を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に孔を含む樹脂組成物の反射シートであって、特に液晶表示装置のバッ
クライトなどに用いられる反射材に適した反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
反射シートは、液晶表示装置においてLEDや冷陰極管などの点状あるいは線状の光源の光を、面状に反射させることによって均一な面状の光源を得るための反射板として使用されており、特に液晶テレビなどの大型液晶表示装置の直下型バックライトの反射板として用いられる。
【0003】
このような液晶画面用の面光源に用いられる反射シートには、薄膜であると同時に高い光反射性能が要求される。従来、反射シートとしては、内部に微細な空洞を含むシートやシートの表面に銀などの金属反射層を設けたものなどが使用されている。特に内部に微細な気泡を含有させたフィルムは、輝度の向上効果や、画面輝度の均一化に一定の効果があることから広く使用されている。
【0004】
大型液晶テレビなどの大型液晶表示装置においては、表示画面を明るくするために線状光源である冷陰極管を複数本平行に配置して使用する。この場合、冷陰極管に由来する縞状のランプイメージが発生しやすいために、反射シートにおいても光を拡散反射する反射シートを用いてランプイメージの低減を図っている。
【0005】
光を拡散反射する反射シートとしては、上記の内部に微細な空洞を含むシートが一般的であり、例えば、ポリエステル樹脂やポリプロピレン樹脂に無機粉末を添加したシートを延伸して、無機粉末を起点とする微細な空洞を形成させた反射シート(例えば、特許文献1参照)や、ポリエステル樹脂からなるシートに窒素ガスや炭酸ガスなどを含浸させて発泡させた反射シート(例えば、特許文献2参照)などがある。
【0006】
しかし、面光源反射部材である反射シートとして上記した従来の反射シートを用いた場合には、光反射性に劣るため、光源の光の一部が反対面に透過する。その結果、液晶画面の輝度が不足するという問題点があり、消費電力の低減に寄与しないという問題が生じるため、反射シートの更なる高反射性が求められている。
【0007】
ここで、フィルム内部に気泡を含有させたフィルムでは、フィルムへ入射した光線は、フィルム内部の樹脂層(固体相)と気泡層(気相)の界面にて反射される。そのため、光反射性能をより向上させ、高い光反射性能を維持しつつ薄膜化するためには、開孔核剤をより微分散化し、フィルム厚み方向の気泡の積層密度、つまりフィルム厚み方向の気固界面数密度を高める必要があるが、上記開孔核剤の微分散化は近年頭打ちになりつつある。仮に微分散化を達成し、気泡の生成に成功したとしても、延伸工程において気泡同士が連結してしまい、気固界面数の効率的な増大に寄与しないことが課題となっている。
【0008】
また、開孔核剤として硫酸バリウムや炭酸カルシウムなどの無機粒子が使用されることもあるが、反射シートの低比重化を達成できない。粒子径を小さくするほど凝集が発生しやすくなり、気固界面数の効率的な増大に寄与しない。凝集を抑えるために粒子表面を各種処理剤で処理すると、表面処理剤は完全に無色透明ではないため、表面処理剤に起因する光吸収が生じてしまい、結果として反射シートの光反射性能が低下してしまうことが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平6−89160号公報
【特許文献2】特許第2925745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、液晶用バックライトの輝度を向上させて、液晶画面をより鮮明かつ見やすくすることができる反射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の反射シートは、少なくともポリプロピレン樹脂(D)を含有する表層部と、ポリプロピレン樹脂(A)、該ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶性である少なくとも1種の樹脂(B)、及び相溶化剤としての熱可塑性エラストマー(C)、を含有し、内部に孔を有する内層部と、を備え、前記表層部及び前記内層部の少なくとも2層を備えるとともに、前記内層部100重量部に対して前記熱可塑性エラストマー(C)0.3重量%〜20重量%を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の反射シートにおいては、前記内層部中の前記ポリプロピレン樹脂(A)の割合が30重量%〜80重量%、前記ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である前記樹脂(B)の割合が20重量%〜70重量%であることが好ましい。
【0013】
本発明の反射シートにおいては、前記内層部の熱可塑性エラストマー(C)は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、及びスチレン−イソプレン−スチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種のブロック構造を分子鎖中に含む共重合体、または該共重合体の変性体を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の反射シートにおいては、シート全体の厚みが70μm〜1000μmであることが好ましい。
【0015】
本発明の反射シートにおいては、シート全体の密度が0.1g/cm〜0.75g/cmであることが好ましい。
【0016】
本発明の反射シートにおいては、前記ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である前記樹脂(B)として、ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の反射シートにおいては、波長が550nmの光を入射したときの平均全反射率が90%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の反射シートにおいては、前記表層部に0.01g/m〜5g/mの紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0019】
本発明の反射シートにおいては、前記表層部の全反射率が50%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の反射シートにおいては、前記内層部及び前記表層部が共押出し製膜で作製されたものであることが好ましい。
【0021】
本発明の反射シートにおいては、反射シートの鉛直方向に対して60度の入射角で光を入射したときの0度方向への反射光強度が入射方向による異方性を有し、0度方向への反射光強度が最も高い入射方向A1での反射光強度L1と、該入射方向と直交する入射方向A2での反射光強度L2の比、L1/L2が1.2以上であることが好ましい。
【0022】
本発明のバックライトユニットは、上記反射シートを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液晶用バックライトの輝度を向上させて、液晶画面をより鮮明かつ見やすくすることができる反射シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】輝度評価用のバックライトユニットの構成図である。
【図2】実施例1の反射光強度分布(TD方向、MD方向入射)を示す図である。
【図3】実施例1の内層部中央部のTD方向断面のSEM写真である。
【図4】比較例1の内層部中央部のTD方向断面のSEM写真である。
【図5】比較例2の内層部中央部のTD方向断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、厚みが200μm以下のものをフィルムといい、厚みが200μmを超えるものをシートというように用語を区別して用いるケースがあるが、本明細書においては、上記のフィルム及びシートの両者を共にシートという。また、本明細書中、バックライトの記載において画面側を上方、画面裏側を下方と記載する。
【0026】
(反射シート内層部を構成する組成物)
本実施の形態に係る反射シートは、少なくとも表層部と内層部の少なくとも2層から構成され、内層部がポリプロピレン樹脂(A)と、該ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶性である少なくとも1種の樹脂(B)を含み、かつ内層部において熱可塑性エラストマー(C)を含む構成となる。
【0027】
ポリプロピレン樹脂(A)とは、プロピレンの単独重合体やプロピレンと共重合が可能なエチレンなどのモノマーとの共重合体からなるポリプロピレン樹脂という。ポリプロピレン樹脂(A)は、JIS K7210の方法で温度230℃、荷重21.2Nで、測定されるメルトフローレートが0.1g/分〜10g/分であるポリプロピレン樹脂であることが好ましい。メルトフローレートは、ポリプロピレン樹脂を溶融成形するときの押出機の負荷及び樹脂組成物の熱による変色の観点から、0.1g/分以上であることが好ましく、樹脂の粘度及び成形性の観点から、10g/分以下であることが好ましい。
【0028】
ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ともいう)としては、ポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度における弾性率が、ポリプロピレン樹脂より高い樹脂がより好ましく、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などのポリシクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のなかから少なくとも1種類の樹脂をポリプロピレン樹脂と溶融混合して用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂を用いることが最も好ましい。
【0029】
本実施の形態に用いられる樹脂(B)の好ましい例であるポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート、直鎖状ポリカーボネート、分岐鎖状ポリカーボネートの中から単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリカーボネート樹脂は、JIS K7210の方法で温度300℃、荷重11.8Nで測定されたメルトフローレートが0.1g/10分〜50g/10分であるポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリプロピレン樹脂との混合を均一にするという観点から、ポリカーボネート樹脂のメルトフローレートは0.1g/10分以上が好ましく、延伸時に孔を形成しやすいという観点から、メルトフローレートは50g/10分以下が好ましい。
【0030】
本実施の形態に係る反射シートは、内層部に熱可塑性エラストマー(C)を含有する。熱可塑性エラストマー(C)はポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)の相溶化剤の役割を果たす。ここで、本発明における相溶化剤とはポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)の界面エネルギーを低下させ、マトリックス樹脂であるポリプロピレン樹脂(A)中において樹脂(B)を良好に微分散させる効果を発現するものであればよい。本実施の形態においては、相溶化剤としての熱可塑性エラストマー(C)を添加することにより、ポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)の界面エネルギーが低下する。その結果、樹脂(B)の凝集による粗大化が阻害されるため、樹脂(B)がポリプロピレン樹脂(A)中に良好に微分散され、反射シートの反射性能を向上させることができる。
【0031】
本実施の形態において、相溶化剤である熱可塑性エラストマー(C)としては、ハードセグメントとソフトセグメントとを含むブロック共重合体であることが好ましく、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、及びスチレン−イソプレン−スチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種のブロック構造を分子鎖中に含む共重合体もしくはそれらの変性体が挙げられる。ここで言う変性体とは、ブタジエンの不飽和結合を水素添加したり、更にカルボン酸基やアミノ基を含有する化合物と反応させたりするなどの処理をしたものである。これらのブロック共重合体のなかから少なくとも1種類の熱可塑性エラストマーを溶融混合して用いることが好ましい。
【0032】
中でもポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)の界面エネルギーを低下させ、マトリックス樹脂であるポリプロピレン樹脂(A)中において樹脂(B)を良好に微分散させるという点及び耐熱性の点からスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン又は、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体又はこれらの変性体が好ましく、特にスチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体の変性体を用いることが最も好ましい。スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の変性体の一例として、旭化成ケミカルズ社製のM1913が、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体の変性体の一例としては旭化成ケミカルズ社製のP1500が挙げられる。
【0033】
本実施の形態では、樹脂組成物全体の30重量%以上80重量%以下が、ポリプロピレン樹脂(A)であることが好ましい。さらに、樹脂延伸時の張力及び延伸性の観点から、樹脂組成物全体に占めるポリプロピレン樹脂(A)の比率は40重量%以上がより好ましい。一方、樹脂組成物を押し出したシートを延伸してシートの内部に孔を形成させて90%以上の高い平均全反射率の反射シートを得るためには、樹脂組成物全体に占めるポリプロピレン樹脂(A)の比率は80重量%以下が好ましく、より好ましくは70重量%以下である。ここでいう平均全反射率とは、波長550nmの光についてシートのMD方向とTD方向の各々から入射した時の全反射率を測定し、両方向の平均値をいう。
【0034】
樹脂(B)は、延伸張力を小さくするという観点から、樹脂組成物全体の70重量%以下であることが好ましい。シートの孔数及び孔体積を多くして90%以上の高い平均全反射率を得るという観点から、樹脂(B)は樹脂組成物全体の20重量%以上が好ましく、特に好ましくは30重量%以上60重量%以下である。
【0035】
熱可塑性エラストマー(C)は、樹脂(B)をポリプロピレン樹脂(A)に良好に微分散させ、空孔密度を高くするという観点から樹脂組成物全体の0.3重量%以上、成形容易性の観点から20重量%以下である。好ましくは0.5重量%以上10重量%未満である。
【0036】
樹脂組成物を処方する場合、重量%と体積%の換算は、各樹脂の基本特性の密度から計算出来る。例えばポリプロピレン樹脂の密度は、0.89g/cm〜0.91g/cm、ポリカーボネート樹脂の密度は1.2g/cm、熱可塑性エラストマーの密度0.90g/cm〜0.96g/cmはであり、必要に応じてこれらの値から容易に換算することができる。
【0037】
本実施の形態に係る反射シートにおいては、樹脂組成物に、さらに紫外線吸収剤、その他必要に応じて無機粉末を添加しても良い。
【0038】
なお、樹脂組成物中に含まれる内容物の種類及び含有量は、以下の方法により容易に同定することが出来る。はじめに、反射シートの表層部を剥離して内層部だけにした試料を冷凍粉砕し、塩化メチレンによりソックスレー抽出を行い、ポリプロピレン樹脂以外の組成物を抽出する。抽出残渣を赤外吸収スペクトルなどで分析し、ポリプロピレン樹脂(A)以外の成分が残っていない事を確認して、残渣の重量からポリプロピレン樹脂(A)の重量を求める事ができる。抽出液については、メタノール、メチルエチルケトン等の溶媒で再沈殿し、各成分をH−NMR及び13C−NMRで、解析を行うことで樹脂(B)、熱可塑性エラストマー(C)を定量することが出来る。
【0039】
(反射シート表層部を構成する組成物)
本実施の形態に係る反射シートは、表層部及び内層部の少なくとも2層から構成され、表層部が少なくともポリプロピレン樹脂(D)を含む構成となる。
【0040】
ポリプロピレン樹脂(D)は、内層部のポリプロピレン樹脂(A)と同じであっても良く、また、異なった種類のポリプロピレン樹脂を用いても良い。ポリプロピレン樹脂(D)において好ましいものの種類としては、ポリプロピレン樹脂(A)と同じものが挙げられる。
【0041】
本実施の形態に係る反射シートは、表層部の全反射率が50%以下であることが好ましい。表層部の全反射率を50%以下とすることで、内層部に由来する反射光強度の入射方向異方性を打ち消すことなく、反射シートのランプイメージ低減性能を引き出すことが出来る。また、表層部の全反射率は、45%以下がより好ましい。この表層部の全反射率は、共押出しシートのような一体型のシートであっても、表層部を剥離させて測定することで容易に測定できる。
【0042】
本実施の形態に係る反射シートは、表層部に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛といった無機粉末がブリードアウトの懸念が低く好ましい。また、有機系の紫外線吸収剤も表層部の透明性を担保する点から好ましい。有機系の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などの紫外線吸収剤が使用できる。この中でもベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が、耐紫外線性、樹脂との相溶性から好適に使用できる。有機系の紫外線吸収剤の一例として、チバスペシャルティケミカルズ社製T234、T1577が挙げられる。紫外線吸収剤の表層部中の濃度としては、ブリードアウト性、透明性とのバランスで決められるが、0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。特に好ましくは0.15重量%以上、8重量%以下である。
【0043】
また、紫外線吸収剤として、酸化チタン、酸化亜鉛といった無機粉末を用いる場合、無機粉末には必要に応じて表面改質がされていてもよい。特に酸化亜鉛、酸化チタンにおいては、一般的にアルミナ、シリカなどであらかじめ表面改質がされているので、これらを用いてもよく、別途ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛などの表面改質剤を添加しても良い。紫外線吸収剤として用いる無機粉末の粒径としては、平均粒径で、1nm以上、1000nm以下が好ましい。1nm以上の平均粒径があれば、無機粒子同士の凝集による粗大化が起こりにくく、1000nm以下であれば、十分な表層部透明性を担保することができる。より好ましくは5nm以上、500nm以下であり、特に好ましくは5nm以上、400nm以下である。
【0044】
本実施の形態に用いられる紫外線吸収剤の含有量は、表層部に0.01g/m以上、5g/m以下が含まれることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.01g/m以上であれば、良好な紫外線吸収性能が発現し、5g/m以下であれば、ブリードアウトの懸念も少なく、十分な表層部透明性を担保することができる。より好ましい範囲は0.05g/m以上、4g/m以下、特に好ましいのは0.1g/m以上、4g/m以下である。
【0045】
反射シート表層部には、必要に応じて上記紫外線吸収作用を有する無機粉末以外にも、無機粉末を含有させることができる。無機粉末としては、光散乱性が低く、表層部の反射率を50%以下と低く保てるものが好ましく、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの無機粉末は、1種類で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。この際、無機粉末を添加する場合には、透明性を担保する観点から、表層部に0.01g/m以上、5g/m以下で添加することが好ましい。
【0046】
(反射シートの構造)
本実施の形態に係る反射シートは、表層部及び内層部の少なくとも2層から構成され、例えば、表層部/内層部/表層部の3層構造でもよく、表層部表面にさらに耐光層などの層を有していても良い。また、表層部及び内層部の2層から構成される場合、反射シートの光源側に用いられる層を表層部、光源と反対側に用いられる層を内層部とする。さらに、3層以上から構成される場合、3層以上の中に、表層部、内層部を有していれば良く、例えば、耐光層を最表層に付与した場合、最表層部(耐光層)/表層部/内層部という構成であっても良い。
【0047】
本実施の形態に係る反射シートの内層部は、内部に孔を有する構造であり、この孔構造により反射性能が発現する。内層部の厚みとしては、60μm以上、900μm以下であることが好ましい。内層部の厚みが60μm以上あれば、良好な反射性能を発現させることが可能となり、900μm以下であれば、良好な軽量性を担保することができる。また、より好ましくは70μm以上、700μm以下であり、特に好ましくは80μm以上、600μm以下である。
【0048】
本実施の形態に係る反射シートにおいて、表層部の厚みとしては、2μm以上、90μm以下であることが好ましい。表層部の厚みが2μm以上であれば、良好な成形容易性が得られ、90μm以下であれば、良好な軽量性を担保することができる。また、より好ましくは2μm以上、70μm以下であり、特に好ましくは3μm以上、50μm以下である。
【0049】
本実施の形態に係る反射シートにおける内層部及び表層部は、上記の厚みであることが好ましく、したがって、反射シート全体の厚みとしては、70μm以上、1000μm以下であることが好ましい。反射シート全体の厚みが70μm以上あれば、良好な反射性能を発現させることが可能となり、1000μm以下であれば、良好な軽量性を担保することができる。また、より好ましくは、80μm以上、800μmであり、特に好ましくは90μm以上、700μm以下である。
【0050】
本実施の形態に係る反射シート全体の坪量としては、30g/m以上、500g/m以下であることが好ましい。反射シート全体の坪量が30g/m以上あれば、良好な反射性能を発現させることが可能となり、500g/m以下であれば、良好な軽量性を担保することができる。また、より好ましくは40g/m以上、400g/m以下であり、特に好ましくは50g/m以上、300g/m以下である。
【0051】
本実施の形態に係る反射シートは、表層部、内層部を含めた全体の密度が0.1g/cm以上、0.75g/cm以下であることが好ましい。全体の密度が0.1g/cm以上であれば反射シートとして十分な強度を保持することができる。また0.75g/cm以下であれば、微小な孔を多数有する構造を形成し、高い反射率を得るとともに、良好な軽量性を担保することができる。より好ましくは0.2g/cm以上、0.5g/cm以下であり、特に好ましくは0.2g/cm以上、0.45g/cm以下である。
【0052】
本実施の形態に係る反射シートは、表層部及び内層部の2層以上を備えて構成される。2層以上の反射シートの作製方法としては、例えば、表層部、内層部を別途押出し成膜し、ラミネートさせる作製方法、内層部作製後、表層部を塗工により形成する作製方法、表層部、内層部を共押出しにより一体的に成膜し、その後延伸開孔させる作製方法が挙げられるが、特に好ましくは、表層部、内層部を共押出しにより一体的に成膜し、その後延伸開孔させる作製方法である。
【0053】
(反射シートの性能)
本実施の形態において、反射シートは、波長が550nmの光を入射したときの平均全反射率が90%以上であることが好ましい。平均全反射率が90%以上であれば、液晶用バックライトに搭載したときに、十分な輝度が得られるからである。より好ましくは95%以上である。
【0054】
本実施の形態において、反射シートは、正反射率が5%以上であることが好ましい。表面の正反射率を5%以上とすることで冷陰極管直上の明るさをより効果的に低減できる。特に好ましくは正反射率5.5%以上である。正反射率の測定は、一般に分光測色計(コニカミノルタ社製、CM−2600d等)で全光線反射率、及び拡散反射率を測定し、全光線反射率から拡散反射率を差し引いた値で求めることができる。
【0055】
本実施の形態において、反射シートは、表層部の全反射率が50%以下であることが好ましい。表層部の全反射率を50%以下とすることで、内層部の反射率異方性を打ち消すことなく、反射シートの性能とすることが出来る。より好ましくは45%以下である。この表層部の全反射率は、共押出しシートのような一体型のシートであっても、表層部を剥離させて測定することで容易に測定できる。
【0056】
本実施の形態において、反射シートは、該反射シートの鉛直方向に対して60度の入射角で光を入射したときの上記鉛直方向への反射光強度が入射方向による異方性を有する。異方性の評価は反射光強度の測定をすることにより行う。以下、その方法を説明する。
【0057】
反射光強度の測定は、一般に変角光度計といわれる測定装置を使用して行う。変角光度計(日本電色工業社製、GC5000L)は、試料を乗せるステージ及び点光源としてハロゲンランプ、受光部を有する構成であり、入射したい角度から試料に入射させ、受光部を1度刻みで動かすことにより、反射光の反射角度分布の測定が可能である。本発明においては、反射シート面に対して60度の方向から点光源を入射し、0度すなわち頂角方向の輝度を求めることで反射光強度の測定が可能である。得られた0度方向の反射光強度を、標準白色板を測定して得られた0度方向の反射光強度で割り返した値を0度方向の反射光相対強度とする。また、反射シートを5度刻みで回転させて測定を行い、最も0度方向の反射光相対強度が高くなる方向をA1方向、そのときの反射光相対強度を反射光強度L1とし、A1方向と直交する方向をA2方向、そのときの反射光相対強度を反射光強度L2とした。ここで、標準白色板とは変角光度計(日本電色工業社製、GC5000L)に付属する標準板(STANDARD PLATE)をいう。
【0058】
本実施の形態に係る反射シートの反射光強度の比は、反射光強度L1と反射光強度L2との比、L1/L2が1.2以上であることが好ましい。このような反射光強度異方性を有する反射シートを適切に用いることで、薄型直下型バックライトのランプイメージを低減可能になる。より好ましくは、L1/L2が1.3以上、特に好ましくはL1/L2が1.4以上である。
【0059】
本実施の形態に係る反射シートは、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトユニットに設置されることが好ましい。このように設置することで、冷陰極管直上の明るさを低減し、ランプイメージを低減させることが可能となる。
【0060】
本実施の形態に係る反射シートは、バックライトに組み込んだ際の平均輝度が、6100cd/m以上であることが好ましい。輝度の評価は、2次元色彩輝度計を用いて測定する。6100cd/m以上であれば、それを面光源として用いることにより、液晶画面を明るく照らし、画像をより鮮明にできる。好ましくは6120cd/m以上、特に好ましくは6140cd/m以上である。
【0061】
このような反射シートの作製方法の一例としては、ポリプロピレン樹脂(A)と、該ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶の樹脂(B)との混合物を、高シェアをかけながらダイから押出しし、MD方向に配向させたものを延伸する作製方法を挙げることができる。この場合、内層部の表層近傍において、樹脂(B)は反射シートの押出し方向(MD)に棒状に配向している。このような反射シートの作製方法の一例として、共押出しによる表層部/内層部/表層部の2種3層反射シートの作製方法を以下に具体的に説明する。
【0062】
ポリプロピレン樹脂(D)を含む表層部原料と、ポリプロピレン樹脂(A)、樹脂(B)及び熱可塑性エラストマー(C)を含む内層部原料と、を別の押出し機で溶融混合させ、押出機の先端に取り付けた積層ダイからシート状に押し出す。ここで、押し出される樹脂組成物の量を安定させるために押出機とダイの間にギヤポンプを使用してもよい。ダイから押し出される際に、ダイとのシェアにより内層部の樹脂(B)をMD方向に配向させることができる。樹脂(B)が配向することにより、TD方向から入射した光の0度方向への反射光強度が増大し、MD方向から入射した光の0度方向への反射光強度は低くなる、すなわち拡散性が低下しているが、機構は明確ではない。
【0063】
得られた積層シートを、冷却ローラーなどで冷却固化させた後、延伸機で延伸する。延伸工程では、内層部のポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)の界面を開裂させてシートの内部に孔を生成すると同時に、シートの厚みを所望の厚みにまで薄くすることができる。ここで延伸工程においては、通常の2軸延伸法を用いることが出来る。即ち、縦横逐次2軸延伸、横縦逐次2軸延伸、同時2軸延伸、さらにこれらの2軸延伸の後に、縦横いずれかあるいは両方の方向に再延伸することもできる。好ましくは、最も汎用的な縦横逐次2軸延伸である。延伸は速度差をつけた複数のローラーの間にシートを通過させてMD方向にシートを延伸する縦延伸工程と、クリップテンターなどを使用してシートのTD方向に延伸する横延伸工程とを単独又は組み合わせて行うことができる。あるいは、パンタグラフ延伸機などの同時2軸延伸機を使用してMD方向とTD方向を同時に延伸することもできる。2軸延伸の延伸倍率はMD方向、TD方向各々1.5倍以上であって、且つ面積延伸倍率が3倍以上50倍以下であることが好ましい。また、必要に応じて、延伸後に熱収縮処理を行っても良い。
【0064】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
<評価方法>
反射シートについて評価する物性の項目およびその評価方法についてまず説明する。
【0066】
(厚み)
反射シートの厚みは、厚み計(ピーコック社製)を使用して測定した。また、共押出しにより作製した反射シートはデジタル顕微鏡(キーエンス社製)による断面観察により、各層の厚みを測定した。
【0067】
(全反射率・平均反射率)
反射シートの全反射率は、分光光度計(島津製作所社製、UV−3150)と積分球試料台(島津製作所社製、MPC2200)を使用して入射角8度で測定した。ポリテトラフルオロエチレンの標準白板(ラボスフェア社製、スペクトラロン)の反射率を100%とした相対反射率を波長400nm〜700nmの範囲で測定し、波長550nmの光について、反射シートのMD方向とTD方向の各々から入射した時の測定値を全反射率とし、両者の平均値を平均全反射率とした。
【0068】
(坪量)
反射シートを50mm角に切り出し、その重量を測定することで求めた。
【0069】
(密度)
反射シートを50mm角に切り出し、その重量と中心部と各辺の中央部の計5点の厚みの平均値求め、密度を計算した。
【0070】
(走査型電子顕微鏡観察)
反射シートをクライオミクロトームでMD方向、TD方向断面をそれぞれ切り出し、試料台に積載させた。フラットミリング装置によるエッチングを行った後、観察面にOsを2nm程度コーティングし、権鏡用試料とした。反射シートの該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製、S−4700)を用いて拡大観察し、断面写真を採取した。
【0071】
(60度入射、0度反射光強度測定)
変角光度計(日本電色工業社製、GC5000L)を用いて測定した。点光源の入射角を60度にセットし、試料(反射シート)をステージに載せて、受光部を−85度〜+85度まで1度刻みで反射光強度を測定した。得られた結果の±1度の範囲の値を平均化し、0度方向の反射光強度とした。また、標準白色板として、変角光度計(日本電色工業社製、GC5000L)に付属する標準板(STANDARD PLATE)を使用し同様の測定を行った。また、0度方向への反射光強度が標準白色板の20%〜200%か否かは、反射シートを測定して得られた0度方向の反射光強度を、標準白色板を測定して得られた0度方向の反射光強度で割り返すことで算出した。なお、本測定において、標準白色板の0度方向への反射光強度は89.9cd/mであった。
【0072】
(正反射率測定)
分光測色計(コニカミノルタ社製、CM−2600d)で全光線反射率、及び拡散反射率を測定し、全光線反射率から拡散反射率を差し引いた値で求めた。
【0073】
(輝度、ランプイメージ評価)
バックライトユニットとして、液晶TV(ソニー社製、BRAVIA(登録商標)32インチ S−2500)(冷陰極管光源)のバックライトユニットの既存の反射シートを取り外して、実施例等に記載の反射シートを代わりに取り付けて用いた。なお、輝度評価については、該バックライトユニットの初期の寸法で行い、各冷陰極管間が23.4mm(管中心から管中心)、反射シートと冷陰極管との間の距離が6.5mm(管中心から)、拡散板下面と冷陰極管との間の距離が15.0mm(管中心から)であった。また、ランプイメージ評価については、該バックライトにおける各冷陰極管間の距離のみ変化させて42.5mmとしたときのランプイメージの有無を確認した。バックライトの構成を図1に示す。図1に示すように、本実施例においては、2本の冷陰極管1を所定の間隔をとって略平行に配置し、2本の冷陰極管1の下面側に反射シート2を配置し、上面側に拡散板3を介して光学シート4を配置してバックライトを構成した。光学シート4としては、拡散板3側から拡散シート、プリズムシート及び反射型偏光シートの順で積層したものを用いた。
【0074】
輝度及びランプイメージは、2次元色彩輝度計(コニカミノルタ社製、CA2000)を使用し、光線制御ユニットから75cm離して設置し、光線制御ユニットの中心部22mm×178mm[34ドット分(x)×275ドット分(y)]の範囲で測定した平均輝度値を輝度とした。ここで、x方向は冷陰極管の長手方向と並行方向、y方向は冷陰極管の長手方向と直交方向である。ランプイメージはx軸(22mm)方向の平均輝度値を求め、y軸方向について、各々の点の輝度値を各々の点から±17ドット分の輝度平均値で割り返した値の標準偏差値としてランプイメージを求めた。すなわち、この値が小さいほどランプイメージは低減されていることとなる。なお、バックライトユニットの拡散板、光学シートに関しては、液晶TV(ソニー社製、BRAVIA(登録商標)32インチ S−2500)に使用されている拡散板(以下、DPと略記)、拡散シート(以下、DSと略記)、アレイ状のプリズム配列構造を有する光学シート(以下、プリズムシートと略記)、反射型偏光シートを用いた。
【0075】
次に、本発明者らは、以下の実施例1〜実施例5において、熱可塑性エラストマー(C)を含有する種々の反射シートを作成し、バックライト実装評価を実施した。その結果、熱可塑性エラストマー(C)として、特定のブロック共重合体を用いた場合(実施例1)、実施例1とは異なるブロック共重合体を用いた場合(実施例2)、実施例1に対してブロック共重合体の含有量を変化させた場合(実施例3、実施例4)及び実施例4に対して縦横の延伸倍率を変化させた場合(実施例5)の何れについても良好な輝度を得ることができた。
【0076】
また、本発明者らは、比較例1〜比較例3として、実施例1に対して熱可塑性エラストマー含有しない場合(比較例1)、熱可塑性エラストマー(C)とは異なる高分子化合物を含有する場合(比較例2、比較例3)について、実施例1〜実施例5と同様にバックライト実装試験を実施した。その結果、比較例1〜比較例3の反射シートを用いた場合、実施例1〜実施例5に対して輝度が低下することが分かった。以下、本発明者らが調べた内容について詳細に説明する。
【0077】
(実施例1)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を35体積%(42重量%)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ社製、M1913)を3体積%(3重量%)混合した原料樹脂を用いた。この原料樹脂をシリンダー口径が25mmでシリンダーと口径の比が48の同方向回転2軸押出機を使って、シリンダー温度を230℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、温度を250℃に調整したギヤポンプを介して、マルチマニホールドダイに供給した。
【0078】
また、表層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)93重量%、紫外線吸収剤として、酸化亜鉛(堺化学社製、Finex50W、平均粒径20nm)を5重量%、及びベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、T234)を2重量%用いた。この表層部原料をシリンダー口径が25mmでシリンダーと口径の比が48の単軸押出機を使って、シリンダー温度を210℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、マルチマニホールドダイに供給した。ここで、マルチマニホールドダイには、表層部/内層部/表層部比が1/10/1となるように各原料を供給し、合流させ、リップ巾が400mmでクリアランスが1.9mmで押し出した。ここで、押出しライン速度は、1.0m/分となるように押出しを行った。押し出された溶融樹脂を80℃に設定した一対のピンチローラーで引き取り、MD方向に溶融樹脂を引っ張りながら樹脂を冷却固化させて厚みが1.7mmのシートを作製した。得られたシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3倍延伸した後、テンター横延伸を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で3倍延伸し、2種3層共押出し反射シートを得た。
【0079】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率、は、それぞれ19μm/329μm/19μm、205g/m、0.56g/cm、97.6%であった。また、表層部の平均全反射率は23%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.61であった。
【0080】
参考までに、TD(L1)方向から入射したときの反射光強度と、MD(L2)方向から入射した時の反射光強度を図2に示す。図2に示すように、A1方向入射光の反射光強度に対し、A2方向入射光の反射光強度は、大きく低下し、入射方向により、反射強度に大きな違いがあることがわかる。なお、図2において入射光は−60度と表示されている角度から入射しており、+60度付近の反射光強度が大きくなっているのは正反射に由来するものである。
【0081】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた断面観察より、押出しにより得られた、延伸する以前のシートの内層部厚み方向D1中央部において、ポリカーボネート樹脂がポリプロピレン樹脂中に良好に微分散していることを確認した。参考に内層部厚み方向D1中央部のMD方向に対して垂直方向の断面のSEM写真(拡大倍率1000倍)を図3に示す。図3に示すように、内層部厚み方向D1中央部のMD垂直断面では、ポリカーボネート樹脂がほぼ均一に分散し、A1方向に対してやや延在する多数の微細な分散相を形成していることが分かる。このポリカーカーボネート樹脂は、分散相の延在方向において、平均分散径約1.9μm程度であった。
【0082】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、拡散板/DS/プリズムシート/反射型偏光シートを配設(以下、全シート配設)して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は6134cd/mと高く、ランプイメージは0.00234と低かった。
【0083】
(実施例2)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を35体積%(42重量%)、スチレン−ブチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ社製、P1500)を3体積%(3重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向、TD方向にそれぞれ3倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0084】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ19μm/290μm/18μm、200g/m、0.61g/cm、96.7%であった。また、表層部の平均全反射率は22%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.42であった。
【0085】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は6110cd/mと高く、ランプイメージは0.00186と低かった。
【0086】
(実施例3)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を37体積%(44重量%)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ社製、M1913)を1体積%(1重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向、TD方向にそれぞれ3倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0087】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ27μm/338μm/24μm、220g/m、0.56g/cm、96.9%であった。また、表層部の平均全反射率は20%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.62であった。
【0088】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は6102cd/mと高く、ランプイメージは0.00237と低かった。
【0089】
(実施例4)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を33体積%(40重量%)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ社製、M1913)を5体積%(5重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向、TD方向にそれぞれ3倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0090】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ19μm/311μm/17μm、213g/m、0.61g/cm、96.4%であった。また、表層部の平均全反射率は22%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.37であった。
【0091】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は6155cd/mと高く、0.00233と低かった。
【0092】
(実施例5)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を33体積%(40重量%)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ社製、M1913)を5体積%(5重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向に3倍、TD方向に6倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0093】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ14μm/184μm/13μm、117g/m、0.55g/cm、97.5%であった。また、表層部の平均全反射率は21%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.25であった。
【0094】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は6113cd/mと高く、ランプイメージは0.00231と低かった。
【0095】
(比較例1)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を38体積%(45重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向、TD方向にそれぞれ3倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0096】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ22μm/339μm/21μm、205g/m、0.54g/cm、96.5%であった。また、表層部の平均全反射率は21%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.14であった。
【0097】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた断面観察より、押出しにより得られた、延伸する以前のシートの内層部厚み方向D1中央部において、ポリカーボネート樹脂がポリプロピレン樹脂中に分散していることを確認した。参考に内層部厚み方向D1中央部のMD方向に対して垂直方向の断面のSEM写真(拡大倍率1000倍)を図4に示す。図4に示すように、図3と比較し、ポリカーボネート樹脂が不均一な分散相を形成している。また、それぞれの分散相はA1方向に延在し、図3の分散相と比較して分散径が大きく、数が少ないことが分かる。この分散相の分散径は、分散相の延在方向において約4.3μm程度であった。
【0098】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は6070cd/mと低く、ランプイメージは0.00223と低かった。内層部に相溶化剤を用いていないため、ポリプロピレン樹脂とポリカーボネート樹脂間の界面張力が高く、ポリプロピレン樹脂中にポリカーボネート樹脂が微分散しなかった結果、輝度が低いものとなったと考えられる。
【0099】
(比較例2)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を35体積%(42重量%)、ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、HH102を3体積%(3重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向、TD方向にそれぞれ3倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0100】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ22μm/264μm/19μm、174g/m、0.57g/cm、95.6%であった。また、表層部の平均全反射率は23%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は1.51であった。
【0101】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた断面観察より、押出しにより得られた、延伸する以前のシートの内層部厚み方向D1中央部において、ポリカーボネート樹脂がポリプロピレン樹脂中に分散していることを確認した。参考に内層部厚み方向D1中央部のMD方向に対して垂直方向の断面のSEM写真(拡大倍率1000倍)を図5に示す。図5に示すように、本例においては、図4に示した例よりもさらにポリカーボネート樹脂の分散が悪く、A1方向に延在する分散径の大きな分散相が複数形成されていることが分かる。この分散相の分散径は、分散相の延在方向において約13.4μm程度であった。
【0102】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、輝度は5961cd/mと低く、ランプイメージは0.00227と低かった。適切な相溶化剤を用いていないためポリプロピレン樹脂中にポリカーボネート樹脂の微分散しなかった結果、輝度が低いものとなったと考えられる。
【0103】
(比較例3)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、EA7A)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E2000)を35体積%(42重量%)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(ポリプラスチックス社製、5013L−10)を3体積%(3重量%)混合した原料樹脂を用いて、実施例1と同様に押出しし、MD方向、TD方向にそれぞれ3倍延伸し、2種3層の共押出し反射シートを得た。
【0104】
得られた2種3層反射シートの厚み(表層部/内層部/表層部)、坪量、密度、全反射率は、それぞれ23μm/316μm/20μm、202g/m、0.56g/cm、96.5%であった。また、表層部の平均全反射率は22%であった。0度方向の反射光強度が最も高くなる入射方向は反射シートのTD方向であり、L1/L2は2.02であった。
【0105】
この反射シートを、A1方向と冷陰極管の長手方向とが直交するようにバックライトに設置し、DP−冷陰極管間の距離を15mm、各冷陰極管間の距離を42.5mmとした条件で、全シート配設して、輝度及びランプイメージを確認したところ、それぞれ6066cd/mと低く、ランプイメージは0.00152と低かった。適切な相溶化剤を用いていないためポリプロピレン樹脂中にポリカーボネート樹脂の微分散しなかった結果、輝度が低いものとなったと考えられる。
【0106】
以上の結果、実施例に記載の相溶化剤を内層部に含有させることで、従来に比べてポリカーボネート樹脂をポリプロピレン樹脂中に飛躍的に微分散させることができ、その結果、効率的に空孔密度を増大させることができる。得られた結果を併せて表1に示す。内層部に適切な相溶化剤を含有することでランプイメージ増大を抑制したまま高輝度化が可能であることがわかる。
【0107】
【表1】

【0108】
表1に示すように、熱可塑性エラストマー(C)を所定の割合含有する実施例1から実施例5は、いずれも高い平均輝度を示していることが分かる。また、実施例1及び実施例2に示すように、所定の構造を有するブロック共重合体であれば、異なる熱可塑性エラストマー(C)を添加しても効果が発現することが分かる。また、実施例1、実施例3及び実施例4に示すように、熱可塑性エラストマー(C)の含有量を変化させても同等の輝度が得られることが分かる。さらに、実施例4及び実施例5に示すように、延伸倍率の縦横比を変更しても同等の輝度が得られることが分かる。
【0109】
一方、比較例1に示すうように、熱可塑性エラストマー(C)を用いない場合、実施例1と比較して輝度が低下することが分かる。また、比較例2及び比較例3に示すように、熱可塑性エラストマー(C)と異なる高分子化合物を添加した場合、輝度が向上しないことが分かる。
【0110】
以上説明したように、本発明に係る反射シートによれば、所定の熱可塑性エラストマー(C)を添加することにより、光の吸収を伴うことなく反射シートの反射性能を向上させることができるので、液晶用バックライトの輝度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の反射シートは、優れた反射性能と軽量性を兼ね備えているという特徴を有しており、液晶用バックライトの輝度を向上させて、液晶画面をより鮮明かつ見やすくすることができ、液晶表示装置のバックライトユニットとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 冷陰極管
2 反射シート
3 拡散板
4 光学シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリプロピレン樹脂(D)を含有する表層部と、ポリプロピレン樹脂(A)、該ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶性である少なくとも1種の樹脂(B)、及び相溶化剤としての熱可塑性エラストマー(C)を含有し、内部に孔を有する内層部と、を備え、前記表層部及び内層部の少なくとも2層を備えるとともに、前記内層部100重量部に対して前記熱可塑性エラストマー(C)0.3重量%〜20重量%を含有することを特徴とする反射シート。
【請求項2】
前記内層部中の前記ポリプロピレン樹脂(A)の割合が30重量%〜80重量%、前記ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である前記樹脂(B)の割合が20重量%〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載の反射シート。
【請求項3】
前記内層部の熱可塑性エラストマー(C)は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、及びスチレン−イソプレン−スチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種のブロック構造を分子鎖中に含む共重合体、または該共重合体の変性体を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射シート。
【請求項4】
シート全体の厚みが70μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の反射シート。
【請求項5】
シート全体の密度が0.1g/cm〜0.75g/cmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の反射シート。
【請求項6】
前記ポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である前記樹脂(B)として、ポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の反射シート。
【請求項7】
波長が550nmの光を入射したときの平均全反射率が90%以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の反射シート。
【請求項8】
前記表層部に0.01g/m〜5g/mの紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の反射シート。
【請求項9】
前記表層部の全反射率が50%以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の反射シート。
【請求項10】
前記内層部及び前記表層部が共押出し製膜で作製されたものであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の反射シート。
【請求項11】
反射シートの鉛直方向に対して60度の入射角で光を入射したときの0度方向への反射光強度が入射方向による異方性を有し、0度方向への反射光強度が最も高い入射方向A1での反射光強度L1と、該入射方向と直交する入射方向A2での反射光強度L2の比、L1/L2が1.2以上であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の反射シート。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の反射シートを具備したことを特徴とするバックライトユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−69990(P2011−69990A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220922(P2009−220922)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】