説明

反射スクリーンおよび反射スクリーンの製造方法

【課題】プロジェクターを反射スクリーンの斜め方向に配置した場合であっても、斜め方向からの光を反射スクリーンの前方の観察側により多く反射させ、投影画像のコントラストを向上させることができる反射スクリーンを提供する。
【解決手段】スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の観察面側の法線に対して垂直方向にずれた位置から、前記観察面側に斜めに投射された投射光を、観察側に反射する反射スクリーンであって、前記スクリーン基板の前記観察面側に複数個の凹部が形成され、前記凹部の凹面の少なくとも前記投射光が投射される部位(範囲)に形成される反射部と、前記凹面の前記反射部の非形成領域に形成される低反射率部と、前記凹面の前記反射部と前記低反射率部との間に前記反射部と前記低反射率部とのいずれも形成されない基板露出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーンおよび反射スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、投影画像を反射させて観察可能にする反射スクリーンが知られている。このような反射スクリーンとして、スクリーン基板の前面側に同一形状の多数の凸状の単位形状部が2次元的に規則的に配置され、凸状の単位形状部の投影光入射方向に向かう一部の表面部分にのみに反射面が形成されている反射スクリーンが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の反射スクリーンは、単位形状部が反射スクリーンの垂直方向に一直線に隣接して設けられているため、例えば、プロジェクターをスクリーンの前方の斜め下方側に配置し、プロジェクターからスクリーンに向けて斜め上方に投影画像を照射した場合、投影画像のコントラストが低下するという課題がある。
上記のように、プロジェクターからスクリーンに向けて斜め方向に投影画像を照射した場合、プロジェクターからの投影光が、プロジェクターに近い単位形状部よって遮られ、プロジェクターに遠い単位形状部に十分な光が到達しない。このため、プロジェクターからの投影光が反射スクリーン前方の観察者側に十分に反射されず、投影画像のコントラストが低下してしまう。
【0005】
そこで、この発明は、プロジェクターを反射スクリーンの斜め方向に配置した場合であっても、斜め方向からの光を反射スクリーンの前方の観察側により多く反射させ、投影画像のコントラストを向上させることができる反射スクリーンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0007】
〔適用例1〕本適用例の反射スクリーンは、スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の観察面側の法線に対して垂直方向にずれた位置から、前記観察面に斜めに投射された投射光を、観察側に反射する反射スクリーンであって、前記スクリーン基板の前記観察面側に複数個の凹部が形成され、前記凹部の凹面の少なくとも前記投射光が投射される部位に形成される反射部と、前記凹面の前記反射部の非形成領域に形成される低反射率部と、前記凹面の前記反射部と前記低反射率部との間に前記反射部と前記低反射率部とのいずれも形成されない基板露出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上述の適用例によれば、低反射率部は反射部の非形成領域に形成される、すなわち投射光の投射方向とは異なる方向から入射される光を観察側に反射することを抑制することができる。すなわち、投射光の投射側とは反対方向の光、例えば室内照明などが反射スクリーンに入っても、室内照明光などが入り込む反射スクリーンの凹部には低反射率部が形成されているため、反射部により観察側へ反射される投射画像の反射光への不要な反射光の混在が抑制され、コントラストの高い鮮明な投射画像を見せることができる反射スクリーンを得ることができる。
【0009】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記凹部の一部個数もしくは全個数が、前記基板露出部を備えていないことを特徴とする。
【0010】
上述の適用例によれば、反射部の非形成領域の全てを低反射率部としても、上述の作用効果を発揮することができる。従って、低反射率部の形成において、製造方法の自由度を高めることができる。
【0011】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記スクリーン基板は、少なくとも前記反射部の非形成領域が光を吸収可能に形成されていることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、投射される画像投射光以外を観察側に反射することを抑制し、鮮明な画像投射光を観察側に反射することができる。
【0013】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記反射部がAl膜で形成されていることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、安価で様々な素材との密着性能が高く、反射性能の優れた反射膜を備える反射スクリーンを得ることができる。
【0015】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記低反射率部が酸化ケイ素膜で形成されていることを特徴とする。
【0016】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記低反射率部を形成する前記酸化ケイ素膜が50nm以上115nm以下であることを特徴とする。
【0017】
上述の適用例によれば、低反射率の透明且つ高硬度の皮膜を得ることができ、50nm〜115nmの範囲で酸化ケイ素膜を形成することで、スクリーン基板との密着性に優れた低反射率膜を備える反射スクリーンを得ることができる。また、反射部まで上述の低反射率膜を形成すれば、反射部の鏡面部分の保護膜として機能し、反射部表面の埃を含む汚れを除去する際の傷つき防止の効果を得ることができる。
【0018】
〔適用例7〕本適用例の反射スクリーンの製造方法は、スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の観察面側の法線に対して垂直方向にずれた位置から、前記観察面側に斜めに投射された投射光を、観察側に反射する反射スクリーンの製造方法であって、前記観察面側に複数の凹部が形成された前記スクリーン基板の前記凹部の凹面に反射膜を成膜し反射部を形成する反射部形成工程と、前記凹面の前記反射部の非形成領域に低反射率膜を成膜し低反射率部を形成する低反射率部形成工程と、を含み、前記反射部形成工程は、前記スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の前記観察面の法線に対して垂直方向にずれた位置に前記反射膜の蒸着源を載置し、前記低反射率部形成工程は、前記スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の前記観察面の法線に対して垂直方向の、前記反射膜の前記蒸着源の載置部とは前記スクリーン基板の中心に対して反対方向にずれた位置に前記低反射率膜の蒸着源を載置することを特徴とする。
【0019】
上述の適用例によれば、スクリーン基板の凹部における投射光の投射される範囲に選択的に反射膜素材を蒸着することができる。すなわち、投射光が投射されない範囲には、反射膜が形成されない部位が生じるが、実質的に投射光が到達しない範囲であり、観察側への投射画像への影響を及ぼさない。よって、最小必要限度の反射膜原料を用いることで、上述の高いコントラストの投射画像を実現する反射スクリーンを得ることができる。
【0020】
さらに、低反射率膜の蒸着においては、反射膜素材の蒸着源の載置位置とは反対側に低反射率膜の蒸着源を載置することで、反射部の非形成部に選択的に低反射率部を形成することができ、一般的に反射スクリーンの下斜め位置に設置されるプロジェクターに対して上方に設置されている室内照明からの投射光を観察側に反射することが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態にかかる反射スクリーンと光源との位置関係を示す模式図。
【図2】実施形態における反射スクリーンの正面図。
【図3】実施形態における反射スクリーンの(a)は断面図、(b)は部分拡大図。
【図4】実施形態における低反射率部の反射率と低反射率膜の膜厚の関係を示すグラフ。
【図5】実施形態における蒸着装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0023】
(実施形態)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、図面においても指示するが、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。鉛直面内における所定方向をX軸方向、鉛直面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向をZ軸方向とする。
【0024】
図1に示すように、反射スクリーン100は、反射スクリーン100の観察面100aの中心点Cを通る法線NLに対して垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置された光源Pから、観察面100aに向けて斜めに射出された投射光Lpを、反射スクリーン100の観察側(Z軸正方向側)に反射するものである。反射スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行になるように配置されている。
【0025】
図2および図3に示すように、反射スクリーン100のスクリーン基板10は、観察面100a側に半球状の凹部11が複数備えられている。凹部11は、スクリーン基板10の厚み方向(Z方向)に窪み、略同一径の球状面に形成されている。凹部11の直径としては、例えば20μm〜200μm程度に形成されている。また、凹部の形状は球状面を有するものであれば、半球状ではなく、半楕円球状、円錐状、扇型、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0026】
スクリーン基板10は、例えば、樹脂等の可撓性を有する材料によって形成されている。また、スクリーン基板10は、例えば、染色等によって全体が黒色の光吸収材によって着色され、可視光を吸収可能に形成されている。
【0027】
また、図2に示すように、スクリーン基板10の垂直方向(Y方向)に隣接する凹部11、11は、スクリーン基板10の水平方向(X方向)にずれた状態で配置され、複数の凹部11が格子状に配列されていることが好ましい。
【0028】
本実施例の反射スクリーンの断面図を示す図3(a)、および図3(a)のA部の部分拡大を模式的に示す図3(b)のように、凹部11の内壁面には観察面100aのY方向斜め方向に配置される光源Pからの投射光Lpが到達する部位に反射部12が形成されている。この反射部12は、例えば、アルミニウム(Al)等の反射性を有する材料によって、膜厚が10nm〜5μmとなるように成膜されている。
【0029】
反射部12は凹部11の内壁面の一部分に形成され、この反射部12は光源Pからの距離が大きくなるに従い、形成面積が小さくなっている。つまり、スクリーン基板10の上部側(光源Pから遠ざかった部分)では、スクリーン基板10の下方側(光源Pに近い部分)に比べて、反射部12の形成面積は小さい。すなわち、光源Pからの投射光Lpは、凹部11の縁部11aの光源P側に遮られ、投射光Lp到達する領域がスクリーンの上方(光源Pから遠い部分)で少なくなるためである。
【0030】
従って、反射部12は光源Pからの投射光Lpが、凹部11において到達する領域に形成されていることで、効率よく投射光Lpを反射することができる。
【0031】
凹部11の反射部12の非形成領域には低反射率部13が形成されている。本実施形態における低反射率部13は金属酸化物の薄膜を成膜して形成されている。金属酸化膜としては低屈折率の金属酸化物を成膜することが好ましく、特に酸化ケイ素を成膜することが好ましい。また、金属窒化物の適用も可能であり、例えば窒化ケイ素を低反射率部13として形成しても良い。
【0032】
酸化ケイ素膜を成膜する場合には、反射率の低い領域の膜厚に成膜することが好ましい。スクリーン基板10に塩化ビニルを用いた場合の酸化ケイ素の膜厚と反射率の関係を示す図4から、50nm〜130nmの膜厚に成膜することが好ましい。さらに65nm〜115nmの範囲で成膜することがなお好ましく、膜厚の狙い値を90nmにすることで後述する外部光の観察側への反射を抑制することができる。
【0033】
また、凹部11の内壁面には、反射部12の形成範囲外に、光吸収面14が形成されている。光吸収面14は、スクリーン基板10の基材を黒色にすること、または凹部11の内壁面にブラックカーボン粉末などの光吸収性材料を塗布するなどの方法で得られる。光吸収面14は図3(b)にも示すように、凹部11の内壁面における反射部12の非形成範囲(波型矢印範囲)である。
【0034】
さらに、光吸収面14内には、反射部12および低反射率部13のいずれも形成されていない、基板露出部14aを含んでいる。但し、基板露出部14aが無く反射部12の非形成範囲全面に低反射率部13が形成されても良い。この時、反射スクリーン100に形成されている複数の凹部11の全てに基板露出部14aを備える場合と、凹部11の全てに基板露出部14aを備えない場合があっても良い。さらに、一つの反射スクリーン100の中の複数の凹部11に、基板露出部14aを備える凹部と、基板露出部14aを備えない凹部とが混在していても良く、また、その配置も限定されない。
【0035】
次に、図3によって、映像を映し出す反射スクリーンの作用について説明する。反射スクリーン100の観察面100aの法線に対して垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターなどの光源Pから、観察面100aに向けて斜めに投影光Lpが投射される。
【0036】
このような、観察面100aに対して斜めに入射した投影光Lpは、反射防止層16に入射し、反射防止層16を透過して保護層15に入射する。このとき、反射防止層16は保護層15との間で屈折率が調整されているので、反射防止層16を透過した投影光Lpが保護層15の表面での反射が防止される。
【0037】
保護層15に入射した投影光Lpは、保護層15を透過して凹部11内に形成された反射部12に到達する。反射部12に到達した投影光Lpは、反射部12によって反射スクリーン100の観察側(Z方向)に反射光Lrが反射される。
【0038】
一方、反射スクリーン100の観察面100aには、投影光Lpのほかに反射スクリーン100の上方の外部光源Rから外光Loが入射する。観察面100aに入射した外光Loは、反射防止層16に入射して、反射防止層16を透過して保護層15に入射する。外光Loは反射防止層16が形成されているため、保護層15の表面で観察側に反射することが防止される。
【0039】
そして、保護層15の表面に到達した外光Loは、保護層15を透過して凹部11に入射し、凹部11の低反射率部13に到達する。そして、凹部11の低反射率部13に到達した外光Loは観察側への反射光を抑制し、光吸収面14に入射され、吸収される。このように、本実施形態の反射スクリーン100は、観察面100aに対して斜めからの光源Pから画像を含む投射光Lpが入射し、観察側に反射光Lrとして投射するとき、同時に外部光源Rからの入射する外光Loを、低反射率部13でその多くを反射せず光吸収面14へ入射させることができる。従って、反射光Lrを投射画像として観察側から観察した場合でも、コントラストの高い映像を映し出すことができる。
【0040】
次に、本実施形態の反射スクリーンの製造方法、特に反射部12および低反射率部13を構成する薄膜の成膜方法について説明する。本実施形態における反射部12、および低反射率部13の形成を蒸着法により成膜する方法を説明するが、その他の成膜方法としてスパッタリング、CVD等により成膜することも可能である。
【0041】
図5は本実施形態のすでに凹部11を複数形成したスクリーン基板10を収納した、蒸着装置を模式的に現した断面図である。蒸着装置200は内部を減圧状態にし、被蒸着物を収納するドーム20と、図示しない真空ポンプ、電源装置等を備える基台30とを備える。
【0042】
ドーム20の内部には反射部12に蒸着により成膜される蒸着源のAl、および低反射率部13に蒸着により成膜される蒸着源の酸化ケイ素を収納し、蒸着源を過熱溶融する第1るつぼ40aと第2るつぼ40bとを備える。また第1るつぼ40a、あるいは第2るつぼ40bが後述のように蒸着源を蒸散させるとき、不要部位への蒸散を防ぐ遮蔽板50を備える。但し、遮蔽板50を備えなくても被蒸着物への蒸着は可能である。
【0043】
被蒸着物のスクリーン基板10は、蒸着装置200の容量によって複数個が同時にラック60に固定され、ラック60は図示しない駆動装置によって蒸着中は回転し、蒸着膜を均一に形成する。スクリーン基板10は回転装置70aとスクリーン固定部70bを備えるラック治具70によりラック60に固定されている。このとき、スクリーン基板10が蒸着源を収納した第1るつぼ40a、あるいは第2るつぼ40bをスクリーン基板10の法線に対して垂直方向にずれた位置、すなわち図3(a)におけるY方向にずれた位置となるように、ラック60の位置、形状を設定する。
【0044】
蒸着時は、先ず反射部12を形成する部材、例えばアルミニウムを第1るつぼ40aに、低反射率部13を形成する部材の酸化ケイ素を第2るつぼ40bに収納する。次にドーム20内を減圧し、真空状態とする。次に、初めに蒸着する素材、本実施形態では反射部12を初めに形成するので、第1るつぼ40aを加熱し蒸着源のAlを溶融し、蒸散させスクリーン基板10に蒸着する。
【0045】
反射部12のAl蒸着の終了を確認し、次に第2るつぼ40bを図示しない移動装置により所定の位置、すなわち先の第1るつぼ40aが載置された位置に移動させる。このとき、第1るつぼ40aは退避している。
【0046】
次に、ラック60に固定されているラック治具70の回転装置70aを稼動し、スクリーン固定部70bを、スクリーン基板10を固定した状態で180度回転させる。これにより、蒸着装置200内部のスクリーン基板10は、反射部12のAl蒸着時とは上下を逆にして設置される。
【0047】
そして、同様に次に蒸着する第2るつぼ40bを加熱し蒸着源の酸化ケイ素を溶融し、蒸発させ先に蒸着した反射部12の反射膜上に保護膜として酸化ケイ素膜を蒸着する。このようにして、反射部12の非形成部に低反射率部13を形成することができる。
【0048】
上述の蒸着方法は、いわゆる斜方蒸着であり、斜め方向からの蒸着により、本実施形態の斜め方向からの投射光Lpを効率よく反射する反射部12の反射膜を、投射光Lpの投射範囲に効率よく形成することができる。
【0049】
さらに、同一の蒸着装置200内部において、スクリーン基板10を反転させるだけで、低反射率部13の形成も斜方蒸着により行うことができる。従って、光源Pとは反対方向からの外部光源Rの外光Loの観察側への反射を抑制する低反射率部13を合理的に形成することができ、生産性の向上とコストダウンを図ることが可能となる。
【0050】
なお、低反射率部13の形成における蒸着方法は、上述の方法装置に限定されるものではない。例えば、反射部12形成用の蒸着装置と低反射率部13形成用の蒸着装置を準備し、それぞれの装置にスクリーン基板10を入れ替えて形成することも可能である。
【0051】
また、低反射率部13の形成は斜方蒸着でなく、反射スクリーン100の観察面100aの法線方向に蒸着源を載置してスクリーン基板10の凹部11に蒸着することもできる。この場合には、低反射率部13は反射部12に重なって形成されることとなる。この場合、低反射率部13が酸化ケイ素膜であれば、反射部12を形成するAl蒸着膜を保護することもできる。
【0052】
次に、上述の蒸着により反射部12と低反射率部13が形成されたスクリーン基板10に、保護層15と、保護層15上に反射防止層16を形成して、反射スクリーン100が完成する。保護層15と反射防止層16は、原料樹脂成分を溶剤により溶解した原料液をスピンコート法、スプレー法などにより積層し、乾燥工程を経て形成することができる。
【0053】
上述の通り、本実施形態の反射スクリーンは、斜方蒸着により光源Pからの投射光を効率よく反射する反射部を形成することができ、しかも同じく斜方蒸着により低反射率部を形成したことで、光源Pとは反対側の外部光源からの投射光を観察側へ反射することを抑制することができる。従って、高いコントラストの反射光を観察側に反射させるものであり、光源Pとなるプロジェクターを通常室内照明下においても鮮明な画像を観察者に提供する。
【0054】
なお、上述の実施形態の説明における図3(a)および(b)の、反射部12を形成するAl膜、ならびに低反射率部13を形成する酸化ケイ素膜は凹部11の凹面内において端面を備えるように作図されているが、説明上の各部の位置関係を明確にするためのものである。実際の各部の成膜においては、凹面内の端部近傍において、膜厚が略ゼロになるように徐々に薄くなる。
【符号の説明】
【0055】
10…スクリーン基板、11…凹部、12…反射部、13…低反射率部、14…光吸収面、15…保護層、16…反射防止層、100…反射スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の観察面側の法線に対して垂直方向にずれた位置から、前記観察面側に斜めに投射された投射光を、観察側に反射する反射スクリーンであって、
前記スクリーン基板の前記観察面側に複数個の凹部が形成され、
前記凹部の凹面の少なくとも前記投射光が投射される部位(範囲)に形成される反射部と、
前記凹面の前記反射部の非形成領域に形成される低反射率部と、
前記凹面の前記反射部と前記低反射率部との間に前記反射部と前記低反射率部とのいずれも形成されない基板露出部と、を備える、
ことを特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
前記凹部の一部個数もしくは全個数が、前記基板露出部を備えていない、
ことを特徴とする請求項1に記載の反射スクリーン。
【請求項3】
前記スクリーン基板は、少なくとも前記反射部の非形成領域が光を吸収可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の反射スクリーン。
【請求項4】
前記反射部がAl膜で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の反射スクリーン。
【請求項5】
前記低反射率部が酸化ケイ素膜で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の反射スクリーン。
【請求項6】
前記低反射率部を形成する前記酸化ケイ素膜が50nm以上115nm以下であることを特徴とする請求項5に記載の反射スクリーン。
【請求項7】
スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の観察面側の法線に対して垂直方向にずれた位置から、前記観察面側に斜めに投射された投射光を、観察側に反射する反射スクリーンの製造方法であって、
前記観察面側に複数の凹部が形成された前記スクリーン基板の前記凹部の凹面に反射膜を成膜し、反射部を形成する反射部形成工程と、
前記凹面の前記反射部の非形成領域に低反射率膜を成膜し低反射率部を形成する低反射率部形成工程と、を含み、
前記反射部形成工程は、前記スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の前記観察面の法線に対して垂直方向にずれた位置に前記反射膜の蒸着源を載置し、
前記低反射率部形成工程は、前記スクリーン基板の中心より、前記スクリーン基板の前記観察面の法線に対して垂直方向の、前記反射膜の前記蒸着源の載置部とは前記スクリーン基板の中心に対して反対方向にずれた位置に前記低反射率膜の蒸着源を載置する、
ことを特徴とする反射スクリーンの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−133609(P2011−133609A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291964(P2009−291964)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】