説明

反射光測定装置

【課題】本発明は、狭い場所でも、照射光や反射光を1本の光ファイバで、効率よく測定することができる反射光測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の蛍光測定装置は、測定対象に対して照射光を照射し、前記測定対象からの反射光を測定する反射光測定装置であって、前記測定対象に照射する前記照射光、及び当該照射光の照射による前記測定対象からの反射光を伝搬する伝搬用光ファイバと、前記照射光及び、または前記反射光の光路に配置され、前記照射光及び、または前記反射光を分離する光分離回路、を含み、前記伝搬用光ファイバは、前記光分離回路からの入力光を中心コア部で前記測定対象に導き、当該測定対象からの反射光を前記中心コア部と同じ軸心の太径コアで伝搬させるダブルコアフォトニックバンドギャップファイバまたはダブルコアフォトニック結晶ファイバであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射光測定装置に関する。さらに詳しくは、測定対象に励起光等の照射光を照射し、この励起光によって励起した生体組織等の測定対象部位が発する蛍光等の反射光を分光測定する反射光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内等の生体組織の測定対象部位へ特定波長の励起光を照射すると、この励起光によって励起光の波長よりも長波長側にスペクトルを有する蛍光(いわゆる自家蛍光)がその生体組織から発せられる。その自家蛍光の強度は、腫瘍やがんといった生体の病変組織から発生するものの方が、正常組織から発生するものよりも低いことが知られている。かかる自家蛍光の蛍光像を2次元画像として検出し、その蛍光像から生体組織の変性やがん等の疾患状態を診断する技術が用いられている。例えば、ある波長の光を生体細胞等のターゲットへ入力して、それらの状態によって発光する蛍光を観察することが、がん診断等の医療分野で広く用いられている。かかる蛍光観察を実施する蛍光測定装置における励起光や反射光の伝搬手段として、光ファイバを用いる蛍光測定装置が提供されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【0003】
従来の蛍光測定装置を構成する光ファイバの断面構造を示した概略図を図7及び図8に示す。使用される光ファイバとしては、例えば、図7に示すようなバンドルファイバ70や、図8に示すようなマルチコア光ファイバ80が挙げられる。図7に示すような、複数本の光ファイバの素線を両端で束ね、端末に治具を取り付けて構成されるバンドルファイバ(バンドル光ファイバ)70は、励起光伝搬用コア71(図7中の黒丸)を含む励起光伝搬用光ファイバ73と、蛍光伝搬用コア72(図7中の白丸)を含む蛍光伝搬用光ファイバ74とに役割を分けて使用することができる。また、図8に示すような、1つのクラッド85の内部に励起光伝搬用コア81(図8中の黒丸)と蛍光伝搬用コア82(図8中の白丸)といった複数のコア81、82を分散配置したマルチコア光ファイバ80は、元来通信用として開発されている。このようなマルチコア光ファイバ80は、1本の光ファイバをバンドルファイバとして使用することができるため、蛍光測定装置の光伝達手段としても利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−155812号公報
【特許文献2】特開2006−226848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7に示したバンドルファイバは、多数の光ファイバを束ねるため、バンドルファイバの直径が大きくなってしまう。そのため、バンドルファイバを使用した蛍光測定装置では、狭い場所、例えば血管の内部や歯と歯肉の隙間に挿入しての測定が不可能であった。
【0006】
図8に示したマルチコア光ファイバは、1本の光ファイバで励起光と蛍光の伝搬が可能である。そのため、マルチコア光ファイバを使用した蛍光測定装置では、狭い場所での蛍光を観察できる利点はある。一方、蛍光観察に用いる励起光の波長は、紫外から可視域、いわゆる短波長帯の光であり、これらの波長の光を微少域に集光するためには、光ファイバの伝送特性はシングルモード伝搬することが不可欠である。その場合の光ファイバのコア径は小さいため、励起光を入力してシングルモード伝搬することが困難であった。加えて、シングルモード伝搬可能な励起光の波長も狭い範囲で限定されており、さらに、光ファイバのコアがガラス材料であるため、励起光がパルスであった場合、非線形効果によりパルス波形歪を生じる、という欠点があった。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、狭い場所でも、照射光や反射光を1本の光ファイバで、効率よく測定することができる反射光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の蛍光測定装置は、測定対象に対して照射光を照射し、前記測定対象からの反射光を測定する反射光測定装置であって、前記測定対象に照射する前記照射光、及び当該照射光の照射による前記測定対象からの反射光を伝搬する伝搬用光ファイバと、前記照射光及び、または前記反射光の光路に配置され、前記照射光及び、または前記反射光を分離する光分離回路、を含み、前記伝搬用光ファイバは、前記光分離回路からの入力光を中心コア部で前記測定対象に導き、当該測定対象からの反射光を前記中心コア部と同じ軸心の太径コアで伝搬させるダブルコアフォトニックバンドギャップファイバまたはダブルコアフォトニック結晶ファイバであることを特徴とする。
【0009】
本発明により、狭い場所でも、照射光や反射光を1本の光ファイバで、効率よく測定することができる反射光測定装置を提供することができる。
【0010】
本発明の反射光測定装置は、前記した本発明において、前記光分離回路は、前記反射光を波長差で選択分離する波長選択フィルタを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明により、照射光を励起光として、測定対象で発生した、励起光よりも長い波長の蛍光を測定することができる。
【0012】
本発明の反射光測定装置は、前記した本発明において、前記光分離回路は、前記照射光をP偏光とS偏光に分離し、P偏光とS偏光の反射光を合成する第1の偏光ビームスプリッタと、前記反射光をP偏光とS偏光に分離し、P偏光とS偏光の照射光を合成する第2の偏光ビームスプリッタと、前記第1の偏光ビームスプリッタ及び前記第2の偏光ビームスプリッタとの間の光路に配置される、ファラデー回転子と波長板からなる偏波回転制御手段と、前記反射光を波長差で選択分離する波長選択フィルタを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明により、反射光が光源側に戻らないため、安定した反射光の測定が可能になる。
【0014】
本発明の反射光測定装置は、前記した本発明において、前記光分離回路は、光源からの光を測定対象への照射光とそれ以外の光に分離するビームスプリッタと、前記それ以外の光を全反射する反射手段、を含み、前記全反射された光及び前記測定対象からの反射光を前記ビームスプリッタが合成して、合成された合成光を検出することを特徴とする。
【0015】
本発明により、照射光や反射光を効率よく伝搬することができ、光干渉断層像(OCT)の測定装置としても動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、狭い場所でも、照射光や反射光を1本の光ファイバで、効率よく測定することができる反射光測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る反射光測定装置を示した概略図である。
【図2】反射光測定装置を構成する伝搬用光ファイバの断面構造を示す概略図である。
【図3】反射光測定装置を構成する他の伝搬用光ファイバの断面構造を示す概略図である。
【図4】波長選択フィルタの特性を示した図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る反射光測定装置を示した概略図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る反射光測定装置を示した概略図である。
【図7】従来の蛍光測定装置を構成する光ファイバの断面構造を示した概略図である。
【図8】従来の蛍光測定装置を構成する光ファイバの断面構造を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る反射光測定装置1を示した概略図である。図1において、1は反射光測定装置、2aは伝搬用光ファイバ、41は波長選択フィルタ、11は励起光入力ファイバ(励起光入力手段)、12はコリメートレンズ、13a、13bは集光レンズ、14は照射レンズ、15は受光ファイバ(受光手段)、Xは測定対象をそれぞれ示す。
【0020】
本実施形態に係る反射光測定装置1では、例えば、照射光を励起光として、測定対象Xに照射する。照射光の照射による測定対象からの蛍光を含む反射光を伝搬する伝搬用光ファイバ2として、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aまたはダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bを使用する。光分離回路4として、波長差で選択分離する波長選択フィルタ41で、蛍光を含む反射光から蛍光を選択分離する。分離された蛍光を測定すれば、例えば、生体組織の変性やがん等の疾患状態を診断する蛍光測定装置として使用することができるものである。
【0021】
以下、図2及び図3を用いて、反射光測定装置1を構成する伝搬用光ファイバ2を説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る反射光測定装置1を構成する伝搬用光ファイバ2の断面構造を示す概略図である。図2に示した伝搬用光ファイバ2は、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a(以下、単に「バンドギャップファイバ2a」とする場合もある。)の構造を有するものである。断面視円形状の太径コア21の周囲にクラッド22が配設されている。また、太径コア21の軸心(中心)に、軸心を同じとする中心部コア23である断面視円形状の空孔コア23aを形成し、かかる空孔コア23aの周囲に、空孔コア23aを中心として周回状に断面視円形状の空孔24を複数個形成している。なお、図2に示すように、本実施形態にあっては、複数個形成された空孔24はいずれも、ファイバ軸方向には一様な大きさの直径とされている。
【0022】
図2に示したダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aは、フォトニックバンドギャップ構造による空孔コア23aと、そのフォトニックバンドギャップ構造を形成する太径コア21として同じ軸心上に有するマルチコア光ファイバである。バンドギャップファイバ2aの中心にある空孔コア23a(第1のコア)と空孔24が形成される領域241(中心部コア23と図2の点線で囲まれる領域。以下、図3について同じ。)を励起光の伝搬部としているため、1本の光ファイバで、紫外から可視域の広帯域の波長の光を微少領域に集光可能なシングルモード伝搬を実現している。また、領域241の外周の太径コア21(第2のコア)を励起光により発生する蛍光の伝搬部としているため、微少な蛍光を太径コア21(第2のコア)により効率よく集光、伝搬させることを実現している。励起光としてパルス光を用いる場合であっても、励起光の伝搬部が空孔(空孔コア23a)であるため、強度の強いパルス光による非線形効果がほとんど無く、パルス波形歪を起さずに、高精度に蛍光を発生させることが可能になる。
【0023】
本発明の第1実施形態に係る反射光測定装置1を構成する他の伝搬用光ファイバ2の断面構造を示す概略図を図3に示す。図3に示した伝搬用光ファイバ2は、ダブルコアフォトニック結晶ファイバ2b(以下、単に「結晶ファイバ2b」とする場合もある。)の構造を有するものである。断面視円形状の太径コア21の周囲にクラッド22が配設されている。太径コア21の軸心(中心)に、軸心を同じとする中心部コア23を形成し、かかる中心部コア23の周囲に、中心部コア23を中心として周回状に断面視円形状の空孔24を複数個形成している。なお、図3に示すように、複数個形成された空孔24はいずれも、ファイバ軸方向には一様な大きさの直径とされており、これは図2に示したダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aと共通する。
【0024】
図3に示したダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bは、フォトニック結晶構造によるフォトニック結晶ファイバの周囲をクラッド22で覆い、フォトニック結晶構造を形成する太径コア21を同じ軸心上に有するマルチコア光ファイバである。結晶ファイバ2bの中心にある中心部コア23(第1のコア)と空孔24が形成される領域241を励起光の伝搬部としているため、1本の光ファイバで、紫外から可視域の広帯域の波長の光を微少領域に集光可能なシングルモード伝搬を実現している。また、領域241の外周の太径コア21(第2のコア)を励起光により発生する蛍光の伝搬部としているため、微少な蛍光をクラッドにより効率よく集光、伝搬させることを実現している。
【0025】
これらの伝搬用光ファイバ2を使用することにより、一般的な石英コアとクラッド構造によるシングルモードファイバと比較した場合、特に可視域においてのコア(太径コア21)の径が大きいため、強い強度の光を伝搬することが可能であり、かつ、シングルモード伝送できる帯域も広い、という特徴を有する。また、伝搬用光ファイバ2のサイズがコンパクトに収まるので、従来では困難であった血管内や歯と歯肉の隙間のような狭い場所の蛍光測定を精度よく実施することができる。
【0026】
ここで、太径コア21、及びダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bにおける中心部コア23は、石英等の公知の材料で構成することができ、クラッド22は、太径コア21より屈折率が低くなるような材料、例えば、プラスチック材料等の公知の材料で構成することができる。また、太径コア21等やクラッド22を石英等の共通した材料で構成し、屈折率を高くさせる不純物(AlやGe等)や、屈折率を低くさせる不純物(BやF等)を添加して、太径コア21やクラッド22の屈折率を調整するようにしてもよい。
【0027】
また、空孔24の径、間隔、数や、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aにおける中心部コア23である空孔コア23aの径は、使用される波長に応じて適宜決定すればよく、これらを使用される波長に応じて設計し、変更することで、種々の励起光の波長等の照射波の波長への対応も可能である。
【0028】
なお、図2や図3に示す伝搬用光ファイバ2を製造するには、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る反射光測定装置1の動作の一例を、図1を用いて説明する。なお、伝搬用光ファイバ2として、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aを使用している。図1中、照射光である励起光及び反射光に含まれる励起光を実線矢印、励起光を測定対象に照射して発生する蛍光を点線矢印で示している(以下、図5について同じ。)。
【0030】
まず、図示しない励起光の光源から照射光である励起光が出力され、励起光入力手段である励起光入力ファイバ11に入力される。励起光入力ファイバ11に入力された励起光は、コリメートレンズ12で平行光とされ、波長選択フィルタ41を通過する。波長選択フィルタ41を通過した励起光は、集光レンズ13aによって集束され、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a(伝搬用光ファイバ2)の第1のコア(空孔コア23a)に入力される。バンドギャップファイバ2aの第1のコアに入力された励起光は、バンドギャップファイバ2aをシングルモード伝搬し、照射レンズ14を介して測定対象Xに照射される。
【0031】
励起光が測定対象Xに照射されると、測定対象Xは励起光の波長よりも長い波長の蛍光を発生する。この蛍光は、残った励起光と混在した状態で反射光となり、照射レンズ14を介してダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aの第2のコア(太径コア21)に入力される。第2のコアに入力された反射光は、励起光とは逆方向に伝搬され、バンドギャップファイバ2aの入射端から波長選択フィルタ41に出射される。出射された反射光のうち、蛍光は波長選択フィルタ41において選択分離されるため反射されて、集光レンズ13bにより集光され、受光手段である受光ファイバ15に入力される。受光ファイバ15に入力された蛍光は、2次元画像として検出され、その蛍光像から生体組織の変性やがん等の疾患状態が診断される。
【0032】
かかる動作を具体的に実施するには、図1の構成の反射光測定装置1にあっては、例えば、下記の仕様の部材等を使用することができる。下記の内容は、励起光の波長として650nm、蛍光の波長として668nm付近を適用した場合を例に挙げて説明しているが、本発明で使用される波長についてはこれらに限定されるものではなく、対応して使用される部材等についても同様である。
【0033】
まず、測定対象Xに対しては、蛍光を発生するために、染色色素等を吸着させることが好ましい。生体細胞等の蛍光発生のための染色色素は、種々市販されているが、例えば、Alexa Fluor 647(Molecular Probes社製)やCy5(Chroma Technology社製)は、励起光の波長650nmに対して、波長668nm付近の蛍光を発するので、測定対象にかかるAlexa Fluor 647を吸着させることにより、波長650nmの励起光が入射されることにより、波長668nmの蛍光が発生することになる。
【0034】
伝搬用光ファイバ2としては、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aやダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bは公知の技術で製造されたものを使用することができる。
【0035】
波長選択フィルタ41としては、例えば、図4に示すような特性を有するものを使用することができる。図4は、波長選択フィルタ41の特性を示した図である。図4にもあるように、励起光(反射光にも含まれる)650nmを透過し、668nmを選択的に分離し、反射する特性のものを使用することができる。励起光の光源(図1では図示せず)としては、例えば、波長650nmのレーザーダイオード(Laser Diode:LD)が市販されており、これを使用することができる。励起光入力ファイバ11としては、波長650nmの励起光をシングルモード伝搬させることができる、600nm帯のシングルモードファイバ、例えば、SM600(Fibercore社製)を使用することができる。コリメートレンズ12としては、特に制限はないが、例えば、励起光の波長が650nmにおいて吸収の無い材質のレンズを使用することができる。集光レンズ13aや照射レンズ14としては、特に制限はないが、例えば、励起光波長650nm及び蛍光波長668nmにおいて吸収の無い材質のレンズを使用することができる。集光レンズ13bとしては、特に制限はないが、例えば、蛍光波長668nmにおいて吸収の無い材質のレンズを使用することができる。受光ファイバ15としては、特に制限はないが、例えば、マルチモードファイバを使用することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る反射光測定装置1は、励起光等の照射光や反射光の伝搬手段として、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aまたはダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bといったマルチコア光ファイバを使用しているので、サイズもコンパクトとなるため狭い場所の測定が可能である。加えて、1本の光ファイバで、紫外から可視域の広帯域の波長の光を微少領域に集光可能なシングルモード伝搬が可能で、かつ、微少な蛍光を効率よく集光、伝搬させることが可能になるため、照射光や反射光を効率よく伝搬することができ、蛍光測定装置として有用である。
【0037】
(第2実施形態)
以下、図5を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、前記した第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0038】
図5は、本発明の第2実施形態に係る反射光測定装置1を示した概略図である。図5において、1は反射光測定装置、2は伝搬用光ファイバ、11は励起光入力ファイバ、12はコリメートレンズ、42、43は偏光ビームスプリッタ、16a、16bは全反射ミラー、44,45は偏波回転制御手段の一部としてのファラデー回転子、46、47は偏波回転制御手段の一部としての波長板(2分の1λ波長板)、13a、13bは集光レンズ、14は照射レンズ、15は受光ファイバ(受光手段)、Xは測定対象、をそれぞれ示す。
【0039】
第2実施形態に係る反射光測定装置1は、伝搬用光ファイバ2として、前記した第1実施形態で説明したダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a又はダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bを使用し、かかる伝搬用光ファイバ2が測定対象に照射する照射光と、照射光の照射による測定対象Xからの反射光を伝搬させる。光分離回路4として、前記した第1実施形態と同様、照射光と反射光とを波長差で選択分離する波長選択フィルタ41を使用する。また、図5に示すように、照射光や反射光の光路には第1の偏光ビームスプリッタ42と第2の偏光ビームスプリッタ43をそれぞれ配置する。かかる第1の偏光ビームスプリッタ42と第2の偏光ビームスプリッタ43との間の光路に、偏波回転制御手段として、ファラデー回転子44、45と波長板46、47を配置している。また、第1の偏光ビームスプリッタ42は、照射光をP波とS波に分離し、P波とS波の反射光を合成することができ、第2の偏光ビームスプリッタ43は、反射光をP波とS波に分離し、P波とS波の照射光を合成することができる。第2実施形態に係る反射光測定装置1は、第1実施形態に係る反射光測定装置1と同様に、蛍光測定装置として使用することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る反射光測定装置1の動作の一例を説明する。なお、第1実施形態と同様、伝搬用光ファイバ2として、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aを使用している。
【0041】
まず、図示しない励起光の光源から照射光である励起光が出力され、励起光入力手段である励起光入力ファイバ11に入力される。励起光入力ファイバ11から入力された励起光は、第1の偏光ビームスプリッタ42でP偏光とS偏光に分離される。このうち、P偏光は、全反射ミラー16aにより反射されて、45°回転のファラデー回転子44により偏光面が45°回転される。45°回転されたP偏光は波長板46に入射されるが、波長板46の進相軸は、45°回転した偏光を元に戻すように配置されており、入射された励起光は、波長板46を透過することでP偏光に戻り、第2のビームスプリッタ43を透過することになる。
【0042】
一方、第1のビームスプリッタ42で分離された励起光のS偏光は、全反射ミラー16bにより反射され、45°回転のファラデー回転子45により偏光面が45°回転される。45°回転されたS偏光は波長板47に入射されるが、波長板47の進相軸は、45°回転した偏光を元に戻すように配置されており、入射された励起光は、波長板47を通過することでS偏光に戻り、第2の偏光ビームスプリッタ43で反射される。
【0043】
第2の偏光ビームスプリッタ43を透過した励起光のP偏光と、反射されたS偏光が再度合波され、集光レンズ13aによって集光された後、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a(伝搬用光ファイバ2)の第1のコア(空孔コア23a)へ入力される。バンドギャップファイバ2aの第1のコアに入力された励起光は、第1のコアをシングルモード伝搬し、照射レンズ14を介して測定対象Xに照射される。
【0044】
測定対象Xは、励起光が照射されると励起光波長よりも長い波長の蛍光を発生する。かかる蛍光は、残った励起光と混在した状態で反射波となり照射レンズ14を介してダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aの第2のコア(太径コア21)に入力される。第2のコアに入力された反射光(蛍光と残りの励起光)は励起光とは逆方向に伝搬され、バンドギャップファイバ2aの入射端から出射される。出射された反射光は、集光レンズ13aにてコリメート(平行化)され、第2の偏光ビームスプリッタ43へ入力され、P偏光とS偏光に分離される。
【0045】
蛍光と残りの励起光からなる反射光のP偏光は、第2の偏光ビームスプリッタ43を透過し、波長板47、ファラデー回転子45を通過することでS偏光となり、全反射ミラー16bで反射された後、第1の偏光ビームスプリッタ42により反射される。一方、蛍光と残りの励起光からなる反射光のS偏光は、第2の偏光ビームスプリッタ43により反射され、波長板46、ファラデー回転子44を通過することでP偏光となり、全反射ミラー16aで反射された後、第1の偏光ビームスプリッタ42を透過する。
【0046】
そして、第1の偏光ビームスプリッタ42を透過した蛍光と残りの励起光からなる反射光のP偏光と、反射されたS偏光が再度合波され、波長選択フィルタ41へ入射される。波長選択フィルタ41は、前記した図4に示した特性を有している。励起光の波長(650nm)より波長の長い(668nm)蛍光は波長選択フィルタ41で選択分離されるため、反射されて、集光レンズ13bにより集光され、受光手段である受光ファイバ15に入力される。受光ファイバ15に入力された蛍光は2次元画像として検出され、その蛍光像から生体組織の変性やがん等の疾患状態が診断される。
【0047】
なお、かかる動作を具体的に実施するには、図5の構成の反射光測定装置1にあっては、例えば、下記の仕様の部材等を使用することができる。なお、下記の内容は、第1実施形態と同様、染色色素として、Alexa Fluor 647(Molecular Probes社製)やCy5(Chroma Technology社製)等を使用し、励起光の波長として650nm、蛍光の波長として668nm付近を適用した場合を例として説明しており、例えば、伝搬用光ファイバ、波長選択フィルタの他、励起光入力ファイバ11、集光レンズ13a,13b、照射レンズ14、受光ファイバ15等は、第1実施形態と共通するものを使用することができるので、説明を省略する。
【0048】
第1の偏光ビームスプリッタ42及び第2の偏光ビームスプリッタ42は、波長650nm、668nmの偏光分離フィルタ等を使用することができる。また、かかる偏光分離フィルタは、キューブタイプ、プレートタイプ等の任意の形状とすればよい。全反射ミラー16a、16bは、例えば、波長650nmと668nmにおいて吸収の無い材質にて作製された45°直角プリズムの直角を成す2面に、波長650nmnmと波長668nmに対応した反射防止コートが施されたものを使用することができる。ファラデー回転子45、46は、通常の特性のものを使用することができる。波長650nm帯の空間入出力が可能なものも市販されており、これを使用することができる。2分の1λ波長板46、47は、例えば、波長650nm帯の0次水晶波長板や、水晶とMgF(フッ化マグネシウム)を組み合わせた広帯域波長板を使用することができる。
【0049】
本実施形態に係る反射光測定装置1は、前記した第1実施形態に係る反射光測定装置の奏する効果を享受するとともに、照射光である励起光が励起光入力手段さらには光源側へ戻らない構成であるため、第1実施形態に係る反射光測定装置1よりも安定した測定が可能となる。
【0050】
(第3実施形態)
以下本発明の第3実施形態を、図6を用いて説明する。なお、以下の説明においては、前記した第1実施形態等と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0051】
本発明の第3実施形態に係る反射光測定装置1を示した概略図を図6に示す。図6において、1は反射光測定装置、2は伝搬用光ファイバ、3は光源、48はハーフミラー(ビームスプリッタ)、12はコリメートレンズ、13は集光レンズ、14は照射レンズ、16は全反射ミラー(反射手段)、8は光検出器、Xは測定対象、をそれぞれ示す。
【0052】
第3実施形態に係る反射光測定装置1は、伝搬用光ファイバ2として、前記した第1実施形態および第2実施形態で説明したダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a又はダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bを使用する。かかる伝搬用光ファイバ2が測定対象Xに照射する照射光と、照射光の照射による測定対象Xからの反射光を伝搬させる。また、光分離回路4として、ビームスプリッタであるハーフミラー48と、反射手段である全反射ミラー16とを含む。ハーフミラー48は、光源3からの光を測定対象Xへの照射光とそれ以外の光に分離するものである。かかるハーフミラー48は、全反射ミラー16により全反射された光及び測定対象Xからの反射光を合成し、合成された合成光を光検出器8に導入するものである。前記した第1実施形態及び第2実施形態では、反射光測定装置1を蛍光測定装置に適用した態様を示したが、本実施形態にあっては、反射光測定装置1を光干渉断層像(Optical Coherence Tomograph:OCT)の測定装置へ適用することができる。
【0053】
図6に示す反射光測定装置1において、光源3としては、光干渉断層像(OCT)に用いる場合には、部分的にコヒーレントな光ビームを発生するものであることが好ましく、例えば、1個ないし複数個のスーパールミネッセントダイオード(SLD)や疑似白色光源によって構成されている光源(SLD光源等)を使用することができる。
【0054】
また、この光源3から発生される光(光ビーム)の光軸上には、ハーフミラー48(ビームスプリッタ)が配設されている。光源3から発生された光のうち、ハーフミラー48を通過した光の光軸上には、集光レンズ13、伝搬用光ファイバ2、コリメートレンズ12、照射レンズ14、測定対象Xがそれぞれ配設されている。一方、ハーフミラー48によって反射により分離された光ビームの光軸上には、全反射ミラー16が設けられている。かかる全反射ミラー16は、本実施形態にあっては、周波数シフタとしての可動ミラーとして用いることができる。
【0055】
そして、測定対象Xから反射された反射光のうち、ハーフミラー48によって分離されて、全反射ミラー16により反射された光(後記する参照光)の光軸上には、光電変換器としての光検出器8が設けられており、この光検出器8の出力端には図示しない信号処理器を接続することができる。信号処理器は、例えば、光検出器8から出力される信号を増幅する増幅器(AMP)、この増幅器によって増幅された信号の所定の帯域の信号を取出す帯域通過フィルタ(BPF)、かかる帯域通過フィルタによって取出された信号をディジタル信号に変換するA/D変換器(いずれも図示しない)等によって構成されるようにしてもよい。図示しない信号処理機を構成するA/D変換器から出力されるディジタル信号はコンピュータに供給され、コンピュータには信号処理器から出力された信号を記憶するメモリ及び各種情報を表示するディスプレイ装置(いずれも図示しない)を接続することにより、光干渉断層像の測定がなされることになる。
【0056】
次に、本実施形態に係る反射光測定装置1の動作の一例を説明する。なお、第1実施形態や第2実施形態と同様、伝搬用光ファイバ2として、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aを使用している。
【0057】
SLD光源等の光源3から発生された部分的なコヒーレント光(光ビーム)は、ビームスプリッタであるハーフミラー48によって2つに分離される。このうち、照射光となる光以外の光は、全反射ミラー16に導入され、反射される。この反射光はその周波数がドップラーシフトを受け、かつ可動ミラーである全反射ミラー16の移動距離に相当する位相遅れを持つ参照光となる。
【0058】
また、ハーフミラー48によって分離された光のうち、測定対象Xに対する照射光となる光は、集光レンズ13によって集光された後、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a(伝搬用光ファイバ2)の第1のコア(空孔コア23a)へ入力される。バンドギャップファイバ2aの第1のコアに入力された照射光は、第1のコアをシングルモード伝搬し、コリメートレンズにより平行化されて、照射レンズ14を介して測定対象Xに照射される。
【0059】
測定対象Xに照射された照射光は、測定対象の内部を透過伝搬されていくが、光学的層構造、すなわち屈折率の異なる多層物質より構成される測定対象の内部を伝搬する照射光(入射光ビーム)は、かかる層の境界毎に散乱され、一部は照射光(入射光ビーム)の方向に戻り反射光波を形成する。なお、この反射光のそれぞれの位相は、照射光(入射光ビーム)の入射位置より奥行き方向にある境界の位置にしたがってそれぞれ遅延することになる。
【0060】
測定対象Xからの反射光は、照射レンズ14及びコリメートレンズ12を介してダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2aの第2のコア(太径コア21)に入力される。第2のコアに入力された反射光は照射光とは逆方向に伝搬され、バンドギャップファイバ2aの入射端から出射される。出射された反射光は、集光レンズ13aにてコリメート(平行化)され、全反射ミラー16によって反射された参照光とともに、ハーフミラー48により合成されて光検出器8へ導かれる。
【0061】
この光検出器8にあっては、例えば、合成された干渉した光波が光ヘテロダイン検波される。一般に、測定対象Xからの反射光は多くの空間フーリエスペクトル成分を有しているが、この反射光は平行光束であり、空間コヒーレント度の高い参照光波の平面波成分と整合する成分のみが高効率でヘテロダイン検波される。したがって、これを利用することにより、測定対象Xの奥行き方向成分に対しても入射光波の進行方向成分のみを高分解能で検出することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る反射光測定装置1は、照射光や反射光の伝搬手段として、ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ2a又はダブルコアフォトニック結晶ファイバ2bといったマルチコア光ファイバを使用しているので、サイズもコンパクトとなるため狭い場所での観察が可能となる。加えて、1本の光ファイバで、紫外から可視域の広帯域の波長の光を微少領域に集光可能なシングルモード伝搬が可能で、かつ、微少な蛍光をクラッドにより効率よく集光、伝搬させることが可能になるため、照射光や反射光を効率よく伝搬することができ、光干渉断層像(OCT)の測定装置としても有効である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、生体組織の変性やがん等の疾患状態を診断するための蛍光測定装置として使用することができ、産業上の利用可能性は極めて高いものである。
【符号の説明】
【0064】
1 反射光測定装置
11 励起光入力ファイバ(励起光入力手段)
12 コリメートレンズ
13、13a、13b 集光レンズ
14 照射レンズ
15 受光ファイバ(受光手段)
16、16a、16b 全反射ミラー
2 伝搬用光ファイバ
2a ダブルコアフォトニックバンドギャップファイバ(伝搬用光ファイバ)
2b ダブルコアフォトニック結晶ファイバ(伝搬用光ファイバ)
21 太径コア
22 クラッド
23 中心部コア
23a 空孔コア
24 空孔
241 空孔が形成される領域
3 光源
4 光分離回路
41 波長選択フィルタ
42,43 偏光ビームスプリッタ
44,45 ファラデー回転子
46,47 波長板(2分の1λ波長板)
48 ハーフミラー(ビームスプリッタ)
8 光検出器
70 バンドルファイバ
71 励起光伝搬用コア
72 蛍光伝搬用コア
73 励起光伝搬用光ファイバ
74 蛍光伝搬用光ファイバ
80 マルチコア光ファイバ
81 励起光伝搬用コア
82 蛍光伝搬用コア
85 クラッド
X 測定対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に対して照射光を照射し、前記測定対象からの反射光を測定する反射光測定装置であって、
前記測定対象に照射する前記照射光、及び当該照射光の照射による前記測定対象からの反射光を伝搬する伝搬用光ファイバと、
前記照射光及び、または前記反射光の光路に配置され、前記照射光及び、または前記反射光を分離する光分離回路、を含み、
前記伝搬用光ファイバは、前記光分離回路からの入力光を中心コア部で前記測定対象に導き、当該測定対象からの反射光を前記中心コア部と同じ軸心の太径コアで伝搬させるダブルコアフォトニックバンドギャップファイバまたはダブルコアフォトニック結晶ファイバであることを特徴とする反射光測定装置。
【請求項2】
前記光分離回路は、前記反射光を波長差で選択分離する波長選択フィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の反射光測定装置。
【請求項3】
前記光分離回路は、前記照射光をP偏光とS偏光に分離し、P偏光とS偏光の反射光を合成する第1の偏光ビームスプリッタと、
前記反射光をP偏光とS偏光に分離し、P偏光とS偏光の照射光を合成する第2の偏光ビームスプリッタと、
前記第1の偏光ビームスプリッタ及び前記第2の偏光ビームスプリッタとの間の光路に配置される、ファラデー回転子と波長板からなる偏波回転制御手段と、
前記反射光を波長差で選択分離する波長選択フィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の反射光測定装置。
【請求項4】
前記光分離回路は、光源からの光を測定対象への照射光とそれ以外の光に分離するビームスプリッタと、
前記それ以外の光を全反射する反射手段、を含み、
前記全反射された光及び前記測定対象からの反射光を前記ビームスプリッタが合成して、合成された合成光を検出することを特徴とする請求項1に記載の反射光測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−202910(P2012−202910A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69603(P2011−69603)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(501392361)株式会社 オプトクエスト (24)
【Fターム(参考)】