説明

反射型スクリーンおよび反射型スクリーンの製造方法

【課題】投射光を効率よく反射し、生産性が高い反射型スクリーン、および反射型スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】投射光L1を透過し、複数の凹部6を有する第1面、および第1面と反対側の第2面を有するシート状のスクリーン基材2と、投射光L1を反射する反射膜3と、投射光と異なる方向から入射する外光L2を吸収する吸収膜4と、を備え、第2面には、反射膜3が形成され、凹部6の一部には、所定方向から入射する投射光L1を反射し、外光L2を吸収するように、第2面に形成された反射膜3とは異なる吸収膜4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンおよび反射型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等の投射型表示装置から射出された投射光を反射して画像を表示する反射型スクリーンが知られている。そして、投射光を観察側に効率よく反射させるために、加工が施された観察面の一部に反射膜が形成された反射型スクリーンが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の反射型スクリーンは、観察面に複数の凹部または凸部が形成された基材(スクリーン基板)に、観察面に対して斜めからアルミニウム等の材料が蒸着され、凹部または凸部の表面の一部に反射膜が形成されて構成されている。そして、反射型スクリーンは、この反射膜によって投射光を反射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−15196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の反射型スクリーンは、観察面に対して斜めから蒸着するため、凹部または凸部に形成される反射膜の大きさや膜厚が観察面内においてばらつくと考えられる。そして、反射膜が所望の大きさに形成されなかったり、所望の厚さに形成されなかったりした領域は、反射する投射光の損失が生じ、観察面内において明るさのムラが生じた画像を表示する恐れがある。
また、観察面に対して斜めから蒸着するために、反射型スクリーンとなるサイズの基材単品毎に、観察面となる面を起立させた状態で蒸着する必要があると考えられる。つまり、枚葉式の製造となるため、一回の蒸着で製造する枚数に限りが生じ、生産性が悪く、製造コストが高くなるという課題がある。また、ロール式で連続的に蒸着可能とはいうものの、開示されている図面のように、緩やかな角度に傾斜させた基材に蒸着させると、所望の領域より広い領域に反射膜が形成されてしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る反射型スクリーンは、投射光を反射する反射型スクリーンであって、前記投射光を透過し、複数の凹部または複数の凸部が形成された第1面、および前記第1面と反対側の第2面を有するシート状の基材と、前記投射光を反射する反射膜と、前記投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜と、を備え、前記第2面には、前記吸収膜および前記反射膜のいずれか一方が形成され、前記凹部または前記凸部の一部には、所定方向から入射する前記投射光および前記外光に対応して前記吸収膜または前記反射膜のいずれか他方が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第2面には、吸収膜あるいは反射膜が形成され、第1面の凹部または凸部の一部には、所定方向から入射する投射光および外光に対応して第2面に形成された膜と異なる膜が形成されている。これによって、反射型スクリーンは、投射光を効率良く観察側に反射できると共に、投射光とは異なる方向から入射する外光を吸収してその反射を抑制し、コントラスト等の品質が良好な画像を表示することが可能となる。例えば、第2面に反射膜が形成された反射型スクリーンの場合、凹部または凸部の投射光に対向する部位に吸収膜を形成せず、投射光と異なる方向から入射する外光に対向する部位に吸収膜を形成することで、第1面側から入射する投射光を基材透過後に反射膜によって反射し、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収膜によって吸収することが可能となる。
【0009】
また、第2面には、反射膜および吸収膜のいずれか一方が形成されているので、投射光を全面に亘って確実に反射する反射型スクリーンや、投射光と異なる方向から入射する外光を全面に亘ってより多く吸収し、その反射光を抑制する反射型スクリーンを提供することが可能となる。よって、観察面内における明るさやコントラストのばらつきを抑制する反射型スクリーンを構成することが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る反射型スクリーンにおいて、前記第2面には、前記反射膜が形成され、前記凹部または前記凸部の一部には、所定方向から入射する前記投射光および前記外光に対応して前記吸収膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
基材は、光を透過するとはいうものの、入射した光を僅かに反射する。この構成によれば、凹部または凸部の一部には、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜が形成されている。これによって、反射型スクリーンは、吸収膜が形成されている領域において、第1面側から入射する外光を基材に入射する前に吸収することができるので、基材を透過する際の外光の反射を低減できる。また、反射膜は、第2面に形成されているので、投射光は、反射膜によって確実に反射される。よって、反射型スクリーンは、コントラストの低下を抑制し、より鮮明な画像を観察者に提供することが可能となる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る反射型スクリーンにおいて、前記第2面に形成された前記吸収膜または前記反射膜には、シート状の補強部材が積層されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、反射型スクリーンは、補強部材によって補強されるので、基材の厚さを薄く形成しても強度を確保することができる。よって、反射型スクリーンは、基材を透過する際の投射光や反射した投射光の屈折に伴う画像のズレを抑制し、高品質な画像を観察者に提供することが可能となる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る反射型スクリーンの製造方法は、前記第1面に前記吸収膜または前記反射膜のいずれか一方を形成する第1膜形成工程と、前記第2面に、前記吸収膜または前記反射膜のいずれか他方を形成する第2膜形成工程と、前記第1面が複数の前記凹部または前記凸部を有するように前記基材を変形させる基材変形工程と、前記凹部または前記凸部の前記吸収膜または前記反射膜の一部を剥離する膜剥離工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1膜形成工程および第2膜形成工程は、基材変形工程の前に設けられているので、凹部や凸部が形成された基材上に反射膜あるいは吸収膜を形成する場合に比べて、それぞれの膜厚を均一に形成することができる。よって、投射光を反射する反射特性や外光を吸収する吸収特性の面内ばらつきを抑制した良好な反射型スクリーンの提供が可能となる。
また、凹部や凸部の形状の影響を受けることなく、反射膜および吸収膜を形成できるので、反射膜および吸収膜を形成する際の基材の姿勢等の制約が緩和される。よって、複数の反射型スクリーンが形成可能な長尺状の基材に連続して反射膜および吸収膜を形成することができる。したがって、反射型スクリーンとなるサイズの基材単品毎に反射膜あるいは吸収膜を形成する枚葉式に比べて生産性向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図。
【図2】第1実施形態の反射型スクリーンの製造方法の手順を示す模式図。
【図3】第1実施形態のエンボス加工装置による基材変形工程を説明する模式図。
【図4】第1実施形態の基材変形工程後のスクリーン基材を前方から見た模式図。
【図5】第1実施形態のドライアイス粒子吐出工程を説明する模式図。
【図6】第1実施形態の反射型スクリーンが設置された状態を模式的に示す断面図。
【図7】第2実施形態の反射型スクリーンの一部を模式的に示す断面図。
【図8】変形例の反射型スクリーンの一部を模式的に示す断面図。
【図9】変形例の反射型スクリーンの一部を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る反射型スクリーンについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の反射型スクリーン1が設置された状態を示す模式図である。本実施形態の反射型スクリーン1は、図示しないフレーム等に保持されており、図1に示すように、床FLに対して略垂直に起立して設置される。そして、反射型スクリーン1は、この反射型スクリーン1に対して近接し、床や机上等に配置されたプロジェクターPJから射出された投射光L1を観察側に反射する。なお、図1を含む各図面では、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものと適宜異ならせて示している。また、以下において、説明の便宜上、床FLに対する垂直方向を上下方向、起立された状態の反射型スクリーン1の床側を下側(−Y側)、反射型スクリーン1が投射光L1を反射する方向を前方向(+Z方向)、Y方向およびZ方向に直交する方向を横方向(X方向)として記載する。
【0018】
先ず、本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法について説明する。
本実施形態の反射型スクリーン1は、シート状の基材(以下、「スクリーン基材」という)に投射光L1を反射する反射膜等が形成されて構成される。スクリーン基材は、反射型スクリーン1の形成領域を多数備え、反射型スクリーン1の上下方向となる方向が繋がる長尺状に形成されている。このスクリーン基材は、光透過性を有する、例えば、板厚が0.1mm以下の塩化ビニル樹脂で形成され、ロール状に巻き取られた状態から引き出されて加工される。なお、スクリーン基材は、十分な光透過性を有する部材に限らず、半透明状の部材を用いてもよく、また、表面の粗さが光沢や艶消し等の部材を用いることもできる。
【0019】
反射型スクリーン1の製造方法は、第1膜形成工程としての蒸着工程、第2膜形成工程としての吸収膜形成工程、補強部材貼着工程、基材変形工程、膜剥離工程、および切断工程を備えている。各工程には、図示しない搬送装置が備えられており、ロール状に巻き取れたスクリーン基材は、この搬送装置によって順次引き出し、巻き取りが行われて加工される。
【0020】
図2(a)〜(e)は、反射型スクリーン1の製造方法の手順を示す模式図である。
スクリーン基材2は、図2(a)に示すように、観察面側となる第1面2A、および第1面の反対側の第2面2Bを有している。
蒸着工程は、図2(a)に示すように、反射膜3としてのアルミニウム等の材料を、蒸着によって第2面2Bに形成する工程である。
【0021】
図示は省略するが、蒸着工程において、ロール状に巻き取れたスクリーン基材2を第2面2Bが蒸着材料の上方に水平となるように引き出し、先端を巻き取り側のロール部材に取り付ける。次に、第2面2Bの下方から蒸着材料を第2面2Bに蒸着させ、反射膜3を第2面2Bの略全面に形成する。そして、反射膜3が形成されたスクリーン基材2を巻き取り、反射膜3が形成されていないスクリーン基材2を引き出し、連続的に反射膜3を形成する。なお、第2面2Bの略全面とは、入射する投射光L1を反射するための反射型スクリーン1としての有効範囲であり、製造上、反射膜3が形成されない外縁部等は含まない。
【0022】
吸収膜形成工程は、図2(b)に示すように、第1面2A上に光吸収性を有する黒色塗料を塗布し、吸収膜4を形成する工程である。吸収膜形成工程は、塗布工程および乾燥工程を備え、塗布工程から乾燥工程が連続して行われるように、各工程の装置が隣接して設けられている。
塗布工程において、ロール状に巻き取られ、反射膜3が形成されたスクリーン基材2を順次引き出し、第1面2A上に黒色塗料を塗布する。次に、乾燥工程にて、黒色塗料が塗布されたスクリーン基材2を乾燥炉に搬送し、黒色塗料を乾燥して吸収膜4として形成した後、ロール状に巻き取る。
【0023】
補強部材貼着工程は、図2(c)に示すように、第2面2Bに形成された反射膜3上にシート状の補強部材5を貼着する工程である。補強部材5は、板厚が0.5mm程度の黒色の塩化ビニル樹脂で形成され、スクリーン基材2より軟質の部材が用いられている。図示は省略するが、補強部材5は、一方の面に粘着剤が形成されており、この粘着剤の外面には保護シートが配置され、ロール状に巻き取られている。補強部材貼着工程において、保護シートの先端を剥がし、粘着剤と反射膜3とが当接するように補強部材5を反射膜3に積層する。そして、補強部材5とスクリーン基材2とをローラーによって加圧すると共に、補強部材5およびスクリーン基材2を搬送して補強部材5を反射膜3に連続して貼り付ける。
【0024】
基材変形工程は、図2(d)に示すように、第1面2Aが複数の凹部6を有するようにスクリーン基材2を変形させる工程であり、エンボス加工装置が用いられる。
図3は、エンボス加工装置による基材変形工程を説明する模式図である。図3に示すように、エンボス加工装置は、弾性部材等で形成された受けローラー10、および外周に凹部6の形状に近似する凸部111が連続的に形成されたエンボスローラー11を備えている。受けローラー10およびエンボスローラー11は、互いに対向して配置され、それぞれ中心軸を中心に回転自在に保持されている。
【0025】
そして、基材変形工程にて、反射膜3、吸収膜4および補強部材5が積層されたスクリーン基材2を受けローラー10とエンボスローラー11とに挟持させる。具体的に、図3に示すように、補強部材5が受けローラー10に当接し、吸収膜4の表面4Aがエンボスローラー11に当接するように挟持させる。そして、エンボスローラー11を回転させて表面4Aに凸部111を押圧し、凸部111の形状を連続して表面4Aに転写する。その結果、スクリーン基材2の第1面2Aには、凹部6が形成され、吸収膜4、反射膜3および補強部材5は、凹部6に倣って変形する。
【0026】
凹部6は、図2(d)に示すように、略半球状に形成され、X方向およびY方向に規則的に多数設けられる。
図4は、基材変形工程後のスクリーン基材2を前方から見た模式図であり、1枚分の反射型スクリーン1を見た図である。具体的に、図4は、凹部6の中心線を結ぶ線を一点鎖線で示し、一部の凹部6を示した図である。図4に示すように、凹部6は、X方向において、反射型スクリーン1のX方向の中心線Y1上の所定の位置を中心として円弧状に配列し、Y方向において、この中心を同心とする同心円状に配列するように形成される。本実施形態の凹部6は、ピッチ300μm程度、深さ185μm程度となるように形成される。
【0027】
図2に戻って、基材変形工程の後に、図2(e)に示すように、膜剥離工程にて、凹部6の吸収膜4の一部を剥離する。本実施形態では、ブラスト加工、具体的には、ドライアイスブラスト法を用いて、吸収膜4の一部を剥離する。ドライアイスブラスト法は、研削材としてのドライアイス粒子を圧縮空気によってノズルから対象物に衝突させ、衝突力と同時に、界面に到達したドライアイス粒子が昇華する際の膨張エネルギーを利用して膜を剥離する。
【0028】
膜剥離工程は、ドライアイス粒子吐出工程およびスクリーン基材搬送工程を備える。
図5は、ドライアイス粒子吐出工程を説明する模式図である。
図5に示すように、ノズル21は、ドライアイス粒子が基材変形工程前の第1面2Aに対して斜めから衝突するように設定され、±X方向に移動可能に構成されている。具体的に、図5に示すように、ノズル21は、ドライアイス粒子が前方(+Z方向)から各凹部6の+Y側の内面に形成された吸収膜4に衝突するように傾斜して設定されており、ドライアイス粒子を吐出しながら±X方向に規則的に並ぶ凹部6に沿って移動する。そして、ドライアイス粒子吐出工程にて、ノズル21が−X側から+X側、あるいは+X側から−X側に向かって移動しながら、±X方向に並ぶ複数列の凹部6にドライアイス粒子を吐出し、各凹部6の+Y側の内面に形成された吸収膜4を剥離させる。
【0029】
次に、スクリーン基材搬送工程にて、ドライアイス粒子吐出工程で±X方向に並ぶ複数列の凹部6が加工された後、加工された凹部6に隣接する未加工の凹部6にドライアイス粒子が吐出されるようにスクリーン基材2を+Y方向に搬送する。そして、ドライアイス粒子吐出工程およびスクリーン基材搬送工程を順次行うことによって、凹部6を連続的に加工する。
【0030】
膜剥離工程の結果、吸収膜4の一部が剥離された凹部6の+Y側の内面は、スクリーン基材2が露出する露出面6Aとして形成される。一方、凹部6の−Y側の内面は、吸収膜4の吸収面41Aを有して残存する。
【0031】
以上の工程にて、長尺状のスクリーン基材2には、複数の反射型スクリーン1が形成される。
切断工程は、この複数の反射型スクリーン1が形成されたスクリーン基材2から1つの反射型スクリーン1、例えば、100インチサイズの反射型スクリーン1となるように切断する。そして、反射型スクリーン1の製造が終了する。
【0032】
次に、本実施形態で製造された反射型スクリーン1について説明する。
図6は、反射型スクリーン1が設置された状態を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、反射型スクリーン1は、凹部6の露出面6Aが吸収面41Aの上側となるように設置される。そして、反射型スクリーン1は、反射型スクリーン1の前方の下側に配置されたプロジェクターPJから斜め上方に射出された投射光L1を、観察側(+Z方向側)に反射する。
【0033】
反射型スクリーン1に射出された投射光L1は、投射光L1に対して対向する位置となる露出面6Aに入射する。一方、投射光L1に対して、露出面6Aの影となる吸収面41Aには、投射光L1は、殆ど入射しない。
【0034】
具体的に、図6に示すように、複数の凹部6のうちの1つの凹部6(凹部61とする)に注目して説明する。なお、凹部61の下方に隣接する凹部6を凹部62とする。
凹部61に向かう投射光L11の上側の光は、凹部61の露出面6Aに入射する。一方、凹部61に向かう投射光L11の下側の光は、凹部62の露出面6Aに入射する。つまり、凹部62の露出面6Aの影になる凹部61の吸収面41Aには、投射光L11は、殆ど入射しない。そして、凹部61,62の露出面6Aに入射した投射光L11は、スクリーン基材2を透過した後、反射膜3にて基材変形工程前の第1面2Aに対する法線Z1に近い方向に反射される。
同様に、凹部61,62以外の凹部6の露出面6Aに入射した投射光L11は、スクリーン基材2を透過した後、反射膜3にて法線Z1に近い方向に反射される。
【0035】
ところで、図6に示すように、反射型スクリーン1には、投射光L1以外に天井灯等から射出された外光L2が上方(+Y方向)から入射する。反射型スクリーン1に入射する外光L2は、外光L2に対して対向する位置となる吸収面41Aに多くが入射し、外光L2に対して、吸収面41Aの影となる露出面6Aには、僅かな光が入射する。そして、吸収面41Aに入射した外光L2は、吸収膜4に吸収され、観察側に反射されることが抑制される。
【0036】
このように、第2面2Bには、反射膜3が形成され、凹部6の一部には、所定方向から入射する投射光L1、および投射光L1と異なる方向から入射する外光L2に対応して吸収膜4が形成されている。そして、反射型スクリーン1は、投射光L1を観察側のより法線Z1に近い方向に反射すると共に、外光L2の反射を抑制する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の反射型スクリーン1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)反射型スクリーン1は、投射光L1を法線Z1に近い方向に反射するので、観察者により明るい画像を提供できる。また、反射型スクリーン1は、反射型スクリーン1に近接して配置されたプロジェクターPJ、つまり短焦点レンズを備えたプロジェクターに対して観察側に効率よく投射光L1を反射できる。さらに、反射型スクリーン1は、天井灯等の投射光L1とは異なる方向から入射する外光L2の反射を抑制するので、観察者が観察する画像のコントラストの低下を抑制することが可能となる。
【0038】
(2)スクリーン基材2の第2面2Bの略全面には、反射膜3が形成されているので、反射型スクリーン1は、投射光L1を全面に亘って確実に反射することが可能となり、観察面内における明るさのばらつきを抑制することが可能となる。
【0039】
(3)スクリーン基材2は、光を透過するとはいうものの、入射した光を僅かに反射する。反射型スクリーン1は、吸収膜4が形成されている領域において、外光L2をスクリーン基材2に入射する前に吸収することができるので、スクリーン基材2を透過する際の外光L2の反射を抑制できる。また、反射膜3は、第2面2Bの略全面に形成されているので、投射光L1は、反射膜3によって確実に反射される。よって、反射型スクリーン1は、コントラストの低下をさらに抑制し、より鮮明な画像を観察者に提供することが可能となる。
【0040】
(4)反射型スクリーン1は、補強部材5によって補強されるので、スクリーン基材2の厚さを薄く形成しても強度を確保することができる。よって、反射型スクリーン1は、スクリーン基材2を透過する際の投射光L1や反射した投射光L1の屈折に伴う画像のズレを抑制し、高品質な画像を観察者に提供することが可能となる。
【0041】
(5)スクリーン基材2の種類を選択することで、使用環境下に適応した反射特性を有する反射型スクリーン1の提供が可能となる。例えば、スクリーン基材2として半透明状の部材を用いたり、艶消しを有するように表面を荒らした部材を用いたりすることで、明るい環境において、反射型スクリーン1の一部が他の部分より明るく見えるホットスポットやぎらつきを抑制して、投射光L1を効率よく観察者に反射することが可能となる。
【0042】
(6)本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法によれば、第1膜形成工程および第2膜形成工程は、基材変形工程の前に設けられているので、凹部6が形成されたスクリーン基材2上に反射膜3あるいは吸収膜4を形成する場合に比べて、それぞれの膜厚を均一にすることができる。よって、投射光L1を反射する反射特性や外光を吸収する吸収特性の面内ばらつきを抑制した良好な反射型スクリーン1の提供が可能となる。
【0043】
(7)本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法によれば、凹部6の影響を受けることなく、反射膜3および吸収膜4を形成できるので、反射膜3および吸収膜4を形成する際のスクリーン基材2の姿勢等の制約が緩和される。よって、複数の反射型スクリーン1が形成可能な長尺状のスクリーン基材2に連続して反射膜3および吸収膜4を形成することができる。したがって、反射型スクリーン1となるサイズのスクリーン基材2単品毎に反射膜3あるいは吸収膜4を形成する枚葉式に比べて生産性向上が可能となる。
【0044】
(8)本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法によれば、膜剥離工程は、ブラスト加工によって、研削材を第1面2Aに対して斜めから凹部6に衝突させるので、多くの工程を経ずに露出面6Aおよび吸収面41Aを形成することができ、生産性向上が図れる。
【0045】
(9)本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法によれば、膜剥離工程は、ドライアイスブラスト法を用いているので、加工後研削材が昇華するため、残留物が低減し、残留物処理の簡素化や環境負荷の低減が図れる。
【0046】
(10)反射型スクリーン1は、上述した製造方法によって製造されているので、低コストで輝度やコントラスト等の品質が良好な画像を表示することが可能となる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る反射型スクリーン100について、図面を参照して説明する。
以下の説明では、第1実施形態と同様の構造および同様の部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施形態の反射型スクリーン100は、第1実施形態の反射型スクリーン1に対して反射膜3および吸収膜4が形成される面が異なる。
【0048】
図7は、反射型スクリーン100の一部を模式的に示す断面図である。反射型スクリーン100は、第1実施形態の反射型スクリーン1と同様のスクリーン基材2を有して構成され、図7に示すように、スクリーン基材2の凹部6の一部に反射膜3が形成され、第2面2Bに吸収膜4が形成されている。
【0049】
先ず、本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法について説明する。
反射型スクリーン100の製造方法は、第1実施形態と同様に、第1膜形成工程、第2膜形成工程、補強部材貼着工程、基材変形工程、膜剥離工程、および切断工程を備えている。
【0050】
第1膜形成工程は、第1実施形態の吸収膜形成工程と同様の工程であり、第2面2B上に光吸収性を有する黒色塗料を塗布して乾燥させ、吸収膜4を形成する。
第2膜形成工程は、第1実施形態の蒸着工程と同様の工程であり、反射膜3としてのアルミニウム等の材料を、蒸着によって第1面2Aに形成する。
【0051】
補強部材貼着工程は、第2面2Bに形成された吸収膜4上にシート状の補強部材5を貼着する工程であり、第1実施形態と同様に、ローラーによる加圧によって貼着する。補強部材5は、第1実施形態と同様に、板厚が0.5mm程度の黒色の塩化ビニル樹脂で形成され、スクリーン基材2より軟質の部材が用いられている。
基材変形工程は、第1実施形態と同様に、エンボス加工装置を用いて、第1面2Aが複数の凹部6を有するようにスクリーン基材2を変形させる工程である。
【0052】
膜剥離工程は、凹部6の反射膜3の一部を剥離する工程であり、第1実施形態と同様に、ドライアイスブラスト法を用いる。そして、膜剥離工程の結果、図7に示すように、凹部6の−Y側の内面は、反射膜3が剥離されてスクリーン基材2が露出し、露出面6Bが形成され、凹部6の+Y側の内面は、反射膜3が反射面3Aを有して残存する。
以降は、第1実施形態と同様に、切断工程を経て反射型スクリーン100の製造が終了する。
【0053】
次に、本実施形態で製造された反射型スクリーン100について説明する。
図7に示すように、反射型スクリーン100は、凹部6の反射面3Aが露出面6Bの上側となるように設置される。反射型スクリーン100に射出された投射光L1は、投射光L1に対して対向する位置となる反射面3Aに入射し、観察側のより法線Z1に近い方向に反射する。一方、投射光L1に対して、反射面3Aの影となる露出面6Bには、投射光L1は、殆ど入射しない。
【0054】
一方、図7に示すように、反射型スクリーン100に入射する天井灯等から射出された外光L2は、外光L2に対して対向する位置となる露出面6Bに多くが入射し、外光L2に対して、露出面6Bの影となる反射面3Aには、僅かな光が入射する。そして、露出面6Bに入射した外光L2は、スクリーン基材2を透過した後、吸収膜4に吸収され、観察側に反射されることが抑制される。
【0055】
このように、第2面2Bには、吸収膜4が形成され、凹部6の一部には、所定方向から入射する投射光L1、および投射光L1と異なる方向から入射する外光L2に対応して反射膜3が形成されている。そして、反射型スクリーン100は、投射光L1を観察側のより法線Z1に近い方向に反射すると共に、外光L2の反射を抑制する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の反射型スクリーン100によれば、第1実施形態の効果(1)、(4)〜(7)、(9)、(10)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)反射型スクリーン100は、第2面2Bの略全面に吸収膜4が形成されているので、投射光L1と異なる方向から入射する外光L2を全面に亘ってより多く吸収し、その反射光を抑制することが可能となる。よって、観察面内におけるコントラストのばらつきを抑制する反射型スクリーン100を構成することが可能となる。
【0057】
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
(変形例1)
前記実施形態の反射型スクリーン1,100は、基材変形工程にて、複数の凹部6を有するように形成されているが、複数の凸部を有するように形成し、膜剥離工程にて、この凸部に形成された膜の一部を剥離するように構成してもよい。
【0058】
図8、図9は、変形例1の反射型スクリーン110,120の一部をそれぞれ模式的に示す断面図である。図8、図9に示すように、スクリーン基材2は、複数の略半球状の凸部7を有するように形成されている。
反射型スクリーン110は、図8に示すように、凸部7の+Y側の面に吸収膜4が形成され、第2面2Bの略全面に反射膜3が形成されている。そして、反射型スクリーン110は、スクリーン基材2を透過した投射光L1を反射膜3によって観察側に反射し、上方(+Y方向)からの外光L2を吸収膜4によって吸収する。
【0059】
反射型スクリーン120は、図9に示すように、凸部7の−Y側の面に反射膜3が形成され、第2面2Bの略全面に吸収膜4が形成されている。そして、反射型スクリーン120は、投射光L1を反射膜3によって観察側に反射し、上方(+Y方向)からの外光L2をスクリーン基材2にて透過させた後、吸収膜4によって吸収する。なお、この凸部7の形状は、略半球状に限らず、断面視における三角形状、いわゆるプリズム状の形状等であってもよい。
また、凹部6と凸部7とが混在するようにスクリーン基材2を形成し、投射光L1を反射し、外光L2を吸収するように、反射膜3および吸収膜4を形成するように構成してもよい。
【0060】
(変形例2)
前記実施形態の凹部6、凸部7は、中心線Y1上の所定の位置を中心として円弧状に配列されているが、この配列に限らず、上下方向および横方向に直線状に配列するように形成してもよい。
【0061】
(変形例3)
前記実施形態の反射型スクリーン1,100の製造方法は、第1膜形成工程、第2膜形成工程の順で構成されているが、第2膜形成工程、第1膜形成工程の順で構成してもよい。
【0062】
(変形例4)
前記実施形態の反射膜3は、蒸着によって形成されているが、アルミニウム箔等の反射性材料を含む塗料を、塗膜の厚さが5μm〜10μm程度の厚さとなるように塗布することによって形成してもよい。この塗料の塗布方法としては、スプレー等による噴霧方法やインクジェット等による液滴吐出法等が考えられる。
【0063】
(変形例5)
前記実施形態の膜剥離工程は、ドライアイスブラスト法を用いているが、他の方法、例えばサンドブラスト法等を用いてもよい。また、ブラスト加工に限らず、レーザー光を用いる加工でもよい。
【0064】
(変形例6)
前記実施形態の各工程におけるスクリーン基材2の搬送方向を同一方向に設定し、各工程が連続的に繋がるように構成してもよい。例えば、基材変形工程および膜剥離工程が一連に加工されるように構成してもよい。
【0065】
(変形例7)
前記実施形態のスクリーン基材2は、反射型スクリーン1の上下方向となる方向が繋がる長尺状に形成されているが、反射型スクリーン1の横方向となる方向が繋がる長尺状となるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,100,110,120…反射型スクリーン、2…スクリーン基材、2A…第1面、2B…第2面、3…反射膜、3A…反射面、4…吸収膜、4A…表面、5…補強部材、6,61,62…凹部、6A,6B…露出面、7…凸部、41A…吸収面、L1,L11…投射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光を反射する反射型スクリーンであって、
前記投射光を透過し、複数の凹部または複数の凸部が形成された第1面、および前記第1面と反対側の第2面を有するシート状の基材と、
前記投射光を反射する反射膜と、
前記投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜と、
を備え、
前記第2面には、前記吸収膜および前記反射膜のいずれか一方が形成され、前記凹部または前記凸部の一部には、所定方向から入射する前記投射光および前記外光に対応して前記吸収膜または前記反射膜のいずれか他方が形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンであって、
前記第2面には、前記反射膜が形成され、前記凹部または前記凸部の一部には、所定方向から入射する前記投射光および前記外光に対応して前記吸収膜が形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の反射型スクリーンであって、
前記第2面に形成された前記吸収膜または前記反射膜には、シート状の補強部材が積層されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記第1面に前記吸収膜または前記反射膜のいずれか一方を形成する第1膜形成工程と、
前記第2面に、前記吸収膜または前記反射膜のいずれか他方を形成する第2膜形成工程と、
前記第1面が複数の前記凹部または前記凸部を有するように前記基材を変形させる基材変形工程と、
前記凹部または前記凸部の前記吸収膜または前記反射膜の一部を剥離する膜剥離工程と、
を備えることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−53388(P2011−53388A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201338(P2009−201338)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】