説明

反射材

【課題】オレフィン系樹脂を用いた反射材において、耐熱性に優れ、微粉状充填剤の分散による優れた反射性を発揮することができる、新たな反射材を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(a)と、該樹脂(a)よりも極性が大きく、該樹脂(a)に非相溶な樹脂(b)とを含有し、且つ少なくとも樹脂(b)よりもポリオレフィン系樹脂(a)を多く含有する混合樹脂(A)、微粉状充填剤(B)、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、内部に空隙を有する樹脂層を備えることを特徴とする反射材を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、照明器具、照明看板などの構成部材として好適に使用することができる反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめ、照明器具、照明看板など多くの分野で反射材が使用されている。最近では、液晶ディスプレイの分野において、装置の大型化および表示性能の高度化が進み、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させることが求められるようになり、反射材に対しても、より一層優れた光反射性(単に「反射性」ともいう)が求められるようになってきている。
【0003】
反射材としては、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂を主原料とする白色ポリエステルフィルムを用いた液晶ディスプレイ用の反射フィルムが知られている(特許文献1参照)。
しかし、反射材の材料として芳香族ポリエステル系樹脂を用いた場合、芳香族ポリエステル系樹脂の分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によって、フィルムが劣化、黄変して、反射フィルムの光反射性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、例えば分子鎖中に芳香環を含まない樹脂をベース樹脂とする反射フィルムが提案された。例えばポリプロピレン樹脂に充填剤を添加して形成されたフィルムを延伸することによって、フィルム内に微細な空隙を形成させ、光散乱反射を生じさせた反射材(特許文献2参照)や、オレフィン系樹脂とフィラーを含有する基材層と、オレフィン系樹脂を含む層より構成された積層構成のオレフィン系樹脂光反射体などが提案されている(特許文献3参照)。
このようなオレフィン系樹脂を用いた反射フィルムは、紫外線によるフィルムの劣化や黄変の問題が少ないという特徴を有する。
【0005】
さらに、無機粉末を多量には含まない樹脂組成物からなる反射シートとして、ポリプロピレン樹脂と、これと非相溶性の樹脂の少なくとも1種以上を含む、熱収縮率が低減された二軸延伸反射シートが知られている(特許文献4参照)。
この反射シートは、無機粉末を多量に含まなくとも、坪量、密度が同程度の従来の反射シートに比べてより高い反射率を示すという特徴を備える。
【0006】
さらにまた、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含有する樹脂組成物を射出成形してなる、耐熱性、成形性、外観などに優れた反射板なども知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−239540号公報
【特許文献2】特開平11−174213号公報
【特許文献3】特開2005−031653号公報
【特許文献4】特開2008−158134号公報
【特許文献5】特開2003−020373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オレフィン系樹脂を用いた反射材は、上述のように、紫外線によるフィルムの劣化や黄変の問題が少なく、その有用性は高い。しかし、耐熱性が十分ではないので、耐熱性が要求される液晶ディスプレイの構成部材として使用した場合、熱によってフィルムが収縮したり、波打ちが発生したりする等の問題を抱えていた。特に近年、液晶ディスプレイや照明器具或いは照明看板などの分野では、LEDなどの高温発熱を伴う光源が使用されるようになり、反射材にはより一層の耐熱性が求められるようになっている。
【0009】
上述した従来技術の中で、例えば特許文献5に記載の反射板や、スチレン−アクリル酸共重合体(SAA)、スチレンーメタクリル酸共重合体(SMAA)およびスチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)などの変性成分を有するスチレン系共重合体は、耐熱性の向上に有効である。
しかしながら、上記の変性成分を有するスチレン系共重合体は、微粉状充填材(酸化チタン)と共にベース樹脂に混合すると、微粉状充填材がスチレン系共重合体に偏在するようになる結果、分散性が悪化することで内部への空隙形成が損なわれ、反射性能の劣化につながることが分かってきた。これは、上記の変性成分を有するスチレン系共重合体等が、極性が高いため、微粉状充填材が極性の高いスチレン系共重合体に偏在するようになり、分散性が悪化することで内部への空隙形成が阻害されるためであると考えられる。
【0010】
そこで本発明は、オレフィン系樹脂を用いた反射材において、耐熱性に優れており、しかも、微粉状充填材の偏在を抑制して分散させ、内部への空隙形成を阻害されないようにすることで、微粉状充填剤の分散による優れた反射性を発揮することができる、新たな反射材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、該樹脂(a)よりも極性が大きく、該樹脂(a)に非相溶な樹脂(b)とを含有し、且つ少なくとも樹脂(b)よりもポリオレフィン系樹脂(a)を多く含有する混合樹脂(A)、微粉状充填剤(B)、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、内部に空隙を有する樹脂層を備えることを特徴とする反射材を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明が提案する反射材においては、ベース樹脂としてのポリオレフィン系樹脂(a)に、これよりも極性が大きく、且つこれと非相溶な樹脂(b)を加えることで、耐熱性を向上させることができる。さらに、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)を加えることで、ベース樹脂であるポリオレフィン系樹脂(a)の極性を高めることができ、非相溶な樹脂(b)、言い換えれば海島構造の島部分に微粉状充填剤(B)が偏在するのを抑制して分散させることができるため、内部への空隙形成が阻害されないようにすることができ、その結果、微粉状充填剤の分散による優れた反射性を発揮させることができる。よって、本発明が提案する反射材は、液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板などの反射材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で作製した単層シートのSEM(走査型電子顕微鏡)写真(2500倍)である。
【図2】実施例2で作製した単層シートのSEM(走査型電子顕微鏡)写真(2500倍)である。
【図3】実施例3で作製した単層シートのSEM(走査型電子顕微鏡)写真(2500倍)である。
【図4】実施例4で作製した単層シートのSEM(走査型電子顕微鏡)写真(2500倍)である。
【図5】比較例1で作製した単層シートのSEM(走査型電子顕微鏡)写真(2500倍)である。
【図6】比較例2で作製した単層シートのSEM(走査型電子顕微鏡)写真(2500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例としての反射材(「本反射材」と称する)について説明する。但し、本発明が、この本反射材に限定されるものではない。
【0015】
≪本反射材≫
本反射材は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、これよりも極性が大きく、これと非相溶な樹脂(b)とを含有する混合樹脂(A)、微粉状充填剤(B)、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、且つ内部に空隙を有する樹脂層Aを備えた反射材である。
【0016】
混合樹脂(A)は、極性の異なる2種以上の樹脂を含有する混合樹脂である。このような混合樹脂(A)に対して、微粉状充填剤を混合させると、極性のより高い樹脂(b)に該微粉状充填剤が偏在するようになり、混合樹脂(A)の分散性が著しく低下するという課題を本発明者は見出した。
この課題に対して、混合樹脂(A)の分散性を改良するために、樹脂(a)と樹脂(b)との分散性を改良し得る改質剤を添加することが考えられた。そこで、改質剤を添加して混合樹脂(A)の分散性を改良してみたが、微粉状充填剤の偏在を抑制することはできなかった。このような混合系においては、微粉状充填剤が偏在している樹脂(b)と該微粉状充填剤との分散性を改良する必要があり、この分散性を改良することで、内部への空隙形成が損なわれるのを防止できることを本発明者は見出したのである。
以上のような理由から、本反射材においては、混合樹脂(A)に酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)を加えることが重要である。
【0017】
<混合樹脂(A)>
混合樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、当該樹脂(a)よりも極性が大きく、且つ当該樹脂(a)に非相溶な樹脂(b)と、を含有する混合樹脂である。
【0018】
(ポリオレフィン系樹脂(a))
上記ポリオレフィン系樹脂(a)としては、例えばポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン樹脂や、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂や、エチレン− 環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィン系樹脂(上述したシクロオレフィン系樹脂を含む。)や、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等のオレフィン系エラストマーなどを挙げることができる。これらの中でも、機械的性質、柔軟性などから、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂が好ましく、ポリプロピレンが最も好ましい。
【0019】
(樹脂(b))
樹脂(b)は、ポリオレフィン系樹脂(a)よりも極性が大きく、これと非相溶な樹脂であればよい。このような樹脂としては、例えば、α−メチルスチレン、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの共重合成分を有する樹脂を挙げることができる。具体的には、例えばスチレン−α−メチルスチレン共重合体(SAMS)、スチレン−アクリル酸共重合体(SAA)、スチレンーメタクリル酸共重合体(SMAA)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)などを好ましい例として挙げることができる。これらの群より選択された1種以上のスチレン系共重合体を採用することにより、本反射材に、優れた反射性能、剛性、さらには耐熱性をも付与することができる。
【0020】
(配合割合)
ポリオレフィン系樹脂(a)と樹脂(b)との混合割合に関しては、樹脂(b)よりもポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が多いことが、一定以上の対折性、靭性を保つ上で重要であり、中でも質量割合で90:10〜65:35であるのが好ましく、その中でも90:10〜75:25であるのが好ましい。
いずれにしろ、混合樹脂(A)において、ポリオレフィン系樹脂(a)がベース樹脂であり、樹脂(b)よりも多成分であるから、海島構造における海成分を構成することになる。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂(a)と樹脂(b)との混合割合に関しては、樹脂(b)よりもポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が多いことが、一定以上の機械的強度(対折性)を保つ上で重要であり、中でも質量割合で90:10〜65:35であるのが好ましく、その中でも90:10〜75:25であるのが好ましい。
いずれにしろ、混合樹脂(A)において、ポリオレフィン系樹脂(a)がベース樹脂であり、樹脂(b)よりも多成分であるから、海島構造における海成分を構成することになる。
【0022】
<微粉状充填剤>
上記樹脂層Aは、光反射性を得るために、微粉状充填剤を含有することを要する。
微粉状充填剤を含有することで、樹脂との屈折率差による屈折散乱のほか、微粉状充填剤の周囲に形成される空洞との屈折率差による屈折散乱、さらに微粉状充填剤の周囲に形成される空洞と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱などから光反射性を得ることができる。
【0023】
微粉状充填剤としては、無機質微粉体、有機質微粉体等を挙げることができる。
無機質微粉体としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等を挙げることができる。これらは、いずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、シートを構成する樹脂との屈折率差を考慮すると、屈折率の大きいものが好ましく、屈折率が1.6以上である、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン又は酸化亜鉛を用いることが特に好ましい。
【0024】
中でも、酸化チタンは、他の無機充填剤に比べて屈折率が顕著に高く、ベース樹脂との屈折率差を顕著に大きくすることができるため、他の充填剤を使用した場合よりも少ない配合量で優れた反射性を得ることができる。さらに、酸化チタンを用いることにより、反射材の厚みを薄くしても高い光反射性を得ることができる。
従って、少なくとも酸化チタンを含む充填剤を用いるのがより好ましく、この場合、酸化チタンの量は、無機充填剤の合計質量の30%以上、または有機充填剤と無機充填剤とを組み合わせて使用する場合はその合計質量の30%以上とするのが好ましい。
【0025】
また、無機質微粉体の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用してもよい。
【0026】
他方、上記の有機質微粉体としては、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等が挙げられ、これらは、いずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記微粉状充填剤は、粒径が0.05μm〜15μmであることが好ましく、より好ましくは粒径が0.1μm以上或いは10μm以下である。充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、オレフィン系樹脂への分散性が低下することがないので、均質なシートが得られる。また粒径が15μm以下であれば、オレフィン系樹脂と微粉状充填剤との界面が緻密に形成されて、高反射性の反射シートが得られる。
【0028】
また、微粉状充填剤の量としては、反射材の光反射性、機械的強度、生産性等を考慮すると、樹脂層A全体の質量に対して、10〜80質量%であるのが好ましく、中でも20質量%以上或いは70質量%以下であるのがさらに好ましい。微粉状充填剤の含有量が10質量%以上であれば、ベース樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができ、反射材に高反射性を付与することができる。微粉状充填剤の含有量が80質量%以下であれば、反射シートに必要な機械的強度を確保することができる。
【0029】
<酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)>
酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、ポリオレフィン系樹脂(a)の極性を高めることができる樹脂であればよく、樹脂(b)よりも極性が高く、且つ、ポリオレフィン系樹脂(a)と相溶する樹脂であるのが好ましい。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂(a)と相溶する樹脂としては、例えば主鎖のポリオレフィンがポリオレフィン系樹脂(a)と同じポリオレフィンを含む樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(a)としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)として、例えばポリプロピレン−無水マレイン酸共重合体、ポリプロピレン−マレイン酸共重合体、ポリプロピレン−メタクリル酸共重合体、およびポリプロピレン−アクリル酸共重合体などを好ましい例として挙げることができる。中でも、微粉状充填剤との界面で延伸により空隙を形成する場合には弾性率が高いほうが好ましいことから、主鎖の構造がホモポリプロピレンおよびポリプロピレン−ポリエチレン共重合体であるものが特に好ましい。
【0031】
また、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)中の変性成分のモル分率が、樹脂層A全体に対して一定以上であることが好ましく、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)中の変性成分のモル分率が0.05〜0.30%であり、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)の樹脂層Aに対する添加量が1.0〜10.0wt%であるもの特に好ましい。このようにすることで、微粉状充填剤の分散性を十分改善することができる。
【0032】
<他の樹脂>
上記樹脂層Aは、混合樹脂(A)以外にも、他の樹脂を含有してもよい。例えば熱可塑性エラストマーとして、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等を挙げることができる。これらの中でも、上記樹脂(b)として、スチレン系共重合体を使用した場合においては、スチレン系エラストマーを含有することが好ましい。
【0033】
前記スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンとブタジエン若しくはイソプレン等の共役ジエンの共重合体、及び/又は、その水素添加物等を挙げることができる。スチレン系エラストマーは、スチレンをハードセグメント、共役ジエンをソフトセグメントとしたブロック共重合体であり、加硫工程が不用であり、好ましい。また、水素添加をしたものは熱安定性が高く、さらに好ましい。スチレン系エラストマーの例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体が挙げられる。特に、水素添加により共役ジエン成分の二重結合をなくした、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(水素添加されたスチレン系エラストマーともいう。)が好ましい。
【0034】
<他の成分>
上記樹脂層Aは、例えば酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、相溶化剤、滑剤及びその他の添加剤を含有してもよい。
【0035】
<樹脂層Aの貯蔵弾性率>
延伸温度における、樹脂層Aの貯蔵弾性率が低いほど、延伸時に樹脂とフィラーとの界面の剥離による空隙形成が起こりづらくなり、空隙率が低下し、それによって反射性能が低下する傾向が認められる。
よって、延伸温度130℃での貯蔵弾性率(JIS K−7198 A法,振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度:3℃/分)は2.00×10Pa以上であるのが好ましく、中でも2.50×10Pa以上であるのがより一層好ましい。
【0036】
<積層構成>
本反射材は、樹脂層Aからなる単層構成であってもよいし、他の樹脂層を備えた2層構成、或いは、3層構成等の多層構成であってもよい。すなわち、樹脂層Aにおいて、微粉状充填剤の分散性を高めて反射性を高めた効果は、他の樹脂層を積層しても享受できるからである。
【0037】
いずれの積層構成においても、樹脂層Aは、シート体からなる層であってもよいし、また、溶融樹脂組成物を押出或いは塗布などによって(シートを形成することなく)薄膜形成してなる層であってもよい。シート体からなる場合、そのシート体は未延伸フィルムであっても、一軸或いは二軸延伸フィルムであってもよい。
【0038】
なお、樹脂層Aに空隙を形成させる方法としては、例えば、少なくとも一軸方向に延伸させることによる方法や、発泡性粒子を添加し、溶融押出することによってフィルム内部にて発泡させる方法のほか、不活性ガスを高圧で溶解させ、その後、圧力を開放することにより多孔質層を形成させる方法などがある。なお、これらの方法の何れか一種の方法を採用してもよいし、複数の方法を組み合わせて採用してもよい。
【0039】
<厚み>
本反射材の厚みとしては、特に限定されるものではない。例えば30μm〜1500μmであるのが好ましく、特に、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜1000μm程度の範囲内であるのが好ましい。
例えば、液晶ディスプレイ用途の反射材としては、厚みが50μm〜700μmであるのが好ましく、例えば、照明器具、照明看板用途の反射材としては、厚みが100μm〜1000μmであるのが好ましい。
【0040】
<反射率>
本反射材は、少なくとも片面の平均反射率が、波長420nm〜700nmの光に対して97%以上であることが好ましい。このような反射性能を有するものであれば、反射材として良好な反射特性を示し、この反射材を組み込んだ液晶ディスプレイ等はその画面が十分な明るさを実現することができる。
【0041】
<空隙率>
本反射材の樹脂層Aは、内部に空隙を有しており、その空隙が樹脂層Aに占める割合(空隙率)は10%以上、90%以下、特に20%以上80%以下であることが好ましい。このような範囲の空隙を設けることで、反射材の白化が十分に進行するので高い光反射性を達成することができ、また、反射材の機械的強度が低下して、破断することがない。
空隙率(%)={(延伸前のフィルムの密度−延伸後のフィルムの密度)/延伸前のフィルムの密度}×100
【0042】
なお、本反射材の樹脂層Aの空隙率は、樹脂層Aの弾性率、微粉状充填剤の種類と量、例えば表面処理の種類などによって調整することができる。
【0043】
<反射材の製造方法>
本反射材の製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。以下に、反射材の製造方法について、一例を挙げて説明するが、下記製造方法に何ら限定されるものではない。
【0044】
まず、ポリオレフィン系樹脂(a)と、樹脂(b)とを含有する混合樹脂(A)、微粉状充填剤(B)、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)、その他、必要に応じて酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて配合した樹脂組成物Aを作製する。
具体的には、主成分とするオレフィン系樹脂に微粉状充填剤等を必要に応じて加えてリボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば、190℃〜270℃)で混練することにより樹脂組成物Aを得ることができる。または、樹脂、微粉状充填剤等を別々のフィーダー等により所定量を添加することにより樹脂組成物Aを得ることもできる。
【0045】
次に、このようにして得られた樹脂組成物Aを乾燥させた後、押出機に供給し、所定の温度以上に加熱して溶融させる。押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定することが必要である。例えば、押出温度はポリオレフィン系樹脂(a)としてポリプロピレン樹脂を用いる場合には、190〜270℃であることが好ましい。
その後、溶融した樹脂組成物AをTダイに流入させ、Tダイのスリット状の吐出口からシート状に押出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
【0046】
得られたキャストシートは、少なくとも1軸方向に延伸するのが好ましい。延伸することにより、樹脂層A内部のオレフィン系樹脂(a)と樹脂(b)との界面、オレフィン系樹脂(a)乃至樹脂(b)と微粉状充填剤(B)との界面において剥離が生じて空隙が形成され、シートの白化が進行して、フィルムの光反射性を高めることができる。
【0047】
更に、キャストシートは2軸方向に延伸するのが特に好ましい。1軸延伸をしたのみでは形成される空隙は一方向に伸びた繊維状形態にしかならないが、2軸延伸することによって、その空隙は縦横両方向に伸ばされたものとなり円盤状形態になる。
すなわち、2軸延伸することによって、樹脂層A内部のオレフィン系樹脂(a)と樹脂(b)との界面、および、オレフィン系樹脂(a)乃至樹脂(b)と微粉状充填剤(B)との界面の剥離面積が増大し、シートの白化がさらに進行し、その結果、フィルムの光反射性をさらに高めることができる。また、2軸延伸するとフィルムの収縮方向の異方性が少なくなるので、フィルムに耐熱性を向上させることができ、またフィルムの機械的強度を増加させることもできる。
【0048】
キャストシートを延伸する際の延伸温度は、樹脂(b)の変性成分を有するスチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲内の温度であることが好ましい。
延伸温度がガラス転移温度(Tg)以上であれば、延伸時にフィルムが破断することなく安定して行うことができる。また、延伸温度が(Tg+50)℃以下の温度であれば、延伸配向が高くなり、その結果、空隙率が大きくなるので、高い反射率のフィルムが得られやすい。
【0049】
2軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時2軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMDに延伸した後、テンター延伸によってTDに延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって2軸延伸を行ってもよい。2軸延伸の場合の延伸倍率は、面積倍率として6倍以上延伸することが好ましい。面積倍率を6倍以上延伸することによって、反射フィルム全体の空隙率が40%以上を実現することができる場合がある。
【0050】
延伸後は、反射フィルムに寸法安定性(空隙の形態安定性)を付与するため、熱固定を行うことが好ましい。フィルムを熱固定するための処理温度は110〜170℃であることが好ましい。熱固定に要する処理時間は、好ましく1秒〜3分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
【0051】
なお、樹脂層Aに他の層を積層する場合、それぞれの層を形成するシートを上記の如く形成した後、ラミネートするようにしてもよいし、また、各層を共押出した後、上記の如くシート形成するようにしてもよい。
【0052】
<用途>
本反射材は、その性質から、液晶ディスプレイ等の液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射部材として有用である。
一般に液晶ディスプレイは、液晶パネル、偏光反射シート、拡散シート、導光板、反射シート、光源、光源リフレクタ等から構成されている。本発明の反射シートは、光源からの光を効率よく液晶パネルや導光板へ入射させる役割をする反射シートに使用することもできるし、エッジ部に配置された光源からの照射光を集光し導光板に入射させる役割を有する光源リフレクタに使用することもできる。
【0053】
≪用語の説明≫
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。他方、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0054】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0056】
<測定および評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法および評価方法について説明する。以下、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0057】
(フィラー分散性評価)
SEM(走査型電子顕微鏡)により、2500倍の観察像から、微粉状充填材(酸化チタン)の分散状態を観察した。そして、観察面40μm×48μm角中に、短径が3μm以上のフィラー不良分散塊が2個以上存在するものを「×」、1個以下のものを「○」と評価した。
【0058】
(空隙率の測定)
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率(%)を求めた。
空隙率(%)={(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
【0059】
(反射率の測定)
分光光度計(「U―3900H」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、アルミナ白板を100%とした時の反射率(550nm)を測定した。
【0060】
(平均反射率の算出)
上記の方法で測定した反射率を、波長420nm〜700nmにわたって平均値を計算し、この値を平均反射率(%)とした。
【0061】
(動的粘弾性の測定)
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法に基づき、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーター「VES−F3」を用いて、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度:3℃/分、温度範囲:−100℃〜200℃にて、動的粘弾性測定を行った。
【0062】
<実施例1>
(樹脂層Aの樹脂組成物A−1,およびその単層シートの作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK−7112):0.9g/cm、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットと、前記ポリプロピレン系樹脂よりも極性が大きく、且つこれと非相溶な樹脂としてのスチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」、スチレン−メタクリル酸共重合体、密度(ISO1183):1.06cm、ガラス転移温度Tg(JISK−7121):125℃)、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):3.9g/10min)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、TiO含有量96.0%、製造法:塩素法)と、樹脂(b)よりも極性が高く、且つ、ポリプロピレン系樹脂と相溶する樹脂である酸変性ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン−無水マレイン酸共重合体、変性成分のモル分率0.098、数平均分子量Mn=6.33×104、重量平均分子量Mw=1.35×10)のペレットを、40:15:40:5の質量割合で混合した後、70℃で加熱された二軸押出機を用いてコンパウンド化し、樹脂組成物A−1を作製した。
この樹脂組成物A−1を230℃に加熱された二軸押出機を用いてシート状に成型し、単層シートを作製した。この単層シートの、130℃(続くMD方向延伸の処理温度)での貯蔵弾性率は2.76×10(Pa)であった。
【0063】
作製した単層シートをSEM観察に供したところ、図1に示すように、微粉状充填材としての酸化チタンがスチレン系共重合体部分に偏在せず、分散している状態であることが確認された。
【0064】
(樹脂層Bの樹脂組成物B−1の作製)
スチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」、スチレン−メタクリル酸共重合体、密度(ISO1183):1.06cm、ガラス転移温度Tg(JISK−7121):125℃)、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):3.9g/10min)のペレットと、ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」のペレットと、スチレン系エラストマー(旭化成社製、商品名「タフテック P2000」、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):35g/10min))のペレットを、75:15:10の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物B−1を作製した。
【0065】
(積層反射材の作製)
上記樹脂組成物A−1及びB−1を、それぞれ押出機AおよびBに供給し、各押出機において、230℃で溶融混練した後、2種3層用のTダイに合流させ、樹脂層B−1/樹脂層A−1/樹脂層B−1の3層構成になるようにシート状に押出し、冷却固化して積層シートを形成した。
得られた積層シートを、温度130℃でMDに2.5倍ロール延伸した後、さらに140℃でTDに2.0倍にテンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ300μm(樹脂層B−1:40μm、樹脂層A−1:220μm、樹脂層B−1:40μm)の反射材を得た。
【0066】
得られた反射材について、空隙率、平均反射率の評価を行った。
なお、空隙率に関しては、樹脂層A−1について評価を行った。すなわち、樹脂組成物A−1を押出機Bに供給して、上記操作にしたがって、樹脂層A−1のみの単層フィルム(厚さ250μm)を得て、評価を行った。
【0067】
<実施例2>
(樹脂組成物A−2,および積層反射材の作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」のペレットと,前記ポリプロピレン系樹脂よりも極性が大きく、且つこれと非相溶な樹脂としてのスチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)と、樹脂(b)よりも極性が高く、且つ、ポリプロピレン系樹脂と相溶する樹脂である酸変性ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン−無水マレイン酸共重合体、変性成分のモル分率0.098、数平均分子量Mn=6.33×104、重量平均分子量Mw=1.35×10)のペレットの混合比を、38:14:38:10の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物A−2を作製した。樹脂組成物A−2について、実施例1と同様に、単層シートを作製した。この単層シートの、130℃(続くMD方向延伸の処理温度)での貯蔵弾性率は2.56×10(Pa)であった。
【0068】
作製した単層シートをSEM観察に供したところ、図2に示すように、微粉状充填材としての酸化チタンがスチレン系共重合体部分に偏在せず、分散している状態であることが確認された。
【0069】
また、実施例1の樹脂組成物A−1の代わりに樹脂組成物A−2を用いた点を除いて、実施例1と同様の方法で反射材を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0070】
<実施例3>
(樹脂組成物A−3,および積層反射材の作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」のペレットと,前記ポリプロピレン系樹脂よりも極性が大きく、且つこれと非相溶な樹脂としてのスチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)と、樹脂(b)よりも極性が高く、且つ、ポリプロピレン系樹脂と相溶する樹脂である酸変性ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン・ポリエチレンランダム共重合体と無水マレイン酸の共重合体、変性成分のモル分率0.30)のペレットを、40:15:40:5の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物A−3を作製した。
樹脂組成物A−3について、実施例1と同様に単層シートを作成した。この単層シートの、130℃(続くMD方向延伸の処理温度)での貯蔵弾性率は2.11×10(Pa)であった。
【0071】
作製した単層シートをSEM観察に供したところ、図3に示すように、微粉状充填材としての酸化チタンがスチレン系共重合体部分に偏在せず、分散している状態であることが確認された。
【0072】
また、実施例1の樹脂組成物A−1の代わりに樹脂組成物A−3を用いた点を除いて、実施例1と同様の方法で反射材を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0073】
<実施例4>
(樹脂組成物A−4、および積層反射材の作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」のペレットと,スチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)と、変性ポリオレフィン系樹脂(三井化学株式会社製、商品名「アドマー AT2304」)のペレットを、38:14:38:10の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物A−4を作製した。
これについて、実施例1と同様の方法で単層シートを作製した。この単層シートの、130℃(続くMD方向延伸の処理温度)での貯蔵弾性率は1.70×10(Pa)であった。
【0074】
作製した単層シートをSEM観察に供したところ、図4に示すように、微粉状充填材としての酸化チタンがスチレン系共重合体部分に偏在せず、分散している状態であることが確認された。
【0075】
また、実施例1の樹脂組成物A−1の代わりに樹脂組成物A−4を用いた点を除いて、実施例1と同様の方法で反射材を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0076】
<比較例1>
(樹脂組成物A−5、および積層反射材の作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」のペレットと,スチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)とを、42:16:42の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物A−5を作製した。これについて、実施例1と同様の方法で単層シートを作成した。
【0077】
作製した単層シートをSEM観察に供したところ、図5に示すように、微粉状充填材としての酸化チタンがスチレン系共重合体部分に偏在していることが確認された。
【0078】
また、実施例1の樹脂組成物A−1の代わりに樹脂組成物A−5を用いた点を除いて、実施例1と同様の方法で反射材を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0079】
<比較例2>
(樹脂組成物A−6、および積層反射材の作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」のペレットと,スチレン系共重合体(東洋スチレン製、商品名「T080」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)と、SEBS(JSR株式会社製、商品名「ダイナロン 8601P」)のペレットを、38:14:38:10の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物A−6を作製した。
これについて、実施例1と同様の方法で単層シートに作製した。
【0080】
作製した単層シートをSEM観察に供したところ、図6に示すように、微粉状充填材としての酸化チタンがスチレン系共重合体部分に偏在していることが確認された。
【0081】
また、実施例1の樹脂組成物A−1の代わりに樹脂組成物A−6を用いた点を除いて、実施例1と同様の方法で反射材を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0082】
【表1】

【0083】
(考察)
比較例1では、微粉状充填材(酸化チタン)が偏在しているために、延伸時に微粉状充
填材を核として形成する空隙が粗く、径が大きく不均一な空隙により空隙率が高いものの、反射性能は低いという結果であった(表1)。これに対して、実施例1〜4の反射材は、微粉状充填材(酸化チタン)の分散性が改善しているため(図1)、反射性能に優れていることがわかった。
比較例2の結果から、一般のポリオレフィン系とポリスチレン系の相溶化剤では、両相の相溶は認められず、微粉状充填材の分散性も改善されないことが分かった(図5)
【0084】
実施例1と実施例2を比較すると、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)の添加量を増やすほど、空隙率が低下し、それによって反射性能が低下する傾向が認められた。また、実施例1、実施例3及び4を比較すると、反射シートの貯蔵弾性率が低いほど、延伸時に樹脂とフィラーとの界面の剥離による空隙形成が起こりづらくなるため、空隙率が低下し、それによって反射性能が低下する傾向が認められた。よって、使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)の貯蔵弾性率とその添加量を調整することにより、ベースとなるポリオレフィン系樹脂(a)の弾性率が低下し過ぎないようにすることが好ましいと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(a)と、該樹脂(a)よりも極性が大きく、該樹脂(a)に非相溶な樹脂(b)とを含有し、且つ少なくとも樹脂(b)よりもポリオレフィン系樹脂(a)を多く含有する混合樹脂(A)、微粉状充填剤(B)、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、内部に空隙を有する樹脂層を備えることを特徴とする反射材。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、樹脂(b)よりも極性が高く、且つ、ポリオレフィン系樹脂(a)と相溶する樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の反射材。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射材。
【請求項4】
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂(C)が、ポリプロピレン−無水マレイン酸共重合体、ポリプロピレン−マレイン酸共重合体、ポリプロピレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレン−アクリル酸共重合体からなる群より選択された1種又は2種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射材。
【請求項5】
前記微粉状充填剤(B)が、少なくとも酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の反射材。
【請求項6】
請求項1記載の樹脂層が少なくとも一軸方向に延伸されてなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の反射材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の反射材を有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83792(P2013−83792A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223659(P2011−223659)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】