説明

反射板および該反射板を備えたリフレクタアンテナ

【課題】 厚みが薄く、平面的な構造の反射板を得る。また、前記反射板を用いた薄型のリフレクタアンテナを得る。
【解決手段】 反射板1は多数の矩形の金属板を地導体から所定の間隔を隔てて周期的に配列し、かつ、それぞれの金属板の中心部と地導体をビアホールで接続した構成とし、隣り合った金属板同士のギャップで生じるC成分と金属板と地導体を結ぶビアホールによって生じるL成分の値を水平方向と垂直方向でそれぞれ設定する。これにより、反射板1の水平方向と垂直方向にそれぞれ任意の位相変化量を持たせることが可能となるため、反射板1に入射する電波の水平成分と垂直成分にそれぞれ任意の位相変化量を設定して反射させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射したマイクロ波・ミリ波などの反射位相を所望の位相に変換する反射板に関する。更に、本発明はこのような反射板を備えたリフレクタアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のツイストリフレクタアンテナは、垂直偏波から45゜左に傾けた偏波(以下、左45゜偏波と称する。)を放射する一次放射器と、一次放射器から十分離して設置したレドームと、一次放射器と同一面に反射板を設置して構成されている。
レドームは表面、または裏面には左45゜偏波と垂直となるような導体のグリッドが形成されている。
また、ツイストリフレクタアンテナで用いている従来の反射板は2層構成となっており、レドーム側から1層目、2層目とすると、1層目は水平に導体のグリッド、もしくは導体のメッシュが形成され、2層目は電波を反射させるための導体板、もしくは周期的に並んだ複数の導体板が形成され、1層目と2層目は波長の1/4(以下λg/4)放射方向に離れている。
この構成における動作を説明する。一次放射器から左45゜偏波がレドームに放射される。このときレドームに形成されている導体のグリッドにより、全反射し、反射板に入射する。
反射板の1層目に形成されている水平方向のグリッドによって、左45゜偏波の垂直成分は反射する。ここで、位相が反転する。
また、水平成分はグリッドの影響を受けないため、そのまま1層目を透過していき、2層目の金属板で反射する。
ここで1層目と2層目はλg/4離れているため、1層目から2層目まで電波が進むために90゜位相が変化する。また、金属板による反射で位相反転するため、180゜変化する。
このため、位相変化量は全部で90゜+90゜+180゜=360゜となる。
反射板の1層目で水平成分、垂直成分がそれぞれ合成されるが、このとき各成分の位相は垂直成分が反転し、水平成分が同位相となっているため、合成された偏波は垂直方向から右に45゜傾いた偏波(以下右45゜偏波とする。)となっている。
合成された右45゜偏波がレドームに入射するが、グリッドの方向は垂直から左方向に45゜傾いており、直交しているため、レドームに形成されているグリッドの影響を受けずに透過し、放射される。
(例えば、非特許文献1)
【0003】
【非特許文献1】J.A.Zornza , R.Leberer , M.Moraga , J.A,Encinar and W.Menzel著「A FORDED 3-LAYER PRINTED REFLECTARRAY WITH SHAPED PATTERN FOR LMDS CENTRAL STATION SECTORED ANTENNA」2004 IEEE AP-S International Symposium
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ツイストリフレクタアンテナで用いられている反射板は、偏波方向を変換するために垂直成分と水平成分に分離してから片側の成分を反転して合成するため、反射板の1層目と2層目の間にλg/4の間隔が必要であり、反射板の構造が厚くなり、ツイストリフレクタアンテナの厚みも増加するという問題点があった。また、上記従来の反射板は立体的に鏡面を形成する必要があり、製造が容易でないという問題点もあった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、厚みが薄く、平面的な構造の反射板を得るものである。また、前記反射板を用いた薄型のリフレクタアンテナを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる反射板は、地導体板と、前記地導体板と略平行に対向させ、所定の間隔で配列した複数の金属板と、前記金属板のそれぞれを前記地導体に接続するビアホールまたは導体線とを備えて形成された反射板であって、前記複数の金属板の互いに隣接して配置された金属板間で生じるキャパシタンスと前記ビアホールまたは導体線で生じるインダクタンスとを前記反射板の水平方向と垂直方向のそれぞれで所定の値に設定したものである。
【発明の効果】
【0007】
反射板に入射する電波の水平成分と垂直成分にそれぞれ任意の位相変化量を設定して反射させることができ、厚みが薄く、平面的な構造の反射板を得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板の正面図と側面の断面図を示す。また、図2は反射板の細部の構成を説明するための構成説明図であり、図3は反射板を等価回路で説明する説明図ある。図1、図2に示すように、反射板1は多数の矩形の金属板2を地導体4から所定の間隔を隔てて周期的に配列し、かつ、それぞれの金属板2の中心部と地導体4をビアホール3で接続した構成である。以下、図2に示すような構成をマッシュルーム構造と称す。
【0009】
ここで、図1に示したような周期的に並んだ複数のマッシュルーム構造は、隣り合った金属板同士のギャップで生じるC成分が直列に接続され、金属板と地導体を結ぶビアホールによって生じるL成分が並列に接続され、これを何段にも縦続接続した図3に示した伝送線路で表現できる。
また、図2に示したような長方形の金属板2を用いて形成した反射板1は、水平方向から見た場合と垂直方向から見た場合で、金属板2の配列間隔やビアホール3の間隔が異なっている。このため、図3に示すような等価回路で表した場合に、水平方向の等価回路と垂直方向の等価回路で伝送線路のL成分とC成分の値が異なる。
以上のように、この発明の実施の形態1に係わる反射板によれば、金属板2のマッシュルーム構造がもつL成分とC成分の値を水平方向と垂直方向で異ならせることができ、反射板1の水平方向と垂直方向にそれぞれ別々に任意の位相変化量を持たせることが可能となるため、反射板1に入射する電波の水平成分と垂直成分にそれぞれ任意の位相変化量を設定して反射させることができる効果がある。
【0010】
次に、この発明の実施の形態1に係わる反射板1に、前記従来例の説明と同様の左45゜偏波が入射する場合を例に動作を説明する。
ここで、金属板2の寸法とビアホール3の長さを、反射板1において水平方向の反射位相が垂直方向の反射位相に対して180゜差がでるように設定する。なお、位相の設定は上記に限らず、金属板2の形状やビアホール3の位置や太さなど、各諸元を変化させることによっても設定できる。
このように位相変化量を設定した場合、反射板1に左45゜偏波が入射して反射するとき、垂直成分については図4に示すように反射時の位相変化量をφとすると、水平成分は図5に示すように反射時の位相変化量がφ+180゜となって反射する特性となる。
以上のように、左45゜偏波は反射板1への入射前後で水平成分のみが反転するため、左45゜偏波を入射すると、右45゜偏波が反射されることになる。
【0011】
また、この発明に係わる反射板1は上記のように動作するため、従来例に示したようなツイストリフレクタアンテナの反射板に代えて、この反射板1を用いてツイストリフレクタアンテナを形成できる。さらに、従来の反射鏡に代えて反射板1を適用することにより、各種のリフレクタアンテナを形成できる。
【0012】
ここで、各金属板2と地導体4の間隔は、図3に示した伝送線路のビアホール3に起因する並列接続のL成分によって自由空間に比べて電気長を長く見せることができるため、ビアホール3はλg/4より短くなり、厚みが薄く、平面的な構造の反射板を得られる効果がある。
また、この発明に係わる反射板1を用いてリフレクタアンテナを構成すれば、平面的構成で薄型のリフレクタアンテナを得られる効果がある。
さらに、従来例に示したようなツイストリフレクタアンテナなどの反射板(反射鏡)は、平面ではないため製造上の問題が発生し、反射鏡の全ての場所で最適な位相関係を実現することは困難である。よって、電波の放射方向によってはグレーティングローブが発生することがあり、特性が劣化するという問題が生じる。しかし、この発明に係わる反射板1を用いたリフレクタアンテナでは、金属板2の寸法を変えることで反射板1の各点で位相関係を最適に調整できるため、従来の曲面反射板を用いたリフレクタアンテナに比べグレーティングローブ、交差偏波を低減できる効果がある。
さらに、金属板2の寸法を変更することで反射板1全体の反射位相を同一にできることから、反射板を平面に構成することができ、反射板を容易に製作できる効果が得られる。
【0013】
なお、金属板2と地導体4はビアホール3で接続せず、線材等の導体で接続しても同様の効果が得られる。線材で接続する場合には、金属板2と地導体4の直線的接続に限られないため、接続形状の自由度が増すと共に、接続が容易となる効果がある。
【0014】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板の正面図と側面の断面図を示す。また、この実施の形態2に係わる反射板は、マッシュルーム構造を形成する金属板5の縦横比を実施の形態1の金属板2の縦横比と変更して形成した例を示すものである。なお、図6についても反射板1は実施の形態1と同様に図3の等価回路で表せる。また、図6に示した周期的に並んだ複数のマッシュルーム構造は、実施の形態1と同様の作用をする。
【0015】
以上のように、この発明の実施の形態2に係わる反射板は、前記実施の形態1の反射板と同様の機能を有し、実施の形態1の反射板と同様の効果を奏する。
【0016】
なお、以上では反射板を構成する金属板を矩形とした場合を例示して説明したが、金属板の形状は矩形に限らず、図7、図8、図9にそれぞれ反射板の正面図と側面の断面図を示すように、正六角形、正三角形、楕円形などにしても良く、それぞれの場合の反射板の等価回路は矩形の金属板の場合と同様に図3のように表すことができる。
また、六角形金属板6、三角形金属板7、楕円形金属板8のマッシュルーム構造がもつL成分とC成分の値を水平方向と垂直方向で異ならせることができ、反射板の水平方向と垂直方向にそれぞれ別々に任意の位相変化量を持たせることが可能となるため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0017】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板1の正面図と側面の断面図を示す。
この実施の形態3に係わる反射板1は、マッシュルーム構造を形成する矩形の金属板9と地導体とを、金属板9の中央以外の位置でビアホールで接続した例を示すものである。なお、図10についても反射板1は実施の形態1と同様に図3の等価回路で表せる。
【0018】
また、この発明の実施の形態3に係わる反射板は、前記実施の形態1の反射板と同様の機能を有し、実施の形態1の反射板と同様の効果を奏する。
【0019】
なお、図10ではビアホール3の位置を金属板9の中央位置から短辺側にずらせた場合を例示したが、長辺側などの他の位置へずらせた場合についても上記同様に動作し、上記同様の効果が得られる。
【0020】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板の正面図と側面の断面図を示す。
この実施の形態4に係わる反射板は、誘電体が充填されたマッシュルーム構造を用いる場合の例であり、マッシュルーム構造を形成する金属板と地導体とを、誘電体基板10の表裏にそれぞれ設けて形成したものである。なお、図11についても反射板は実施の形態1と同様に図3の等価回路で表せる。
【0021】
また、この実施の形態4の反射板でも、前記実施の形態1の反射板と同様の機能を有し、実施の形態1の反射板と同様の効果を奏する。
なお、実施の形態1と異なり金属板と地導体が誘電体基板10に設けられているため、誘電体が充填されたマッシュルーム構造となり、図3の等価回路におけるC成分の設計の自由度が実施の形態1におけるより大きくできる効果が得られる。
さらに、金属板と地導体が誘電体基板10に設けられているため、振動、衝撃に対する強度が高まるという効果がある。
【0022】
実施の形態5.
図12は、この発明の実施の形態5に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板の正面図を示す。また、実施の形態5に係わる反射板は、上記実施の形態1の反射板において、反射板に入射する偏波の反射波の偏波の垂直成分と水平成分の位相変化量に90度の差を生じるように金属板の寸法やビアホールの各諸元を設定した例を示すものである。図12についても反射板1は実施の形態1と同様に図3の等価回路で表せる。
【0023】
次に、この発明の実施の形態5に係わる反射板1に、前記従来例の説明と同様の左45゜偏波が入射する場合を例に動作を説明する。
この実施の形態5は実施の形態1と同様であり、金属板2の大きさやビアホール3の各諸元を適切に選択することで、図3の等価回路のL成分とC成分の値を変化させることができる。
ここでは反射板1の金属板やビアホールの諸元を、入射する偏波の垂直成分の位相がφだけ変化して反射するとしたときに、偏波の水平成分については位相がφ+90゜変化して反射するように設定する。
【0024】
したがって、反射板1に直線偏波が入射された場合に、図13に示すように偏波の垂直成分は位相がφだけ変化して反射し、図14に示すように偏波の水平成分は位相がφ+90゜だけ変化して反射する。このように反射板1に直線偏波が入射すると、偏波の水平成分の位相が偏波の垂直成分の位相より90°進んだ円偏波(一般的には楕円偏波)が反射される。
【0025】
以上のように、この発明の実施の形態5に係わる反射板によれば、直線偏波を円偏波(一般的には楕円偏波)に変換する偏波変換器(円偏波発生器)の機能を有する反射板を得られる効果がある。
【0026】
実施の形態6.
図15は、この発明の実施の形態6に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板の正面図を示す。また、実施の形態6に係わる反射板は、マッシュルーム構造を形成する複数の金属板を、それぞれの金属板が配置される位置での入射波のビーム中心からのビーム広がり角に応じて相似形で拡大するように設定し、配列したものである。このように金属板を配列することにより、反射板11への入射波のビーム中心位置からの隔たりに応じて金属板同士のギャップで生じるC成分が増加し、反射板11への入射波のビーム中心からのビーム広がり角に応じて位相変化量が増加する。なお、図15についても反射板11は実施の形態1と同様に図3の等価回路で表せる。また、反射板11は、上記のように寸法を変化させた金属板により形成しているため、水平方向と垂直方向から見た場合のみならず、それ以外の斜め方向等から見た場合も、金属板の配列間隔やビアホールの間隔を異なるように設定でき、等価回路にした場合の伝送線路のL成分とC成分を変えることができる。
【0027】
ここでは、反射板11への入射波と反射波の位相差を反射板11への入射波のビーム中心位置から外周部へ向かうほど大きく、かつ、反射板11を形成する複数の金属板のそれぞれでの反射波の垂直成分と水平成分の位相が全ての金属板で同一位相となるように設定する。
【0028】
上記の条件を満たすように、反射板11を形成するマッシュルーム構造を形成することにより、図15に示したように例えば左45゜偏波の球面波が反射板11に入射した場合に、右45゜偏波の平面波を反射することができる。即ち、反射板11は放物面反射鏡を用いた場合と同様の動作が可能である。
【0029】
以上のように、この実施の形態6の反射板11によれば、放物形の反射板を使用することなく、球面波から平面波に変換することができるという効果が得られる。さらに、鏡面が平面になるため、鏡面を薄くできる効果がある。また、立体的に鏡面を形成する必要がないので、容易に製造することができるという効果もある。
【0030】
なお、実施の形態1での説明と同様で、この発明の実施の形態6に係わる反射板を用いてリフレクタアンテナを構成する場合には、金属板の寸法を変更することで反射板の各点で位相関係を最適に調整できるため、従来の曲面反射板を用いたリフレクタアンテナに比べグレーティングローブ、交差偏波を低減できる効果がある。
【0031】
実施の形態7.
図16は、この発明の実施の形態7に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図であり、反射板の正面図を示す。また、実施の形態7に係わる反射板は、マッシュルーム構造を形成する複数の金属板を、それぞれの金属板が配置される位置での入射波のビーム中心からのビーム広がり角に応じて相似形で拡大するように設定し、配列したものである。このように金属板を配列することにより、反射板11への入射波のビーム中心位置からの隔たりに応じて金属板同士のギャップで生じるC成分が増加し、反射板11への入射波のビーム中心からのビーム広がり角に応じて位相変化量が増加する。なお、図15についても反射板11は実施の形態1と同様に図3の等価回路で表せる。また、反射板11は、上記のように寸法を変化させた金属板により形成しているため、水平方向と垂直方向から見た場合のみならず、それ以外の斜め方向等から見た場合も、金属板の配列間隔やビアホールの間隔を異なるように設定でき、等価回路にした場合の伝送線路のL成分とC成分を変えることができる。
【0032】
ここでは、反射板11を形成する複数の金属板のそれぞれでの反射波の垂直成分と水平成分の位相差が90°で、かつ、全ての金属板で反射直後の反射波の垂直成分同士の位相および水平成分同士の位相が同位相となるように設定する。
【0033】
上記の条件を満たすように、反射板11を構成するマッシュルーム構造を形成することにより、図16に示したように例えば左45゜偏波の球面波が反射板11に入射した場合に、円偏波(一般的には楕円偏波)の平面波を反射することができる。即ち、反射板11は放物面反射鏡を用いた場合と同様の動作が可能である。
【0034】
以上のように、この実施の形態7の反射板11によれば、放物形の反射板を使用することなく、球面波から平面波に変換することができるという効果が得られる。さらに、鏡面が平面になるため、鏡面を薄くできる効果がある。また、立体的に鏡面を形成する必要がないので、容易に製造することができるという効果もある。
【0035】
なお、実施の形態1での説明と同様で、この発明の実施の形態7に係わる反射板を用いてリフレクタアンテナを構成する場合には、金属板の寸法を変更することで反射板の各点で位相関係を最適に調整できるため、従来の曲面反射板を用いたリフレクタアンテナに比べグレーティングローブ、交差偏波を低減できる効果がある。
【0036】
実施の形態8.
図17は、この発明の実施の形態8に係わる反射板の使用例を説明するための構成説明図である。この例は、垂直偏波を反射させると共に水平偏波を透過する導電性のグリッドを形成した偏波板12をこの発明に係わる反射板13の前方に配置したものであり、反射板13は正方形の金属板でマッシュルーム構造を形成したものを例示している。したがって、反射板13は実施の形態1の反射板1と同様の構成であり、等価回路は図3で表せる。なお、この例では正方形の金属板の中央にビアホールを設けて直交2方向で金属板を対称に配列しており、水平方向と垂直方向でマッシュルーム構造がもつL成分とC成分の値は同じであるが、この実施の形態8では反射板13の水平方向と垂直方向での反射位相の異なる設定を要さない。
【0037】
次に、左45゜偏波が入射する場合を例に動作を説明する。図18に示すように、偏波板12に水平偏波を透過する導電性のグリッドが形成されているため、偏波板12に入射した左45゜偏波は垂直成分のみが反射位相φで反射される。また、図19に示すように、水平成分は偏波板12を透過し、その背部に設置された反射板13に入射する。
ここで、反射板13の等価回路のC成分とL成分を所望の値にするよう、反射板13のマッシュルーム構造を調整し、反射板13の水平方向での反射波の反射位相を設定する。また、反射板13に設定する反射位相は、偏波板12での垂直偏波に対する反射位相φに対して、偏波板12を透過して反射板13で反射された後に偏波板12の設置位置に達した水平偏波の位相がφ+180°となり、垂直偏波との位相差を180°とするよう設定する。
【0038】
以上のことから、水平成分の位相のみが反転したことになるため、図17に示すように、偏波板12の面において、垂直成分と水平成分が合成され、右45°偏波となり放射する。このように、実施の形態8に係わる反射板の使用例では、入射する左45°偏波を変換して右45°偏波として放射する。
【0039】
以上のように、実施の形態8に係わる反射板の使用例では、偏波板12と反射板13の間隔を任意に設定でき、構造を薄型化できる。
なお、この発明の実施の形態8に係わる反射板の使用例によりリフレクタアンテナを構成する場合には、偏波板12をレドームに形成しても良く、リフレクタアンテナの小型化や薄型化ができる効果がある。
【0040】
実施の形態9.
図20は、この発明の実施の形態9に係わる反射板の使用例を説明するための構成説明図である。この例は、垂直偏波を反射させると共に水平偏波を透過する導電性のグリッドを形成した偏波板12をこの発明に係わる反射板14の前方に配置したものであり、反射板14は図21に示すようにマッシュルーム構造を構成する金属板を偏波板12のグリッドの方向に沿っては一体形成したストリップ形状としたものである。なお、反射板14ではグリッドの方向と垂直な方向では周期的な構造を有する。したがって、反射板14を等価回路で表現すると、水平方向については各金属板間のC成分とビアホールによるL成分によって図3の等価回路で表せる。また、垂直方向については金属板を一体形成したストリップ形状であるため、ビアホールによるL成分は存在するが、各金属板間のC成分は発生せず、図22の等価回路で表せる。なお、この実施の形態9では反射板14の水平方向と垂直方向での反射位相の異なる設定、および垂直方向での反射位相の設定を要さない。
【0041】
次に、左45゜偏波が入射する場合を例に動作を説明する。図20に示すように、偏波板12に水平偏波を透過する導電性のグリッドが形成されているため、偏波板12に入射した左45゜偏波は垂直成分のみが反射位相φで反射される。また、図21に示すように、水平成分は偏波板12を透過してその背部に設置された反射板14に入射し、反射される。ここで、反射板14の水平方向の等価回路のC成分とL成分を所望の値にするよう、ストリップ形状の金属板とビアホールを調整し、反射波の反射位相を設定する。また、反射板14に設定する反射位相は、偏波板12での垂直偏波に対する反射位相φに対して、偏波板12を透過して反射板14で反射された後に偏波板12の設置位置に達した水平偏波の位相がφ+180°となり、垂直偏波との位相差を180°とするよう設定する。
【0042】
以上のことから、水平成分の位相のみが反転したことになるため、図20に示すように、偏波板12の面において、垂直成分と水平成分が合成され、右45°偏波となり放射する。このように、実施の形態9に係わる反射板の使用例では、入射する左45°偏波を変換して右45°偏波として放射する。
【0043】
以上のように、実施の形態9に係わる反射板の使用例では、偏波板12と反射板14の間隔を任意に設定でき、構造を薄型化できる。
なお、この発明の実施の形態9に係わる反射板の使用例によりリフレクタアンテナを構成する場合には、偏波板12をレドームに形成しても良く、リフレクタアンテナの小型化や薄型化ができる効果がある。
さらに、マッシュルーム構造を構成する金属板を偏波板12のグリッドの方向に沿った方向では一体形成したストリップ形状としており、反射板を容易に製作できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わる反射板の細部の構成を説明するための構成説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わる反射板を等価回路で説明する説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わる反射板に左45゜偏波が入射する場合の垂直成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係わる反射板に左45゜偏波が入射する場合の水平成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係わる反射板のマッシュルーム構造における金属板を正六角形とした例を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係わる反射板のマッシュルーム構造における金属板を正三角形とした例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係わる反射板のマッシュルーム構造における金属板を楕円形とした例を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図13】この発明の実施の形態5に係わる反射板に直線偏波が入射する場合の垂直成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図14】この発明の実施の形態5に係わる反射板に直線偏波が入射する場合の水平成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図16】この発明の実施の形態7に係わる反射板の構成を説明するための構成説明図である。
【図17】この発明の実施の形態8に係わる反射板の使用例を説明するための構成説明図であり、左45゜偏波が入射する場合のグリッドでの垂直成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図18】この発明の実施の形態8に係わる反射板の使用例に左45゜偏波が入射する場合の反射板での水平成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図19】この発明の実施の形態8に係わる反射板の使用例に左45゜偏波が入射する場合の反射板での水平成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図20】この発明の実施の形態9に係わる反射板の使用例を説明するための構成説明図であり、左45゜偏波が入射する場合のグリッドでの垂直成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図21】この発明の実施の形態9に係わる反射板の使用例に左45゜偏波が入射する場合の反射板での水平成分の反射時の位相変化を説明する説明図である。
【図22】この発明の実施の形態9に係わる反射板を等価回路で説明する説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 反射板、2 金属板、3 ビアホール、4 地導体、5 縦横比を変更した金属板、6 正六角形金属板、7 正三角形金属板、8 楕円形金属板、9 ビアホール配置を変更した金属板、10 誘電体、11 寸法を変更した反射板、12 偏波板、13 正方形反射板、14 一体化反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地導体板と、前記地導体板と略平行に対向させ、所定の間隔で配列した複数の金属板と、前記金属板のそれぞれを前記地導体に接続するビアホールまたは導体線とを備えて形成された反射板であって、前記複数の金属板の互いに隣接して配置された金属板間で生じるキャパシタンスと前記ビアホールまたは導体線で生じるインダクタンスとを前記反射板の水平方向と垂直方向のそれぞれで所定の値に設定した反射板。
【請求項2】
前記反射板の水平方向と垂直方向のそれぞれでの前記キャパシタンスと前記インダクタンスの値を、前記水平方向の反射位相と前記垂直方向の反射位相に180°の差を生じる値に設定するよう形成し、垂直偏波から左に45゜傾けた偏波(以下、左45゜偏波と称す。)を入射させた場合に、右に45゜傾いた偏波(以下、右45゜偏波と称す。)を反射させることを特徴とする請求項1記載の反射板。
【請求項3】
前記反射板の水平方向と垂直方向のそれぞれでの前記キャパシタンスと前記インダクタンスの値を、前記水平方向の反射位相と前記垂直方向の反射位相に90°の差を生じる値に設定するよう形成し、直線偏波を入射させた場合に、楕円偏波または円偏波を反射させることを特徴とする請求項1記載の反射板。
【請求項4】
前記複数の金属板のそれぞれは配列される位置での入射波のビーム中心からのビーム広がり角に基づいて相似形で拡大させ、前記反射板の反射位相を前記反射板への入射波のビーム中心位置からの隔たりに基づいて大きくし、かつ、前記金属板それぞれでの前記水平方向の反射位相と前記垂直方向の反射位相を同位相にする値に設定するよう形成し、左45゜偏波の球面波を入射させた場合に、右45゜偏波の平面波を反射させることを特徴とする請求項1記載の反射板。
【請求項5】
前記複数の金属板のそれぞれは配列される位置での入射波のビーム中心からのビーム広がり角に基づいて相似形で拡大させ、前記反射板の水平方向と垂直方向のそれぞれでの前記キャパシタンスと前記インダクタンスの値を、前記水平方向の反射位相と前記垂直方向の反射位相に90°の差を生じ、かつ、全ての前記金属板での前記水平方向の反射位相同士および前記垂直方向の反射位相同士を同位相にする値に設定するよう形成し、左45゜偏波の球面波を入射させた場合に、楕円偏波または円偏波を反射させることを特徴とする請求項1記載の反射板。
【請求項6】
前記反射板の前方に配置され、垂直偏波を反射すると共に水平偏波を透過する導電性のグリッドを形成した偏波板をさらに有し、前記反射板の水平方向での前記キャパシタンスと前記インダクタンスの値を、前記偏波板を透過して前記反射板で反射された後に前記偏波板に達した前記水平偏波の位相が、前記偏波板で反射された前記垂直偏波の位相と180°の位相差を生じる値に設定するよう形成し、左45゜偏波を入射させた場合に、右45゜偏波を反射させることを特徴とする請求項1記載の反射板。
【請求項7】
前記金属板の形状を、正三角形、長方形、正六角形、または、楕円形のいずれかとしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射板。
【請求項8】
垂直偏波を反射すると共に水平偏波を透過する導電性のグリッドを形成した偏波板と、前記偏波板の背後部に設けられた地導体板と、前記地導体板と略平行に対向させ、前記偏波板のグリッドと同一方向に所定の間隔で前記偏波板と前記地導体板の間に配列した複数のストリップ形金属板と、前記ストリップ形金属板の長手方向の複数箇所のそれぞれを前記地導体に接続するビアホールまたは導体線とを備えて形成された反射板であって、前記複数のストリップ形金属板の互いに隣接して配置されたストリップ形金属板間で生じるキャパシタンスと前記ビアホールまたは導体線で生じるインダクタンスの値を、前記偏波板を透過して前記反射板で反射された後に前記偏波板に達した前記水平偏波の位相が、前記偏波板で反射された前記垂直偏波の位相と180°の位相差を生じる値に設定するよう形成し、左45゜偏波を入射させた場合に、右45゜偏波を反射させることを特徴とする反射板。
【請求項9】
誘電体基板の一方の面に前記地導体板を形成し、他方の面に前記複数の金属板または前記複数のストリップ形金属板を形成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の反射板。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の反射板を備えて形成したことを徴とするリフレクタアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−96868(P2007−96868A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284667(P2005−284667)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】