説明

反射板

【課題】反射板において、紫外線吸収剤が銀反射層と会合するのを防止することで、銀反射層が変色し難くなり、高い反射率を維持する。
【解決手段】反射板1は、基材2上に、銀反射層4と、透明無機被膜から成る第1保護層5と、紫外線吸収剤8を含有する有機被膜7から成る第2保護層6とが順に積層されている。第1保護層5は、第2保護層6の紫外線吸収剤8が銀反射層4と会合することを防止するので、紫外線吸収剤8と銀反射層4の化学反応が起きない。これにより、銀反射層4が変色し難くなり、高い反射率を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に用いられ、光源からの光を反射する反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダウンライト等の照明器具に用いられ、光源からの光を反射する反射板の反射層の材料には、可視光反射性に優れる銀が使用される。銀から成る反射層(以下、銀反射層という)は、高い反射率を有するが、化学的に不安定な銀が変色するので、外観が損なわれると共に、反射率が低下する。
【0003】
銀の主な変色原因は、光(紫外線)、熱、及び大気中の水分、亜硫酸、硫化水素、アンモニア等のガスである。銀反射層は、これら変色原因が相互的に作用し、銀が硫化物イオンや塩化物イオン等と反応して硫化銀や塩化銀などの化合物へと変化することによって、褐色や黒色に変色する。そこで、銀反射層上に、ポリマーに溶解する紫外線吸収剤が添加されたポリマー保護層を備えた反射板が知られている。この反射板は、変色原因の1つである紫外線を紫外線吸収剤が吸収して銀反射層を保護するが、紫外線吸収剤がブリードアウトすることによって銀反射層とポリマー保護層の間にピンホールが発生するので、外観が損なわれると共に、反射率が低下する。また、ポリマー保護層中の紫外線吸収剤が熱により拡散して界面の銀原子と会合し、変色が発生する。
【0004】
そこで、図2に示されるように、銀反射層104と、銀反射層104上に設けられた紫外線吸収性の固形物110(以下、固形UV吸収剤という)を含有する保護層109と、を備えた反射板が知られている(例えば、特許文献1参照)。固形UV吸収剤110は、紫外線を吸収することで銀反射層104を変色し難くすると共に、固形物であるのでブリードアウトしないことから銀反射層104と保護層109の間にピンホールが発生しない。しかしながら、固形UV吸収剤110は、粒子状の物質であるので、可視光の散乱が発生して保護層109の光透過率が低下することにより、反射板101の反射率が低下する。
【0005】
そこで、図3に示されるように、基板102と、基板102上に、銀反射層104と、チオール基含有ポリマーから成る第1の保護ポリマー層105と、ポリマーに溶解する紫外線吸収剤108を含有する第2の保護ポリマー層106とが順に積層された反射板111が知られている(例えば、特許文献2参照)。この反射板111は、第1の保護ポリマー層105を形成するポリマーのチオール基が銀反射層104の銀と結合して薄膜を形成するので、紫外線吸収剤108が銀反射層104と会合し難くなる。また、第1の保護ポリマー層105によって銀反射層104と第2の保護ポリマー層106が直接接触していないのでピンホールが発生しない。しかしながら、紫外線吸収剤108がポリマー内で容易に拡散するので、紫外線吸収剤108と銀反射層104の会合を確実に防止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−108643号公報
【特許文献2】特開昭61−154942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、紫外線吸収剤が銀反射層と会合するのを防止することで、銀反射層が変色し難くなり、高い反射率を維持することができる反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、基材上に設けられた銀反射層を備えた反射板において、前記銀反射層上に、透明無機被膜から成る第1保護層と、紫外線吸収剤を含有する有機被膜から成る第2保護層とが順に積層され、前記第1保護層は、前記第2保護層に含有される紫外線吸収剤が前記銀反射層と会合するのを防止するものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射板において、前記透明無機被膜は、透明導電膜であるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、第2保護層の紫外線吸収剤が銀反射層と会合することを第1保護層が防止するので、紫外線吸収剤と銀反射層の化学反応が起きない。これにより、銀反射層が変色し難くなり、高い反射率を維持することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、透明無機被膜が透明導電膜であるので、第1保護層は熱ストレスによるクラックが入り難くなると共に、銀反射層との密着性が向上する。これにより、銀反射層におけるマイグレーションの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る反射板の断面図。
【図2】従来の反射板の断面図。
【図3】従来の他の反射板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る反射板について、図1を参照して説明する。反射板1は、基材2上に、基材2の平滑性を向上させる下地層3と、光を反射する銀反射層4と、銀反射層4を保護する第1保護層5と、紫外線吸収剤8を含有する有機被膜7から成る第2保護層6とが順に積層されている。
【0014】
基材2は、アルミ、鉄、マグネシウム、亜鉛などの純金属若しくは合金、又はポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネイト(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンオキサイド(PP)、ポリエーテルイミド(PEI)等の樹脂から成る。基材2の成形は、材料が純金属又は合金の場合、スピニング成形、プレス成形、チクソモールド成形、ダイキャスト成形などによって行われる。また、材料が樹脂のとき、インジェクション成形、真空成形、圧空成形、押出成形などによって行われる。成形後の反射板1の表面は、滑らかで清浄な状態となるように、成形時に付着した離型剤、ガスマーク、滑剤、オイル等を物理的手段によって除去する。
【0015】
下地層3は、エポキシ変性アクリルメラミン塗料などのコーティング剤から成り、基材2の平滑性を向上させるので、基材2と銀反射層4の密着性を向上させる。下地層3の形成は、スプレー塗装、スピンコート、ロールコート、ディッピング塗装などのコーティングと、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化によって行われる。なお、コーティングではなく、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理蒸着又は化学蒸着であってもよい。また、下地層3は、基材2と銀反射層4の密着性が十分に確保されるならば、製造コスト削減のために形成されなくてもよい。
【0016】
銀反射層4は、銀又は銀を主成分とする合金から成り、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理蒸着、又は銀鏡反応のような化学めっきによって、厚さ20〜1000nmで形成される。なお、銀反射層4と下地層3の間に、アルミニウム、銅又はニッケル等の金属と銀から成る層が、耐熱性や密着性を高めるために設けられていてもよい。
【0017】
第1保護層5は、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化インジウム(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)等の透明導電膜である透明無機被膜から成り、銀反射層4上に直接形成される。この第1保護層5は、透明無機被膜が透明導電膜であるので、熱ストレスによるクラックが入り難くなると共に、銀反射層4との密着性が向上する。これにより、銀反射層4におけるマイグレーションの発生を防止することができる。なお、第1保護層5は、透明無機被膜の混合体や積層体であってもよいし、また、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、酸化インジウム(InO)等の透明導電膜でない透明無機被膜から成るものであってもよい。
【0018】
第1保護層5は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理蒸着、又は化学蒸着によって、厚さ2〜20nmとなるように形成される。厚さが2nmより薄い場合、膜が適正に形成されないので、銀反射層4を保護することができない。また、厚さが20nmより厚い場合、可視光線の吸収が大きくなるので、反射板1の反射率を低下させる。
【0019】
有機被膜7は、アクリル系コーティング剤、シリコーン系コーティング剤などから成る透明な有機材料から成り、第1保護層5上に形成される。有機被膜7の形成は、有機材料への紫外線吸収剤8の添加と、スプレー塗装、スピンコート、ロールコート、ディッピング塗装などのコーティングと、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化とによって行われる。
【0020】
紫外線吸収剤8は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、トリアジン系、環状イミノエステル系などの添加剤から成り、有機被膜7への添加量が0.5〜10重量%である。この有機被膜7に添加された紫外線吸収剤8は、ポリマー内で容易に拡散することができるが、無機物質から成る第1保護層5内で拡散することができないので、第1保護層5を通過して銀反射層4と会合することがない。なお、紫外線吸収剤8は、有機被膜7の樹脂骨格に直接結合する反応性有機化合物から成るものであってもよい。また、紫外線吸収剤8は、光安定剤(HALS)と一緒に有機被膜7の材料に添加してもよい。
【0021】
上記のように構成された反射板1においては、第2保護層6の紫外線吸収剤8が銀反射層4と会合することを第1保護層5が防止するので、紫外線吸収剤8と銀反射層4の化学反応が起きない。これにより、銀反射層4が変色し難くなり、高い反射率を維持することができる。
【0022】
次に、本実施形態の反射板1における実施例1、実施例2及び比較例1について説明する。
【0023】
(実施例1)
厚さ1mmのアルミニウム板材をスピニング成形することによって得られた椀形状の基材2を、弱アルカリ性洗浄剤を用いて超音波洗浄を行う。洗浄後の基材2上に、下地層3の材料であるエポキシ変性アクリルメラミン塗料(久保孝ペイント株式会社製)をスプレー塗装した後、焼付乾燥を140℃で30分間行い、厚さ5μmの下地層3を形成する。
【0024】
次に、下地層3上に、純度99.99%の銀から成るターゲットを用いて、マグネトロンスパッタリング法によって、厚さ平均100nmの銀反射層4を形成する。この銀反射層4上に、第1保護層5の材料であるITOから成るターゲットを用いて、マグネトロンスパッタリング法によって、厚さ平均10nmの第1保護層5を形成する。この第1保護層5上に、紫外線吸収剤8としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン328、チバ・ジャパン株式会社製)を1重量%添加した有機被膜7の材料であるアクリルメラミン塗料(久保孝ペイント株式会社製)を、スプレー塗装した後、焼付乾燥を120℃で30分間行い、厚さ8μmの第2保護層6を形成し、反射板1を得た。
【0025】
(実施例2)
PBTをインジェクション成形することによって得られた厚さ1mmの椀形状の基材2の内面を、2-プロパノールを含ませた脱脂綿でふき取る。また、銀反射層4上に、第1保護層5の材料であるZnOから成るターゲットを用いて、マグネトロンスパッタリング法によって、厚さ平均10nmの第1保護層5を形成する。これら以外は、実施例1と同様にして反射板1を得た。
【0026】
(比較例1)
第2保護層6に紫外線吸収剤8を添加しない以外は、実施例1と同様にして反射板を得た。
【0027】
<光反射性及び耐光試験>
上記のように作製した実施例1及び実施例2と比較例1のサンプルを30mm角に切断したものを用意し、各サンプルについて自記分光光度計を用いて波長555nmにおける全光線反射率の測定を行った。
【0028】
次に、実施例1及び実施例2と比較例1のサンプルを50mm幅に切断したものを用意し、100℃雰囲気の恒温槽内で2mW/cmの紫外線強度にて30日間、サンプルに対して水銀灯による紫外線の照射を行った。紫外線照射後、サンプルをさらに30mm角に切断し、各サンプルについて自記分光光度計を用いて波長555nmにおける全光線反射率を測定を行った。
【0029】
また、紫外線照射後のサンプルを30mm角に切断し、反射光の眩しさを低減するためのトレーシングペーパーで覆って、各サンプルについて外観観察を行った。紫外線照射前と紫外線照射後の全光線反射率の測定結果、及び紫外線照射後の外観観察の結果を下記の表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1及び実施例1と比較例1に係るサンプルの全光線反射率の測定結果及び外観観察の結果から明らかなように、本実施形態の反射板1は、紫外線を長期間照射されても高い反射率を維持すると共に、変色し難くい。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第2保護層上にさらに他の保護層を備えているものであっても構わない。
【符号の説明】
【0033】
1 反射板
2 基材
4 銀反射層
5 第1保護層
6 第2保護層
7 有機被膜
8 紫外線吸収剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた銀反射層を備えた反射板において、
前記銀反射層上に、透明無機被膜から成る第1保護層と、紫外線吸収剤を含有する有機被膜から成る第2保護層とが順に積層され、
前記第1保護層は、前記第2保護層に含有される紫外線吸収剤が前記銀反射層と会合するのを防止することを特徴とする反射板。
【請求項2】
前記透明無機被膜は、透明導電膜であることを特徴とする請求項1に記載の反射板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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