説明

反射構造

【課題】媒質境界での反射位相の可変幅を360度以上とすることが可能な反射構造を提供する。
【解決手段】板状の地導体板11と、前記地導体板11上に設けられた誘電体層12と、前記誘電体層12に設けられた複数の金属小板13および複数の金属体14と、を備え、前記誘電体層12の前記地導体板に垂直な方向の長さが動作周波数における波長の約1/2倍であり、前記複数の金属小板13が前記誘電体層12の前記地導体板11と反対側の面の表面上に略周期的に設置され、前記複数の金属体14が、それぞれ一辺の長さが動作周波数における波長の約1/2倍より小さい多面体であり、前記誘電体層12内の前記地導体板11と各金属小板13の間にそれぞれ設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反射位相を制御する反射構造に関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアル技術のような周期構造に基づく技術を用いることで、その媒質表面での反射位相を制御することが可能である。そのような反射構造では、反射位相を360度の範囲で制御できることが望まれる。
【0003】
下記特許文献1には、一般的なEBG構造に基づく構造にて、媒質表面での反射位相を制御することで、構造全体からの反射波の反射方向を制御する技術が開示されている。
また下記非特許文献1にも同様に反射位相を制御することで、パラボラ鏡面を平面構造で実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−207078号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jose A. Encinar, J. Agustin Zornoza著、“Three-Layer Printed Reflectarrays for Contoured Beam Space Applications,”、IEEE Transaction On Antennas and Propagation、Vol. 52、No. 5、pp.1138-1148、May 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に開示されているような、一般にEBG構造と称される構造では、ある周波数に着目した場合、周期的に配列される単位構造を構成する物体の寸法により制御できる位相の範囲は限定され、360度全ての角度の反射位相を得ることができない。
また上記非特許文献1に開示された技術においても同様に、設計周波数において360度の位相範囲を保証する技術ではない。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、媒質境界での反射位相の可変幅を360度以上とすることが可能な反射構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、板状の地導体板と、前記地導体板上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層に設けられた複数の金属小板および複数の金属体と、を備え、前記誘電体層の前記地導体板に垂直な方向の長さが動作周波数における波長の約1/2倍であり、前記複数の金属小板が前記誘電体層の前記地導体板と反対側の面の表面上に略周期的に設置され、前記複数の金属体が、それぞれ一辺の長さが動作周波数における波長の約1/2倍より小さい多面体であり、前記誘電体層内の前記地導体板と各金属小板の間にそれぞれ設置された、ことを特徴とする反射構造にある。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、媒質境界での反射位相の可変幅を360度以上とすることが可能な反射構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る反射構造の構成を示す図である。
【図2】図1の反射構造の反射位相の周波数特性を示す図である。
【図3】従来の反射構造の構成を示す図である。
【図4】従来の反射構造の反射位相の周波数特性を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る反射構造の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る反射構造の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明による反射構造を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る反射構造の構成を示す図であり、(a)は透視斜視図、(b)は透視側面図である。この実施の形態1に係る反射構造は、地導体板11、誘電体層12、金属小板13、金属体14を備える。なお図示のように、地導体板11の長手方向に平行な軸をx軸、地導体板11の面に平行な面をxy面、xy面に垂直な方向(後述する誘電体層12の積層方向)をz軸とする。
【0013】
誘電体層12の厚さ(z軸方向の長さ)は動作周波数における波長λの約1/2倍又は1/2倍とし、誘電体層12の片側の面(下面)に地導体板11が設置され、その反対側の面(上面)に略周期的又は周期的に金属小板13が設置される。各金属小板13の中心から地導体板11へ垂線を下ろし、その垂線の中点が金属体14の中心と一致するように各金属体14を地導体板11と各金属小板13の間の誘電体層12の内部に設置する。なお、この実施の形態において、金属小板13は正方形、金属体14は直方体とし、各金属小板13と各金属体14のxy面内における寸法(面積)は同じであるものとする。また各金属体14のz軸方向の長さは、例えば動作周波数における波長λの約1/4倍以下又は1/4倍以下である。
【0014】
図2はこのようにして構成した反射構造に置いて、金属小板13と金属体14のそれぞれのxy面内の寸法(面積)を変化させた時の反射位相の周波数特性の結果を示す。横軸が周波数、縦軸は反射位相を表す。図2に示されている複数の曲線は、金属小板13と金属体14のxy面内の寸法(面積)を変えた場合のそれぞれの位相特性を示している。図2より、動作周波数において、寸法(面積)を変化させることにより反射位相を+180°から−180°までの360°の範囲で変えることが可能なことが分かる。
【0015】
一方、比較対象として、一般にEBG構造と称される特許文献1で扱われている構造を図3に示す。図1と同様に、(a)は透視斜視図、(b)は透視側面図である。この反射構造は地導体板31、誘電体層32、金属小板33、誘電体層34から成る。更に図2と同様に、図3の構造に対する反射位相の周波数特性を図4に示す。図4より、いずれの周波数においても反射位相が+180°から−180°までの360°の範囲で可変となる周波数は存在せず、変化し得る位相が限定されることが分かる。以上よりこの発明の効果が示された。
【0016】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る反射構造の構成を示す図であり、(a)は透視斜視図、(b)は透視側面図である。実施の形態1との相違点は、誘電体層12が複数の板状誘電体層12a,12b,12cからなる多層構造であり、積層方向(z軸方向)に沿って対象な構造を有するように積層されている点にある。なお図5では3層の場合としているが、2層以上の任意の数の多層構造でよい。このように多層構造とすることで、動作周波数の広帯域化や構造の薄型化が図れるという効果が得られる。
【0017】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係る反射構造の構成を示す図であり、(a)は透視斜視図、(b)は透視側面図である。実施の形態1との相違点は、各金属小板13と地導体板11との間で、z軸方向に複数(ここでは例えば2つ)の金属体14a,14bがそれぞれ装荷されている点、各金属体14a,14bが、z軸方向の寸法(長さ)が動作周波数における波長λの約1/8倍又は1/8倍でありかつ直方体形状である点と、各金属小板13と各金属体14a,14bのxy面内における寸法(面積)が異なる点、にある。このように構成することで、実施の形態1に比較して設計の自由度が増し、周波数の広帯域化や位相範囲の拡大を図ることができる効果が得られる。
【0018】
なお、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の特徴の可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【0019】
また、複数の金属体は、上記実施の形態に限定されるものではなく、少なくとも、それぞれ一辺の長さが動作周波数における波長λの約1/2倍より小さい又は1/2倍より小さい多面体形状のものであり、誘電体層内の地導体板と各金属小板の間にそれぞれ少なくとも1つ設置されていればよい。
【符号の説明】
【0020】
11 地導体板、12 誘電体層、12a,12b,12c 板状誘電体層、13 金属小板、14,14a,14b 金属体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の地導体板と、
前記地導体板上に設けられた誘電体層と、
前記誘電体層に設けられた複数の金属小板および複数の金属体と、
を備え、
前記誘電体層の前記地導体板に垂直な方向の長さが動作周波数における波長の約1/2倍であり、
前記複数の金属小板が前記誘電体層の前記地導体板と反対側の面の表面上に略周期的に設置され、
前記複数の金属体が、それぞれ一辺の長さが動作周波数における波長の約1/2倍より小さい多面体であり、前記誘電体層内の前記地導体板と各金属小板の間にそれぞれ設置された、
ことを特徴とする反射構造。
【請求項2】
前記誘電体層が、前記地導体板に垂直な方向に沿って対象構造を有するように板状誘電体層が複数積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の反射構造。
【請求項3】
前記各金属体が、前記地導体板に垂直な方向の長さが動作周波数における波長の約1/4倍以下である直方体形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射構造。
【請求項4】
前記金属体が、前記地導体板と各金属小板の間にそれぞれ前記地導体板に垂直な方向に複数設けられたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の反射構造。
【請求項5】
前記各金属小板および各金属体の前記地導体板と平行な面内の面積が所望の反射位相の周波数特性が得られるように設定されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の反射構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209827(P2012−209827A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74928(P2011−74928)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省「航空機用先進システム基盤技術開発(航空機システム先進材料技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】