反射画像読取ユニット
【課題】経年変化等による、発光体や受光素子の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する処理にかかる時間を短縮した反射画像読取ユニットを提供する。
【解決手段】紙幣識別ユニット20は、発光体22A、22Bをともに点灯させ、反射板31、32からの反射光量を検出する(S1)。この時点における発光体22Aの劣化の度合をα、発光体22Bの劣化の度合をβとすると、
L(X)=α×L0(X)
R(X)=β×R0(X)
が成立する。紙幣識別ユニット20は、S1で検出した反射板31からの反射光量LR(M)、および反射板32からの反射光量LR(N)を用いて、上述のα、およびβを算出する(S2)。紙幣識別ユニット20は、S2で算出したαに応じて、発光体22Aに供給する電流値を決定するとともに、S2で算出したβに応じて発光体22Bに供給する電流値を決定する。
【解決手段】紙幣識別ユニット20は、発光体22A、22Bをともに点灯させ、反射板31、32からの反射光量を検出する(S1)。この時点における発光体22Aの劣化の度合をα、発光体22Bの劣化の度合をβとすると、
L(X)=α×L0(X)
R(X)=β×R0(X)
が成立する。紙幣識別ユニット20は、S1で検出した反射板31からの反射光量LR(M)、および反射板32からの反射光量LR(N)を用いて、上述のα、およびβを算出する(S2)。紙幣識別ユニット20は、S2で算出したαに応じて、発光体22Aに供給する電流値を決定するとともに、S2で算出したβに応じて発光体22Bに供給する電流値を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明光を読取対象物に照射し、その反射光を検出することにより、当該読取対象物の反射画像を読み取る反射画像読取ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関は、利用者の入力操作に応じて、入金取引や出金取引等の各種取引を処理する現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)を店舗等に設置している。ATMは、周知のように、入金取引や出金取引等にかかる紙幣の真偽や金種を識別する紙幣識別ユニットを設けた、紙幣処理装置を有している。紙幣処理装置は、金種別カートリッジと、入出金口と、を結ぶ紙幣搬送路を有し、この紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送する。紙幣識別ユニットは、この紙幣搬送路に沿って搬送している紙幣の画像を読み取り、紙幣の種別や真偽を識別する。
【0003】
なお、紙幣識別ユニットは、紙幣の種別や真偽を、上述した画像だけでなく、その紙幣から読み取った磁気パターンや、検出した厚さ等も用いて総合的に識別する。
【0004】
搬送路に沿って搬送されている紙葉類の反射画像を読み取る装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されている装置は、紙葉類に対して照明光を照射する照明部と、紙葉類で反射された反射光を検出する検出部とを、搬送路の上方に配置している。照明部は、搬送路の幅方向(以下、主走査方向と言う。)に延びる導光体の両端に発光体を設けた構成である。照明部は、この発光体を点灯することにより、主走査方向にライン状の照明光を紙葉類に照射する。検出部は、CCD等の受光素子を有する構成である。検出部は、紙葉類で反射された反射光を検出することにより、照明光を照射した主走査方向の1ライン分の画像を読み取る。検出部は、紙葉類が所定量搬送される毎に、主走査方向に1ラインずつ画像を読み取り、これらをつなぎ合わせることによって紙葉類の反射画像を得る。
【0005】
上述の反射画像を読み取る装置は、経年変化等により、発光体の発光量や受光素子の感度が変化する。そして、発光体の発光量や受光素子の感度の変化によって、反射画像の読取精度が変化する。一般的な装置は、反射画像の読取精度を一定に保つための構成を備えている。
【0006】
例えば、上述の特許文献1は、導光体に対向する位置に配置した調光基準部材を用い、導光体の両端部の発光体を交互に点灯させ、反射光を検出する。そして、発光体毎に、記憶している基準光量と比較し、各発光体の発光量を補正する構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−118142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、上述したように、導光体の両端部の発光体を交互に点灯させ、そのときの反射光を検出する構成である。すなわち、2つの異なる状態で反射光を検出する必要があった。このため、発光量を補正する処理にかかる時間が長いという問題があった。特に、ATMは、紙幣の識別をともなう種別の取引(入金取引や出金取引等)を処理するときに、この取引処理に先立って、上述の補正を行う。したがって、上述の補正にかかる処理の時間が長いと、取引処理に要する時間も長くなり、顧客サービスを低下させるという問題があった。
【0009】
この発明の目的は、経年変化等による、発光体や受光素子の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する処理にかかる時間を短縮した反射画像読取ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の反射画像読取ユニットは、上述の課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
搬送路に沿って搬送されている読取対象物に対向する一方の側に照明部、および受光部を配置している。照明部は、搬送されている読取対象物の幅方向(主走査方向)にライン状の照明光を照射する。受光部は、搬送されている読取対象物の幅方向に並べた複数の受光素子で、この読取対象物で反射された反射光を検出する。
【0012】
また、照明部は、主走査方向に延びる導光体の両端部のそれぞれに、この導光体に光を入射する発光体を有している。また、反射板が、導光体の両端部が対向する位置のそれぞれに配置されている。また、記憶部は、導光体の一方の端部の発光体を点灯し、他方の端部の発光体を消灯した第1の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第1基準パターンと、前記導光体の一方の端部の発光体を消灯し、他方の端部の発光体を点灯した第2の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第2基準パターンと、を記憶する。第1基準パターンは、第1の状態におけるライン状の照明光の光量分布であってもよいし、この第1の状態で、受光部が検出した各反射板からの反射光量であってもよい。同様に、第2基準パターンは、第2の状態におけるライン状の照明光の光量分布であってもよいし、この第2の状態で、受光部が検出した各反射板からの反射光量であってもよい。
【0013】
そして、補正係数算出部が、導光体の両端部の発光体をともに点灯した第3の状態で、導光体の両端部に対向させて配置した反射板毎に、その反射光を受光部で検出し、ここで検出した反射光量と、記憶部に記憶している第1基準パターンおよび第2基準パターンと、に基づいて、読取対象物の反射画像の読取時に用いる補正係数を算出する。
【0014】
このように、導光体の両端部の発光体をともに点灯した第3の状態で各反射板からの反射光を検出することによって、2つの発光体の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する。したがって、この補正にかかる処理時間の短縮が図れる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、経年変化等による、発光体や受光素子の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する処理にかかる時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ATMの外観を示す概略図である。
【図2】ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】紙幣処理部の内部構成を示す概略図である。
【図4】紙幣識別ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】発光部と、受光部との配置を説明する図である。
【図6】発光部と、受光部との配置を説明する図である。
【図7】初期光量分布パターンL0(X)を示す図である。
【図8】初期光量分布パターンR0(X)を示す図である。
【図9】初期光量分布パターンLR0(X)を示す図である。
【図10】光量分布パターンL(X)を示す図である。
【図11】光量分布パターンR(X)を示す図である。
【図12】補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態である反射画像読取ユニットを適用した現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)について説明する。
【0018】
図1は、ATMの外観を示す概略図であり、図2は、ATMの主要部の構成を示すブロック図である。ATM1は、金融機関の店舗やコンビニエンスストア等に設置される。ATM1は、利用者の入力操作に応じて、入金取引や出金取引等の各種取引を処理する。ATM1は、主制御部2と、表示・操作部3と、紙幣処理部4と、硬貨処理部5と、カード・明細書処理部6と、通帳処理部7と、生体情報読取部8と、通信部9と、を備えている。主制御部2は、ATM1本体各部の動作を制御し、利用者が要求した取引を処理する。
【0019】
表示・操作部3は、本体正面に設けた表示器3A、およびこの表示器3Aの画面上に貼付したタッチパネル3B等を有している。表示・操作部3は、利用者に対する操作案内画面を表示器3Aに表示する。また、表示・操作部3は、タッチパネル3Bの押下位置を検知することにより、暗証番号や取引内容(取引種別、入出金金額等)にかかる利用者の入力操作を検出する。
【0020】
紙幣処理部4は、入出金紙幣を処理する。本体正面には、入出金紙幣を収納する紙幣入出金口4Aを設けている。この紙幣入出金口4Aには、シャッタが設けられている。また、紙幣入出金口4Aには、入金紙幣、出金紙幣、および返却紙幣の収納場所を区別する仕切り板が設けられている。紙幣処理部4は、このシャッタの開閉により、紙幣入出金口4Aに対する紙幣の投入や取り出しを制限する。紙幣処理部4の詳細な構成については、後述する。
【0021】
硬貨処理部5は、本体正面に設けた硬貨入出金口5Aと、本体内部に収納されている硬貨カートリッジと、の間に形成された硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する。また、硬貨処理部5は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種、および真偽を識別する硬貨識別部を有している。
【0022】
カード・明細書処理部6は、本体正面に設けたカード挿入口6Aに挿入されたキャッシュカード(以下、単にカードと言う。)を取り込み、このカードの磁気ストライプに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。また、挿入されたカードがICカードである場合には、必要に応じて、そのカードのICチップに記録されているデータの読み取りや、書き換えも行う。ICチップには、このカードの所有者である利用者の生体情報(登録情報)等が記録されている。さらに、カード・明細書処理部6は、取引内容を明細書に印字する印字部(不図示)を有する。カード・明細書処理部6は、取引内容を印字した明細書を本体正面に設けた明細書放出口6Bに放出する。
【0023】
通帳処理部7は、本体正面に設けた通帳挿入口7Aに挿入された通帳を取り込み、この通帳に対して取引履歴を印字する印字部(不図示)を有している。また、通帳処理部7は、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。
【0024】
また、生体情報読取部8は、本体正面に設けた生体情報読取センサ8Aを有している。この生体情報読取センサ8Aは、利用者の指静脈パターンを読み取る。ここでは、生体情報読取センサ8Aとして、指静脈パターンを読み取るセンサを例にしているが、掌静脈、虹彩、網膜等の他の種類の生体情報を読み取るセンサとしてもよい。生体情報読取部8は、生体情報読取センサ8Aで読み取った利用者の生体情報(読取情報)と、カードのICチップに記録されている生体情報(登録情報)と、を照合し、その類似度から利用者とカードの所有者とが同一人物であるかどうかを認証する。さらに、通信部9は、ネットワークを介して、金融機関のホスト装置(不図示)との通信を制御する。
【0025】
次に、紙幣処理部4の構成について説明する。図3は、紙幣処理部の内部構成を示す概略図である。紙幣処理部4は、金種別カートリッジ11〜14と、回収カートリッジ15とを内部に収納している。金種別カートリッジ11〜14、および回収カートリッジ15は、本体に対して着脱自在である。金種別カートリッジ11、12は、1万円紙幣を収納する。金種別カートリッジ13は、千円紙幣を収納する。金種別カートリッジ14は、2千円紙幣、および5千円紙幣を収納する。回収カートリッジ15は、取引に使用できないと判断した紙幣を収納する。金種別カートリッジ14に収納している紙幣(2千円紙幣、および5千円紙幣)、および回収カートリッジ15に収納している紙幣は出金紙幣として使用しない。このため、金種別カートリッジ14、および回収カートリッジ15については、紙幣の繰り出し機構を有していない構成であってもよい。
【0026】
また、紙幣処理部4は、入金紙幣等を一時的に収納し、保留する一時保留部16を有している。さらに、入出金口4A、金種別カートリッジ11〜14、回収カートリッジ15、一時保留部16を結ぶ紙幣搬送路17を有している。紙幣処理部4は、この紙幣搬送路17に沿って、紙幣を搬送する紙幣搬送部(不図示)を有している。また、紙幣搬送部は、紙幣搬送路17の分岐点等に設けられているフラッパを制御し、搬送している紙幣の搬送先を制御する。さらに、紙幣処理部4は、紙幣搬送路17に沿って搬送されている紙幣の金種、および真偽を識別する紙幣識別ユニット20を有している。紙幣識別ユニット20は、紙幣搬送路17に沿って搬送されている紙幣毎に、その金種や真偽を識別する。
【0027】
図4は、紙幣識別ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。紙幣識別ユニット20は、制御部21と、照明部22と、点灯部23と、受光部24と、検出部25と、識別部26と、記憶部27と、入出力部28と、を備えている。この紙幣識別ユニット20は、紙幣の反射画像を読み取り、この反射画像に基づき紙幣の金種や真偽を識別する。制御部21は、紙幣識別ユニット20の各部の動作を制御する。
【0028】
図5、および図6は、発光部と、受光部との配置を説明する図である。図5は、図6に示すB−B方向の矢示図である。図6は、図5に示すA−A方向の矢示図である。図5における左右方向は、紙幣の搬送方向である副走査方向である。また、図6における左右方向は、紙幣搬送路17の幅方向である主走査方向である。
【0029】
照明部22は、主走査方向に延びる導光体22Cと、その導光体22Cの両端のそれぞれに設けた発光体22A、22Bとを有している。照明部22は、主走査方向に延びるライン状の光を照射する。照明部22は、発光体22A、22Bの点灯により、導光体22Cに光を入射する。導光体22Cは、紙幣搬送路17を搬送されている紙幣に対して照明光を効率的に照射するため、紙幣搬送路17に対向する面から、入射された光を放出する。例えば、導光体22Cは、紙幣搬送路17に対向しない面(発光体22A、22Bの光を入射する端面を除く)に反射膜コーティングを施し、発光体22A、22Bが入射した光を、紙幣搬送路17に対向しない面からの放出を制限している。点灯部23は、照明部22の発光体22A、22Bの点灯/消灯を個別に制御する。また、点灯部23は、発光体22A、22Bに流す電流を個別に制御し、点灯時における発光量についても個別に制御する。
【0030】
受光部24は、複数の受光素子を有するラインセンサである。複数の受光素子は、主走査方向に並んでいる。検出部25は、各受光素子の出力を検出することにより、紙幣について主走査方向における1ライン分の反射画像を読み取る。検出部25は、紙幣が副走査方向に所定量搬送される毎に、繰り返し読み取った主走査方向における1ライン分の反射画像をつなぎ合わせて紙幣1枚分の反射画像を生成する。
【0031】
また、紙幣識別ユニット20は、反射板31、32を、紙幣搬送路17の両端に配置している。反射板31、32は、照明部22の照明光が照射される位置に配置している。また、反射板31、32は、紙幣搬送路17に対して、照明部22や受光部24と同じ側に配置している。したがって、紙幣搬送路17における紙幣の有無にかかわらず、照明部22が照明を反射板31、32に照射し、反射板31、32で反射された反射光を受光部24で検出できる。
【0032】
識別部26は、検出部25で得た紙幣の反射画像に基づき、その紙幣の金種や真偽を識別する。記憶部27は、この紙幣識別ユニット20の動作制御に用いるパラメータ等を記憶する。入出力部28は、識別部26における識別結果を紙幣処理部4に通知する。紙幣処理部4は、紙幣識別ユニット20から通知された識別結果に応じて、その紙幣の搬送先を決定する。
【0033】
ここで、この実施形態にかかるATM1の全体動作について簡単に説明しておく。ここではATM1における入金取引、および出金取引の処理手順を例にして説明する。
【0034】
入金取引では、ATM1は、入出金口4Aに投入された入金紙幣を、1枚ずつ紙幣搬送路17に繰り出し、紙幣識別ユニット20で金種、および真偽を識別する。紙幣処理部4は、その金種、および真券であることが識別された入金紙幣を、一時保留部16に搬送し、収納する。一方、紙幣処理部4は、金種、または、真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を入出金口4Aに戻し、利用者に返却する。ATM1は、利用者により、入金金額が確定されると、確定された入金金額を利用者の口座(指定された口座)に入金する入金処理を行う。この入金処理は、利用者の口座番号や入金金額をホスト装置に通知する処理である。また、カード・明細書処理部6で取引内容を印字した明細票の発行、または、通帳処理部7で今回受け付けた通帳への取引内容の印字を行う。
【0035】
紙幣処理部4は、その後、一時保留部16に保留している紙幣を1枚ずつ繰り出し、再度、紙幣識別ユニット20で金種、および真偽を識別する。紙幣処理部4は、紙幣毎に、その紙幣について識別した金種のカートリッジに搬送し、収納する。紙幣処理部4は、金種、または、真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を回収カートリッジ15に搬送し、収納する。
【0036】
また、出金取引では、ATM1は、指定された出金金額に応じて、金種毎に出金する紙幣の枚数を確定する。紙幣処理部4は、金種毎に、金種別カートリッジ11〜13から確定した枚数の紙幣を繰り出し、紙幣識別ユニット20で金種、および真偽を識別する。紙幣処理部4は、金種、および真券であることが識別できた紙幣を、入出金口4Aに搬送し、収納する。一方、金種、または、真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を回収カートリッジ15に搬送し、収納する。また、紙幣を回収カートリッジ15に収納する毎に、その紙幣を繰り出した金種別カートリッジ11〜13から、新たに紙幣を1枚繰り出す。
【0037】
ATM1は、出金金額に応じた紙幣を入出金口4Aに収納すると、出金金額を利用者の口座(指定された口座)から出金する出金処理を行う。この出金処理は、利用者の口座番号や出金金額をホスト装置に通知する処理である。ATM1は、入出金口4Aに設けたシャッタを開し、この入出金口4A内に収納している紙幣を、利用者に対して放出する。また、カード・明細書処理部6で取引内容を印字した明細票の発行、または、通帳処理部7で今回受け付けた通帳への取引内容の印字を行う。
【0038】
紙幣識別ユニット20は、紙幣の反射画像を用いて、金種や真偽を識別する。また、ここでは、特に説明していないが、紙幣識別ユニット20は、紙幣の磁気パターンや、厚さ等も検出し、総合的に金種や真偽の識別を総合的に行う。
【0039】
次に、紙幣識別ユニット20における、発光体22A、22Bや受光部24の受光素子の経年変化等による、反射画像の読取精度の変化を補正する処理について説明する。紙幣識別ユニット20は、図7、および図8に示す初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)を記憶している。図7に示す初期光量分布パターンL0(X)は、発光体22Aを点灯させ、且つ発光体22Bを消灯させた状態(この発明で言う第1の状態)で、紙幣搬送路17に基準となる反射板を載置したときに、受光部24が有する主走査方向に並んでいる各受光素子の出力である。また、図8に示す初期光量分布パターンR0(X)は、発光体22Aを消灯させ、且つ発光体22Bを点灯させた状態(この発明で言う第2の状態)で、紙幣搬送路17に基準となる反射板を載置したときに、受光部24が有する主走査方向に並んでいる各受光素子の出力である。
【0040】
なお、初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)にかかる変数Xは、主走査方向に並んでいる受光素子を示す。X=Mは、反射板31からの反射光を受光する位置に設けられた受光素子であり、X=Nは、反射板32からの反射光を受光する位置に設けられた受光素子である。また、この初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)は、発光体22A、22Bをともに点灯させたときに、図9に示すように、紙幣の反射画像を読み取るのに適正な光量で、主走査方向における光量分布が略均一になるLR0(X)が得られるように、発光体22A、22Bに供給する電流を個別に定めている。通常、LR0(X)は、L0(X)とR0(X)との和に略一致する。
【0041】
発光体22A,22Bは、経年変化等により、供給電流に対する発光量が低下する。例えば、発光体22Aを点灯させ、且つ発光体22Bを消灯させたときに得られる光量分布パターンL(X)は、発光体22Aの経年変化等により、図10に示す分布に変化する。また、発光体22Aを消灯させ、且つ発光体22Bを点灯させたときに得られる光量分布パターンR(X)は、発光体22Bの経年変化等により、図11に示す分布に変化する。
【0042】
なお、図10、および図11に示す光量分布パターンの変化には、発光体22A、22Bの経年変化だけでなく、受光部24の経年変化等も含まれている。
【0043】
通常、発光体22Aの光量低下の度合と、発光体22Bの光量低下の度合とは、同じにならない。
【0044】
図12は、補正処理を示すフローチャートである。この補正処理は、入金取引や出金取引等、紙幣を取り扱う取引を処理するときに、紙幣の識別に先立って行う。この補正処理は、照明部22が主走査方向に照射するライン状の照明光の光量分布を、図9に示した初期光量分布LR0(X)に一致させる処理である。
【0045】
紙幣識別ユニット20は、発光体22A、22Bをともに点灯させ、反射板31、32からの反射光量を検出する(S1)。S1では、発光体22Aに供給する電流値は、初期光量分布パターンL0(X)を得たときに供給した電流値である。また、発光体22Bに供給する電流値は、初期光量分布パターンR0(X)を得たときに供給した電流値である。
【0046】
この時点における発光体22Aの劣化の度合をα、発光体22Bの劣化の度合をβとすると、
L(X)=α×L0(X)
R(X)=β×R0(X)
で、近似できる。また、S1で得た反射板31からの反射光量LR(M)は、
LR(M)=α×L0(M)+β×R0(M)
であらわせる。また、S1で得た反射板32からの反射光量LR(N)は、
LR(N)=α×L0(N)+β×R0(N)
であらわせる。
【0047】
上述したように、紙幣識別ユニット20は、初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)を記憶部27に記憶している。したがって、
LR0(X)=L0(X)+R0(X)
であるとすると、
LR0(M)=L0(M)+R0(M)
となる。また、
LR0(N)=L0(N)+R0(N)
となる。
【0048】
紙幣識別ユニット20は、S1で検出した反射板31からの反射光量LR(M)、および反射板32からの反射光量LR(N)を用いて、上述のα、およびβを算出する(S2)。S2では、
LR(M)=αL0(M)+β×R0(M)
LR(N)=αL0(N)+β×R0(N)
からなる、2元一次連立方程式を解き、α、およびβを算出する。
【0049】
紙幣識別ユニット20は、S2で算出したαに応じて、発光体22Aに供給する電流値を決定するとともに、S2で算出したβに応じて発光体22Bに供給する電流値を決定する(S3)。
【0050】
点灯部23は、発光体22A、22Bに供給する電流を、S3で決定された電流値に設定する。
【0051】
これにより、照明部22が紙幣搬送路に沿って搬送されている紙幣に対して照射するライン状の照明光の光量分布LR(X)を、初期設定時の光量分布LR0(X)に略一致させることができる。すなわち、発光体22A、22Bにおける経年劣化等による発光量の低下に影響されることなく、紙幣に対して照射するライン状の照明光を適正な光量分布(初期設定時の光量分布LR0(X))に補正できる。したがって、紙幣の種別や真偽にかかる識別精度の低下が抑えられる。
【0052】
また、発光体22A,22Bをともに点灯させた状態で、検出したLR(M)、LR(N)によって、発光体22A、22Bの劣化による反射画像の読取精度の変化を補正するので、この補正にかかる処理時間の短縮が図れる。
【0053】
なお、上述の説明から明らかなように、少なくとも、L0(M)、L0(N)、R0(M)、R0(N)の4つの反射光量を記憶部27に記憶しておけば、上述の補正処理は行える。
【0054】
また、上述の説明では、S2で算出したα、およびβに応じて、点灯部23が発光体22A、22Bに供給する電流を変化させるとしたが、受光部24の各受光素子の出力を、検出部25で増幅する増幅率を変化させてもよい。また、増幅率は、受光素子毎に設定できる構成である。具体的には、S2で算出したα、およびβから推定された現在の光量分布パターンLR(X)と初期の光量分布パターンLR0(X)との比較により受光素子毎の出力を推定する。そして、受光素子毎に、その受光素子における、初期の光量分布パターンLR0(X)での出力と、現在の光量分布パターンLR(X)での出力との比率に基づき、増幅率を変化させてもよい。この場合には、発光体22A、22Bの発光量を調整する構成を不要にできるとともに、粗い調整にも対応可能である。
【0055】
また、本願発明は、上述の紙幣識別ユニット20だけでなく、小切手、証券、原稿等の紙葉類の反射画像を読み取る装置であれば、どのような装置であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
20…紙幣識別ユニット
21…制御部
22…照明部
22A,22B…発光体
22C…導光体
23…点灯部
24…受光部
25…検出部
26…識別部
27…記憶部
28…入出力部
31,32…反射板
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明光を読取対象物に照射し、その反射光を検出することにより、当該読取対象物の反射画像を読み取る反射画像読取ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関は、利用者の入力操作に応じて、入金取引や出金取引等の各種取引を処理する現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)を店舗等に設置している。ATMは、周知のように、入金取引や出金取引等にかかる紙幣の真偽や金種を識別する紙幣識別ユニットを設けた、紙幣処理装置を有している。紙幣処理装置は、金種別カートリッジと、入出金口と、を結ぶ紙幣搬送路を有し、この紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送する。紙幣識別ユニットは、この紙幣搬送路に沿って搬送している紙幣の画像を読み取り、紙幣の種別や真偽を識別する。
【0003】
なお、紙幣識別ユニットは、紙幣の種別や真偽を、上述した画像だけでなく、その紙幣から読み取った磁気パターンや、検出した厚さ等も用いて総合的に識別する。
【0004】
搬送路に沿って搬送されている紙葉類の反射画像を読み取る装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されている装置は、紙葉類に対して照明光を照射する照明部と、紙葉類で反射された反射光を検出する検出部とを、搬送路の上方に配置している。照明部は、搬送路の幅方向(以下、主走査方向と言う。)に延びる導光体の両端に発光体を設けた構成である。照明部は、この発光体を点灯することにより、主走査方向にライン状の照明光を紙葉類に照射する。検出部は、CCD等の受光素子を有する構成である。検出部は、紙葉類で反射された反射光を検出することにより、照明光を照射した主走査方向の1ライン分の画像を読み取る。検出部は、紙葉類が所定量搬送される毎に、主走査方向に1ラインずつ画像を読み取り、これらをつなぎ合わせることによって紙葉類の反射画像を得る。
【0005】
上述の反射画像を読み取る装置は、経年変化等により、発光体の発光量や受光素子の感度が変化する。そして、発光体の発光量や受光素子の感度の変化によって、反射画像の読取精度が変化する。一般的な装置は、反射画像の読取精度を一定に保つための構成を備えている。
【0006】
例えば、上述の特許文献1は、導光体に対向する位置に配置した調光基準部材を用い、導光体の両端部の発光体を交互に点灯させ、反射光を検出する。そして、発光体毎に、記憶している基準光量と比較し、各発光体の発光量を補正する構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−118142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、上述したように、導光体の両端部の発光体を交互に点灯させ、そのときの反射光を検出する構成である。すなわち、2つの異なる状態で反射光を検出する必要があった。このため、発光量を補正する処理にかかる時間が長いという問題があった。特に、ATMは、紙幣の識別をともなう種別の取引(入金取引や出金取引等)を処理するときに、この取引処理に先立って、上述の補正を行う。したがって、上述の補正にかかる処理の時間が長いと、取引処理に要する時間も長くなり、顧客サービスを低下させるという問題があった。
【0009】
この発明の目的は、経年変化等による、発光体や受光素子の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する処理にかかる時間を短縮した反射画像読取ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の反射画像読取ユニットは、上述の課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
搬送路に沿って搬送されている読取対象物に対向する一方の側に照明部、および受光部を配置している。照明部は、搬送されている読取対象物の幅方向(主走査方向)にライン状の照明光を照射する。受光部は、搬送されている読取対象物の幅方向に並べた複数の受光素子で、この読取対象物で反射された反射光を検出する。
【0012】
また、照明部は、主走査方向に延びる導光体の両端部のそれぞれに、この導光体に光を入射する発光体を有している。また、反射板が、導光体の両端部が対向する位置のそれぞれに配置されている。また、記憶部は、導光体の一方の端部の発光体を点灯し、他方の端部の発光体を消灯した第1の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第1基準パターンと、前記導光体の一方の端部の発光体を消灯し、他方の端部の発光体を点灯した第2の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第2基準パターンと、を記憶する。第1基準パターンは、第1の状態におけるライン状の照明光の光量分布であってもよいし、この第1の状態で、受光部が検出した各反射板からの反射光量であってもよい。同様に、第2基準パターンは、第2の状態におけるライン状の照明光の光量分布であってもよいし、この第2の状態で、受光部が検出した各反射板からの反射光量であってもよい。
【0013】
そして、補正係数算出部が、導光体の両端部の発光体をともに点灯した第3の状態で、導光体の両端部に対向させて配置した反射板毎に、その反射光を受光部で検出し、ここで検出した反射光量と、記憶部に記憶している第1基準パターンおよび第2基準パターンと、に基づいて、読取対象物の反射画像の読取時に用いる補正係数を算出する。
【0014】
このように、導光体の両端部の発光体をともに点灯した第3の状態で各反射板からの反射光を検出することによって、2つの発光体の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する。したがって、この補正にかかる処理時間の短縮が図れる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、経年変化等による、発光体や受光素子の劣化による反射画像の読取精度の変化を補正する処理にかかる時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ATMの外観を示す概略図である。
【図2】ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】紙幣処理部の内部構成を示す概略図である。
【図4】紙幣識別ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】発光部と、受光部との配置を説明する図である。
【図6】発光部と、受光部との配置を説明する図である。
【図7】初期光量分布パターンL0(X)を示す図である。
【図8】初期光量分布パターンR0(X)を示す図である。
【図9】初期光量分布パターンLR0(X)を示す図である。
【図10】光量分布パターンL(X)を示す図である。
【図11】光量分布パターンR(X)を示す図である。
【図12】補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態である反射画像読取ユニットを適用した現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)について説明する。
【0018】
図1は、ATMの外観を示す概略図であり、図2は、ATMの主要部の構成を示すブロック図である。ATM1は、金融機関の店舗やコンビニエンスストア等に設置される。ATM1は、利用者の入力操作に応じて、入金取引や出金取引等の各種取引を処理する。ATM1は、主制御部2と、表示・操作部3と、紙幣処理部4と、硬貨処理部5と、カード・明細書処理部6と、通帳処理部7と、生体情報読取部8と、通信部9と、を備えている。主制御部2は、ATM1本体各部の動作を制御し、利用者が要求した取引を処理する。
【0019】
表示・操作部3は、本体正面に設けた表示器3A、およびこの表示器3Aの画面上に貼付したタッチパネル3B等を有している。表示・操作部3は、利用者に対する操作案内画面を表示器3Aに表示する。また、表示・操作部3は、タッチパネル3Bの押下位置を検知することにより、暗証番号や取引内容(取引種別、入出金金額等)にかかる利用者の入力操作を検出する。
【0020】
紙幣処理部4は、入出金紙幣を処理する。本体正面には、入出金紙幣を収納する紙幣入出金口4Aを設けている。この紙幣入出金口4Aには、シャッタが設けられている。また、紙幣入出金口4Aには、入金紙幣、出金紙幣、および返却紙幣の収納場所を区別する仕切り板が設けられている。紙幣処理部4は、このシャッタの開閉により、紙幣入出金口4Aに対する紙幣の投入や取り出しを制限する。紙幣処理部4の詳細な構成については、後述する。
【0021】
硬貨処理部5は、本体正面に設けた硬貨入出金口5Aと、本体内部に収納されている硬貨カートリッジと、の間に形成された硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する。また、硬貨処理部5は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種、および真偽を識別する硬貨識別部を有している。
【0022】
カード・明細書処理部6は、本体正面に設けたカード挿入口6Aに挿入されたキャッシュカード(以下、単にカードと言う。)を取り込み、このカードの磁気ストライプに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。また、挿入されたカードがICカードである場合には、必要に応じて、そのカードのICチップに記録されているデータの読み取りや、書き換えも行う。ICチップには、このカードの所有者である利用者の生体情報(登録情報)等が記録されている。さらに、カード・明細書処理部6は、取引内容を明細書に印字する印字部(不図示)を有する。カード・明細書処理部6は、取引内容を印字した明細書を本体正面に設けた明細書放出口6Bに放出する。
【0023】
通帳処理部7は、本体正面に設けた通帳挿入口7Aに挿入された通帳を取り込み、この通帳に対して取引履歴を印字する印字部(不図示)を有している。また、通帳処理部7は、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。
【0024】
また、生体情報読取部8は、本体正面に設けた生体情報読取センサ8Aを有している。この生体情報読取センサ8Aは、利用者の指静脈パターンを読み取る。ここでは、生体情報読取センサ8Aとして、指静脈パターンを読み取るセンサを例にしているが、掌静脈、虹彩、網膜等の他の種類の生体情報を読み取るセンサとしてもよい。生体情報読取部8は、生体情報読取センサ8Aで読み取った利用者の生体情報(読取情報)と、カードのICチップに記録されている生体情報(登録情報)と、を照合し、その類似度から利用者とカードの所有者とが同一人物であるかどうかを認証する。さらに、通信部9は、ネットワークを介して、金融機関のホスト装置(不図示)との通信を制御する。
【0025】
次に、紙幣処理部4の構成について説明する。図3は、紙幣処理部の内部構成を示す概略図である。紙幣処理部4は、金種別カートリッジ11〜14と、回収カートリッジ15とを内部に収納している。金種別カートリッジ11〜14、および回収カートリッジ15は、本体に対して着脱自在である。金種別カートリッジ11、12は、1万円紙幣を収納する。金種別カートリッジ13は、千円紙幣を収納する。金種別カートリッジ14は、2千円紙幣、および5千円紙幣を収納する。回収カートリッジ15は、取引に使用できないと判断した紙幣を収納する。金種別カートリッジ14に収納している紙幣(2千円紙幣、および5千円紙幣)、および回収カートリッジ15に収納している紙幣は出金紙幣として使用しない。このため、金種別カートリッジ14、および回収カートリッジ15については、紙幣の繰り出し機構を有していない構成であってもよい。
【0026】
また、紙幣処理部4は、入金紙幣等を一時的に収納し、保留する一時保留部16を有している。さらに、入出金口4A、金種別カートリッジ11〜14、回収カートリッジ15、一時保留部16を結ぶ紙幣搬送路17を有している。紙幣処理部4は、この紙幣搬送路17に沿って、紙幣を搬送する紙幣搬送部(不図示)を有している。また、紙幣搬送部は、紙幣搬送路17の分岐点等に設けられているフラッパを制御し、搬送している紙幣の搬送先を制御する。さらに、紙幣処理部4は、紙幣搬送路17に沿って搬送されている紙幣の金種、および真偽を識別する紙幣識別ユニット20を有している。紙幣識別ユニット20は、紙幣搬送路17に沿って搬送されている紙幣毎に、その金種や真偽を識別する。
【0027】
図4は、紙幣識別ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。紙幣識別ユニット20は、制御部21と、照明部22と、点灯部23と、受光部24と、検出部25と、識別部26と、記憶部27と、入出力部28と、を備えている。この紙幣識別ユニット20は、紙幣の反射画像を読み取り、この反射画像に基づき紙幣の金種や真偽を識別する。制御部21は、紙幣識別ユニット20の各部の動作を制御する。
【0028】
図5、および図6は、発光部と、受光部との配置を説明する図である。図5は、図6に示すB−B方向の矢示図である。図6は、図5に示すA−A方向の矢示図である。図5における左右方向は、紙幣の搬送方向である副走査方向である。また、図6における左右方向は、紙幣搬送路17の幅方向である主走査方向である。
【0029】
照明部22は、主走査方向に延びる導光体22Cと、その導光体22Cの両端のそれぞれに設けた発光体22A、22Bとを有している。照明部22は、主走査方向に延びるライン状の光を照射する。照明部22は、発光体22A、22Bの点灯により、導光体22Cに光を入射する。導光体22Cは、紙幣搬送路17を搬送されている紙幣に対して照明光を効率的に照射するため、紙幣搬送路17に対向する面から、入射された光を放出する。例えば、導光体22Cは、紙幣搬送路17に対向しない面(発光体22A、22Bの光を入射する端面を除く)に反射膜コーティングを施し、発光体22A、22Bが入射した光を、紙幣搬送路17に対向しない面からの放出を制限している。点灯部23は、照明部22の発光体22A、22Bの点灯/消灯を個別に制御する。また、点灯部23は、発光体22A、22Bに流す電流を個別に制御し、点灯時における発光量についても個別に制御する。
【0030】
受光部24は、複数の受光素子を有するラインセンサである。複数の受光素子は、主走査方向に並んでいる。検出部25は、各受光素子の出力を検出することにより、紙幣について主走査方向における1ライン分の反射画像を読み取る。検出部25は、紙幣が副走査方向に所定量搬送される毎に、繰り返し読み取った主走査方向における1ライン分の反射画像をつなぎ合わせて紙幣1枚分の反射画像を生成する。
【0031】
また、紙幣識別ユニット20は、反射板31、32を、紙幣搬送路17の両端に配置している。反射板31、32は、照明部22の照明光が照射される位置に配置している。また、反射板31、32は、紙幣搬送路17に対して、照明部22や受光部24と同じ側に配置している。したがって、紙幣搬送路17における紙幣の有無にかかわらず、照明部22が照明を反射板31、32に照射し、反射板31、32で反射された反射光を受光部24で検出できる。
【0032】
識別部26は、検出部25で得た紙幣の反射画像に基づき、その紙幣の金種や真偽を識別する。記憶部27は、この紙幣識別ユニット20の動作制御に用いるパラメータ等を記憶する。入出力部28は、識別部26における識別結果を紙幣処理部4に通知する。紙幣処理部4は、紙幣識別ユニット20から通知された識別結果に応じて、その紙幣の搬送先を決定する。
【0033】
ここで、この実施形態にかかるATM1の全体動作について簡単に説明しておく。ここではATM1における入金取引、および出金取引の処理手順を例にして説明する。
【0034】
入金取引では、ATM1は、入出金口4Aに投入された入金紙幣を、1枚ずつ紙幣搬送路17に繰り出し、紙幣識別ユニット20で金種、および真偽を識別する。紙幣処理部4は、その金種、および真券であることが識別された入金紙幣を、一時保留部16に搬送し、収納する。一方、紙幣処理部4は、金種、または、真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を入出金口4Aに戻し、利用者に返却する。ATM1は、利用者により、入金金額が確定されると、確定された入金金額を利用者の口座(指定された口座)に入金する入金処理を行う。この入金処理は、利用者の口座番号や入金金額をホスト装置に通知する処理である。また、カード・明細書処理部6で取引内容を印字した明細票の発行、または、通帳処理部7で今回受け付けた通帳への取引内容の印字を行う。
【0035】
紙幣処理部4は、その後、一時保留部16に保留している紙幣を1枚ずつ繰り出し、再度、紙幣識別ユニット20で金種、および真偽を識別する。紙幣処理部4は、紙幣毎に、その紙幣について識別した金種のカートリッジに搬送し、収納する。紙幣処理部4は、金種、または、真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を回収カートリッジ15に搬送し、収納する。
【0036】
また、出金取引では、ATM1は、指定された出金金額に応じて、金種毎に出金する紙幣の枚数を確定する。紙幣処理部4は、金種毎に、金種別カートリッジ11〜13から確定した枚数の紙幣を繰り出し、紙幣識別ユニット20で金種、および真偽を識別する。紙幣処理部4は、金種、および真券であることが識別できた紙幣を、入出金口4Aに搬送し、収納する。一方、金種、または、真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を回収カートリッジ15に搬送し、収納する。また、紙幣を回収カートリッジ15に収納する毎に、その紙幣を繰り出した金種別カートリッジ11〜13から、新たに紙幣を1枚繰り出す。
【0037】
ATM1は、出金金額に応じた紙幣を入出金口4Aに収納すると、出金金額を利用者の口座(指定された口座)から出金する出金処理を行う。この出金処理は、利用者の口座番号や出金金額をホスト装置に通知する処理である。ATM1は、入出金口4Aに設けたシャッタを開し、この入出金口4A内に収納している紙幣を、利用者に対して放出する。また、カード・明細書処理部6で取引内容を印字した明細票の発行、または、通帳処理部7で今回受け付けた通帳への取引内容の印字を行う。
【0038】
紙幣識別ユニット20は、紙幣の反射画像を用いて、金種や真偽を識別する。また、ここでは、特に説明していないが、紙幣識別ユニット20は、紙幣の磁気パターンや、厚さ等も検出し、総合的に金種や真偽の識別を総合的に行う。
【0039】
次に、紙幣識別ユニット20における、発光体22A、22Bや受光部24の受光素子の経年変化等による、反射画像の読取精度の変化を補正する処理について説明する。紙幣識別ユニット20は、図7、および図8に示す初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)を記憶している。図7に示す初期光量分布パターンL0(X)は、発光体22Aを点灯させ、且つ発光体22Bを消灯させた状態(この発明で言う第1の状態)で、紙幣搬送路17に基準となる反射板を載置したときに、受光部24が有する主走査方向に並んでいる各受光素子の出力である。また、図8に示す初期光量分布パターンR0(X)は、発光体22Aを消灯させ、且つ発光体22Bを点灯させた状態(この発明で言う第2の状態)で、紙幣搬送路17に基準となる反射板を載置したときに、受光部24が有する主走査方向に並んでいる各受光素子の出力である。
【0040】
なお、初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)にかかる変数Xは、主走査方向に並んでいる受光素子を示す。X=Mは、反射板31からの反射光を受光する位置に設けられた受光素子であり、X=Nは、反射板32からの反射光を受光する位置に設けられた受光素子である。また、この初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)は、発光体22A、22Bをともに点灯させたときに、図9に示すように、紙幣の反射画像を読み取るのに適正な光量で、主走査方向における光量分布が略均一になるLR0(X)が得られるように、発光体22A、22Bに供給する電流を個別に定めている。通常、LR0(X)は、L0(X)とR0(X)との和に略一致する。
【0041】
発光体22A,22Bは、経年変化等により、供給電流に対する発光量が低下する。例えば、発光体22Aを点灯させ、且つ発光体22Bを消灯させたときに得られる光量分布パターンL(X)は、発光体22Aの経年変化等により、図10に示す分布に変化する。また、発光体22Aを消灯させ、且つ発光体22Bを点灯させたときに得られる光量分布パターンR(X)は、発光体22Bの経年変化等により、図11に示す分布に変化する。
【0042】
なお、図10、および図11に示す光量分布パターンの変化には、発光体22A、22Bの経年変化だけでなく、受光部24の経年変化等も含まれている。
【0043】
通常、発光体22Aの光量低下の度合と、発光体22Bの光量低下の度合とは、同じにならない。
【0044】
図12は、補正処理を示すフローチャートである。この補正処理は、入金取引や出金取引等、紙幣を取り扱う取引を処理するときに、紙幣の識別に先立って行う。この補正処理は、照明部22が主走査方向に照射するライン状の照明光の光量分布を、図9に示した初期光量分布LR0(X)に一致させる処理である。
【0045】
紙幣識別ユニット20は、発光体22A、22Bをともに点灯させ、反射板31、32からの反射光量を検出する(S1)。S1では、発光体22Aに供給する電流値は、初期光量分布パターンL0(X)を得たときに供給した電流値である。また、発光体22Bに供給する電流値は、初期光量分布パターンR0(X)を得たときに供給した電流値である。
【0046】
この時点における発光体22Aの劣化の度合をα、発光体22Bの劣化の度合をβとすると、
L(X)=α×L0(X)
R(X)=β×R0(X)
で、近似できる。また、S1で得た反射板31からの反射光量LR(M)は、
LR(M)=α×L0(M)+β×R0(M)
であらわせる。また、S1で得た反射板32からの反射光量LR(N)は、
LR(N)=α×L0(N)+β×R0(N)
であらわせる。
【0047】
上述したように、紙幣識別ユニット20は、初期光量分布パターンL0(X)、R0(X)を記憶部27に記憶している。したがって、
LR0(X)=L0(X)+R0(X)
であるとすると、
LR0(M)=L0(M)+R0(M)
となる。また、
LR0(N)=L0(N)+R0(N)
となる。
【0048】
紙幣識別ユニット20は、S1で検出した反射板31からの反射光量LR(M)、および反射板32からの反射光量LR(N)を用いて、上述のα、およびβを算出する(S2)。S2では、
LR(M)=αL0(M)+β×R0(M)
LR(N)=αL0(N)+β×R0(N)
からなる、2元一次連立方程式を解き、α、およびβを算出する。
【0049】
紙幣識別ユニット20は、S2で算出したαに応じて、発光体22Aに供給する電流値を決定するとともに、S2で算出したβに応じて発光体22Bに供給する電流値を決定する(S3)。
【0050】
点灯部23は、発光体22A、22Bに供給する電流を、S3で決定された電流値に設定する。
【0051】
これにより、照明部22が紙幣搬送路に沿って搬送されている紙幣に対して照射するライン状の照明光の光量分布LR(X)を、初期設定時の光量分布LR0(X)に略一致させることができる。すなわち、発光体22A、22Bにおける経年劣化等による発光量の低下に影響されることなく、紙幣に対して照射するライン状の照明光を適正な光量分布(初期設定時の光量分布LR0(X))に補正できる。したがって、紙幣の種別や真偽にかかる識別精度の低下が抑えられる。
【0052】
また、発光体22A,22Bをともに点灯させた状態で、検出したLR(M)、LR(N)によって、発光体22A、22Bの劣化による反射画像の読取精度の変化を補正するので、この補正にかかる処理時間の短縮が図れる。
【0053】
なお、上述の説明から明らかなように、少なくとも、L0(M)、L0(N)、R0(M)、R0(N)の4つの反射光量を記憶部27に記憶しておけば、上述の補正処理は行える。
【0054】
また、上述の説明では、S2で算出したα、およびβに応じて、点灯部23が発光体22A、22Bに供給する電流を変化させるとしたが、受光部24の各受光素子の出力を、検出部25で増幅する増幅率を変化させてもよい。また、増幅率は、受光素子毎に設定できる構成である。具体的には、S2で算出したα、およびβから推定された現在の光量分布パターンLR(X)と初期の光量分布パターンLR0(X)との比較により受光素子毎の出力を推定する。そして、受光素子毎に、その受光素子における、初期の光量分布パターンLR0(X)での出力と、現在の光量分布パターンLR(X)での出力との比率に基づき、増幅率を変化させてもよい。この場合には、発光体22A、22Bの発光量を調整する構成を不要にできるとともに、粗い調整にも対応可能である。
【0055】
また、本願発明は、上述の紙幣識別ユニット20だけでなく、小切手、証券、原稿等の紙葉類の反射画像を読み取る装置であれば、どのような装置であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
20…紙幣識別ユニット
21…制御部
22…照明部
22A,22B…発光体
22C…導光体
23…点灯部
24…受光部
25…検出部
26…識別部
27…記憶部
28…入出力部
31,32…反射板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って搬送されている読取対象物に対向する一方の側に照明部、および受光部を配置し、
前記照明部が、搬送されている読取対象物の幅方向にライン状の照明光を照射し、
前記受光部が、搬送されている読取対象物の幅方向に並べた複数の受光素子で、この読取対象物で反射された反射光を検出する、反射画像読取ユニットにおいて、
前記照明部は、前記搬送路の幅方向に延びる導光体の両端部のそれぞれに、この導光体に光を入射する発光体を有し、
前記導光体の両端部のそれぞれに、この導光体に対向させて配置した反射板と、
前記導光体の一方の端部の発光体を点灯し、他方の端部の発光体を消灯した第1の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第1基準パターンと、前記導光体の一方の端部の発光体を消灯し、他方の端部の発光体を点灯した第2の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第2基準パターンと、を記憶する記憶部と、
前記導光体の両端部の前記発光体をともに点灯した第3の状態で、前記導光体の両端部に対向させて配置した前記反射板毎に、その反射光を前記受光部で検出し、ここで検出した反射光量と、前記記憶部に記憶している前記第1基準パターンおよび前記第2基準パターンと、に基づいて、読取対象物の反射画像の読取時に用いる補正係数を算出する補正係数算出部と、を備えた反射画像読取ユニット。
【請求項2】
前記補正係数算出部は、前記補正係数として前記発光体毎に光量低下の度合を算出する、請求項1に記載の反射画像読取ユニット。
【請求項3】
前記記憶部は、前記第1基準パターン、および前記第2基準パターンとして、それぞれの状態において、前記受光部が検出した前記反射板毎の反射光量を記憶する、請求項1または2に記載の反射画像読取ユニット。
【請求項1】
搬送路に沿って搬送されている読取対象物に対向する一方の側に照明部、および受光部を配置し、
前記照明部が、搬送されている読取対象物の幅方向にライン状の照明光を照射し、
前記受光部が、搬送されている読取対象物の幅方向に並べた複数の受光素子で、この読取対象物で反射された反射光を検出する、反射画像読取ユニットにおいて、
前記照明部は、前記搬送路の幅方向に延びる導光体の両端部のそれぞれに、この導光体に光を入射する発光体を有し、
前記導光体の両端部のそれぞれに、この導光体に対向させて配置した反射板と、
前記導光体の一方の端部の発光体を点灯し、他方の端部の発光体を消灯した第1の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第1基準パターンと、前記導光体の一方の端部の発光体を消灯し、他方の端部の発光体を点灯した第2の状態で当該導光体から照射されるライン状の照明光の光量分布にかかる第2基準パターンと、を記憶する記憶部と、
前記導光体の両端部の前記発光体をともに点灯した第3の状態で、前記導光体の両端部に対向させて配置した前記反射板毎に、その反射光を前記受光部で検出し、ここで検出した反射光量と、前記記憶部に記憶している前記第1基準パターンおよび前記第2基準パターンと、に基づいて、読取対象物の反射画像の読取時に用いる補正係数を算出する補正係数算出部と、を備えた反射画像読取ユニット。
【請求項2】
前記補正係数算出部は、前記補正係数として前記発光体毎に光量低下の度合を算出する、請求項1に記載の反射画像読取ユニット。
【請求項3】
前記記憶部は、前記第1基準パターン、および前記第2基準パターンとして、それぞれの状態において、前記受光部が検出した前記反射板毎の反射光量を記憶する、請求項1または2に記載の反射画像読取ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−118566(P2011−118566A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274209(P2009−274209)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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