説明

反射防止フィルムの製造方法

【課題】防汚性及び耐擦傷性を両立し、かつ、防汚機能が大きく低下しない反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材上にハードコート層と該ハードコート層上に低屈折率層を備える反射防止フィルムの製造方法であって、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコート層塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射しハードコート層を形成する工程と、前記ハードコート層上に、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と電離放射線硬化基を含む撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜に対し一次乾燥をおこなう工程と、前記塗膜に対し一次乾燥より高い乾燥温度で二次乾燥をおこなう工程と、前記塗膜に対し電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程とを順に備えることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓やディスプレイなどの表面に外光が反射することを防止することを目的として設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面に設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。さらには、透過型液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須であり、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と低屈折率層の繰り返し構造による多層構造の反射防止層を形成することで得られる。これらの多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といった乾式成膜法により形成することができる。
【0004】
乾式成膜法を用いて反射防止層を形成する場合にあっては、低屈折率層、高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある一方、成膜を真空中でおこなうため、生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能である塗液を用いた湿式成膜法による反射防止膜の生産が注目されている。
【0005】
また、これらの反射防止層が透明基材上に設けられている反射防止フィルムにあっては、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル系材料を硬化して得られるハードコート層を設け、その上に反射防止層を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル系材料により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有する。
【0006】
湿式成膜法によって反射防止層を形成する場合、これらの電離放射線硬化型材料を硬化して得られるハードコート層の上に少なくとも低屈折率層を塗布して製造されるものであり、乾式成膜法に比べ安価に製造できるメリットがあり、市場に広く出まわっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−202389号公報
【特許文献2】特開2005−199707号公報
【特許文献3】特開平11−92750号公報
【特許文献4】特開2007−121993号公報
【特許文献5】特開2005−144849号公報
【特許文献6】特開2006−159415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反射防止フィルムをディスプレイ表面に設けることにより、その反射防止機能によって、外光の反射を抑制することができ、明所でのコントラストを向上させることができる。また、同時に透過率を向上させることができることから画像をより明るく表示可能にすることができる。また、バックライトの出力などを抑える省エネ効果も期待できる。
【0009】
反射防止フィルムはディスプレイ表面に設けられることから、反射防止機能のほかに指紋等の付着を防ぐまたは付着した指紋を拭き取りやすくするといった防汚機能及び反射防止フィルム表面が傷つくことを防ぐための耐擦傷機能が要求される。ここで、防汚機能を発現させるためには反射防止フィルムの最表層に撥水材料を含ませる必要があるが、反射防止フィルムの最表層に撥水材料を含ませた場合には、最表層と該最表層と隣接する層との間での密着性が低下し十分な耐擦傷機能が得られないという問題があった。また、反射防止フィルムの最表層に撥水材料を含ませたとしても、反射防止フィルム作製後の後工程等により防汚機能が大きく低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明にあっては、防汚性及び耐擦傷性を両立し、かつ、防汚機能が大きく低下しない反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1にかかる発明としては、透明基材上にハードコート層と該ハードコート層上に低屈折率層を備える反射防止フィルムの製造方法であって、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコート層塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射しハードコート層を形成する工程と、前記ハードコート層上に、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と電離放射線硬化基を含む撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜に対し一次乾燥をおこなう工程と、前記塗膜に対し一次乾燥より高い乾燥温度で二次乾燥をおこなう工程と、前記塗膜に対し電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程とを順に備えることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項2にかかる発明としては、前記一次乾燥する際の乾燥温度が15℃以上30℃以下の範囲内であり、前記二次乾燥する際の乾燥温度が40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項3にかかる発明としては、前記一次乾燥する際の乾燥温度が15℃以上30℃以下の範囲内であり、且つ、一次乾燥する際の乾燥時間が3秒から60秒の範囲内であり、
前記二次乾燥する際の乾燥温度が40℃以上150℃以下の範囲内であり、且つ、二次乾燥する際の乾燥時間20秒以上の範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項4にかかる発明としては、前記ハードコート層上の二次乾燥された塗膜に電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程の後に、エージング温度15℃以上100℃以下の範囲内でエージング処理をおこなう工程を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項5にかかる発明としては、前記撥水材料が電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項6にかかる発明としては、前記撥水材料が電離放射線硬化基と珪素を含む化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項7にかかる発明としては、透明基材上にハードコート層と該ハードコート層上に直接低屈折率層を備える反射防止フィルムの前記低屈折率層形成面と反対側の面に透明基材に偏光層および第2の透明基材を備える偏光板の製造方法であって、請求項1乃至5のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法により反射防止フィルムを作製する工程と、前記反射防止フィルムをアルカリ溶液に該低屈折率層とアルカリ溶液が接触する状態で浸漬させ、アルカリ処理をおこなう工程と、前記反射防止フィルムの透明基材面に偏光層及び第2の透明基材を積層する工程とを備えることを特徴とする偏光板の製造方法とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反射防止フィルムの製造方法とすることにより、防汚機能と耐擦傷機能を両立し、且つ防汚機能の低下の少ない反射防止フィルムとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の反射防止フィルムの模式断面図である。
【図2】図2は本発明の偏光板の模式断面図である。
【図3】図3は本発明の偏光板を用いた透過型液晶ディスプレイの模式断面図である。
【図4】図4は本発明の反射防止フィルムの製造装置の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。
【0015】
図1に本発明の反射防止フィルムの模式断面図を示した。
本発明の反射防止フィルム(1)にあっては、透明基材(11)上にハードコート層(12)及び該ハードコート層(12)上に低屈折率層(13)を備える。ハードコート層(12)は、電離放射線硬化型材料を硬化することにより形成され、主に耐擦傷性を付与する。低屈折率層(13)は反射防止フィルムの最表層に設けられ、反射防止機能、防汚機能、耐擦傷機能を付与する。低屈折率層は反射防止機能を付与するために、該低屈折率層の膜厚と屈折率を乗することにより得られる光学膜厚が可視光波長の1/4となるように設計される。具体的には、低屈折率層の光学膜厚は50nm以上200nm以下の範囲内となるように設計される。
【0016】
本発明の反射防止フィルムの製造方法にあっては、以下の1)〜6)の工程により反射防止フィルムが製造される。
1) 電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコート層塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程。
2)前記塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射しハードコート層を形成する工程。
3)前記ハードコート層上に、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と電離放射線硬化基を含む撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成する工程。
4)前記塗膜に対して一次乾燥をおこなう工程。
5)前記塗膜に対して一次乾燥より高い乾燥温度で二次乾燥をおこなう工程。
6)前記塗膜に対して電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程。
【0017】
本発明者らは、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料の他に電離放射線硬化基を備える撥水材料を含む低屈折率層形成塗液を用いて低屈折率層を形成し、さらに、該低屈折率層形成用塗液をハードコート層上に塗布してから電離放射線を照射し硬化するまでに一次乾燥、該一次乾燥より高い乾燥温度でおこなわれる二次乾燥をおこなうことにより防汚機能と耐擦傷機能を両立し、かつ、防汚機能の低下のない反射防止フィルムとすることができることを見出し、本発明にいたった撥水材料として電離放射線硬化基を備える撥水材料を用い、さらに、低屈折率層を形成する際の塗布から電離放射線照射までの乾燥工程を2段階でおこなうことにより、防汚機能と耐擦傷機能を両立し、かつ、防汚機能の低下のない反射防止フィルムとすることができる。
【0018】
反射防止フィルムを透過型液晶ディスプレイの最表面に設けるにあっては、反射防止フィルムの低屈折率層側の反対側の透明基材に偏光層および第2の透明基材が積層され、偏光板が作製される。このとき、偏光層と反射防止フィルムの密着性を向上させるために、偏光層を形成する前にはケン化処理と呼ばれるアルカリ処理がおこなわれる。ケン化処理は、反射防止フィルムをアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれるが、反射防止フィルムの低屈折率層がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった際にはアルカリ溶液により低屈折率層表面の防汚機能が低下するという問題があった。本発明の反射防止フィルムの製造方法にあっては、反射防止フィルムの低屈折率層がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった際にも防汚機能が低下しない偏光板とすることができた。
【0019】
また、本発明の反射防止フィルムの製造方法にあっては、前記一次乾燥する際の乾燥温度が15℃以上30℃以下の範囲内であり、前記二次乾燥する際の乾燥温度が40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれることが好ましい。一次乾燥温度を15℃以上30℃以下の範囲内とすることにより、低屈折率層の塗膜中の材料同士が馴染むまでの時間を十分とすることができる。また、二次乾燥温度を40℃以上150℃以下の範囲内とすることにより、効率的に低屈折率層を形成することができる。
【0020】
一次乾燥温度が30℃を超える場合にあっては、低屈折率層の塗膜が急激に乾燥してしまい低屈折率層を形成することができなくなってしまう恐れがある。一方、一次乾燥温度が15℃を下回る場合にあっては、乾燥時間を長くする必要があり連続生産に不向きとなってしまう。また、二次乾燥温度が150℃を超える場合にあっては、溶剤の蒸発速度が早すぎるために低屈折率層の表面が荒れてしまい、ヘイズが発生する恐れがある。一方、二次乾燥温度が40℃を下回る場合にあっては、溶剤が低屈折率層に残留してしまい、硬膜性を持たない低屈折率層となってしまう。また、前記一次乾燥のみでは乾燥が不十分の場合があり、一次乾燥後、二次乾燥として乾燥温度40℃以上150℃以下の範囲内の加熱乾燥で適度な加熱乾燥をおこなうことも兼ねている。
【0021】
また、本発明の反射防止フィルムの製造方法にあっては、15℃以上30℃以下の範囲内でおこなわれる一次乾燥の乾燥時間が3秒から60秒の範囲内であり、40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれる二次乾燥の乾燥時間20秒以上の範囲内でおこなわれることが好ましい。一次乾燥する際の乾燥時間が3秒から60秒の範囲内とすることにより、低屈折率層の塗膜中の材料同士が馴染むまでの時間を十分とすることができる。また、二次乾燥する際の乾燥時間20秒以上の範囲内とすることにより、効率的に低屈折率層を形成することができる。
【0022】
15℃以上30℃以下の範囲内でおこなわれる一次乾燥時間が3秒を満たない場合は、低屈折率層の塗膜中の材料同士が馴染むまでの時間が不足するために防汚層が形成できないことがある。また、一次乾燥乾燥時間を60秒以上とした場合には、生産性が低下し連続生産に不向きとなってしまう。
【0023】
40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれる二次乾燥時間が20秒を満たない場合は、溶剤が低屈折率層に残留してしまい、硬膜性を持たない低屈折率層となってしまう。この際の、二次乾燥時間は300秒以下であることが好ましい。二次乾燥時間が300秒を超える場合には、生産性が低下し連続生産に不向きになってしまう。
【0024】
また、本発明の反射防止フィルムの製造方法にあっては、前記ハードコート層上の二次乾燥された塗膜に電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程の後に、エージング温度15℃以上100℃以下の範囲内でエージング処理をおこなう工程を備えることが好ましい。低屈折率層形成用塗液からなる塗膜に対し電離放射線を照射し該塗膜を硬化させた後に、さらに15℃以上100℃以下の範囲内でエージングをおこなうことにより、反射防止フィルムの低屈折率層表面の耐擦傷性をさらに向上させることができる。
【0025】
また、本発明の反射防止フィルムの製造方法にあっては、撥水材料が電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物を含むことが好ましい。また、本発明の反射防止フィルムにあっては、撥水材料が電離放射線硬化型基と珪素を含む化合物を含むことが好ましい。撥水材料を、電離放射線硬化基のほかにフッ素を含む化合物および/または珪素を含む化合物とすることにより、反射防止フィルムの低屈折率層表面に高い防汚機能を付与することができる。
【0026】
本発明の偏光板の製造方法について説明する。
【0027】
図2に本発明の偏光板の模式断面図を示した。
【0028】
本発明の反射防止フィルムを透過型液晶ディスプレイ表面に設けるにあっては、反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の透明基材に偏光層および第2の透明基材が積層され、偏光板とする必要がある。本発明の偏光板にあっては、反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の面に、該透明基材側から順に偏光層及び第2の透明基材が積層される。
【0029】
本発明の偏光板の製造方法にあっては、偏光層と得られた反射防止フィルムの透明基材の密着性を向上させるために、得られた反射防止フィルムの透明基材に対し、偏光層を形成する前にはケン化処理と呼ばれるアルカリ処理がおこなわれる。ケン化処理は反射防止フィルムをアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれるが、本発明の偏光板の製造方法にあっては反射防止フィルムの低屈折率層がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった際にも防汚機能が低下しない偏光板とすることができる。
【0030】
図3に本発明の偏光板を用いた透過型液晶ディスプレイの模式断面図を示した。
本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、バックライトユニット(5)、偏光板(4)、液晶セル(3)、偏光板(2)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)を備える偏光板(2)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0031】
バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる2つの偏光板にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0032】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0033】
さらに詳細に本発明の反射防止フィルム及びその製造方法について説明する。
【0034】
本発明の反射防止フィルムにおける透明基材は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。また、透明基材フィルムの厚みとしては、35μm以上120μm以下を用いることが好ましい。また、トリアセチルセルロースを用いる場合は、35μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、20μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。
【0035】
中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。また、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60である。
【0036】
透明基材上にはハードコート層が形成される。
ハードコート層は、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコート層塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射することにより形成される。
【0037】
ハードコート層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0038】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0039】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0042】
アクリル系材料として多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0043】
また、これらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0044】
ハードコート層形成用塗液には溶媒が含まれる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、その他としてN−メチル−2−ピロリドン、炭酸ジメチルが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、ハードコート層形成用塗液には、光重合開始剤を含むことができる。塗膜を硬化する際の電離放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤がハードコート層形成用塗液に加えられる。光重合開始剤としては、電離放射線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料に対して0.1wt%以上10wt%以下の範囲内であることが好ましく、さらには1wt%以上8.5wt%以下であることが好ましい。
【0046】
また、ハードコート層形成用塗液には添加剤として、ハードコート層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
【0047】
また、ハードコート層形成用塗液には導電性材料を加えることもできる。ハードコート層形成用塗液に導電性材料を加えることにより、得られる反射防止フィルムに帯電防止機能を付与することができ、ディスプレイ表面への誇りの付着等を防ぐことができる。
【0048】
導電性材料としては、四級アンモニウム塩材料、金属酸化物粒子、導電性高分子等を用いることができる。
【0049】
導電性材料である四級アンモニウム塩材料としては、四級アンモニウム塩材料を官能基として分子内に含む材料を好適に用いることができる。四級アンモニウム塩材料は−Nの構造を示し、四級アンモニウムカチオン(−N)とアニオン(X)を備えることによりハードコート層に導電性を発現させる。このとき、Xとしては、Cl、Br、I、F、HSO、SO2−、NO、PO3−、HPO2−、HPO、SO、OH等を挙げることができる。
【0050】
また、四級アンモニウム塩材料として、四級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料を用いることもできる。四級アンモニウム塩材料を官能基として分子内に含むアクリル系材料としては、四級アンモニウム塩材料(−N)を官能基として分子内に含む多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0051】
導電性材料として用いられる金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、スズ含有酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、アルミニウム含有酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン含有酸化亜鉛及びインジウム含有酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上の金属酸化物を主成とする導電性を有する金属酸化物粒子を用いることができる。
【0052】
導電性材料として用いられる導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5−チエニレン)及びこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0053】
以上の材料を調整して得られるハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により透明基材上に塗布し、塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該塗膜に電離放射線を照射することにより、ハードコート層を形成することができる。以下にハードコート層の形成方法を示す。
【0054】
ハードコート層形成用塗液は透明基材上に塗布され、塗膜を形成する。ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。なお、本発明のハードコート層は薄い塗膜であり、均一な膜厚であることが必要であることから、マイクログラビアコーター法、ダイコーター法を用いることが好ましい。
【0055】
次に、透明基材上に形成されたハードコート層の塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
【0056】
次に、ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、ハードコート層が形成される。
【0057】
電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
【0058】
以上により形成されたハードコート層上には、低屈折率層が形成される。低屈折率層は、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と電離放射線硬化基を含む撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜に対し一次乾燥をおこなう工程と、前記塗膜に対し一次乾燥より高い乾燥温度で二次乾燥をおこなう工程と、前記塗膜に対し電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程とを順にそなえる。
【0059】
低屈折率層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、ハードコート層形成用塗液の項で示したアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料の具体例としては、ハードコート層形成用塗液の項で示したもとの同じであるため省略する。
【0060】
低屈折率層形成用塗液に含まれる低屈折率粒子としては、内部に空隙を有するシリカ粒子を用いることができる。内部に空隙を有するシリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子としては、多孔質シリカ粒子やシェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0061】
本発明の低屈折率層形成用塗液に含まれる低屈折率材料である内部に空隙を有するシリカ粒子としては、平均粒径が10nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層が白化して反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が10nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0062】
また、内部に空隙を有するシリカ粒子の空隙としては、20nm以上50nm以下であることが好ましい。空隙が50nmを超える場合、十分な耐擦傷性が得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまうためである。一方、空隙が20nm未満の場合、屈折率が1.45以上となってしまい平均視感反射率が1.5%以上となるためである。
【0063】
なお、内部に空隙を有するシリカ粒子の一例として、球状の形状を保持したまま、硝子の屈折率1.45に比べて低い屈折率1.35であり、半径20nm以上25nm以下、密度(ρ1)の球状の構造が中心部分にあり、周囲を厚み10nm以上15nm以下の異なる密度(ρ2)の層が覆っており、(ρ1/ρ2)の値が0.5、0.1、0.0を示し、シリカ粒子の中心部分は外部のシリカの1/10程度の密度となるような構造モデルを用いることもできる。
【0064】
低屈折率層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、ハードコート層形成用塗液の項で例示したアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0065】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0068】
アクリル系材料として多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0069】
また、これらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0070】
また、低屈折率層形成用塗液にあっては、電離放射線硬化基を備える撥水材料を含む。撥水材料としては、形成後の低屈折率層表面の純水の接触角を75°以上とすることのできる撥水材料を用いることができる。低屈折率層表面の純水の接触角が75°以上である場合には十分な防汚機能を備える反射防止フィルムとすることができる。撥水材料に含まれる電離放射線硬化基としては、炭素−炭素不飽和二重結合をあげることができ、具体的にはアクリル基、メタクリル基等をあげることができる。低屈折率層形成用塗液に含まれる撥水材料が電離放射線硬化基を備えることにより、低屈折率層形成用塗液からなる塗膜に対して電離放射線を照射する際に、低屈折率層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料と撥水材料がマトリックスを形成することが可能となる。
【0071】
中でも、撥水材料としては、電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物またはが電離放射線硬化基と珪素を含む化合物を好適に用いることができる。これらの材料は反射防止フィルムの低屈折率層表面に撥水性を付与し、優れた防汚機能を付与する。電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物はフッ素部分により低屈折率層表面に防汚機能が主に発現する。一方、電離放射線硬化基と珪素を含む化合物は珪素部分により低屈折率層表面に防汚機能が主に発現する。
【0072】
撥水材料として用いられる電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物としては、RS−72−K、RS−75(DIC製)等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0073】
撥水材料として用いられる電離放射線硬化基と珪素を含む化合物としては、BYK−UV3500,BYK−3530、BYK−3570(ビックケミー社製)等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0074】
なお、本発明にあっては、撥水材料として電離放射線硬化基とフッ素と珪素を含む化合物を用いてもよい。また、電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物と電離放射線硬化基と珪素を含む化合物の両方を用いることも可能である。
【0075】
低屈折率層形成用塗液には溶媒が含まれる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、その他としてN−メチル−2−ピロリドン、炭酸ジメチルが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
また、低屈折率層形成用塗液には、光重合開始剤を含むことができる。塗膜を硬化する際の電離放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤がハードコート層形成用塗液に加えられる。光重合開始剤としては、電離放射線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料に対して0.1wt%以上10wt%以下の範囲内であることが好ましく、さらには1wt%以上8.5wt%以下であることが好ましい。
【0077】
以上の材料を調整して得られる低屈折率層形成用塗液を湿式成膜法によりハードコート層上に塗布し、塗膜を形成し、該塗膜を一次乾燥及び二次乾燥により乾燥し、該塗膜に電離放射線を照射することにより、低屈折率層を形成することができる。以下に低屈折率層の形成方法を示す。
【0078】
低屈折率層形成用塗液はハードコート層上に塗布され、塗膜を形成する。低屈折率層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。なお、本発明のハードコート層は薄い塗膜であり、均一な膜厚であることが必要であることから、マイクログラビアコーター法、ダイコーター法を用いることが好ましい。
【0079】
次に、透明基材上に形成されたハードコート層の塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき、一次乾燥、二次乾燥により乾燥される。なお、乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
【0080】
次に、ハードコート層(12)上に形成された低屈折率層の塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
【0081】
なお、乾燥工程が塗布直後に乾燥温度15℃以上30℃以下の範囲内で一次乾燥をおこなうことが好ましい。一次乾燥温度を15℃以上30℃以下の範囲内とすることにより、低屈折率層の塗膜中の材料同士が馴染むまでの時間を十分とすることができる。なお、一次乾燥温度が30℃を超える場合にあっては、低屈折率層の塗膜が急激に乾燥してしまい低屈折率層を形成することができなくなってしまう恐れがある。一方、一次乾燥温度が15℃を下回る場合にあっては、乾燥時間を長くする必要があり連続生産に不向きとなってしまう。
【0082】
また、乾燥温度40℃以上150℃以下の範囲内で二次乾燥をおこなうことが好ましい。二次乾燥温度を40℃以上150℃以下の範囲内とすることにより、効率的に低屈折率層を形成することができる。なお、二次乾燥温度が150℃を超える場合にあっては、溶剤の蒸発速度が早すぎるために低屈折率層の表面が荒れてしまい、ヘイズが発生する恐れがある。一方、二次乾燥温度が40℃を下回る場合にあっては、溶剤が低屈折率層に残留してしまい、硬膜性を持たない低屈折率層となってしまうことがある。
【0083】
また、前記一次乾燥のみでは乾燥が不十分の場合があり、一次乾燥後、二次乾燥として乾燥温度40℃以上150℃以下の範囲内の加熱乾燥で適度な加熱乾燥をおこなうことも兼ねている。
【0084】
また、乾燥工程にあっては、15℃以上30℃以下の範囲内でおこなわれる一次乾燥の乾燥時間が3秒から60秒の範囲内であり、40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれる二次乾燥の乾燥時間20秒以上の範囲内でおこなわれることが好ましい。一次乾燥する際の乾燥時間が3秒から60秒の範囲内とすることにより、低屈折率層の塗膜中の材料同士が馴染むまでの時間を十分とすることができる。また、二次乾燥する際の乾燥時間20秒以上の範囲内とすることにより、効率的に低屈折率層を形成することができる。
【0085】
15℃以上30℃以下の範囲内でおこなわれる一次乾燥時間が3秒を満たない場合は、低屈折率層の塗膜中の材料同士が馴染むまでの時間が不足するために防汚層が形成できないことがある。また、一次乾燥乾燥時間を60秒以上とした場合には、生産性が低下し連続生産に不向きとなってしまう。
【0086】
40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれる二次乾燥時間が20秒を満たない場合は、溶媒が低屈折率層に残留してしまい、硬膜性を持たない低屈折率層となってしまう。また、乾燥工程における二次乾燥時間は300秒以下であることが好ましい。二次乾燥時間が300秒を超える場合には、生産性が低下し連続生産に不向きになってしまう。
【0087】
次に、低屈折率層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、低屈折率層が形成される。
【0088】
電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
【0089】
本発明の反射防止フィルムはロール・ツー・ロール方式により連続形成される。図4に本発明の反射防止フィルムの製造装置の概略図を示した。巻き取られているウェブ状の透明基材を巻き出し部(71)から巻き取り部(72)まで連続走行させ、このとき、透明基材(11)を塗布ユニット(塗布工程)(61)、乾燥ユニット(乾燥工程)(62)、電離放射線照射ユニット(硬膜工程)(63)を通過させることにより、透明基材(11)上のハードコート層(12)上に低屈折率層が連続形成される。このとき、乾燥ユニット(62)を上流側から順に一次乾燥ユニット(62a)、二次乾燥ユニット(62b)とすることにより、一次乾燥及び二次乾燥を効率的におこなうことができる。
【0090】
なお、図4の本発明の反射防止フィルムの製造装置は、ハードコート層を形成する際にも使用することができる。
【0091】
本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止層が形成されている側の反対側の透明基材側の面に偏光層、透明基材を設けることにより、偏光板とすることができる。偏光層としては、例えば、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)を用いることができる。また、もう一方の透明基材としては、反射防止フィルムに用いる透明基材を用いることができ、トリアセチルセルロースからなるフィルムを好適に用いることができる。このとき、偏光層の両面に設けられる2枚の透明基材の偏光層と接触する面に対しては偏光層と貼り合せる前にアルカリ処理(ケン化処理)がおこなわれる。ケン化処理は反射防止フィルムもしくは透明基材をアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれるが、本発明の偏光板の製造方法にあっては反射防止フィルムの低屈折率層がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった際にも防汚機能が低下しない偏光板とすることができる。アルカリ処理は、反射防止フィルムもしくは透明基材フィルムを水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれる。
【0092】
また、本発明の反射防止フィルムは、偏光板化され、さらに、透過型液晶ディスプレイの前面、すなわち、観察側に反射防止層が最表面となるように設けられる。本発明の反射防止フィルムを透過型液晶ディスプレイ表面に設けることにより反射防止機能を有し、さらには、表面に高い防汚性能を備える透過型液晶ディスプレイとすることができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
透明基材として、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm、屈折率1.49)を用意した。
【0095】
(合成例1)
攪拌翼、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた四口フラスコに、
・オクチルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート
(商品名:「ブレンマー50POEP−800B」日本油脂社製) 18.0g
・メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド 35.0g
・シクロヘキシルメタクリレート 14.0g
・アゾビスイソブチロニトリル 0.3g
・イソプロピルアルコール 100.0g
・メチルエチルケトン 40.0g
を仕込み、窒素雰囲気下、65℃で3時間重合した。重合終了後、反応液をヘキサン中に投入し、生成物を析出させた後乾燥した。得られた四級アンモニウム塩基含有ポリマーの平均分子量は18500であった。
【0096】
<ハードコート層形成用塗液・調整例1>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート−4A 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート−6A 50重量部
・光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 10重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液1を調整した。
【0097】
<ハードコート層形成用塗液・調整例2>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA) 100重量部 に対して、
・合成例1で作製した四級アンモニウム塩材料(分子量18500) 10重量部
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート−4A 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート−6A 50重量部
・光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 10重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液2を調整した。
【0098】
<ハードコート層形成用塗液・調整例3>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA) 100重量部 に対して、
・アンチモン含有酸化スズ(平均粒子径50nm/イソプロピルアルコール分散液)
(固形分)5重量部
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート−4A 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート−6A 50重量部
・光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 10重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液3を調整した。
【0099】
<低屈折率層形成用塗液・調整例A>
・メガファック RS−75 0.1重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート−3A 100重量部
・内部に空隙を有する低屈折率シリカ微粒子分散液
(一次粒子径30nm/固形分20wt%/メチルエチルケトン分散) 1500重量部
光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 5重量部
メチルエチルケトンに固形分が10%になるように溶解して低屈折率層形成用塗液1を調整した。
【0100】
<低屈折率層形成用塗液・調整例B>
・BYK−UV3570 0.1重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート−3A 100重量部
・内部に空隙を有する低屈折率シリカ微粒子分散液
(一次粒子径30nm/固形分20wt%/メチルエチルケトン分散) 1500重量部
光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 15重量部
メチルエチルケトンに固形分が10%になるように溶解して低屈折率層形成用塗液2を調整した。
【0101】
<低屈折率層形成用塗液・調整例C>
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート−3A 100重量部
・内部に空隙を有する低屈折率シリカ微粒子分散液
(一次粒子径30nm/固形分20wt%/メチルエチルケトン分散) 1500重量部
光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 15重量部
メチルエチルケトンに固形分が10%になるように溶解して低屈折率層形成用塗液3を調整した。
【0102】
<実施例1−1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0103】
<実施例1−2>〜<実施例1−6>
<実施例1−2>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例1−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例1−3>ににおいては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例1−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例1−4>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例1−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例1−5>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例1−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例1−6>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例1−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
【0104】
<実施例2−1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例2のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0105】
<実施例2−2>〜<実施例2−6>
<実施例2−2>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例2−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例2−3>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例2−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例2−4>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例2−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例2−5>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例2−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例2−6>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例2−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
【0106】
<実施例3−1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例3のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0107】
<実施例3−2>〜<実施例3−6>
<実施例3−2>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例3−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例3−3>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例3−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例3−4>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例3−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例3−5>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例3−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例3−6>においては、前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Aの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表1)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例3−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
【0108】
<実施例4−1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0109】
<実施例4−2>〜<実施例4−6>
<実施例4−2>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例4−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例4−3>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例4−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例4−4>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例4−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例4−5>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例4−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例4−6>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例4−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
【0110】
<実施例5−1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例2のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0111】
<実施例5−2>〜<実施例5−6>
<実施例5−2>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例5−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例5−3>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例5−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例5−4>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例5−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例5−5>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例5−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例5−6>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例5−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
【0112】
<実施例6−1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例3のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0113】
<実施例6−2>〜<実施例6−6>
<実施例6−2>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例6−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例6−3>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例6−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例6−4>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例6−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例6−5>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例6−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
<実施例6−6>においては、前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を用いて、調整例Bの低屈折率層形成用塗液の一次乾燥温度、二次乾燥温度、一次乾燥時間、二次乾燥時間を(表2)に示した値でおこない、その他製造条件は<実施例6−1>と同様にして反射防止フィルムを作製した。
【0114】
<比較例1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、乾燥温度80℃を60秒おこなった。一次乾燥、二次乾燥の2段階での乾燥はおこなわなかった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0115】
<比較例2>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Bの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、乾燥温度80℃を60秒おこなった。一次乾燥、二次乾燥の2段階での乾燥はおこなわなかった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0116】
<比較例4>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調整例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調整例Cの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。塗布後、乾燥をおこなった。乾燥は、第一乾燥温度25℃を10秒おこなった後に、第二乾燥温度80℃を60秒おこなった。さらに、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0117】
(表1)に<実施例1−1>〜<実施例1−6>、<実施例2−1>〜<実施例2−6>、<実施例3−1>〜<実施例3−6>の製造条件について示す。
【0118】
【表1】

【0119】
(表2)に<実施例4−1>〜<実施例4−6>、<実施例5−1>〜<実施例5−6>、<実施例6−1>〜<実施例6−6>、<比較例1>〜<比較例4>の製造条件について示す。
【0120】
【表2】

【0121】
前記にて作製された反射防止フィルムについて、以下の測定・評価をおこなった。
【0122】
「分光反射率の測定」
作製された反射防止フィルムの低屈折率層非形成面側の面を、黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布し、乾燥させた後、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い、C光源、2度視野の条件下で、低屈折率層形成面について入射角5°における分光反射率を測定した。
【0123】
「視感平均反射率の測定」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。塗布後、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い測定した低屈折率層形成面についてC光源、2度視野の条件下での入射角5°における分光反射率から平均視感反射率(Y%)を算出した。また、比視感度は明所視標準比視感度を用いた。
【0124】
「ヘイズ(H)、平行光線透過率の測定」
得られた反射防止フィルムについて、写像性測定器(日本電色工業社製、NDH−2000)を使用してヘイズ(H)、平行光線透過率を測定した。
【0125】
「表面抵抗値の測定」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面についてJIS−K6911に準拠して高抵抗抵抗率計(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスターMCP−HT260)にて測定をおこなった。
【0126】
「接触角の測定(ケン化前)」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、接触角計(協和界面科学社製 CA−X型)を用いて、乾燥状態(20℃−65%RH)で直径1.8mmの液滴を針先に作り、これを試料(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体とが接触する点における液体表面に対する接線と固体表面とがなす角であり、液体を含む側の角度で定義した。液体としては、蒸留水を使用した。水接触角の測定方法としてはJIS−R3257(1999)に準拠して測定した。
【0127】
「接触角の測定(ケン化後)」
得られた反射防止フィルムを1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に55℃、120秒浸漬させ、その後、純水洗浄をおこないケン化処理をおこなった。このとき、低屈折率層表面がNaOH水溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった。ケン化処理をおこなった反射防止フィルムの低屈折率層表面について、接触角計(協和界面科学社製 CA−X型)を用いて、乾燥状態(20℃−65%RH)で直径1.8mmの液滴を針先に作り、これを試料(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体とが接触する点における液体表面に対する接線と固体表面とがなす角であり、液体を含む側の角度で定義した。液体としては、蒸留水を使用した。水接触角の測定方法としてはJIS−R3257(1999)に準拠して測定した。
【0128】
「色ムラ・干渉縞の評価」
得られた反射防止フィルムについて、低屈折率層表面に蛍光灯を映りこませて、反射光を確認することにより色ムラの確認、干渉ムラの確認をおこなった。
目視にて確認した評価は、以下の規準でおこなった。
丸印 :色ムラ及び干渉縞が良好である
バツ印:色ムラ及び干渉縞が良好でなかった
【0129】
「鉛筆硬度の測定」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、JIS K5600−5−4(1999)に準拠し500g荷重で鉛筆硬度を測定した。
【0130】
「耐擦傷性(スチールウール(SW))の評価(ケン化前)」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、AB−301)を用いて、反射防止フィルムの低屈折率層表面に500g/cmの荷重をかけたスチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター#0000)を用い、10往復擦り、擦り跡やキズなどによる外観の変化を目視で評価した。
【0131】
目視にて確認した評価は、
丸印 :傷を確認することが出来ない。
三角印:数本傷を確認できる。
バツ印:傷が多数確認できる。
【0132】
「耐擦傷性(スチールウール(SW))の評価(ケン化後)」
得られた反射防止フィルムを1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に55℃、120秒浸漬させ、その後、純水洗浄をおこないケン化処理をおこなった。このとき、低屈折率層表面がNaOH溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった。ケン化処理をおこなった反射防止フィルムの低屈折率層表面について、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、AB−301)を用いて、反射防止フィルムの低屈折率層表面に500g/cmの荷重をかけたスチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター#0000)を用い、10往復擦り、擦り跡やキズなどによる外観の変化を目視で評価した。
【0133】
目視にて確認した評価は、
丸印 :傷を確認することが出来ない。
三角印:数本傷を確認できる。
バツ印:傷が多数確認できる。
【0134】
(表3)および(表4)に、得られた反射防止フィルムの視感平均反射率、平行光線透過率、ヘイズ、表面抵抗値、接触角、色ムラ・干渉縞、鉛筆硬度、耐擦傷性(SW)の測定結果、評価結果を示す。
【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
実施例より、本発明の反射防止フィルムの製造方法により製造される反射防止フィルムは、防汚機能と耐擦傷機能が両立しており、且つ、ケン化処理後も防汚機能の低下が少ない反射防止フィルムであることが示された。
【0138】
(偏光板の作製)
本発明の(実施例1)で得られた反射防止フィルムを1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に55℃、120秒浸漬させ、その後、純水洗浄をおこないケン化処理をおこなった。このとき、低屈折率層表面がNaOH溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった。一方、偏光層としてヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコールフィルムを用意した。また、第2の透明基材として、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm、屈折率1.49)を用意し、1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液に55℃−120秒浸漬させケン化処理をおこなった。ケン化処理をおこなった(実施例1)の反射防止フィルムとケン化処理をおこなったトリアセチルセルロースフィルムの間にヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコールフィルムを配置し、ポリビニルアルコール系の接着剤により積層し偏光板を作製した。
【符号の説明】
【0139】
1 反射防止フィルム
11 透明基材
12 ハードコート層
13 低屈折率層
2 偏光板
23 偏光層
3 液晶セル
4 偏光板
41 透明基材
42 透明基材
43 偏光層
5 バックライトユニット
61 塗布ユニット
62 乾燥ユニット
62a 一次乾燥ユニット
62b 二次乾燥ユニット
63 電離放射線照射ユニット
71 巻き出し部
72 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上にハードコート層と該ハードコート層上に低屈折率層を備える反射防止フィルムの製造方法であって、
電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコート層塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射しハードコート層を形成する工程と、
前記ハードコート層上に、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と電離放射線硬化基を含む撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に対し一次乾燥をおこなう工程と、
前記塗膜に対し一次乾燥より高い乾燥温度で二次乾燥をおこなう工程と、
前記塗膜に対し電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程と
を順に備えることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記一次乾燥する際の乾燥温度が15℃以上30℃以下の範囲内であり、前記二次乾燥する際の乾燥温度が40℃以上150℃以下の範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記一次乾燥する際の乾燥温度が15℃以上30℃以下の範囲内であり、且つ、一次乾燥する際の乾燥時間が3秒から60秒の範囲内であり、
前記二次乾燥する際の乾燥温度が40℃以上150℃以下の範囲内であり、且つ、二次乾燥する際の乾燥時間20秒以上の範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ハードコート層上の二次乾燥された塗膜に電離放射線を照射し低屈折率層を形成する工程の後に、エージング温度15℃以上100℃以下の範囲内でエージング処理をおこなう工程を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記撥水材料が電離放射線硬化基とフッ素を含む化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記撥水材料が電離放射線硬化基と珪素を含む化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項7】
透明基材上にハードコート層と該ハードコート層上に直接低屈折率層を備える反射防止フィルムの前記低屈折率層形成面と反対側の面に透明基材に偏光層および第2の透明基材を備える偏光板の製造方法であって、
請求項1乃至5のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法により反射防止フィルムを作製する工程と、
前記反射防止フィルムをアルカリ溶液に該低屈折率層とアルカリ溶液が接触する状態で浸漬させ、アルカリ処理をおこなう工程と、
前記反射防止フィルムの透明基材面に偏光層及び第2の透明基材を積層する工程とを備えることを特徴とする偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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