説明

反射防止フィルムの製造方法

【課題】ヘイズ値が5%以下の超低ヘイズの反射防止フィルムに見られるムラを防止することができる反射防止フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ヘイズ値が5%以下の反射防止フィルムの製造方法であって、フィルム基材上に防眩性粒子と溶媒とを少なくとも含むハードコート層液を塗布する工程と、該塗布層を乾燥する工程と、乾燥した塗布層を紫外線で照射して硬化することで反射防止層を形成する工程と、を備え、前記防眩性粒子は、直径2〜6μmの粒子であるとともに、前記溶媒の比重よりも重く、前記乾燥する工程では、前記塗布層を上向きで乾燥するとともに、乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の前記塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥の速さを調整することで、前記防眩性粒子中心の平均位置が、前記反射防止層の表面から厚みの45〜58%の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの製造方法に係り、特に、ヘイズ値が5%以下の反射防止フィルムの製造方法であって、フィルム基材上に防眩性粒子と溶媒とを少なくとも含むハードコート層液を塗布する工程と、該塗布層を乾燥する工程と、乾燥した塗布層を紫外線で照射して硬化することで反射防止層を形成する工程と、を備える反射防止フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような平面性画像表示装置(FPD)には、視認性を高め、耐擦傷性を向上するために、その最外層に反射防止フィルム、防眩性フィルム、表面保護フィルム等の光学機能性フィルムが使用されている。
【0003】
上記の光学機能性フィルムは、直接的に人の目視に晒される機会が多く、また、近年のディスプレイの大画面化、高輝度化、高精細化、高価格化により、使用される光学機能性フィルムは、極めて厳しい外観品質(点欠陥、ムラ、汚れ等がないこと)、物理耐久品質(耐擦傷性、防汚性等に優れること)が要求されている。特に、反射防止フィルムは、ディスプレイの表面に傷が付くと、恒久的な表示欠陥となって画像表示装置の外観品位が著しく低下するため、耐擦傷性は重要である。
【0004】
反射防止フィルムの反射防止層は、基材フィルム上への機能材料形成材溶液(ハードコート層液)の塗布・乾燥・紫外線硬化によって形成されることが多い。このような乾燥工程によって反射防止層を設けた反射防止フィルムを製造する過程では、乾燥による外観故障(特に、ムラ故障)が生じやすい。この乾燥起因によるムラは粘度が低い初期に発生しやすく、そのため乾燥初期は風速を下げるのが一般的である。
【0005】
特許文献1では、乾燥工程を2つに分け、第1の乾燥工程を、塗膜層表面上の最大風速が1m/秒以上である乾燥ゾーンで行ない、第2の乾燥工程を、第1の乾燥工程が行なわれるゾーン内温度より50℃以上高い乾燥ゾーンで行うといった通常とは逆の初期の乾燥を速めることで、乾燥ムラがない均一な膜厚、均一な面状を形成することができることが提案されている。
【0006】
逆に、特許文献2では、一般的な乾燥方法で初期の乾燥が遅くなるように、乾燥工程における被塗工液の粘度が、乾燥温度において少なくとも50[mPa・s]になるまでは、平均風速10m/s以下の乾燥風下で乾燥を行うことで、乾燥ムラがない均一な膜厚、均一な面状を形成することができることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−83228号公報
【特許文献2】特開2004−136276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ヘイズ値が5%以下の超低ヘイズの反射防止フィルムは、特許文献1や特許文献2のように極端に乾燥を速くしたり遅くしても、目視でも分かるフィルム長手方向への線状のムラが発現してしまうという問題があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ヘイズ値が5%以下の超低ヘイズの反射防止フィルムに見られる上記のムラを防止することができる反射防止フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、ヘイズ値が5%以下の反射防止フィルムの製造方法であって、フィルム基材上に防眩性粒子と溶媒とを少なくとも含むハードコート層液を塗布する工程と、該塗布層を乾燥する工程と、乾燥した塗布層を紫外線で照射して硬化することで反射防止層を形成する工程と、を備え、前記防眩性粒子は、直径2〜6μmの粒子であるとともに、前記溶媒の比重よりも重く、前記乾燥する工程では、前記塗布層を上向きで乾燥するとともに、乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の前記塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥の速さを調整することで、前記防眩性粒子中心の平均位置が、前記反射防止層の表面から厚みの45〜58%の範囲とすることを特徴とする。
【0011】
本願発明者は、フィルム長手方向への線状のムラを防止する条件を鋭意研究した結果、塗布層を紫外線で硬化する条件などではなく、防眩性粒子と乾燥条件を上記範囲とすることで解決することができることを見出した。
【0012】
本発明によれば、防眩性粒子は、直径2〜6μmの粒子であるとともに、溶媒の比重よりも重くし、乾燥する工程では、塗布層を上向きで乾燥するとともに、乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の前記塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥することで、防眩性粒子中心の平均位置が、前記反射防止層の表面から厚みの45〜58%の範囲とすることで、超低ヘイズの反射防止フィルムに見られるムラを防止することができる。
【0013】
そして、本発明では、前記溶媒は、2種の異なるケトン系の溶媒を含み、一方のケトン系の溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)であり、他方のケトン系の溶剤は、蒸気圧0.2KPa以上のものであり、前記MEKは、全溶媒の30〜55wt%含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明では、前記反射防止層の層厚は、14μm以下であることが好ましい。
【0015】
更に、本発明では、前記フィルム基材は、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の反射防止フィルムの製造方法によれば、ヘイズ値が5%以下の反射防止フィルムに発現するムラを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る反射防止フィルムの製造方法が適用される光学フィルムの製造ラインの全体構成を説明する構成図
【図2】本発明の効果を示す実施例を示す表図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係る反射防止フィルムの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0019】
図1は、本発明に係る塗布方法が適用される光学フィルムの製造ライン10の全体構成を説明する構成図である。
【0020】
光学フィルムの製造ライン10は、図1に示されるように、送り出し機66から予めポリマー層が形成された透明支持体であるウェブWが送り出されるようになっている。ウェブWはガイドローラ68によってガイドされて除塵機74に送りこまれるようになっている。除塵機74は、ウェブWの表面に付着した塵を取り除くことができるようになっている。
【0021】
除塵機74の下流には、塗布手段であるエクストルージョン方式のスロットダイ塗布装置のスロットダイ12が設けられており、塗布液がバックアップローラ11に巻き掛けられたウェブWに塗布できるようになっている。
【0022】
スロットダイ12の下流には、乾燥ゾーン76が設けられており、ウェブW上の塗布層に含まれる溶媒を乾燥できるようになっている。更に、この下流には塗布層の硬化装置である紫外線照射装置80が設けられており、紫外線照射により、塗布層中の樹脂を硬化できるようになっている。そして、この下流に設けられた巻取り機82により、ポリマーが形成されたウェブWが巻き取られるようになっている。
【0023】
なお、光学フィルムの製造ライン10の略全般に亘って、ウェブWを巻き掛けて支持し、ウェブWの搬送を可能ならしめるべくガイドローラ68、68…が設けられている。このガイドローラ68は、回動自在となっているローラ部材であり、ウェブWの幅と略同一の長さ(本例では、ウェブWの幅より若干長い)を有する。
【0024】
上述したエクストルージョン方式のスロットダイ塗布装置(スロットダイ12)は、特に液粘度が3×10−3Pa・s以下の塗布液粘度で、且つ塗布膜の塗布量が10cc/m以下となるような低粘度薄膜塗布を行う光学フィルムの製造ラインに好適に適用できる。
【0025】
本実施の形態において、スロットダイ12は、クリーンルーム等の清浄な雰囲気に設置するとよい。その際、清浄度はクラス1000以下が好ましく、クラス100以下がより好ましく、クラス10以下が更に好ましい。
【0026】
なお、塗布液の塗布方法としては、上述したスロットダイ12以外に、バーコータ、ロールコータ(トランスファロールコータ、リバースロールコータ等)、ダイコータ、グラビアコータ、ファウンテンコータ、カーテンコータ、ディップコータ、スピンコータ、スプレーコータ又はスライドホッパ等が採用できる。
【0027】
また、図1に示される光学フィルムの製造ラインにおいて、ウェブWのテンションとしては、100〜500N/mにすることが好ましい。
【0028】
次に、本発明に係る乾燥ゾーン76の乾燥条件について説明する。
【0029】
ヘイズ値が5%以下の超低ヘイズの反射防止フィルムを製造すると、目視でも分かるウェブW長手方向への線状のムラが発現してしまうという問題があった。
【0030】
そこで、本発明では、塗布層を上向きで乾燥するとともに、乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の前記塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥するようにした。なお、このように、乾燥するには、乾燥温度を前記71℃以下で変えることや、風量を調整することが考えられる。
【0031】
また、乾燥条件だけでは、ウェブ長手方向の線状のムラは解消することはできず、塗布液の防眩性粒子を直径2〜6μmの範囲のものを用いるとともに、防眩性粒子の比重が塗布液の溶媒の比重よりも重いようにした。
【0032】
上記のように、防眩性粒子を直径2〜6μmの粒子とするとともに溶媒の比重よりも重くし、乾燥条件を塗布層を上向きで乾燥するとともに乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の前記塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥の速さを調整することで、ヘイズ値が5%以下の超低ヘイズの反射防止フィルムに見られるムラを防止することができた。なお、このような条件で製造された反射防止フィルムは、反射防止層における防眩性粒子中心の平均位置が、反射防止層の表面から厚みの45〜58%の範囲である。
【0033】
なお、反射防止層の層厚は、ヘイズ値が5%以下の反射防止フィルムを製造するためには、14μm以下であることが好ましい。
【0034】
ウェブ16として用いられる基材は、その用途により好ましいものが選択され、具体的には透明支持体が用いられる。透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
【0035】
プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0036】
このうち、トリアセチルセルロース(TAC)が好ましい。反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。トリアセチルセルロースは偏光板の偏光層を保護する保護フィルムに用いられるため、防眩性フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0037】
バインダーに用いる化合物は、飽和炭化水素又はポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。
【0038】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが含まれる。
【0039】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、塗布後、電離放射線、熱などによる重合反応により硬化させる必要がある。これは必要により、光重合開始剤、光増感剤などを用いて、周知の方法により行うことができる。
【0040】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーに代えて、又はそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。
【0041】
ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。これら架橋基を有する化合物は塗布後熱などによって架橋させる必要がある。
【0042】
反射防止性を付与する目的で用いられる粒子としては、フィラ粒子よりも粒径が大きく、平均粒径が1〜10μm程度のマット粒子が好ましく用いられているが、本発明では、直径2〜6μmの粒子であるとともに、溶媒の比重よりも重いことが必要である。
【0043】
粒子としては、例えば、アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン粒子、ベンゾグアナミン粒子等の有機化合物粒子が挙げられる。中でも、高い反射防止性を発現させることができることから、架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子を用いることが好ましい。粒子の形状は、真球或いは不定形と問わず、限定されるものではないが、本発明では、真球であることが好ましい。
【0044】
粒径や形状の異なる2種類以上のマット粒子を併用させることも可能である。なお、反射防止層を形成させるためには、マット粒子の含有量が、形成させる層1m辺りに対して10〜2000mgであることが好ましい。より好ましくは、100〜1400mgである。
【0045】
上記粒子は、層中で均一に分散されていることが好ましい。また、各粒子の粒子径が略同一であることが好ましい。例えば、平均粒径よりも20%以上大きい粒子を粗大粒子とするとき、全粒子に含まれる粗大粒子が含まれる割合は1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下である。したがって、粒子は、粒径が略同一であり、層中に均一に分散させることを目的として、できる限り程度の強い分級が多く行なわれたものを用いることが好ましい。なお、上記に示す微粒子は、粒径が光の波長よりも十分に小さいため、光の散乱が生じない。
【0046】
また、反射防止層には、界面活性作用を持つフッ素系化合物及びシリコーン系化合物のうち少なくとも1種を含有させることが好ましい。このような化合物を適宜選択して用いることにより、優れた防汚性や滑り性を有する反射防止層を形成することができる。なお、上記の化合物は、層形成用に用いられる層形成材料の全固形分量に対して、0.01〜20質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%であり、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0047】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。また、このフルオロアルキル基は炭素数が1〜20であることが好ましく、より好ましくは、1〜10である。この場合、直鎖、分岐構造、脂環式構造であっても良いし、エーテル結合を有していても良い。なお、フルオロアルキル基は、同一分子中に複数含まれていても良い。
【0048】
シリコーン系化合物としては、例えば、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び側鎖、又は末端か側鎖のいずれか一方に置換基を有するものが挙げられる。なお、上記のような単位を繰り返し含む化合物には、ジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでいても良い。また、置換基は同一でも異種でも良いが、複数個有することが好ましい。置換基の好適な例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。分子量に特に制限はないが、取り扱い性等を考慮して、100000以下であることが好ましい。より好ましくは、50000以下であり、特に好ましくは3000〜30000である。シリコーン系化合物のシリコーン原子量にも特に制限はないが、化合物全量に対して18質量%以上であることが好ましく、より好ましくは25〜37.8質量%であり、特に好ましくは30〜37質量%である。
【0049】
溶媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられるが、本発明に係る塗布液の溶媒は、2種の異なるケトン系の溶媒を含み、一方のケトン系の溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)であり、他方のケトン系の溶剤は、蒸気圧0.2KPa以上のものであり、MEKは全溶媒の30〜55wt%含むことが好ましい。
【0050】
ケトン系の溶剤で蒸気圧0.2KPa以上のものとしては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールである。
【0051】
このように、本発明に係る塗布液の溶媒は、2種の異なるケトン系の溶媒を含み、一方のケトン系の溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)であり、他方のケトン系の溶剤は、蒸気圧0.2KPa以上のものであり、MEKは全溶媒の30〜55wt%含むようにすることで、反射防止フィルムに発現するムラを更に防止することができる。
【0052】
本発明により得られる反射防止フィルムは、偏光板の保護フィルムとして好適に使用することができる。偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成されているが、この保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。このとき、反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねるので、偏光板の製造コストを低減することができるとともに、反射防止フィルムを最表層とすることで、外部からの光の映り込みが防止され、耐傷性、防汚性等にも優れる偏光板を得ることができる。他にも、2枚の保護フィルムのうち、片方が反射防止フィルムであり、もう一方が、光学異方層を有する光学補償フィルムであることが好ましい。このような光学補償フィルムは、光学異方層を有する光学機能層を形成することが得ることができる。光学補償フィルムは、位相差フィルムとも称され、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
【0053】
上記の様に本発明により得られる反射防止フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いると、TN、STN、VA、IPS、OCB等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0054】
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いても良く、特に限定されるものではない。この後者に示す偏光膜は、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ、幅方向に対して張力を付与することで延伸することで形成される。なお、少なくとも幅方向に1.1〜20倍の割合で延伸し、フィルムの両端の保持手段におけるフィルムの長手方向に対する進行速度の差が3%以内とし、このフィルム保持工程の終了時におけるフィルムの進行方向とフィルムの実質延伸方向のなす角度とが、20〜70°傾斜するようにフィルムの進行方向をフィルムの両端を保持した状態で屈曲させると、所望の延伸を施した偏光膜を作製することができる。なお、上記の角度を45°とすると、生産性の観点から好ましい。
【0055】
本発明により得られる反射防止フィルムは、LCD、PDP、ELD、CRTのような画像表示装置に好ましく用いることができる。また、本発明により得られるような透明支持体を有する反射防止フィルムを、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いると、表示品質に優れる画像表示装置を提供することができる。
【0056】
なお、本発明の反射防止フィルムに係る偏光膜、ポリマーフィルム、画像表示装置等に関しては、特開2005−257786号公報の[0067]以降に記載されており、この記載も本発明に適用することができる。
【0057】
[実施例]
図1に示される光学フィルムの製造ライン10を用いて、塗布液の塗布、硬化を行ない、評価を行った。
【0058】
塗布液として、以下のものを使用した。
【0059】
[反射防止層用塗布液]
反射防止性ハードコート用塗布液は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)75gを、52gのメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン=30/70重量%又は55/45重量%の混合溶媒に溶解した。
【0060】
得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバファインケミカルズ(株)製)10gを加え、攪拌溶解した後に、20重量%の含フッ素オリゴマーのメチルエチルケトン溶液からなるフッ素界面活性剤(メガファックF−176PF、大日本インキ(株)製)0.93gを添加した(なお、この溶液を塗布、紫外線硬化させて得られた塗布膜の屈折率は1.65であった。)。
【0061】
更に、この溶液に図2の表に示す個数平均粒子径であり、屈折率1.61の架橋ポリスチレン粒子20gを、80gのメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン=30/70重量%又は55/45重量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散し、孔径10μm、3μm、1μmのポリプロピレン製フィルタ(それぞれPPE−10、PPE−03、PPE−01、いずれも富士フイルム(株)製)にて濾過して得られた分散液29gを添加、攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して反射防止用塗布液を調製した。
【0062】
ウェブWとして、富士フイルム(株)製のTAC(トリアセチルセルロースフィルム)で80μm厚さのもので500mm幅のものを走行させた。ウェブWの走行速度を30m/分とし、反射防止用塗布液をダイコータにて塗布し、図2の表に示す乾燥条件で乾燥の後、紫外線照射装置(空冷メタルハライドランプ(200W/cm、発光長:450mm、照射量:600mJ/cm))を用いて硬化させて反射防止層を形成した。なお、紫外線照射では、純度99.9999%の窒素ガスを使用した。窒素ガスの温度は22°Cであり、圧力は0.4MPaであった。なお、反射防止層の層厚は、12.5μmであった。
【0063】
製造された反射防止フィルムの評価を行った。
【0064】
粒子の位置の評価は、製造された反射防止フィルムの断面を観察し、40個以上の粒子中心の反射防止層表面からの位置を測定した。反射防止層の厚みに対し、反射防止層表面から粒子中心位置の割合を平均値で算出した。
【0065】
ムラの評価は、黒ペットフィルム上で目視評価を行った。ムラが全くないものを◎、ムラがぼやけて見えにくいものを○、ムラが見えるものを×と評価した。
【0066】
図2の表の条件1の超低ヘイズではないフィルムでは、ムラは全く見えなかった。条件2の超低ヘイズフィルムではムラが見えた。条件3の乾燥条件を速めた超低ヘイズフィルムでは、粒子の位置が表面にくることでムラがぼやけて見えた。条件4の乾燥温度アップにより乾燥速度を速め過ぎた場合は、粒子の位置が表面にくるが、ムラは見え、面状が悪化していた。なお、条件5〜15を考察すると、ムラを防止するために乾燥を速める手段は、粒子サイズや溶剤の変更以外にも、乾燥温度や風量調整により可能だが、乾燥条件を、塗布層を上向きで乾燥するとともに、乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥の速さを調整することで、防眩性粒子中心の平均位置が、前記反射防止層の表面から厚みの45〜58%の範囲とすると、ムラがぼやけて見えるようになることが分かる。したがって、目視でも分かるフィルム長手方向への線状のムラは、本発明によりぼやけて見えるようになり、解消されることが分かる。
【符号の説明】
【0067】
10…光学フィルムの製造ライン、12…スロットダイ(塗布手段)、66…送り出し機、68…ガイドローラ、76…乾燥ゾーン、80…紫外線照射装置、82…巻取り機、W…ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘイズ値が5%以下の反射防止フィルムの製造方法であって、
フィルム基材上に防眩性粒子と溶媒とを少なくとも含むハードコート層液を塗布する工程と、該塗布層を乾燥する工程と、乾燥した塗布層を紫外線で照射して硬化することで反射防止層を形成する工程と、を備え、
前記防眩性粒子は、直径2〜6μmの粒子であるとともに、前記溶媒の比重よりも重く、
前記乾燥する工程では、前記塗布層を上向きで乾燥するとともに、乾燥の平均温度及び最大温度を71℃以下として、乾燥開始から35秒後の前記塗布層の固形分濃度が84〜95%となるように乾燥の速さを調整することで、
前記防眩性粒子中心の平均位置が、前記反射防止層の表面から厚みの45〜58%の範囲とすることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記溶媒は、2種の異なるケトン系の溶媒を含み、
一方のケトン系の溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)であり、他方のケトン系の溶剤は、蒸気圧0.2KPa以上のものであり、
前記MEKは、全溶媒の30〜55wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記反射防止層の層厚は、14μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム基材は、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の反射防止フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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