説明

反射防止フィルム

【課題】反射防止性、透明性、防汚性、指紋拭取り性、及び耐擦傷性を兼ね備えた反射防止フィルム及び画像表示装置を提供すること。
【解決手段】透明基材上に、少なくとも反射防止膜を有する反射防止フィルムであって、特定の構造単位を含む含フッ素ランダム共重合体を該反射防止膜中に含有し、該含フッ素ランダム共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜300,000であり、かつ重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布が1.0〜5.0の範囲であることを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関し、詳しくは防汚性能の高い反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイにおいて、映り込み防止として、反射防止フィルムが用いられる。反射防止フィルムには、反射率が低いことに加え、耐擦傷性が高いこと、防汚性に優れることが求められている。これらの解決手段として防汚添加剤が用いられる。
例えば、特許文献1には低屈折率層中にシリコーンオイルを加え、表面の滑り性を向上させることで、耐擦傷性の高い硬化皮膜とすることを提案している(特許文献1、段落0019参照)。しかしながら、シリコーンは指紋が馴染みやすい性質を持っており、表面に付いた指紋が拭取れないという欠点を有し、防汚性能に劣る。
【0003】
また、特許文献2にはバインダー成分の一部と共有結合を形成するフッ素化合物を低屈折率層中に加えることが提案されており、反射防止積層体に必要とされる防汚性、特に指紋拭取り性に効果がある(特許文献2、段落0057参照)。しかしながら、フッ素化合物はその他の汚れ、例えばマジックインキ等が馴染みやすい性質を持っており、表面に付いたマジックが拭取れないという欠点を有し、滑り性も低いため、耐擦傷性も十分とは言えない。
さらに、特許文献3に開示されるシリコーンオイルとフッ素化合物との組み合わせは通常、相溶性が悪いため透明性に劣るが、プロセスの改良により併用することができ、透明性と防汚性、耐擦傷性の両立が可能であるとしている。しかしながら、特許文献3に記載される反射防止フィルムは、反応性のないレベリング剤が必須であり、低屈折率層中で互いに結合されていないため、経時での耐久性が必ずしも十分ではないという課題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−147268号公報
【特許文献2】特開2005−99778号公報
【特許文献3】特開2009−53691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、本発明の目的は、反射防止性、透明性、防汚性、指紋拭取り性、及び耐擦傷性を兼ね備えた反射防止フィルム及び画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、透明基材上に特定の構造を有する含フッ素ランダム共重合体を含有した反射防止膜を備えてなる反射防止フィルムが、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)透明基材上に、少なくとも反射防止膜を有する反射防止フィルムであって、下記構造単位(I)を35〜65モル%、下記構造単位(II)を20〜60モル%、及び下記構造単位(III)〜(VI)から選ばれる少なくとも1種を0.1〜3モル%含んで構成される含フッ素ランダム共重合体を該反射防止膜中に含有し、該含フッ素ランダム共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜300,000であり、かつ重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布が1.0〜5.0の範囲であることを特徴とする反射防止フィルム、
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(I)中、R1は炭素数1〜10の直鎖構造を有するパーフルオロアルキル基又は含フッ素アルキル基を示し、エーテル結合を有していてもよい。)
【0009】
【化2】

【0010】
(一般式(II)中、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖構造を有するアルキレン基又は炭素数3〜10の環状構造を有するアルキレン基を示し、エーテル結合を有していてもよい。pは0〜6の整数を示す。)
【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
(一般式(III)〜(VI)中、R3は水素原子又はメチル基を示す。R4及びR5はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、又は水素原子を示し、R4とR5は同一でも異なっていてもよい。R6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは1〜420の整数、rは1〜6の整数を示す。)、
(2)前記含フッ素ランダム共重合体の少なくとも一部が、不飽和イソシアネートと反応して得られる二重結合含有含フッ素ランダム共重合体である上記(1)に記載の反射防止フィルム、及び
(3)上記(1)又は(2)に記載の反射防止フィルムを用いてなる画像表示装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反射防止性、透明性、防汚性、指紋拭取り性、及び耐擦傷性を兼ね備えた反射防止フィルム及び画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の反射防止フィルムは、透明基材上に、少なくとも反射防止膜を有し、該反射防止膜中に、前記構造単位(I)を35〜65モル%、前記構造単位(II)を20〜60モル%、及び前記構造単位(III)〜(VI)から選ばれる少なくとも1種を0.1〜3モル%含んで構成される含フッ素ランダム共重合体を含有し、さらに好ましくは該含フッ素ランダム共重合体の少なくとも一部が、不飽和イソシアネートと反応して得られる二重結合含有含フッ素ランダム共重合体を含有し、該含フッ素ランダム共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜300,000であり、かつ重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布が1.0〜5.0の範囲であることを特徴とする。
ここで、各構造単位(I)〜(VI)は、それぞれの構造単位が複数のものから構成される場合、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。すなわち、例えば、一般式(I)で表わされる構造単位であれば、R1が同一の1種単独のものであってもよいし、R1が異なる複数のものが組み合わさった構造であってもよい。一般式(II)〜(VI)でも同様である。
また、本発明の含フッ素ランダム共重合体は、後述する反射防止膜の表面にある低屈折率層に含有されることが、効果の点からより好ましい。
本発明における含フッ素ランダム共重合体の低屈折率層中の含有量は、低屈折率層の全固形分に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8.0質量%がさらに好ましく、1.0〜5.0質量%であることが特に好ましい。
【0018】
(含フッ素ランダム共重合体)
本発明における含フッ素ランダム共重合体を構成する構造単位(I)は、前記式(I)に示すものであり、R1は炭素数1〜10の直鎖構造を有するパーフルオロアルキル基又は含フッ素アルキル基を示し、エーテル結合を有していてもよい。特に、炭素数1〜3の直鎖構造を有するパーフルオロアルキル基が好ましい。構造単位(I)が複数ある場合、R1は1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせもよい。
【0019】
該構造単位(I)は、フルオロアルキルパーフルオロビニルエーテルを重合成分として用いることにより、該含フッ素ランダム共重合体に導入することができる。フルオロアルキルパーフルオロビニルエーテルの具体例としては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFO(CF2)2CF3、CF2=CFO(CF2)3CF3、CF2=CFOCH2CF3、CF2=CFOCH2CF2CF3、CF2=CFOCH2OCF3、CF2=CFOCF2OCF3、CF2=CFOCF2OCF2CF3、CF2=CFO(CF2)2OCF3、CF2=CFO(CF2)3OCF3、CF2=CFOO(CF2)4OCF3、CF2=CFO(CF2)2O(CF2)2OCF3、CF2=CFO(CF2)3O(CF2)2CF3等が挙げられる。
これらの中でも、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFO(CF2)2CF3が好ましい。これらのフルオロアルキルパーフルオロビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
また、含フッ素ランダム共重合体における構造単位(I)の含有率は、35〜65モル%であることが好ましく、特には40〜60モル%が好ましい。この範囲内であると塗工面が良好であり、耐擦傷性、防汚性の点で好適である。
【0020】
次に構造単位(II)は、前記式(II)に示すものであり、一般式(II)中、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖構造を有するアルキレン基、あるいは炭素数3〜10の環状構造を有するアルキレン基を示し、エーテル結合を有していてもよい。特に炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖構造を有するアルキレン基、あるいは炭素数6の環状構造を有するアルキレン基が好ましい。さらに、構造単位(II)が複数ある場合、R2は1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせもよい。
また、pは0〜6の整数を示し、特にpが0であることが好ましい。
【0021】
該構造単位(II)は、水酸基含有不飽和単量体を重合成分として用いることにより、該含フッ素ランダム共重合体に導入することができる。水酸基含有不飽和単量体の具体例としては、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが特に好ましい。これらの水酸基含有不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
また、含フッ素ランダム共重合体における構造単位(II)の含有率は、20〜60モル%であることが好ましく、特には32〜58モル%が好ましい。この範囲内であると反射防止膜の硬度を上げることができ、耐擦傷性を向上させることができる。
【0022】
次に構造単位(III)〜(VI)は、前記式(III)〜(VI)に示すものであり、一般式(III)〜(VI)中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4及びR5はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、又は水素原子を示し、R4とR5は同一でも異なっていてもよく、複数あるR4及びR5は、それぞれ同一種類のものであっても、複数種のものが混在していてもよい。R4及びR5としては、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子が好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、R6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは1〜420の整数を示し、1〜300の整数であることが特に好ましい。また、rは1〜6の整数を示し、特に1〜4の整数であることが好ましい。これらのうち、特に構造単位(III)で示されるものが好ましい。
【0023】
構造単位(III)〜(VI)は、含フッ素ランダム共重合体に0.1〜3モル%含まれていればよく、いずれか1種の構造単位でもよいし、複数種の構造単位、例えば、一般式(III)〜(VI)で示される構造単位をすべて含んでいてもよい。また、一つの一般式で示される構造単位が複数種存在していてもよい。例えば、特に好ましい構造単位である構造単位(III)に該当する異なる構造単位が2種以上含まれていてもよい。
構造単位(III)〜(VI)の含フッ素ランダム共重合体中の含有量は、0.1〜3モル%の範囲である。この範囲であると塗工面が良好であり、耐擦傷性、防汚性の点で好適である。以上の観点から、構造単位(III)〜(VI)の含有量は、0.3〜2.5モル%の範囲がより好ましい。
【0024】
該構造単位(III)〜(VI)は、それぞれ、下記式(VII)〜(X)で示されるポリシロキサン化合物を重合成分として用いることにより、該含フッ素ランダム共重合体に導入することができる。
【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
なお、R3、R4、R5、R6、n及びrは上記と同様である。具体例としては、R3が水素原子又はメチル基であり、R4及びR5がメチル基であり、R6が炭素数1〜6のアルキル基であり、nが1〜250であり、かつrが3のものが好適に挙げられる。これらの中でも、前記一般式(VII)で表わされる化合物が特に好ましい。
【0030】
本発明の含フッ素ランダム共重合体は、上記割合の構成単位(I)〜(VI)の他に、付与する特性に応じて10モル%を超えない範囲で他の共重合可能な単量体を含ませることができる。
該共重合可能な単量体として、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、3,4−ジヒドロキシブチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルが挙げられる。
【0031】
本発明の含フッ素ランダム共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と記載する。)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と記載する。)で10,000〜300,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜200,000である。また、重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布(以下、「Mw/Mn」と記載する。なお、「Mn」は数平均分子量である。)は1.0〜5.0の範囲であり、1.0〜3.5の範囲であることがさらに好ましい。ここで、Mwは、共重合反応を行う際の溶媒に対する原料モノマーの濃度、溶媒の量や種類、重合開始剤量や種類、共重合反応時間や反応温度などを調整することにより制御する。
【0032】
(含フッ素ランダム共重合体の製造方法)
本発明の含フッ素ランダム共重合体は、上記割合の構成単位(I)〜(VI)を形成し得る単量体を、重合開始剤を用いて共重合させることにより製造することができる。
重合開始剤としては、以下に示すものが適宜用いられるが、これらに限定されるものではない。例えばt−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型過酸化物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシジカーボネート;ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が用いられる。
これらの重合開始剤の使用量は、その種類、共重合反応条件等に応じて適宜選ばれるが、使用する単量体全量100質量部に対して、好ましくは0.005〜10質量部、より好ましくは0.1〜3質量部の範囲で選ばれる。
【0033】
本発明の含フッ素ランダム共重合体は、前記単量体成分を溶液重合法により共重合させて製造することができる。その溶媒として、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのうちの少なくとも1種を使用することが好ましいが、さらに別のケトン類、酢酸エステル類、芳香族炭化水素類、ソルベッソ(登録商標)等の芳香族炭化水素混合物を溶媒に用いることもできる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
これらの共重合反応における反応温度は、−30〜150℃の範囲内で重合開始剤や重合媒体の種類に応じて適宜選ばれる。例えば溶媒中で共重合を行う場合には、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜95℃の範囲で選ばれる。また、反応圧力については特に制限はないが、好ましくは0.1〜10MPaG、より好ましくは0.1〜5MPaGの範囲で選ばれる。さらに、該共重合反応は、適当な連鎖移動剤を添加して行うことができる。
【0034】
また、重合中に単量体または重合体からフッ化水素などの酸性物質が脱離して重合溶液が酸性になる場合には、系内に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、金属酸化物、ハイドロタルサイト類などの無機塩類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミンなどの有機アミン類、塩基性陰イオン交換樹脂を添加して、脱離したフッ化水素などの酸性物質を中和してもよい。
【0035】
(二重結合含有含フッ素ランダム共重合体)
本発明の含フッ素ランダム共重合体は、その少なくとも一部が、不飽和イソシアネートと反応して得られる二重結合含有含フッ素ランダム共重合体をも含むものである。このように、二重結合含有含フッ素ランダム共重合体とすることにより、後述する電離放射線硬化性バインダーとの相溶性が増し、かつ反応・結合することによって耐擦傷性の点で有利となる。
ここで用いられる不飽和イソシアネートとしては、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−(2−イソシアネートエトキシ)エチルメタクリレート、4−イソシアネートブチルメタクリレート、4−イソシアネートブチルアクリレート、不飽和モノアルコール1モルとジイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、不飽和モノアルコール2モルとトリイソシアネート化合物1モルとの反応生成物等が挙げられる。
不飽和モノアルコールの具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と称することがある。)、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」と称することがある。)、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、トリイソシアネート化合物の具体例としては、イソシアヌレート結合HDI、イソシアヌレート結合IPDI、トリメチロールプロパン(TMP)変性HDI、TMP変性IPDI等が挙げられる。
【0036】
本発明の含フッ素ランダム共重合体(水酸基含有)と不飽和イソシアネートとの反応方法は、特に限定されるものではないが、含フッ素ランダム共重合体を溶媒に溶解した溶液に、不飽和イソシアネートを滴下しながら加え、攪拌下で行うことが好ましい。この時の反応温度としては、好ましくは10〜130℃、より好ましくは25〜85℃の範囲で選ばれる。反応温度が低すぎる場合には反応が充分に進行せず、高すぎる場合には反応時にゲル化が生じ易くなるので好ましくない。
また、反応に使用する溶媒は、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等の酢酸エステル類、キシレン等の芳香族炭化水素類及び芳香族炭化水素の混合物等が好ましい。不飽和イソシアネートを使用しているために、水やアルコール類のような水酸基を有する溶媒を使用すると、含フッ素ランダム共重合体と不飽和イソシアネートとの反応が進行しないため、これらの水酸基を有する溶媒は好ましくない。
反応触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジオクテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート等の有機錫化合物を使用することが好ましい。
含フッ素ランダム共重合体(水酸基含有)と不飽和イソシアネートとの反応割合は、イソシアネート基/水酸基の比で、0.10〜1.05の範囲で選ばれることが好ましく、0.50〜1.00の範囲で選ばれることがさらに好ましい。
【0037】
上記二重結合含有含フッ素ランダム共重合体の分子量は、GPCで測定されるポリスチレン換算のMwで10,000〜300,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。またMw/Mnは1.0〜5.0の範囲である。
【0038】
次に、本発明の反射防止フィルムの層構成について、以下詳細に説明する。本発明の反射防止フィルムは、透明基材上に、少なくとも反射防止膜を有するものであり、通常は、透明基材、機能層、及び低屈折率層を最表面に有する反射防止膜からなる。
(透明基材)
透明基材の材質は、特に限定されないが、従来から反射防止フィルムに用いられている一般的な材料を用いることができ、例えば、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とするものが好ましい。ここで、「主体とする」とは、基材構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。
【0039】
セルロースアシレートの具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が挙げられ、より具体的には、日本ゼオン(株)製「ゼオネックス」や「ゼオノア」(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製「スミライトFS−1700」、JSR(株)製「アートン」(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製「アペル」(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の「Topas」(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製「オプトレッツOZ−1000シリーズ」(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
【0040】
アクリレート系ポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
なお、本明細書中で使用する、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを表し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及び/又はメタクリルを表す。また、本明細書中で使用する「光」には、可視、及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
【0041】
また、本発明にあっては、透明基材が薄膜の柔軟性に富んだフィルム状態として使用される場合、その厚さは、通常、20μm以上300μm以下、好ましくは30μm以上200μm以下である。透明基材は、該透明基材上にハードコート層を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理の他、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行なってもよい。
【0042】
(反射防止膜)
反射防止膜は、その最表面に低屈折率層を有し、反射防止効果を与えるものである。低屈折率層としては、反射防止効果を与えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、低屈折微粒子とバインダー成分を有するものを挙げることができる。
【0043】
(低屈折微粒子)
ここで用いられる低屈折微粒子は、屈折率が1.44以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましい。屈折率がこのような値をとることで、十分な屈折率を付与することが可能となる。
低屈折率微粒子としては、(a)空隙を有する微粒子及び(b)低屈折率性を有する金属フッ化物微粒子などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いることもできるし、組み合わせて使用することもできる。
【0044】
((a)空隙を有する微粒子)
上記空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成する微粒子を意味する(以下「中空粒子」と称する場合がある)。気体が屈折率1.0の空気である場合、微粒子自体の屈折率に比べて、微粒子中の空気の占有率に比例して、屈折率が低下する。また、微粒子の形態、構造、凝集状態、膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。
空隙を有する微粒子の材料としては、無機物及び有機物のいずれでもよく、金属、金属酸化物、樹脂などが挙げられる。中でも、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
空隙を有する無機系の微粒子の具体例としては、特開平7−133105号公報、特開2001−233611号公報等に開示された複合酸化物ゾル又は中空シリカ微粒子が挙げられる。中でも特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製した中空シリカ粒子が好ましい。このような空隙を有する無機系粒子は硬度が高いため、バインダー成分と混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上し、かつ、屈折率を1.20〜1.44程度の範囲内に調製することが可能となるので好ましい。
【0045】
中空シリカ微粒子等の空隙を有する無機系粒子は、具体的には、以下の第1の工程〜第3の工程により製造することができる。
すなわち、第1の工程として、あらかじめシリカ原料及びシリカ以外の無機酸化物のアルカリ水溶液を個別に調製するか、又は、両者の混合水溶液を調製する。次に目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、得られた上記水溶液を、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加する。
第2の工程として、上記の工程で得られた複合酸化物のコロイド粒子から、ケイ素と酸素以外の元素の少なくとも一部を先選択的に除去する。具体的には、複合酸化物中の元素を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、あるいは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
第3の工程として、この一部元素が除去された複合酸化物のコロイド粒子に、加水分解性の有機ケイ素化合物又はケイ酸塩等を加えることにより、コロイド粒子の表面を加水分解性の有機ケイ素化合物又はケイ酸塩等の重合物で被覆する。このようにして、上記公報に記載の複合酸化物ゾルを製造することができる。
【0046】
一方、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報に開示されている技術を用いて調製した中空高分子微粒子が好ましく挙げられる。中空高分子微粒子は、具体的には、分散安定剤の水溶液中で(i)少なくとも1種の架橋性モノマー、(ii)開始剤、(iii)少なくとも1種の架橋性モノマーから得られる重合体又は、少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの共重合体、並びに、(i)〜(iii)に対して相容性の低い水難溶性の溶媒からなる混合物を分散させ、懸濁重合を行うことにより製造することができる。なお、ここで架橋性モノマーとは、重合性反応基を2個以上有するものであり、単官能性モノマーとは、重合性反応基を1個有するものである。
【0047】
本発明の反射防止フィルムに、低屈折微粒子として空隙を有する微粒子を用いる場合の屈折率としては、1.20〜1.44の範囲であることが好ましい。1.20以上であると微粒子自体の強度を確保することができ、1.44以下であると十分な低屈折率化が可能である。以上の観点から、屈折率は1.22〜1.40の範囲であることがさらに好ましい。
また、該中空粒子は、当該粒子表面を同一構造であるか又は1次構造の共通部分が極めて多い架橋形成基で修飾されていることが好ましい。当該架橋形成基は架橋反応性を有するため、中空粒子及び電離放射線硬化性樹脂間で架橋結合を形成し得る。かかる架橋結合により、当該粒子及び当該樹脂間の結びつきが従来の反射防止層に比べ強固になる。
空隙を有する微粒子の低屈折率層中の含有量は、低屈折率層中の全固形分に対して、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%の範囲がさらに好ましい。
【0048】
((b)金属フッ化物微粒子)
低屈折率微粒子として用いる金属フッ化物微粒子の材料としては、屈折率が低いものであれば特に制限はなく、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等を挙げることができる。
本発明の反射防止フィルムに、低屈折微粒子として金属フッ化物微粒子を用いる場合の屈折率としては、十分な低屈折率化が可能であるという点から、1.30〜1.44の範囲であることが好ましく、1.33〜1.40の範囲であることがさらに好ましい。
【0049】
上記低屈折微粒子の形状は、球状、鎖状、針状、板状、片状、棒状、繊維状、及び樹脂状のいずれであってもよい。
また、該微粒子の平均粒径は、1〜100nmの範囲であることが好ましい。1nm以上であると十分な分散状態が得られ、100nm以下であると透明性が確保される。以上の観点から、微粒子の平均粒径は10〜70nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0050】
(バインダー成分)
反射防止膜を低屈折微粒子とともに構成するバインダー成分としては、上述した低屈折微粒子を均一に分散させることができ、優れた成膜性、基材や隣接層に対する密着性、固化又は硬化した際に透明性を有するものであれば特に限定されず、可視光、紫外線、電子線等の電磁波又はエネルギー線に感応して硬化する光硬化性バインダー成分や、熱に感応して硬化する熱硬化性バインダー成分、乾燥又は冷却により固化する熱可塑性樹脂等に代表される非反応性バインダー成分を挙げることができる。
中でも、本発明の反射防止フィルムにおいては、塗工適性に優れ、均一な大面積塗膜を形成しやすく、かつ硬化後に高い強度の膜が得られるとの観点から、光硬化性バインダー成分が好ましく、特に電離放射線硬化性バインダー成分を用いることが好ましい。
【0051】
このような電離放射線硬化性バインダー成分としては、電離放射線の照射を受けた時に、直接、又は開始剤の作用を受けて間接的に、重合や二量化等の反応を起こす重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーを用いることができる。具体的には、アクリル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のものや、エポキシ基含有化合物のような光カチオン重合性のものを用いることができる。
また、耐擦傷性の観点からは、1分子中に光硬化性基を2個以上有する多官能モノマーが好ましく、多官能モノマーとしては、特にペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート及びポリエステルトリアクリレート等が好ましく用いられる。
上記多官能モノマー以外にも、例えば、特開2008−165040号公報記載のポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー等を用いることができる。
【0052】
上記、熱硬化性バインダー成分としては、加熱によって同一の官能基又は他の官能基との間で重合又は架橋等を進行させて硬化させることができる硬化反応性基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーを用いることができる。具体的には、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水素結合形成基等を有するモノマー、オリゴマーが挙げられる。
上記熱硬化性バインダー成分及び熱硬化性バインダー成分としては、バインダー成分間で架橋結合ができるように、一分子内に重合性官能基を2個以上有する多官能性であることが好ましい。
【0053】
この他、低屈折率層の屈折率を低減するために、フッ素含有バインダー成分が好適に用いられる。フッ素含有バインダー成分としては、フッ素原子を含有する電離放射線硬化性基を有する重合性化合物が好ましく、特にエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールなど)を例示することができる。また、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものを用いることもでき、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。さらには、分子中にフッ素原子を少なくとも3個有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などを用いることもできる。
【0054】
また、フッ素原子を含有する熱硬化性極性基を有する重合性化合物を用いることもでき、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを例示することができる。上記熱硬化性極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基が好ましく挙げられる。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。
さらには、電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物(フッ素系樹脂)を用いることもでき、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、完全または部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
【0055】
フッ素原子を含有する上記重合性化合物の重合体としては、例えば、上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマー又はモノマー混合物の重合体;含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体;などが挙げられる。
また、これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も、上記重合性化合物の重合体として用いることができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示できる。中でもジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0056】
上記したほか、さらには、分子中に少なくとも1個のイソシアナート基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等のイソシアナート基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオール等のフッ素含有ポリオールと、イソシアナート基を有する化合物とを反応させて得られる化合物;なども、フッ素系樹脂として用いることができる。
【0057】
次に、上記非反応性バインダー成分としては、光学薄膜を製造するに際して従来用いられている非重合反応性の透明樹脂、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリスチロール、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0058】
上記バインダー成分は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合したものであってもよい。例えば、上記電離放射線硬化性バインダー成分に、上記熱硬化性バインダー成分や、上記非反応性バインダー成分を混合してもよい。
また、反射防止層を構成する上記低屈折微粒子及び上記バインダー成分の配合比率としては、低屈折率微粒子100質量部に対して、バインダー成分を30〜200質量部配合することが好ましい。
【0059】
また、本発明における低屈折率層には、耐擦傷性を向上させる目的で、中実粒子を含有させることができる。本発明で用いる中実粒子とは、粒子内部が多孔質でもなく、空洞でもなく、密である粒子であり、密であるために粒子自体の強度が中空粒子よりも高い。そのため、中実粒子を、低屈折率層に含有させることにより、低屈折率層の膜厚方向の押圧力に対する強度の向上が図れる。
中実粒子としては、従来公知の反射防止フィルムやハードコートフィルム等に用いられている中実粒子を用いることができる。例えば、特開2008−107792号公報に記載の金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物及び金属フッ化物等の無機系中実粒子を用いることができる。
【0060】
本発明で用いる中実粒子は、低屈折率層用組成物の硬化物である低屈折率層において、分散粒径が1〜20nmであることが好ましい。したがって、凝集していない1次粒径が1〜20nmの中実粒子であっても良いし、凝集したものであってもその凝集体の粒径が1〜20nmであれば良い。中実粒子の含有量は、低屈折率層の厚さや要求される耐擦傷性等に応じて適宜調節すれば良い。中実粒子の含有量は、例えば、低屈折率層用組成物の全固形分の合計質量に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
該中実粒子は、前述の中空粒子と同様に、当該粒子表面を同一構造であるか又は1次構造の共通部分が極めて多い架橋形成基で修飾されていることが好ましい。当該架橋形成基は架橋反応性を有するため、中実粒子及び電離放射線硬化性樹脂間で架橋結合を形成し得る。かかる架橋結合により、当該粒子及び当該樹脂間の結びつきが従来の反射防止層に比べ強固になる。
【0061】
(高屈折率層及び中屈折率層)
本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層は、低屈折率層1層からなっていてもよいし、高屈折率層及び中屈折率層と組み合わされていてもよいが、最表面は低屈折率層である。反射防止層が低屈折率層1層からなる場合の厚さは、反射防止性能を発揮するものであれば特に制限はないが、特には10〜200nmの範囲が好ましい。
また、高屈折率層及び中屈折率層(以下、両者をまとめて「他の屈折率層」と称することがある。)と低屈折率層を組み合わせる場合には、それぞれの屈折率の違いにより光の反射を効率よく防止することができる。これら他の屈折率層は、上記低屈折率層よりも屈折率が高いものであれば特に限定されるものではなく、屈折率1.46〜2.00の範囲で任意に設定することができる。本発明では、中屈折率層として、1.46〜1.80の範囲のものを意味し、高屈折率層は中屈折率層よりも屈折率が高く、その屈折率が1.65〜2.00の範囲のものを意味する。
【0062】
上記他の屈折率層は、屈折率が上記範囲内であれば特に限定されるものではなく、例えば、所望の屈折率を有する超微粒子とバインダー成分により形成することができる。このような超微粒子の材料としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95〜2.00)、アンチモンドープ酸化スズ(1.75〜1.85)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.10)などが挙げられる。なお、上記かっこ内は、各超微粒子の材料の屈折率を示す。
該超微粒子の平均粒径は、所望の屈折率層が得られれば特に制限はないが、通常、100nm以下である。なお、ここで用いられるバインダー成分は、低屈折率層を形成するものと同様のものを用いることができる。
【0063】
また、高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、それぞれ通常10〜300nmの範囲であり、30〜200nmの範囲がさらに好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成位置としては、上記低屈折率層と前記基材との間であればよく特に限定されない。基材上に直接設けてもよいし、基材上に他の機能性膜が存在する場合には、該機能性膜と低屈折率層との間に設けられてもよい。
【0064】
(低屈折率層の形成方法)
当該低屈折率層の形成方法としては、膜厚が均一になる方法であれば特に制限はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、熱CVD法など、種々の真空成膜の方法、あるいはゾルゲル法などによるウェットコーティングなどの公知の方法を用いることができる。通常、上記低屈折率微粒子及びバインダー成分を塗工液状態とした低屈折率層形成用コーティング組成物を塗工するウェットコーティングにより形成される。
このようなコーティング組成物としては、上記低屈折率微粒子及びバインダー成分の他に、溶剤、光重合開始剤、その他の添加剤を含有させてもよい。
【0065】
(溶剤)
上記低屈折率層形成用コーティング組成物に含まれる溶剤としては、上記低屈折率微粒子及びバインダー成分等を溶解又は均一に分散させ得るものであれば、特に限定されるものではなく、一般的な有機溶媒を用いることができる。
具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類、或いはこれらの混合物を用いることができる。
本発明では、溶剤としてケトン類を用いることが好ましい。ケトン類を溶剤として用いることで、当該組成物を基材表面に容易に薄く均一に塗布することができ、かつ、塗工後において、溶剤の蒸発速度が適度で乾燥むらを起こし難いために、均一な薄さの大面積塗膜を容易に得ることができる。ケトン類の溶剤中の含有量としては、70質量%以上が好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、ケトン類は1種を単独で、又は2種以上のケトン溶剤を混合して用いてもよい。
【0066】
また、溶剤の量としては、各成分を溶解又は均一に分散させることができ、調製後の保存時に凝集せず、かつ塗工時に希薄すぎない濃度であるように適宜調整する。より具体的には、固形分と溶剤の合計量に対して、全固形分を0.5〜50質量%とし、溶剤を50〜95.5質量%とすることが好ましい。この範囲であると分散安定性に優れ、長期保存に適した低屈折率層用コーティング組成物が得られる。以上の観点から、全固形分を1〜5質量%とし、溶剤を95〜99質量%とすることがさらに好ましい。
【0067】
(光重合開始剤)
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、3〜8質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0068】
本発明の反射防止フィルムは、上述する構成をとることにより優れた防汚性を有するが、さらに他の防汚剤を併用することで、特性を変えることも可能である。例えば、滑り性を重視する場合には、シリコーン系の防汚剤を併用することが好ましく、また、指紋ふき取り性を重視する場合には、フッ素系の防汚剤を併用することが好ましく、所望の特性へ変えることが可能である。
【0069】
また、本発明の反射防止フィルムは、通常、透明基材及び最表面の反射防止膜の間に用途に応じて、機能層を設ける。機能層としては、反射防止フィルム表面の傷つきが起きないように、耐擦傷性の機能を有するハードコート層、帯電を防止することによりホコリの付着を防止する帯電防止層などを挙げることができる。通常、基材側から、帯電防止層、ハードコート層、反射防止膜の順に積層される。
【0070】
(帯電防止層)
帯電防止層は、帯電防止効果により、ホコリの付着防止、あるいは本発明の反射防止フィルムをCRTに使用した場合の電磁波シールド効果を得ることができる。帯電防止層としては、通常、導電性微粒子を樹脂組成物に分散したものが用いられる。
帯電防止層に用いられる導電性微粒子としては、アンチモンドープのインジウム・ティンオキサイド(ATO)、インジウム・ティンオキサイド(ITO)、金及び/又はニッケルで表面処理した有機化合物微粒子を挙げることができる。その他、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基等のアニオン系帯電防止剤;ポリエチレングリコール系等のノニオン性帯電防止剤などの各種界面活性剤型帯電防止剤を挙げることができる。さらに上記帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤であってもよいし、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、又はその各誘導等の導電性ポリマーも用いることができる。
【0071】
帯電防止層を得るための樹脂組成物としては、上記導電性微粒子を含むことができる透明な樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂等を用いることができる。
帯電防止層の製造方法は、均一な膜厚で形成できるものであれば、特に制限されるものではなく、通常のコーティング方法を用いることができる。
【0072】
(ハードコート層)
ハードコート層は、本発明の反射防止フィルムに、耐擦傷性の機能を付与するものであり、本発明では、ハードコート層として、JIS5600−5−4:1990で示される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すものであることが好ましい。
このようなハードコート層を形成する材料としては、透明性を有し、ハードコート性が得られるものであれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。なかでも熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂が好ましく、特に、電離放射線硬化性樹脂をバインダーとして用いることが、生産性、他の部材へのダメージを低減させ得るとの観点から、特に好ましい。なお、用い得る電離放射線硬化性樹脂は、低屈折率層を形成するバインダー成分として前掲したものと同様のものである。
【0073】
ハードコート層の厚さとしては、耐擦傷性を発揮でき、十分な強度を有するものであれば特に制限されるものではないが、通常、硬化後の厚さとして、0.1〜100μmの範囲である。ハードコート層の厚さが0.1μm以上であると、十分なハードコート性が得られ、100μm以下であると外部からの衝撃により割れることがない。以上の観点から、ハードコート層の厚さは、0.8〜20μmの範囲であることが好ましい。
ハードコート層の形成方法としては、均一な膜厚で形成できるものであれば特に制限されるものではなく、通常のコーティング法を用いることができる。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、本発明における評価方法は、以下の方法にて行った。
(評価方法)
1.重量平均分子量(Mw)
以下に示すGPC分析装置で測定し、テトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8220GPC」
カラム構成:東ソー(株)製「TSKgel SuperHZM−M 4.6mmI.D.150mm 4本、
流速:0.35mL/min
測定温度:40℃
試料濃度:0.1wt%
【0075】
2.最低反射率
(株)島津製作所製分光光度計(UV−3100PC)を用いて、入射角と反射角がそれぞれ、5度のときの最低反射率を測定した。
3.ヘイズ
ヘイズメーター[日本電色工業(株)製、機種名「NDH-2000]を用い、JIS K 7136に準拠してヘイズ値を測定した。
【0076】
4.塗工面
目視にて評価した。白化していないものを○、白化しているものを×とした。
5.耐擦傷性
#0000のスチールウールを用い、荷重200gで20往復させたときの、傷の有無を目視にて評価した。該条件で傷がつかないものを○、傷が認められたものを×とした。
【0077】
6.防汚性
(1)マジックに対する防汚性
油性マジックで描いた際の状態と、布でふき取った後の状態にて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎;描いたときにインクを球状にはじき、ふき取りが容易である。
○;描いたときにインクがはじかれて、線が細くなっており、ふき取りも容易である。
×;ふき取り後にインクの跡が残存した。
(2)指紋に対する防汚性
指紋を付着した後、ベンコットM−3(旭化成(株)製)でふき取り、取りやすさを目視で判定した。評価基準は以下の通りである。
○;指紋がふき取れる。
×;指紋がふき取れない。
【0078】
製造例1(含フッ素ランダム共重合体の製造)
内容積1Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブ(耐圧10MPa)を窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル450g、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(以下「HEVE」と記載する。)49.7g、下記式(XI)で示されるシリコーン単量体A(数平均分子量;約5000)を63.9g及びt−ブチルパーオキシピバレート5gを仕込み、−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内を十分置換した。次いで、パーフルオロプロピルパーフルオロビニルエーテル(以下「PFPVE」と記載する。)129.8gを仕込み、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、オートクレーブを水冷し、反応を停止させた。得られた含フッ素ランダム共重合体を単離した結果、収量は210g、重合体収率は86%であった。得られた含フッ素ランダム共重合体(A−1)の水酸基価を、無水酢酸を用いたアセチル化法によって測定したところ、151mgKOH/gであった。測定結果を第1表に示す。なお、ここで、M%はモル%を示す。
【0079】
【化11】

【0080】
製造例2〜9(含フッ素ランダム共重合の製造)
各単量体の仕込量と重合溶媒(使用量合計450g)を第1表に示すとおりとしたこと以外は、製造例1と同様にして含フッ素ランダム共重合体を合成した。
【0081】
比較製造例1及び2(含フッ素ランダム共重合の製造)
各単量体の仕込量と重合溶媒(使用量合計450g)を第1表に示すとおりとしたこと以外は、製造例1と同様にして含フッ素ランダム共重合体を合成した。なお、比較製造例1は、構造単位(I)の含有量が上限値を超えるものであり、比較製造例2は、構造単位(III)の含有量が下限値を下回るものである。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
*1 PFPVE;パーフルオロプロピルパーフルオロビニルエーテル
*2 HEVE;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル
*3 シリコーン単量体A;式(XI)で示されるシリコーン単量体(数平均分子量;約5000)
*4 シリコーン単量体B;式(XII)で示されるシリコーン単量体(数平均分子量;約13660)
*5 シリコーン単量体C;式(XIII)で示されるシリコーン単量体(数平均分子量;約5000)
*6 シリコーン単量体D;式(XIV)で示されるシリコーン単量体(数平均分子量;約4660)
*7 シリコーン単量体E;式(XV)で示されるシリコーン単量体(数平均分子量;約5000)
*8 シリコーン単量体F;式(XVI)で示されるシリコーン単量体(数平均分子量;約5000)
*9 溶媒A;芳香族炭化水素混合物(ソルベッソ(登録商標)100)
【0086】
【化12】

【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
製造例10(二重結合含有含フッ素ランダム共重合体の製造)
暗所中で攪拌機、還流コンデンサー、滴下漏斗、塩化カルシウム塔をつけた1L丸底三つ口フラスコに、製造例1で得られた含フッ素ランダム共重合A−1の30%酢酸エチル溶液300g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.01g、ジブチルチンジラウレート0.05gを入れた。温度を40℃に保ち攪拌しながら、滴下漏斗に入れた2−イソシアネートエチルアクリレート(以下「IEA」と記載する。)34.1gと酢酸エチル79.6gの混合溶液(IEA濃度30%)を少しずつ滴下した。滴下終了後、3時間攪拌を続け、二重結合含有含フッ素ランダム共重合体(B−1)を得た。上記反応溶液の赤外吸収スペクトルを測定した結果、2,260cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことから、A−1の水酸基とIEAのイソシアネート基の反応が進行したことを確認した。また、B−1のGPCで測定したMwは18×104、Mw/Mnは2.6であった。測定結果を第2表に示す。
【0092】
製造例11〜18(二重結合含有含フッ素ランダム共重合体の製造)
使用した含フッ素ランダム共重合体及び不飽和イソシアネートを第2表に示すとおりとしたこと以外は、製造例10と同様にして二重結合含有含フッ素ランダム共重合体を合成した。得られた二重結合含有含フッ素ランダム共重合体につき、製造例10と同様にMw及びMw/Mnを測定した。結果を第2表に示す。
【0093】
比較製造例3及び4
使用した含フッ素ランダム共重合体及び不飽和イソシアネートを第2表に示すとおりとしたこと以外は、製造例10と同様にして二重結合含有含フッ素ランダム共重合体を合成した。得られた二重結合含有含フッ素ランダム共重合体につき、製造例10と同様にMw及びMw/Mnを測定した。結果を第2表に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
*10 IEA;2−イソシアネートエチルアクリレート
*11 BAOEI;1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート
【0096】
実施例1(反射防止フィルムの製造)
(1)ハードコート層の形成
溶剤であるメチルイソブチルケトン73.5質量部に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製「PET−30」(商品名))30.0質量部、及びイルガキュア907(商品名、チバジャパン(株)製)1.5質量部を混合してハードコート層形成用組成物を調製した。
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、該ハードコート層形成用樹脂組成物をバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株)製、光源Hバルブ)にて、照射線量20mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、塗膜を硬化させ、ハードコート層を得た。硬化後の層厚は10μmであった。
(2)反射防止膜(低屈折率層)の形成
メチルイソブチルケトン(54.01質量%)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(28.8質量%)からなる混合溶剤に、表面処理した空隙シリカゾル(平均粒径50nm、MIBK分散液、固形分20質量%)10.6質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製「PET−30」(商品名))0.54質量%、フッ素含有モノマー(共栄社化学(株)製「LINC3A」(商品名)MIBK溶剤 固形分20質量%)5.44質量%、イルガキュア127(商品名、チバジャパン(株)製)0.10質量%、製造例10にて調製した二重結合含有含フッ素ランダム共重合体B−1(固形分30質量%)0.50質量%を混合して、反射防止膜(低屈折率層)形成用樹脂組成物を調製した。なお、共重合体B−1は製造された段階で、固形分30質量%であり、これをそのまま使用した。
上記(1)で形成したハードコート層の上に反射防止膜(低屈折率層)形成用樹脂組成物をバーコーティングし、乾燥により溶剤を除去した後、紫外線照射装置(前掲)にて、照射線量20mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、塗膜を硬化させ、層厚約100nmの反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
以上の操作により、基材/ハードコート層/反射防止膜(低屈折率層)からなる反射防止フィルム(光学フィルム)を得た。
反射防止フィルムに関し、上記方法にて評価した。結果を第3表に示す。
【0097】
実施例2〜9
使用した二重結合含有含フッ素ランダム共重合体を第3表に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第3表に示す。
【0098】
比較例1及び2
使用した二重結合含有含フッ素ランダム共重合体を第3表に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。実施例1と同様に評価した結果を第3表に示す。
【0099】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、反射防止性、透明性、防汚性、指紋拭取り性、及び耐擦傷性を兼ね備えた反射防止フィルムを提供することができる。該反射防止フィルムは、テレビ、パソコン、携帯電話等のディスプレイ(画像表示装置)の表面に貼付して使用することで、優れた機能を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、少なくとも反射防止膜を有する反射防止フィルムであって、下記構造単位(I)を35〜65モル%、下記構造単位(II)を20〜60モル%、及び下記構造単位(III)〜(VI)から選ばれる少なくとも1種を0.1〜3モル%含んで構成される含フッ素ランダム共重合体を該反射防止膜中に含有し、該含フッ素ランダム共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜300,000であり、かつ重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布が1.0〜5.0の範囲であることを特徴とする反射防止フィルム。
【化1】

(一般式(I)中、R1は炭素数1〜10の直鎖構造を有するパーフルオロアルキル基又は含フッ素アルキル基を示し、エーテル結合を有していてもよい。)
【化2】

(一般式(II)中、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖構造を有するアルキレン基又は炭素数3〜10の環状構造を有するアルキレン基を示し、エーテル結合を有していてもよい。pは0〜6の整数を示す。)
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(一般式(III)〜(VI)中、R3は水素原子又はメチル基を示す。R4及びR5はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、又は水素原子を示し、R4とR5は同一でも異なっていてもよい。R6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは1〜420の整数、rは1〜6の整数を示す。)
【請求項2】
前記含フッ素ランダム共重合体の少なくとも一部が、不飽和イソシアネートと反応して得られる二重結合含有含フッ素ランダム共重合体である請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記反射防止膜の最表面が低屈折率層であり、前記含フッ素ランダム共重合体が該低屈折率層に含有される請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記低屈折率層が低屈折微粒子及びバインダー成分を含有してなり、該低屈折微粒子の屈折率が1.44以下である請求項3に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記低屈折微粒子が、空隙を有する微粒子及び金属フッ化物微粒子から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記反射防止膜が、高屈折率層及び中屈折率層の少なくとも一方をさらに含む請求項3〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記透明基材と反射防止膜の間に、他の機能層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルムを用いてなる画像表示装置。

【公開番号】特開2011−170208(P2011−170208A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35403(P2010−35403)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】