反応又は検出用チューブ容器、該容器を含む試薬キット
【課題】検体試料投入時に生ずる乾燥試薬の舞い上がりを防止し、実験者の作業手順を軽減するとともに、核酸増幅を迅速かつ良好に実施し、分析精度の低下を防ぐこと。
【解決手段】反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成形してなり、前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細りに形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部を有してなり、さらに前記先細部の内部に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部を反応チューブと一体に設けてなるチューブ容器、並びに該チューブ容器及び乾燥試薬又は乾燥試薬を担持させた試薬キット。
【解決手段】反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成形してなり、前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細りに形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部を有してなり、さらに前記先細部の内部に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部を反応チューブと一体に設けてなるチューブ容器、並びに該チューブ容器及び乾燥試薬又は乾燥試薬を担持させた試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料の微量分析に適したチューブ容器、及び該容器を含む試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の生体試料や、食品中、環境水中等の遺伝子分析において、特に目的とする核酸を効率よく分析するために、核酸増幅法が利用されている。
核酸増幅法を実施する際、試料として得られている核酸が非常に少ないため、その反応自体、ごく微量の溶液中、通常数10μL単位の溶液中にて実施される。
このため、核酸増幅反応は通常、容量の小さい蓋付き反応チューブ内で実施され、様々な反応チューブが提案されている。
【0003】
例えば、蓋と反応容器を一体型とした少量の液体を収納するプラスチック製反応容器が提案されており、蓋を容易に開閉でき、かつ容器内圧によって開放される恐れが殆どなく、閉鎖された蓋が確実に保持されるように、蓋と容器開口部との嵌合性や、蓋と連結体の検討がなされている(特許文献1参照)。
また、蓋の開閉頻度を下げ、一度に処理できる検体数を増大させる反応用チューブとして、反応容器内に容器と一体型の隔壁を設けた反応用チューブが提案されている(特許文献2参照)。
さらに、蓋と容器開口部の一体型反応容器において、前記蓋が極薄の膜を有し、さらに蓋と容器連結部の折り畳み蝶番に2個の刻み溝が設けられた容器が開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭60−183362号公報
【特許文献2】実開平7−34935号公報
【特許文献3】特表平9−504690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで検討されてきた核酸増幅用のチューブ容器は、蓋の開閉性や蓋と容器の密着性、或いは、検体処理の効率化を図ったものであった。
上述の容器を用いて核酸増幅を実施する際、一例として、不織布等の担体に核酸増幅試薬を担持させて乾燥させ、該試薬に向けて検出用試料を投入することにより、核酸増幅反応を実施するという手段が採用されている。しかしながらこの場合、試料投入時に乾燥試薬がチューブ容器の所定の反応域あるいは検出域に存在せず、それより上方に舞い上がってその位置に留まっている(これを所謂「舞い上がり」という)と、そこで液体の試料と接触して、該乾燥試薬が容器の内壁の本来の反応域、検出域でない様々な部分に付着することがある。このとき、実験者が検出分析装置の運転を停止する等、分析手順を一旦停めて、乾燥試薬を容器の下部に落とす必要があるだけでなく、核酸増幅が迅速かつ良好に実施できず、また検出が不十分となって、分析精度が著しく落ちる(時として分析不可となる)という問題点を有していた。
またこの「舞い上がり」の現象は、予めチューブ容器の下部に核酸増幅試薬を担持させた担体を投入したところの試薬キットの保管、輸送、或いは使用時においても見られ、問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を行った結果、微量の液体試料を収納できるチューブ容器において、容器下部に試薬保持部を設けることにより、これまで検
体用試料の投入後に生じていた乾燥試薬の舞い上がりを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、微量の試料中の標的物質の反応又は検出をなすためのチューブ容器であって、反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成形してなり、前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細りに形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部を有してなり、さらに前記先細部の内部に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部を反応チューブと一体に設けてなる、チューブ容器に関する。
【0006】
本発明の好ましい態様において、前記試薬保持部は、前記先細部の内壁面より前記反応チューブの中心に向かって張り出した張出し部からなり、前記張出し部は、好ましくは前記先細部の内周に亘って、互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個設けられることが望ましい。また、前記張出し部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることが望ましい。
また本発明において、前記張出し部はリブからなっていてもよい。
【0007】
さらに本発明の別の好ましい態様において、前記試薬保持部は、前記先細部の内周に亘って、前記先細部の内壁上に形成された凹部からなり、前記凹部は好ましくは互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個設けられていることが望ましい。さらに、前記凹部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることが望ましい。
【0008】
また本発明のチューブ容器は、前記蓋部に、容器の内容物を示すためのより広面積の表示部を設けてなることが望ましい。
【0009】
さらに本発明は、前述のチューブ容器と、該チューブ容器の試薬保持部に保持された乾燥試薬又は乾燥試薬を担持し得る担体からなる試薬キットにも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチューブ容器は、容器の下部(所定の反応域あるいは検出域付近)に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部が設けられている。
前記チューブ容器の試薬保持部に試薬又は試薬を担持する担体を保持させる方法の一例として、下記の方法を挙げることができる。
(a)不織布等からなる支持体をチューブ容器の試薬保持部に接着させ、その後、該支持体に向けて液体試薬を投入して浸漬させ(試薬を担持する担体と為す)、減圧下で乾燥させる。
(b)チューブ容器に液体試薬を投入し、容器内で乾燥又は凍結乾燥させる。
上述の方法によって、乾燥させた試薬は試薬保持部に設けられた張出し部又は凹部に付着し、あるいは張出し部/凹部の凹凸形状に挟まれ、若しくは、架かるようにして留まり、多少の振動でも試薬保持部から離れなくなるようになる。
このため、例えば該チューブ容器を傾けたり、或いは、撹拌器によって撹拌したりする場合であっても、その後、乾燥させた試薬等が試薬保持部から移動して、該チューブ容器の所定の反応域あるいは検出域以外の内壁に付着することを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明のチューブ容器を用いて微量の試料中の標的物質の反応又は検出を行う際、試薬や試料が容器中で舞い上がらずに容器下部の所定の反応域あるいは検出域に留まるため、これまで「舞い上がり」によって生じていた分析手順における手間(乾燥試薬を容器の下部に落とすなどの工程)を減らすことができ、分析精度不良、さらには分析不可能といった問題を防止することができる。
【0012】
また本発明の試薬キットは、本発明のチューブ容器を用い、しかも乾燥状態で試薬を保持できるため、試料中の標的物質の反応又は検出が必要なときに迅速に精度よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の微量の試料中の標的物質の反応又は検出をなすためのチューブ容器は、反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成型してなる。
【0014】
本発明のチューブ容器は、プラスチック製であることが好ましい。
プラスチックは射出成型などの公知慣用の方法により、一度に一体的に極めて容易にチューブ容器を成型することができ、安価に大量生産することができる。
本発明において使用されるチューブ容器は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、その他ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等から適宜選択された樹脂から製造される。
また本発明のチューブ容器は、標的物質の反応・検出の機構、また、反応・検出に使用する装置の大きさにあわせて、反応チューブの口径、容器の大きさや肉厚等を適宜調整してよい。
【0015】
[蓋部]
本発明のチューブ容器において、前記蓋部は前記反応チューブの上面の開口部を密閉する機能を有し、該反応チューブ及び後述する接合部と共に一体に成型される。
該蓋部は、反応チューブの開口部に適合し、該開口部の周縁より下方に続くチューブの内壁面に対して好適な密閉性が得られるように形成された筒状のシール部と、該筒状のシール部の端部に外周全体にわたって形成され、前記反応チューブの縁部と密に当接し、それに対して好適な密閉性が得られるように形成された外周部とを有している。
前記筒状のシール部は、反応チューブの開口部と嵌合させた際に密着性が高まり、かつ、必要に応じて開口部から除去する際に抜けやすくするように形成され、好適には、蓋部本体から最も離れた端部の外周が、蓋部本体から最も近いシール部の外周に比べて、僅かに大きく形成されている。
【0016】
また前記蓋部は、蓋部の開閉(反応チューブ開口部から蓋部のシール部の着脱)を容易にするとともに、容器の内容物を示すためのより広面積の表示部が設けられていることが好ましい。該表示部は、前記蓋部の外周部から連なって形成されてなる。
チューブ容器の上面からみたとき、該表示部の形状は略四角形や略三角形など様々であってよいが、上述の目的から好ましくは略四角形の形状を有してなることが望ましい。
【0017】
[接合部]
本発明のチューブ容器において、前記接合部は前記反応チューブ及び前記蓋部と共に一体に成型されてなる。該接合部は、前記反応チューブの上部と前記蓋部とを結合するように設けられており、蓋部の紛失を防止し、また、反応チューブの開口部を密閉するにあたり、蓋部の取り扱い性を向上させるという機能を有する。
【0018】
該接合部の反応チューブ側との結合部位は、反応チューブの開口部の周縁部であってもよいし、反応チューブの胴部上方の外壁面であってもよい。
該接合部は、蓋部のシール部を反応チューブの開口部から容易に挿入でき、挿入後には簡単に外れることがないよう、略中央で柔軟性を有して容易に屈曲するように形成されていることが望ましい。略中央で容易に屈曲するように形成されていない場合、該接合部が時間の経過とともに折れ曲がった状態から元に戻ろうとする力が働き、蓋部の反応チュー
ブ開口部との密着性を低下させるだけでなく、場合によっては反応チューブ開口部から蓋部を外すことになる。このため該接合部は、略中央にヒンジを有する構造や、湾曲した構造を有して形成され、或いは、該接合部の略中央で折れ曲がりやすくするために厚みや幅を変化させるように形成される。
また該接合部は、通常、1本の短冊状に形成されているが、二本以上の紐状に形成されていてもよい。
【0019】
[反応チューブ]
本発明のチューブ容器において、前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細に形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部とを有してなる。
前述の通り、前記開口部は、前記蓋部によって容易に密閉できるようにするための縁部を有してなる。反応チューブを上面からみたとき、一般に該縁部は筒状の胴部の外周より僅かに外側に張り出すように形成され、すなわち、筒状の胴部の断面より広い面積を有してなる。
【0020】
上記チューブ容器において、内側面は滑らかな面を有していることが好ましいが、外側面は、例えば容器の強度向上を目的として、或いは、使用する検出装置の内部形状に対応して、容器の長手方向又は周方向に溝などが形成されていてもよい。
【0021】
前記胴部より先細に形成された先細部において、その内側面の先細(テーパー)の角度は使用する検出装置の内部形状に対応して適宜選択するが、好ましくは、仮に乾燥試料が舞い上がった場合に容器下部の所定位置へ落ちやすくなり、また、液体試料を投入した際、仮に壁面に試料が付着しても所定位置へ落ちやすくなることから、テーパーの角度が大きいことが望ましい。
【0022】
前記チューブ容器において、前記胴部の内側面の形状としては円柱(正円柱、楕円柱など)や角柱(三角柱、四角柱など)等の筒状の形状が挙げられ、また前記先細部の内側面の形状としては錐状(円錐状、角錐状(三角錐、四角錘など)など)等の形状が挙げられる。該胴部の内側面と該先細部の内側面はどのような形状の組み合わせであっても良いが、乾燥試料が舞い上がった場合に容器下部の所定位置へ落ちやすくなり、また液体試料を投入した際に壁面に付着した試料が落ちやすくなることから、好ましくは円柱状の胴部と円錐状の形状を有する先細部とが組み合わされていることが望ましい。
【0023】
[試薬保持部]
前記チューブ容器において、前記先細部の内部には、チューブ容器の所定の反応域あるいは検出域付近に試薬が留まることができるようにするための、試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部が反応チューブと一体に設けられている。
試薬保持部の詳細な設置場所は、使用する反応・検出装置の内部構造にあわせて、適宜調整されることが望ましい。
【0024】
前記試薬保持部は、試薬保持部によって反応チューブの空間が上下に分断される(すなわち試薬保持部の上下で両空間が連通しない)ことがない限り、上述の機能を有するものであればどのような形状で形成されていても良い。
例えば、該試薬保持部は、チューブ容器内壁からチューブ容器内部に向けて張り出して形成されるが、その部分が対向する壁面までは到達せずに形成されている場合(後述する「張出し部」)、対向する壁面まで到達して形成されている場合(例えばチューブ容器上面から見たとき、試薬保持部が十字形に形成されている場合)、あるいは、容器内壁から内壁内部に向かって凹部が形成されている場合(後述する「凹部」)など、様々であって
よい。
【0025】
前記試薬保持部の一形態としては、前記先細部の内壁面より前記反応チューブの中心に向かって張り出し、但し対向する壁面までは到達せずに形成されてなる、「張出し部」がある。
前記張出し部は、好ましくは前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個配設されていることが望ましい。
また前記張出し部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていてもよいし、あるいは、底部まで延設されず、リブ状に形成されていてもよい。該張出し部が底部まで延設されている場合、チューブ中心側の該張出し部の側面は反応チューブの長手方向の中心線と平行に延設されていてもよいし、あるいは、底部に向かって傾きを有して(例えば、反応チューブの長手方向の中心線に向かって下向きに傾斜されて)延設されていてもよい。
【0026】
前記反応チューブの横断面からみたとき、前記張出し部の形状は、例えば矩形が長細に延びている短冊状、容器内部に向かって張り出した先端がとがっている三角形状、先端が平らである台形状、先端が丸みを帯びているドーム状、あるいは先端が容器内壁に向かってくびれている凹面状など、様々であってよい。また該張出し部は、前述の先端から容器内壁面に向けて裾野状の形状を有して形成されていてもよい。
【0027】
また、前記張出し部の上面は水平な平面であってよいが、チューブの中心に向かって下向きに傾斜して形成されていてもよい。
【0028】
前記試薬保持部の別の一形態としては、前記先細部の内周に亘って、該先細部の内壁上に内壁から内壁内部に向かって形成された「凹部」が挙げられる。
前記凹部は好ましくは前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個配設されていることが望ましい。
また前記凹部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることが望ましい。このときチューブ中心側の凹部の側面は、反応チューブの長手方向の中心線と平行に延設されていてもよいし、底部に向かって傾きを有して(例えば、反応チューブの長手方向の中心線に向かって下向きに傾斜されて)延設されていてもよい。
【0029】
前記反応チューブの横断面からみたとき、前記凹部の形状は、例えば矩形が長細に延びている短冊状、容器内部に向かって張り出した先端がとがっている三角形状、先端が平らである台形状、先端が丸みを帯びているドーム状、あるいは先端が容器内壁に向かってくびれている凹面状など、様々であってよい。また該凹部は、前述の先端から容器内壁面に向けて裾野状の形状を有して形成されていてもよい。
【0030】
また、前記凹部の上面は水平な平面であってよいが、チューブの中心に向かって下向きに傾斜して形成されていてもよい。
【0031】
上述した試薬保持部における張出し部/凹部の形状や大きさ、その設置個数は、チューブ容器の製造の容易さとともに、乾燥試薬の接着のしやすさや、試薬を容器内で乾燥・固形化させた際の凹凸形状への入り込みやすさ、挟まれやすさ等を様々に考慮して決定される。
【0032】
[試薬キット]
本発明はまた、前述のチューブ容器と、該容器の試薬保持部に保持された乾燥試薬又は乾燥試薬を担持し得る担体からなる試薬キットに関する。
【0033】
前記試薬キットに含まれる乾燥試薬としては、前述の通り、前記試薬保持部に接着させた不織布等の支持体に向けて液体試薬を投入して試薬を担持する担体とし、該担体を減圧下で乾燥させたものや、チューブ容器に液体試薬を投入して容器内で乾燥させたものなどを挙げることができる。
上記試薬は好適には核酸増幅用試薬が用いられるが、抗原、抗体、色素、酵素、基質等を使用することにより、本発明の試薬キットを免疫反応や生化学反応の測定、免疫蛍光法による微量検出にも用いることができる。
【0034】
前記核酸増幅試薬で実施可能な増幅法としては、LAMP、PCR、NASBA、LCR、SDA、RCA、ICAN法等が挙げられる。
前記試薬として核酸増幅用試薬を採用する場合、所望により増幅核酸検出用試薬を更に含んでいてよい。該増幅核酸検出用試薬が実施できる検出法は蛍光法、蛍光偏光法、濁度法、比色法、発光法等が挙げられる。
【0035】
また上記乾燥試薬を担持し得る担体は、濾紙やメンブレンフィルタ、紙、糸、不織布等からなる支持体に、上述の試薬を塗布又は浸漬させた後、例えば減圧下で乾燥させて形成される。その大きさは、チューブ容器の試薬保持部の上に位置できる大きさ(試薬保持部の下側に落ちない大きさ)であることが望ましい。
【0036】
また本発明の試薬キットにおいて、前記乾燥試薬(又は乾燥試薬を担持し得る担体)を保持するチューブ容器は1個のみで形成されていてもよいし、あるいは、複数個のチューブ容器が連結部を介して一列に並んだ構成を有していてもよい。
該連結部は、複数の蓋部同士、接合部同士、反応チューブ同士、あるいはそれらの組み合わせを連結するように形成されているが、好ましくは複数の反応チューブ同士を連結するように形成されてなることが望ましい。このとき連結部は、反応チューブの開口部に設けられた縁部で連結するように形成されてよく、あるいは、反応チューブの筒状の胴部で連結するように形成されていてもよい。
【0037】
一例として本発明の試薬キットを核酸増幅・検出反応に用いた事例を以下に示す。
前記試薬キットにおいて、試薬保持部に保持された乾燥された試薬に向けて検出用試料を投入し、その後、該試薬と該試料が導入された該容器を加熱し、核酸増幅を行い、増幅した核酸を検出する。
【0038】
ここで乾燥試薬(乾燥試薬を保持させた担体、50)に向けて試料を投入した後、撹拌器によって撹拌した後のチューブ容器内部の模式図を図12b(従来のチューブ容器)及び図12a(本発明のチューブ容器)に示す。これらの図をみても判るとおり、試薬保持部を有していない従来のチューブ容器を用いた場合(図12b)には、試料投入、撹拌等を経た後、容器内部の内壁の様々な部分に試料と接触させた乾燥試薬が付着するが、本発明のチューブ容器を用いた場合には、該試薬が容器の下方(試薬保持部)に留まる。このため、本発明のチューブ容器は、試料と接触させた乾燥試薬を所定の反応域・検出域(容器の下部)まで押し込んだり、落としたりする手間が省けるだけでなく、チューブ容器内壁に付着することによって生ずる測定不良や精度不良を起こしにくい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、これらは一例であって、本発明はこれら実施例に何等限定されるものでない。
【0040】
<実施例1>
図1に本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図(図1a)及び図1aのX−X’線に沿って長手方向に切断した縦断面図(図1b、以降「縦断面図」とは同様の切断面を
指す)を示す。本発明のチューブ容器1の好ましい態様において、反応チューブ10は接合部40を介して、表示部31、シール部32及び外周部33を有する蓋部30と結合するように一体に成型されている。ここで接合部40は折り曲げやすくなるように略中央で厚さが薄くなっている。
前記反応チューブ10は開口部14より連なる筒状の胴部11と、該胴部11より先細りに形成された先細部12と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部13が設けられている。開口部14には、前記蓋部30の外周部33と密着することにより、さらにシール部32の密着性を高めることができる縁部16が形成されている。そして先細部12には、試薬保持部20が一体となるように設けられている。
【0041】
<実施例2>
図2及び図3は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明チューブ容器1の、縦断面図を表す図である。
図2(a〜e)において、試薬保持部20は、先細部12の下方から反応チューブ10の中心(中心線2)に向かって張り出した張出し部21(a〜e)からなる。
図2a、図2c及び図2eにおいて、張出し部21a、21c及び21eの上面212a、212c及び212eは水平な平面にて形成されている。あるいは、図2b及び図2dに示すように、張出し部21b及び21dの上面212b及び212dは、反応チューブ10の内壁15から中心線2に向けて下向きに傾斜して形成されていてもよい。
また図2eに示すように、張出し部21eの反応チューブ10の中心側の側面211eが、中心線2に向かって下向きに傾斜して形成されていてもよい。
さらに、張出し部21は先細部12の下方から底部13まで延設されて(図2a、図2b及び図2e参照)いても、底部13までは延びずに設置されて(図2c及び図2d)いてもよいが、好ましくは図2a、図2b及び図2eに示すように、底部13まで延設されていることが望ましい。
【0042】
図3(a、b)は試薬保持部20がリブ状の張出し部22a、22bとして形成されている。リブ状の張出し部22a、22bの形状としては、突起状(22a)であっても、反応チューブ10の底部13に向かって幅が変化する板状の突起(22b)のいずれでもよい。
【0043】
<実施例3>
上記第一形態の試薬保持部20を備えるチューブ容器1の上方から見た平面図を図4〜図6に示す。
図4(a〜g)に例示するように、前記試薬保持部20として設けられた張出し部21又はリブ状の張出し部22は、例えば反応チューブ10の内壁15に2〜8個所設けられている。反応チューブ10の成型のしやすさや、保持された乾燥試薬の安定性を考慮すると、最も好ましくは内壁15の内周に亘って、3個乃至6個(図4b〜4e)の張出し部21又はリブ状の張出し部22が互いに対向するように配設されていることが好ましい。
【0044】
また、図5(a〜f)に例示するように、張出し部21又はリブ状の張出し部22を上方からみたとき、その形状は短冊形(図5a)、先端が丸い短冊形(図5b)、三角形(図5c)、台形(図5d)、ドーム形(図5e)、凹面形(図5f)など、様々であってよい。
さらに、図6(a〜c)に例示するように、張出し部21又はリブ状の張出し部22を上方からみたとき、1個のチューブ部10内で太さ(図6a)や長さ(図6b)が異なっていてもよく、或いは、上記図5a〜5fに示した形状の組み合わせ、例えば三角形と四角形を組み合わせた形状(図6c)であってもよい。
【0045】
<実施例4>
図7(a〜c)は、第二形態の試薬保持部20を備える本発明チューブ容器1の、上方から見た平面図(図7a及び図7b)並びに縦断面図(図7c、図7aの縦断面図に対応)を表す図であり、試薬保持部20には凹部23が設けられている。
凹部23の設置個数は、偶数個(例:4個、図7a)又は奇数個(例:3個、図7b)の何れであっても良い。前述の張出し部21同様、反応チューブ10の成型のしやすさや、保持された乾燥試薬の安定性を考慮すると、最も好ましくは内壁15の内周に亘って互いに対向するように、3個(図7b)、4個(図7a)、5個及び6個配設されていることが好ましい。
また、凹部23の形状は、図7aに示すように台形状であってもよいし、前述の張出し部21同様、その形状は短冊状や三角形、ドーム形など、様々であってよい。
また第二形態の試薬保持部20を備える本発明チューブ容器1の縦断面の図7cに示すように、前記凹部23は反応チューブ10の先細部12の下方から底部13に到達するように延設されていることが好ましいが、底部13に到達するように設置されなくてもよい。
【0046】
<実施例5>
図8(a〜d)は、反応チューブ10の開口部14を密閉する蓋部30を、接合部40及び開口部14とともに上面からみた平面図を示したものである。
図8a〜dに示すように、蓋部30には反応チューブ10の内容物を示す符号等が記入できる表示部31が設けられている。表示部31はまた、比較的大きい面積を有するため指でつまみやすく、シール部32の開口部14への着脱を容易にすることから、タブとしての役割をも担う。
表示部31の形状は特に限定されず、例えば図8に示すように略四角形(図8a、8c)又は略三角形(図8b、8d)等の形状を有してよい。また、表示部31の向きも、接合部40と同じ方向(図8a、8b)や異なる方向(図8c、8d)の何れであってもよい。
好ましくは、表示部31に試料を識別するための符号311を付すことが容易であり(後述の図10参照)また、シール部32の着脱がより容易になる点から、表示部31の形状を略四角形とすることが望ましい。
【0047】
<実施例6>
本発明の試薬キットの一例を図9(正面図)及び図10(上方からみた斜視図)に示す。
図9及び図10に示すように、試薬キット70は、チューブ容器1と、該チューブ容器の反応チューブ10内部の試薬保持部20に保持された乾燥試薬を保持させた担体50からなる。
また試薬キット70は、図9及び図10に示すように、チューブ容器1の上部が連結部60を介して横一列に並ぶ一連の試薬キット70として構成される。なお、図9及び図10に示した連結部60の長さや、一連の試薬キットに含まれる容器1の個数は、使用する装置に応じて適宜変化する。
【0048】
<使用例1>
図11は、本発明のチューブ容器1に試薬を投入して容器内で凍結乾燥させることにより固形化させた乾燥試薬51を示す図であって、チューブ容器1の縦断面図を示す。凍結乾燥させることにより、試薬(液体)がわずかに容積が増え、試薬保持部20に挟み込まれるように乾燥試薬51が固形化されている。
【0049】
<使用例2>
本発明のチューブ容器を用いて、LAMP法により核酸の増幅を行った。
[反応溶液]
LAMP法により核酸の増幅を行うための反応溶液の基本組成並びに試薬のプライマー配列を以下表に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
[核酸増幅反応例1:乾燥試薬の担体の変化]
担体として直径3mmの不織布(素材:レーヨン(Ry)又はポリビニルアルコール(PVA))を採用し、夫々の担体に乾燥試薬を塗布後、減圧下で乾燥することにより、減圧乾燥試薬を調製した。この乾燥試薬の夫々に液状試薬を加えてLAMP反応溶液とし、MTBプラスミドDNAを100コピー/tubeとなるように添加したものを「標的遺伝子あり」、添加していないものを「標的遺伝子なし」とし、67℃で60分間LAMP反応を行った。
支持体としてレーヨン不織布を使用し、LAMP反応を行った結果(測定装置:リアルタイム蛍光測定装置FluoDia T70(大塚電子(株)製)を使用)を図13に、また、ポリビニルアルコール不織布を採用し、LAMP反応を行った結果(測定置:リアルタイム濁度測定装置LA−320C(栄研化学(株)製)を使用)を図14に示す。なおポリビニルアルコール不織布を溶解させるため、反応初期の5分間は測定を行わなかった。
これによると、レーヨン不織布(不溶性不織布)を試薬担体とした減圧乾燥試薬を用い
た場合(図13)であっても、ポリビニルアルコール不織布(可溶性不織布)を試薬担体とした減圧乾燥試薬を用いた場合(図14)のいずれにおいても、標的遺伝子を検出することが可能であった。
【0053】
[核酸増幅反応例2:反応チューブ内に設置された試薬保持部の形状の変化]
内部に試薬保持部としてリブ(図3a参照)又は張出し部(図2a参照)を有する反応チューブに上述の乾燥試薬を夫々分注後、減圧下乾燥することで減圧乾燥試薬を調製した。この乾燥試薬に液状試薬を加えることでLAMP反応溶液とし、MTBプラスミドDNAを100コピー/tubeとなるように添加したものを「標的遺伝子あり」、添加していないものを「標的遺伝子なし」とし、リアルタイム濁度測定装置RT−160C(栄研化学(株)製)を用いて、夫々67℃で60分間LAMP反応を行った。
図15(リブ)及び図16(張出し部)に示すとおり結果、いずれの形状の試薬保持部を有する場合であっても、標的遺伝子を検出することが可能であった。
【0054】
なお、本実施例で使用したプライマー等の塩基配列を配列表の以下の配列番号に示す。
配列番号1 Mycobacterium tuberculosis H37Rv株のGyr B配列(GenBank:BX842572)
配列番号2 F1
配列番号3 F2
配列番号4 F3
配列番号5 Loop F(LPF)
配列番号6 B1c
配列番号7 B2c
配列番号8 B3c
配列番号9 Loop B(LPB)
配列番号10 FIP
配列番号11 BIP
配列番号12 B3
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1(a,b)は、本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図(図1a)及び図1aのX−X’線に沿って長手方向に切断した縦断面図(図1b)を示す図である。
【図2】図2(a〜e)は、第一形態の試薬保持部20(張出し部21)を備える本発明のチューブ容器1の縦断面図を示す図である。
【図3】図3(a,b)は、第一形態の試薬保持部20(リブ状の張出し部22)を備える本発明のチューブ容器1の縦断面図を示す図である。
【図4】図4(a〜g)は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器の上方からみた平面図を示す図である。
【図5】図5(a〜f)は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器の上方からみた平面図を示す図である。
【図6】図6(a〜c)は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図を示す図である。
【図7】図7(a〜c)は、第二形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図(図7a、b)及び縦断面(図7c)を示す図である。
【図8】図8(a〜d)は、蓋部30を接合部40及び開口部14と共に上方からみた平面図を示す図である。
【図9】図9は、本発明の試薬キット70の正面図を示す図である。
【図10】図10は、本発明の試薬キット70の上方から見た斜視図を示す図である。
【図11】図11は、容器内で凍結乾燥させることにより固形化させた乾燥試薬51が試薬保持部20に保持されているチューブ容器1の縦断面図である。
【図12】図12は、本発明のチューブ容器(図12a)と従来のチューブ容器(図12b)を対比して乾燥試薬の舞い上がりの有無を示した正面図である。
【図13】図13は、不溶性不織布(レーヨン)を支持体として乾燥試薬を担持させた担体の、蛍光測定による核酸増幅の測定結果である。
【図14】図14は、可溶性不織布(ポリビニルアルコール)を支持体として乾燥試薬を担持させた担体の、濁度測定による核酸増幅の測定結果である。
【図15】図15は、試薬保持部としてリブを有するチューブを用いて行った、濁度測定による核酸増幅の結果である。
【図16】図16は、試薬保持部として張出し部を有するチューブを用いて行った、濁度測定による核酸増幅の結果である。
【符号の説明】
【0056】
1 ・・・チューブ容器
2 ・・・チューブ容器の長手方向中心線
10・・・反応チューブ、
11・・・胴部、
12・・・先細部、
13・・・底部、
14・・・開口部、
15・・・内壁、
16・・・縁部、
20・・・試薬保持部、
21(a〜e)・・・張出し部、
211(a〜e)・・・反応チューブ中心側の張出し部の側面、
212(a〜e)・・・張出し部の上面、
22(a,b)・・・リブ状の張出し部、
23・・・凹部、
30・・・蓋部、
31・・・表示部、
311・・・試料を識別するための符号、
32・・・シール部、
33・・・外周部、
40・・・接合部、
50・・・乾燥試薬を保持させた担体、
51・・・容器内で凍結乾燥させることにより固形化させた乾燥試薬、
60・・・連結部、
70・・・試薬キット。
【技術分野】
【0001】
本発明は試料の微量分析に適したチューブ容器、及び該容器を含む試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の生体試料や、食品中、環境水中等の遺伝子分析において、特に目的とする核酸を効率よく分析するために、核酸増幅法が利用されている。
核酸増幅法を実施する際、試料として得られている核酸が非常に少ないため、その反応自体、ごく微量の溶液中、通常数10μL単位の溶液中にて実施される。
このため、核酸増幅反応は通常、容量の小さい蓋付き反応チューブ内で実施され、様々な反応チューブが提案されている。
【0003】
例えば、蓋と反応容器を一体型とした少量の液体を収納するプラスチック製反応容器が提案されており、蓋を容易に開閉でき、かつ容器内圧によって開放される恐れが殆どなく、閉鎖された蓋が確実に保持されるように、蓋と容器開口部との嵌合性や、蓋と連結体の検討がなされている(特許文献1参照)。
また、蓋の開閉頻度を下げ、一度に処理できる検体数を増大させる反応用チューブとして、反応容器内に容器と一体型の隔壁を設けた反応用チューブが提案されている(特許文献2参照)。
さらに、蓋と容器開口部の一体型反応容器において、前記蓋が極薄の膜を有し、さらに蓋と容器連結部の折り畳み蝶番に2個の刻み溝が設けられた容器が開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭60−183362号公報
【特許文献2】実開平7−34935号公報
【特許文献3】特表平9−504690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで検討されてきた核酸増幅用のチューブ容器は、蓋の開閉性や蓋と容器の密着性、或いは、検体処理の効率化を図ったものであった。
上述の容器を用いて核酸増幅を実施する際、一例として、不織布等の担体に核酸増幅試薬を担持させて乾燥させ、該試薬に向けて検出用試料を投入することにより、核酸増幅反応を実施するという手段が採用されている。しかしながらこの場合、試料投入時に乾燥試薬がチューブ容器の所定の反応域あるいは検出域に存在せず、それより上方に舞い上がってその位置に留まっている(これを所謂「舞い上がり」という)と、そこで液体の試料と接触して、該乾燥試薬が容器の内壁の本来の反応域、検出域でない様々な部分に付着することがある。このとき、実験者が検出分析装置の運転を停止する等、分析手順を一旦停めて、乾燥試薬を容器の下部に落とす必要があるだけでなく、核酸増幅が迅速かつ良好に実施できず、また検出が不十分となって、分析精度が著しく落ちる(時として分析不可となる)という問題点を有していた。
またこの「舞い上がり」の現象は、予めチューブ容器の下部に核酸増幅試薬を担持させた担体を投入したところの試薬キットの保管、輸送、或いは使用時においても見られ、問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を行った結果、微量の液体試料を収納できるチューブ容器において、容器下部に試薬保持部を設けることにより、これまで検
体用試料の投入後に生じていた乾燥試薬の舞い上がりを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、微量の試料中の標的物質の反応又は検出をなすためのチューブ容器であって、反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成形してなり、前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細りに形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部を有してなり、さらに前記先細部の内部に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部を反応チューブと一体に設けてなる、チューブ容器に関する。
【0006】
本発明の好ましい態様において、前記試薬保持部は、前記先細部の内壁面より前記反応チューブの中心に向かって張り出した張出し部からなり、前記張出し部は、好ましくは前記先細部の内周に亘って、互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個設けられることが望ましい。また、前記張出し部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることが望ましい。
また本発明において、前記張出し部はリブからなっていてもよい。
【0007】
さらに本発明の別の好ましい態様において、前記試薬保持部は、前記先細部の内周に亘って、前記先細部の内壁上に形成された凹部からなり、前記凹部は好ましくは互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個設けられていることが望ましい。さらに、前記凹部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることが望ましい。
【0008】
また本発明のチューブ容器は、前記蓋部に、容器の内容物を示すためのより広面積の表示部を設けてなることが望ましい。
【0009】
さらに本発明は、前述のチューブ容器と、該チューブ容器の試薬保持部に保持された乾燥試薬又は乾燥試薬を担持し得る担体からなる試薬キットにも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチューブ容器は、容器の下部(所定の反応域あるいは検出域付近)に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部が設けられている。
前記チューブ容器の試薬保持部に試薬又は試薬を担持する担体を保持させる方法の一例として、下記の方法を挙げることができる。
(a)不織布等からなる支持体をチューブ容器の試薬保持部に接着させ、その後、該支持体に向けて液体試薬を投入して浸漬させ(試薬を担持する担体と為す)、減圧下で乾燥させる。
(b)チューブ容器に液体試薬を投入し、容器内で乾燥又は凍結乾燥させる。
上述の方法によって、乾燥させた試薬は試薬保持部に設けられた張出し部又は凹部に付着し、あるいは張出し部/凹部の凹凸形状に挟まれ、若しくは、架かるようにして留まり、多少の振動でも試薬保持部から離れなくなるようになる。
このため、例えば該チューブ容器を傾けたり、或いは、撹拌器によって撹拌したりする場合であっても、その後、乾燥させた試薬等が試薬保持部から移動して、該チューブ容器の所定の反応域あるいは検出域以外の内壁に付着することを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明のチューブ容器を用いて微量の試料中の標的物質の反応又は検出を行う際、試薬や試料が容器中で舞い上がらずに容器下部の所定の反応域あるいは検出域に留まるため、これまで「舞い上がり」によって生じていた分析手順における手間(乾燥試薬を容器の下部に落とすなどの工程)を減らすことができ、分析精度不良、さらには分析不可能といった問題を防止することができる。
【0012】
また本発明の試薬キットは、本発明のチューブ容器を用い、しかも乾燥状態で試薬を保持できるため、試料中の標的物質の反応又は検出が必要なときに迅速に精度よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の微量の試料中の標的物質の反応又は検出をなすためのチューブ容器は、反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成型してなる。
【0014】
本発明のチューブ容器は、プラスチック製であることが好ましい。
プラスチックは射出成型などの公知慣用の方法により、一度に一体的に極めて容易にチューブ容器を成型することができ、安価に大量生産することができる。
本発明において使用されるチューブ容器は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、その他ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等から適宜選択された樹脂から製造される。
また本発明のチューブ容器は、標的物質の反応・検出の機構、また、反応・検出に使用する装置の大きさにあわせて、反応チューブの口径、容器の大きさや肉厚等を適宜調整してよい。
【0015】
[蓋部]
本発明のチューブ容器において、前記蓋部は前記反応チューブの上面の開口部を密閉する機能を有し、該反応チューブ及び後述する接合部と共に一体に成型される。
該蓋部は、反応チューブの開口部に適合し、該開口部の周縁より下方に続くチューブの内壁面に対して好適な密閉性が得られるように形成された筒状のシール部と、該筒状のシール部の端部に外周全体にわたって形成され、前記反応チューブの縁部と密に当接し、それに対して好適な密閉性が得られるように形成された外周部とを有している。
前記筒状のシール部は、反応チューブの開口部と嵌合させた際に密着性が高まり、かつ、必要に応じて開口部から除去する際に抜けやすくするように形成され、好適には、蓋部本体から最も離れた端部の外周が、蓋部本体から最も近いシール部の外周に比べて、僅かに大きく形成されている。
【0016】
また前記蓋部は、蓋部の開閉(反応チューブ開口部から蓋部のシール部の着脱)を容易にするとともに、容器の内容物を示すためのより広面積の表示部が設けられていることが好ましい。該表示部は、前記蓋部の外周部から連なって形成されてなる。
チューブ容器の上面からみたとき、該表示部の形状は略四角形や略三角形など様々であってよいが、上述の目的から好ましくは略四角形の形状を有してなることが望ましい。
【0017】
[接合部]
本発明のチューブ容器において、前記接合部は前記反応チューブ及び前記蓋部と共に一体に成型されてなる。該接合部は、前記反応チューブの上部と前記蓋部とを結合するように設けられており、蓋部の紛失を防止し、また、反応チューブの開口部を密閉するにあたり、蓋部の取り扱い性を向上させるという機能を有する。
【0018】
該接合部の反応チューブ側との結合部位は、反応チューブの開口部の周縁部であってもよいし、反応チューブの胴部上方の外壁面であってもよい。
該接合部は、蓋部のシール部を反応チューブの開口部から容易に挿入でき、挿入後には簡単に外れることがないよう、略中央で柔軟性を有して容易に屈曲するように形成されていることが望ましい。略中央で容易に屈曲するように形成されていない場合、該接合部が時間の経過とともに折れ曲がった状態から元に戻ろうとする力が働き、蓋部の反応チュー
ブ開口部との密着性を低下させるだけでなく、場合によっては反応チューブ開口部から蓋部を外すことになる。このため該接合部は、略中央にヒンジを有する構造や、湾曲した構造を有して形成され、或いは、該接合部の略中央で折れ曲がりやすくするために厚みや幅を変化させるように形成される。
また該接合部は、通常、1本の短冊状に形成されているが、二本以上の紐状に形成されていてもよい。
【0019】
[反応チューブ]
本発明のチューブ容器において、前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細に形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部とを有してなる。
前述の通り、前記開口部は、前記蓋部によって容易に密閉できるようにするための縁部を有してなる。反応チューブを上面からみたとき、一般に該縁部は筒状の胴部の外周より僅かに外側に張り出すように形成され、すなわち、筒状の胴部の断面より広い面積を有してなる。
【0020】
上記チューブ容器において、内側面は滑らかな面を有していることが好ましいが、外側面は、例えば容器の強度向上を目的として、或いは、使用する検出装置の内部形状に対応して、容器の長手方向又は周方向に溝などが形成されていてもよい。
【0021】
前記胴部より先細に形成された先細部において、その内側面の先細(テーパー)の角度は使用する検出装置の内部形状に対応して適宜選択するが、好ましくは、仮に乾燥試料が舞い上がった場合に容器下部の所定位置へ落ちやすくなり、また、液体試料を投入した際、仮に壁面に試料が付着しても所定位置へ落ちやすくなることから、テーパーの角度が大きいことが望ましい。
【0022】
前記チューブ容器において、前記胴部の内側面の形状としては円柱(正円柱、楕円柱など)や角柱(三角柱、四角柱など)等の筒状の形状が挙げられ、また前記先細部の内側面の形状としては錐状(円錐状、角錐状(三角錐、四角錘など)など)等の形状が挙げられる。該胴部の内側面と該先細部の内側面はどのような形状の組み合わせであっても良いが、乾燥試料が舞い上がった場合に容器下部の所定位置へ落ちやすくなり、また液体試料を投入した際に壁面に付着した試料が落ちやすくなることから、好ましくは円柱状の胴部と円錐状の形状を有する先細部とが組み合わされていることが望ましい。
【0023】
[試薬保持部]
前記チューブ容器において、前記先細部の内部には、チューブ容器の所定の反応域あるいは検出域付近に試薬が留まることができるようにするための、試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部が反応チューブと一体に設けられている。
試薬保持部の詳細な設置場所は、使用する反応・検出装置の内部構造にあわせて、適宜調整されることが望ましい。
【0024】
前記試薬保持部は、試薬保持部によって反応チューブの空間が上下に分断される(すなわち試薬保持部の上下で両空間が連通しない)ことがない限り、上述の機能を有するものであればどのような形状で形成されていても良い。
例えば、該試薬保持部は、チューブ容器内壁からチューブ容器内部に向けて張り出して形成されるが、その部分が対向する壁面までは到達せずに形成されている場合(後述する「張出し部」)、対向する壁面まで到達して形成されている場合(例えばチューブ容器上面から見たとき、試薬保持部が十字形に形成されている場合)、あるいは、容器内壁から内壁内部に向かって凹部が形成されている場合(後述する「凹部」)など、様々であって
よい。
【0025】
前記試薬保持部の一形態としては、前記先細部の内壁面より前記反応チューブの中心に向かって張り出し、但し対向する壁面までは到達せずに形成されてなる、「張出し部」がある。
前記張出し部は、好ましくは前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個配設されていることが望ましい。
また前記張出し部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていてもよいし、あるいは、底部まで延設されず、リブ状に形成されていてもよい。該張出し部が底部まで延設されている場合、チューブ中心側の該張出し部の側面は反応チューブの長手方向の中心線と平行に延設されていてもよいし、あるいは、底部に向かって傾きを有して(例えば、反応チューブの長手方向の中心線に向かって下向きに傾斜されて)延設されていてもよい。
【0026】
前記反応チューブの横断面からみたとき、前記張出し部の形状は、例えば矩形が長細に延びている短冊状、容器内部に向かって張り出した先端がとがっている三角形状、先端が平らである台形状、先端が丸みを帯びているドーム状、あるいは先端が容器内壁に向かってくびれている凹面状など、様々であってよい。また該張出し部は、前述の先端から容器内壁面に向けて裾野状の形状を有して形成されていてもよい。
【0027】
また、前記張出し部の上面は水平な平面であってよいが、チューブの中心に向かって下向きに傾斜して形成されていてもよい。
【0028】
前記試薬保持部の別の一形態としては、前記先細部の内周に亘って、該先細部の内壁上に内壁から内壁内部に向かって形成された「凹部」が挙げられる。
前記凹部は好ましくは前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個、より好ましくは3乃至6個配設されていることが望ましい。
また前記凹部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることが望ましい。このときチューブ中心側の凹部の側面は、反応チューブの長手方向の中心線と平行に延設されていてもよいし、底部に向かって傾きを有して(例えば、反応チューブの長手方向の中心線に向かって下向きに傾斜されて)延設されていてもよい。
【0029】
前記反応チューブの横断面からみたとき、前記凹部の形状は、例えば矩形が長細に延びている短冊状、容器内部に向かって張り出した先端がとがっている三角形状、先端が平らである台形状、先端が丸みを帯びているドーム状、あるいは先端が容器内壁に向かってくびれている凹面状など、様々であってよい。また該凹部は、前述の先端から容器内壁面に向けて裾野状の形状を有して形成されていてもよい。
【0030】
また、前記凹部の上面は水平な平面であってよいが、チューブの中心に向かって下向きに傾斜して形成されていてもよい。
【0031】
上述した試薬保持部における張出し部/凹部の形状や大きさ、その設置個数は、チューブ容器の製造の容易さとともに、乾燥試薬の接着のしやすさや、試薬を容器内で乾燥・固形化させた際の凹凸形状への入り込みやすさ、挟まれやすさ等を様々に考慮して決定される。
【0032】
[試薬キット]
本発明はまた、前述のチューブ容器と、該容器の試薬保持部に保持された乾燥試薬又は乾燥試薬を担持し得る担体からなる試薬キットに関する。
【0033】
前記試薬キットに含まれる乾燥試薬としては、前述の通り、前記試薬保持部に接着させた不織布等の支持体に向けて液体試薬を投入して試薬を担持する担体とし、該担体を減圧下で乾燥させたものや、チューブ容器に液体試薬を投入して容器内で乾燥させたものなどを挙げることができる。
上記試薬は好適には核酸増幅用試薬が用いられるが、抗原、抗体、色素、酵素、基質等を使用することにより、本発明の試薬キットを免疫反応や生化学反応の測定、免疫蛍光法による微量検出にも用いることができる。
【0034】
前記核酸増幅試薬で実施可能な増幅法としては、LAMP、PCR、NASBA、LCR、SDA、RCA、ICAN法等が挙げられる。
前記試薬として核酸増幅用試薬を採用する場合、所望により増幅核酸検出用試薬を更に含んでいてよい。該増幅核酸検出用試薬が実施できる検出法は蛍光法、蛍光偏光法、濁度法、比色法、発光法等が挙げられる。
【0035】
また上記乾燥試薬を担持し得る担体は、濾紙やメンブレンフィルタ、紙、糸、不織布等からなる支持体に、上述の試薬を塗布又は浸漬させた後、例えば減圧下で乾燥させて形成される。その大きさは、チューブ容器の試薬保持部の上に位置できる大きさ(試薬保持部の下側に落ちない大きさ)であることが望ましい。
【0036】
また本発明の試薬キットにおいて、前記乾燥試薬(又は乾燥試薬を担持し得る担体)を保持するチューブ容器は1個のみで形成されていてもよいし、あるいは、複数個のチューブ容器が連結部を介して一列に並んだ構成を有していてもよい。
該連結部は、複数の蓋部同士、接合部同士、反応チューブ同士、あるいはそれらの組み合わせを連結するように形成されているが、好ましくは複数の反応チューブ同士を連結するように形成されてなることが望ましい。このとき連結部は、反応チューブの開口部に設けられた縁部で連結するように形成されてよく、あるいは、反応チューブの筒状の胴部で連結するように形成されていてもよい。
【0037】
一例として本発明の試薬キットを核酸増幅・検出反応に用いた事例を以下に示す。
前記試薬キットにおいて、試薬保持部に保持された乾燥された試薬に向けて検出用試料を投入し、その後、該試薬と該試料が導入された該容器を加熱し、核酸増幅を行い、増幅した核酸を検出する。
【0038】
ここで乾燥試薬(乾燥試薬を保持させた担体、50)に向けて試料を投入した後、撹拌器によって撹拌した後のチューブ容器内部の模式図を図12b(従来のチューブ容器)及び図12a(本発明のチューブ容器)に示す。これらの図をみても判るとおり、試薬保持部を有していない従来のチューブ容器を用いた場合(図12b)には、試料投入、撹拌等を経た後、容器内部の内壁の様々な部分に試料と接触させた乾燥試薬が付着するが、本発明のチューブ容器を用いた場合には、該試薬が容器の下方(試薬保持部)に留まる。このため、本発明のチューブ容器は、試料と接触させた乾燥試薬を所定の反応域・検出域(容器の下部)まで押し込んだり、落としたりする手間が省けるだけでなく、チューブ容器内壁に付着することによって生ずる測定不良や精度不良を起こしにくい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、これらは一例であって、本発明はこれら実施例に何等限定されるものでない。
【0040】
<実施例1>
図1に本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図(図1a)及び図1aのX−X’線に沿って長手方向に切断した縦断面図(図1b、以降「縦断面図」とは同様の切断面を
指す)を示す。本発明のチューブ容器1の好ましい態様において、反応チューブ10は接合部40を介して、表示部31、シール部32及び外周部33を有する蓋部30と結合するように一体に成型されている。ここで接合部40は折り曲げやすくなるように略中央で厚さが薄くなっている。
前記反応チューブ10は開口部14より連なる筒状の胴部11と、該胴部11より先細りに形成された先細部12と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部13が設けられている。開口部14には、前記蓋部30の外周部33と密着することにより、さらにシール部32の密着性を高めることができる縁部16が形成されている。そして先細部12には、試薬保持部20が一体となるように設けられている。
【0041】
<実施例2>
図2及び図3は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明チューブ容器1の、縦断面図を表す図である。
図2(a〜e)において、試薬保持部20は、先細部12の下方から反応チューブ10の中心(中心線2)に向かって張り出した張出し部21(a〜e)からなる。
図2a、図2c及び図2eにおいて、張出し部21a、21c及び21eの上面212a、212c及び212eは水平な平面にて形成されている。あるいは、図2b及び図2dに示すように、張出し部21b及び21dの上面212b及び212dは、反応チューブ10の内壁15から中心線2に向けて下向きに傾斜して形成されていてもよい。
また図2eに示すように、張出し部21eの反応チューブ10の中心側の側面211eが、中心線2に向かって下向きに傾斜して形成されていてもよい。
さらに、張出し部21は先細部12の下方から底部13まで延設されて(図2a、図2b及び図2e参照)いても、底部13までは延びずに設置されて(図2c及び図2d)いてもよいが、好ましくは図2a、図2b及び図2eに示すように、底部13まで延設されていることが望ましい。
【0042】
図3(a、b)は試薬保持部20がリブ状の張出し部22a、22bとして形成されている。リブ状の張出し部22a、22bの形状としては、突起状(22a)であっても、反応チューブ10の底部13に向かって幅が変化する板状の突起(22b)のいずれでもよい。
【0043】
<実施例3>
上記第一形態の試薬保持部20を備えるチューブ容器1の上方から見た平面図を図4〜図6に示す。
図4(a〜g)に例示するように、前記試薬保持部20として設けられた張出し部21又はリブ状の張出し部22は、例えば反応チューブ10の内壁15に2〜8個所設けられている。反応チューブ10の成型のしやすさや、保持された乾燥試薬の安定性を考慮すると、最も好ましくは内壁15の内周に亘って、3個乃至6個(図4b〜4e)の張出し部21又はリブ状の張出し部22が互いに対向するように配設されていることが好ましい。
【0044】
また、図5(a〜f)に例示するように、張出し部21又はリブ状の張出し部22を上方からみたとき、その形状は短冊形(図5a)、先端が丸い短冊形(図5b)、三角形(図5c)、台形(図5d)、ドーム形(図5e)、凹面形(図5f)など、様々であってよい。
さらに、図6(a〜c)に例示するように、張出し部21又はリブ状の張出し部22を上方からみたとき、1個のチューブ部10内で太さ(図6a)や長さ(図6b)が異なっていてもよく、或いは、上記図5a〜5fに示した形状の組み合わせ、例えば三角形と四角形を組み合わせた形状(図6c)であってもよい。
【0045】
<実施例4>
図7(a〜c)は、第二形態の試薬保持部20を備える本発明チューブ容器1の、上方から見た平面図(図7a及び図7b)並びに縦断面図(図7c、図7aの縦断面図に対応)を表す図であり、試薬保持部20には凹部23が設けられている。
凹部23の設置個数は、偶数個(例:4個、図7a)又は奇数個(例:3個、図7b)の何れであっても良い。前述の張出し部21同様、反応チューブ10の成型のしやすさや、保持された乾燥試薬の安定性を考慮すると、最も好ましくは内壁15の内周に亘って互いに対向するように、3個(図7b)、4個(図7a)、5個及び6個配設されていることが好ましい。
また、凹部23の形状は、図7aに示すように台形状であってもよいし、前述の張出し部21同様、その形状は短冊状や三角形、ドーム形など、様々であってよい。
また第二形態の試薬保持部20を備える本発明チューブ容器1の縦断面の図7cに示すように、前記凹部23は反応チューブ10の先細部12の下方から底部13に到達するように延設されていることが好ましいが、底部13に到達するように設置されなくてもよい。
【0046】
<実施例5>
図8(a〜d)は、反応チューブ10の開口部14を密閉する蓋部30を、接合部40及び開口部14とともに上面からみた平面図を示したものである。
図8a〜dに示すように、蓋部30には反応チューブ10の内容物を示す符号等が記入できる表示部31が設けられている。表示部31はまた、比較的大きい面積を有するため指でつまみやすく、シール部32の開口部14への着脱を容易にすることから、タブとしての役割をも担う。
表示部31の形状は特に限定されず、例えば図8に示すように略四角形(図8a、8c)又は略三角形(図8b、8d)等の形状を有してよい。また、表示部31の向きも、接合部40と同じ方向(図8a、8b)や異なる方向(図8c、8d)の何れであってもよい。
好ましくは、表示部31に試料を識別するための符号311を付すことが容易であり(後述の図10参照)また、シール部32の着脱がより容易になる点から、表示部31の形状を略四角形とすることが望ましい。
【0047】
<実施例6>
本発明の試薬キットの一例を図9(正面図)及び図10(上方からみた斜視図)に示す。
図9及び図10に示すように、試薬キット70は、チューブ容器1と、該チューブ容器の反応チューブ10内部の試薬保持部20に保持された乾燥試薬を保持させた担体50からなる。
また試薬キット70は、図9及び図10に示すように、チューブ容器1の上部が連結部60を介して横一列に並ぶ一連の試薬キット70として構成される。なお、図9及び図10に示した連結部60の長さや、一連の試薬キットに含まれる容器1の個数は、使用する装置に応じて適宜変化する。
【0048】
<使用例1>
図11は、本発明のチューブ容器1に試薬を投入して容器内で凍結乾燥させることにより固形化させた乾燥試薬51を示す図であって、チューブ容器1の縦断面図を示す。凍結乾燥させることにより、試薬(液体)がわずかに容積が増え、試薬保持部20に挟み込まれるように乾燥試薬51が固形化されている。
【0049】
<使用例2>
本発明のチューブ容器を用いて、LAMP法により核酸の増幅を行った。
[反応溶液]
LAMP法により核酸の増幅を行うための反応溶液の基本組成並びに試薬のプライマー配列を以下表に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
[核酸増幅反応例1:乾燥試薬の担体の変化]
担体として直径3mmの不織布(素材:レーヨン(Ry)又はポリビニルアルコール(PVA))を採用し、夫々の担体に乾燥試薬を塗布後、減圧下で乾燥することにより、減圧乾燥試薬を調製した。この乾燥試薬の夫々に液状試薬を加えてLAMP反応溶液とし、MTBプラスミドDNAを100コピー/tubeとなるように添加したものを「標的遺伝子あり」、添加していないものを「標的遺伝子なし」とし、67℃で60分間LAMP反応を行った。
支持体としてレーヨン不織布を使用し、LAMP反応を行った結果(測定装置:リアルタイム蛍光測定装置FluoDia T70(大塚電子(株)製)を使用)を図13に、また、ポリビニルアルコール不織布を採用し、LAMP反応を行った結果(測定置:リアルタイム濁度測定装置LA−320C(栄研化学(株)製)を使用)を図14に示す。なおポリビニルアルコール不織布を溶解させるため、反応初期の5分間は測定を行わなかった。
これによると、レーヨン不織布(不溶性不織布)を試薬担体とした減圧乾燥試薬を用い
た場合(図13)であっても、ポリビニルアルコール不織布(可溶性不織布)を試薬担体とした減圧乾燥試薬を用いた場合(図14)のいずれにおいても、標的遺伝子を検出することが可能であった。
【0053】
[核酸増幅反応例2:反応チューブ内に設置された試薬保持部の形状の変化]
内部に試薬保持部としてリブ(図3a参照)又は張出し部(図2a参照)を有する反応チューブに上述の乾燥試薬を夫々分注後、減圧下乾燥することで減圧乾燥試薬を調製した。この乾燥試薬に液状試薬を加えることでLAMP反応溶液とし、MTBプラスミドDNAを100コピー/tubeとなるように添加したものを「標的遺伝子あり」、添加していないものを「標的遺伝子なし」とし、リアルタイム濁度測定装置RT−160C(栄研化学(株)製)を用いて、夫々67℃で60分間LAMP反応を行った。
図15(リブ)及び図16(張出し部)に示すとおり結果、いずれの形状の試薬保持部を有する場合であっても、標的遺伝子を検出することが可能であった。
【0054】
なお、本実施例で使用したプライマー等の塩基配列を配列表の以下の配列番号に示す。
配列番号1 Mycobacterium tuberculosis H37Rv株のGyr B配列(GenBank:BX842572)
配列番号2 F1
配列番号3 F2
配列番号4 F3
配列番号5 Loop F(LPF)
配列番号6 B1c
配列番号7 B2c
配列番号8 B3c
配列番号9 Loop B(LPB)
配列番号10 FIP
配列番号11 BIP
配列番号12 B3
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1(a,b)は、本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図(図1a)及び図1aのX−X’線に沿って長手方向に切断した縦断面図(図1b)を示す図である。
【図2】図2(a〜e)は、第一形態の試薬保持部20(張出し部21)を備える本発明のチューブ容器1の縦断面図を示す図である。
【図3】図3(a,b)は、第一形態の試薬保持部20(リブ状の張出し部22)を備える本発明のチューブ容器1の縦断面図を示す図である。
【図4】図4(a〜g)は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器の上方からみた平面図を示す図である。
【図5】図5(a〜f)は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器の上方からみた平面図を示す図である。
【図6】図6(a〜c)は、第一形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図を示す図である。
【図7】図7(a〜c)は、第二形態の試薬保持部20を備える本発明のチューブ容器1の上方からみた平面図(図7a、b)及び縦断面(図7c)を示す図である。
【図8】図8(a〜d)は、蓋部30を接合部40及び開口部14と共に上方からみた平面図を示す図である。
【図9】図9は、本発明の試薬キット70の正面図を示す図である。
【図10】図10は、本発明の試薬キット70の上方から見た斜視図を示す図である。
【図11】図11は、容器内で凍結乾燥させることにより固形化させた乾燥試薬51が試薬保持部20に保持されているチューブ容器1の縦断面図である。
【図12】図12は、本発明のチューブ容器(図12a)と従来のチューブ容器(図12b)を対比して乾燥試薬の舞い上がりの有無を示した正面図である。
【図13】図13は、不溶性不織布(レーヨン)を支持体として乾燥試薬を担持させた担体の、蛍光測定による核酸増幅の測定結果である。
【図14】図14は、可溶性不織布(ポリビニルアルコール)を支持体として乾燥試薬を担持させた担体の、濁度測定による核酸増幅の測定結果である。
【図15】図15は、試薬保持部としてリブを有するチューブを用いて行った、濁度測定による核酸増幅の結果である。
【図16】図16は、試薬保持部として張出し部を有するチューブを用いて行った、濁度測定による核酸増幅の結果である。
【符号の説明】
【0056】
1 ・・・チューブ容器
2 ・・・チューブ容器の長手方向中心線
10・・・反応チューブ、
11・・・胴部、
12・・・先細部、
13・・・底部、
14・・・開口部、
15・・・内壁、
16・・・縁部、
20・・・試薬保持部、
21(a〜e)・・・張出し部、
211(a〜e)・・・反応チューブ中心側の張出し部の側面、
212(a〜e)・・・張出し部の上面、
22(a,b)・・・リブ状の張出し部、
23・・・凹部、
30・・・蓋部、
31・・・表示部、
311・・・試料を識別するための符号、
32・・・シール部、
33・・・外周部、
40・・・接合部、
50・・・乾燥試薬を保持させた担体、
51・・・容器内で凍結乾燥させることにより固形化させた乾燥試薬、
60・・・連結部、
70・・・試薬キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量の試料中の標的物質の反応又は検出をなすためのチューブ容器であって、
反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成形してなり、
前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細りに形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部を有してなり、さらに
前記先細部の内部に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部を反応チューブと一体に設けてなる、チューブ容器。
【請求項2】
前記試薬保持部は、前記先細部の内壁面より前記反応チューブの中心に向かって張り出した張出し部からなる、請求項1記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記張出し部は前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個設けられている、請求項2記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記張出し部は前記先細部の内周に亘って互いに対向して3乃至6個設けられている、請求項3記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記張出し部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることを特徴とする、請求項2乃至請求項4のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記張出し部はリブからなる、請求項2乃至請求項4のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項7】
前記試薬保持部は、前記先細部の内周に亘って、前記先細部の内壁上に形成された凹部からなる、請求項1記載のチューブ容器。
【請求項8】
前記凹部は前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個設けられている、請求項7記載のチューブ容器。
【請求項9】
前記凹部前記先細部の内周に亘って互いに対向して3乃至6個設けられている、請求項8記載のチューブ容器。
【請求項10】
前記凹部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることを特徴とする、請求項7乃至請求項9のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項11】
前記蓋部に、容器の内容物を示すためのより広面積の表示部を設けてなる、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項12】
請求項1乃至11のうち何れか一項に記載のチューブ容器と、該チューブ容器の試薬保持部に保持された乾燥試薬又は乾燥試薬を担持し得る担体からなる試薬キット。
【請求項1】
微量の試料中の標的物質の反応又は検出をなすためのチューブ容器であって、
反応チューブと、その上面の開口部を密閉する蓋部と、該反応チューブの上部と該蓋部を結合する接合部とを一体に成形してなり、
前記反応チューブは、前記開口部より連なる筒状の胴部と、該胴部より先細りに形成された先細部と、該先細部の先端を閉じるように形成された底部を有してなり、さらに
前記先細部の内部に試薬又は試薬を担持する担体を試薬の乾燥又は凍結乾燥によりその位置に保持することができる試薬保持部を反応チューブと一体に設けてなる、チューブ容器。
【請求項2】
前記試薬保持部は、前記先細部の内壁面より前記反応チューブの中心に向かって張り出した張出し部からなる、請求項1記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記張出し部は前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個設けられている、請求項2記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記張出し部は前記先細部の内周に亘って互いに対向して3乃至6個設けられている、請求項3記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記張出し部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることを特徴とする、請求項2乃至請求項4のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記張出し部はリブからなる、請求項2乃至請求項4のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項7】
前記試薬保持部は、前記先細部の内周に亘って、前記先細部の内壁上に形成された凹部からなる、請求項1記載のチューブ容器。
【請求項8】
前記凹部は前記先細部の内周に亘って互いに対向して2乃至10個設けられている、請求項7記載のチューブ容器。
【請求項9】
前記凹部前記先細部の内周に亘って互いに対向して3乃至6個設けられている、請求項8記載のチューブ容器。
【請求項10】
前記凹部は、前記先細部の下部から前記底部まで延設されていることを特徴とする、請求項7乃至請求項9のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項11】
前記蓋部に、容器の内容物を示すためのより広面積の表示部を設けてなる、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載のチューブ容器。
【請求項12】
請求項1乃至11のうち何れか一項に記載のチューブ容器と、該チューブ容器の試薬保持部に保持された乾燥試薬又は乾燥試薬を担持し得る担体からなる試薬キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−200028(P2008−200028A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286322(P2007−286322)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【出願人】(500272347)DICプラスチック株式会社 (27)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【出願人】(500272347)DICプラスチック株式会社 (27)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】
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