説明

反応性ホットメルト接着剤組成物

【課題】 湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤の硬化過程で発生する炭酸ガスによるふくれを防止し、特にドアパネル、机の天板などの広い面積を有する被着体に好適で接着性、外観に優れた反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 1)炭素数8以上のアルキレン基を有するジオールまたはジカルボン酸を構成単位として含む、分子量3000以上のポリエステルポリオールを5〜35重量%含有するポリオール、及び2)ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー100重量部に、3)ゼオライト粉末0.3〜5重量部を配合した反応性ホットメルト接着剤組成物。ゼオライト粉末の平均粒子径が、10〜100μmであると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にドアパネル、机の天板などの広い面積を有する被着体の貼合せに優れたウレタン湿気硬化反応型ホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ドアパネル、机の天板などの広い面積を有する被着体の貼合せには溶剤揮散型接着剤、又は二液型接着剤が使用されており、特にエポキシ二液型接着剤が多く用いられている。最近は引用文献1にあるように湿気硬化性のホットメルト型接着剤を使用した製造方法も提案されている。溶剤揮散型接着剤では有機溶剤の環境への放出という問題から特にエポキシ二液型接着剤が多く用いられている。エポキシ二液型は、主剤と硬化剤を計量、混合、攪拌して用いられ工程も煩雑であり硬化・養生時間も長く接着が終了するまで常温で十数時間を要し、その間は加圧プレスなどで固定された状態で放置される。
【0003】
【特許文献1】特開平06−115038号公報 そのため、製品の完成までに多くの日数とスペースとを要し生産性の向上を図るための製造ラインの自動化は困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、製造ラインの自動化を目的に提案された湿気硬化性のホットメルト型接着剤では上記のエポキシ二液型接着剤に見られた問題点は解決された一方で、本接着剤の硬化がウレタンプレポリマーのイソシアネート基と被着材あるいは雰囲気中水分の反応で炭酸ガスの発生を伴うことから、広い面積の貼合せではガスの逃げ場がなくふくれ等の接着不良が生じやすいという新たな問題点が出てきていた。
本発明は、特にドアパネル、机の天板などの広い面積を有する被着体の貼合せに有効に適用でき、発泡による接着不良を解消でき、製造ラインの自動化に適したウレタン湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の問題点を解決する為、鋭意研究の結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、1)炭素数8以上のアルキレン基を有するジオールまたはジカルボン酸を構成単位として含む、分子量3000以上のポリエステルポリオールを5〜35重量%含有するポリオール、及び2)ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー100重量部に、3)ゼオライト粉末0.3〜5重量部を配合した反応性ホットメルト接着剤組成物に関する。また、ゼオライト粉末の平均粒子径が、10〜100μmであると好ましい。これにより、前記の問題点、即ち炭酸ガスによるふくれ等の外観不良がないばかりでなく、接着性にも優れたものが得られる。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、特にドアパネル、机の天板などの広い面積を有する被着体の貼合せに適用でき、接着性に優れ、発泡による接着不良がなく、製造ラインの自動化に適したウレタン湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、反応性ホットメルト接着剤組成物は、ダイコーター、ロールコーター等を用いて、ドアパネル等被着基材表面に塗工し、直ちに表面基材を重ね、ロール、プレス等で圧着して貼合わせる。塗布厚は、50〜100μmが適当である。塗布厚が100μmを超えると、表面平滑性が得られにくく、50μm未満では接着強度が小さい傾向にある。
【0008】
本発明で用いるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの材料であるポリエステルポリオールは、製造ラインの自動化を考慮し初期強度を高くするため、炭素数8以上のアルキレン基を持つジオールもしくはジカルボン酸を構成単位として含む、分子量3000以上のポリエステルポリオールを5〜35重量%含有させる必要がある。また、ポリオールは、ポリオールの水酸基数が1分子中に1.5個以上、好ましくは2〜3個となるように適宜選択する。ポリオールの炭素数を8以上、分子量を3000以上としたのはこれらより小さいと固化時間が遅く自動化に十分な初期強度を得ることができないためである。その配合量を5〜35重量%としたのは、5重量%未満では固化時間が遅くなり、35重量%を超えて大きいと接着性が劣るためである。分子量3000以上のポリエステルポリオールは、重量平均分子量で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
本発明におけるその他のポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ロジン変性ポリオール、ポリエチレンブチレンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が用いられる。
【0009】
本発明で使用するポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物等のポリイソシアネートを用いることができるが、ジイソシアネート化合物を選択することでプレポリマー合成は容易となり製品の安定性も得やすいので好ましい。ジイソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が使用できる。なお、トリイソシアネート化合物としては1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート等があり、テトライソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等がある。
【0010】
本発明において使用するイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得るには、ポリイソシアネートとポリオールの配合は、NCO/OH比が1.2以上、好ましくは、1.5〜3.0の範囲となるようにすることが好ましい。1.5未満では、得られるプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、作業性の悪化を招き、3.0を超えると得られる被膜が脆くなり、耐衝撃性等接着性の低下を生じるという欠点がある為である。
上記ポリオールとポリイソシアネートからプレポリマーを得るには、加熱及び脱泡可能な混合機を用いて、50〜130℃の範囲で窒素ガスをパージする等の方法で空気と遮断しつつ数時間加熱、反応させる。
【0011】
本発明において用いるゼオライト粉末は、アルミノシリケート化合物よりなる無機粉末である。この無機粉末は内部に空洞を多数有し、この空洞は表面からの細孔に繋がっている。そして、この細孔は極めて均一な径を有しているので、この径を通過しうる分子だけが、空洞に吸着されるという特性を有している。このようなゼオライト粉末を構成する化合物は種々の化学組成を有するものであり、ナトリウムカチオンなどの金属カチオンを含むアルミノシリケートの含水金属塩が好ましいが制限するものではなく、天然、合成のゼオライトを使用できる。
ゼオライト粉末は、一般的にその平均粒径が100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、10〜80μmである。10μm未満では、発泡抑制の効果が少なく、100μmを超えると接着性が低下したり、接着層の機械的強度が不十分となり、接着強さが低くなる傾向にある。また、ゼオライト粉末表面の細孔径は二酸化炭素ガスを良好に吸着する4オングストローム以上が好ましい。ゼオライト粉末の配合量は、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー100重量部に対して0.3〜5重量部である。0.3重量部未満では、炭酸ガスの吸着が十分でなく発泡し、5重量部を超えて多くなると接着性が劣るためである。
【0012】
本発明では、必要に応じて、熱可塑性ポリマー(ポリウレタン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体等の各種ゴム系)、粘着付与樹脂(ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂系)、更に触媒(ジブチルチンジラウレート、ジブチルチオンオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリオクチルアミン等)、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤等を適量配合しても良い。
【実施例】
【0013】
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明し、これらの具体例の結果を表1として示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0014】
(比較例1)
予め真空乾燥機により脱水処理したセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000、)15重量%と、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量2000)55重量%とジフェニルメタンジイソシアネート30重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、NCO/OH=2.0のポリウレタンプレポリマー(粘度:7Pa・S/120℃)を得た。
【0015】
(実施例1)
比較例1で得られたポリウレタンプレポリマー100重量部にゼオライト粉末(ユニオン昭和株式会社製 モレキュラシーブ4A:細孔径 4オングストローム:平均粒子径50μm)を0.3重量部配合し、110℃で30分減圧脱泡攪拌し反応性ホットメルト接着剤を得た。
【0016】
(実施例2)
比較例1で得られたポリウレタンプレポリマー100重量部にゼオライト粉末(ユニオン昭和製 モレキュラシーブ4A:細孔径 4オングストローム)を5重量部配合し110℃で30分減圧脱泡攪拌し反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0017】
(比較例2)
比較例1で得られたポリウレタンプレポリマー100重量部にゼオライト粉末(ユニオン昭和株式会社製 モレキュラシーブ4A:細孔径 4オングストローム)を10重量部配合し110℃で、30分減圧脱泡攪拌し反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0018】
(実施例3)
予め真空乾燥機により脱水処理したセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000、)32重量%と、1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリカーボネートポリオール(官能基数:2.0、分子量1000)44重量%とジフェニルメタンジイソシアネート24重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、NCO/OH=2.0のポリウレタンプレポリマー(粘度:7Pa・s/120℃)100重量部にゼオライト粉末(ユニオン昭和株式会社製 モレキュラシーブ4A:細孔径 4オングストローム)を1重量部配合し110℃で30分減圧脱法攪拌し反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0019】
(比較例3)
予め真空乾燥機により脱水処理したアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000、)15重量%と、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量2000)55重量%とジフェニルメタンジイソシアネート30重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、NCO/OH=2.0のポリウレタンプレポリマー(粘度:7Pa・s/120℃)を得た。
【0020】
実施例1〜3で得た本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物と比較例1〜3で得た反応性ホットメルト接着剤組成物を用いて以下の試験を行ない、その結果を表1にまとめて示した。
【0021】
(発泡性)
30μmのPETフィルムに実施例1〜3、比較例1〜3で得た反応性ホットメルト接着剤組成物を、ロールコーターで50μm塗工し、直ちに同じPETフィルムを貼合わせ、80℃ラミネートロールの1回通しを行ない、温度20℃、湿度65%の条件で7日以上養生し発泡状態を観察した。発泡性は、目視確認により発泡数1個/50mm×50mm以下を「○」発泡数2〜5個/50mm×50mmを「△」、発泡数6個/50mm×50mm以上を「×」として評価した。
【0022】
(接着性)
カバ材(かばの木、比較的強度が高く、均質)に実施例1〜3、比較例1〜3で得た反応性ホットメルト接着剤組成物を、約100μm塗布し、直ちにメラミン鋼板を貼合わせハンドロールにて圧着し、温度20℃、湿度65%RHの条件で7日間養生し接着状態を観察した。初期接着性は、せん断接着強さ0.5N/mm以上もしくは被着体の破壊を「○」、接着剤の凝集破壊かつ、せん断接着強さ0.2〜0.5N/mmを「△」、せん断接着強さ0.2N/mm未満もしくは被着体からの界面破壊を「×」として評価した。
7日間養生した後の経時接着性は、せん断接着強さ5N/mm以上もしくは被着体の破壊を「○」、接着剤の凝集破壊かつ、せん断接着強さ2〜5N/mmを「△」、せん断接着強さ0.2N/mm未満もしくは被着体からの界面破壊を「×」として評価した。
【0023】
【表1】

【0024】
表1から、ゼオライト粉末0.3〜5重量部を配合した実施例1〜3は、発泡がなく、初期接着性、経時接着性で良好な接着性を示した。これに対して、ゼオライト粉末を添加していない比較例1では、発泡してしまい発泡性に劣り、また、同様にゼオライト粉末を添加していない比較例3は、発泡性、初期接着性に劣る。更に、ゼオライト粉末の配合量が10重量部と多い比較例3は、経時接着性は比較的良好であるが発泡性、初期接着性が劣ることがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)炭素数8以上のアルキレン基を有するジオールまたはジカルボン酸を構成単位として含む、分子量3000以上のポリエステルポリオールを5〜35重量%含有するポリオール、及び2)ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー100重量部に、3)ゼオライト粉末0.3〜5重量部を配合した反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
ゼオライト粉末の平均粒子径が、10〜100μmである請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。



【公開番号】特開2007−332278(P2007−332278A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165940(P2006−165940)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】