説明

反応性ホットメルト接着剤組成物

【課題】 初期接着強度、最終接着強度、熱安定性のバランスに優れた反応性ホットメルト接着剤組成物及びそのような反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネートを含んで成る反応性ホットメルト接着剤組成物は、初期接着強度、最終接着強度、熱安定性のバランスに優れることが見出された。(A)プレポリマーとして、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応させて得られるものが好ましい。また、(A)ウレタンプレポリマーは、シランカップリング剤に基づく化学構造を更に有するものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築内装材分野で広く使用される反応性ホットメルト接着剤組成物に関し、特に接着剤に対する要求性能が厳しいフローリング分野、基材への化粧シートの貼り付け及びプロファイルラッピング等の分野に利用できる反応性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内装材分野(又は建材分野)では、反応性ホットメルト接着剤が広く利用されている。本明細書における、「反応性ホットメルト接着剤」とは、反応性を有するイソシアネート基を含有するポリウレタン樹脂を主成分とする接着剤のことをいう。
【0003】
「反応性ホットメルト接着剤」は、一般に加熱溶融状態で被着体同士を接着し、冷却固化した後、イソシアネート基が水分の存在で架橋することによって、主成分の熱可塑性樹脂がより高分子量化して、接着力及び耐熱性等が向上する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の反応性ホットメルト接着剤は、その表1の実施例1〜3から明らかなように、耐熱性、耐溶剤性、熱安定性に優れる。
【0004】
しかし、反応性ホットメルト接着剤には、その他に、接着力にもより高い性能が要求される。接着力として、主に初期接着強度と最終接着強度の二種類の接着力が重要である。「初期接着強度」とは、接着剤を高温で被着体に塗布し、接着剤が液体から固体になった時に生じる接着強度をいい、「最終接着強度」とは、固体に成った後、接着剤に含まれるイソシアネート基と大気中の水分が反応し、その反応が完了した状態の接着強度をいう。
【0005】
建材分野においては、フローリング等の特殊な分野については、初期接着強度の要求が他の分野よりも高い。よって、反応性ホットメルト接着剤の初期接着強度を特に高めるために、これまで色々な手段が検討されてきた。
【0006】
従来技術には、ポリエチレンブチレンポリオールを主成分とするポリオールにポリイソシアネート化合物を反応させて得られたウレタンプレポリマーに、オレフィン系樹脂、粘着付与樹脂を添加する方法が知られている(特許文献2参照)。また、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーを合成し、粘着付与樹脂としてクマロンインデン樹脂を添加する方法も知られている(特許文献3参照)。これらの方法は、いずれも反応性ホットメルト接着剤の初期接着強度を向上させるが、最終接着強度については必ずしも充分ではなかった。尚、クマロンインデン樹脂を反応性ホットメルト接着剤に添加すると、最終接着強度が低下することはよく知られている。
【0007】
特許文献3では、最終接着強度を低下させないため、三官能性ポリイソシアネートを用いてウレタンプレポリマーを合成し、それを配合している。しかし、ウレタンプレポリマーの合成に三官能性ポリイソシアネートを用いると、得られた反応性ホットメルト接着剤の熱安定性の低下を生じ得る。
【0008】
【特許文献1】特開2005−75877号公報
【特許文献2】特開平11−323301号公報
【特許文献3】特許第2674846号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その課題は初期接着強度、最終接着強度、熱安定性のバランスに優れる反応性ホットメルト接着剤組成物及びそのような反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、特定のウレタンプレポリマー、特定の粘着付与樹脂及び特定の官能性ポリイソシアネートを含んで成る反応性ホットメルト接着剤組成物は、驚くべきことに、初期接着強度、最終接着強度及び熱安定性のバランスに優れることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
尚、本明細書において、「反応性ホットメルト接着剤組成物」とは、反応性ホットメルト接着剤を構成する組成物を意味する。
【0011】
即ち、本発明は、
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー(以下「(A)プレポリマー」ともいう)、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂(以下「(B)粘着付与樹脂」ともいう)、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート(以下「(C)多官能性ポリイソシアネート」ともいう)
を含んで成ることを特徴とする反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の一の態様において、(A)ウレタンプレポリマーは、シランカップリング剤に基づく化学構造を更に有する上述の反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の態様においては、(B)粘着付与樹脂は、クマロンインデン樹脂である上述の反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、(A)ウレタンプレポリマー50〜95重量部、(B)粘着付与樹脂5〜50重量部、及び(C)多官能性ポリイソシアネート0.5〜5重量部を含んで成る上述の反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の要旨において、
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート
を混合する工程を含む反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の一の態様において、(A)ウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応させて得られる工程を含む上述の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の他の態様において、(A)ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートを反応後、更にシランカップリング剤と反応させて得られる工程を含む上述の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物は、
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート
を含んで成るので、初期接着強度、最終接着強度及び熱安定性のバランスに優れる。
【0019】
更に、(A)ウレタンプレポリマーは、シランカップリング剤に基づく化学構造を更に有する場合、シランカップリング剤による三次元架橋構造により、最終接着強度により優れる。
【0020】
(B)粘着付与樹脂は、クマロンインデン樹脂である場合、本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物は、初期接着強度及び相溶性により優れる。
【0021】
(A)ウレタンプレポリマー50〜95重量部、(B)粘着付与樹脂5〜50重量部、及び(C)多官能性ポリイソシアネート0.5〜5重量部を含んで成る場合、本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物は、初期接着強度、最終接着強度及び熱安定性のバランスにより優れる。
【0022】
本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法は、
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート
を混合する工程を含むので、初期接着強度、最終接着強度及び熱安定性のバランスに優れる反応性ホットメルト接着剤組成物を製造することができる。
【0023】
(A)ウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応させて得られる工程を含む場合、本発明の製造方法は、得られる組成物の熱安定性及び製造工程のコントロールの点からより優れる。
【0024】
(A)ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートを反応後、更にシランカップリング剤と反応させて得られる工程を含む場合、本発明の製造方法は、シランカップリング剤による三次元架橋構造を反応性ホットメルト接着剤組成物の硬化物が有することとなるので、最終接着強度により優れる反応性ホットメルト接着剤組成物を製造することができる。
【0025】
本発明は、上述の構成を有するから上記の優れた効果を奏するものであるが、その理由は、以下に記載するような理由によると考えられる。
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物では、初期接着強度を向上させるために(B)特定の粘着付与樹脂を用いる。しかし、(B)特定の粘着付与樹脂を用いると最終接着強度が低下するので、最終接着強度を向上させるために、ウレタンプレポリマーが湿気との反応によって硬化することで、三次元網目構造を形成させることが必要と考えられる。この三次元網目構造を形成させるために、プレポリマーの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い場合(例えば、参考文献3に記載された反応性ホットメルト接着剤の場合)、最終接着強度を高めることはできる。しかし、プレポリマー同士が反応し、その反応による粘度上昇が大きいので、得られる反応性ホットメルト接着剤組成物の熱安定性が不十分となり得、その結果、初期接着強度、最終接着強度及び熱安定性のバランスに優れるものは得られないことがわかった。これは、プレポリマーの分子量が比較的大きいことと関係するものと考えられる。
【0026】
そこで、本発明者らは、プレポリマー同士の反応を減少させるために、プレポリマーの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数を平均2個以下としたが、三次元網目構造を形成させるために、このプレポリマーに対して、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性イソシアネートを併用することとしたところ、驚くべきことに、反応性ホットメルト接着剤組成物の最終接着強度を向上させつつ、安定性をも向上させることが可能であることがわかった。これは、多官能性イソシアネートも、そのもの同士で反応するが、その結果得られるものの分子量は、プレポリマー同士が反応して得られるものより、分子量が小さいため、結果的に反応性ホットメルト接着剤組成物の安定性、より具体的には粘度に与える影響が小さいためであると考えられる。
【0027】
以上のような理由から、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物は、上述のような、優れた性質を有すると考えるが、これらの理由は、本発明を何ら制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明において、「(A)ウレタンプレポリマー」とは、一般にイソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマーであって、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であって、目的とする反応性ホットメルト接着剤組成物を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
このような(A)ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを従来公知の方法に従って反応させることで得ることができる。
(A)ウレタンプレポリマーは、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるが、平均1.0〜2個であることが好ましく、平均1.3〜2個であることがより好ましく、平均1.5〜2個であることが特に好ましい。
【0029】
上記「ポリオール」は、目的とする(A)ウレタンプレポリマーを得ることができれば、特に制限されるものではなく、通常のポリウレタン製造に使用される従来公知のポリオールを用いることができる。ポリオールとして、官能基数が二個以下のものが好ましく、二官能性ポリオール、いわゆるジオールが特に好ましい。ポリオールは、単独でもしくは併用して用いることができる。
【0030】
そのようなポリオールとして、例えば、エーテル系、エステル系、ポリカーボネート系、ポリジエン系等に分類されるポリオールを使用することができる。エーテル系ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレンポリオール(PTMG)及びポリオキシプロピレンポリオール(PPG)等を、エステル系ポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリカプロラクトンポリオール(PCL)等を例示できる。また、これらの共重合体、例えばPTMGとカプロラクトンのブロック共重合体、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの共重合体等も使用できる。これらの共重合体は、例えばPTMGにε−カプロラクトンを開環共重合させる方法、ポリエステルポリオールにテトラヒドロフランやエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環共重合させる方法等により合成することができる。また、置換されたまたは無置換のポリアルキレンエーテルグリコール,ポリヒドロキシポリアルキレンエーテル等のポリヒドロキシジエーテル、ポリヒドロキシポリエステル、ポリオールのエチレンオキサイド付加物およびグリコールのモノ置換エステル等を例示できる。
【0031】
ポリオールの数平均分子量は、10000以下であることが好ましい。数平均分子量が10000を超える場合、ポリウレタンプレポリマーを製造する際に、プレポリマーの分子量が大きすぎて、粘度が高く成り得、得られる接着剤は所望の性能を得られないこともある。
【0032】
ポリオールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。「数平均分子量」とは、GPCを用いて測定され、単分散分子量ポリスチレンで換算された数平均分子量をいう。より具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて測定された値をいう。
【0033】
GPC装置は、ウォーターズ(Waters)社製の600Eを用い、検出器として、RI(Waters410)及びUV(Waters486、220nm)を用いた。GPCカラムとして、ウォーターズ(Waters)社製のウルトラスタイロジェル100Å(分子量50〜1500用)1本及びウルトラスタイロジェル500Å(分子量1000〜10000用)1本の計2本を用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.5ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレン(分子量1300、3000及び10000)を使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mnを求めた。
【0034】
また、上記「ポリイソシアネート化合物」とは、目的とする(A)ウレタンプレポリマーを得ることができれば、特に制限されるものではなく、通常のポリウレタン製造に使用される従来公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物として、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるものが好ましく、二官能性ポリイソシアネート化合物、いわゆるジイソシアネート化合物が特に好ましい。ポリイソシアネート化合物は、単独で又は併用して用いることができる。
【0035】
上記ポリイソシアネート化合物として、例えば、エチレンジイソシアネート、エチリデン−ジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレン−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、トルエン−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、ジクロロヘキサメチレンジイソシアネート、フルフリデンジイソシアネート、1−クロロベンゼン−2,4−ジイソシアネート等を例示でき、単独でもしくは併せて用いられる。
【0036】
(A)ウレタンプレポリマーを合成する場合、目的とする(A)ウレタンプレポリマーを得られる限り、モノオールやモノイソシアネートを用いることができ、三官能性ポリオール及び三官能性ポリイソシアネートを用いることもできるが、二官能性ポリオール(ジオール)及び二官能性ポリイソシアネート(ジイソシアネート)を用いて製造することが好ましい。(A)ウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオール及び二官能性ポリイソシアネートを反応させて得られるものであることが、得られる組成物の熱安定性及び製造工程のコントロールの点から、より好ましい。尚、1モルの二官能性ポリオールに対して2モルの二官能性イソシアネートを用いると、比較的容易に目的とする(A)ウレタンプレポリマーを製造することができるので好ましい。
【0037】
本発明の(A)ウレタンプレポリマーは、シランカップリング剤に基づく(又は由来する)化学構造を更に有してよい。この場合、(A)ウレタンプレポリマーの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数は、シランカップリング剤に基づく化学構造を有する(A)ウレタンプレポリマーの一分子当たり平均で2個以下である。
シランカップリング剤に基づく化学構造を有する(A)ウレタンプレポリマーは、一般に、ポリオールとポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーとシランカップリング剤を反応させて得ることができる。シランカップリング剤と反応する前のウレタンプレポリマーの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数は、平均で二個以下である必要はなく、平均で二個を超えていてもよいが、ウレタンプレポリマーとシランカップリング剤の反応後は、平均で二個以下であることが必要である。シランカップリング剤と反応する前のウレタンプレポリマーの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数は、平均で2個以下であることが好ましい。シランカップリング剤と反応する前のウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオール及び二官能性ポリイソシアネートを反応させて得ることが、得られる組成物の熱安定性及び製造工程のコントロールの点から、より好ましい。
【0038】
本発明において、「シランカップリング剤」とは、オルガノアルコキシシランであって、目的とする反応性ホットメルト接着剤組成物を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
このようなオルガノアルコキシシランとして、下記の一般式(1)及び(2)で表される化合物を例示することができる。
式(1):R−Si(X)
式(2):R−Si(R′)(X)
[但し、上記式(1)及び(2)において、
Rは、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基又はイソシアネート基等を有する有機基、
R′は、炭素数1〜3のアルキル基、
Xは、メトキシ基またはエトキシ基を意味する。]
【0039】
「オルガノアルコキシシラン」として、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルジメトキシシラン等のエポキシアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトアルコキシシラン等を例示できる。これらオルガノアルコキシシランは単独で又は組み合わせて使用できる。
【0040】
シランカップリング剤は、活性水素基を含むものが好ましく、メルカプト基、アミノ基、水酸基及びイミダゾール基から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。更に、シランカップリング剤として、メルカプトアルコキシシランを用いることがより好ましい。
【0041】
(A)ウレタンプレポリマーが有し得る「シランカップリング剤に基づく化学構造」として、例えば、下記の一般式(3)及び(4)で表される化学構造を例示できる。
式(3):−Si(X)
式(4):−Si(R′)(X)
[但し、上記式(3)及び(4)において、
R′は、炭素数1〜3のアルキル基、
Xは、メトキシ基またはエトキシ基を意味する。]
尚、この化学構造は、プレポリマーの末端部分に存することが好ましい。
【0042】
本発明において、「(B)粘着付与樹脂」とは、「インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂」をいい、インデン及び/又はクマロン(インデン及びクマロンには、その同族体及び誘導体が含まれる)に由来する化学構造を含み、目的とする反応性ホットメルト接着剤組成物を得られる限り特に制限されるものではない。
【0043】
「インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造」として、例えば、インデンのオレフィン性二重結合が単結合に変化した構造(I)及びクマロンのオレフィン性二重結合が単結合に変化した構造(II)を、例示することができる。これらの化学構造は、樹脂の中にいかなる形態で組み込まれていてもよいが、一般的には、例えば(I)及び(II)に示すようにインデン及びクマロンのオレフィン性二重結合が単結合に変化した炭素原子で他の単位と結合する。また、これらの化学構造は、その任意の位置が、任意の置換基により置換されていてもよい。
【化1】

【化2】

【0044】
本明細書において、「インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂」とは、より具体的には、例えば「インデン及び/又はクマロン(インデン及びクマロンには、その同族体及び誘導体が含まれる)を含むモノマーを重合して得られる重合体を含む粘着付与樹脂」を意味する。そのような粘着付与樹脂として、例えば、クマロンのホモポリマー、インデンのホモポリマー、クマロンとインデンとを共重合して得られるコポリマー(即ち、いわゆるクマロンインデン樹脂)、クマロン及び/又はインデン(クマロン及びインデンには、その同族体及び誘導体、例えば置換基を有するクマロン及びインデンが含まれる)と他のモノマーとを共重合して得られる共重合体、更にこれらのポリマーとその他の樹脂との組み合わせを例示できる。
【0045】
他のモノマーとして、スチレン、置換基を有するスチレン、ビニルトルエン、置換基を有するビニルトルエン、ビニルアセテート、エチレン、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ビニルエーテル、フマレート、アクリロニトリル、アクリル酸及びメタクリル酸とC1〜C12のアルコールとのエステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート等を例示することができる。
また、その他の樹脂として、上述の他のモノマーのホモポリマー及びコポリマーを例示することができる。
【0046】
(B)粘着付与樹脂として、クマロンのホモポリマー、インデンのホモポリマー、クマロンとインデンとを共重合して得られるコポリマー(即ち、いわゆるクマロンインデン樹脂)、クマロン及び/又はインデン(クマロン及びインデンには、その同族体及び誘導体、例えば置換基を有するクマロン及びインデンが含まれる)と他のモノマーとを共重合して得られる共重合体が好ましく、クマロンのホモポリマー、インデンのホモポリマー、クマロンとインデンとを共重合して得られるコポリマー(即ち、いわゆるクマロンインデン樹脂)がより好ましく、クマロンインデン樹脂が特に好ましい。
(B)粘着付与樹脂として市販のものを使用できる。
【0047】
(B)粘着付与樹脂は、軟化点が150℃以下であることが好ましい。軟化点は、50〜130℃であることがより好ましい。反応性ホットメルト接着剤組成物は、通常、加熱して溶解され、例えば、120℃の溶融状態で被着体に塗布され得る。(B)粘着付与樹脂の軟化点が130℃を超える場合、反応性ホットメルト接着剤組成物をより高温で塗布することが必要となり、また、(B)粘着付与樹脂はプレポリマーとの混合性も低下し得る。
本明細書において、「軟化点」とは、日本接着剤工業会規格JAI−7−1991に規定された方法に準じて測定される値をいう。
【0048】
本発明において「(C)多官能性ポリイソシアネート」とは、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多いポリイソシアネートであって、目的とする反応性ホットメルト接着剤組成物を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0049】
(C)多官能性ポリイソシアネートの一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数は、平均で2個より多いが、平均で2個を超え8個以下であることが好ましく、平均で2個を超え4個以下であることがより好ましい。
【0050】
(C)多官能性ポリイソシアネートは、その数平均分子量が50〜1000であることが好ましく、100〜750であることがより好ましく、100〜500であることが特に好ましい。
(C)多官能性ポリイソシアネートは、その数平均分子量が50未満の場合、接着性及び耐熱性の向上が不十分となる可能性があり、その数平均分子量が2000を超える場合、加熱溶融時の熱安定性が不十分となる可能性がある。
【0051】
(C)多官能性ポリイソシアネートの「数平均分子量(Mn)」とは、以下のようにゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて測定され、内部標準液法を用いて求めた数平均分子量をいう。より具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて測定された値をいう。GPC装置は、島津製作所(株)製の6LC−10GPC SYSTEMを用い、検出器として、UV検出器(波長245nm)を用いた。GPCカラムとして、昭和電工(株)製のSHODEX KF−801、SHODEX KF−802、SHODEX KF−803 各1本を用いた。予めメタノール化した試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.7ml/min、カラム温度を40℃にて流した。数平均分子量の決定には内部標準液法を用いた。内部標準液にアセトフェノンを用い、多官能性ポリイソシアネートに含まれるポリイソシアネートのピークを同定した後、ピーク面積比から、試料の数平均分子量を決定した。
【0052】
このような(C)多官能性ポリイソシアネートとして、例えば、
ポリメリックMDI;
4,4’,4”−トリイソシアナト−トリフェニルメタン、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,5−トリイソシアナトトルエン及び4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’−5,5’−テトライソシアネートから選択される少なくとも一種;並びに
トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートの三量体であって、ビウレット型、アダクト型又はイソシアヌレート型のポリイソシアネートから選択される少なくとも一種
を例示することができる。
尚、ポリメリックMDIについては、岩田敬治編,「ポリウレタン樹脂ハンドブック」,日刊工業新聞社,1987年9月25日,p.33〜35、特開平9−255663号公報及び特開2002−206081号公報を参照することができ、この引用によって、これらの引用文献の記載内容は本明細書に組み込まれる。
(C)多官能性ポリイソシアネートとして、市販のものを使用できる。
【0053】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物は、(A)ウレタンプレポリマーを50〜95重量部、(B)粘着付与樹脂を5〜50重量部、(C)多官能性ポリイソシアネート0.5〜5重量部を含んで成ることが好ましく、(A)ウレタンプレポリマーを50〜85重量部、(B)粘着付与樹脂を5〜30重量部、(C)多官能性ポリイソシアネート0.5〜3重量部を含んで成ることがより好ましく、(A)ウレタンプレポリマーを60〜85重量部、(B)粘着付与樹脂を5〜20重量部、(C)多官能性ポリイソシアネート0.5〜2重量部を含んで成ることが特に好ましい。
【0054】
本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物は、必要に応じて他の添加剤を含んで成ってよく、かかる添加剤として、例えば、可塑剤、酸化防止剤、顔料、光安定剤、難燃剤及び触媒等を例示することができる。
【0055】
可塑剤として、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ミネラルスピリット等を例示できる。
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を例示できる。
顔料として、例えば酸化チタン、カーボンブラック等を例示できる。
光安定剤として、例えばベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、ベンゾエート、ベンゾトリアゾール等を例示できる。
難燃剤として、例えばハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
触媒として、金属触媒、例えば錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエートなど)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛など)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩など)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
これらの添加剤は、単独で又は混合して用いることができる。
【0056】
上述の本発明に係る反応性ホットメルト接着剤は、
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート
を混合することで製造することができる。
従って、本発明は、(A)ウレタンプレポリマー、(B)粘着付与樹脂及び(C)多官能性ポリイソシアネートを混合する工程を含む反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法を提供する。
【0057】
(A)ウレタンプレポリマー、(B)粘着付与樹脂及び(C)多官能性ポリイソシアネートの混合は、目的とする反応性ホットメルト接着剤組成物を得ることができる限り、従来既知の方法を用いて行うことができ、例えば、加熱して溶解した(A)に、攪拌しながら(B)と(C)を加える方法を例示することができる。混合する際、窒素雰囲気等の湿気を含まない雰囲気で行うことが好ましい。
(A)ウレタンプレポリマー、(B)粘着付与樹脂及び(C)多官能性ポリイソシアネートの混合順序は、目的とする反応性ホットメルト接着剤組成物を得ることができる限り、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。従って、例えば(A)、(B)、(C)の順序で混合しても、(B)、(C)、(A)の順序で混合してもよい。(A)、(B)及び(C)を全部同時に混合してもよい。
【0058】
(A)ウレタンプレポリマーは、上述したように、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを従来公知の方法に従って反応させ、得られるウレタンプレポリマーが、イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下となるようにすることで得ることができる。
本発明の製造方法は、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応させて、(A)ウレタンプレポリマーを得る工程を含む製造方法であることが好ましい。
【0059】
更に、本発明の製造方法は、上述したように、ポリオールとポリイソシアネートを反応後、更にシランカップリング剤と反応させて、イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下となるようにすることで、(A)ウレタンプレポリマーを得る工程を含む製造方法であることが好ましい。
また、本発明の製造方法は、(A)ウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応後、更にシランカップリング剤と反応させて得る工程を含む製造方法であることがより好ましい。
【0060】
このようにして得られる反応性ホットメルト接着剤組成物は、一般に室温で固体であり、常套の方法を用いて使用することができる。一般的には、反応性ホットメルト接着剤を加熱溶融して基材及び被着体等に塗工して使用する。
【0061】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物は、従来から反応性ホットメルト接着剤組成物が使用されている分野について用いることができるが、更に初期接着強度の要求が厳しいフローリング分野、基材への化粧シートの貼り付け及びプロファイルラッピング等の分野においても、用いることが可能である。本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物は、化粧シート等の建築内装部材を床に貼り付ける際に好適であるが、床への貼り付けに限定されるものではなく、他の基材にも化粧シートを貼り付けることも出来る。従って、本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物は、木工用、紙加工用、繊維加工用、一般用等として用いることもできる。
【0062】
本発明の反応性ホットメルト接着剤は、従来の反応ホットメルト接着剤と同様の方法を用いて使用することができ、目的とする部材を得られる限り特に制限されるものではない。また、例えば、化粧シートを木質材料に貼り付ける際、反応性ホットメルト接着剤組成物は、基材側に塗布しても良いし、化粧シート側に塗布しても良い。
「化粧シート」は、通常使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば以下のものを例示できる。
硬質もしくは半硬質の塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック材料シート;
木材をシート状に加工した突板;並びに
各種化粧印刷の施された化粧紙。
【0063】
「基材」は、通常使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば以下のものを例示できる。
ラワン合板等の合板、中繊維板(MDF)、パーティクルボード、無垢材、木質繊維板等の木質系材料;並びに
セメントボード、石膏ボード、軽量気泡コンクリート(ALC)等の無機系材料。
更に、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物は、異形断面を有する基材に化粧シートを貼り合わせるプロファイルラッピングに用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
実施例1
数平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール(三井武田ケミカル(株)製のアクトコールDiol−2000(商品名)、水酸基価=56)45.11g、数平均分子量3500のポリエステルジオール(豊国製油(株)製のHS2H−351A(商品名)、水酸基価=29.6)165.41gを反応器に入れ、120℃で3時間、減圧(10mmHg以下)して乾燥した。次に窒素で反応器を常圧に戻し、約100℃でジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)24.82gを加え、100℃で3時間反応させて、イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個以下であるウレタンプレポリマー(A−1)を得た(一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数は、平均2個)。次に充分乾燥した、インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂(B−1)(新日鐵化学(株)製のクマロンインデン樹脂であるエスクロンV−120(商品名)、軟化点=120℃)を60.15g加え、更に一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.55個であるポリメリックMDI(C−1)(住化バイエルウレタン(株)製:スミジュール44V10(商品名)、数平均分子量=410)4.51gを加え、130℃で1時間減圧乾燥を行い、実施例1の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0066】
実施例2
実施例1と同様に、上述のウレタンプレポリマー(A−1)を得た。次に充分乾燥した、インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂(B−2)(新日鐵化学(株)製のクマロンインデン樹脂であるエスクロンG−90(商品名)、軟化点=90℃)60.15gと、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で3個であるHDIビウレット体(C−2)(住化バイエルウレタン(株)製:デスモジュールN3200(商品名))4.51gを加え、100℃で1時間減圧乾燥を行い、実施例2の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0067】
実施例3
実施例1と同様に、上述のウレタンプレポリマー(A−1)を得た。次にウレタンプレポリマー(A−1)に、シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製:A189、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)1.5gを加え、100℃で攪拌しながら2時間反応させ、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で1.76個であるウレタンプレポリマー(A−2)を得た。更に充分乾燥した、上述の粘着付与樹脂(B−1)60.15gと上述のポリメリックMDI(C−1)4.51gを加え、130℃で1時間減圧乾燥を行い、実施例3の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0068】
比較例1
実施例と同様に、上述のウレタンプレポリマー(A−1)を得た。次に充分乾燥した上述の粘着付与樹脂(B−1)60.15gを更に加え、130℃で30分減圧乾燥を行い、比較例1の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0069】
比較例2
比較例2は、参考文献2(即ち特許第2674846号)に開示された接着剤に該当する反応性ホットメルト接着剤組成物を与える。
数平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール(三井武田ケミカル(株)製:アクトコールDiol−2000(商品名)、水酸基価=56)45.11g、数平均分子量3500のポリエステルジオール(豊国製油(株)製:HS2H−351A(商品名)、水酸基価=29.6)165.41gを反応器に入れ、120℃で3時間、減圧(10mmHg以下)して乾燥した。次に窒素で反応器を常圧に戻し、約100℃でジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)24.82gと一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.55個であるポリメリックMDI(住化バイエルウレタン(株)製:スミジュール44V10(商品名)、数平均分子量=410)4.51gを加え、100℃で3時間反応させて、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2.96個であるウレタンプレポリマー(A’−3:本発明に係る(A)に該当しない)を得た。次に充分乾燥した、上述の粘着付与樹脂(B−1)60.15gを更に加え、130℃で1時間減圧乾燥を行い、比較例2の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0070】
比較例3
実施例1と同様に、上述のウレタンポレポリマー(A−1)を得た。次に充分乾燥した粘着付与樹脂(B’−3:本発明に係る(B)に該当しない)(ロジンエステル、荒川化学(株):スーパーエステルA−115(商品名)、軟化点=115℃)60.15gと上述のポリメリックMDI(C−1)4.51gを更に加えた。120℃で1時間減圧乾燥を行い、比較例3の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0071】
比較例4
実施例1と同様に、上述のウレタンポレポリマー(A−1)を得た。次に充分乾燥した粘着付与樹脂(B’−4:本発明に係る(B)に該当しない)(脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学(株):アルコンM−100(商品名)、軟化点=100℃)60.15gと上述のポリメリックMDI(C−1)4.51gを更に加えた。120℃で1時間減圧乾燥を行い、比較例4の反応性ホットメルト接着剤組成物を得た。これを120℃のオーブン中に1日間置くと、相分離を生じたので、他の評価を行なうことは不可能であった。
【0072】
<評価方法>
得られた反応性ホットメルト接着剤組成物を下記のように評価した。結果を表1に示した。
(相溶性)
反応性ホットメルト接着剤組成物を120℃に加熱して1日間保管した後、目視で観察した。相分離を生じなかった場合を○とし、相分離を生じた場合を×とした。
(粘度)
反応性ホットメルト接着剤組成物を120℃に加熱して溶融し、その30分後にブルックフィールド型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて粘度を測定した。粘度測定条件は、120℃で回転数は10rpm又は20rpmであった。
(熱安定性)
本明細書において、「熱安定性」は粘度を測定することで行った。
上記の「粘度」測定後の反応性ホットメルト接着剤組成物を、そのままブルックフィールド型粘度計(スピンドルNo.27)内に120℃で1時間放置後、同じ温度で粘度を測定した。先に測定した粘度に対して1時間後に測定した粘度の増加率を求めた。粘度増加率が10%以下の場合に、安定性良好であり、○とし、粘度増加率が10%を超える場合に粘度安定性は不良であり、×とした。
(初期接着強度)
120℃に加熱したガラス板(430×300mm)上に、反応性ホットメルト接着剤組成物を幅16mm、厚さ0.1mmで塗布し、幅25mm、長さ500mmの紙と張り合わせる。所定の温度にした後、ガラス板の表面と裏面と逆にし、紙の末端に64gの重りをつけた。ガラス板温度を測定しながら、20秒間隔で剥離した紙の長さを記録する。測定後、温度と剥離速度との関係を計算する。34℃での剥離速度が0mm/minであれば初期強度は良く、○とし、34℃での剥離速度が5mm/min未満であれば△とし、34℃での剥離速度が5mm/min以上であれば初期強度は低く、×とした。
【0073】
本明細書における「最終接着強度」は、以下の三つの試験により総合的に評価した。
(最終強度)
120℃の溶融状態にある反応ホットメルト接着剤組成物を用いて、厚さ4mmの合板と化粧シート(大日本印刷(株)製のEBシート(商品名))を貼り合わせ、室温で一週間養生する。次に試験体のラミネート表層部分を25mm幅に切り出し、室温で最終強度を測定した。化粧シート材破であれば、○とし、凝集破壊であれば×とした。
(耐熱性1)
120℃で溶融状態にある反応ホットメルト接着剤組成物を用いて、厚さ4mmの合板と化粧シート(大日本印刷(株)製のEBシート(商品名))を貼り合わせ、室温で一週間養生する。次に試験体のラミネート表層部分を25mm幅に切り出し、60℃で、90度方向に500g/25mmの静荷重を掛けた後、1時間後の剥離長さを測定した。剥離長さは5mm以下のものを○とし、5mmを超えるものを×とした。
(耐熱性2)
反応性ホットメルト接着剤組成物を用いて厚さ1mmのフィルムを作り、10日間室温で養生後、株式会社ユービーエム製のRheogel−E4000(商品名)を用いて、フィルムの動的粘弾性を測定した。100〜250℃の温度、10Hzの周波数で測定した。Tanδ=1に対応する温度は耐熱温度と呼ばれる。耐熱温度が150℃を超える場合○とし、150℃以下の場合×とした。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示すように、実施例1〜3の反応性ホットメルト接着剤組成物は、初期接着強度(初期強度)、最終接着強度(最終強度、耐熱性1、耐熱性2)、熱安定性(粘度安定性)に優れる。比較例1の反応性ホットメルト接着剤組成物は、(C)多官能性ポリイソシアネートを配合していないので、最終接着強度に劣り、熱安定性にも劣る。比較例2の反応性ホットメルト接着剤組成物は、ウレタンプレポリマー(A’−3)の一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個を超えているので、熱安定性(粘度安定性)に劣る。比較例3及び4の反応性ホットメルト接着剤組成物は、粘着付与樹脂として、インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む樹脂を用いておらず(B’−3及びB’−4)、比較例3では、初期接着強度(初期強度)に劣り、比較例4では、本質的に三者が混合せず、反応性ホットメルト接着剤組成物と成りえない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート
を含んで成る反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
(A)ウレタンプレポリマーは、シランカップリング剤に基づく化学構造を更に有する請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
(B)粘着付与樹脂は、クマロンインデン樹脂である請求項1又は2に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
(A)ウレタンプレポリマー50〜95重量部、(B)粘着付与樹脂5〜50重量部、及び(C)多官能性ポリイソシアネート0.5〜5重量部を含んで成る請求項1〜3のいずれかに記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
(A)イソシアネート基を末端に有し、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均2個以下であるウレタンプレポリマー、
(B)インデン及び/又はクマロンに由来する化学構造を含む粘着付与樹脂、及び
(C)一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均で2個より多い多官能性ポリイソシアネート
を混合する工程を含む反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法。
【請求項6】
(A)ウレタンプレポリマーは、二官能性ポリオールと二官能性ポリイソシアネートとを反応させて得られる工程を含む請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
(A)ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートを反応後、更にシランカップリング剤と反応させて得られる工程を含む請求項5又は6に記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−45977(P2007−45977A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233534(P2005−233534)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(397020537)日本エヌエスシー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】