説明

反応性希釈剤およびそれを用いたポリウレタン組成物

【課題】 ウレタン用ポリオールとの相溶性が優れ、高粘度のポリオールを用いる際の作業性の改善及び生産性の向上が可能な反応性希釈剤を提供すること及びそれを用いて、耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン樹脂を得ることであり、特に無溶剤型アクリルウレタン塗料、電気絶縁用ウレタン樹脂封止材として使用可能な反応性希釈剤を提供することである。
【解決手段】 ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルからなる反応性希釈剤を使用することによって、上記課題が解決し、特に耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン樹脂が得られることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリセリン、アルキレンオキサイド、カルボン酸を原料に用いたポリウレタン用ポリオールの反応性希釈剤に関するものであり、更にはそれを用いたポリウレタン樹脂に関するものである。詳しくはポリオールとの相溶性、及びポリオールの粘度低減化に優れ、さらにウレタン樹脂とした際に架橋構造成分に成ることから、ブリードを起こさないという点で耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン樹脂を得ることができる反応性希釈剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウレタン樹脂のポリオールとして、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等の高粘度のポリオールが使用される用途において、作業性の改善、生産性の向上の観点からポリオールの粘度を低減させることが望まれている。その方法としては、一般的に反応性希釈剤の添加が挙げられる。これは溶媒と同様に粘度を低減させるが、反応に関与するため生成ポリウレタン中に取り込まれる。このような希釈剤としては、一般的にイソシアナートと反応する水酸基を含有する低分子量化合物が使用される。低分子量且つ低粘度のジオール、トリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリンなどを使用することが公知である。しかしながら、これらのアルコールは上述した高粘度のポリオールとの相溶性が悪く、硬化物の特性に悪影響を及ぼす。さらに、水酸基価が高いためイソシアネートの使用量が増加し、不経済である。
【0003】
一方、粘度を低減するとともに柔軟性を付与する目的で使用される一般的な可塑剤としては、DOP(ジオクチルフタレート)、DOA(ジオクチルアジペート)、ATBC(アセチルトリブチルシトレート)等が知られている。これらは、ポリオールとの相溶性及びポリオールに対する粘度低減効果は優れているが、イソシアネートと反応する水酸基を含有しないためポリウレタン樹脂とした際にブリードが生じ易く、そのため耐熱性に問題が生じる用途があり配合量が制限されるものであった(特許文献1)。又、一般的な反応性希釈剤としてはリシノレイン酸メチル、アセチルリシノレイン酸メチル等の粘度が低いひまし油変性ポリオールが知られている(特許文献2)。これらのひまし油変性ポリオールは、ポリオールに対する粘度低減効果が優れ、且つブリードも生じないものであるが、分子量が比較的小さいためポリウレタン樹脂の耐熱性を維持することが困難であった。この他に、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加させたポリオキシプロピレントリオール、及びペンタエリスリトールにプロピレンオキサイドを付加させたポリオキシプロピレンテトラオールのようなポリオキシプロピレン誘導体が用いられるが(特許文献3)、これらはポリオールに対する粘度低減効果が充分とは言えなかった。又、分子量およそ1000付近のポリプロピレングリコールでは、相溶性が良好であり且つ比較的粘度も低いが、耐熱性が不充分であることから、粘度低減効果と耐熱性の両立が困難であった。
【特許文献1】特開平07−292237号公報
【特許文献2】特開2006−096912号公報
【特許文献3】特許第3347763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン用ポリオールとの相溶性が優れ、高粘度のポリオールを用いる際の作業性の改善及び生産性の向上が可能な反応性希釈剤を提供することであり、さらにはその反応性希釈剤を用いて、耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン樹脂を得ることであり、特に無溶剤型アクリルウレタン塗料、電気絶縁用ウレタン樹脂封止材として使用可能な反応性希釈剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを使用することによって、上記課題が解決し、特に耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン樹脂が得られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の反応性希釈剤を使用することにより、ウレタン用ポリオールの粘度低減化が可能となり、作業性の改善及び生産性の向上に繋がるとともに、耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細にする。
【0008】
本発明の反応性希釈剤は、ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%の生成物である。それら化合物について、一般的な製造方法に従って合成した。すなわち、ポリグリセリンを触媒量のアルカリ存在下、アルキレンオキサイドを付加する工程及びその付加物を種々の脂肪酸と脱水縮合反応によりエステル化する工程からなる。ただし、この製造方法は例示であって、本発明で示す反応性希釈剤を製造する際、この製造方法に限定されるわけではない。
【0009】
本発明の反応性希釈剤に使用するポリグリセリンは、好ましくは水酸基当量から得られる平均重合度が2〜10のものであり、より好ましくは同平均重合度が2〜6である。平均重合度が低過ぎると得られるポリウレタン樹脂の耐熱性が低下する傾向があり、一方平均重合度が高過ぎると反応性希釈剤の粘度が高くなる傾向があり、ポリオールに配合した際の作業性の改善、生産性の向上に繋がりにくいため、この範囲が好ましい。
【0010】
本発明の反応性希釈剤に使用するアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられるが、エチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドは単独でも併用しても良い。アルキレンオキサイドの付加単位数は、好ましくはポリグリセリン1モルに対して4〜80モルであり、より好ましくは4〜60モルである。アルキレンオキサイドの付加モル数が低過ぎるとウレタン用ポリオールとの相溶性が悪化する傾向があり、一方アルキレンオキサイドの付加モル数が高過ぎると耐水性が悪化する原因となるため、この範囲が好ましい。
【0011】
本発明の反応性希釈剤に使用する脂肪酸は、炭素数が2〜18の直鎖状若しくは分岐状の、及び飽和若しくは不飽和のいずれの脂肪酸でもよく、単独または混合で使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられるが、なかでもカプリル酸、オレイン酸が好ましい。
【0012】
本発明の反応性希釈剤のエステル化率は、好ましくは20〜80%の範囲であり、より好ましくは30〜70%である。エステル化率が20%未満では、主剤ポリオールとの相溶性が悪化する、あるいは得られるポリウレタン樹脂の柔軟性が低下する原因となり、さらにポリイソシアネートの使用量が増加するため不経済となる。一方エステル化率が80%を超える場合では、得られるポリウレタン樹脂の耐熱性が低下する、あるいはブリードが生じる等の物性低下を招く原因となる。
【0013】
本発明の反応性希釈剤の25℃における粘度は、好ましくは10〜1000mPa・sの範囲であり、より好ましくは50〜400mPa・sである。粘度が10mPa・s未満の反応希釈剤はエステル化率が高くなるため、得られるポリウレタン樹脂の耐熱性が低下する、あるいはブリードが生じる等の物性低下を招く原因となる。一方粘度が1000mPa・sを越える場合では、ポリオールの粘度低減効果が小さく、作業性の改善に繋がらない。
【0014】
本発明の反応性希釈剤の水酸基価は、上述したポリグリセリンの重合度及びアルキレンオキサイドの付加モル数及びエステル化率の調整によって適宜変更が可能であるが、好ましくは50〜400mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは100〜200mgKOH/gである。水酸基価が50mgKOH/g未満では、得られるポリウレタン樹脂の耐熱性が低下する、あるいはブリードが生じる等の物性低下を招く原因となり、一方水酸基価が400mgKOH/gを越える場合では、主剤ポリオールとの相溶性が悪化する、あるいは得られるポリウレタン樹脂においてブリードが生じる等の物性低下を招く原因となり、さらにポリイソシアネートの使用量が増加するため不経済となる。
【0015】
本発明の反応性希釈剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(4)ジグリセリルエーテルのカプリル酸エステル(エステル化率65%)、ポリオキシエチレン(6)ジグリセリルエーテルのオレイン酸エステル(エステル化率33%)、ポリオキシエチレン(13)ジグリセリルエーテルのカプリル酸エステル(エステル化率50%)、ポリオキシエチレン(13)ジグリセリルエーテルの2−エチルヘキサン酸エステル(エステル化率50%)などが挙げられる。
【0016】
本発明のポリウレタン組成物は、主剤のポリオールであるポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール、ポリカーボネートジオール、アクリルポリオール等と本発明の反応性希釈剤とをあらかじめ混合した後に、イソシアネートを配合する工程を経て調製される。
【0017】
本発明の反応性希釈剤の添加量としては、主剤のポリオールの重量に対し通常1〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%であり、さらに好ましくは10〜40重量%である。添加量が1重量%以下ではポリオールの粘度低減効果が小さく、作業性の改善に繋がらない。又、80重量%を越える場合は、得られるポリウレタン樹脂の耐熱性、耐水性が悪化するため、この範囲が好ましい。
【0018】
本発明で使用するポリオールの種類は特に限定されず、当業者が一般に入手可能なポリオールを使用することができる。本発明において使用されるポリオールの具体例としては、商品名 PCDL T−5652、T−5651、T−5650J(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)等のポリカーボネートポリオール、商品名 poly bd R−45HT、R−15HT(以上、出光興産株式会社製 水酸基末端液状ポリブタジエン)、商品名 G−1000、G−2000、G−3000(以上、日本曹達株式会社製 α,ω―ポリブタジエングリコール)、商品名 GI−1000、GI−2000、GI−3000(以上、日本曹達株式会社製 水素添加型ポリブタジエングリコール)等のポリブタジエングリコール類、商品名 poly ip(出光興産株式会社製 水酸基末端液状イソプレン)、商品名 エポール(出光興産株式会社製 水素添加型ポリオレフィン系ポリオール)等のポリイソプレンポリオール類、商品名 ARUFON UH−2000、UH−2032、UH−2041(以上、東亞合成株式会社製)等のアクリルポリオールが挙げられる。なお、これらの記載は本発明に好適なポリオールの例示であり、これらにより本発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明のポリウレタン組成物に用いられるポリイソシアネート成分の具体例としては、4,4’−または2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメライズドジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5,−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート、をはじめとする種々のポリイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3,3’−ジイソシアネートジプロピルエーテル、あるいはこれらのポリイソシアネートのウレタン変性体、二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ポレポリマー、ブロック化物などがあげられる。耐候性が要求される場合は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアメートなどの無黄変ポリイソシアネートを選択することが望ましい。
【0020】
本発明のポリウレタン組成物は、上述のポリオール成分とポリイソシアネート成分とからなる。両成分の配合比率はNCO/OHの当量比で通常0.7〜1.4、好ましくは0.8〜1.2である。これらの範囲を外れる場合はポリウレタン硬化物において未反応成分のブリードが起こるなど、充分な硬化が図れないためこの範囲が好ましい。
【0021】
本発明のポリウレタン組成物の調製に際しては、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、充填剤、可塑剤、ウレタン化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、水分吸収剤、消泡剤、防カビ剤、シラン系やチタン系のカップリング剤、離形剤、難燃剤、界面活性剤、pH調整剤等を添加して製造される。
【0022】
本発明のポリウレタン組成物の硬化は、室温ないし110℃程度の温度でおこなうことができ、温度を上げた場合は硬化反応がそれだけ促進される。硬化時間は室温では1〜7日程度、100℃硬化では1〜10時間程度と適宜定めればよく、使用する触媒の種類によっても調整が可能である。一例としては、注型後に60℃で1時間加熱した後、室温で4日程度放置する方法、あるいは110℃で6時間放置する方法が採用される。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の反応性希釈剤およびポリウレタン組成物について詳細に説明するが、本発明はこれらの合成例および実施例に限定されるものではない。
【0024】
<合成例1>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数4)393.5g(1.150mol)、カプリル酸464.5g(3.221mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら180℃まで昇温し1時間反応し、その後220℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数4)のカプリル酸エステル(RD1)795.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率65%、粘度94mPa・s(25℃)、水酸基価110mgKOH/gであった。
【0025】
<合成例2>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数4)393.5g(1.150mol)、2−エチルへキサン酸464.5g(3.221mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら180℃まで昇温し1時間反応し、その後220℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数4)の2−エチルヘキサン酸エステル(RD2)788.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率65%、粘度121mPa・s(25℃)、水酸基価126mgKOH/gであった。
【0026】
<合成例3>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数13)581.3g(0.788mol)、カプリル酸249.9g(1.733mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら180℃まで昇温し1時間反応し、その後220℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数13)のカプリル酸エステル(RD3)791.5gを得た。得られた生成物は、エステル化率50%、粘度171mPa・s(25℃)、水酸基価115mgKOH/gであった。
【0027】
<合成例4>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数13)545.7g(0.739mol)、オレイン酸271.6g(0.961mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら230℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数13)のオレイン酸エステル(RD4)798.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率33%、粘度314mPa・s(25℃)、水酸基価140mgKOH/gであった。
【0028】
<比較合成例1>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)228.0g(1.373mol)、カプリル酸653.6g(4.533mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら180℃まで昇温し1時間反応し、その後220℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)カプリル酸エステル(RD5)790.5gを得た。得られた生成物は、エステル化率75%、粘度70mPa・s(25℃)、水酸基価103mgKOH/gであった。
【0029】
<比較合成例2>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)160.5g(0.967mol)、オレイン酸683.0g(2.418mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら230℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)オレイン酸エステル(RD6)796.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率63%、粘度220mPa・s(25℃)、水酸基価105mgKOH/gであった。
【0030】
<比較合成例3>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数2)259.5g(1.022mol)、オレイン酸577.3g(2.043mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら230℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数2)のオレイン酸エステル(RD7)798.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率50%、粘度250mPa・s(25℃)、水酸基価143mgKOH/gであった。
【0031】
<実施例1>
ポリカーボネートポリオール(PCDL T−5651<旭化成ケミカルズ株式会社製>)を80重量部、合成例1に記載される反応性希釈剤を20重量部配合し均一になるまで攪拌した。この配合物の粘度は3770mPa・s(25℃)であった。次にこのポリオール成分に対して、NCO(wt%)=23.1%のポリイソシアヌレート(デュラネートTPA−100<旭化成ケミカルズ株式会社製>)をNCO/OHの当量比が1.0となる部数を配合し、更にヒンダードフェノール系酸化防止剤2.0部、シリコン系消泡剤0.05部を配合し、再度均一になるまで攪拌後5torrの真空下にて10分間脱泡し、110℃,6hrの条件で加熱硬化することによりポリウレタン樹脂を得た。
【0032】
<実施例2〜4,比較例1〜5>
実施例1における反応性希釈剤を変更した以外は実施例1と同様にポリウレタン樹脂を得た。
【0033】
実施例2〜4及び比較例1〜5において用いた反応性希釈剤を以下に示す。
実施例2:合成例2に記載される反応性希釈剤
実施例3:合成例3に記載される反応性希釈剤
実施例4:合成例4に記載される反応性希釈剤
比較例1:比較合成例1に記載される反応性希釈剤
比較例2:比較合成例2に記載される反応性希釈剤
比較例3:比較合成例3に記載される反応性希釈剤
比較例4:リシノレイン酸メチル(粘度=24mPa・s(25℃)、水酸基価=165mgKOH/g、分子量=313)
比較例5:ポリプロピレングリコール(粘度=148mPa・s(25℃)、水酸基価=110mgKOH/g、分子量=1000)
【0034】
<評価>
上記の反応性希釈剤についてポリカーボネートポリオールとの相溶性を下記評価方法(1)に従い評価した結果を表1〜2に示した。また、相溶性が良好なものについて、ポリオール組成物の粘度、ポリウレタン樹脂の硬度(ショアーA)及び耐熱性を下記評価方法(2)〜(4)に従い測定した結果を表3〜4に示した。
(1) 相溶性
ポリカーボネートポリオール66.7重量部に対し、種々の反応性希釈剤を33.3重量部の割合で混合し、25℃に1日間放置して相溶性を観察した。
○・・・透明均一
△・・・白濁
×・・・2層に分離
(2) 粘度
ポリカーボネートポリオール80重量部に対し、種々の反応性希釈剤を20重量部配合したポリオール組成物の粘度を測定した。なお、測定には東京計器株式会社製B型回転粘度計を用いた。
(3) 硬度(ショアーA)
ポリカーボネートポリオール80重量部に対し、種々の反応性希釈剤を20重量部配合して作成したポリウレタン樹脂の硬度をプラスチックのデュロメータ硬さ試験方法JIS K 7215に従い測定した。
なお、デュロメーター硬さ試験機は高分子計器株式会社製CL−150を使用した。
(4) 耐熱性
ポリカーボネートポリオール80重量部に対し、種々の反応性希釈剤を20重量部配合して作成したポリウレタン樹脂の初期重量、および150℃乾燥器中に4週間放置後の重量を測定し、下記計算式により加熱重量減少(%)を求めた。
計算式;加熱重量減少(%)=(初期重量−加熱後の重量)÷初期重量×100
○・・・4.0%未満
△・・・4.0%以上、8.0%未満
×・・・8.0%以上
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

※1〜9は表1〜4参照
※1:合成例1に記載される反応性希釈剤
※2:合成例2に記載される反応性希釈剤
※3:合成例3に記載される反応性希釈剤
※4:合成例4に記載される反応性希釈剤
※5:比較合成例1に記載される反応性希釈剤
※6:比較合成例2に記載される反応性希釈剤
※7:比較合成例3に記載される反応性希釈剤
※8:リシノレイン酸メチル(商品名「K−PON180」;小倉合成工業(株)製)
※9:ポリプロピレングリコール(商品名「ニューポールPP−1000」;三洋化成工業(株)製)
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の反応性希釈剤を用いることにより、ウレタン用ポリオールの作業性及び生産性の向上、更には耐熱性及び経時安定性に優れたポリウレタン硬化物を得ることができ、軟質フォーム、硬質フォーム、エラストマー、接着剤、塗料、バインダーなどとして、特に無溶剤型アクリルウレタン塗料、電気絶縁用ウレタン樹脂封止材として好適に用いることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを含有するウレタン用ポリオールの反応性希釈剤。
【請求項2】
25℃における粘度が10〜1000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の反応性希釈剤。
【請求項3】
水酸基価が50〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜2記載の反応性希釈剤。
【請求項4】
請求項1〜3記載の反応性希釈剤とポリオール及びイソシアネートとからなるポリウレタン組成物。

【公開番号】特開2008−195808(P2008−195808A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31501(P2007−31501)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】