説明

反応性染料

【課題】優れた濃染性(dye depth)、再現性(reproducibility)及び色堅牢度(color fastness)を有する反応性染料を提供する。
【解決手段】本発明に係る反応性染料は、下記式(I)で表される構造を有する。


〔式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、R1、R2及びR3は、水素原子、C1−4アルキル基等を表し、nは、0又は1であり、Q1、Q2は、それぞれ独立して、水素原子、スルホン酸基、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基、ウレイド基からなる群より選出された基を表し、(HO3S)1−3は1〜3個のスルホン酸基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応性染料、特に、ヒドロキシル基又はアミノ基を含む繊維の浸染、コールドパッドバッチ(cold pad batch)染、連続染、捺染及びデジタルインクジェットプリントなどに適用される新規な反応性染料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近流行の色調の傾向は、暖色系のアーストーン(earth tone)にすでに移行し、その色彩として、ブラウン、グレー、カーキ色、オリーブ色、はだ色などが含まれる。従来、この種のセルロース繊維のアーストーンは、すべてバット染料(Vat dyestuffs)により染色されてきた。バット染料を用いて布地を染色した場合、優れた再現性(reproducibility)と色堅牢度(color fastness)の特性を有するが、染色工程が繁雑で、明るい色調が無く、しかも濃色に染める時に効率が悪いなどの問題があるため、バット染料に代えて反応性染料を用いることについて一定の市場と需要が存在する。
【0003】
特許文献1(WO2008/055805号公報)において、反応性染料混合物が開示されているが、市場においては、更に優れた再現性と色堅牢度を有する黄色系と赤褐色系の反応性染料の研究開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/055805号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的と、その他の目的を達成するために、下記式(I)で表される構造を有する反応性染料を提供する。
【化1】

〔式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルカルボニル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表し、
nは、0又は1を表し、
、Qは、それぞれ独立して、水素原子、スルホン酸基、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基、ウレイド基からなる群より選出された基を表し、
(HOS)1−3は1〜3個のスルホン酸基を表し、任意にナフチル基に結合される。〕
【0006】
本発明の一つの態様において、上式(I)の構造中、nは0を表し、当該式(I)は、下記式(I−1)の構造を有する。
【化2】

[式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルカルボニル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表す。]
【0007】
本発明の一つの具体的実施例において、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表す。例えば、本発明の反応性染料は、下記式(I−1a)、(I−1b)、(I−1c)、(I−1d)、(I−1e)、(I−1f)又は(I−1g)で表される構造を有するものが挙げられる。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0008】
又、本発明の他の一つの態様において、上記式(I)の構造中、nは1を表し、当該式(I)は下記式(I−2)で表される構造を有する。
【化10】

〔式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルカルボニル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表し、
、Qは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基からなる群より選出された基を表す。〕
【0009】
前記具体的実施例において、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表し、Q、Qは、それぞれ独立して、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基からなる群より選出された基を表す。例えば、本発明の反応性染料は、下記式(I−2a)、(I−2b)、(I−2c)又は(I−2d)で表される構造を有するものが挙げられる。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【発明の効果】
【0010】
本発明の反応性染料は、優れた濃染性(dye depth)を有する。市販されている染料に比べ、本発明の反応性染料はより好ましい濃染性を示し、中温度の浸染とコールドパッドバッチ染において、更に優れた再現性と色堅牢度の特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を特定の具体的実施例により詳細に説明する。この技術分野に精通する者は、本発明の明細書に開示された内容により、容易に本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の様々な実施形態で実施又は応用を行うことができる。本発明の明細書における各細部は、異なる観点と応用により、本発明の主旨を逸脱しない限り、様々な修正と変更を施すことができる。
【0012】
本発明の明細書中、説明の便宜上、化合物は、すべて遊離酸の形態で示すが、本発明における染料は、その製造又は使用時において、しばしば、水溶性の塩の形態で存在する。特に好ましい塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩が挙げられ、その中、より好ましい塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩又はトリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0013】
本発明の染料は、従来の方法により製造することができ、その製造の際の反応の順序には特に厳しい制限はなく、先に発色団を製造した後、必要とする染料を合成しても良く、又、染料の製造過程において、発色団を合成しても良い。
【0014】
本発明の染料は、繊維材料に適用され、特に、セルロース繊維材料とセルロース繊維含有繊維材料の染色又は捺染に適用される。これら繊維材料としては、特に制限はなく、天然繊維又は再生セルロース繊維であっても良く、例えば、棉、麻、亜麻、大麻、苧麻、粘液性レイヨン、又はセルロース系含有繊維などの繊維材料が挙げられる。同様に、本発明の染料は、ヒドロキシル含有繊維の繊維混紡織物の染色と捺染にも適用される。
【0015】
本発明の染料は、様々な方法により繊維上に色止めされ、特に、水性染料溶液と捺染のりの形式が使用され、浸染、連続染、コールドパッドバッチ染、捺染及びデジタルインクジェットプリントなどの方法により染色と捺染が行われる。
【0016】
本発明の染色又は捺染は、一般に従来、常用の方法により行われる。浸染法(exhaustion dyeing)としては、周知の無機中性塩(例えば、無水硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウム)と、周知の酸結合剤(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム)を単独で又は混合して使用する。上記無機中性塩と塩基の使用量は重要ではなく、無機中性塩と塩基は、従来の伝統的方法により、一回又は小分けにして染浴中に添加される。又、伝統的方法に従い、染色助剤(例えば、均染剤、緩染剤など)を添加することもできる。一般に、染色温度は、40〜90℃の範囲内であり、好ましくは50〜70℃の範囲内である。
【0017】
コールドパッドバッチ染は、染色しようとする材料を周知の無機中性塩(例えば、無水硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウム)と、周知の酸結合剤(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム)を利用してパッド染色し、その後、室温下で、上記により得た材料を巻き置き状態下で染色する方法である。
【0018】
連続染色法は、周知の酸結合剤(例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム)とパッド染色液とを混合し、通常の方法により染色しようとする材料についてパッド染色を行い、その後、それにより得た材料を乾熱又は蒸汽により色止めするものである。二浴パッド染色法は、染料により染色しようとする材料をパッド染色した後、周知の無機中性塩(例えば、硫酸ナトリウム、又は硅酸ナトリウム)で処理する。最も好ましくは、常法により処理した材料を乾燥、又は蒸汽により色止めする方法である。
【0019】
以下、実例により本発明を説明するが、これは本発明を説明するための例示であり、本発明の特許請求の範囲は、これに限定されるものではない。特に説明のない限り、温度は攝氏温度で示し、部数又は%は、重量当りで示す。
【実施例】
【0020】
実施例1
(1)2−ナフチルアミン−4,8−ジスルホン酸30.2部を氷水300部中に分散し、次に、32%の塩酸水溶液28.5部を加えて十分攪拌を行い、更に、亜硝酸ナトリウム水溶液6.9部を徐々に加えた後、0〜5℃で1時間攪拌を続ける。この後、1−ナフチルアミン−8−スルホン酸22.3部を徐々に加え、炭酸水素ナトリウムによりpH3まで調整し、10〜15℃で3時間攪拌して、反応液を得る。
【0021】
(2)上記の反応液中に、塩化シアヌル18.4部が氷水100部に分散された分散液を徐々に傾注し、炭酸水素ナトリウムを用いてpH5〜6まで調整して、10〜15℃で3時間攪拌し、濾過して反応液を得る。
【0022】
(3)次に、24%アンモニア水溶液を用いて、上記の反応液をpH10〜11を保持する状態に調整し、40〜45℃に昇温して2時間攪拌を続けた後、塩析を行い、下式(1)で表される生成物を得る。
【化15】

【0023】
(4)水300部中に、上記の生成物(1)を分散し、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)12.3部を加え、70〜80℃に昇温して、3時間攪拌を続ける。その後、塩析によりオレンジ色の生成物(2)、即ち、式(I−1a)で表される化合物(λmax=405nm)を得る。
【化16】

【0024】
実施例2
(1)2−ナフチルアミン−4,8−ジスルホン酸30.2部を氷水300部中に分散し、次に、32%の塩酸水溶液28.5部を加えて十分攪拌し、更に、亜硝酸ナトリウム水溶液6.9部を加えた後、0〜5℃で1時間攪拌する。続いて、1−ナフチルアミン−7−スルホン酸22.3部を徐々に加え、炭酸水素ナトリウムを用いてpH3に調整して、10〜15℃で3時間攪拌し、反応液を得る。
【0025】
(2)上記の反応液中に、塩化シアヌル18.4部が氷水100部に分散された分散液を徐々に加え、炭酸水素ナトリウムを用いてpH5〜6まで調整して、10〜15℃で2時間攪拌し、濾過して反応液を得る。
【0026】
(3)次に、24%アンモニア水溶液を用いて、上記の反応液をpH10〜11を保持する状態に調整し、40〜45℃に昇温して、2時間攪拌を続けた後、塩析により下式(3)で表される生成物を得る。
【化17】

【0027】
(4)上記より得た生成物(3)を水300部中に分散し、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)12.3部を加え、70〜80℃に昇温して、3時間攪拌を続けた後、塩析により黄色の生成物(4)、即ち、式(I−1b)で表される化合物(λ max=400nm)を得る。
【化18】

【0028】
実施例3
(1)2−ナフチルアミン−4,8−ジスルホン酸30.2部を氷水300部中に分散し、続いて、32%の塩酸水溶液28.5部を加え、十分攪拌する。次に、亜硝酸ナトリウム水溶液6.9部を加えた後、0〜5℃で1時間攪拌を続ける。更に、1−ナフチルアミン−6−スルホン酸22.3部を徐々に加え、炭酸水素ナトリウムによりpH3に調整し、10〜15℃で3時間攪拌して反応液を得る。
【0029】
(2)上記の反応液中に、塩化シアヌル18.4部が氷水100部に分散された分散液を徐々に傾注し、炭酸水素ナトリウムを用いてpH5〜6に調整し、10〜15℃で2時間攪拌し、濾過して反応液を得る。
【0030】
(3)次に、24%アンモニア水溶液により、上記の反応液をpH10〜11を保持した状態に調整して、40〜45℃に昇温し、攪拌を2時間続けた後、塩析により下記式(5)で表される生成物を得る。
【化19】

【0031】
(4)上記より得た生成物(5)を水300部中に分散し、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)12.3部を加え、70〜80℃に昇温して、3時間攪拌を続けた後、塩析により黄色の生成物(6)、即ち、式(I−1c)で表される化合物(λ max=400nm)を得る。
【化20】

【0032】
実施例4
(1)2−ナフチルアミン−1,5−ジスルホン酸30.2部を氷水300部に分散し、続いて、32%の塩酸水溶液28.5部を加え、十分攪拌し、次に、亜硝酸ナトリウム水溶液6.9部を加えた後、0〜5℃で1時間攪拌を続ける。更に、1−ナフチルアミン−8−スルホン酸22.3部を徐々に加え、炭酸水素ナトリウムによりpH6に調整し、10〜15℃で3時間攪拌して反応液を得る。
【0033】
(2)上記の反応液に、塩化シアヌル18.4部が氷水100部に分散された分散液を徐々に傾注し、炭酸水素ナトリウムによりpH9〜9.5に調整し、8〜10℃で3時間攪拌した後、濾過して反応液を得る。
【0034】
(3)次に、24%アンモニア水溶液を用い、上記の反応液をpH10〜11に調整して、40〜45℃に昇温して、2時間攪拌を続けた後、塩析により下記式(7)で表される生成物を得る。
【化21】

【0035】
(4)水300部に上記生成物(7)を分散し、次に、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)12.3部を加え、70〜80℃まで昇温し、2時間攪拌を続けた後、塩析により黄色の生成物(8)、即ち、式(I−1d)で表される化合物(λ max=400nm)を得る。
【化22】

【0036】
製造実施例5〜7
実施例1〜4に記載の工程を参照することにより、高純度で、優れた濃染性と色堅牢度の特性を有する下記のニコチン酸を含む反応性染料を得る。
【0037】
実施例5
黄色生成物(9)、即ち、式(I−1e)で表される化合物(λ max=402nm)を得る。
【化23】

【0038】
実施例6
黄色生成物(10)、即ち、式(I−1f)で表される化合物(λ max=408nm)を得る。
【化24】

【0039】
実施例7
黄色生成物(11)、即ち、式(I−1g)で表される化合物(λ max=406nm)を得る。
【化25】

【0040】
実施例8
(1)2−ナフチルアミン−3,6,8−トリスルホン酸57.5部を氷水225部に均一に分散し、次に、亜硝酸ナトリウム水溶液45部を徐々に加えた後、8〜15℃で1時間攪拌する。続いて、3−アミノ−4−メトキシアセトアニリド27.03部を加え、45%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5〜5.5に保持し、20℃で2時間攪拌する。32%塩酸水溶液36.87部を加えた後、亜硝酸ナトリウム水溶液45部を徐々に加え、5〜10℃で1時間攪拌する。更に、1−ナフチルアミン−8−スルホン酸32.82部を、10〜15℃で、上記反応液に加え、45%水酸化ナトリウム水溶液によりpH6〜6.5に保持して、2時間攪拌し、最後に、塩析により下記式(12)で表される生成物を得る。
【化26】

【0041】
(2)氷水40部に、塩化シアヌル24.91部を分散し、0〜5℃において上記生成物(12)水溶液に加え、15%炭酸ナトリウムを用いpH6〜7に保持して、更に、10〜15℃に保温した状態で1時間攪拌する。
【0042】
(3)24%アンモニア水溶液16.55部を上記(2)で得た反応液に加え、40〜45℃で1時間攪拌する。次に、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)28.25部を加え、80〜90℃に昇温して、5時間攪拌を続け、赤褐色生成物(13)、即ち、式(I−2a)で表される化合物(λ max=481nm)を得る。
【化27】

【0043】
実施例9
(1)氷水40部中に、塩化シアヌル24.91部を分散し、0〜5℃で上記生成物(12)を溶解した溶液に加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6〜7に保持し、更に、10〜15℃に保温して1時間攪拌する。
【0044】
(2)N−メチルアニリン14.77部を、上記(1)で得た反応液に加え、40〜45℃で1時間攪拌する。続いて、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)28.25部を加え、80〜90℃に昇温して、5時間攪拌を続け、赤褐色生成物(14)、即ち、式(I−2b)で表される化合物(λ max=520nm)を得る。
【化28】

【0045】
実施例10
(1)氷水40部に、塩化シアヌル24.91部を分散し、0〜5℃で上記生成物(12)の水溶液中に加え、15%炭酸水溶液を用いてpH6〜7に保持し、更に、10〜15℃に保温した状態下で1時間攪拌する。
【0046】
(2)1−アニリン−3−スルホン酸(メタニル酸)23.86部を、上記(1)により得た反応液に加え、40〜45℃で1時間攪拌する。次に、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)28.25部を加え、80〜90℃に昇温して、5時間攪拌することで、赤褐色生成物(15)、即ち、式(I−2c)で表される化合物(λ max=520nm)を得る。
【化29】

【0047】
実施例11
(1)氷水40部に、塩化シアヌル24.91部を分散し、0〜5℃で上記生成物(12)の水溶液に加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6〜7に保持し、更に、10〜15℃に保温して1時間攪拌する。
【0048】
(2)エタノールアミン8.42部を、上記(1)により得た反応液に加え、40〜45℃で1時間攪拌する。次に、ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)28.25部を加え、80〜90℃に昇温して、5時間攪拌することで、赤褐色生成物(16)、即ち、式(I−2d)で表される化合物(λ max=530nm)を得る。
【化30】

【0049】
試験例1
実施例8により得た染料1部を取り、蒸留水100部中に完全に溶かして染料液を調製する。この染料液20部を染色用コップに注入し、芒硝4.8部を加え、更に、蒸留水を加えて染料液総量を75部まで増し、次に、濃度320g/lの純アルカリ水溶液5部を加える。全棉質の平織布4枚を上記染料液に放置し、しっかりと蓋をして上下に振り動かし、染料を均一にした後、この染色用コップを恒温槽中に放置し、回転ボタンを押し、30分間で60℃まで昇温した後、60分間保温して色止めする。染色完了後、布地を取り出して冷水で洗浄し、更に、通常の方法で洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、優れた濃染性と染色率を有する赤褐色の染物を得る。
【0050】
註:濃染性の測定:K/S値は、表面観測色の濃度又は表面色彩の濃度を示すものであり、織物の表面色の濃淡度を評価する指標である。その測定方法では、織物の反射率を測定することにより評価を行い、分光光度計を用いて遮蔽部分と未遮蔽部分それぞれの反射率(R)を測定し、その後、色濃度(K/S)に換算するが、これは、染色学において周知の計算式である。
K/S=(1−R)/2R
【0051】
試験例2
実施例1により製造された染料3部を取り、100mlの水中に溶解し、30部/lの捺染用染料液を調製する。この染料液中に、アルカリ剤(苛性ソーダ15ml/lと芒硝30部/lを使用)25mlを加え、均一に攪拌し、これにより得た混合液をローラー式捺染器中に注入し、その後棉織物をローラー式捺染器で処理した後、軸状に巻きとる。このような形態の棉織物を室温下で4時間保存する。その後、これにより得た黄色染物を先に冷水で洗浄し、次に、沸騰した熱水で10分間洗浄する。その後、沸騰したノニオン洗剤で10分間洗浄し、最後に、冷水で再度水洗し、乾燥する。これにより得た黄色染物は、優れた濃染性と染色率を有する。
【0052】
試験例3 浸染の濃染性の比較試験
実施例1により得た染料と比較試料1の染料を用い、試験例1の方法により、異なる染料液濃度(o.w.f)について、浸染における濃染性の比較試験を行い、その結果を下表1に示す。
註:o.w.f(on weight of fabricの略称)は、織物の重量当りの値を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
比較試料1
【化31】

【0055】
上記の比較結果によれば、本発明の実施例1により得た染料は、中温型の浸染において、確かに優れた濃染性を有する。
【0056】
試験例4 コールドパッドバッチ染における濃染性の比較試験
実施例8により得た染料と比較試料2の染料を用い、試験例2の方法により、異なる染料液濃度(g/l)について、濃染性の比較試験を行い、その結果を下表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
比較試料2
【化32】

【0059】
上記の比較結果によれば、実施例8により得た染料は、コールドパッドバッチ染に応用した際、優れた濃染性を有する。
【0060】
比較試料1や比較試料2の反応性染料に比べると、本発明の反応性染料は、明らかに優れた濃染性を有し、中温型浸染とコールドパッドバッチ染に利用した場合、更に優れた再現性の特長を示す。市販の染料に比べ、本発明の反応性染料は、濃染性、水洗性及び色堅牢度の面でも極めて優れた特性を有する。
【0061】
上記の実施例は、本発明の原理と効果を説明するための例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その主旨を逸脱しない限り、上記の実施例について修正や変更を行い、様々な形態で実施をすることができる。それ故、本発明が開示する主旨を逸脱することなく本発明の技術分野においてなされたすべての修正と変更は、当然すべて本発明の特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

〔式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルカルボニル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表し、
nは、0又は1であり、
、Qは、それぞれ独立して、水素原子、スルホン酸基、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基、ウレイド基からなる群より選出された基を表し、
(HOS)1−3は1〜3個のスルホン酸基を表す。〕
で表される構造を有する反応性染料。
【請求項2】
前記式(I)は下記式(I−1):
【化2】

〔式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルカルボニル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表す。〕
で表される、請求項1に記載の反応性染料。
【請求項3】
Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表す、請求項2に記載の反応性染料。
【請求項4】
下記式(I−1a):
【化3】

で表される構造を有する請求項3に記載の反応性染料。
【請求項5】
下記式(I−1g):
【化4】

で表される構造を有する請求項3に記載の反応性染料。
【請求項6】
前記式(I)は下記式(I−2):
【化5】

〔式中、Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルカルボニル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表し、
、Qは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基からなる群より選出された基を表す。〕
で表される、請求項1に記載の反応性染料。
【請求項7】
Xは、ハロゲン又はカルボキシピリジニウム基を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1−4アルキル基、フェニル基、C1−4ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基で置換されたフェニル基からなる群より選出された基を表し、
、Qは、それぞれ独立して、C1−4アルコキシ基、C1−4アルカノイルアミノ基からなる群より選出された基を表す、請求項6に記載の反応性染料。
【請求項8】
下記式(I−2a):
【化6】

で表される構造を有する請求項7に記載の反応性染料。
【請求項9】
下記式(I−2d):
【化7】

で表される構造を有する請求項7に記載の反応性染料。

【公開番号】特開2012−219272(P2012−219272A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89911(P2012−89911)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(510291909)エバーライト ユーエスエー,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】