説明

反応押出方法

【課題】 従来技術で問題とされていた、樹脂の熱分解を抑えながら反応性を高める反応押出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の反応押出方法は、二軸押出機内で連続的に反応させる反応押出方法であって、ギヤポンプを用いて反応ゾーンの圧力を高めることを特徴とする反応押出方法である。ギヤポンプの特徴である定流量制御能力、高圧吐出能力を利用し、押出機出口に当該ギヤポンプを設け押出機より吐出される溶融樹脂を強制的に制御することで反応系内の圧力を高めることがにでき、逆ネジやシールリングを用いたエレメント構成で行う昇圧方法のような局部的なせん断が生じることがなく、樹脂の熱分解を大幅に抑えらながら反応系内の圧力を高めることができる。ひいては、耐熱性の低い樹脂でも反応を早めることで反応押出方法が採用できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸押出機を用いた反応押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続的に反応を行う方法として、押出装置で樹脂を溶融し反応剤と反応させてから押し出す反応押出方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、イミド化アクリル重合体の製法に関して、アクリル重合体を特定のイミド化触媒の存在下で、押出機中でイミド化することが記載されている。
【0004】
このような方法は押出機を用いるため、反応槽等で行うバッチ式の反応と異なり押出機系内の滞留時間の制約を受ける。そのため、滞留時間内に反応を完結させるために、バレルの温度設定を上げて反応温度を高め反応を早めたり、拡散や分散効果の高いエレメント構成を採用して反応を早めたり、また、スクリュー回転数を上げて拡散や分散効果を上げ反応を早めたり、逆ネジやシールリングを用いて反応系内の圧力を上げ反応を早めたりする方法が一般的に併用されている。
【特許文献1】特開平1−289807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1の方法は何れも樹脂に対し局部的な加熱により生じる熱分解を伴うものであり、耐熱性の低い熱分解し易い樹脂への適用には問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、樹脂の熱分解を抑えながら反応ゾーンの圧力を高めることが可能な反応押出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を鑑み鋭意検討した結果、以下の発明を為すに到った。つまり、本発明の反応押出方法は、二軸押出機内で連続的に反応させる反応押出方法であって、ギヤポンプを用いて反応ゾーンの圧力を高めることを特徴とする反応押出方法である。このような、本発明の押出方法は、ギヤポンプの特徴である定流量制御能力、高圧吐出能力を利用し、例えば、押出機出口に当該ギヤポンプを設け押出機より吐出される溶融樹脂を強制的に制御することで後続の押出機の反応ゾーンの圧力を高めることが容易にできるので、逆ネジやシールリングを用いたエレメント構成で行う昇圧方法のような局部的なせん断が生じることがない。従って、樹脂の熱分解を大幅に抑えらながら反応ゾーンの圧力を高めることができので、高品質の樹脂を得ることができ、ひいては、耐熱性の低い樹脂でも反応を早めることで反応押出方法が採用できるようになる。
【0008】
このような本発明の反応押出方法は、前記押出機が少なくとも2基以上から構成されたタンデム式押出機であって、ギアポンプを、一方の前記押出機と、それとは異なる他方の前記押出機との間に挿入して、反応押出する方法とすることが好ましい。
【0009】
このような本発明の反応押出方法は、前記反応がイミド化反応である場合に好適に適用される。
【0010】
また、このような本発明の反応押出方法は、前記イミド化反応が、アクリル樹脂あるいは、アクリルとスチレンの共重合体をイミド化剤で処理する反応である場合に好適に適用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の押出方法は、ギヤポンプの特徴である定流量制御能力、高圧吐出能力を利用し、押出機出口に当該ギヤポンプを設け押出機より吐出される溶融樹脂を強制的に制御することで後続の押出機の反応ゾーンの圧力を高めることが容易にできるので、逆ネジやシールリングを用いたエレメント構成で行う昇圧方法のような局部的なせん断が生じることがない。従って、樹脂の熱分解を大幅に抑えらながら反応ゾーンの圧力を高めることができので、高品質の樹脂を得ることができ、ひいては、耐熱性の低い樹脂でも反応を早めることで反応押出方法が採用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、二軸押出機内で連続的に反応させる反応押出方法であって、ギヤポンプを用いて反応ゾーンの圧力を高めることを特徴とする反応押出方法に関するものである。
【0013】
本発明は各種反応押出系に適用することが可能であるが、特に高せん断による発熱等により熱分解が生じ易い樹脂の反応に用いる場合に有効である。例えば、イミド化反応を行う際に有効に適用できる。さらには、PMMA樹脂あるいは、MS樹脂をイミド化剤で処理する反応に有効に適用できる。以下に、この特に好適な樹脂組成について詳しく説明する。
【0014】
(反応組成)
特に本発明を有効に適応して合成することのできる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)、(2)、(3)で表される繰り返し単位を含有するイミド樹脂が挙げられる。また、一般式(1)、(2)を含有し、一般式(3)を有さない樹脂などにも好適に使用できる。
【0015】
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【0016】
【化2】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【0017】
【化3】

(ここで、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
本発明を好適に適用可能な上記イミド樹脂を構成する、第一の構成単位は、下記一般式(1)で表される(以下、グルタルイミド単位と省略することがある。)。
【0018】
【化4】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
好ましいグルタルイミド単位としては、R、Rが水素またはメチル基であり、Rが水素、メチル基、またはシクロヘキシル基である。Rがメチル基であり、Rが水素であり、Rがメチル基である場合が、特に好ましい。
【0019】
該グルタルイミド単位は、単一の種類でもよく、R、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0020】
本発明を好適に適用可能な上記イミド樹脂を構成する、第二の構成単位は、下記一般式(2)で表される(以下、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位と省略することがある。)。
【0021】
【化5】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
前記(メタ)アクリル酸系化合物もしくは(メタ)アクリル酸エステル系化合物には、特に限定がなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、無水マレイン酸等の酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸などもイミド化可能であり、本発明に使用可能である。これらの中で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0022】
これら第二の構成単位は、単一の種類でもよく、R、R、Rが異なる複数の種類を含んでいてもかまわない。
【0023】
本発明を好適に適用可能な上記イミド樹脂を構成する、第三の構成単位は、下記一般式(3)で表される(以下、芳香族ビニル単位と省略することがある。)。
【0024】
【化6】

(ここで、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
好ましい芳香族ビニル構成単位としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0025】
これら第三の構成単位は、単一の種類でもよく、R、Rが異なる複数の種類を含んでいてもかまわない。
【0026】
上記イミド樹脂中における、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、1重量%から95重量%であり、より好ましくは1.5〜90重量%、さらに好ましくは、2〜80重量%である。グルタルイミド単位がこの範囲より小さい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりすることがある。また、この範囲を超えると不必要に耐熱性が上がり、成形しにくくなる他、得られる成形体の機械的強度は極端に脆くなり、また、透明性が損なわれることがある。
【0027】
上記イミド樹脂中における、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、総繰り返し単位を基準として、7重量%から80重量%であり、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは、10〜60重量%である。芳香族ビニル単位がこの範囲より大きい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足し、この範囲より小さい場合、得られる成形体の機械的強度が低下することがある。
【0028】
上記イミド樹脂には、必要に応じ、更に、第四の構成単位が共重合されていてもかまわない。第四の構成単位として、例えばアクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。これらはイミド樹脂中に、直接共重合してあっても良く、グラフト共重合してあってもかまわない。
【0029】
また、上記イミド樹脂は、10,000から200,000の重量平均分子量を有することが好ましい。重量平均分子量が上記の値以下の場合には、成形品の機械的強度が不足し、上記の値以上の場合には、溶融時の粘度が高く、成形時の生産性が低下することがある。
【0030】
本発明の押出方法を適用して上記イミド樹脂を合成する際に好適に使用可能な原料樹脂として、例えばMS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)が挙げられる。MS樹脂としては、イミド化反応が可能な(メタ)アクリル酸系化合物もしくは(メタ)アクリル酸エステル系化合物の単独もしくはこれらの共重合体もしくは(メタ)アクリル酸系化合物もしくは(メタ)アクリル酸エステル系化合物、およびスチレン系化合物を有していることが好ましい。尚、その構造はリニアー(線状)ポリマーであっても、またブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、架橋ポリマーであっても良い。ブロックポリマーはA−B型、A−B−C型、A−B−A型、またはこれら以外のいずれのタイプのブロックポリマーであっても良い。コアシェルポリマーはただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであっても、それぞれが多層になっていても良い。
【0031】
更に本発明の押出方法を適用して上記イミド樹脂を合成する際に好適に使用可能な原料樹脂として、PMMA樹脂(メタクリル酸メチル樹脂)が挙げられる。PMMA樹脂としては、イミド化反応が可能な(メタ)アクリル酸系化合物もしくは(メタ)アクリル酸エステル系化合物の単独もしくはこれらの共重合体もしくは(メタ)アクリル酸系化合物もしくは(メタ)アクリル酸エステル系化合物を有していることが好ましい。
【0032】
本発明の押出方法を適用して上記イミド樹脂を合成する際に好適に使用可能なイミド化剤は、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体をイミド化することができれば特に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンが挙げられる。また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素の如き加熱によりこれらのアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。これらのイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミンが好ましい。
【0033】
(押出機、構成)
本発明を適用する押出機としては、各種が使用できるが、特に混練能力が高い点で二軸押出機を適用するのが好ましく、さらに混練能力や生産性が高いことから同方向噛合型二軸押出機を適用するのが好ましい。
【0034】
反応ゾーンを昇圧するために、例えばギヤポンプを押出機間に設置する必要があるため、押出機は少なくとも2基以上から構成されるタンデム式の押出機とすることが好ましい。例えば、図1に示す本発明の反応押出法を行う為の装置構成の1例としての押出機とギヤポンプの構成例となる。その際、例えば、1基目の押出機を、反応を目的とした押出機とし、また、ギヤポンプを介して溶融した樹脂が供給される2基目の押出機は、反応時に発生した副生成物を除去する目的の押出機とすることが、上述した目的樹脂を反応押出で製造する観点からは高品質の樹脂が得られるので好ましい方法となる。尚、上記構成は、一例であって、例えば、押出機4基、ギヤポンプ3基を設置し、1基目の押出機は樹脂の溶融目的、2基目で第一の反応、3基目で第二の反応、4基目で副生成物の除去など反応種によって上記の繰り返し構成であることも高性能の樹脂を得る観点からは、好ましいものとなる。
【0035】
ギヤポンプは、ギヤポンプ入口の圧力を検出し、その回転数を調整する制御システムを有することが安定的に樹脂を製造できるので好ましい。また、これにより、ギヤポンプ手前の押出機内の内圧を任意に設定することができる。
【0036】
(エレメント)
ニーディングディスク(図2)は、お互いのディスクが交互に交わるため高いせん断力と混練能力を有する。ニーディングディスクには、順ネジ型と逆ネジ型と中立型があり、逆ネジ型のニーディングディスクは溶融樹脂を押し戻す働きを有するため、ニーディングディスク中で最も高いせん断と混錬能力を有する。尚、せん断による局部発熱が生じ易いため、熱分解し易い樹脂系には多用しないのが一般的である。
【0037】
フライトなしスクリュー(図3)は、フライトが全く無くエレメントの短径に相当する外径からなり、突起がないため充満時の樹脂保有量は最も多く、滞留時間を得る際に用いられるエレメントである。尚、混練やせん断力を生む突起がないため混練能力もせん断力も有していないため、前記ニーディングディスクとの組み合わせで用いるのが一般的である。
【0038】
切り欠きを有するスクリューエレメント(図4)は、スクリューのフライトに切り欠きを有した構造で、低いせん断力で高い混練能力を有し、高い充満率を実現できるエレメントである。切り欠きスクリューには、図4に示す順ネジ型と図5に示す逆ネジ型があり、逆ネジ型は、溶融樹脂を押し戻す働きを有するため切り欠きスクリュー中では高いせん断と混練能力を有する。尚、フライト部に切り欠きがあるため、切り欠きのないスクリューと較べれば、輸送能力も、押し戻す働きも小さい。従って、反応系内の昇圧目的には切り欠きのない逆ネジスクリュー(図7)を用いるのが一般的である。
【0039】
シールリング(図6)とは、押出機のバレル内径に近似した外形を有するエレメントで、バレル内を通過する樹脂の流路を狭まめるためのエレメントである。このエレメントを用いることで流量抵抗により上流側の系内の圧を高めることができる。尚、フライト部分は同心円状のリングのため混練能力はなく、シール目的で用いるのが一般的である。尚、切り欠きのないスクリューの逆ネジのような押し戻す働きがないため、昇圧能力は劣る。
【0040】
(サンプル)
押出機より吐出されたストランドを冷却浴槽に通した後、ペレタイザーでペレットとした。イミド化率の算出及び、粘度低下率の測定には、そのペレットを用いた。
【0041】
(粘度低下率)
サンプルを100℃のオーブンで6時間以上乾燥した後、キャピラリーレオメータ(東洋精機製)で粘度を経時的に測定した。測定条件は、バレル温度260℃、バレル半径0.4775cm、オリフィス半径0.05cm、長さ1.03cm、ピストン降下速度2.0mm/分とした。測定時間は100分間とし、その間の粘度変化を経時的に記録した。粘度低下率は、測定開始10分後の粘度を「粘度A」とし、測定開始100分後の粘度を「粘度B」し、下記式1にて求めた。
【0042】
【数1】

(イミド化率の算出)
ペレットのサンプル1gを塩化メチレン約5ccに溶解し、FT−IR測定装置(TravelIR)を用いて、室温にてIRを測定した。得られた赤外スペクトルより、エステルカルボニル基(ピークA)に帰属される吸収強度と、イミドカルボニル基(ピークB)に帰属される吸収強度の比より、下記式2にてイミド化率を求めた。
【0043】
【数2】

但し、各ピークの高さは、各々のベース線からの高さを用いる。
【0044】
(用途)
本発明を用いて好適に作成されるイミド樹脂の用途としては、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具、などに使用可能である。
【実施例】
【0045】
(装置)
押出機には、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル製)を2基用い、1基目は、押出機の長さと直径の比L/Dが90で、温調12ゾーン構成からなり、2基目は、L/Dが40で、温調4ゾーン構成からなるものを用いた。また、樹脂フィーダーには、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ製)を用いた。また、イミド化剤の添加ポンプには、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸製)を用いた。また、ギヤポンプには、高温、高圧用のギヤポンプ(川重製)を用いた。また、吐出されたストランドは、水槽で冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。
【0046】
(原料樹脂、イミド化剤)
樹脂は、MS−800(新日鉄化学製)を用い、イミド化剤には、モノメチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。
【0047】
(実施例の押出条件)
1基目の押出機は、樹脂の溶融と反応を目的とし、各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃とした。また、2基目の押出機は、副生成物の脱揮を目的とし、各バレル温度は、250℃、250℃、230℃、220℃とした。
【0048】
スクリュー回転数は共に150rpmとし、樹脂の供給量は30kg/hrとした。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100部に対し約20部とした。尚、1基目の押出機と2基目の押出機の間に設けたギヤポンプにより反応ゾーンの圧力を制御し、イミド化率を調整した。
【0049】
(実施例1)
ギヤポンプの制御によりイミド化率が54%になるように反応ゾーンの圧力を調整した。その際の吐出樹脂の温度は266℃であった。また、樹脂の粘度低下は2%以内であった。
【0050】
(実施例2)
ギヤポンプの制御によりイミド化率が76%になるように反応ゾーンの圧力を調整した。その際の吐出樹脂の温度は267℃であった。また、樹脂の粘度低下は2%以内であった。
【0051】
(比較例の押出条件)
1基目の押出機は、樹脂の溶融と反応を目的とし、各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃とした。また、2基目の押出機は、副生成物の脱揮を目的とし、各バレル温度は、250℃、250℃、230℃、220℃とした。
【0052】
スクリュー回転数は共に150rpmとし、樹脂の供給量は30kg/hrとした。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100部に対し約20部とした。尚、1基目の押出機と2基目の押出機の間にはギヤポンプは設けず、単管で接続した。また、反応ゾーンの圧力は、シールリングや切り欠きのない逆ネジスクリューを多用し、イミド化率を調整した。
【0053】
(比較例1)
反応ゾーンの圧力を高めるためにシールリングを多用したが、5MPaがもっともイミド化率が高く、イミド化率は40%、その際の吐出樹脂の温度は276℃であった。また、樹脂の粘度低下率は17%であった。
【0054】
尚、シールリングを更に増やすことで反応ゾーンの昇圧は出来たものの、シールリングの増加に伴うニーディングディスクの減少によりイミド化率は反対に悪化した。
【0055】
(比較例2)
逆ネジを多用して、イミド化率が54%になるようにエレメントを構成した。その際の吐出樹脂の温度は295℃と高く、樹脂の粘度低下は45%もあった。
【0056】
(比較例3)
逆ネジを更に増やして、イミド化率が76%になるようにエレメントを構成した。しかし、吐出樹脂の温度は315℃まで上昇し、吐出された樹脂からは著しい分解ガスが発生していた。また、発熱による粘度低下によりストランドを引き取る状態ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】押出機とギヤポンプの構成例
【図2】ニーディングディスク
【図3】フライトなしスクリュー
【図4】切り欠きを有するスクリューエレメント(順ネジ型)
【図5】切り欠きを有するスクリューエレメント(逆ネジ型)
【図6】切り欠きのない逆ネジスクリュー
【図7】シールリング
【符号の説明】
【0058】
1 1段目の押出機
2 ギヤポンプ
3 2段目の押出機
4 ベント口
5 反応液添加口
6 樹脂フィーダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸押出機内で連続的に反応させる反応押出方法であって、ギヤポンプを用いて反応ゾーンの圧力を高めることを特徴とする反応押出方法。
【請求項2】
前記押出機が少なくとも2基以上から構成されたタンデム式押出機であることを特徴とする請求項1に記載の反応押出方法。
【請求項3】
前記反応がイミド化反応であることを特徴とする請求項1に記載の反応押出方法。
【請求項4】
前記イミド化反応が、アクリル樹脂あるいは、アクリルとスチレンの共重合体をイミド化剤で処理する反応であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の反応押出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−126529(P2007−126529A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319144(P2005−319144)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】