説明

収尿器

【課題】 横長形状で不安定であるという袋状収尿器の問題点、および保管に場所を取る、尿の落下音がするという箱状収尿器の問題点を解決し、低床ベッドでの使用に好適な収尿器を提供する。
【解決手段】 上面11、下面および側面13で構成された容器本体1、上面11に設けられた通気フィルター16および導入口17、導入口17に設けられた逆止弁18、導入口17に接続される導入チューブ2、下面に設けられた排出口、および排出口に接続される排出チューブを備えてなる収尿器であって、容器本体1の上面11および下面は、容器本体1内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性を有する板状部材により構成され、容器本体1の側面13が柔軟なシートで構成されたことを特徴とする収尿器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から排出される尿を収容するための収尿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な収尿器は、内部に尿を収容しうる柔軟なシートで形成された袋状の容器本体と、細菌の上行を防ぐために尿を滴下しながら容器本体へと導尿させるためのドリップチャンバーと、容器本体の内部に収容された尿の逆流を防止するための逆止弁とを具備してなる。患者から排出される尿は導入チューブを通り、ドリップチャンバーおよび逆止弁を通過して容器本体内部へ流入する。容器本体は通常2,000〜2,500ml程度の尿を収容できるような大きさを有するが、容器本体内部に貯留された尿は、容器下部に接続された排出チューブを介して排出される。排出チューブは、尿を排出しないときはクランプ等で閉塞されている。患者の尿は重力により容器本体内部に収容されるため、収尿器は患者の体より下方に配置されて使用される。
【0003】
前述の袋状収尿器は、2枚の柔軟なシートの縁部を溶着して成形されるが、このような袋状容器は容量を確保するためには形状が大きくなるため、近年多用される低床ベッドで使用した場合には、底部が床面に接触してしまい、衛生上問題視されている。しかしながら、このような袋状容器は高さを低減するためには横幅を増加させなければならず、横長の形状にした場合、袋状容器の形状が荷重に耐えることができない。したがって、特許文献1に記載されるように、容器の型くずれを防ぐ工夫が必要であるが、このように別部品を用いると構造が複雑になるため、製造工程が増えて好ましくない。
【0004】
前記問題点を解決すべく、剛性を有する材料により箱状に形成された容器本体よりなる収尿器も開発されている(例えば、特許文献2参照)。剛性箱状容器よりなる収尿器は、低床ベッド用に横長の形状としても、容器が型くずれするおそれがなく、底部が床面に接触することがなく、さらに汚染および破損のおそれもない。また、床面上に戴置した状態で安定するため、容器本体内部の尿を排出する際等の操作性に優れる。さらに、導入口から液面までの距離が長いため、細菌の上行防止のためのドリップチャンバーを設ける必要もない。しかしながら、このような箱状容器は全体が剛性を有する材料により形成されているため、重く使いづらい。また尿を収尿する前であっても箱状であるために嵩高く、使用前等の保管には大きなスペースを必要とする。さらに袋状容器と比較して、導尿開始直後は導入口から液面までの距離が長いため、尿が落下する際に音を発し、患者に不快感を与える場合がある。尿の落下音を抑制するための機構が設けられた剛性箱状収尿器も提案されているが(例えば、特許文献3参照)、やはり部品点数が増え、製造工程が複雑になってしまう。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2579432号公報
【特許文献2】特開2003−235912号公報
【特許文献3】特開2006−14923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記したような、横長形状で不安定であるという袋状収尿器の問題点、および、容器自体が重い、保管に場所を取る、尿の落下音がするという箱状収尿器の問題点を解決し、低床ベッドでの使用に好適な収尿器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、収尿器の容器本体の上面および下面を、容器本体内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性を有する板状部材により構成し、側面を柔軟なシートで構成することにより、上記課題を解決した収尿器を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)上面、下面および側面で構成された容器本体、上面に設けられた通気フィルターおよび導入口、導入口に設けられた逆止弁、導入口に接続される導入チューブ、下面に設けられた排出口、および排出口に接続される排出チューブを備えてなる収尿器であって、容器本体の上面および下面は、容器本体内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性を有する板状部材により構成され、容器本体の側面が柔軟なシートで構成されたことを特徴とする収尿器、
(2)前記板状部材は、硬質材料から成形され、最も面積の大きい面の形状が正方形、長方形、円形、楕円形、または正方形あるいは長方形の角部が丸みを帯びたものである(1)記載の収尿器、
(3)前記板状部材は、周縁部が硬質材料で構成され、その他の部分が柔軟なシートで構成されたものである(1)記載の収尿器、
(4)前記収尿器は、使用前の状態では側面が折り畳まれてなる(1)〜(3)のいずれかに記載の収尿器、
(5)前記収尿器は、側面が折り畳まれた状態のまま使用を開始するものである(4)記載の収尿器、
(6)前記収尿器は、完全な箱状にならない程度に側面を伸ばして使用を開始するものである(4)記載の収尿器
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収尿器は、上面および下面を、容器本体内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性を有する板状部材により構成したことにより、低床ベッド用に横長形状としても変形せず、床面上に戴置した状態で安定するという硬質箱状容器の利点を生かし、かつ、側面を柔軟なシートで構成したことにより、硬質箱状容器の問題点を解消している。すなわち、本発明の収尿器は使用前の状態では側面が折り畳まれるため保管に大きなスペースを必要とせず、また容器本体内部に尿が収容されるにつれて側面が伸びて箱状になるため、使用開始直後の導入口と液面との距離が短く、尿の落下音が大きくなることもない。また、剛性を有する板状部材を上面と下面にのみ使用することにより、収尿器の軽量化が図れ、使用しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の好ましい実施態様を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1および図2は本発明の収尿器の使用状態を示す斜視図であり、図1は上方から見た斜視図、図2は下方から見た斜視図である。図3は、図1に示される収尿器の使用前の保管状態を示す斜視図である。また図4は、本発明の収尿器の使用状態を示す説明図である。
【0011】
図1および図2に示されるように、本発明の収尿器は、上面11、下面12および側面13で構成された容器本体1からなる。上面11および下面12は、容器本体1内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性を有する板状部材により構成される。具体的には、上面11および下面12は、全体が硬質材料から成形された板状部材であってもよいし、その周縁部のみが硬質材料で構成された板状部材であってもよい。
【0012】
前者の板状部材の例としては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂または硬質エチレンビニルアセテート等の硬質材料から射出成形などにより成形された板状部材である。板状部材の最も面積の大きい面、すなわち使用時に容器本体1の上側または下側に現れる面の形状は、正方形、長方形、円形、楕円形、または正方形あるいは長方形の角部が丸みを帯びたものであることが、操作性および収容量の確保の面で好ましい。
【0013】
後者の板状部材の例としては、周縁部が上記硬質材料で構成され、その周縁部の上から柔軟なシートを覆うように張り、シートの縁部を周縁部に固定することで、中央部が柔軟なシートのみで構成された板状部材である。柔軟なシートの構成材料は、後述する側面13を構成する柔軟なシートと同様のものが用いられる。前記周縁部としては、断面が円形または矩形の棒状体の端部を接続して全体形状をドーナツ状としたものや、板状に形成された部材の中央部をくり抜いたものなどがあげられる。また周縁部は、必ずしも端部が接続された切れ目のないドーナツ状である必要はなく、一部が欠損した周縁部または複数個の周縁部であっても、柔軟なシートの縁部に固定することにより、容器本体1内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性が付与された板状部材を構成できるものであればよい。前記板状部材は、必要最小限の剛性を有している限り、硬質材料で形成される部分が少ないほど収尿器自体が軽量となり扱いやすい。
【0014】
前記容器本体1の側面13を構成する柔軟なシートおよび前記周縁部に固定される柔軟なシートは、軟質ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ナイロン積層体またはエチレンビニルアセテート等の軟質材料からTダイ成形やインフレーション成形等により成形された厚み0.2〜0.4mm程度の柔軟なシートあるいは厚み2mm程度のゴムシート等から成形される。前記側面13は、一枚の柔軟なシートまたは複数枚の柔軟なシートを筒状に熱溶着、溶剤接着または接着剤による接着によって形成される。筒状に形成されたシートの両端部は、それぞれ前記上面11および下面12を構成する板状部材の側面に熱溶着、溶剤接着または接着剤による接着によって固定され、内部空間を有する容器本体1が形成される。
【0015】
前記側面13を構成する柔軟なシートには、容器本体1内部に収容される尿の量を確認しうるよう、目盛り14が付与されることが好ましい。また側面13は、前記目盛り14により尿の量を確認しうる範囲で、極力視認性を悪くした半透明なシートであることが、使用者の精神的苦痛を和らげることができる点で好ましい。あるいは、側面13は全体を不透明なシートで構成し、目盛り14が付与される部分の近傍に尿の量を確認しうる半透明なシートで形成された窓部15を設けてもよい。このような窓部15は側面13を構成する不透明なシートに窓部15を設けるための孔を形成し、別の半透明なシートをこの孔に熱溶着、溶剤あるいは接着剤を用いて接着することによって接合して設けることができる。
【0016】
前記容器本体1を構成する上面11には、通気フィルター16が設けられる。通気フィルター16は、容器本体1内外の空気の移動を可能とするものであり、空気の通過を許容し、かつ液体、すなわち容器本体1内に収容される尿の通過を許容しない疎水性を有するものであることが好ましい。前記通気フィルター16は上面11に直接設けられてもよいし、図1に示されるように後述する導入口17の接続部21に設けられてもよい。
本発明の収尿器は、図3に示されるように、使用前の保管状態では容器本体1の嵩を低くするために柔軟なシートで構成される側面13が折り畳まれている。前記収尿器は、容器本体1内部に尿が収容されるにつれてその荷重で側面13が伸び、それに伴って前記通気フィルター16から空気が容器本体1内に流入して、最終的には図1に示されるように箱状になる。すなわち前記通気フィルター16は、容器本体1内外の空気の移動を可能とすることにより、図3から図1への収尿器の変形を可能としている。
【0017】
前記上面11には、さらに患者の尿を容器本体1内部に導入するための開口である導入口17が設けられる。前記導入口17には一端が患者に接続された導入チューブ2の他端が、熱溶着または溶剤あるいは接着剤により接着することにより接続される。前記導入口17には、導入チューブ2との接続を容易に行うために、図1に示されるようにドリップチャンバーのような接続部21が予め設けられていてもよい。前記導入口17には、容器本体1内部に収容された尿の逆流を防止しうる逆止弁18が設けられる。前記逆止弁18の構造としては、上端(尿流入口)および下端(尿流出口)を除く周縁部を互いにシールされた柔軟な2枚のシートからなる逆止弁、尿の流入および尿の逆流を防止するための自由に撓むことが可能な柔軟な板上の弁からなる逆止弁等があげられる。前記逆止弁18は熱溶着または溶剤あるいは接着剤により接着するか、あるいは上面11と接続部21との接続時に両部材間に挟み込むことにより導入口17に固定される。
【0018】
前記容器本体1を構成する下面12には、容器本体1内部に収容された尿を排出するための開口である排出口19が設けられる。前記排出口19には、排出チューブ3の一端が、熱溶着または溶剤あるいは接着剤により接着することにより接続される。前記排出口19には、排出チューブ3との接続を容易に行うために、L字管のような接続部31が予め設けられていてもよい。また、前記接続部31は、尿の排出をスムーズに行うため、排出端に向かって径が小さくなるテーパー形状を有していてもよい。前記排出チューブ3は、尿の排出を行わないときは、板状クランプ32等の閉塞部材により閉塞されている。
【0019】
本発明の収尿器は、図4に示されるように通常のベッドあるいは低床ベッドの台座等に吊り下げることにより、容器本体1に設けられる導入口17が患者の体よりも下方になるように配置される。したがって、前記収尿器には、図1に示されるベルトや紐のような吊り具4を上面11等に設けることができる。さらに、使用後の収尿器を床面上に戴置する際に、排出チューブ3が床面に接触しないよう、本発明の収尿器は、排出チューブ3を側面13の下端に設けたり、あるいは下面12の周縁に脚部を設けることもできる。
【0020】
本発明の収尿器は、使用の開始に際しては、図3に示される折り畳まれた状態のまま尿の導入を開始することができる。この場合、従来の袋状容器である収尿器に設けられているドリップチャンバーを導入口17に設けることにより、より確実に細菌の上行を防止することができる。前記収尿器は、容器本体1内部に尿が収容されるにつれて側面13が伸びて図1に示されるような箱状になる。したがって、使用開始直後は導入口17と収容される尿の液面との距離が短いため、尿の落下音がほとんど発生しない。
また、前記収尿器は、あらかじめ上面11と下面12とを引き離すように引っ張って側面13を伸ばした状態で尿の導入を開始してもよい。この場合、側面13を伸ばしすぎると容器本体1が箱状になってしまい、導入口17と収容される尿の液面との距離が長くなって尿の落下音が大きくなるため、完全な箱状にならない程度に側面13を伸ばして使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】使用状態における本発明の収尿器を上方から見た斜視図である。
【図2】使用状態における本発明の収尿器を下方から見た斜視図である。
【図3】図1に示される収尿器の使用前の保管状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の収尿器の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 容器本体
11 上面
12 下面
13 側面
14 目盛り
15 窓部
16 通気フィルター
17 導入口
18 逆止弁
19 排出口
2 導入チューブ
21 接続部
3 排出チューブ
31 接続部
32 板状クランプ
4 吊り具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、下面および側面で構成された容器本体、上面に設けられた通気フィルターおよび導入口、導入口に設けられた逆止弁、導入口に接続される導入チューブ、下面に設けられた排出口、および排出口に接続される排出チューブを備えてなる収尿器であって、容器本体の上面および下面は、容器本体内部に尿が収容されたときにかかる荷重により変形しない剛性を有する板状部材により構成され、容器本体の側面が柔軟なシートで構成されたことを特徴とする収尿器。
【請求項2】
前記板状部材は、硬質材料から成形され、最も面積の大きい面の形状が正方形、長方形、円形、楕円形、または正方形あるいは長方形の角部が丸みを帯びたものである請求項1記載の収尿器。
【請求項3】
前記板状部材は、周縁部が硬質材料で構成され、その他の部分が柔軟なシートで構成されたものである請求項1記載の収尿器。
【請求項4】
前記収尿器は、使用前の状態では側面が折り畳まれてなる請求項1〜3のいずれかに記載の収尿器。
【請求項5】
前記収尿器は、側面が折り畳まれた状態のまま使用を開始するものである請求項4記載の収尿器。
【請求項6】
前記収尿器は、完全な箱状にならない程度に側面を伸ばして使用を開始するものである請求項4記載の収尿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−93129(P2008−93129A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277258(P2006−277258)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】