説明

収穫物のマイコトキシン汚染の低下方法

本発明は、植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染を低下する方法であって、該方法が:植物繁殖体を1又は複数の化学殺真菌剤で処理すること、植物を産生するために該植物繁殖体を出芽又は育成すること、そして該植物から植物体を収穫すること、を含んで成る方法、を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染の低下方法に関係し、これは植物繁殖体の化学殺真菌剤処理を含む。
【0002】
多くの真菌は、経済的に重要な農作物の重大な有害生物である。更に、真菌の毒素による作物汚染は全世界を通じた主要な農業上の問題である。マイコトキシン、例えば、フモニシン、ゼアラレノン、及びトリコテセンは、毒性の真菌代謝産物であり、脊椎動物の健康問題を引き起こす能力により特徴付けられ、農作物中にしばしば発見される。
【0003】
トリコテセンは、真核生物タンパク質合成の強力な阻害剤として作用する、フザリウム(Fusarium)、トルコテシウム(Trichothecium)、及びミロセシウム(Myrothecium)属により産生されるセスキテルペン・エポキシド・マイコトキシンである。
【0004】
トリコテセン・マイコトキシンの例は、T−2トキシン、HT−2トキシン、イソトリコデルモール(isotrichodermol)、DAS、3−デアセチルキャロネクトリン、3,15−ジデアセチルキャロネクトリン、スキルペントリオール、ネオソラニオール;15−アセチルデオキシニバレノール、ニバレノール、4−アセチルニバレノール(フサレノン−X)、4,15−ジアセチルニバレノール、4,7,15−アセチルニバレノール、及びデオキシニバレノール(以後「DON」)及びこれらの多様なアセチル化誘導体を含む。
【0005】
フモニシンは、田畑における又は保管中のいくつかの農作物、主にコーンにおいて成長するフザリウム属により産生される毒である。該病害、コーンのフザリウムカーネルロット(Fusarium kernel rot)は、フモニシンの一般的な生産者である、フザリウム・ベルチシルリオイデス(Fusarium verticillioides)及びF. プロリフェラツム(proliferatum)により生じる。10以上のフモニシンの化学形態が単離されており、そのうちフモニシンB1は、汚染されたコーン中で最も蔓延しており、最も毒性であると考えられている。
【0006】
マイコトキシン、例えば、フモニシン及びトリコテセンを産生するフザリウム属は、F. アキュミナツム(acuminatum)、F. クルークウェレンス(crookwellense)、F. ベルチシルリオイデス(verticillioides)、 F. クルモルム(culmorum)、 F. アベナセウム(avenaceum) F. エクイセテイ(equiseti)、 F. モニリホルメ(moniliforme)、 F. グラミネアルム(graminearum)(ギベレラ・ゼアエ)(Gibberella zeae)、 F. ラテリチウム(lateritium)、 F. ポアエ(poae)、F. サムブシヌム(sambucinum)(G.プリカリス)(G. pulicaris)、 F. プロリフェラツム(proliferatum)、F. サブグルチナンス(subglutinans)及びF. スポロトリチオイデス(sporotrichioides)を含む。
【0007】
家畜及びヒトにおける急性及び慢性真菌中毒症はともに、トリコテセン・マイコトキシンを産生するフザリウム属が汚染した小麦、ライ麦、大麦、オート麦、稲及びトウモロコシの消費に関係している。低用量レベルにおける化学的に純粋なトリコテセンによる実験は、動物におけるカビ穀物中毒症、例えば、貧血及び免疫抑制、出血、嘔吐並びに拒食において観察された多くの特性を再現してきた。ヒト個体群由来の歴史的かつ疫学的データは、一定の病害の流行とトリコテセンを産生するフザリウム属に感染された穀物の関係を示す。特に、19世紀からロシアで発生している食中毒性無白血球症として知られる致死的な疾患の大流行は、トリコテセンT−2毒を産生するフザリウム属が汚染した越冬穀物の消費と関係している。日本における、赤かび病(又はred mold disease)と呼ばれる類似する病害の大流行は、トリコテセン、DONを産生するフザリウム属が感染した穀物に関係している。トリコテシはインド及び日本における近年のヒト疾患の大流行の原因である毒性穀物試料中に検出された。従って、マイコトキシン汚染を予防するための農業的な方法、及びその低下したレベルを有する作物の必要性が存在する。
【0008】
さらに、マイコトキシン産生フザリウム属は、破壊性の病原体であり、広い範囲の植物種を攻撃する。マイコトキシンの急性植物毒性及び植物組織中のこれらの発生はまた、これらのマイコトキシンが植物におけるフザリウムの発病において役割を果たすことを示唆する。これは、マイコトキシンが病害において役割を果たし、そしてこのため、植物に対するこれらの毒性を低下することが植物における病害を予防又は低下しうることを意味する。さらに、病害レベルの低下は、植物における、及び植物が穀物植物である場合の穀類におけるマイコトキシン汚染の低下のさらなる利益をもたらすことが可能である。
【0009】
従って、植物、及び特に収穫物のマイコトキシンによる汚染を減少させることが必要である。
【0010】
驚くべきことに、この度、植物繁殖体、特に植物の種子の化学殺真菌剤による処理が、植物及びその収穫物、例えば、穀物、例えば、小麦又はトウモロコシの穂におけるマイコトキシン汚染を低下できることが発見された。この効果は、処理の適用と穂の形成の時間的な分離のために予想外である:処理に使用される殺真菌剤は穂が形成されるときには長期間消失していると考えられる。
【0011】
従って、本発明は、植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染を低下する方法であって、該方法が:
a)植物繁殖体を1又は複数の化学殺真菌剤で処理すること、
b)植物を産生するために該植物繁殖体を出芽又は育成すること、そして
c)該植物から植物体を収穫すること、
を含んで成る方法、を供する。
【0012】
本発明の特別な利点は、病原性真菌類、例えば、1又は複数のフザリウム属を制御することにより、このような真菌から産生された植物及び/又は収穫した植物体の植物発生マイコトキシン汚染を早期に制御されることである。ある態様において、病原性真菌類、例えば、1又は複数のフザリウム属を制御することにより、植物繁殖体の感染、植物又は収穫された植物体におけるマイコトキシン汚染が低下される。
【0013】
ある観点において、本発明は、
(i)植物繁殖体を1又は複数の化学殺真菌剤で処理すること、
(ii)植物を産生するための上記植物繁殖体を発芽又は成長させること、
(iii)上記植物から植物体を収穫すること、そして
(iv)(a)処理した植物繁殖体から成長させた植物及び/又は(b)収穫した植物体のマイコトキシン汚染における減少を達成すること、
を含んで成る方法である。
【0014】
「植物繁殖体」の用語は、植物の全ての生殖部分、例えば、種子を示し、これは植物及び栄養植物体、例えば、挿し木及び塊茎(例えば、ジャガイモ)の増殖のために使用することができる。これらは、例えば、種子(厳密な意味における)、根、果実、塊茎、鱗茎、根茎、植物の部分に言及することができる。発芽後又は土壌から出芽後に移植される出芽した植物及び若い植物にもまた言及することができる。これらの若い植物はまた、植物繁殖体の浸漬による全体的又は部分的な処理により、移植前に保護することができる。好ましい態様において、植物繁殖体は種子である。
【0015】
本発明の処理方法において使用される殺真菌剤(単数又は複数)は、制限されることなく、フルジオキソニル、ジフェノコナゾール、チアベンダゾール、トリチコナゾール、イプコナゾール、プロチオコナゾール、プロクロラズ、カルベンダジム、チラム、オキスポコナゾール、トリフルミゾール、ペフラゾエート、メトコナゾール、フルオキサストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、ピコキシストロビン、グアザチン、テブコナゾール、テトラコナゾール、イマザリル、エポキシコナゾール、カルボキシン、及びフルキンコナゾールを含む。
【0016】
特定の態様において、該殺真菌剤は、フルジオキソニル、ジフェノコナゾール、チアベンダゾール、トリチコナゾール、イプコナゾール、プロチオコナゾール、プロクロラズ、カルベンダジム、チラム、オキサポコナゾール、トリフルミゾール、メトコナゾール、フロキサストロビン、アゾキシストロビン、トリフロキシストロビン、又はテブコナゾールであり、好ましくはフルジオキソニル又はチアベンダゾールである。
【0017】
本発明の方法は、いくつかの有用作物、例えば、制限されることなく、穀類(小麦、大麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ(又はコーン)、稲、ソルガム及び関連作物)、マメ科植物(マメ、レンズマメ、大豆、ピーナッツ及び関連作物)、油植物(アブラナ、マスタード、ヒマワリ及び関連植物)、キュウリ植物(マロー、キュウリ、メロン及び関連植物)、野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、ナス、タマネギ、コショウ、トマト、ジャガイモ、パプリカ及び関連植物)の植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染を低下するために適当である。本発明の方法を使用して処理された植物から得られた収穫された植物体は、処理されていない植物から収穫された植物体よりも低いマイコトキシン汚染を有すると考えられる。ある態様において、作物は、ヒト消費用産物を産生するもの、例えば、小穀物、トウモロコシ、オート麦、及びピーナッツであり;好ましくは該作物は、トウモロコシ及び小麦から選択される。
【0018】
本発明の特定の態様において、植物又は収穫された植物体は、未処理植物由来の収穫された植物体よりも、少なくとも10%少ないマイコトキシン、より好ましくは少なくとも20%少ない、より好ましくは少なくとも30%少ない、より好ましくは少なくとも40%少ない、より好ましくは少なくとも50%少ない、より好ましくは少なくとも60%少ない、より好ましくは少なくとも70%少ない、より好ましくは少なくとも80%少ない、マイコトキシン汚染を有する。
【0019】
本発明に規定される殺真菌剤による植物繁殖体処理は、ほかの殺真菌剤による処理と比較したマイコトキシンにおいて、好ましくは20〜60、より好ましくは30〜50%の低下を供する。
【0020】
本発明において、収穫された植物体は、制限されることなく、種子、果実、葉、花、茎等を含んでよい。本発明の特定の態様において、収穫される植物体は種子である。
【0021】
植物繁殖体の処理はまた、本発明の化学殺真菌剤との組み合わせにおいて、更なる活性化合物による処理を含むことができ、該処理は、一緒に及び/又は別々に適用することができる。これらのさらなる化合物は、ほかの殺虫活性成分、生物剤、肥料又は微量栄養素供与体、あるいは植物成長に影響するほかの調製物、例えば、接種材料であってよい。例えば、種子は、殺虫剤、殺真菌剤、殺細菌剤、殺線虫剤、軟体類駆除剤、鳥類忌避剤、成長調節剤又はこれらの混合物を含んで成るコーティング保護剤により慣習的に処理される。
【0022】
単一の殺虫活性成分は、有害生物制御の分野以上において活性を有してよく、例えば、殺有害生物剤(pesticide)は、殺真菌剤、殺虫剤及び殺線虫剤活性を有することができる。特に、アルディカーブ(aldicarb)は、殺虫剤、ダニ駆除剤及び殺線虫剤活性について知られ、一方でメタム(metam)は殺虫剤、除草剤、殺真菌剤及び殺線虫剤活性について知られ、そしてチアベンダゾール(thiabendazole)及びキャプタン(captan)は、殺線虫剤及び殺真菌剤活性を供することができる。
【0023】
特定の態様において、本発明の殺真菌剤は、1又は複数のさらなる活性化合物、例えば、殺虫剤、殺真菌剤、殺細菌剤、殺線虫剤、軟体類駆除剤、鳥類忌避剤、成長調節剤又はこれらの混合物との組み合わせにおいて使用される。トウモロコシのために特に有効な処理は、チアベンダゾール、フルジオキソニル、メフェノキサム及びアゾキシストロビンを含んで成る組み合わせであり、そして小麦のためには、フルジオキソニルを含んで成る組み合わせである。
【0024】
殺有害生物剤の適用(使用)の割合は、作物の種類、組み合わせにおける特定の活性成分、植物繁殖体の種類(適当な場合)に従い変更するが、組み合わせにおける活性成分は、所望の増強作用を供するための有効量であり、試験により決定することができる。
【0025】
種子処理のために、一般に適用割合は100kgの種子あたり0.5〜1000gの活性成分の間で変更できる。
【0026】
殺真菌剤の適用の平均割合は、一般に100kgの植物種子あたり0.5g〜500g、好ましくは1g〜100g、又は2.5g〜25gの活性成分である。ある態様において、100kgの植物種子あたりの活性成分のグラムに基づき、それぞれフルジオキソニルは2.5〜5の割合、そしてチアベンダゾールは10〜20の割合において適用することができる。
【0027】
結果的に、組み合わせは、(I)チアベンダゾール、(II)メフェノキサム、並びに(III)フルジオキソニル及びアゾキシストロビンを含んで成り、特にコーンにおける典型的な種子処理のための適用割合は、それぞれ100kgの種子において15〜25gのチアベンダゾール、1〜4gのメフェノキサム、1〜5gのフルジオキソニル及び0.5〜2gのアゾキシストロビンである。
【0028】
さらなる観点において、本発明は、植物及び又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染を低下するための1又は複数の化学殺真菌剤を含んで成る組成物の使用であって、上記組成物が植物繁殖体を処理するために使用され、そして上記植物繁殖体収穫される植物を産生するために発芽又は育成する使用、について供する。
【0029】
ほかの観点において、本発明は、植物及び又は収穫した植物体のマイコトキシン汚染を低下するための1又は複数の化学殺真菌剤による植物繁殖体処理の使用を供する。
【0030】
植物繁殖体、特に種子において、殺有害生物剤活性成分、これらの混合物及び組成物を適用又は処理するための方法は当業界において既知であり、そして該繁殖体のドレッシング、コーティング、ペレッティング、及び浸漬適用方法を含む。好ましい態様において、該組み合わせは、発芽が誘発されないような方法により、植物繁殖体に対して適用又は処理される;生じる種子の水分含量が極めて高いために、一般に種子浸漬は発芽を誘発する。従って植物繁殖体、例えば、種子を適用(処理)するため適当な方法の例は、種子ドレッシング種子コーティング又は種子ペレッティング等である。
【0031】
好ましくは、植物繁殖体は種子である。本発明の方法はいずれかの生理状態における種子に適用することができると考えられるが、種子は、処理工程において損害を生じないように十分に耐久的な状態であることが好ましい。典型的には、種子は、田畑から収穫された種子;植物から除去された種子;及び穂軸、柄、外皮、及び覆っている果肉、又はほかの非種子植物体のいずれかから分離された種子である。好ましくは、種子は処理が種子に対して生物学的損害を生じない程度に生物学的に安定である。該処理は、種子の収穫から種子の播種又は播種工程の間のいずれかの期間において、種子(適用に関する種子)に対して適用できるものと考えられる。種子はまた、処理の前後のいずれかにおいて、当業者により理解される技術に従い収穫することができる。
【0032】
繁殖体処理の間、種子に対する活性成分の分布及びその付着が所望される。処理は、植物繁殖体、例えば、種子において、活性成分を含有する製剤の薄い膜(ドレッシング)(元の大きさ及び/又は形状は中間状態(例えば、コーティング)として考えることができる場合)から厚い膜(例えば、異なる材料(例えば、担体、例えば、粘土;異なる製剤、例えば、ほかの活性成分;ポリマー;及び着色剤)の多くの層によるペレッティング)(種子の元の形状及び/又は大きさはもはや同じものとして考慮できない)の間で変更することができる。
【0033】
種子処理は、未播種種子にも及び、「未播種種子」の用語は、種子の収穫から植物の発芽及び成長の目的のために種子を地に蒔くまでの如何なる期間の種子も含むことを意味する。
【0034】
未播種種子に対する処理は、活性成分が土壌に対して適用される実施を含むことを意味しないが、植え付け過程における種子を標的とする如何なる適用実施も含む。
【0035】
好ましくは、処理は、組み合わせによって播種された種子を前処理できるように種子の播種前に行う。本発明に従う処理においては、特に、種子コーティング又は種子ペレッティングが好ましい。該処理の結果として、活性成分が種子上に付着し、これにより病原体及び/又は有害生物制御のために使用することができる。
【0036】
処理された種子は、ほかの活性成分で処理された種子のいずれかと同じ手段において、保管し、取り扱われ、播種され、そして耕作されることができる。
【0037】
殺有害生物剤(殺真菌剤を含む)は、未改良形態において使用することができるが、組成物の形態において通常使用される。これは、さらなる担体、界面活性剤又は製剤技術において慣習的に用いられるほかの適用促進アジュバントと一緒に適用することができる。適当な担体及びアジュバントは固形又は液体であってよく、そして製剤技術において慣習的に利用される物質、例えば、天然又は再生鉱物、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤又は肥料である。
【0038】
殺有害生物剤は、既知の方法において簡便に、例えば、乳剤、懸濁濃縮剤、コーティングペースト、直接噴霧可能な又は希釈可能な溶液、希釈エマルション、水和剤、吸い溶剤、流動性懸濁粉剤、顆粒剤に、あるいは、例えば、ポリマー物質中のカプセル化により処方される。組成物の特性によって、適用の方法、例えば、スプレー、霧化、粉塵化、分散、コーティング又は注入が意図される目的及び一般的な条件に従い選択される。
【0039】
製剤は、当業界に既知のいずれかの方法により、例えば、活性成分を増量剤、例えば、溶媒、固形担体及び適当な場合には界面活性化合物(界面活性剤)と一緒に均一に混合及び/又は研磨することにより調製される。
【0040】
適当な溶媒は、制限されることなく、芳香族炭化水素、好ましくは8〜12個の炭素原子を含有するフラクション、例えば、キシレン混合物又は置換されたナフタレン、フタル酸塩、例えば、フタル酸ジブチル又はフタル酸ジオクチル、脂肪族炭化水素、例えば、シクロヘキサン又はパラフィン、アルコール及びグリコール、及びこれらのエーテル及びエステル、例えば、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ケトン、例えば、シクロヘキサノン、強極性溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミド、並びに植物油又はエポキシド化植物油、例えば、エポキシド化ココナッツ油又は大豆油;あるいは水を含む。
【0041】
例えば、粉剤及び水和剤のために使用される固形担体は、通常、天然の無機賦形剤、例えば、方解石、滑石、カオリン、モンモリロナイト又はアタパルジャイトである。物性を改善するために、高分散型ケイ酸又は高分散型吸収性ポリマーを添加することも可能である。適当な顆粒化吸着担体は、多孔性タイプ、例えば、軽石、壊れたレンガ、セピオライト又はベントナイトであり、そして適当な非吸着担体は、例えば、方解石又は砂である。さらに、無機又は有機性の極めて多数の前顆粒化物質、特に白雲石又は細かく砕かれた植物残渣を使用することができる。
【0042】
処方される活性成分の性質に依存して、適当な界面活性化合物は、良好な乳化、分散及び湿潤特性を有する非イオン性、陽イオン性及び/又は陰イオン性界面活性剤である。「界面活性剤」の用語は、界面活性剤の混合物を含むものと理解される。製剤技術において慣習的に利用される界面活性剤は当業界に周知である。
【0043】
また、特に有利な適用促進アジュバントは、ケファリン及びレシチン系の天然又は合成リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール及びリゾレシチンである。
【0044】
殺真菌剤がさらなる成分、例えば、ほかの殺有害生物剤との組み合わせにおいて使用される場合、該成分は、所望されるならばさらなる担体、界面活性剤又は製剤技術において慣習的に利用されるほかの適用促進アジュバントと一緒に、同時に、あるいは短い間隔において連続的に、例えば、同日に、処理される植物繁殖体に適用することができる。好ましい態様において、該成分は同時に適用される。
【0045】
該成分が同時に適用される場合、これらは各成分を含有する組成物として適用することができ、ここで各成分は別々の起源から得ることができ、そして任意的に、ほかの殺有害生物剤と一緒に混合することができ(タンク・ミックス、レディー・トゥ・アプライとして知られる)、あるいは該成分は単一の混合物源(プレミックス、製剤化合物(又は製品として知られる))として得ることができ、そして任意的にほかの殺有害生物剤と一緒に混合することができる。
【0046】
通常、種子処理適用のためのタンク・ミックス製剤は、0.25〜80%、特には1〜75%の活性成分化合物、及び99.75〜20%、特には99〜25%の固形又は液体補助剤(例えば、溶媒、例えば、水を含む)を含んで成り、ここで該補助剤は、該タンク・ミックス製剤に基づき、0〜40%、特には0.5〜30%の量における界面活性剤であってよい。
【0047】
典型的には、種子処理適用のためのプレミックス製剤は、0.5〜99.9%、特には1〜95%の活性成分化合物、及び99.5〜0.1%、特には99〜5%の固形又は液体アジュバント(例えば、溶媒、例えば、水を含む)を含んで成り、ここで該補助剤は、該プレミックス製剤に基づき、0〜50%、特には0.5〜40%の量における界面活性剤であってよい。
【0048】
製品は、好ましくは濃縮物(例えば、プレミックス組成物(製剤)として処方される一方、エンドユーザーは、通常希釈製剤(例えば、タンク・ミックス組成物)を利用すると考えられる。
【0049】
好ましい種子処理プレミックス製剤は、水性懸濁濃縮物である。該製剤はまた、慣習的な処理技術及び機械、例えば、流動層技術、ローラーミル法、回転種子トリーター、及びドラムコーターを使用して種子に適用することができる。ほかの方法、例えば、噴流層もまた有用である。種子はコーティングの前にプレセイズ(presize)される。コーティング後、種子は典型的には乾燥させられ、その後サイジングのためにサイジング機に移される。このような手順は当業界で知られている。
【0050】
また、マイコトキシンを制御するための慣習的な技術、例えば、殺真菌剤の葉面散布、及び生物剤の使用は、本発明との組み合わせにおいて使用することができる。
【0051】
本発明の各観点及び態様において、「本質的に〜から成る(consisting essentially)」及びその語尾変化は、「含んで成る(comprising)」及びその語尾変化の好ましい態様であり、そして「〜から成る(consisting of)」及びその語尾変化は「本質的に〜から成る」(consisting essentially of)及びその語尾変化の好ましい態様である。
【0052】
以下の実施例は例示するために与えられ、本発明を制限するためのものではない。
【実施例】
【0053】
冬小麦種子を、10胞子/mLにおけるF.グラミネアルム(graminearum)のGFP遺伝子改変株の大型分生胞子(macroconidia)懸濁液中に浸す。
【0054】
播種した種子の試料を100kgの種子あたり5gの活性成分の割合においてフルジオキソニルで処理する(ロットBとして示す)。
【0055】
未処理の播種した種子(ロットA)及びフルジオキソニル処理した播種した種子(ロットB)を完全に成熟する(穂が出る)までポット中で成長させる。
【0056】
フザリウム(Fusarium)属を特異的に検出するために、ポリメーラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、植物発達の異なる段階におけるフザリウム(Fusarium)の検出を行う。
【0057】
初期分げつから植物の完全な成熟まで、フザリウムの存在をPCRにより検出するために茎部分を切断した。
【0058】
植物の完全な成熟において穀物を収穫し、そして未処理又はフルジオキソニル処理種子におけるDONレベルを定量した。該結果は表1及び2に概要される。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染を低下する方法であって、該方法が:
a)植物繁殖体を1又は複数の化学殺真菌剤で処理すること、
b)植物を産生するために該植物繁殖体を出芽又は育成すること、そして
c)該植物から植物体を収穫すること、
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記マイコトキシン汚染が、真菌、例えば、1又は複数のフザリウム属(Fusarium species)の植物繁殖体の感染により生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイコトキシンが1又は複数のフモニシン及びトリコテセンである、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記マイコトキシンがデオキシニバレノール及び/又はゼアラレノンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記殺真菌剤が、フルジオキソニル、ジフェノコナゾール、チアベンダゾール、イプコナゾール、プロチオコナゾール、トリチコナゾール、プロクロラズ、カルベンダジム、チラム、オキスポコナゾール、トリフルミゾール、ペフラゾエート、メトコナゾール、フルオキサストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、ピコキシストロビン、グアザチン、テブコナゾール、テトラコナゾール、イマザリル、エポキシコナゾール、カルボキシン、及びフルキンコナゾールから成る群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記殺真菌剤が、フルジオキソニル、ジフェノコナゾール、チアベンダゾール、イプコナゾール、プロチオコナゾール、トリチコナゾール、プロクロラズ、カルベンダジム、チラム、オキサポコナゾール、トリフルミゾール、メトコナゾール、フロキサストロビン、アゾキシストロビン、トリフロキシストロビン、又はテブコナゾールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記植物繁殖体が種子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記種子が穀物種子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記穀物種子が、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ、稲、又はソルガムの種子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記収穫された植物体が種子である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記植物繁殖体が、殺虫剤、殺真菌剤、殺細菌剤、殺線虫剤、軟体類駆除剤、鳥類忌避剤、成長調節剤、生物剤、肥料、微量栄養素供与体もしくは植物成長に影響するほかの調製物、例えば、接種材料、又はこれらの混合物でさらに処理される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシン汚染を低下するための1又は複数の化学殺真菌剤を含んで成る組成物の使用であって、該組成物が植物繁殖体を処理するために使用され、そして植物体が収穫される植物を産生するために該植物繁殖体が発芽又は育成される、使用。
【請求項13】
植物及び/又は収穫された植物体のマイコトキシンを低下するための1又は複数の化学殺真菌剤による植物繁殖体処理の使用。

【公表番号】特表2008−544967(P2008−544967A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518717(P2008−518717)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006260
【国際公開番号】WO2007/003320
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】