説明

収穫物の成熟を遅延させる方法

【課題】収穫物上に残存する農薬を低減し、このような収穫物に対して用いられる現存する物質の性能を増大させることを目的とする。
【解決手段】亜リン酸及び/又はその塩を植物に適用することによるか、又はジベレリン酸及び/又はその塩と亜リン酸塩及び/又はその塩の混合物を植物に適用することにより、果実、野菜、観賞植物又は非食用収穫物の成熟、着色及び/又は老化を遅延させる方法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実、野菜又は非食用収穫物の採集を遅延させることに関する。特に、本発明は、ジベレリン酸及び/又はその塩と亜リン酸及び/又はその塩とを含有する適用(applications)を用いて、採集及び/又は成熟を遅延させ、並びに/或いは果実、野菜又は非食用収穫物の貯蔵寿命を延長させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の収穫物の市場性を最大限にするために、収穫物の採集期間を最適化して調節しようと試みることが、果実、野菜及び非食用収穫物においてよく知られたプラクティスである。
【0003】
ジベレリン酸は、産物の成熟のプロセスを遅延させることが、文献において公知である。しかし、産物に適用されるジベレリン酸及び/又はその塩のスプレーは、噴霧される特定の産物が適切に被覆されることを必要とし、ジベレリン酸は、適切な取り込みを確実にする、産物に対する曝露期間を有する。従来、柑橘類のような果実に、採集を遅延させるためにジベレリン酸を噴霧できる(ときに現場(in situ)で、すなわち採集前に)が、取り込み及び効率的な製品有効性の問題を経験している場合がある。
【0004】
植物に適用されたときに亜リン酸及び/又はその塩は、植物を代謝的に刺激し、ある植物病原体に対して防御を提供することが公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農薬に課される規制及び環境の圧力が増大しているので、収穫物上に残存する農薬を低減し、このような収穫物に対して用いられる現存する物質の性能を増大させることに対する要望が増加している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、果実、野菜及び非食用収穫物の生理的な腐敗及び/又は損傷を低減するために、ジベレリン酸及びその塩の収穫物成熟遅延属性を改善するための新規な方法を提供する。本発明の実施形態は、ジベレリン酸及び/又はその塩と亜リン酸及び/又はその塩との混合物を含有する果実、野菜又は非食用収穫物に適用される物質を含む。他の実施形態は、限定されないが、カリウム、ナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムの亜リン酸塩(ホスファイト)を含む、亜リン酸及び/又はその塩の混合物を含む。
【0007】
ジベレリン酸(及び/又はその塩)が、植物組織の成熟及び/又は老化を遅延させることに対して効果を有することが知られている。本発明の新規な組成物の多くが、ジベレリン酸(及び/又はその塩)と亜リン酸(及び/又はその塩)とを、ジベレリン酸/塩の効果がより著しくなるような独特の組成で組み合わせている。亜リン酸/塩は、これらの組成で、ジベレリン酸/塩と独特の相乗効果を提供する。これらの組成での亜リン酸/塩とジベレリン酸/塩の独特の組み合わせは、植物組織の成熟、着色及び老化を遅延させることに対するジベレリン酸/塩の効果を増大させて、そのことにより以前には実現されなかった様式で、果実、野菜及び/又は非食用収穫物の貯蔵寿命を延長させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1及び2並びに表1で言及する種々の着色ネーブルオレンジの写真である。
【図2】実施例1及び2並びに表2で言及する種々の着色レモンの写真である。
【図3】30日後の実施例2からの代表的な果実の写真である。
【図4】実施例3からの代表的な野外(field)処置樹木の写真である。
【図5】「トマト色調標準USDA視覚資料TM−L−1("Tomato Color Standards USDA Visual Aid TM-L-1")」の複写であり、これは、ある色の分類の要件を示す12の色の写真のチャートである。
【図6】実施例4からの代表的な果実の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、亜リン酸、亜リン酸の塩及びその組み合わせの群から選択される亜リン酸供給源と、ジベレリン酸、ジベレリン酸の塩及びその組み合わせの群から選択されるジベレリン酸供給源とを含む混合物を、収穫物に適用することにより、収穫物の成熟を遅延させる方法に関する。
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、水溶液を含む。
本発明の方法のある実施形態において、ジベレリン酸供給源は、混合物中に、好ましくは約0.5ppm〜約10,000ppmの間、より好ましくは約0.5〜約100ppmの間、より好ましくは約100ppm〜約300ppmの間、特に好ましくは約100ppm、約16ppmの濃度範囲で存在する。
本発明の方法のある実施形態において、亜リン酸供給源は、混合物中に、約0.001%〜約10%w/wの間、より好ましくは約0.01%〜約3%(w/w)の間、さらにより好ましくは約2%〜約3%(w/w)の間、特に約300ppm〜約600ppmの間の濃度範囲で存在する。
【0010】
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、収穫物に、現場で採集前に噴霧される。
本発明の方法のある実施形態において、収穫物は、採集後に、上記の混合物中に、約30秒〜約4分の間、より好ましくは約2分〜約3分の間の時間浸漬される。
本発明の方法のある実施形態において、収穫物は、採集後に、上記の混合物でドレンチされる(drenched)か又は該混合物を噴霧される。
【0011】
本発明の方法のある実施形態において、混合物のpHは、約3〜約9の間、より好ましくは約6である。
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、防カビ剤、殺生物剤及びその組み合わせの群から選択される通常の採集後化学物質との組み合わせで適用される。
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、固体状態の安定濃縮処方生成物に脱水されるか、又は液体状態の安定濃縮処方生成物である。
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、採集後に、噴霧、ドレンチ、浸漬及びそれらの組み合わせの1つにより適用される。
【0012】
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、約45°F〜約150°Fの間、より好ましくは約45°F〜約130°Fの間、さらに好ましくは約100°F〜約120°Fの間、特に約50°F、約75°Fの温度で適用される。
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、周囲温度で適用される。
【0013】
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、約0℃〜約10℃の間の夜間温度と、約10℃〜約25℃の間の日中温度の野外で収穫物に噴霧される。
本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、約0℃〜約30℃の間、より好ましくは約10℃〜約30℃の間、さらに好ましくは約10℃〜約20℃の間、又は約30℃未満の周囲温度範囲の野外で収穫物に噴霧される。
【0014】
本発明は、
a. 約0.01%(w/w)〜約10%(w/w)の間の第1濃度範囲の亜リン酸、亜リン酸の塩及びその組み合わせの群の1つと、約1ppm〜約100ppm(w/w)の間の第2濃度範囲のジベレリン酸、ジベレリン酸の塩及びその組み合わせの群の1つとを含む組成物を調製し、
b. 前記組成物をワックスコーティングに組込み、
c. 前記コーティングを、果実、野菜、観賞植物、非食用収穫物及びその組み合わせの1つに適用する
工程を含む、収穫物の成熟を遅延させる方法も提供する。
【0015】
上記の本発明の方法のある実施形態において、第1濃度範囲が、約0.5%(w/w)〜約3%(w/w)の間であり、第2濃度範囲が約1ppm〜約5ppmの間であることが好ましい。
【0016】
本発明は、採集された収穫物に、アンモニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つの亜リン酸の塩を含む混合物を適用する工程を含む、採集された収穫物の成熟を遅延させる方法も提供する。
【0017】
上記の本発明の方法のある実施形態において、上記の少なくとも1つの塩は、混合物中に、約0.001%〜約10%w/wの間、より好ましくは約2%(w/w)〜約3%(w/w)の間、さらに好ましくは約300ppm〜約600ppmの間の濃度範囲で存在する。
上記の本発明の方法のある実施形態において、上記の少なくとも1つの塩は、混合物中に、約300ppm〜約600ppmの間の亜リン酸の濃度範囲に等しい量で存在する。
上記の本発明の方法のある実施形態において、上記の混合物は、噴霧、ドレンチ、浸漬及びそれらの組み合わせの1つにより適用される。
【0018】
本発明は、採集前の収穫物に、現場で、アンモニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つの亜リン酸の塩を含む混合物を適用する工程を含む、採集前の収穫物の成熟を遅延させる方法も提供する。
【0019】
上記の本発明の方法のある実施形態において、上記の少なくとも1つの塩は、混合物中に、約0.001%〜約10%w/wの間、より好ましくは約2%(w/w)〜約3%(w/w)の間、さらに好ましくは約300ppm〜約600ppmの間の濃度範囲で存在する。
上記の本発明の方法のある実施形態において、上記の少なくとも1つの塩は、混合物中に、約300ppm〜約600ppmの間の亜リン酸の濃度範囲に等しい量で存在する。
さらに、本発明は、上記の亜リン酸供給源と、ジベレリン酸供給源とを含む、収穫物の成熟を遅延させるための組成物も提供する。該組成物は、亜リン酸供給源とジベレリン酸供給源とを上述したような濃度範囲で含むことが好ましい。
【実施例】
【0020】
本発明は、以下の限定しない実施例によりさらに説明される。それぞれの例示的な実験は亜リン酸カリウムを用いたが、限定することなくアンモニウム、ナトリウム及び/又はカルシウムの塩を含む亜リン酸のその他の塩、並びに亜リン酸自体も用いることができることが認識される。以下の実施例1及び2について、柑橘類果実の果皮の色の評価は、Maerz及びPaul、第1版(1930)による色の辞典(Dictionary of Color)に加えて、以下の色の等級づけチャートを用いて行った(ネーブルについて図1;レモンについて図2)。全ての実験は、およそpH6の溶液で行ったが、約3〜約9の間のpH範囲が許容できる。
【0021】
以下の表1は、図1の8つの色についての「色の辞典」とのおよその相互参照を示す。
【表1】

【0022】
以下の表2は、図2の8つの色についての「色の辞典」とのおよその相互参照を示す。
【表2】

【0023】
実施例1
5つの異なる処置(以下のA〜E)を行った。5つの処置のそれぞれについて4回の反復を行い、それぞれの反復は果実を6個(片)含んでいた。よって、それぞれの処置は、24個の果実片に対して行った。この実験で処置した果実は、緑色のレモンであった(色変化段階(color break stage)での段階5及び6の間(およそ5.5)の最初の色)。可能な浸漬温度は、およそ45°F(7℃)と150°F(66℃)の間であり、以下の試験で用いた50°F(10℃)が理想的な温度である。
【0024】
それぞれの処置は、次のとおりであった:
A. 果実を、未処置の水に浸漬した。
B. 果実を、ジベレリン酸水溶液(100ppm)に2分間浸漬した。
C. 果実を、2%(w/w)亜リン酸カリウム含有水溶液に2分間浸漬した。
D. 果実を、2%(w/w)亜リン酸カリウム及びジベレリン酸(100ppm)の混合物を含有する水溶液に2分間浸漬した。
E. 果実を、ジベレリン酸(100ppm)及び3%(w/w)亜リン酸カリウム溶液の混合物に2分間浸漬した。
【0025】
処置を行い、10分間放置して乾燥させた後に、全ての処置について、上記の図2及び「色の辞典」を用いて果皮の色を記録し、発色(color development)を評価して写真を撮影した。果実を、15℃の湿潤インキュベーター中におき、発色について毎週監視した。
【0026】
実施例2
5つの異なる処置(以下のA〜E)を行った。5つの処置のそれぞれについて4回の反復を行い、それぞれの反復は果実を6個(片)含んでいた。よって、それぞれの処置は、24個の果実片に対して行った。この実験で処置した果実は、色変化段階のオレンジであり、果実は主に緑色であり、オレンジ色の発色がいくらかあった(最初の色5.5)。可能な浸漬温度は、およそ45°F(7℃)と150°F(66℃)の間であり、以下の試験で用いた50°F(10℃)が理想的な温度である。
【0027】
それぞれの処置は、次のとおりであった:
A. 果実を、未処置の水に浸漬した。
B. 果実を、ジベレリン酸水溶液(100ppm)に2分間浸漬した。
C. 果実を、2%(w/w)亜リン酸カリウム含有水溶液に2分間浸漬した。
D. 果実を、2%(w/w)亜リン酸カリウム及びジベレリン酸(100ppm)の混合物を含有する水溶液に2分間浸漬した。
E. 果実を、ジベレリン酸(100ppm)及び3%(w/w)亜リン酸カリウム溶液の混合物に2分間浸漬した。
【0028】
処置を行い、10分間放置して乾燥させた後に、全ての処置について、上記の図1及び「色の辞典」を用いて果皮の色を記録し、発色を評価して写真を撮影した。果実を、15℃の湿潤インキュベーター中におき、発色について毎週監視した。
【0029】
以下の表3は、図1及び2のチャートを参照にした色を用いて、果実浸漬実施例1及び2の結果を示す。各列の同じ文字が後に続く処置は、P=0.05の蓋然性レベルでのStudent Neuman−Keuls検定に従って、p=0.05にて有意には異ならない。
【表3】

【0030】
図3は、30日後の実施例2からの代表的な果実を示す。上から下に、5つの列の果実は、5つの処置を表す:A(対照)、B(GA 100ppm)、C(亜リン酸塩)、D(亜リン酸塩2%+GA 100ppm)及びE(亜リン酸塩3%+GA 100ppm)。
以下の表4は、図3の5つの列の果実に対応する「色の辞典」からのおよその色を示す。
【0031】
【表4】

【0032】
実施例3
5つの異なる処置(以下のT1〜T5)を行った。5つの処置のそれぞれについて4回の反復を行い、それぞれの反復は、現場での1本のネーブルオレンジの樹木(品種Cara Cara)を含んでいた。よって、それぞれの処置は、4本の異なる樹木に対して行った。処置は全て、電動式高容量農業用噴霧器を用いて、5000L/ha(リットル/ヘクタール)、又はおよそ530ガロン/エーカーに等しい適用容量で行った。これは、樹木あたり12.5L(3.3gal)にほぼ等しい。樹木には、初期の色変化(10月下旬/11月上旬)の間に、0.01%(v/v)の湿潤剤を加えて噴霧した。
【0033】
処置は、次のとおりであった:
T1. 未処置の樹木=対照。
T2. ジベレリン酸を16ppm含有する水溶液。
T3. 600ppmで噴霧される亜リン酸カリウム(亜リン酸の等量で表す)を含有する水溶液。
T4. 300ppmで噴霧される亜リン酸カリウム(亜リン酸の等量で表す)とジベレリン酸16ppmのタンク水混合物。
T5. 600ppmで噴霧される亜リン酸カリウムとジベレリン酸16ppmのタンク水混合物。
【0034】
T2〜T5の全ての処置についての噴霧器タンクpHは、クエン酸で約5と約6の間のpHに調節し(ジベレリン酸の使用についての製造業者の使用説明に従って)、少量の非イオン湿潤剤をタンクに加えた(0.01%v/v)。適用のときに、野外の温度は約0〜10℃(夜間)[32〜50°F]及び約10〜25℃(日中)[50〜77°F]で変動した。樹木上の果実を、およそ30日後の12月のうちに、発色について評価した。以下の表5は、図1のチャートを参照にした色を用いて、主題の樹木の果実に対する野外試験実施例3の結果を示す。各列の同じ文字が後に続く処置は、P=0.05の蓋然性レベルでのStudent Neuman−Keuls検定に従って、p=0.05にて有意には異ならない。上記の温度範囲は、柑橘類の採集の前の秋季後期の間の中央カリフォルニアでの周囲の高い温度及び低い温度を反映する。
【0035】
春季及び夏季に採集される収穫物への適用について、周囲温度は、穏やかな条件では約20℃〜30℃(68〜86°F)の範囲であり得、約10℃(50°F)ほど低くから約37℃(99°F)ほど高い範囲であり得る。本発明の物質を、約30℃(86°F)よりかなり高い温度で適用することは推奨されず、好ましい温度範囲は、約10℃〜約30℃である。
【0036】
【表5】

【0037】
図4は、実施例3からの代表的な野外処置樹木を示す。
【0038】
実施例4
以下の実施例4について、トマト果皮の色の評価を、「色の辞典」に加えて、USDA色調等級付けチャート(図5)を用いて行った。
色調等級付けチャート(図5)は、「トマト色調標準USDA視覚資料TM−L−1」の複写であり、これは、ある色の分類の要件を示す12の色の写真を含むチャートからなる。公式なUSDAチャートは、本明細書に参照により組み込まれる。以下の表6は、USDAチャートの12の色についての「色の辞典」とのおよその相互参照を示す。
【0039】
【表6】

【0040】
実施例4では、5つの異なる処置(以下のA〜E)を行った。5つの処置のそれぞれについて4回の反復を行い、それぞれの反復は果実を6個(片)含んでいた。よって、それぞれの処置は、24個の果実片に対して行った。この実施例で処置した果実は、堅い緑色トマトであり、上記のチャートに従って、色の変化の開始にて3.5(最初の色11−C−22)であった。浸漬温度は、およそ75°F(24℃)であった。
【0041】
処置は、次のとおりであった:
A. 果実を、未処置の水に浸漬した。
B. 果実を、ジベレリン酸水溶液(100ppm)に2分間浸漬した。
C. 果実を、2%(w/w)亜リン酸カリウム含有水溶液に2分間浸漬した。
D. 果実を、2%(w/w)亜リン酸カリウム及びジベレリン酸(100ppm)の混合物を含有する水溶液に2分間浸漬した。
E. 果実を、ジベレリン酸(100ppm)及び3%(w/w)亜リン酸カリウム溶液の混合物に2分間浸漬した。
【0042】
処置を行い、10分間放置して乾燥させた後に、全ての処置について、「色の辞典」及びUSDAトマト色調標準チャート(本明細書において図5)を用いて果皮の色を記録し、発色を評価して写真を撮影した。果実を、30℃(86°F)の湿潤インキュベーター中におき、発色について毎週監視した。
この実験(実施例4)を2回繰り返した。
【0043】
以下の表7は、図5のチャートを参照にした色を用いて、主題のトマトに対する実施例4の結果を示す。各列の同じ文字が後に続く処置は、P=0.05の蓋然性レベルでのStudent Neuman−Keuls検定に従って、p=0.05にて有意には異ならない。
【表7】

【0044】
図6は、実施例4からの代表的な果実を表す。表8は、図6の3つの列の果実に対応する「色の辞典」からのおよその色を示す。
【表8】

【0045】
実施例5
5つの異なる処置(以下のA〜E)を行った。5つの処置のそれぞれについて4回の反復を行い、それぞれの反復は、10枚のブドウの葉を含んでいた。よって、それぞれの処置は、40枚の葉に対して行った。この実施例で処置した葉は、緑色であった(最初の色30−L−12)。浸漬温度は、およそ75°F(24℃)であった。
【0046】
処置は、次のとおりであった:
A. 葉を、未処置の水に浸漬した。
B. 葉を、ジベレリン酸水溶液(100ppm)に2分間浸漬した。
C. 葉を、2%(w/w)亜リン酸カリウム含有水溶液に2分間浸漬した。
D. 葉を、2%(w/w)亜リン酸カリウム及びジベレリン酸(100ppm)の混合物を含有する水溶液に2分間浸漬した。
E. 葉を、ジベレリン酸(100ppm)及び3%(w/w)亜リン酸カリウム溶液の混合物に2分間浸漬した。
【0047】
処置を行い、10分間放置して乾燥させた後に、全ての処置について、「色の辞典」を用いて記録し、発色について評価した。葉を、およそ25℃(77°F)の湿潤インキュベーター中におき、発色について毎日監視した。
この実験(実施例5)は、2回反復した。
【0048】
結果:
【表9】

【0049】
まとめ
上記の実験は、亜リン酸/塩(亜リン酸塩)単独、及びジベレリン酸/塩単独がそれぞれ、果実、野菜及び非食用収穫物のような植物産物の成熟及び熟成を阻害することを示す。しかし、亜リン酸及び/又はその塩とジベレリン酸及び/又はその塩の組み合わせは、成熟の非常に効果的な阻害及び発色の遅延を提供する。本発明の実施形態における亜リン酸/塩とジベレリン酸/塩の独特の組み合わせは、植物組織の成熟及び老化の遅延に対するジベレリン酸/塩の効果を増加し、そのことにより、以前に実現されていなかった様式で、果実、野菜及び/又は非食用収穫物の貯蔵寿命を延長させる。好ましいpH範囲は、およそ4.5〜6の間である。成熟遅延効果は、より高い温度でより顕著である。
【0050】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で言及される用語「収穫物」は、商業的な目的で用いられるであろう植物の任意の採集可能な部分を含むと広く解釈され、限定することなく、果実、野菜、葉、花の任意の部分(限定することなく、サフラン及びラベンダーのようなものを含む)、茎、根、新芽、種子、さや、堅果、球根など、又はその任意の部分を含むことが認識される。
【0051】
本発明の変形、入れ替え、組み合わせ及び改変を、本発明の範囲を逸脱することなく行うことができる。上記のような例示的な実施形態の1つ又は複数の特徴は、上記のその他の例示的な実施形態に関連して行うことができる。本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態又は実験により限定されるものではないが、上記の明細書に鑑みて読んだときに、添付の特許請求の範囲にのみ従うことも理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜リン酸、亜リン酸の塩及びその組み合わせの群から選択される亜リン酸供給源と、ジベレリン酸、ジベレリン酸の塩及びその組み合わせの群から選択されるジベレリン酸供給源とを含む混合物を、収穫物に適用することにより、収穫物の成熟を遅延させる方法。
【請求項2】
前記混合物が水溶液であり、前記ジベレリン酸供給源が、約0.5ppm〜約10,000ppmの間の濃度範囲で存在し、前記亜リン酸供給源が、約0.001%〜約10%w/wの間の濃度範囲で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジベレリン酸供給源の濃度範囲が約0.5〜約100ppmの間であり、前記亜リン酸供給源の濃度範囲が約0.01%〜約3%(w/w)の間である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジベレリン酸供給源の濃度範囲が約100ppm〜約300ppmの間であり、前記亜リン酸供給源の濃度範囲が約2%〜約3%(w/w)の間である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ジベレリン酸供給源の濃度範囲が約100ppmであり、前記亜リン酸供給源の濃度範囲が約2%〜約3%(w/w)の間である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ジベレリン酸供給源の濃度範囲が約16ppmであり、前記亜リン酸供給源の濃度範囲が約300ppm〜約600ppmの間である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記収穫物に、前記混合物が、現場で採集前に噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記収穫物が、採集後に、前記混合物中に、約30秒〜約4分の間の時間浸漬される請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記浸漬時間が、約2分〜約3分の間である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記収穫物が、採集後に、前記混合物でドレンチされるか又は前記混合物を噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物のpHが約3〜約9の間である請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物のpHが約6である請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が、防カビ剤、殺生物剤及びその組み合わせの群から選択される通常の採集後化学物質との組み合わせで適用される請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物が、固体状態の安定濃縮処方生成物に脱水される請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物が、液体状態の安定濃縮処方生成物である請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、採集後に、噴霧、ドレンチ、浸漬及びそれらの組み合わせの1つにより適用される請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、約45°F〜約150°Fの間の温度で適用される請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が、約45°F〜約130°Fの間の温度で適用される請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物が、約100°F〜約120°Fの間の温度で適用される請求項3に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物が、約50°Fの温度で適用される請求項3に記載の方法。
【請求項21】
前記混合物が、約75°Fの温度で適用される請求項3に記載の方法。
【請求項22】
前記混合物が、周囲温度で適用される請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物が、約0℃〜約10℃の間の夜間温度と、約10℃〜約25℃の間の日中温度の野外で収穫物に噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項24】
前記混合物が、約0℃〜約30℃の間の周囲温度範囲の野外で収穫物に噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が、約10℃〜約30℃の間の周囲温度範囲の野外で収穫物に噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、約10℃〜約20℃の間の周囲温度範囲の野外で収穫物に噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が、約30℃未満の周囲温度範囲の野外で収穫物に噴霧される請求項3に記載の方法。
【請求項28】
a. 約0.01%(w/w)〜約10%(w/w)の間の第1濃度範囲の亜リン酸、亜リン酸の塩及びその組み合わせの群の1つと、約1ppm〜約100ppm(w/w)の間の第2濃度範囲のジベレリン酸、ジベレリン酸の塩及びその組み合わせの群の1つとを含む組成物を調製し、
b. 前記組成物をワックスコーティングに組込み、
c. 前記コーティングを、果実、野菜、観賞植物、非食用収穫物及びその組み合わせの1つに適用する
工程を含む、収穫物の成熟を遅延させる方法。
【請求項29】
前記第1濃度範囲が、約0.5%(w/w)〜約3%(w/w)の間であり、前記第2濃度範囲が約1ppm〜約5ppmの間である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
採集された収穫物に、アンモニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つの亜リン酸の塩を含む混合物を適用する工程を含む、採集された収穫物の成熟を遅延させる方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約0.001%〜約10%w/wの間の濃度範囲で存在する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約2%(w/w)〜約3%(w/w)の間の濃度範囲で存在する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約300ppm〜約600ppmの間の濃度範囲で存在する請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約300ppm〜約600ppmの間の亜リン酸の濃度範囲に等しい量で存在する請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物が、噴霧、ドレンチ、浸漬及びそれらの組み合わせの1つにより適用される請求項30に記載の方法。
【請求項36】
採集前の収穫物に、現場で、アンモニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つの亜リン酸の塩を含む混合物を適用する工程を含む、採集前の収穫物の成熟を遅延させる方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約0.001%〜約10%w/wの間の濃度範囲で存在する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約2%(w/w)〜約3%(w/w)の間の濃度範囲で存在する請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約300ppm〜約600ppmの間の濃度範囲で存在する請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの塩が、前記混合物中に、約300ppm〜約600ppmの間の亜リン酸の濃度範囲に等しい量で存在する請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−222353(P2010−222353A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56207(P2010−56207)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(507387413)プラント プロテクタンツ,エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】