説明

収納具用ロック機構

【課題】収納具を閉鎖するときに、その閉鎖操作がし易い収納具用ロック機構を提供すること。
【解決手段】収納具用ロック機構23は、収納具10の開放状態において、ロック本体20を係合部18に対して係合し得る位置か、或いは係合不能な位置かを予め選択することができるようになっており、ロック本体20が係合し得る位置にあるときに、ロック本体20が係合部18に係合する係合位置と、ロック本体20が係合部18から退避する退避位置との間で、ロック本体20が揺動し得る揺動手段23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、什器に備えられた開閉自在の収納具に用いるロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の収納具用ロック機構は、キャビネット(什器)の引出し(収納具)に取り付けられており、引出しがキャビネットに押し込まれることで、引出しに揺動するロック爪を備えたレバー(ロックアーム)がキャビネット内に設けた係合部と当接し、さらに引出しが押し込まれることにより、ロック爪の後側面が係合部に沿って移動して、レバーがねじりコイルバネの張力に抗して下方に揺動する。そして、ロック爪が係合部を通過すると、レバーがねじりコイルバネの張力によって上方に揺動して水平なロック位置に復帰するものがある。このロック装置は、引出し閉鎖時にロック機構が隠蔽されるので、子供が誤ってロック機構を解除する虞がなくチャイルドロック機構として機能するもので、安全性に富んでいた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−8756号公報(第4頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロック機構にあっては、引出し(収納具)を閉鎖する度に、ロック爪が係合部と係合されるので、引出しを開放する度に、レバー(ロックアーム)を操作しなければならず、頻繁に開閉するときに手間が掛かり煩わしさがある。また、常に付勢力(抗力)が発生するねじりコイルバネを用いているため、レバーと係合部とが係合する際に、レバーが下方に揺動することで引出しの操作者に加わる抗力が増すようになり、強い力で引出しを押し込まなければならず、引出しの閉鎖操作がし難くなっているばかりか、引出しの開放操作のときには、レバーを強く下方に押し込まなければならず、ロック機構の解除操作がし難いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、通常はロック時に外部から隠蔽されるチャイルドロック機構として働き、頻繁に収納具を開閉して使用するときはロックされないように予め選択して開閉の度にロックを解除する煩わしさをなくし、かつ収納具を閉鎖するときに、その開閉操作がし易い収納具用ロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の収納具用ロック機構は、
什器に備えられた開閉自在の収納具に用いる収納具用ロック機構であって、
前記収納具用ロック機構は、前記収納具に取り付けたロック本体と、什器本体に設けられて前記ロック本体とロック係合可能な係合部と、で構成され、収納具閉鎖時には、前記ロック本体はすべて収納具内に収容され、収納具開放時には、前記ロック本体が前記係合部との係合を解除操作可能な位置まで収納具が部分的に開放可能であり、かつ前記収納具の開放状態において、ロック本体を係合部に対して係合し得る位置か、或いは係合不能な位置かを予め選択することができるようになっており、
前記ロック本体が前記係合し得る位置にあるときに、該ロック本体が前記係合部に係合する係合位置と、該ロック本体が前記係合部から退避する退避位置との間で、該ロック本体が揺動し得る揺動手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、収納具閉鎖時には、係合部との係合を解除できる操作部も含めてロック本体が収納具内に収容されるので、子供が不用意にロックを解除してしまう虞がなくなり、ロック解除時には、収納具を部分的に開放してロック本体を係合部から退避させるだけでよいので、ロック解除操作を容易に行うことができる。しかも収納具の開放状態において、ロック本体を係合不能な位置に予め選択しておけば、頻繁に収納具を開閉して使用するときも、ロックされることながないので開閉の度にロック解除をする煩わしさがない。また、ロック本体が係合し得る位置にあるときのみ、揺動手段が退避位置と係合位置との間で揺動させるようにしてあるので、収納具の開閉に応じてロック本体を適宜な位置に移動させることができる。更に、バネ等の付勢手段を用いずにロック本体を揺動のみで移動させるので、収納具の開閉操作をし易くすることができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の収納具用ロック機構は、請求項1に記載の収納具用ロック機構であって、
前記ロック本体には、前記係合不能な位置に前記ロック本体を維持する維持手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、維持手段によってロック本体が係合不能な位置に維持されるため、収納具の開閉時に、ロック本体が係合不能な位置から係合し得る位置まで揺動する虞がなくなり、ロック本体を係合不能な位置に設定したにもかかわらず、ロック本体が誤って係合部に係合してしまうことを防止できる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の収納具用ロック機構は、請求項2に記載の収納具用ロック機構であって、
前記ロック本体は、前記収納具に固定された基部と、前記収納具の開放状態において、前記係合し得る位置および前記係合不能な位置との間で前記基部に対して揺動自在に支持されて前記係合部と係合可能となっているロックアームと、で構成されるとともに、前記維持手段は、前記ロックアームに設けられた維持嵌合部と、前記基部に設けられて前記維持嵌合部と嵌合される被嵌合部と、で構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、嵌合されるようにロックアームの維持嵌合部と、基部の被嵌合部とを形成するだけで、係合不能な位置にロック本体を維持する維持手段を容易に構成できる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の収納具用ロック機構は、請求項1ないし3のいずれかに記載の収納具用ロック機構であって、
前記ロック本体は、前記収納具に固定された基部と、前記収納具の開放状態において、前記係合し得る位置および前記係合不能な位置との間で前記基部に対して揺動自在に支持されて前記係合部と係合可能となっているロックアームと、で構成されるとともに、前記揺動手段は、前記ロックアームに設けられた揺動嵌合部と、前記基部に設けられて前記揺動嵌合部と遊嵌される被嵌合部と、で構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、遊嵌されるようにロックアームの揺動嵌合部と、基部の被嵌合部とを形成するだけで、ロックアームを係合位置と退避位置との間で揺動させる揺動手段を容易に構成できる。特に、請求項3を引用した発明においては、維持手段を構成する基部の被嵌合部を揺動手段と兼用させることで、基部の加工部位を省略でき、ロック本体の製造を容易に行うことができる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の収納具用ロック機構は、請求項4に記載の収納具用ロック機構であって、
前記被嵌合部が、前記揺動嵌合部に対して弾性を有して遊嵌していることを特徴としている。
この特徴によれば、係合し得る位置と係合不能な位置とでロックアームを切り換える際に、被嵌合部の弾性の弾性力を調整しておくことで、ロックアームに加わる抗力を最小限度に構成でき、ロックアームを係合し得る位置か、或いは係合不能な位置かを選択する操作をし易くすることができる。
【0011】
本発明の請求項6に記載の収納具用ロック機構は、請求項1ないし5のいずれかに記載の収納具用ロック機構であって、
前記什器内には、前記係合し得る位置にあるロック本体を前記係合位置に向けて揺動させる案内板が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、ロック本体が係合し得る位置にあれば、ロック本体が係合位置まで案内板により案内され、ロック本体が係合部に対して確実に係合されるようになる。
【0012】
本発明の請求項7に記載の収納具用ロック機構は、請求項1ないし6のいずれかに記載の収納具用ロック機構であって、
前記収納具閉鎖時には、前記係合し得る位置にあるロック本体が、前記係合部に当接することで揺動され、該係合部を乗り越えることを特徴としている。
この特徴によれば、収納具閉鎖時にロック本体が係合部に当接されても、ロック本体が係合部を乗り越えて係合部から退避する退避位置まで揺動され、ロック本体が揺動手段により係合部に係合する係合位置まで戻るようになり、什器内の限られた空間内で収納具閉鎖をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る収納具用ロック機構を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例におけるキッチンキャビネットを示す斜視図であり、図2は、前板を開放したときのヒンジスペースとロック機構を示す一部拡大縦断側面図であり、図3(a)は、ロック機構使用時の前板が開放されている状態を示す一部拡大横断平面図であり、図3(b)は、ロック機構使用時の前板を閉鎖し始めた状態を示す一部拡大横断平面図であり、図4(a)は、ロック機構使用時の制御板の働きを示す一部拡大横断平面図であり、図4(b)は、ロック機構使用時の前板が閉鎖された状態を示す一部拡大横断平面図であり、図5は、ロック解除前のロック機構を示す一部拡大横断平面図であり、図6は、ロック本体の使用時の状態を示す横断平面図であり、図7は、ロックアームが揺動している状態を示す横断平面図であり、図8は、ロック本体の不使用時の状態を示す横断平面図である。以下、図2の紙面左方側をロック機構の正面側(前方側)とし、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5、図6、図7、図8の紙面下方側をロック機構の正面側(前方側)として説明する。
【0015】
図1の符号1は、本発明の収納具用ロック機構が適用された什器としてのキッチンキャビネットである。このキッチンキャビネット1について説明すると、キッチンキャビネット1の上部には、使用者が食器等を洗うのに使用するシンク部2が設けられており、シンク部2の隣には、キッチンキャビネット1上での作業スペース3が設けられている。
【0016】
また、キッチンキャビネットの下部には、包丁4を収納する包丁収納部5が設けられている。更に、包丁収納部5の下方には、キッチンキャビネット1内部の空間内に前後方向に移動自在に配置されて食器や食材を収納する引出し6が設けられている。これら包丁収納部5と引出し6は、キッチンキャビネット1の正面側で左右方向に連設されている。
【0017】
本実施例では、キッチンキャビネット1の右側とは、使用者がキッチンキャビネット1の正面に立って右側のことであり、キッチンキャビネット1の左側とは、使用者がキッチンキャビネット1の正面に立って左側のこととして以下に説明する。
【0018】
これら包丁収納部5と引出し6のうち、包丁収納部5について説明する。図1に示すように、キッチンキャビネット1の正面側には、その内方側が収納スペース9となっている収納凹部24が形成されている。この収納凹部24には、3つ(複数)の保持具8が左右方向に離間された状態で配置されている。
【0019】
これら保持具8間には、4個(複数)の包丁収納ホルダー7が着脱自在に保持されている。尚、本実施例では、1つの収納スペース9内にすべての4個(複数)の包丁収納ホルダー7が上下二段及び左右二列となって設けられている。
【0020】
包丁収納ホルダー7は、包丁収納ホルダー7の側部から突出する図示しない軸部によって保持具8に対して軸支される。また、全ての包丁収納ホルダー7は、包丁4をその柄が右向きとなるように保持している。
【0021】
図2に示すように、収納スペース9は、正面側をキッチンキャビネット1の化粧板である前板10によって隠蔽されるようになっている。これら収納スペース9における収納凹部7の左右位置には、前板10の裏面と連結される左右2つの蝶番12と、前板10の全開位置を規定する折曲自在アーム13が設けられている。使用者は、前板10の上部に設けられた把手11を把持して操作することで、前板10が収納凹部24に対して前後方向に回動して、収納スペース9を開閉できるようになっている。
【0022】
より詳しくは、使用者によって前板10が開閉されると、この前板10の開閉に応じて、収納スペース9内の保持具8に軸支されている包丁収納ホルダー7が前後に回動する。
【0023】
図1及び図2に示すように、収納凹部24内の左右位置には、蝶番12と折曲自在アーム13が設けられるとともに、正面方向に開口するヒンジスペース16,17が形成されている。特に、図3(a)に示すように、ヒンジスペース16内には、キッチンキャビネット1内部に設けられた側板14側から右方(内方)に突出して、前面側に傾斜されたテーパー面18aが形成された本実施例における係合部としてのロックピン18が設けられている。
【0024】
また、図3(a)に示すように、ヒンジスペース16内には、側板14と対向し、背面側に向かってヒンジスペース16が狭くなるように傾斜されたテーパー面19aを有する本実施例における案内板としての制御板19が設けられている。更に、前板10の裏面(背面)の左上端部には、ロックピン18と、前板10の閉鎖時にロックピン18と係合可能なロック本体20が設けられている(図4(b)参照)。これらロックピン18とロック本体20によって本発明のロック機構23(チャイルドロック機構)が構成されている。
【0025】
次に、ロック機構23について説明する。図6に示すように、ロック機構23のロック本体20は、前板10裏面(背面)に固定される基部21と、この基部21に対して揺動可能に基端部を枢支されたロックアーム22とで構成されている。このロック本体20が係合部18に対して係合し得る位置および係合不能な位置を予め選択できるようになっている。
【0026】
尚、本実施例では、図7に示すように、ロックアーム22の長手が略前後方向を向いた状態をロック本体20が係合し得る位置とし、図8に示すように、ロックアーム22の長手が左右方向を向いた状態をロック本体20が係合不能な位置としている。更に尚、図3(b)に示すように、ロックアーム22の先端が制御板19のテーパー面19aに当接可能な状態までロックアーム22の長手が略前後方向を向けば、ロック本体20が係合し得る位置となる。
【0027】
図6に示すように、ロックアーム22には、ロックピン18と係合可能な左方に開口した係合溝22aが形成されている。また、ロックアーム22は側面視で略円弧状に形成されており(図2参照)、前板10が開閉される際に、前板10が蝶番12を揺動軸として前後方向に揺動されても、その揺動動作に合わせてロックアーム22がロックピン18に係合できるようになっている。また、ロックアーム22の先端には、ロックピン18のテーパー面18aに当接する傾斜されたテーパー面22fが設けられている。
【0028】
更に、ロックアーム22の上部には、ロックアーム22とロックピン18が係合している際に、使用者が摘んで容易に係合を解除できるように、上方に突出した凸片状の操作部22bが設けられている(図2参照)。また、ロックアーム22の基端部には、本実施例における揺動嵌合部としての凹部22dと、本実施例における維持嵌合部としての凹部22eが形成されている。
【0029】
図6に示すように、基部21は前板10の裏面にネジによって基部21を螺着するための螺着孔21aが設けられている。また、基部21は2つの枢支部21b(図2参照)に設けられた枢支孔21dにロックアーム22の揺動軸22cを挿通させることによって、ロックアーム22を左右方向に揺動可能に枢支している。更に、2つの枢支部21b間には、ロックアーム22に向けて突出し、ロックアーム22の基端部に設けた凹部22d及び凹部22eに嵌合する本実施例における被嵌合部としての凸部21cが形成されている。
【0030】
基部21の凸部21cの周囲は一部を残して基部21本体から切り離されており、凸部21cが前後方向に弾性移動できるようになっている。そのため凸部21cはロックアーム22に向けて弾性力が付与されている。これら凹部22dまたは凹部22eは、凸部21cと適宜凹凸嵌合することによって、ロックアーム22をロックピン18と係合し得る位置および係合不能な位置とで選択することができるようになっている。
【0031】
具体的には、凹部22dと凸部21cが凹凸嵌合する事によって、図6に示すように、ロックアーム22は、その先端を背面方向に向ける。このとき凹部22dと凸部21cは遊嵌されており、図7に示すように、所定範囲でロックアーム22が左右方向に揺動される。また、ロックアーム22は、係合部18と係合される係合位置と、係合部18から退避できる退避位置との間で揺動可能となっている。
【0032】
尚、本実施例における係合位置とは、図6に示すように、ロックアーム22がロックピン18に係合される状態のときのロックアーム22の揺動角度を示している。更に尚、本実施例における退避位置とは、図7に示すように、ロックアーム22がロックピン18を乗越えられる状態のときのロックアーム22の揺動角度を示している。遊嵌される凹部22dと凸部21cとで本実施例における揺動手段が構成されている。
【0033】
図7に示すように、凸部21cが凹部22dまたは凹部22eと嵌合しているときには、ロックアーム22が左右に揺動されても、凸部21cと凹部22dまたは凹部22eとの嵌合が解かれないようなっている。そのためロックアーム22が、係合し得る位置または係合不能な位置の状態で維持される。しかしながら、使用者が操作部22bを操作したときなどの所定の力がロックアーム22に加わると、凸部21cの弾性変形によって凹部22dまたは凹部22eとの嵌合が解かれるようになっている。
【0034】
また、図8に示すように、凹部22dと凸部21cとが遊嵌状態のロックアーム22を揺動させてロックアーム22を係合不能な位置にすると、凹部22eと凸部21cが嵌合される。尚、係合不能な位置では、ロックアーム22の長手方向が前板10裏面と略平行になる。このとき、凹部22eと凸部21cは密嵌されており、ロック本体20は、係合部18との係合不能な位置に維持される。密嵌される凹部22eと凸部21cとで本実施例における維持手段が構成されている。
【0035】
ロックアーム22は、ロックピン18と係合し得る位置または係合不能な位置にあるときに、基部21に設けられた凸部21cと凹凸嵌合し、凸部21cからの弾性力により該位置からのロックアーム22の移動に抵抗を与える。尚、凹部22dは凹部22eに比べ若干左右に幅広に形成されており、凹凸嵌合時には、凸部21cは凹部22dと遊嵌するようになっているので、凹凸嵌合状態でのロックアーム22の係合し得る位置での揺動がしやすく、凹凸嵌合から外れようとするときには、所要の抵抗が掛かるようにして、ロックアーム22を係合不能な位置に維持するようになっている。
【0036】
図3(a)に示すように、前板10裏面に設けられたロック本体20は、包丁収納部5の開放状態において、ロック機構23が作動するように使用する際には、ロックアーム22の先端を背面方向に向けて、ロックアーム22をロックピン18と係合し得る位置に保持させる。そして、使用者が前板10の閉鎖を開始すると、ロックアーム22の先端に設けられたテーパー面22fが、ロックピン18のテーパー面18aに当接する。
【0037】
図3(a)及び図3(b)に示すように、前板10の閉鎖過程が進行すると、ロックアーム22は、テーパー面22fをロックピン18のテーパー面18aに沿って摺動させることで、右方に揺動される。そして、図7に示すように、ロックアーム22が右方に所定角度揺動されると、ロックアーム22はロックピン18との当接が解除された退避位置まで揺動されて、ロックアーム22はロックピン18を乗り越える。
【0038】
図4(a)に示すように、ロックアーム22が退避位置に位置した状態で更に前板10の閉鎖過程が進行すると、ロックアーム22の先端が制御板19のテーパー面19aと当接する。
【0039】
更に、使用者が前板10を閉鎖していくことで、ロックアーム22は制御板19のテーパー面19aに沿ってロックピン18との係合位置に向けて揺動される。そして、ロックアーム22の係合溝22a内にロックピン18が収容される位置関係となる(図4(b)参照)。
【0040】
また、図4(b)に示すように、制御板19のテーパー面19aは、側板14と平行に延びた平行面19bが連続して形成されており、この平行面19bによって前板10の全閉鎖時に、ロックアーム22のロック解除方向の揺動が規制されるようになっている。尚、前板10の閉鎖完了時には、ロック本体20は全て包丁収納部5内のヒンジスペース16内に収納され、外方から完全に隠蔽される。
【0041】
また、前板10の閉鎖過程において、図3(a)に示すように、ロックアーム22の先端に設けられたテーパー面22fがロックピン18のテーパー面18aに当接し、図7に示すように、ロックアーム22が退避位置まで揺動されてロックピン18を乗り越え、その後、制御板19のテーパー面19aにロックアーム22を接触させないようにしてもよい。この場合には、基部21の凸部21cが有する弾性によってロックアーム22がロックピン18と係合する係合位置まで揺動復帰して、ロックアーム22がロックピン18と係合することができる。
【0042】
また、前板10の閉鎖過程の初期から、図7に示すように、ロックアーム22を退避位置まで揺動させておき、ロックアーム22をロックピン18に当接させずに前板10を閉鎖するようにしてもよい。この場合には、図4(a)及び図4(b)に示すように、ロックアーム22を制御板19に接触させて、制御板19のテーパー面19aに沿ってロックアーム22を係合し得る位置に向けて揺動させるようにしてもよい。
【0043】
尚、ロックアーム22を係合不能な位置にすることで、前板10閉鎖時にロックアーム22の先端が制御板19のテーパー面19aに当接しなくなるので、前板10の閉鎖過程でロックアーム22がロックピン18に係合することがない。
【0044】
このように、制御板19のテーパー面19aにロックアーム22が接触するか否かにより、ロックアーム22がロックピン18と係合し得る位置か、あるいは係合不能な位置かが選択される。
【0045】
尚、図4(b)の前板10の閉鎖状態から図3(a)の前板10の開放状態とする際には、使用者はロックアーム22の上部に設けられた操作部22bを操作可能な位置まで前板10を部分的に開放する(図5参照)。そして、使用者は操作部22bを摘んで、ロックアーム22を揺動させ、ロックアーム22とロックピン18との係合状態を解除する。また、ロックアーム22とロックピン18の係合は、操作部22bを使用せずに使用者が直接ロックアーム22を指で押圧することで解除させてもよい。
【0046】
以上、本実施例におけるロック機構23では、前板10の開放状態において、ロック本体20をロックピン18に対して係合し得る位置か、或いは係合不能な位置かを予め選択することができることで、前板10閉鎖時には、ロックピン18との係合を解除できる操作部22bも含めてロック本体20が前板10内に収容されるので、子供が不用意にロックを解除してしまう虞がなくなり、ロック解除時には、操作部22bが操作可能な位置まで前板10が部分的に開放してロック本体20をロックピン18から退避させるだけでよいので、ロック解除操作を容易に行うことができる。しかも前板10の開放状態において、ロック本体20を係合不能な位置に予め選択しておけば、頻繁に前板10を開閉して使用するときも、ロックされることがないので開閉の度にロック解除をする煩わしさがない。
【0047】
また、ロック本体20が係合し得る位置にあるときに、ロック本体20がロックピン18に係合する係合位置と、ロック本体20がロックピン18から退避する退避位置との間で、ロック本体20を揺動させる揺動手段としてのロックアーム22の凹部22dと基部21凸部21cとが設けられていることで、ロック本体20が係合し得る位置にあるときのみ、揺動手段が退避位置と係合位置との間で揺動させるようにしてあるので、前板10の開閉に応じてロック本体20を適宜な位置に移動させることができる。更に、バネ等の付勢手段を用いずにロック本体20を揺動のみで移動させるので、前板10の開閉操作をし易くすることができる。
【0048】
また、ロックアーム22の凹部22eと基部21の凸部21cとで構成される維持手段によってロック本体20が係合不能な位置に維持されるため、前板10の開閉時に、ロック本体20が係合不能な位置から係合し得る位置まで揺動する虞がなくなり、ロック本体20を係合不能な位置に設定したにもかかわらず、ロック本体20が誤ってロックピン18に係合してしまうことを防止できる。
【0049】
また、揺動手段は、ロックアーム22に設けられた凹部22dと、基部21に設けられて凹部22dと遊嵌される凸部21cと、で構成されているので、遊嵌されるようにロックアーム22の凹部22dと、基部21の凸部21cとを形成するだけで、ロックアーム22を係合位置と退避位置との間で揺動させる揺動手段を容易に構成できる。
【0050】
また、嵌合されるようにロックアーム22の凹部22eと、基部21の凸部21cとを形成するだけで、係合不能な位置にロック本体20を維持する維持手段を容易に構成できるばかりか、揺動手段を構成する基部21の凸部21cを維持手段と兼用させることで、基部21の加工部位を省略でき、ロック本体20の製造を容易に行うことができる。
【0051】
また、係合し得る位置と係合不能な位置とでロックアーム22を切り換える際に、凸部21cの弾性の弾性力を調整しておくことで、ロックアーム22に加わる抗力を最小限度に構成でき、ロックアーム22を係合し得る位置か、或いは係合不能な位置かを選択する操作をし易くすることができる。
【0052】
また、係合し得る位置にあるロック本体20を係合位置に向けて揺動させる制御板19が設けられていることにより、ロック本体20が係合し得る位置にあれば、ロック本体20が係合位置まで制御板19により案内され、ロック本体20がロックピン18に対して確実に係合されるようになる。
【0053】
また、前板10の閉鎖時には、係合し得る位置にあるロック本体20が、ロックピン18に当接することで揺動され、ロックピン18を乗り越えることで、前板10閉鎖時にロック本体20がロックピン18に当接されても、ロック本体20がロックピン18を乗り越えてロックピン18から退避する退避位置まで揺動され、ロック本体20が揺動手段によりロックピン18に係合する係合位置まで戻るようになり、ヒンジスペース16内の限られた空間内でロック本体20を揺動させることができ、前板10の閉鎖をスムーズに行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない位置における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、ロック機構23は、包丁収納部5の正面を隠蔽する下方の縁辺を軸として揺動する前板10に適用されていたが、前後に摺動する引出し6や、上下方向を向く軸に軸支されて、右開きもしくは左開きに揺動する揺動扉が設けられている収納具等に適用してもよい。
【0056】
また、前記実施例では、基部21に設けられた凸部21cと、ロックアーム22に設けられた凹部22dとで揺動手段を構成するとともに、基部21に設けられた凸部21cと、ロックアーム22に設けられた凹部22eとで維持手段を構成しているが、基部21の凸部21c及びロックアーム22の凹部22d,凹部22eに相当する部位に、磁石やその他の接合手段を設けて、揺動手段及び維持手段を構成してもよい。
【0057】
また、前記実施例では、維持手段を基部21に設けられた凸部21cと、ロックアーム22に設けられた凹部22eとで構成したが、維持手段は前記実施例に限らず、例えばロックアーム22と前板10裏面に磁石やマジックテープ(登録商標)等を設け、係合不能な位置にロック本体20を維持できるようにしてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、ロック機構23を前板10と左方のヒンジスペース16との間に設けたが、ロック機構23を設ける位置は、前板10と右方のヒンジスペース17との間であってもよいし、前板10と左右両方のヒンジスペース16,17の2箇所の位置にロック機構23を設けるようにしてもよい。
【0059】
また、前記実施例では、ヒンジスペース16の側板14にロックピン18を固定するとともに、前板10に揺動自在に枢支されたロックアーム22に係合溝22aを設ける構成となっていたが、前板10に揺動自在に枢支されたロックアーム22にロックピン18を設けるとともに、係合溝22aをヒンジスペース16の側板14に形成して、前板10のロックアーム22が揺動されることで、側板14の係合溝22aにロックアーム22のロックピン18が係合される構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例におけるキッチンキャビネットを示す斜視図である。
【図2】前板を開放したときのヒンジスペースとロック機構を示す一部拡大縦断側面図である。
【図3】(a)は、ロック機構使用時の前板が開放されている状態を示す一部拡大横断平面図であり、(b)は、ロック機構使用時の前板を閉鎖し始めた状態を示す一部拡大横断平面図である。
【図4】(a)は、ロック機構使用時の制御板の働きを示す一部拡大横断平面図であり、(b)は、ロック機構使用時の前板が閉鎖された状態を示す一部拡大横断平面図である。
【図5】ロック解除前のロック機構を示す一部拡大横断平面図である。
【図6】ロック本体の使用時の状態を示す横断平面図である。
【図7】ロックアームが揺動している状態を示す横断平面図である。
【図8】ロック本体の不使用時の状態を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 キッチンキャビネット(什器)
10 前板(収納具)
18 ロックピン(係合部)
19 制御板(案内板)
20 ロック本体
21 基部
21c 凸部(被嵌合部)
22 ロックアーム
22d 凹部(揺動嵌合部)
22e 凹部(維持嵌合部)
23 ロック機構(収納具用ロック機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器に備えられた開閉自在の収納具に用いる収納具用ロック機構であって、
前記収納具用ロック機構は、前記収納具に取り付けたロック本体と、什器本体に設けられて前記ロック本体とロック係合可能な係合部と、で構成され、収納具閉鎖時には、前記ロック本体はすべて収納具内に収容され、収納具開放時には、前記ロック本体が前記係合部との係合を解除操作可能な位置まで収納具が部分的に開放可能であり、かつ前記収納具の開放状態において、ロック本体を係合部に対して係合し得る位置か、或いは係合不能な位置かを予め選択することができるようになっており、
前記ロック本体が前記係合し得る位置にあるときに、該ロック本体が前記係合部に係合する係合位置と、該ロック本体が前記係合部から退避する退避位置との間で、該ロック本体が揺動し得る揺動手段が設けられていることを特徴とする収納具用ロック機構。
【請求項2】
前記ロック本体には、前記係合不能な位置に前記ロック本体を維持する維持手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の収納具用ロック機構。
【請求項3】
前記ロック本体は、前記収納具に固定された基部と、前記収納具の開放状態において、前記係合し得る位置および前記係合不能な位置との間で前記基部に対して揺動自在に支持されて前記係合部と係合可能となっているロックアームと、で構成されるとともに、前記維持手段は、前記ロックアームに設けられた維持嵌合部と、前記基部に設けられて前記維持嵌合部と嵌合される被嵌合部と、で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の収納具用ロック機構。
【請求項4】
前記ロック本体は、前記収納具に固定された基部と、前記収納具の開放状態において、前記係合し得る位置および前記係合不能な位置との間で前記基部に対して揺動自在に支持されて前記係合部と係合可能となっているロックアームと、で構成されるとともに、前記揺動手段は、前記ロックアームに設けられた揺動嵌合部と、前記基部に設けられて前記揺動嵌合部と遊嵌される被嵌合部と、で構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の収納具用ロック機構。
【請求項5】
前記被嵌合部が、前記揺動嵌合部に対して弾性を有して遊嵌していることを特徴とする請求項4に記載の収納具用ロック機構。
【請求項6】
前記什器内には、前記係合し得る位置にあるロック本体を前記係合位置に向けて揺動させる案内板が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の収納具用ロック機構。
【請求項7】
前記収納具閉鎖時には、前記係合し得る位置にあるロック本体が、前記係合部に当接することで揺動され、該係合部を乗り越えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の収納具用ロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−50352(P2009−50352A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217986(P2007−217986)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】