説明

収納家具

【課題】簡単な構成で、左右勝手や使用者の要望に応じて左右方向の任意の位置に吹き抜け空間を形成することができる収納家具を提供する。
【解決手段】収納家具1は、主収納部2と、主収納部2の上方に位置する上収納部3とを備えている。上収納部3の前端を主収納部2の前端より後方に後退して位置させる。上収納部3前端の左右方向の任意の位置から前方突出部4を前方に向けて突出させると共に、該前方突出部4の上収納部3前端の左右方向における突出位置を変更自在とする。前方突出部4の側方に主収納部2の載置面まで連続する吹き抜け空間5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に収納部を設けた収納家具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収納家具本体に主引出しと、内引出しを設けた収納家具が知られている。主引出しは収納家具本体の前面に設けた収納用開口から出し入れ自在となっており、主引出しを後方に移動した状態で主引出しの前板で収納用開口を閉じるようになっている。内引出しは、主引出しの前板よりも後方において、主引出しの上部で且つ前板上端以下の高さに配置されて前後方向に移動自在となっている。上記構成の収納家具においては、主引出しを引出した状態で、主引出し、内引出しにそれぞれ個別に収納物を収納したり、収納した収納物を取り出したりする。
【0003】
ところが、主引出しに背が高い(上下寸法が大きい)収納物を収納する場合、内引出しが邪魔になって収納することができないという問題がある。
【0004】
そこで、内引出しの前端部の左右方向の一部を後方に後退させて後退部を形成し、内引出しを前方に最大移動させた状態で、後退部の前方(主引出しの前板と後退部との間)に下の主引出しの載置面(底板上面)まで連続する吹き抜け空間を形成したものが特許文献1により提案されている。
【0005】
この特許文献1においては、上記後退部の前方に形成される主引出しの載置面まで連続する吹き抜け空間を利用して、背が高い収納物、例えば、お玉杓子、しゃもじ、トング、菜箸などを収納するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−11396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示された従来例は、内引出しの前端部の左右方向の一部を後方に後退させて後退部を形成し、この後退部の前方を主引出しの載置面まで連続する吹き抜け空間とするものであるから、形成される吹き抜け空間は、主引出しの左右方向の一定の決まった位置となる。
【0008】
ところが、上記のように吹き抜け空間の位置が主引出しの左右方向の一定の決まった位置に定まっていると、収納家具の左右勝手の違いに対応できないという問題がある。
【0009】
つまり、吹き抜け空間の位置が主引出しの左右方向の一定の決まった位置に定まっていると、吹き抜け空間に背が高い収納物を収納するに当たって、使用者の主たる調理作業側からの収納物の出し入れ、取り扱いが不便であるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みて発明したものであり、簡単な構成で、左右勝手や使用者の要望に応じて左右方向の任意の位置に吹き抜け空間を形成することができる収納家具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の収納家具1は、主収納部2と、主収納部2の上方に位置する上収納部3とを備えている。本発明の特徴は、上収納部3の前端を主収納部2の前端より後方に後退して位置させ、上収納部3前端の左右方向の任意の位置から前方突出部4を前方に向けて突出させると共に、該前方突出部4の上収納部3前端の左右方向における突出位置を変更自在とし、前方突出部4の側方に主収納部2の載置面まで連続する吹き抜け空間5を形成することである。
【0012】
上記構成により、前方突出部4の上収納部3前端の左右方向における突出位置を選択することで、前方突出部4の側方に形成される主収納部2の載置面まで連続する吹き抜け空間5を、主収納部2の前部の左右方向の任意の位置に形成することができる。
【0013】
また、主収納部2、上収納部3の一方又は両方が前後方向に移動自在で、主収納部2に対する上収納部3の相対的な前方への最大移動状態で前方突出部4の前端が主収納部2の前端又は前端より後方に位置することが好ましい。
【0014】
このように、主収納部2、上収納部3の一方又は両方を前後方向に移動自在とすることで、主収納部2、上収納部3のそれぞれに収納物を個別に収納する作業が容易に行える。しかも、収納作業を容易にするために前後方向に移動自在としたにもかかわらず、主収納部2に対する上収納部3の相対的な前方への最大移動状態で前方突出部4の前端が主収納部2の前端又は前端より後方に位置するので、吹き抜け空間5を確実に確保でき、背が高い収納物の収納に支障がない。
【0015】
また、収納家具1の主体を構成する収納家具本体6の収納用開口7を開閉自在に覆う前板8を設け、前板8を開くことで主収納部2、上収納部3への収納物の出し入れを可能とすることが好ましい。
【0016】
このような構成とすることで、吹き抜け空間5の位置が左右方向において変わっても、前板8を閉じることで、主収納部2、上収納部3はもちろん吹き抜け空間5、及びこれらに収納した収納物を隠すことができる。また、前板8を開いて収納用開口7を開放することで、主収納部2、上収納部3、吹き抜け空間5各々への収納物の出し入れを行うことができる。
【0017】
また、収納家具1の主体を構成する収納家具本体6の収納用開口7から出し入れ自在な主引出し9と、該主引出し9の上部に配置され且つ主引出し9の前板8上端以下の高さに形成され且つ前板8よりも後方で前後方向に移動自在となった内引出し10とを備え、上記主引出し9により主収納部2を構成すると共に、上記内引出し10により上収納部3を構成することが好ましい。上記内引出し10の前端に、この内引出し10の前端の左右方向の長さよりも左右方向の長さが短い前方突出部4を取付け位置可変自在に取付け、内引出し10が最も主引出し9の前板8に近づいた状態で前方突出部4の側方に主引出し9の底板11の載置面まで連続する吹き抜け空間5を形成する。
【0018】
このような構成とすることで、主引出し9、主引出し9の上部の内引出し10にそれぞれ収納物を収納できるだけでなく、主引出し9の前部の左右方向の任意の位置に形成される吹き抜け空間5に上下長さの長い収納物を収納することができる。また、主引き出し9を引出した状態で、内引出し10を前後に移動させることで、主引出し9、内引出し10にそれぞれ収納した収納物の出し入れができる。そして、上記内引出し10が最も主引出し9の前板8に近づいた状態であっても、上記吹き抜け空間5に収納した上下長さの長い収納物の出し入れが簡単にできる。
【0019】
また、前方突出部4に収納機能が備わっていることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることで、収納容量を減じることなく、左右方向における吹き抜け空間5の位置を選択できる。また、前方突出部4は主収納部2の上部で且つ上収納部3の前方に突出しているので、最も取り出し易い位置にあって、頻繁に使用する小物類の収納に適している。しかもこの小物類を収納するのに適した前方突出部4の左右方向における突出位置を選択できるので、小物類の収納部としての使い勝手を向上できる。
【0021】
また、上収納部3が前後方向に移動自在であって、前方突出部4が上収納部3を前後に移動させるための把手12であることが好ましい。
【0022】
上記構成により、上収納部3の前端から把手12を突出することで、把手12の側方に吹き抜け空間5を形成することができる。しかも、把手12を手で掴んで上収納部3の前後移動操作ができ、上収納部3の前後移動操作が容易に行えて使い勝手がよい。
【0023】
また、上収納部3の前部に左右方向に沿って取付けレール部13を形成し、取付けレール部13に前方突出部4に設けた被取付け部14を左右方向に移動自在に係合すると共に、取付けレール部13の任意の位置に被取付け部14を固着手段15により固定することも好ましい。
【0024】
これにより、前方突出部4に設けた被取付け部14を取付けレール部13に係合して左右方向に移動し、固着手段15で固着することで、左右方向の任意の位置に強固に、且つ外観性に優れた形態で前方突出部4を固定できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記のように、前方突出部の上収納部前端の左右方向における突出位置を変更自在にするという簡単な構成で、主収納部の前部の左右方向の任意の位置に主収納部の載置面まで連続する吹き抜け空間を形成できる。これにより、収納家具の左右勝手や、吹き抜け空間の形成位置に対して使用者の要望に対応でき、収納物の出し入れ使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の収納家具の一実施形態の主引出し(主収納部)、内引出し(上収納部)を前方に移動した状態を示す斜視図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】同上の側面図である。
【図4】同上の前面断面図である。
【図5】同上の内引出し(上収納部)に前方突出部を取付ける例を示す断面図である。
【図6】同上の前方突出部の突出位置を変更した例を示す平面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の主引出し(主収納部)、内引出し(上収納部)を前方に移動した状態を示す斜視図である。
【図8】同上の平面図である。
【図9】同上の内引出し(上収納部)に前方突出部を取付ける例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0028】
本発明の収納家具1は、主収納部2と、主収納部2の上方に位置する上収納部3とを備えている。上収納部3前端が主収納部2前端より後方に後退しており、上収納部3前端の下方に主収納部2の載置面の前部が位置している。上収納部3前端の左右方向の任意の位置に前方突出部4を取付け位置可変自在に取付けており、上収納部3前端の左右方向のどこに前方突出部4を取付けたとしても、前方突出部4の一側方又は両側方に主収納部2の載置面まで連続する吹き抜け空間5が形成されるように構成してある。
【0029】
図1乃至図6には上記構成の本発明の収納家具1の一実施形態を示している。本実施形態においては、収納家具1の主体が、内部が格納用空間となり且つ前面に格納用空間に連通する収納用開口7を有するキャビネットよりなる引出し付き家具としての収納家具本体6で構成してある。
【0030】
収納家具本体6の内部の格納用空間には主収納部2である主引出し9と、上収納部3である内引出し10とを前後方向に移動自在に配置している。
【0031】
主引出し9は、前板8、底板11、側部構成部材16、後板(図示せず)よりなる上方が開口した箱状をしたもので、前板8の上部は図1、図3に示すように、側部構成部材16の上端、後板の上端よりも上方に突出している。
【0032】
この主引出し9は、主引出し用スライドレール17により収納家具本体6に対して前後方向に移動自在に取付けてある。
【0033】
主引出し用スライドレール17は、前後方向に長い固定レール17aと、固定レール17aに対して前後方向に出没自在となった前後方向に長い可動レール17bで構成しており、固定レール17aを収納家具本体6の側板6aに固定し、可動レール17bを主引出しの底板11の側端又は側部構成部材16に固定している(図4参照)。
【0034】
主引出し9は前方に移動することで収納用開口7から前方に引出すことができ、後方に移動することで収納家具本体6の内部の格納用空間内に完全に格納することができ、この格納状態で主引出し9の前板8で収納用開口7を覆って閉じるようになっている。
【0035】
左右の側部構成部材16の前部間には棒状又は板状をした仕切り体18が架設してあり、この仕切り体18には後述のように収納容器19を支持することができるようになっている。
【0036】
内引出し10は、図1、図2、図5に示すように、前板20、底板21、側板22、後板23よりなる上方が開口した底の浅い箱状をしている。
【0037】
この内引出し10は、図1、図3に示すように、主引出し9の上部に配置され且つ主引出し9の前板8上端以下の高さに形成してあり、内引出し用スライドレール24により収納家具本体6に対して前後方向に移動自在に取付けてある。
【0038】
ここで、上記のように内引出し10が主引出し9の前板8の上端以下の高さに形成しているので、内引出し10は主引出し9の前板8よりも後方で前後方向に移動自在となっている。
【0039】
内引出し用スライドレール24は、前後方向に長い固定レール24aと、固定レール24aに対して前後方向に出没自在となった前後方向に長い可動レール24bで構成しており、固定レール24aを収納家具本体6の側板6aに固定し、可動レール24bを内引出し10の底板21の側端又は側板22に固定している(図4参照)。
【0040】
内引出し10の前端である前板20の左右方向の任意の位置に、左右方向の長さが内引出し10前端の左右方向の長さよりも短い前方突出部4を物品載置収納部容器として、左右方向における取付け位置を可変自在に、且つ内引出し10に一体的に取付けている。
【0041】
上記のように、内引出し10前端の左右方向の任意の位置に前方突出部4を取付けることで、主引出し3の前板8の後方位置で前後方向に移動自在となった内引出し10は、前板8に対して最も近づくように移動させた状態で、内引出し10前端が主引出し9の前端よりも後方に後退して位置することになる。
【0042】
したがって、内引出し10前端の左右方向の任意の位置に取付けた前方突出部4の一方の側方又は両側方に主引出し9の載置面まで連続する吹き抜け空間5が形成される。ここで載置面とは主引出し9における収納物を載置する部分を指し、実施形態では底板11上面が載置面となっている
図1、図2、図3には内引出し10前端の右側(前面から見て右側)にずらして前方突出部4を取付けることで、前方突出部4の左側方に主引出し9の載置面まで連続する吹き抜け空間5を形成した例を示している。
【0043】
また、上記前方突出部4を図6のように内引出し10前端の左側(前面から見て左側)にずらして前方突出部4を取付けると、前方突出部4の右側方に主引出し9の載置面まで連続する吹き抜け空間5を形成することができる。
【0044】
この吹き抜け空間5には背が高い(上下寸法が大きい)収納物を収納することができる。図1乃至図4、図6の実施形態ではこの吹き抜け空間5に収納容器19を設置し、収納容器19にお玉杓子、しゃもじ、トング、菜箸等の背の高い収納物を差し込んで収納するようになっている。
【0045】
図1、図3の実施形態において、上記収納容器19は後端部上端に逆U字状のフック27を設け、仕切り体18に着脱自在に係止している。
【0046】
図5には前方突出部4を内引出し10前端の左右方向の任意の位置に取付ける一例が示してある。
【0047】
本例においては、内引出し10の前部に左右方向に沿って取付けレール部13を形成している。取付けレール部13は下面が開口となった断面コ字状をしており、該開口両縁部に開口縁片13cを突設している。図5の実施形態では取付けレール部13として,前板20上端部から前方に向けて突出する上取付けレール部13aと、底板21下面前端から下方に向けて突設する下取付けレール部13bとを設けている。また、下取付けレール部13b内にナット15aを配置して両開口縁片13c上に左右方向に移動自在に載置している。
【0048】
前方突出部4の後端に被取付け部14を設けている。図5の実施形態では被取付け部14として、前方突出部4の後端部上端から後方に突出した断面逆L字状をした上被取付け部14aと、後端部下端から後方に突出した断面L字状をした下被取付け部14bとを設けている。
【0049】
そして、断面逆L字状をした上被取付け部14aを上取付けレール部13aに左右方向に移動自在に引掛け係合すると共に、断面L字状をした下被取付け部14bを下取付けレール部13bの外側に左右方向に移動自在に重ね、下被取付け部14bの下横片に設けた孔14cに下方からねじ具15bを挿入し、該ねじ具15bを下取付けレール部13bの開口に挿通し、ナット15aに螺合することで、前方突出部4を内引出し10前端に左右方向移動自在に取付けている。
【0050】
ねじ具15bを緩めることで、前方突出部4を取付けレール部13に対して左右方向に移動自在とし、ねじ具15bを締め付けることで、前方突出部4を取付けレール部13の左右方向の任意の位置で固定できる。本例ではナット15a、ねじ具15bにより固着手段15を構成している。
【0051】
上記のような本発明の収納家具1は、主引出し9を前方に移動させることで収納物の出し入れを行う。ここで、主引出し9を前方に移動させ、内引出し10を前方に移動させない状態で、主引出し9内への収納物の出し入れをする。
【0052】
一方、図1、図2、図3、あるいは図6のように、主引出し9を前方に移動させ、内引出し10を前方に移動させることで、内引出し10内への収納物の出し入れをする。
【0053】
そして、本発明においては、内引出し10を前方に移動する又はしないにかかわらず、吹き抜け空間5が形成されるので、主引出し9を前方に移動させることで、吹き抜け空間5に収納している背が高い収納物を取り出したり、あるいは収納したりできる。
【0054】
しかも、本発明は、前述のように、前方突出部4を内引出し10前端の左右方向の任意の位置に取付け位置可変自在に取付けるので、前方突出部4の内引出し10前端の左右方向における取付け位置を選択することで、背が高い収納物を収納するための吹き抜け空間5を、収納家具1の左右勝手に対応したり、あるいは、使用者の使い勝手に応じて主引出し9の左右方向の任意の位置に形成することができて利便性が向上する。
【0055】
図1乃至図6に示す実施形態では前方突出部4に収納凹所29を設けているので、前方突出部4にも収納物を収納することができ、収納容量を減じることなく、左右方向における吹き抜け空間5の位置を選択できる。
【0056】
これにより使用者の、調理作業時の主たる立位置に対して利便性のよい側に、吹き抜け空間5あるいは上収納部3の前方突出部4を配置することができる。
【0057】
また、前方突出部4は主収納部2の上部で且つ上収納部3の前方に突出しているので、最も取り出し易い位置にある。したがって、前方突出部4の収納凹所29は頻繁に使用する小物類の収納に適している。
【0058】
図7乃至図9には前方突出部4の他の実施形態を示している。この実施形態においては、前方突出部4で把手12を構成した例であり、内引出し10前端の左右方向の任意の位置から突出させた前方突出部4である把手12を掴んで内引出し10を前後方向に移動することができ、内引出し10の前後方向の移動操作が容易に行える。
【0059】
本実施形態においては前方突出部4の後端部にコ字状嵌め込み部14dを突出して被取付け部14を構成している。このコ字状嵌め込み部14dを、内引出し10の前板20上端部から前方に向けて突出した取付けレール部13(上取付けレール部13a)に左右方向に移動自在に嵌め込み、コ字状嵌め込み部14dの上横片の先端から下方に垂下した係合片14eを取付けレール部13の背面に係合している。コ字状嵌め込み部14dの下横片に設けた孔14cに下方からねじ具15bを挿入し、該ねじ具15bを取付けレール部13の開口に挿通し、取付けレール部13内に移動自在に配置したナット15aに螺合することで、前方突出部4を内引出し10前端に左右方向移動自在に取付けている。
【0060】
この実施形態においてもねじ具15bを緩めて前方突出部4を取付けレール部13の左右方向の任意の位置に移動し、ねじ具15bを締め付けて前方突出部4を取付けレール部13の左右方向の任意の位置で固定する。
【0061】
そして、本例では前方突出部4で把手12を構成するため、左右方向の長さ(左右巾)は手で掴むことができる程度の長さでよく、図7、図8のように、前方突出部4を内引出し10前端の左端又は右端に片寄せることなく、中間に取付けると、前方突出部4の左右両側方にそれぞれ主引出し9の載置面まで連続する吹き抜け空間5を形成することができる。
【0062】
なお、図5で示した上収納部3の内引出し10にあっては、前端上部の上取付けレール部13aにおいて、前述の把手としての前方突出部4を、同様にねじ具15bとナット15aで締結固定することができる。また、図5に示す内引出し(本体)10は、把手12として、もしくは収納凹所20を備えた収納部としてのいずれかの前方突出部4が共に取付可能な形状であり、共用性の観点で好適である。
【0063】
図7、図8では左右両側に形成される吹き抜け空間5のうち左側の吹き抜け空間5は左右巾が短く、収納容器19としてお玉杓子、しゃもじ、トング、菜箸などの細長い収納物を収納する細長収納物用の収納容器19aを配置している。また、右側の吹き抜け空間5は左右巾が長く、まな板を立てて収納するためのまな板収納用の収納容器19bを配置している。
【0064】
ここで、内引出し10前端からの前方突出部4の突出位置を変えることで、右側の吹き抜け空間5の左右巾を長くしてまな板収納用の収納容器19bを配置し、左側の吹き抜け空間5の左右巾を短くして細長収納物用の収納容器19aを配置するという位置変更が容易にできる。
【0065】
なお、前述の各実施形態は、いずれも、主収納部2が主引出し9、上収納部3が内引出し10である例につき説明したが、必ずしもこれにのみ限定されるものではない。
【0066】
図示を省略しているが、キャビネットよりなる収納家具本体6内に配置した下段の棚、上段の棚がそれぞれ主収納部2、上収納部3であってもよい。主収納部2、上収納部3がそれぞれ棚の場合、主収納部2、上収納部3がいずれも固定棚であってもよいが、主収納部2、上収納部3のいずれか一方又は両方が前後方向に移動自在なスライド棚であると、収納物の出し入れが容易に行える。
【0067】
また、上記棚を配置したキャビネットよりなる収納家具本体6前面の収納用開口7を開閉自在に覆う前板8(いわゆる回動開閉扉)を設けてもよい。この実施形態における前板8は主収納部2、上収納部3を構成する各棚とは独立して開閉するもので、前板8を開いて収納用開口7を開放し、主収納部2、上収納部3、吹き抜け空間5各々への収納物の出し入れを行うことができる。また、前板8を閉じることで、主収納部2、上収納部3はもちろん吹き抜け空間5、及びこれらに収納した収納物を隠すことができる。
【0068】
更に、前述の実施形態では、上下2段の収納部の構成例を示したが、収納部が上下3段以上の多数段であっても本発明を適用できる。この場合、主収納部2の上方に上収納部3が2段以上設けられ、2段以上の上収納部3の前端にそれぞれ前方突出部4を左右方向における突出位置を変更自在に取付ける。この実施形態においては、2段以上の上収納部3前端から突出した各前方突出部4の側方位置に連続し且つ主収納部2の載置面に至る吹き抜け空間5を形成することができる。もちろん、本実施形態でも、2段以上の上収納部3前端に取付ける前方突出部4の左右方向の突出位置を変えることで、吹き抜け空間5の位置を選択できる。
【符号の説明】
【0069】
1 収納家具
2 主収納部
3 上収納部
4 前方突出部
5 吹き抜け空間
6 収納家具本体
7 収納用開口
8 前板
9 主引出し
10 内引出し
11 底板
12 把手
13 取付けレール部
14 被取付け部
15 固着手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主収納部と、主収納部の上方に位置する上収納部とを備えた収納家具であって、上収納部の前端を主収納部の前端より後方に後退して位置させ、上収納部前端の左右方向の任意の位置から前方突出部を前方に向けて突出させると共に、該前方突出部の上収納部前端の左右方向における突出位置を変更自在とし、前方突出部の側方に主収納部の載置面まで連続する吹き抜け空間を形成することを特徴とする収納家具。
【請求項2】
主収納部、上収納部の一方又は両方が前後方向に移動自在で、主収納部に対する上収納部の相対的な前方への最大移動状態で前方突出部の前端が主収納部の前端又は前端より後方に位置していることを特徴とする請求項1記載の収納家具。
【請求項3】
収納家具の主体を構成する収納家具本体の収納用開口を開閉自在に覆う前板を設け、前板を開くことで主収納部、上収納部への収納物の出し入れを可能とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の収納家具。
【請求項4】
収納家具の主体を構成する収納家具本体の収納用開口から出し入れ自在な主引出しと、該主引出しの上部に配置され且つ主引出しの前板上端以下の高さに形成され且つ前板よりも後方で前後方向に移動自在となった内引出しとを備え、上記主引出しにより主収納部を構成すると共に、上記内引出しにより上収納部を構成し、内引出しの前端に、該内引出しの前端の左右方向の長さよりも左右方向の長さが短い前方突出部を取付け位置可変自在に取付け、内引出しが最も主引出しの前板に近づいた状態で前方突出部の側方に主引出しの載置面まで連続する吹き抜け空間を形成することを特徴とする請求項1記載の収納家具。
【請求項5】
前方突出部に収納機能が備わっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の収納家具。
【請求項6】
上収納部が前後方向に移動自在であって、前方突出部が上収納部を前後に移動させるための把手であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の収納家具。
【請求項7】
上収納部の前部に左右方向に沿って取付けレール部を形成し、取付けレール部に前方突出部に設けた被取付け部を左右方向に移動自在に係合すると共に、取付けレール部の任意の位置に被取付け部を固着手段により固定して成ることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の収納家具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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