説明

収納庫

【課題】簡易な機構で、操作も簡潔且つ容易であり、また必要にして十分な被収納物を上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることが可能な収納庫を提供する。
【解決手段】本発明に係る収納庫の代表的な構成は、被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出134内に配置され、内部に被収納物を載置可能な載置部材150と、載置部材150から奥側に向かって連結されたアーム168と、アーム168の前側を上方に付勢するバネ200と、アーム168の奥側に設けられたプーリ170、172と、収納庫内の壁板130aに配置されプーリ170、172を案内するレール194と、を備え、レール194は、収納庫の奥側から前側に向かって上昇する傾斜部194bを有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被収納物を収納可能な引出を備えた収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンには、調理器具や調理材料、食器などを収納しておくために、多くの収納スペースが設けられている。このため天板(システムキッチンにおいてはワークトップ)の下には、引出や開き戸が設けられるのが通常である。近年はキッチンの使用態様の研究がすすみ、引出などに収納される被収納物をある程度想定し、引出の大きさや仕切りの形状を工夫することにより、使い勝手の向上を図ることが行われている。そのような例として、コンロを有するコンロキャビネットには鍋などを入れる大きな引出や開き戸を設けたり、調理スペースを有するベースキャビネットには食器や調理器具を入れる浅い引出を多く設けたりしている。
【0003】
ところで天板の下に収納スペースを設けるために、必然的に引出等は低い位置となる。このため利用者は腰をかがめるか、しゃがみ込むことによって被収納物を出し入れすることになる。このことは、長時間キッチンで立ち仕事をする場合や、高齢により体に自由がきかなくなってきた場合など、使用者によっては負担に感じる場合も想定される。
【0004】
そこで従来からも、低い位置の引出に対して、被収納物の出し入れを容易とするための工夫が検討されていた。特許文献1には、引出の昇降機構を備えたキャビネットの構成が開示されている。なお特許文献1では、引出を完全に引き出した状態でのみ昇降させることにより、引出とキャビネット本体とが衝突することを防止することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−215678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された構成においては、引出の位置が高くなるために確かに被収納物を取り出しやすくなると考えられるが、引出の全体を回転させながら上昇させる構成である。しかしながら、引出は木製や金属製の前板や、底板、側板などから構成されており、何も収容していなくてもかなりの重量を有している。まして引出の中に様々な被収納物を収納すると、これを回転させるために必要な労力は、ちくいち屈むよりも多大なものとなってしまいかねない。ここでエアシリンダーや電動モータなどによって持ち上げる力を補助することも考えられるが、機構が複雑となり、キッチンの生産コストの高騰を招いたり、機構が収容スペースを圧迫したりして本末転倒となるおそれがある。
【0007】
一方、引出に収納された被収納物のうち、調理作業中に頻繁に使用する物は限られてくるものである。すなわち、必ずしも引出の全てを高い位置に持ち上げる必要はない。
【0008】
また上記特許文献1に開示された構成においては、キャビネットとの衝突をおそれるあまり、引出を完全に引き出してからでないと、上昇させることができない。するとキッチンで作業している使用者は1歩下がって引出を大きく引き出さなければならないことになり、たび重なれば煩わしく感じられるおそれがある。
【0009】
さらには、引き出す操作と上昇させる操作が別のアクションとなっていると、必然的に収容する場合にも2つのアクションが必要になる。このため使用者はその操作自体が面倒になり、せっかくの機能が利用されなくなってしまうおそれもある。
【0010】
そこで本発明は、簡易な機構で、操作も簡潔且つ容易であり、また必要にして十分な被収納物を上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることが可能な収納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納庫の代表的な構成は、被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出内に配置され、内部に被収納物を載置可能な載置部材と、載置部材を支持する支持部材と、支持部材を上下方向に案内する柱部材と、柱部材に対して支持部材を上方に付勢するバネと、支持部材から奥側に向かって連結されたアームと、アームの奥側に設けられたプーリと、収納庫内の壁板に配置されプーリを案内するレールと、を備え、レールは板状の基部に形成された溝からなり、且つ、当該収納庫の奥側から前側に向かって上昇する傾斜部を有していることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、レールとプーリとバネを用いた簡易な機構で、引出の内部に配置された載置部材を昇降させることができ、載置部材に収納した被収納物を上昇させて取り出しやすくすることができる。このとき、引出を出し入れする操作に伴って載置部材が昇降するため、操作が簡潔且つ容易である。また被収納物を屈まずに取り出すために必要にして十分な高さに上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることができる。特に、レールを溝によって形成していることにより、プーリの上方および下方を同時に規制することができる。したがってレールは、引出の出し入れに従って、プーリを(ひいては支持部材を)押し上げる際にも押し下げる際にも機能することができる。
【0013】
上記のレールを構成する溝は有底であるとよい。これにより、収納庫の壁面とプーリが摺擦することがない。したがって、収納庫壁面(多くの場合は木材)の損耗を防止すると共に、レール(多くの場合は樹脂)の溝の底面によって摺動摩擦を低減して円滑な動作を確保することができる。
【0014】
上記のレールは、溝形状の下側または上側のいずれか一方の縁に、対向する縁に向かって屹立する脱輪防止用のリブを備えているとよい。
【0015】
かかる構成により、プーリのレールからの脱輪(脱落)を確実に防止することができ、引出を円滑に動作させることが可能となる。またいずれか一方、すなわち下側のみか上側のみの縁にリブを備えることにより、プーリが万一にでも上下のリブに噛んでしまって動きにくくなることを防止することができる。
【0016】
上記のアームには複数のプーリが設けられており、板状の基部には複数条のレールが形成されているとよい。これにより、複数条のレール各々に複数のプーリをそれぞれ走行させることができ、1つのプーリのみを用いる場合と比べて、アーム動作時の安定性を向上することが可能となる。
【0017】
上記の複数のプーリは、レールの上側且つ奥側よりに配置された上プーリと、レールの下側且つ前側よりに配置された下プーリとからなり、複数条のレールは、上プーリが走行する上レールと、下プーリが走行する下レールとからなり、傾斜部の上レールと下レールの間隔は、その水平方向の幅が上プーリと下プーリの水平方向の間隔に略一致するとよい。
【0018】
上記構成のようにプーリを配置したことにより、2つのプーリを同時に上下に案内することができると共に、2つのプーリに間隔を設けることができるためにアームの水平を保つことができる。これにより、アームは略水平の姿勢を保ったまま昇降することが可能となり、載置部材をほぼ垂直方向に上下動させることが可能となる。また複数条のレールのうち、上レールを上プーリが、下レールを下プーリが走行することで、これらのプーリの遊びが適度に抑制される。これにより、アームのがたつきを低減し、且つアームの意図しない方向への回動(移動)を防ぐことが可能となる。
【0019】
上記のレールの前側先端には、下側に湾曲する凹部を形成しているとよい。かかる構成により、引出全体を収納庫から取り出す際にプーリ(特に上プーリ)が凹部を通過するため、プーリとレールとの接触が回避され、これらの損傷を防ぐことができる。
【0020】
上記のレールは、板状の基部の後端を当該収納庫内の背面に当接して配置されているとよい。これにより、レールを収納庫の壁面に取り付ける際に、背面に突き当てて位置決めを行うことができ、容易に且つ正確にレールを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な機構で、操作も簡潔且つ容易であり、また必要にして十分な被収納物を上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることが可能な収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。
【図2】ベースキャビネットの分解斜視図である。
【図3】載置部材と支持部材とを引出に取り付けた状態を示す図である。
【図4】載置部材を説明する図である。
【図5】支持部材の詳細を示す図である。
【図6】柱部材の詳細を説明する部材である。
【図7】バネによるリンク機構の動きを説明する図である。
【図8】上下ブロックおよび調整ネジの詳細を説明する図である。
【図9】上下ブロックおよび調整ネジを用いたバネの調整を説明する図である。
【図10】レール部材の詳細を示す図である。
【図11】リブの詳細を示す図である。
【図12】凹部の詳細を示す図である。
【図13】レール部材の他の例を示す図である。
【図14】レール部材のベースキャビネットへの取付を説明する図である。
【図15】引出を引き出す際の昇降機構による載置部材の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。キッチン100は一枚の天板110(ワークトップ)の下に複数の収納庫(キャビネット)を備えた、いわゆるシステムキッチンである。天板110は合成樹脂(人工大理石)やステンレスなどからなり、キッチン100の全体の上面を覆っている。
【0025】
天板110には、組み込み式に取り付けられたコンロ112、調理スペース114、天板110に一体形成されたシンク116が設けられる。シンク116とコンロ112の間に位置する調理スペース114は平坦なテーブル面であり、主に調理を行うのに利用される。
【0026】
天板110の下は、コンロ112本体が設置されているコンロキャビネット120と、調理スペース114に対応したベースキャビネット130と、シンク116が設置されているシンクキャビネット140といった各収納庫で構成される。各収納庫は収納スペースとして機能し、収納庫内の空きスペースには、コンロ112への配線や、シンク116および水栓への給排水管なども収容されている。このように、天板110の下では、天板110の上のシンク116やコンロ112といった各構成に対応した収納庫がその高さおよび奥行きを等しくして複数設けられている。
【0027】
各収納庫は、被収納物を収納するために、様々な大きさの引出をスライド自在に設けている。例えばコンロキャビネット120は、上部にコンロ112のグリル112aおよび操作パネル112bを備え、その脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス122が配設されている。コンロキャビネット120の中央部、すなわちグリル112aの下には幅の広い大きな引出124が配設され、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納することが可能になっている。またコンロキャビネット120の下部の床近傍には、引出式の足元収納であるフロアコンテナ126が配設されている。
【0028】
同様に、ベースキャビネット130には複数の比較的小さな引出132、134およびフロアコンテナ136が備え付けられている。シンクキャビネット140にはフロアコンテナ146、およびかかるフロアコンテナ146から天板110に到る高い前板を備えた引出144が備え付けられている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴である収納庫について説明する。上記したコンロキャビネット120、ベースキャビネット130、シンクキャビネット140のうち、ベースキャビネット130を例にとって説明する。
【0030】
図2はベースキャビネット130の分解斜視図、図3は載置部材150と支持部材160とを引出134に取り付けた状態を示す図である。上述したように、ベースキャビネット130には上段の引出132、中段の引出134、下段のフロアコンテナ136がスライド自在に収容される。なお、引出132、134、136そのものを出し入れするためのレール機構は一般的なものでよいため、その説明を省略する。
【0031】
中段の引出134には、その内部に更に被収納物を載置可能な載置部材150を配置されており、載置部材150は、後述する昇降機構によって上下移動可能となっている。図4は載置部材150を説明する図である。本実施形態において載置部材150は、天面が開放された箱状であって、いわゆるポケット形状を成している。
【0032】
図4に示すように、載置部材150は、仕切り154および仕切り溝156を有する。これにより、仕切り溝156に仕切り154を挿入し、載置部材150内の収納空間を分割することができる。したがって、載置部材150内に載置した被収納物の整理整頓が可能となる。特に、仕切154および仕切り溝156を複数設けることによって、載置部材150内の空間を複数に分割し、分割された空間の大きさを所望の大きさに調節することができ、利便性が向上する。
【0033】
なお、本実施形態においては、仕切り154の数を1つ、仕切り溝156の数を3つとしたが、これに限定するものではない。仕切り154および仕切り溝156の数は各々1つ以上であればよく、好ましくは、仕切り溝156の数は仕切り154の数より多いとよい。
【0034】
また載置部材150の上縁の一辺には鈎状の嵌合部152が形成されており、かかる嵌合部152を後述する支持部材160の梁166に吊下する(図3参照)ことによって載置部材150が梁166(支持部材160)に対して着脱可能に構成されている。これにより、載置部材150が交換可能となるため、形状や容積、取り付ける個数などを選択することができる。また載置部材150を取り外せることから、清掃も容易となる。
【0035】
昇降機構は、引出134内に設けられる支持部材160(図5参照)および柱部材180と、ベースキャビネット130内の壁板130aに設けられるレール部材200とから構成される。支持部材160および柱部材180の各要素ならびにレール部材200は引出134の左右方向に対称に構成されており、梁166を除いて左右両側にそれぞれ2つ(鏡面対称に)配置されている。以下、昇降機構を構成する部材について詳述し、次に、昇降機構を補助するためのリンク機構、および昇降機構を用いた載置部材150の昇降について詳述する。
【0036】
支持部材160は、載置部材150を支持する部材である。図5は支持部材160の詳細を示す図である。図5(a)は支持部材160を引出134の外側から見た斜視図であり、図5(b)は支持部材160を引出134の内側から見た斜視図である。図5に示すように、支持部材160は、摺動部材162と、連結部材164と、梁166と、アーム168と、複数のプーリ(上プーリ170および下プーリ172)とから構成される。
【0037】
摺動部材162は、引出134の両側に配置され、引出134に固定設置される柱部材180によって上下方向に摺動可能に構成されている。そして、摺動部材162には、梁166およびアーム168を連結可能な連結部材164が装着される。これらにより、支持部材160全体および載置部材150が、柱部材180に対して上下方向に摺動可能となる。
【0038】
また摺動部材162は、上下ローラ162aを備えている。これにより、上下ローラ162aは、後述する柱部材180の上下レール180b内に挿入され、かかる上下レール180b内を移動する。これにより、摺動部材162は、柱部材180から脱落することなく、かかる柱部材180上を上下に移動することが可能となる。なお、本実施形態において、摺動部材162は上下ローラ162aを2つ備えているが、これに限定するものではなく、摺動部材162は上下ローラ162aを1つ以上備えればよい。
【0039】
更に摺動部材162は、軸部162bを有する。これにより、摺動部材162(支持部材160)が後述する第1リンク部材182を軸支可能となる。なお、本実施形態において、摺動部材162は軸部162bを2つ備えているが、これに限定するものではなく、摺動部材162は軸部162bを1つ以上備えればよい。
【0040】
連結部材164は、梁166を接続するための梁接続部164aと、後述するアーム168を接続するためのアーム接続部164bを有する。これにより、引出134の両側に設けられた2つの摺動部材162に連結部材164を各々装着し、2つの連結部材164の梁接続部164aに梁166の端部を接続することで、摺動部材162と梁166とを連結し、載置部材150を収容する枠体を形成することができる。そして、連結部材164のアーム接続部164bにアーム168を接続することで、摺動部材162とアーム168とが連結され、摺動部材162がアーム168の動きに連動することが可能となる。
【0041】
梁166は、載置部材150の嵌合部152が吊下されることでかかる載置部材150を支持する。そして、梁166の端部に連結部材164が連結されることで、梁166は連結部材164が装着された摺動部材162と一体に動作する。
【0042】
なお、本実施形態においては摺動部材162および連結部材164、梁166をすべて別体としたが、これに限定するものではなく、これらを一体に成型してもよい。
【0043】
アーム168は、連結部材164を介して摺動部材162に、引出134の奥側に向かって延長するように連結(接続)される。本実施形態においてアーム168は腕部168aとL字部168bとからなり、腕部168aの奥側先端にL字部168bを固定している。そして、L字部168bは奥側先端が上方にL字状に屈曲しており、かかる先端(高い位置)に上プーリ170が、腕部168aとの接続部付近(低い位置)に下プーリ172が設置されている。すなわち、アーム168の奥側には、複数のプーリ(上プーリ170および下プーリ172)が設けられている。
【0044】
上プーリ170および下プーリ172は、引出134の移動に伴って後述するレール部材200の上レール210および下レール220上を移動する。かかる上プーリ170および下プーリ172は、これらがレール部材200に装着された際に、アーム168が略水平の姿勢となるように配置されている。
【0045】
詳しくは、上プーリ170は、後述するレール部材200の上レール210を移動可能な位置且つ引出134の奥側よりとなる位置に配置され、下プーリ172はレール部材200の下レール220を移動可能な位置且つ引出134の前側よりとなる位置に配置されている。これにより、引出134をベースキャビネット130から引き出した際に、上プーリ170および下プーリ172が上レール210および下レール220の形状に沿って移動し、アーム168が引出134の動きに連動することが可能となる。
【0046】
なお、実施形態においてはアーム168を腕部168aとL字部168bとから構成しているが、これに限定するものではなく、これらを一体に形成してもよい。
【0047】
柱部材180は、支持部材160(摺動部材162)を上下方向に案内する部材である。図6は、柱部材180の詳細を説明する部材である。図6(a)は柱部材180にカバー198を取り付けた状態を示す図であり、図6(b)は柱部材180からカバー198を取り外した状態を示す図である。図6に示すように、柱部材180は、固定部180aと、上下レール180bと、リンク機構を構成する各部材を備える。
【0048】
固定部180aは、柱部材180を引出134の前板134aの後面に固定設置するための部材である。これにより、引出134が引き出されるまたは押し出されると、柱部材180が引出134と同じ方向に移動することが可能となる。
【0049】
上下レール180bは、摺動部材162(支持部材160)を上下に案内するレールであり、その断面はC字状である。これにより、上下レール180bに上述した摺動部材162の上下ローラ162aを挿入することで、上下ローラ162aが上下レール180b内を移動可能となるため、柱部材180が摺動部材162(支持部材160)を上下に案内することができる。
【0050】
また柱部材180は、図6(b)に示すように、リンク機構等を覆うカバー198を備える。これにより、後述するバネ186等のリンク機構を構成する部材を、引出134内に収納された被収納物との衝突から防護し、それらの部材の破損を防ぐことが可能となる。またカバー198は、後述する上下ブロック190の位置を観察するための観察窓198aを備える。これにより、後述する調整ネジ192により移動させた上下ブロック190の位置、およびバネ186の弛張度合いを目視で確認することができる。
【0051】
また上述したように柱部材180はリンク機構を構成する各部材を備えている。リンク機構は、複数のリンク部材が、相互に軸支され、且つ柱部材180と支持部材160とを連結され、昇降機構における載置部材150の昇降を補助する。かかるリンク機構は、第1リンク部材182と、クランク形状を有する第2リンク部材184と、バネ186と、規制部材188と、上下ブロック190と、調整ネジ192とから構成される(図6参照)。
【0052】
第1リンク部材182は、金属からなる板状の部材である。第1リンク部材182は、その一端が摺動部材162の軸部162bに回動可能に固定されることで、摺動部材162(支持部材160)から下方に向かって軸支される。そして、第1リンク部材182の他端は第2リンク部材184と回動可能に連結される。
【0053】
第2リンク部材184(クランク)は、金属からなる板状の部材であり、その一端が第1リンク部材182に回動可能に連結される。そして、第2リンク部材184の他端は、柱部材180に回動可能に軸支される。
【0054】
バネ186は、本実施形態においては引っ張りバネであり、その一端が第1リンク部材182と第2リンク部材184の連結部(リンク機構)に、他端が後述する上下ブロック190のバネ係合部190aに接続されている。これにより、摺動部材162(支持部材160)が柱部材180に対して上方に付勢される。
【0055】
規制部材188は、回転止めの役割を果たす部材である。これにより、載置部材150の下降、すなわち支持部材160の下降に伴って第1リンク部材182および第2リンク部材184が回動し、支持部材160が下死点に到達すると、第1リンク部材182および第2リンク部材184は規制部材188に当接する。したがって、支持部材160の下死点到達後における第1リンク部材182および第2リンク部材184の更なる(過剰な)回動を防止することができる。
【0056】
本実施形態において、規制部材188は緩衝材188aを備える。これにより、第1リンク部材182や第2リンク部材184が規制部材188に当接した際の衝撃を緩和することができ、第1リンク部材182および第2リンク部材184の損傷を防止し、且つこれらの衝突音を低減することができる。かかる緩衝材188aとしては、発泡樹脂、エアーパッキン、ゴム等、衝撃を吸収する素材を好適に用いることができる。
【0057】
図7はバネ186によるリンク機構の動きを説明する図である。図7(a)は、引出134がベースキャビネット130に収納され、支持部材160が上昇していない状態を示している。図7(b)は、引出134をベースキャビネット130から途中まで引き出し、支持部材160が途中まで上昇した状態を示している。図7(c)は、引出134をベースキャビネット130から完全に引き出し、支持部材160が最上部まで上昇した状態を示している。図7(d)は、規制部材188を備えていない状態を示している。なお、理解を容易にするために、以下の説明に用いない部材については図示を省略する。
【0058】
図7(a)では、バネ186は第1リンク部材182および第2リンク部材184の連結部に引っ張られ完全に伸びている状態である。そして、この状態から引出134をベースキャビネット130から引き出すと(図示せず)、後述する昇降機構により引出134の動きに連動して支持部材160が矢印の方向に上昇し始める。すると、第1リンク部材182および第2リンク部材184は矢印の方向に回動し始め、これに伴ってバネ186は矢印の方向に縮み、支持部材160(およびこれに支持された載置部材150)は上方に付勢されて図7(b)に示す状態となる。
【0059】
そして、更に引出134を引き出すと(図示せず)、図7(b)に示す状態から支持部材160は矢印の方向に更に上昇し、第1リンク部材182および第2リンク部材184は矢印の方向に更に回動し、バネ186は矢印の方向に更に縮む。これにより、支持部材160(およびこれに支持された載置部材150)は更に上方に付勢される。その結果、図7(c)に示すように、支持部材160は最上部まで上昇する。
【0060】
上記説明したリンク機構を備えることで、バネ186の力により支持部材160が上方に付勢される。これにより、引出134を引き出す動作が補助され、載置部材150を上昇させる力を低減することができる。特に、バネ186をリンク機構(第1リンク部材182と第2リンク部材184の連結部)に接続して支持部材160を上方に付勢する構成としたことで、バネ186の力を支持部材160に直接伝達するのではなく、支持部材160の位置に応じて適切な付勢力を得ることができ、快適な使い勝手を実現することが可能となる。
【0061】
なお本実施形態においては、第2リンク部材184の2つの回転軸の距離Lは、支持部材160が下死点にあるとき(図7(a)参照)の第1リンク部材182の下側の回転軸から第2リンク部材184と柱部材180の回転軸までの高さHとほぼ等しくなるよう構成している。これにより、支持部材160が下死点に到達するあたりでは、第1リンク部材182と第2リンク部材184の回転軸が、当該回転軸の軌跡である円の下側になる。これにより、支持部材160が上下移動の下死点にあるとき、第2リンク部材184はバネ186による付勢力の方向と略平行の姿勢となる。
【0062】
詳細には、バネ186による付勢力は、その回転軸においては軌跡である円の接線方向に作用するため、支持部材160が下死点に到達するあたりでは、リンク機構のクランクがバネ186の張力を支えることとなり、支持部材160からすると上方へ付勢する力(分力)は極めて小さくなる。したがって、支持部材160が下死点に近づくと、バネ186の上方への付勢力が急激に弱くなる。これにより、引出134をベースキャビネット130(収納庫)に押し込む際に押す力が楽になり、単にバネ186を直結する場合よりも使い勝手を向上させることができる。
【0063】
また上記構成によれば、引出134が収納されているときに、バネ186の付勢力によってプーリ170、172がレール部材200に押圧される力も軽減することができる。詳細には、バネ186を支持部材160に直結すると、後述するレール部材200の傾斜部210bおよび220bより奥側の奥側水平部210aおよび220aに上プーリ170および下プーリ172が進入している間は、上プーリ170および下プーリ172は最大の力でレール部材200に付勢されることとなる。このため、上プーリ170および下プーリやレール部材200を樹脂で成型した場合に、これらの当接面に変形を招いたり、摩擦が大きくなって削れたりするおそれがある。しかし上記のように構成したことにより、バネ186の付勢力をリンク機構が受けることになるため、レール部材200に対するプーリ(上プーリ170および下プーリ172)の付勢力を軽減し、これらの変形や摩耗を防止することができる。
【0064】
また本実施形態のように規制部材188を備えることで、支持部材160が下死点に到達すると、第1リンク部材182および第2リンク部材184は規制部材188に当接するため、それらの動作(回動)が停止する(図7(a)参照)。仮に、規制部材188を備えていない場合、第1リンク部材182および第2リンク部材184は支持部材160の下降に伴って回動し、支持部材160が下死点に到達すると、第1リンク部材182と第2リンク部材184の回転軸が、当該回転軸の軌跡である円の下端を通り過ぎ、図7(d)に示す状態となる。
【0065】
この場合、リンク機構がバネ186によって引き上げられていることから、回転軸が円の下端を通り過ぎたところで保持されてしまって、ふたたび引出134を引き出した際に第1リンク部材182および第2リンク部材184が回動できなくなり、支持部材160(載置部材150)が上昇しなくなってしまう。しかし、規制部材188を備えることで、支持部材160の下死点到達後における第1リンク部材182および第2リンク部材184の更なる(過剰な)回動を防止し、上述した事態を回避することが可能となる。
【0066】
上下ブロック190は、後述する調整ネジ192が操作されることで柱部材180内を上下に移動する。図8は上下ブロック190および調整ネジ192の詳細を説明する図である。図8(a)に示すように、上下ブロック190はバネ係合部190aを有し、図8(b)に示すようにバネ係合部190aにバネ186の端部が係合される。これにより、後述するように調整ネジ192を操作して上下ブロック190を移動させ、バネ186の弛張度合いを調整することが可能となる。
【0067】
調整ネジ192は、上下ブロック190を移動させるためのネジであり、これにより、かかる上下ブロック190を介してバネ186の弛張度合いを調整することができる。本実施形態において、調整ネジ192の頭192aは柱部材180の外面に配置される(図8(b)参照)。これにより、バネ186の力(弛張度合い)を調整する際に、柱部材180や支持部材160を分解する等の作業を行うことなく、柱部材180の外側から容易に調整ネジ192を操作することができる。
【0068】
図9は、上下ブロック190および調整ネジ192を用いたバネ186の調整を説明する図である。図9(a)では、上下ブロック190は上方に位置し、バネ186はほぼ最大に伸びた状態となっている。すなわち、バネ186が摺動部材162(支持部材160)を上方に付勢する力が大きい状態である。
【0069】
この状態からバネ186の力(弛張度合い)を調整する場合、工具(図示せず)を用いて、柱部材180の外面に設けられた調整ネジ192の頭192a(図8(b)参照)を回転させる。これにより、上下ブロック190は矢印の方向に移動し、バネ186は矢印の方向に縮むこととなる。上記の操作により、上下ブロック190は図9(b)に示すように移動範囲の最下部に到達し、バネ186は最も縮んだ状態となる。したがって、バネ186が摺動部材162(支持部材160)を上方に付勢する力を最も小さくすることができる。
【0070】
また図9(c)および(d)に示すように、上記の操作に際して、柱部材180のカバー198に設けられた観察窓198aから上下ブロック190のバネ係合部190aの先端を観察することができる。これにより、利用者は、バネ186の力(弛張度合い)を確認し、容易且つ確実にバネ186の状態を把握することが可能となる。
【0071】
上記説明したように、本実施形態では、調整ネジ192を回転させることで、上下ブロック190を上下に移動させ、リンク機構においてバネ186が摺動部材162(支持部材160)を付勢する力、すなわち支持部材160に支持された載置部材150を上昇させる力を調整することができる。これにより、載置部材150に収納される被収納物の重さ(量)や種類に応じてバネ186の力を調整することが可能となる。
【0072】
レール部材200(レール)は、ベースキャビネット130(収納庫)内の壁板130aに配置され(図3参照)、上プーリ170および下プーリ172を案内する。図10はレール部材200の詳細を示す図である。図10に示すように、レール部材200は、板状の基部に形成された複数の溝からなる複数条のレール、すなわち上レール210および下レール220を有する。これにより、上レール210および下レール220(複数条のレール)各々に、上プーリ170および下プーリ172(複数のプーリ)をそれぞれ走行させる(案内する)ことができ、1つのプーリのみを用いる場合と比べて、アーム168動作時の安定性を向上することが可能となる。
【0073】
また上レール210を上プーリ170が、下レール220を下プーリ172が走行することで、これらのプーリの遊びが適度に抑制されるため、アーム168のがたつきを低減し、且つアーム168の意図しない方向への回動(移動)を防ぐことが可能となる。更に、上レール210および下レール220を溝によって形成することにより、上プーリ170および下プーリ172の上方および下方を同時に規制することができる。したがって、上レール210および下レール220は、引出134の出し入れに従って、上プーリ170および下プーリ172、ひいては支持部材160を押し上げる際にも押し下げる際にも機能することができる。
【0074】
上レール210は、その中央部には、前側に向かって上昇する傾斜部210bを、傾斜部210bより前側には、略水平に上プーリ170を案内する前側水平部210cを、傾斜部210bより奥側には、略水平に上プーリ170を案内する奥側水平部210aを有している。そして上レール210と同様に、下レール220も、下プーリ172を案内する奥側水平部220a、傾斜部220b、前側水平部220cを有している。
【0075】
上記構成により、引出134を引き出すと、アーム168に設けられたプーリ(上プーリ170および下プーリ172)は、レール部材200上をその形状に沿って引出134の奥側から手前側に移動することとなる。そして、プーリが傾斜部210bおよび220bに到達すると、その後、プーリは傾斜部210bおよび220bの形状(傾斜)に沿って移動しながら上昇するため、アーム168も水平方向に移動し且つ上方にも移動することとなる。これに伴い、アーム168に連結した支持部材160が柱部材180に案内され上方に移動し(上昇し)、支持部材160に支持された載置部材150が上昇する。したがって、レール部材200とプーリとアーム168を用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置された載置部材150を昇降させることが可能となる。
【0076】
上記の上レール210の傾斜部210bと下レール220の傾斜部210bの間隔は、その水平方向の幅W2が、上プーリ170と下プーリ172の水平方向の間隔W1に略一致するように形成される。また上レール210の前側水平部210cと下レール220の前側水平部220cの、および上レール210の奥側水平部210aと下レール220の奥側水平部220aの高さ方向の間隔H2は、上プーリ170と下プーリ172の高さ方向の間隔H1と略一致するように形成される。これにより、アーム168が略水平の姿勢となるように配置された上プーリ170および下プーリ172は、水平方向の幅がこれらの間隔に略等しく構成された傾斜部210bおよび220bに沿って移動しながら上昇する。したがって、2つのプーリを同時に上下に案内することができると共に、アーム168の水平を保ったまま昇降させることができる。したがって、アーム168は略水平の姿勢を保ったまま昇降することが可能となり、載置部材150をほぼ垂直方向に上下動させることが可能となる。
【0077】
なお、アーム168の水平を保つためには、上プーリ170および下プーリ172の水平方向の間隔W1を広く取ることが好ましく、これに応じて上レール210の傾斜部210bと下レール220の傾斜部210bの水平方向の幅W2も広くなる。
【0078】
また、本実施形態において奥側水平部210aおよび220a、傾斜部210bおよび220b、前側水平部210cおよび220cは概ね直線であり、その交点(屈曲点)はアールが付けられている。このとき、アールの曲率半径は、上プーリ170、下プーリ172の半径よりも大きい(曲がりが緩やかである)ことが好ましい。ただし、更に傾斜部210bおよび220bをS字を描くような滑らかな曲線としたり、奥側水平部210aおよび220aや前側水平部210cおよび220cも傾斜、屈曲、ないしは湾曲させたりすることを除外するものではない。
【0079】
上記の上レール210および下レール220は、脱輪防止用のリブ212および222を各々備える。図11は、リブ212および222の詳細を示す図である。図11に示すように、本実施形態においては、リブ212および222は、上レール210および下レール220各々の下側の縁から上側の縁(対向する縁)に向かって屹立して設けられる。これにより、上プーリ170および下プーリ172の水平方向への動作が規制される。したがって、上プーリ170の上レール210からの、および下プーリ172の下レール220からの脱輪(脱落)が確実に防止され、引出134を円滑に動作させることができる。
【0080】
なお、本実施形態においては、上レール210および下レール220各々の下側の縁にリブ212および222を設けたが、これに限定するものではなく、リブは、溝形状のレールの下側または上側のいずれか一方の縁に設けられればよい。これにより、下側および上側の両方の縁に設け、プーリが上下のリブに噛んでしまって動きにくくなることを防止することができる。
【0081】
また上レール210は、その前側先端に凹部214が形成されている。図12は凹部214の詳細を示す図である。図12(a)に示すように、凹部214は、上プーリ170よりも大きい曲率半径を有して下側に湾曲している。これにより、図12(b)に示すように引出134全体をベースキャビネット130(収納庫)から取り出す際に、上プーリ170が凹部214を通過するため、上プーリ170とレール部材200との接触を回避することができ、損傷を防ぐことが可能となる。
【0082】
詳細には、通常時、すなわち引出134がベースキャビネット130に装着されているときには、上プーリ170および下プーリ172は、図12(c)において破線で示されるアーム168に連結された位置にあり、上レール210および下レール220上に存在する。そして、引出134をベースキャビネット130から取り出すときには、引出134ごと持上げられたアーム168は図12(c)において実線で示す状態となり、これにより、上プーリ170および下プーリ172は、かかる実線で示されるアーム168に連結された位置に移動し、上プーリ170は凹部214内を移動することとなる。したがって、上述したように、上プーリ170とレール部材200との接触を回避することが可能となる。なお、本実施形態においては、凹部214を上レール210にのみ設けたが、下レール220にも設けてよい。
【0083】
更に、本実施形態において、上レール210および下レール220を構成する溝は、底216および226を有する、すなわち有底である(図10参照)。したがって、上レール210および下レール220を上プーリ170および下プーリ172が移動する際における、ベースキャビネット130(収納庫)の壁板130a(壁面)と、上プーリ170および下プーリ172との摺擦を防止することができる。これにより、壁板130a(多くの場合は木材)の損耗を防ぐ共に、レール部材200(多くの場合は樹脂)の溝(上レール210および下レール220)の底面(底216および226)によって摺動摩擦を低減して円滑な動作を確保することが可能となる。
【0084】
なお、本実施形態ではレール部材200の上レール210および下レール220に底216および226を設けたが、これに限定するものではなく、底を設けないことも可能である。図13は、レール部材の他の例を示す図である。図13中、レール200と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することによりその説明を省略する。
【0085】
図13に示すように、レール部材300に形成される溝からなる上レール310および下レール320は底を有さない。これにより、レール部材300の軽量化および、これに要するコストの削減を図ることが可能となる。
【0086】
図14は、レール部材200のベースキャビネット130への取付を説明する図である。図14に示すように、レール部材200をベースキャビネット130へ取り付ける(配置する)際には、レール部材200の板状の基部の後端をベースキャビネット130(収納庫)内の背板130b(背面)に当接させる。これにより、レール部材200をベースキャビネット130の壁板130a(壁面)に取り付ける際に、背板130bに突き当てて位置決めを行うことができ、レール部材200を容易に且つ正確に取り付けることができる。
【0087】
なお、本実施形態においては、レールは2つのレール(上レール210および下レール220)から構成されるが、これに限定するものではない。レールの数は1つ以上であればよく、上述したようにアーム168の動作の安定性を向上させたい場合には、レールを2つ以上設けることが好ましい。
【0088】
上記構成のベースキャビネット130における、昇降機構による載置部材150の動作について説明する。図15は、引出134を引き出す際の昇降機構による載置部材150の動作を説明する図である。なお上記構成においてバネ186はほとんど外観から観察できないが、図15では説明の便宜上バネ186を描いている。
【0089】
図15(a)は引出134がベースキャビネット130に収容されている状態を示している。このとき、支持部材160(摺動部材162等)はバネ186によって上方向に付勢されているが、上プーリ170および下プーリ172がレール部材200の奥側水平部210aおよび220aにあるため、高さ方向の位置が規制される。したがって、載置部材150は最も下降した状態にある。
【0090】
図15(b)は引出134を引き出した状態を示している。このとき、上プーリ170はおよび下プーリ172は傾斜部210bおよび220bにあるため、引出134を引き出すとアーム168が上昇し、支持部材160および載置部材150も上昇する。すなわち、引出134を引き出す力が、載置部材150を上昇させる力に変換される。このとき、リンク機構により支持部材160(摺動部材162等)が上方に付勢されるため、引出134を引き出すために要する力を低減することができる。
【0091】
図15(c)は引出134を概ね引き出した状態を示している。このときプーリ170、172はレール部材200の前側水平部210cおよび220cにある。これにより、引出134を引き出した状態において載置部材150の重量を前側水平部210cおよび220cが支持することとなり、引出134がベースキャビネット130内へ戻ってしまうことを防止できる。このとき柱部材180に対する摺動部材162の移動限界またはバネ200の縮小限界により、摺動部材162の高さは上限に到る。したがって下プーリ172はレール部材200の前側先端より突出してしまっても支障がない。
【0092】
引出134をベースキャビネット130に収納する場合は、上記の逆の動作となる。引出134を引き出された状態(図15(c)参照)から押し込むと、図15(b)に示すようにプーリ170、172が傾斜部210bおよび220bにさしかかる。すると、プーリ170、172が傾斜部210bおよび220bに案内されて下降するため、アーム168が水平の姿勢を保ったまま引き下げられる。これにより、単に引出134を押し込む操作によって、支持部材160ひいては載置部材150が下降する。
【0093】
上記説明した如く、本実施形態にかかる収納庫(ベースキャビネット130)によれば、引出134を引き出すと、アーム168に設けられたプーリ(上プーリ170および下プーリ172)がレール部材200上を引出134の奥側から手前側に移動し、アーム168に連結した支持部材160が柱部材180に案内され上方に移動する(上昇する)。したがって、レール部材200とプーリとアーム168を用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置され、支持部材160に支持された載置部材150を昇降させることができ、載置部材150に収納した被収納物を上昇させて取り出しやすくすることが可能となる。このとき、引出134を出し入れする操作に伴って載置部材150が昇降するため、操作が簡潔且つ容易であり、また被収納物を屈まずに取り出すために必要にして十分な高さに上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることができる。
【0094】
なお、上記実施形態においてはベースキャビネット130の引出134について説明したが、他の引出132やフロアコンテナ136に載置部材150を設けてもよく、また他の収納庫であるコンロキャビネット120やシンクキャビネット140の引出に載置部材150を設けてもよい。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、例えばキッチンのように被収納物を収納可能な引出を備えた収納庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
100 …キッチン
110 …天板
112 …コンロ
112a …グリル
112b …操作パネル
114 …調理スペース
116 …シンク
120 …コンロキャビネット
122 …スパイスボックス
126 …フロアコンテナ
130 …ベースキャビネット
130a …壁板
130b …背板
132 …引出
134 …引出
134a …前板
136 …フロアコンテナ
140 …シンクキャビネット
144 …引出
146 …フロアコンテナ
150 …載置部材
152 …嵌合部
154 …仕切り
156 …仕切り溝
160 …支持部材
162 …摺動部材
162a …上下ローラ
162b …軸部
164 …連結部材
164a …梁接続部
164b …アーム接続部
166 …梁
168 …アーム
168a …腕部
168b …L字部
170 …上プーリ
172 …下プーリ
180 …柱部材
180a …固定部
180b …上下レール
182 …第1リンク部材
184 …第2リンク部材
186 …バネ
188 …規制部材
188a …緩衝材
190 …上下ブロック
190a …バネ係合部
192 …調整ネジ
192a …頭
198 …カバー
198a …観察窓
200 …レール部材
210 …上レール
210a …奥側水平部
210b …傾斜部
210c …前側水平部
212 …リブ
214 …凹部
216 …底
220 …下レール
220a …奥側水平部
220b …傾斜部
220c …前側水平部
222 …リブ
226 …底
300 …レール部材
310 …上レール
320 …下レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、
前記引出内に配置され、内部に被収納物を載置可能な載置部材と、
前記載置部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を上下方向に案内する柱部材と、
前記柱部材に対して前記支持部材を上方に付勢するバネと、
前記支持部材から奥側に向かって連結されたアームと、
前記アームの奥側に設けられたプーリと、
前記収納庫内の壁板に配置され前記プーリを案内するレールと、を備え、
前記レールは板状の基部に形成された溝からなり、且つ、当該収納庫の奥側から前側に向かって上昇する傾斜部を有していることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記レールを構成する溝は有底であることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項3】
前記レールは、溝形状の下側または上側のいずれか一方の縁に、対向する縁に向かって屹立する脱輪防止用のリブを備えていることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項4】
前記アームには複数のプーリが設けられており、前記板状の基部には複数条のレールが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項5】
前記複数のプーリは、前記レールの上側且つ奥側よりに配置された上プーリと、前記レールの下側且つ前側よりに配置された下プーリとからなり、
前記複数条のレールは、前記上プーリが走行する上レールと、前記下プーリが走行する下レールとからなり、
前記傾斜部の上レールと下レールの間隔は、その水平方向の幅が前記上プーリと前記下プーリの水平方向の間隔に略一致することを特徴とする請求項4に記載の収納庫。
【請求項6】
前記レールの前側先端には、下側に湾曲する凹部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項7】
前記レールは、前記板状の基部の後端を当該収納庫内の背面に当接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−201062(P2010−201062A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52015(P2009−52015)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【出願人】(390013321)株式会社ダイドー (30)
【Fターム(参考)】