説明

収納庫

【課題】簡易な機構で、操作も簡潔かつ容易であり、また必要にして十分な被収納物を上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることができ、且つ引出内の収納空間を最大限まで広げることが可能な収納庫を提供する。
【解決手段】本発明にかかる収納庫の構成は、被収納物を収納可能な引出134をスライド自在に収容可能な収納庫130であって、引出の側板134cの上方に略水平に配置された落下防止部材196と、引出内に配置され、内部に被収納物を載置可能な載置部材150と、載置部材を支持する支持部材160と、支持部材を上下方向に案内する柱部材180と、を備え、落下防止部材の先端は柱部材に取り付けられ、後端は引出の背板134bに支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出を備えた収納庫であって、特に引出に収納した被収納物を取り出しやすくすることが可能な収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンには、調理器具や調理材料、食器などを収納しておくために、多くの収納スペースが設けられている。このため天板(システムキッチンにおいてはワークトップ)の下には、引出や開き戸が設けられるのが通常である。近年はキッチンの使用態様の研究がすすみ、引出などに収納される被収納物をある程度想定し、引出の大きさや仕切りの形状を工夫することにより、使い勝手の向上を図ることが行われている。そのような例として、コンロを有するコンロキャビネットには鍋などを入れる大きな引出や開き戸を設けたり、調理スペースを有するベースキャビネットには食器や調理器具を入れる浅い引出を多く設けたりしている。
【0003】
ところで天板の下に収納スペースを設けるために、必然的に引出等は低い位置となる。このため利用者は腰をかがめるか、しゃがみ込むことによって被収納物を出し入れすることになる。このことは、長時間キッチンで立ち仕事をする場合や、高齢により体に自由がきかなくなってきた場合など、使用者によっては負担に感じる場合も想定される。
【0004】
そこで従来からも、低い位置の引出に対して、被収納物の出し入れを容易とするための工夫が検討されていた。特許文献1には、引出の昇降機構を備えたキャビネットの構成が開示されている。なお特許文献1では、引出を完全に引き出した状態でのみ昇降させることにより、引出とキャビネット本体とが衝突することを防止することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−215678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された構成においては、引出の位置が高くなるために確かに被収納物を取り出しやすくなると考えられるが、引出の全体を回転させながら上昇させる構成である。しかしながら、引出は木製や金属製の前板や、底板、側板などから構成されており、何も収容していなくてもかなりの重量を有している。まして引出の中に様々な被収納物を収納すると、これを回転させるために必要な労力は、ちくいち屈むよりも多大なものとなってしまいかねない。ここでエアシリンダーや電動モータなどによって持ち上げる力を補助することも考えられるが、機構が複雑となり、キッチンの生産コストの高騰を招いたり、機構が収容スペースを圧迫したりして本末転倒となるおそれがある。
【0007】
一方、引出に収納された被収納物のうち、調理作業中に頻繁に使用する物は限られてくるものである。すなわち、必ずしも引出の全てを高い位置に持ち上げる必要はない。
【0008】
また上記特許文献1に開示された構成においては、キャビネットとの衝突をおそれるあまり、引出を完全に引き出してからでないと、上昇させることができない。するとキッチンで作業している使用者は1歩下がって引出を大きく引き出さなければならないことになり、たび重なれば煩わしく感じられるおそれがある。
【0009】
さらには、引き出す操作と上昇させる操作が別のアクションとなっていると、必然的に収容する場合にも2つのアクションが必要になる。このため使用者はその操作自体が面倒になり、せっかくの機能が利用されなくなってしまうおそれもある。
【0010】
そこで本発明は、簡易な機構で、操作も簡潔かつ容易であり、また必要にして十分な被収納物を上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることが可能な収納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、発明者らは、引出内に、使用頻度の高い被収納物を載置する載置部材を設け、かかる載置部材を昇降させれば、簡潔かつ容易に使用者の利便性を向上できるのではないかと考えた。しかし、引出内に載置部材を設けると、載置部材およびそれを昇降させるための部材に要するスペースが失われてしまう。そこで、これらの部材を設けつつ、引出内の収納空間を最大限まで広げるべく検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち上記課題を解決するために、本発明にかかる収納庫の代表的な構成は、被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出の側板の上方に略水平に配置された落下防止部材と、引出内に配置され、内部に被収納物を載置可能な載置部材と、載置部材を支持する支持部材と、支持部材を上下方向に案内する柱部材と、を備え、落下防止部材の先端は柱部材に取り付けられ、後端は引出の背板に支持されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、引出を収納庫から引き出すと載置部材が上昇する、すなわち載置部材に載置された被収納物のみが上昇する。したがって、使用者は、必要にして十分な被収納物を腰を曲げずに取り出すことができるため、体への負荷を低減し、且つ利便性を向上することが可能となる。そして、落下防止部材の先端は柱部材に取り付けられ、後端が引出の背板に支持されていることから、落下防止部材の先端が引出の前板に取り付けられている場合と比べて、引出内の収納空間を広げることが可能となる。
【0014】
当該収納庫は、さらに、支持部材から奥側に向かって連結されたアームと、アームの奥側に設けられたプーリと、収納庫内の壁板に配置されプーリを案内するレールと、を備え、落下防止部材は、アームが上下移動する範囲より下方に配置されているとよい。
【0015】
上記構成では、引出が引き出される、または押し込まれると、それに連動して、アームに設けられたプーリがレール上を移動する。これにより、アームが水平方向且つ上下に移動し、アームと連結する支持部材が昇降し、載置部材が昇降する。このとき、落下防止部材がアームの移動範囲内に配置されていると、これらの損傷を招いてしまう。したがって、落下防止部材を上記構成のように配置することで、アームが上下に移動する際に、落下防止部材に衝突することがない。これにより、アームおよび落下防止部材の損傷を防ぐことが可能となる。
【0016】
上記の支持部材は側面に平坦部を有する梁を備え、載置部材は梁に上方から嵌合する嵌合部を備え、梁に対して着脱可能に構成されているとよい。
【0017】
上記構成のように梁が平坦部を有することで、梁に吊下した(支持部材に装着した)載置部材の回動を防止することができる。これにより、載置部材に載置された被収納物の安定性が向上する。また載置部材が支持部材の梁に着脱可能であることで載置部材が交換可能となるため、形状や容積、取り付ける個数などを選択することができ、且つ清掃も容易となる。
【0018】
当該収納庫は、さらに、支持部材から奥側に向かって連結されたアームと、アームの奥側に設けられたプーリと、収納庫内の壁板に配置されプーリを案内するレールと、を備え、アームは側面に平坦部を有し、アームの幅は支持部材の梁の幅と略同一であるとよい。
【0019】
かかる構成によれば、上述したように引出が引き出される、または押し込まれることに連動して、アームが、ひいては載置部材が昇降する。そして、アームの幅が支持部材の梁の幅と略同一であることで、載置部材を、支持部材の梁だけでなくアームにも吊下することが可能となる。これにより、使用者は、自身の好みや用途に応じて載置部材の装着位置を任意に変更することができる。またアームの側面にも平坦部を設けたことで、アームに載置部材を吊下した場合においても、載置部材の回動を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な機構で、操作も簡潔かつ容易であり、また必要にして十分な被収納物を上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることができ、且つ引出内の収納空間を最大限まで広げることが可能な収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。
【図2】ベースキャビネットの分解斜視図である。
【図3】載置部材と支持部材とを引出に取り付けた状態を示す図である。
【図4】載置部材を説明する図である。
【図5】支持部材の詳細を示す図である。
【図6】アームの詳細を説明する図である。
【図7】柱部材の詳細を説明する図である。
【図8】カバーおよび落下防止部材の詳細を示す図である。
【図9】バネによるリンク機構の動きを説明する図である。
【図10】上下ブロックおよび調整ネジの詳細を説明する図である。
【図11】上下ブロックおよび調整ネジを用いたバネの調整を説明する図である。
【図12】摺動固定部による支持部材の高さの変更を説明する図である。
【図13】レールの詳細を示す図である。
【図14】引出を引き出す際の昇降機構による載置部材の動作を説明する図である。
【図15】載置部材をアームに吊下した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。キッチン100は一枚の天板110(ワークトップ)の下に複数の収納庫(キャビネット)を備えた、いわゆるシステムキッチンである。天板110は合成樹脂(人工大理石)やステンレスなどからなり、キッチン100の全体の上面を覆っている。
【0024】
天板110には、組み込み式に取り付けられたコンロ112、調理スペース114、天板110に一体形成されたシンク116が設けられる。シンク116とコンロ112の間に位置する調理スペース114は平坦なテーブル面であり、主に調理を行うのに利用される。
【0025】
天板110の下は、コンロ112本体が設置されているコンロキャビネット120と、調理スペース114に対応したベースキャビネット130と、シンク116が設置されているシンクキャビネット140といった各収納庫で構成される。各収納庫は収納スペースとして機能し、収納庫内の空きスペースには、コンロ112への配線や、シンク116および水栓への給排水管なども収容されている。このように、天板110の下では、天板110の上のシンク116やコンロ112といった各構成に対応した収納庫がその高さおよび奥行きを等しくして複数設けられている。
【0026】
各収納庫は、被収納物を収納するために、様々な大きさの引出をスライド自在に設けている。例えばコンロキャビネット120は、上部にコンロ112のグリル112aおよび操作パネル112bを備え、その脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス122が配設されている。コンロキャビネット120の中央部、すなわちグリル112aの下には幅の広い大きな引出124が配設され、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納することが可能になっている。またコンロキャビネット120の下部の床近傍には、引出式の足元収納であるフロアコンテナ126が配設されている。
【0027】
同様に、ベースキャビネット130には複数の比較的小さな引出132、134およびフロアコンテナ136が備え付けられている。シンクキャビネット140にはフロアコンテナ146、およびかかるフロアコンテナ146から天板110に到る高い前板を備えた引出144が備え付けられている。
【0028】
次に、本実施形態の特徴である収納庫について説明する。上記したコンロキャビネット120、ベースキャビネット130、シンクキャビネット140のうち、ベースキャビネット130を例にとって説明する。
【0029】
図2はベースキャビネット130の分解斜視図、図3は載置部材150と支持部材160とを引出134に取り付けた状態を示す図である。上述したように、ベースキャビネット130には上段の引出132、中段の引出134、下段のフロアコンテナ136がスライド自在に収容される。なお、引出132、134、136そのものを出し入れするためのレール機構は一般的なものでよいため、その説明を省略する。
【0030】
中段の引出134には、その内部にさらに被収納物を載置可能な載置部材150を配置されており、載置部材150は、後述する昇降機構によって上下移動可能となっている。図4は載置部材150を説明する図である。本実施形態において載置部材150は、天面が開放された箱状であって、いわゆるポケット形状を成している。
【0031】
図4(a)に示すように、載置部材150は、仕切り154および仕切り溝156を有する。これにより、仕切り溝156に仕切り154を挿入し、載置部材150内の収納空間を分割することができる。したがって、載置部材150内に載置した被収納物の整理整頓が可能となる。特に、仕切154および仕切り溝156を複数設けることによって、載置部材150内の空間を複数に分割し、分割された空間の大きさを所望の大きさに調節することができ、利便性が向上する。
【0032】
なお、本実施形態においては、仕切り154の数を1つ、仕切り溝156の数を3つとしたが、これに限定するものではない。仕切り154および仕切り溝156の数は各々1つ以上であればよく、好ましくは、仕切り溝156の数は仕切り154の数より多いとよい。
【0033】
また載置部材150の上縁の一辺には鈎状の嵌合部152が形成されており、かかる嵌合部152を後述する支持部材160の梁166に吊下する(図3参照)ことによって載置部材150が梁166(支持部材160)に対して着脱可能に構成されている。これにより、載置部材150が交換可能となるため、形状や容積、取り付ける個数などを選択することができる。また載置部材150を取り外せることから、清掃も容易となる。
【0034】
図4(b)に示すように、嵌合部152はU字状の嵌合溝152aを有し、嵌合溝152aは2つの平坦部152bを有する。平坦部152b間の幅、すなわち嵌合溝152aの幅をW1とすると、かかる幅W1は後述する梁166の幅W2と略同一である(図5(b)参照)。これにより、梁166に吊下した際の載置部材150の回動を防止でき、載置部材150内に載置された被収納物の安定性が向上する。また平坦部152bの高さをH1とすると、かかる高さH1は、後述する梁166の平坦部166aの高さH2と略同一であることが好ましい。これにより、載置部材150の安定性を更に向上することが可能となる。
【0035】
昇降機構は、引出134内に設けられる支持部材160(図5参照)および柱部材180と、ベースキャビネット130内の壁板130aに設けられるレール200とから構成される。支持部材160および柱部材180の各要素ならびにレール200は引出134の左右方向に対称に構成されており、梁166を除いて左右両側にそれぞれ2つ(鏡面対称に)配置されている。以下、昇降機構を構成する部材について詳述し、次に、昇降機構を補助するためのリンク機構、および昇降機構を用いた載置部材150の昇降について詳述する。
【0036】
支持部材160は、載置部材150を支持する部材である。図5は支持部材160の詳細を示す図である。図5(a)は支持部材160を引出134の外側から見た斜視図であり、図5(b)は支持部材160を引出134の内側から見た斜視図である。図5に示すように、支持部材160は、摺動部材162と、連結部材164と、梁166と、アーム168と、複数のプーリ(上プーリ170および下プーリ172)とから構成される。
【0037】
摺動部材162は、引出134の両側に配置され、引出134に固定設置される柱部材180によって上下方向に摺動可能に構成されている。そして、摺動部材162には、梁166およびアーム168を連結可能な連結部材164が装着される。これらにより、支持部材160全体および載置部材150が、柱部材180に対して上下方向に摺動可能となる。
【0038】
また摺動部材162は、上下ローラ162aを備えている。これにより、上下ローラ162aは、後述する柱部材180の上下レール180b内に挿入され、かかる上下レール180b内を移動する。これにより、摺動部材162は、柱部材180から脱落することなく、かかる柱部材180上を上下に移動することが可能となる。なお、本実施形態において、摺動部材162は上下ローラ162aを2つ備えているが、これに限定するものではなく、摺動部材162は上下ローラ162aを1つ以上備えればよい。
【0039】
更に摺動部材162は、軸部162bを有する。これにより、摺動部材162(支持部材160)が後述する第1リンク部材182を軸支可能となる。なお、本実施形態において、摺動部材162は軸部162bを2つ備えているが、これに限定するものではなく、摺動部材162は軸部162bを1つ以上備えればよい。
【0040】
また本実施形態において、摺動部材162は、後述する固定ネジ178を螺合しうるねじ穴162cを有する。かかるねじ穴162cは、後述する柱部材180の貫通穴194と合わせて摺動固定部を構成する。これにより、アーム168を支持部材160から脱着させ、支持部材160を所定の高さで柱部材180に固定し、支持部材160に支持された載置部材150を所定の高さで使用することが可能となる。なお、その詳細については後述する。
【0041】
連結部材164は、梁166を接続するための梁接続部164aと、後述するアーム168を接続するためのアーム接続部164bを有する。これにより、引出134の両側に設けられた2つの摺動部材162に連結部材164を各々装着し、2つの連結部材164の梁接続部164aに梁166の端部を接続することで、摺動部材162と梁166とを連結し、載置部材150を収容する枠体を形成することができる。そして、連結部材164のアーム接続部164bにアーム168を接続することで、摺動部材162とアーム168とが連結され、摺動部材162がアーム168の動きに連動することが可能となる。
【0042】
梁166は、載置部材150の嵌合部152が吊下されることでかかる載置部材150を支持する。そして、梁166の端部に連結部材164が連結されることで、梁166は連結部材164が装着された摺動部材162と一体に動作する。
【0043】
また図5(b)に示すように、梁166はその側面に平坦部166aを有する。かかる平坦部166aの幅W2は載置部材150の嵌合溝152aの幅W1と、平坦部166aの高さH2は、嵌合溝152aの平坦部152bの高さH1と各々略同一である。これにより、上述したように、梁166に吊下した(支持部材160に装着した)載置部材150の回動を防止し、載置部材150に載置された被収納物の安定性が向上する。
【0044】
なお、本実施形態においては摺動部材162および連結部材164、梁166をすべて別体としたが、これに限定するものではなく、これらを一体に成型してもよい。
【0045】
アーム168は、連結部材164を介して摺動部材162に、引出134の奥側に向かって延長するように連結(接続)される。そして、アーム168の奥側には、複数のプーリ(上プーリ170および下プーリ172)が設けられている。上プーリ170および下プーリ172は、引出134の移動に伴って後述するレール200上を移動する。これにより、アーム168が引出134の動きに連動することが可能となる。
【0046】
本実施形態においてアーム168は腕部168aとL字部168bとからなり、腕部168aの奥側先端にL字部168bを固定している。そして、L字部168bは奥側先端が上方にL字状に屈曲しており、かかる先端(高い位置)に上プーリ170が、腕部168aとの接続部付近(低い位置)に下プーリ172が設置されている。
【0047】
またアーム168は固定ネジ178により連結部材164(支持部材160)に固定されている。したがって、固定ネジ178を嵌脱することより、アーム168を着脱可能となる。これにより、後に詳述するようにアーム168を支持部材160から脱着させ、支持部材160を所定の高さで柱部材180に固定することが可能となる。
【0048】
更に本実施形態において、上記のアーム168、特に腕部168aはその側面に平坦部168cを有する。図6はアーム168の詳細を説明する図である。図6(a)に示すように、アーム168の平坦部168cの幅W3は梁166の平坦部166aの幅W2(図5参照)と、アーム168の平坦部168cの高さH3は梁166の平坦部166aの高さH2(図5参照)と各々略同一である。換言すれば、アーム168の平坦部168cの幅W3は載置部材150の嵌合溝152aの幅W1と、アーム168の平坦部168cの高さH3は嵌合溝152aの平坦部152bの高さH1と各々略同一である。これにより、図6(b)に示すように、載置部材150をアーム168(腕部168a)にも吊下することが可能となる。したがって、使用者は自身の好みや用途に応じて載置部材150の装着位置を適宜変更することができる。またアーム168(腕部168a)の側面にも平坦部168cを設けたことで、アーム168に載置部材150を吊下した場合においても載置部材150の回動が防止される。
【0049】
なお、実施形態においてはアーム168を腕部168aとL字部168bとから構成しているが、これに限定するものではなく、これらを一体に形成してもよい。
【0050】
柱部材180は、支持部材160(摺動部材162)を上下方向に案内する部材である。図7は、柱部材180の詳細を説明する図である。図7(a)は柱部材180にカバー198を取り付けた状態を示す図であり、図7(b)は柱部材180からカバー198を取り外した状態を示す図である。図7に示すように、柱部材180は、固定部180aと、上下レール180bと、リンク機構を構成する各部材を備える。
【0051】
固定部180aは、柱部材180を引出134の前板134aの後面に固定設置するための部材である。これにより、引出134が引き出されるまたは押し出されると、柱部材180が引出134と同じ方向に移動することが可能となる。
【0052】
上下レール180bは、摺動部材162(支持部材160)を上下に案内するレールであり、その断面はC字状である。これにより、上下レール180bに上述した摺動部材162の上下ローラ162aを挿入することで、上下ローラ162aが上下レール180b内を移動可能となるため、柱部材180が摺動部材162(支持部材160)を上下に案内することができる。
【0053】
また柱部材180は、図7に示すように、リンク機構等を覆うカバー198を備える。これにより、後述するバネ186等のリンク機構を構成する部材を、引出134内に収納された被収納物との衝突から防護し、それらの部材の破損を防ぐことが可能となる。またカバー198は、後述する上下ブロック190の位置を観察するための観察窓198aを備える。これにより、後述する調整ネジ192により移動させた上下ブロック190の位置、およびバネ186の弛張度合いを目視で確認することができる。
【0054】
図8は、カバー198および落下防止部材196の詳細を示す図である。図8(a)に示すように、カバー198はその側面に、落下防止部材196の先端が挿入される挿入孔198bを有する。
【0055】
落下防止部材196は、引出134に設けられ(図2参照)、被収納物の当該引出134からの落下を防止するための部材である。かかる落下防止部材196は、引出134の側板134cの上方、且つアーム168が上下移動する範囲より下方に略水平に配置される。すなわち、落下防止部材196は、支持部材160が下死点にあるとき(載置部材150が最も下降しているとき)の当該支持部材160の位置よりも低い位置に配置される。これにより、引出134が引き出される、または押し込まれる動作に連動して、アーム168が上下に移動したとしても、アーム168と落下防止部材196との衝突を回避することができ、これらの損傷を防ぐことが可能となる。
【0056】
図8(b)は、カバー198を介した柱部材180への落下防止部材196の装着を説明する図である。落下防止部材196を柱部材180に装着する場合、柱部材180にカバー198を装着し、かかるカバー198が有する挿入孔198bに落下防止部材196の先端を挿入する。これにより、落下防止部材196はカバー198を介して柱部材180に取り付けられる。
【0057】
次に、螺子196bにより落下防止部材196の後端を引出134の背板134bに支持させる(固定する)。これにより、落下防止部材196が引出134に設置される。このように、落下防止部材196の先端を柱部材180に取り付け、後端を引出134の背板134bに支持させることにより、落下防止部材196の先端が引出134の前板134aに取り付けられている場合と比べて、引出134内の収納空間を広げることができる。なお、落下防止部材196の背板134bへの取付に際しては、必ずしも螺子196bを用いる必要はなく、落下防止部材196を背板134bへ支持可能であれば如何なる方法であってもよい。
【0058】
また上述したように柱部材180はリンク機構を構成する各部材を備えている。リンク機構は、複数のリンク部材が、相互に軸支され、且つ柱部材180と支持部材160とを連結され、昇降機構における載置部材150の昇降を補助する。かかるリンク機構は、第1リンク部材182と、クランク形状を有する第2リンク部材184と、バネ186と、規制部材188と、上下ブロック190と、調整ネジ192と、貫通穴194とから構成される(図7参照)。
【0059】
第1リンク部材182は、金属からなる板状の部材である。第1リンク部材182は、その一端が摺動部材162の軸部162bに回動可能に固定されることで、摺動部材162(支持部材160)から下方に向かって軸支される。そして、第1リンク部材182の他端は第2リンク部材184と回動可能に連結される。
【0060】
第2リンク部材184(クランク)は、金属からなる板状の部材であり、その一端が第1リンク部材182に回動可能に連結される。そして、第2リンク部材184の他端は、柱部材180に回動可能に軸支される。
【0061】
バネ186は、本実施形態においては引っ張りバネであり、その一端が第1リンク部材182と第2リンク部材184の連結部(リンク機構)に、他端が後述する上下ブロック190のバネ係合部190aに接続されている。これにより、摺動部材162(支持部材160)が柱部材180に対して上方に付勢される。
【0062】
規制部材188は、回転止めの役割を果たす部材である。これにより、載置部材150の下降、すなわち支持部材160の下降に伴って第1リンク部材182および第2リンク部材184が回動し、支持部材160が下死点に到達すると、第1リンク部材182および第2リンク部材184は規制部材188に当接する。したがって、支持部材160の下死点到達後における第1リンク部材182および第2リンク部材184の更なる(過剰な)回動を防止することができる。
【0063】
本実施形態において、規制部材188は緩衝材188aを備える。これにより、第1リンク部材182や第2リンク部材184が規制部材188に当接した際の衝撃を緩和することができ、第1リンク部材182および第2リンク部材184の損傷を防止し、且つこれらの衝突音を低減することができる。かかる緩衝材188aとしては、発泡樹脂、エアーパッキン、ゴム等、衝撃を吸収する素材を好適に用いることができる。
【0064】
図9はバネ186によるリンク機構の動きを説明する図である。図9(a)は、引出134がベースキャビネット130に収納され、支持部材160が上昇していない状態を示している。図9(b)は、引出134をベースキャビネット130から途中まで引き出し、支持部材160が途中まで上昇した状態を示している。図9(c)は、引出134をベースキャビネット130から完全に引き出し、支持部材160が最上部まで上昇した状態を示している。図9(d)は、規制部材188を備えていない状態を示している。なお、理解を容易にするために、以下の説明に用いない部材については図示を省略する。
【0065】
図9(a)では、バネ186は第1リンク部材182および第2リンク部材184の連結部に引っ張られ完全に伸びている状態である。そして、この状態から引出134をベースキャビネット130から引き出すと(図示せず)、後述する昇降機構により引出134の動きに連動して支持部材160が矢印の方向に上昇し始める。すると、第1リンク部材182および第2リンク部材184は矢印の方向に回動し始め、これに伴ってバネ186は矢印の方向に縮み、支持部材160(およびこれに支持された載置部材150)は上方に付勢されて図9(b)に示す状態となる。
【0066】
そして、更に引出134を引き出すと(図示せず)、図9(b)に示す状態から支持部材160は矢印の方向に更に上昇し、第1リンク部材182および第2リンク部材184は矢印の方向に更に回動し、バネ186は矢印の方向に更に縮む。これにより、支持部材160(およびこれに支持された載置部材150)は更に上方に付勢される。その結果、図9(c)に示すように、支持部材160は最上部まで上昇する。
【0067】
上記説明したリンク機構を備えることで、バネ186の力により支持部材160が上方に付勢される。これにより、引出134を引き出す動作が補助され、載置部材150を上昇させる力を低減することができる。特に、バネ186をリンク機構(第1リンク部材182と第2リンク部材184の連結部)に接続して支持部材160を上方に付勢する構成としたことで、バネ186の力を支持部材160に直接伝達するのではなく、支持部材160の位置に応じて適切な付勢力を得ることができ、快適な使い勝手を実現することが可能となる。
【0068】
なお本実施形態においては、第2リンク部材184の2つの回転軸の距離L4は、支持部材160が下死点にあるとき(図9(a)参照)の第1リンク部材182の下側の回転軸から第2リンク部材184と柱部材180の回転軸までの高さH4とほぼ等しくなるよう構成している。これにより、支持部材160が下死点に到達するあたりでは、第1リンク部材182と第2リンク部材184の回転軸が、当該回転軸の軌跡である円の下側になる。これにより、支持部材160が上下移動の下死点にあるとき、第2リンク部材184はバネ186による付勢力の方向と略平行の姿勢となる。
【0069】
詳細には、バネ186による付勢力は、その回転軸においては軌跡である円の接線方向に作用するため、支持部材160が下死点に到達するあたりでは、リンク機構のクランクがバネ186の張力を支えることとなり、支持部材160からすると上方へ付勢する力(分力)は極めて小さくなる。したがって、支持部材160が下死点に近づくと、バネ186の上方への付勢力が急激に弱くなる。これにより、引出134をベースキャビネット130(収納庫)に押し込む際に押す力が楽になり、単にバネ186を直結する場合よりも使い勝手を向上させることができる。
【0070】
また上記構成によれば、引出134が収納されているときに、バネ186の付勢力によってプーリ170、172がレール200に押圧される力も軽減することができる。詳細には、バネ186を支持部材160に直結すると、後述するレール200の傾斜部210bおよび220bより奥側の奥側水平部210aおよび220aに上プーリ170および下プーリ172が進入している間は、上プーリ170および下プーリ172は最大の力でレール200に付勢されることとなる。このため、上プーリ170および下プーリやレール200を樹脂で成型した場合に、これらの当接面に変形を招いたり、摩擦が大きくなって削れたりするおそれがある。しかし上記のように構成したことにより、バネ186の付勢力をリンク機構が受けることになるため、レール200に対するプーリ(上プーリ170および下プーリ172)の付勢力を軽減し、これらの変形や摩耗を防止することができる。
【0071】
また本実施形態のように規制部材188を備えることで、支持部材160が下死点に到達すると、第1リンク部材182および第2リンク部材184は規制部材188に当接するため、それらの動作(回動)が停止する(図9(a)参照)。仮に、規制部材188を備えていない場合、第1リンク部材182および第2リンク部材184は支持部材160の下降に伴って回動し、支持部材160が下死点に到達すると、第1リンク部材182と第2リンク部材184の回転軸が、当該回転軸の軌跡である円の下端を通り過ぎ、図9(d)に示す状態となる。
【0072】
この場合、リンク機構がバネ186によって引き上げられていることから、回転軸が円の下端を通り過ぎたところで保持されてしまって、ふたたび引出134を引き出した際に第1リンク部材182および第2リンク部材184が回動できなくなり、支持部材160(載置部材150)が上昇しなくなってしまう。しかし、規制部材188を備えることで、支持部材160の下死点到達後における第1リンク部材182および第2リンク部材184の更なる(過剰な)回動を防止し、上述した事態を回避することが可能となる。
【0073】
上下ブロック190は、後述する調整ネジ192が操作されることで柱部材180内を上下に移動する。図10は上下ブロック190および調整ネジ192の詳細を説明する図である。図10(a)に示すように、上下ブロック190はバネ係合部190aを有し、図10(b)に示すようにバネ係合部190aにバネ186の端部が係合される。これにより、後述するように調整ネジ192を操作して上下ブロック190を移動させ、バネ186の弛張度合いを調整することが可能となる。
【0074】
調整ネジ192は、上下ブロック190を移動させるためのネジであり、これにより、かかる上下ブロック190を介してバネ186の弛張度合いを調整することができる。本実施形態において、調整ネジ192の頭192aは柱部材180の外面に配置される(図10(b)参照)。これにより、バネ186の力(弛張度合い)を調整する際に、柱部材180や支持部材160を分解する等の作業を行うことなく、柱部材180の外側から容易に調整ネジ192を操作することができる。
【0075】
図11は、上下ブロック190および調整ネジ192を用いたバネ186の調整を説明する図である。図11(a)では、上下ブロック190は上方に位置し、バネ186はほぼ最大に伸びた状態となっている。すなわち、バネ186が摺動部材162(支持部材160)を上方に付勢する力が大きい状態である。
【0076】
この状態からバネ186の力(弛張度合い)を調整する場合、工具(図示せず)を用いて、柱部材180の外面に設けられた調整ネジ192の頭192a(図10(b)参照)を回転させる。これにより、上下ブロック190は矢印の方向に移動し、バネ186は矢印の方向に縮むこととなる。上記の操作により、上下ブロック190は図11(b)に示すように移動範囲の最下部に到達し、バネ186は最も縮んだ状態となる。したがって、バネ186が摺動部材162(支持部材160)を上方に付勢する力を最も小さくすることができる。
【0077】
また図11(c)および(d)に示すように、上記の操作に際して、柱部材180のカバー198に設けられた観察窓198aから上下ブロック190のバネ係合部190aの先端を観察することができる。これにより、利用者は、バネ186の力(弛張度合い)を確認し、容易かつ確実にバネ186の状態を把握することが可能となる。
【0078】
上記説明したように、本実施形態では、調整ネジ192を回転させることで、上下ブロック190を上下に移動させ、リンク機構においてバネ186が摺動部材162(支持部材160)を付勢する力、すなわち支持部材160に支持された載置部材150を上昇させる力を調整することができる。これにより、載置部材150に収納される被収納物の重さ(量)や種類に応じてバネ186の力を調整することが可能となる。
【0079】
貫通穴194(図7参照)は、上述した固定ネジ178を貫通可能な穴である。かかる貫通穴194は、上述した摺動部材162のねじ穴162cと合わせて摺動固定部を構成する。これにより、アーム168を支持部材160から脱着させ、支持部材160を所定の高さで柱部材180に固定し、支持部材160に支持された載置部材150を所定の高さで使用することが可能となる。
【0080】
図12は、摺動固定部による支持部材160の高さの変更を説明する図である。図12に示すように、摺動固定部は、柱部材180に設けられた貫通穴194と、摺動部材162(支持部材160)に設けられ、固定ネジ178を螺合しうるねじ穴162cとからなる。
【0081】
支持部材160の高さを変更する場合、まず、図12(a)に示す状態のアーム168から固定ネジ178を嵌脱し、アーム168を連結部材164(支持部材160)から脱着し、図12(b)に示す状態とする。次に、連結部材164およびこれを装着する摺動部材162(支持部材160)を所定の高さまで手動で移動し、摺動部材162に設けられたネジ穴162cと柱部材180に設けられた貫通穴194とを対向させる。そして、貫通穴194を介して固定ネジ178をねじ穴162cに螺合することにより、図12(c)に示すように支持部材160が所定の高さで柱部材180に固定される。
【0082】
上記説明したように、本実施形態では、アーム168と連結部材164とを接続する固定ネジ178を外し、外した固定ネジ178をネジ穴162cに螺合するという簡便な操作で、摺動固定部により支持部材160を所定の高さで柱部材180に固定し、載置部材150を所定の高さで使用することが可能となる。したがって、子供が昇降機構をいたずらに使用してしまう場合等、すなわち載置部材150を昇降させたくない場合や、引出134に収納される被収納物の使用頻度が低い場合等、すなわち載置部材150を昇降させる必要がない場合において、載置部材150の昇降を停止させることができる。
【0083】
また貫通穴194とねじ穴162cを対向させた位置で支持部材160を固定できることから、バネ186の付勢力によらず位置決めすることができる。したがって例えば、支持部材160(および載置部材150)を引き下げた位置で固定することができる。そして、アーム168を支持部材160に固定する場合(載置部材150を昇降させる場合)と、支持部材160を柱部材180に固定する場合(載置部材150の昇降を停止する場合)の両方において同じ固定ネジ178を用いるため、固定ネジ178の紛失を防ぐことができる。
【0084】
レール200は、ベースキャビネット130(収納庫)内の壁板130aに配置され、上プーリ170および下プーリ172を案内する(図3参照)。図13はレール200の詳細を示す図である。図13に示すように、レール200には複数の溝が設けられており、上方の溝は上プーリ170が走行する上レール210であり、下方の溝は下プーリ172が走行する下レール220である。
【0085】
上レール210は、その中央部には、前側に向かって上昇する傾斜部210bを、傾斜部210bより前側には、略水平に上プーリ170を案内する前側水平部210cを、傾斜部210bより奥側には、略水平に上プーリ170を案内する奥側水平部210aを有している。そして上レール210と同様に、下レール220も、下プーリ172を案内する奥側水平部220a、傾斜部220b、前側水平部220cを有している。
【0086】
上記構成により、引出134を引き出すと、アーム168に設けられたプーリ(上プーリ170および下プーリ172)は、レール200上をその形状に沿って引出134の奥側から手前側に移動することとなる。そして、プーリが傾斜部210bおよび220bに到達すると、その後、プーリは傾斜部210bおよび220bの形状(傾斜)に沿って移動しながら上昇するため、アーム168も水平方向に移動し且つ上方にも移動することとなる。これに伴い、アーム168に連結した支持部材160が柱部材180に案内され上方に移動し(上昇し)、支持部材160に支持された載置部材150が上昇する。したがって、レール200とプーリとアーム168を用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置された載置部材150を昇降させることが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態において奥側水平部210aおよび220a、傾斜部210bおよび220b、前側水平部210cおよび220cは概ね直線であり、その交点(屈曲点)はアールが付けられている。このとき、アールの曲率半径は、上プーリ170、下プーリ172の半径よりも大きい(曲がりが緩やかである)ことが好ましい。ただし、さらに傾斜部210bおよび220bをS字を描くような滑らかな曲線としたり、奥側水平部210aおよび220aや前側水平部210cおよび220cも傾斜、屈曲、ないしは湾曲させたりすることを除外するものではない。
【0088】
上記構成のベースキャビネット130における、昇降機構による載置部材150の動作について説明する。図14は、引出134を引き出す際の昇降機構による載置部材150の動作を説明する図である。なお上記構成においてバネ186はほとんど外観から観察できないが、図14では説明の便宜上バネ186を描いている。
【0089】
図14(a)は引出134がベースキャビネット130に収容されている状態を示している。このとき、支持部材160(摺動部材162等)はバネ186によって上方向に付勢されているが、上プーリ170および下プーリ172がレール200の奥側水平部210aおよび220aにあるため、高さ方向の位置が規制される。したがって、載置部材150は最も下降した状態にある。
【0090】
図14(b)は引出134を引き出した状態を示している。このとき、上プーリ170はおよび下プーリ172は傾斜部210bおよび220bにあるため、引出134を引き出すとアーム168が上昇し、支持部材160および載置部材150も上昇する。すなわち、引出134を引き出す力が、載置部材150を上昇させる力に変換される。このとき、リンク機構により支持部材160(摺動部材162等)が上方に付勢されるため、引出134を引き出すために要する力を低減することができる。
【0091】
図14(c)は引出134を概ね引き出した状態を示している。このときプーリ170、172はレール200の前側水平部210cおよび220cにある。これにより、引出134を引き出した状態において載置部材150の重量を前側水平部210cおよび220cが支持することとなり、引出134がベースキャビネット130内へ戻ってしまうことを防止できる。このとき柱部材180に対する摺動部材162の移動限界またはバネ200の縮小限界により、摺動部材162の高さは上限に到る。したがって下プーリ172はレール200の前側先端より突出してしまっても支障がない。
【0092】
引出134をベースキャビネット130に収納する場合は、上記の逆の動作となる。引出134を引き出された状態(図14(c)参照)から押し込むと、図14(b)に示すようにプーリ170、172が傾斜部210bおよび220bにさしかかる。すると、プーリ170、172が傾斜部210bおよび220bに案内されて下降するため、アーム168が水平の姿勢を保ったまま引き下げられる。これにより、単に引出134を押し込む操作によって、支持部材160ひいては載置部材150が下降する。
【0093】
上記説明した如く、本実施形態にかかる収納庫(ベースキャビネット130)によれば、引出134を引き出すと、アーム168に設けられたプーリ(上プーリ170および下プーリ172)がレール200上を引出134の奥側から手前側に移動し、アーム168に連結した支持部材160が柱部材180に案内され上方に移動する(上昇する)。したがって、レール200とプーリとアーム168を用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置され、支持部材160に支持された載置部材150を昇降させることができ、載置部材150に収納した被収納物を上昇させて取り出しやすくすることが可能となる。このとき、引出134を出し入れする操作に伴って載置部材150が昇降するため、操作が簡潔かつ容易であり、また被収納物を屈まずに取り出すために必要にして十分な高さに上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることができる。そして、落下防止部材196の先端は柱部材180に取り付けられ、後端が引出134の背板134bに支持されていることから、落下防止部材196の先端が引出134の前板134aに取り付けられている場合と比べて、引出134内の収納空間を広げることが可能となる。
【0094】
なお、上述した実施形態では、載置部材150を梁166に吊下したが、既に述べたように載置部材150をアーム168に吊下することも可能である。図15は、載置部材150をアーム168に吊下した状態を示す図である。図15に示すように、載置部材150をアーム168に吊下する場合、梁166は設ける必要がなく、支持部材160および柱部材180は、載置部材150を吊下するアーム168側のみに設ければ足りる。したがって、例えば引出134の片側のアーム168のみに載置部材150を吊下するのであれば、支持部材160および柱部材180は、引出134の片側のみに設ければ足りる。
【0095】
なお、上記実施形態においてはベースキャビネット130の引出134について説明したが、他の引出132やフロアコンテナ136に載置部材150を設けてもよく、また他の収納庫であるコンロキャビネット120やシンクキャビネット140の引出に載置部材150を設けてもよい。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えばキッチンのように引出を備えた収納庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 …システムキッチン、
110 …天板、
112 …コンロ、
112a …グリル、
112b …操作パネル、
114 …調理スペース、
116 …シンク
120 …コンロキャビネット
122 …スパイスボックス
124 …引出
126 …フロアコンテナ
130 …ベースキャビネット
130a …壁板
132 …引出
134 …引出
134a …前板
134b …背板
134c …側板
136 …フロアコンテナ
140 …シンクキャビネット
144 …引出
146 …フロアコンテナ
150 …載置部材
152 …嵌合部
152a …嵌合溝
152b …平坦部
154 …仕切り
156 …仕切り溝
160 …支持部材
162 …摺動部材
162a …上下ローラ
162b …軸部
162c …穴
164 …連結部材
164a …梁接続部
164b …アーム接続部
166 …梁
166a …平坦部
168 …アーム
168a …腕部
168b …L字部
168c …平坦部
170 …上プーリ
172 …下プーリ
178 …固定ネジ
180 …柱部材
180a …固定部
180b …上下レール
182 …第1リンク部材
184 …第2リンク部材
186 …バネ
188 …規制部材
188a …緩衝材
190 …上下ブロック
190a …バネ係合部
192 …調整ネジ
192a …頭
194 …貫通穴
196 …落下防止部材
196b …螺子
198 …カバー
198a …観察窓
198b …挿入孔
200 …レール
210 …上レール
210a …奥側水平部
210b …傾斜部
210c …前側水平部
220 …下レール
220a …奥側水平部
220b …傾斜部
220c …前側水平部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、
前記引出の側板の上方に略水平に配置された落下防止部材と、
前記引出内に配置され、内部に被収納物を載置可能な載置部材と、
前記載置部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を上下方向に案内する柱部材と、を備え、
前記落下防止部材の先端は前記柱部材に取り付けられ、後端は前記引出の背板に支持されていることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
当該収納庫は、さらに、
前記支持部材から奥側に向かって連結されたアームと、
前記アームの奥側に設けられたプーリと、
前記収納庫内の壁板に配置され前記プーリを案内するレールと、を備え、
前記落下防止部材は、前記アームが上下移動する範囲より下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項3】
前記支持部材は側面に平坦部を有する梁を備え、
前記載置部材は前記梁に上方から嵌合する嵌合部を備え、該梁に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項4】
当該収納庫は、さらに、
前記支持部材から奥側に向かって連結されたアームと、
前記アームの奥側に設けられたプーリと、
前記収納庫内の壁板に配置され前記プーリを案内するレールと、を備え、
前記アームは側面に平坦部を有し、該アームの幅は前記支持部材の梁の幅と略同一であることを特徴とする請求項3に記載の収納庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−201063(P2010−201063A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52016(P2009−52016)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【出願人】(390013321)株式会社ダイドー (30)
【Fターム(参考)】