説明

収納式タラップ

【課題】設置に必要なスペースが極めて小さい収納式タラップを提供する。
【解決手段】所定長さのはしご部1と、はしご部1の幅内で取付対象物に取り付けられるヒンジ部4により、はしご部1のステップ配置面と略直交する方向に回動自在、かつ長手方向にスライド自在にはしご部1を支持する支持部材2とを備える。はしご部1の下端には、はしご部1の回動軸と平行な軸心周りに回転可能な車輪7が設けられ、車輪7には、車輪7と接触した際に車輪7の回転を禁止するストッパ3が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建屋の壁面等に設置されるタラップに関し、特に直立した状態から傾斜させた状態に引き出して使用しうる収納式タラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、学校の校舎やマンションの屋上には、一段高く形成されている給水施設やエレベータ等の管理施設があり、これらの施設には上に登って点検するためのタラップが付設されている。
【0003】
このタラップは、一般に施設の壁面に設置された複数のコの字状の鉄棒からなり、これらの鉄棒は水平に突出した状態で上下に並べられ、上記壁面に埋め込まれている。この従来のタラップは、数カ月か1年という長いスパンでしか使用されないことから、通行などの邪魔になる等の理由により、通常は人の背丈より低い部分はカットされており、使用時には脚立等を用いる必要がある上、上記鉄棒が垂直に段を形成するために、昇り降りには必ず腕の支えを必要とする等の不便さを有している。
【0004】
この対策として、本願発明者は、後掲の特許文献1に、タラップのはしご部を長手方向にスライド自在、かつ当該はしご部の踏み棒と略直角の方向に回動可能に支持する支持部材を備えた収納式タラップを提案している。
【特許文献1】特開2000−145340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の収納式タラップでは、支持部材は、はしご部の短手方向の外側に突出したヒンジ部を介して取付対象物に取り付けられている。この場合、取付対象物の取付位置には、はしご部の短手方向の幅に両側に突出したヒンジ部の幅を加えた幅がなければタラップを設置することができない。
【0006】
本発明は上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、設置に必要なスペースが極めて小さい収納式タラップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る収納式タラップは、所定長さのはしご部と、前記はしご部の幅内で取付対象物に取り付けられるヒンジ部により、当該はしご部のステップ配置面と略直交する方向に回動自在、かつ長手方向にスライド自在に前記はしご部を支持する支持部材とを備える。前記はしご部の下端には、前記はしご部の回動軸と平行な軸心周りに回転可能な車輪が設けられ、当該車輪には、前記車輪と接触した際に前記車輪の回転を禁止するストッパが設けられる。
【0008】
本構成によれば、取付対象物に少なくともはしご部の短手方向の幅に対応するスペースがあれば収納式タラップを設置することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収納式タラップによれば、極めて小さいスペースに収納式タラップを設置することができる。また、はしご部が支持部材により取付位置に対し回動可能かつスライド自在であることから、はしご部の下部を建物等から離すように引き出して傾斜させた状態で使用することが可能である。このため、手を離した状態であっても、安全にタラップを昇降することができる。さらに、はしご部は地面から立てかけられることから、従来のような脚立も不要である。
【0010】
また、使用後は、はしご部を直立した状態にして上方にスライドさせて所要高さまで移動させて保持することができるため、邪魔にならない高さにコンパクトに収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態における収納式タラップの使用時の状態を示す側面図である。また、図2は当該収納式タラップを直立させた状態を示す側面図である。さらに、図3は当該収納式タラップの正面図である。
【0012】
本実施形態の収納式タラップは、上記各図に示すように、所定長さのはしご部1と、このはしご部1を長手方向にスライド自在に支持する支持部材2とを備える。当該支持部材2の一部として、支持部材2を建物等の取付位置Tに、はしご部1のステップ6の設置面と略直交する方向に回動自在に固定するヒンジ部4(後で詳述する)が設けられている。
【0013】
上記はしご部1は、断面コ字状のチャンネル材からなる1対の側板5と、これら側板間に水平にわたされた複数段のステップ6とからなる。また、各側板5にはそれぞれ手すり部8が付設されている。上記各側板5の下端には、上記ヒンジ部4の軸(はしご部の回動軸)と平行な軸心周りに回転可能な車輪7が付設されている。当該車輪7には、車輪7の回転を選択的に禁止するストッパ3が設けられる。ストッパ3は、例えば、車輪側面に設けられたストッパレバーと、当該ストッパレバーの移動(ここでは、回転移動)に連動して車輪7あるいは車輪7の回転軸に対して接離する図示しない当接部材とにより構成することができる。なお、図1から図3では、ストッパレバーのみを図示している。
【0014】
上記支持部材2は、図4および図5に示すように、上記外向きに開口する断面コ字状の側板5に対してかみ合うことが可能な形状で内向きに開口して配設された1対のコ字状の支持部材本体9を備える。当該支持部材本体9の両側壁10には、上記はしご部側板5の一方の側壁11を挟むように設けられた3個のローラ12が設けられている。すなわち、支持部材本体9の一方の側壁10に2個のローラ12が配設されるとともに、当該2個のローラ12間の他方側側壁10に1個のローラ12が配設される。上記支持部材2の取付位置T側(建物側)には、上記ヒンジ部4が形成されている。ヒンジ部4は、1対の蝶番からなり、上記支持部材2と前記取付位置Tとを縦回動自在に蝶着している。当該蝶番のうち、取付位置Tにボルト等により固定される部材は、はしご部1の短手方向の幅内に配置されている。このため、取付対象物に少なくともはしご部の短手方向の幅に対応するスペースがあれば本収納式タラップを設置することができる。
【0015】
一方、本実施形態では、図1および図2に示すように、先端にフック17を備えたロープ16が取付位置T近傍に締結されている。本構成により、図6に示すように、直立状態にあるはしご部1(図2参照)を上方にスライドさせ、はしご部1の下部に設けられた環部15にフック17を挿入することにより、はしご部1を所定高さに保持することができる。なお、ロープ16の長さは、はしご部1を保持する高さに応じて決定される。
【0016】
上記構成を有する収納式タラップを使用する際には、まず、図6に示す収納状態において、環部15からフック17を離脱し、図2に示すようにはしご部1を地面まで下降させる。そして、図1に示すように建物等から離れる方向に昇降しやすい角度になるまではしご部1の下部を引き出し、当該位置でストッパ3により車輪7の回転を不能にする。これにより、はしご部1は当該位置に固定される。
【0017】
本実施形態の収納式タラップでは、はしご部1が支持部材本体9とヒンジ部4とにより上記取付位置Tに対し回動可能かつスライド自在であることから、図1に示すように、はしご部1の下部を建物等から離すように引き出して傾斜させた状態で使用することが可能である。このため、使用者は手を離した状態であっても安全にタラップを昇降することが可能である。しかも、図1に示すように、上記はしご部1は地面から立てかけられることから、脚立等も不要である。
【0018】
また、本実施形態の収納式タラップは、はしご部1の下部を建物等から引き出す過程においても、任意の位置ではしご部1を長手方向の上方にスライドさせることができる。このため、タラップを直立位置から使用位置まで移動させる間の地面に、例えば、配管等の障害物が存在する場合であっても、はしご部1を長手方向の上方にスライドさせることで、障害物を回避することができる。
【0019】
一方、タラップの使用後は、ストッパ3による車輪7の固定を解除した後、はしご部1の下部を建物等に近づく方向に移動させ、はしご部1を直立した状態にする。さらに図6に示すように、上方にスライドさせて所要高さまで移動させ、上記フック17により保持させることで、はしご部1を邪魔にならない高さにコンパクトに収納することが可能である。なお、はしご部1を上方に移動させて収納することは必須ではなく、はしご部1が直立状態となったときにストッパ3により車輪7を固定した状態で収納してもよい。
【0020】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、上記では、作業者が持ち上げることによりはしご部の上方へ移動させる構成を説明したが、図7に示すように、ウインチ13によりはしご部を移動させる構成を採用してもよい。例えば、図7では、建物側に固定された手動ウインチ13から引き出されたロープ16を、取付位置T近傍に形成された2個の滑車14を介してはしご部1下部の環部15にロープ16を締結している。本構成では、内部に備えるラチェット機構によってロープ16の引き出しを禁止することにより、はしご部1を任意のスライド位置で固定することができる。すなわち、図6に示したような、任意の高さではしご部1を保持することも可能である。また、ウインチ13のラチェット機構を解除してロープ16を引き出し自在とすることにより、はしご部1を使用位置に移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、極めて小さいスペースに収納式タラップを設置できるという効果を有し、収納式タラップとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における収納式タラップの使用時の状態を示す側面図
【図2】本発明の一実施形態における収納式タラップを直立させた状態を示す側面図
【図3】本発明の一実施形態における収納式タラップを示す正面図
【図4】本発明の一実施形態における収納式タラップの支持部材を示す側面図
【図5】本発明の一実施形態における収納式タラップの支持部材を示す平面図
【図6】本発明の一実施形態における収納式タラップを収納した状態を示す側面図
【図7】本発明の一実施形態における収納式タラップの変形例を示す正面図
【符号の説明】
【0023】
1 はしご部
2 支持部材
3 ストッパ
4 ヒンジ部
5 はしご部側板
6 ステップ
7 車輪
8 手すり部
9 支持部材本体
10 支持部材本体側壁
11 はしご部側板の側壁
12 ローラ
13 ウインチ
14 滑車
15 環部
16 ロープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さのはしご部と、
前記はしご部の幅内で取付対象物に取り付けられるヒンジ部により、当該はしご部のステップ配置面と略直交する方向に回動自在、かつ長手方向にスライド自在に前記はしご部を支持する支持部材と、
前記はしご部の下端に、前記はしご部の回動軸と平行な軸心周りに回転可能に設けられた車輪と、
前記車輪の回転を選択的に禁止するストッパと、
を備えたことを特徴とする収納式タラップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−327203(P2007−327203A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157541(P2006−157541)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(506193176)中野プランツ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】