説明

収納扉

【課題】 収納スペース内を吸湿消臭することができて人に不快感を与えることを防ぎ、同吸湿消臭機能を発揮する吸湿消臭シートを取り外して清掃することもでき、その機能を長期にわたって維持することができる収納扉を提供する。
【解決手段】 収納スペースSの出し入れ開口部1に付設される開閉自在な収納扉Tであって、扉本体パネル2の収納スペースS側を向く裏面3に吸湿消臭シート4を着脱自在に貼着してなるものである。この場合、複数枚の扉本体パネル2を折り畳み自在に枢支連結してなる収納扉Tであって、各扉本体パネル2に吸湿消臭シート4を貼着配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、収納スペースの出し入れ開口部に付設される開閉自在な収納扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特開2001−149159号公報に示される如く、調湿機能を有する収納扉が知られている。この収納扉は、図10に示す如く、収納スペースSの出し入れ開口部1に付設される開閉自在な収納扉Tであって、扉本体パネル2の収納スペースS側を向く裏面3に調湿材18を備えたものである。この場合、調湿材18は板状の成形体で、鹿沼土、粘土、ガラス質を成形原料としてプレス成形されたものであり、扉本体パネル2の裏面3だけでなく、脱衣収納カゴ19が収容載置される収納スペースSの内壁面にも貼着されている。したがって、このような収納装置にあっては、収納装置内(収納スペースS)の収納物の品質劣化が起こらないように、又、装置自体が変形しにくいようにすることができ、しかも、収納装置が設置された空間の調湿をすることも可能なので人に不快感を与えにくくなるとされている。
【0003】
しかしながら、前記収納扉Tにあっては、板状の調湿材18が扉本体パネル2の裏面3(収納スペースSの内壁面と同様)に接着固定されており、そのため、同調湿材18を取り外して清掃することができず、その調湿(吸湿、放湿)機能を長期にわたって維持し難いものであった。又、この場合、調湿機能であって消臭機能を発揮するものではなく、収納スペースS内にこもった臭気を吸収することができず、人に不快感を与えないように防臭することはできないものであった。
【特許文献1】特開2001−149159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、その課題は、収納スペース内を吸湿消臭することができて人に不快感を与えることを防ぎ、同吸湿消臭機能を発揮する吸湿消臭シートを取り外して清掃することもでき、その機能を長期にわたって維持することができる収納扉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願発明は、収納スペースの出し入れ開口部に付設される開閉自在な収納扉であって、扉本体パネルの収納スペース側を向く裏面に吸湿消臭シートを着脱自在に貼着してなるものである。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の収納扉においては、扉本体パネルの収納スペース側を向く裏面に吸湿消臭シートが貼着されているので、収納スペース内を吸湿及び消臭することができて人に不快感を与えることが防止され、しかも、同吸湿消臭シートは着脱自在に貼着されているので、この吸湿消臭シートを取り外して清掃することができ、その吸湿消臭機能を長期にわたって維持することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜3は、本願の請求項1〜4全てに対応した第一の実施形態である収納扉Tに関する構成を示している。この実施形態の収納扉Tは、図1に示す如く、収納スペースSの出し入れ開口部1に付設される開閉自在な収納扉Tであって、扉本体パネル2の収納スペースS側を向く裏面3に吸湿消臭シート4を着脱自在に貼着してなるものである。この場合、複数枚の扉本体パネル2を折り畳み自在に枢支連結してなる収納扉Tであって、各扉本体パネル2に吸湿消臭シート4を貼着配設している。
【0008】
又、この実施形態の収納扉Tでは、図2に示す如く、いずれも不織布a1、a2でなる表層5、中層6、裏層7の三層にて吸湿消臭シート4の基材を形成し、中層6の不織布a1の密度を表層5、裏層7の不織布a2の密度よりも高くすると共に、この中層6には吸湿加工及び消臭加工を施して吸湿消臭シート4となし、その裏層7側を扉本体パネル2の裏面3に貼着している。しかも、この場合、中層6となる不織布a1に吸湿剤を含浸させて吸湿加工を施し、この中層6となる不織布a1の表側に消臭塗料8を塗布して消臭加工を施し、同中層6となる不織布a1の両面側に表層5、裏層7となる不織布a2を各々積層一体化して吸湿消臭シート4となしている。
【0009】
以下、この実施形態の収納扉Tを、より具体的詳細に説明する。この実施形態の収納扉Tは、図1に示す如く、収納家具(クローゼット)の出し入れ開口部1を開閉するものである。この収納家具は、前方に開口(出し入れ開口部1)した箱体9を台輪体10上に設置してなり、同箱体9内の上部には棚板体11で仕切られた物載置スペースが形成されている。なお、この収納家具の収納スペースS内には衣服や衣料小物等が収納されるもので、同収納家具は横方向に複数並設設置されてもよい。
【0010】
収納家具の出し入れ開口部1に付設される収納扉Tは二つ折り扉であり、二枚の扉本体パネル2が丁番12を介して折り畳み自在に枢支連結されている。この収納扉Tでは、一方の扉本体パネル2の外側端部が出し入れ開口部1の開口縁部に丁番12を介して枢支連結され、他方の扉本体パネル2から開閉動作されるものである。又、両扉本体パネル2の裏面3には各々吸湿消臭シート4が貼着されており、この場合、収納スペースSの前記棚板体11より下側のスペースに対応する高さ位置に貼着配設されている。なお、両扉本体パネル2の裏面3に貼着配設された吸湿消臭シート4は、収納扉Tが折り畳まれて開けられた際、相互に当接してその際の衝撃を和らげ騒音の発生をも防止するものであるが、両吸湿消臭シート4は相互に干渉しないように各々貼着されてもよい。
【0011】
吸湿消臭シート4は、図2に示す如く、表層5、中層6、裏層7の三層で構成され、中層6の不織布a1の密度が表層5、裏層7の不織布a2の密度よりも高い。この場合、表層5、中層6、裏層7の各不織布a1、a2はいずれも再生ポリエステル繊維(ポリエステル繊維は湿気等での伸縮性及び寸法安定性、耐久性に優れる)でなり、表層5、裏層7の不織布a2は目付150〜200g/mで同じ材料のもの、中層6の不織布a1は目付約400g/mのものである。そして、中層6となる不織布a1には吸湿剤を含浸させて吸湿加工が施され、この場合、アクリル酸ナトリウムを主成分とする共重合ポリマーが水に溶解された材料である吸湿剤を約400g/m樹脂含浸させている。次に、同中層6となる不織布a1の表側に、水溶性タイプの消臭塗料8を約100g/m塗布して消臭加工が施される。
【0012】
前記吸湿加工及び消臭加工が施された中層6となる不織布a1の両面側に、表層5、裏層7となる不織布a2をニードルパンチ加工(接着よりも安価で繊維素材の特徴をそのまま活かせる)で積層一体化して吸湿消臭シート4が形成され、前記中層6となる不織布a1は露出しない。この場合、前記消臭塗料8は覆われ保護されて消臭性能品質が安定し、外観色の選択巾も広がる。又、この吸湿消臭シート4は、その中層6の密度が高くて腰があり、伸張させやすくてその裏層7側を扉本体パネル2の裏面3に貼着させやすいものである。この場合、図2(b)に示す如く、吸湿消臭シート4側の面ファスナー16を扉本体パネル2側の面ファスナー17に着脱自在に係止して貼着させている。
【0013】
前記吸湿消臭シート4の調湿性能は200g/m(吸湿量200g/m、放湿量200g/m…なお、この場合、25℃50%養生24H→25℃90%吸湿24H→25℃50%放湿24H)であり、収納家具の収納スペースS内に収納される衣服や衣料小物等のカビ発生や湿気が効果的に防止される。すなわち、生活で快適な湿度は40〜70%(理想は40〜60%)といわれており、前記の如く、高湿域での調湿性があるので、ダニやカビや結露の発生が有効に抑制される。又、吸湿消臭シート4の消臭性能は、アンモニアや酢酸等の不快臭を低減する効果がある。例えば、アンモニア(トイレ臭)、酢酸(汗臭)、硫化水素(肉の腐敗臭)、アセトアルデヒド(タバコ臭の一部)等の臭気ガスによる悪臭を防臭する効果がある。
【0014】
吸湿消臭シート4は、図3に示す如く、全体として縦長で柔軟なシートであり、例えば、巾200mm、長さ1250mm、厚さ5〜6mmの寸法に形成され、その四隅部分がR形状に加工されている。そして、図3(a)に示す如く、吸湿消臭シート4の表側の下端付近には湿気センサー13が付設されている。湿気センサー13は、湿気の吸収量が多くなるとその色がブルーからピンクに変化するもので、吸湿消臭シート4と共に天日干しすれば吸湿性能が復元して繰り返し使用することができるものである。この場合、図3(c)に示す如く、シート状の湿気センサー13上に防湿フィルム14を重ねてその周囲を吸湿消臭シート4に縫い付けて付設固定しており、同防湿フィルム14に形成された開口窓部15から湿気センサー13を露出させている。
【0015】
又、吸湿消臭シート4の裏側には、図3(b)に示す如く、一方の面ファスナー16が貼着固定される。この面ファスナー16は短冊状で、吸湿消臭シート4の裏側に上下方向で等間隔に複数(この場合は四つ)貼着されている。この一方の面ファスナー16に着脱自在に係止される他方の面ファスナー17(図2(b)参照)が、同面ファスナー16に対応する位置で扉本体パネル2の裏面3に貼着固定される。なお、面ファスナー16、17は、収納家具の設置施工時に貼着固定されてもよいし、製造時に工場で予め貼着固定されていてもよく、吸湿消臭シート4もこれ等面ファスナー16、17と同様に収納家具の設置施工時、製造時のいずれに貼着されてもよい。
【0016】
したがって、この実施形態の収納家具における収納扉Tでは、扉本体パネル2の同収納家具の収納スペースS側を向く裏面3に吸湿消臭シート4が貼着されているので、収納スペースS内を吸湿及び消臭することができてダニやカビや結露の発生を防止することができ、同収納扉Tを開閉する使用者やその周囲の人に不快感を与えることが防止される。しかも、前記吸湿消臭シート4は着脱自在に貼着されているので、同吸湿消臭シート4を取り外して清掃することができ、天日干しすることによりその吸湿消臭機能を長期にわたって維持することも可能となり、その際の清掃時期を湿気センサー13にて確認することができる。又、この場合、複数枚の扉本体パネル2を折り畳み自在に枢支連結してなる収納扉Tであって、各扉本体パネル2に吸湿消臭シート4を貼着配設しているため、収納家具の収納スペースS内を効率的に吸湿及び消臭することができる。
【0017】
又、この実施形態の収納扉Tでは、いずれも不織布a1、a2でなる表層5、中層6、裏層7の三層にて吸湿消臭シート4の基材を形成し、中層6の不織布a1の密度を表層5、裏層7の不織布a2の密度よりも高くしているため、同吸湿消臭シート4はその中層6部分が硬くなって腰があり、伸張させやすくて扉本体パネル2の裏面3に貼着させやすいものである。しかも、前記中層6には吸湿加工及び消臭加工を施して吸湿消臭シート4となし、その裏層7側を扉本体パネル2に貼着しているため、同中層6となる不織布a1が露出せず保護されて消臭性能品質が安定し、外観色の選択巾も広がる。
【0018】
更に、この場合、中層6となる不織布a1に吸湿剤を含浸させて吸湿加工を施し、この不織布a1の表側に消臭塗料8を塗布して消臭加工を施しているので、同不織布a1の両面側に表層5、裏層7となる不織布a2を積層一体化して簡単に吸湿消臭シート4を形成することができ、同消臭塗料8は覆われ保護されて消臭性能品質が安定し、不織布a2による外観色の選択巾も広がる。
【0019】
図4〜6は、本願の請求項1〜4全てに対応した第二の実施形態である収納扉Tに関する構成を示している。この実施形態の収納扉Tは二枚の扉本体パネル2を折り畳み自在に枢支連結してなる二つ折り扉であって、納戸のような部屋として区画された収納スペースSの出し入れ開口部1に二つ配設されており、両収納扉Tを構成する各扉本体パネル2の裏面3各々の中程に吸湿消臭シート4が貼着されている。
【0020】
この場合、出し入れ開口部1の周囲は両側枠20と上枠21、下枠22で囲まれており、上枠21には吊り下げレール23が下枠22にはガイドレール24が各々設けられている。そして、各収納扉Tの両側上端には吊り下げランナー25が両側下端にはガイドランナー26が各々設けられており、各吊り下げランナー25が吊り下げレール23に各ガイドランナー26がガイドレール24に各々走行自在に係合されることによって、両収納扉Tは各々外側へ折り畳まれるよう開閉自在に吊り下げ支持されている。
【0021】
また、前記の場合、収納扉Tの外側に位置する吊り下げランナー25或いはガイドランナー26が吊り下げレール23、ガイドレール24に走行しないように固定されてもよいものである。そして、収納扉Tの一方の扉本体パネル2の表面には、その枢支連結部位付近において中程高さ位置に把手27が突設されている。なお、それ以外は、上記第一の実施形態と同様に構成されており、上記第一の実施形態におけると同様の作用効果が奏される。
【0022】
図7〜9は、本願の請求項1、3、4に対応した第三の実施形態である収納扉Tに関する構成を示している。この実施形態の収納扉Tは一枚の扉本体パネル2でなる開き戸であって、内部が収納スペースSとなる収納家具の出し入れ開口部1に両開き戸として二つ対に配設されており、同収納家具は前方に開口(出し入れ開口部1)した箱体9を台輪体10上に設置してなる。そして、両収納扉Tすなわち両扉本体パネル2の裏面各々の中程に吸湿消臭シート4が貼着されており、両収納扉Tは扉本体パネル2の外側端部が出し入れ開口部1の開口縁部に丁番12を介して枢支連結され、同扉本体パネル2の内側端部を前後に回動させ開き戸として開閉動作されるものである。
【0023】
この場合、収納家具となる箱体9内の上部には棚板体11で仕切られた物載置スペースが形成されており、同棚板体11より下方のスペースでは、棚板体11に下側に沿ってハンガー棒体28が架設され、下端部分には引き出しキャビネット29が設置されている。そして、前記吸湿消臭シート4は、棚板体11と引き出しキャビネット29との間隔に相当する高さ範囲に貼着されている。なお、それ以外は、上記第一の実施形態と同様に構成されており、請求項2に係る以外の作用効果が上記第一の実施形態におけると同様に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の第一の実施形態である収納扉が付設された収納家具を示す(a)は透視正面図、(b)は横断面図、(c)は縦断面図。
【図2】同収納扉における吸湿消臭シートの貼着状態を示す(a)は要部分解断面図、(b)は要部断面図。
【図3】同収納扉における吸湿消臭シートを示す(a)は全体正面図、(b)は全体背面図、(c)は(a)におけるX−X断面分解拡大図。
【図4】本願発明の第二の実施形態である収納扉が付設された施工状態を示す正面図。
【図5】同施工状態の一部を省略して示す拡大横断面図。
【図6】同施工状態の一部を省略して示す拡大縦断面図。
【図7】本願発明の第三の実施形態である収納扉が付設された収納家具を示す正面図。
【図8】同収納家具を示す平面図。
【図9】同収納家具を示す縦断面図。
【図10】従来例である収納扉が付設された収納装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 出し入れ開口部
2 扉本体パネル
3 裏面
4 吸湿消臭シート
5 表層
6 中層
7 裏層
8 消臭塗料
T 収納扉
S 収納スペース
a1、a2 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納スペースの出し入れ開口部に付設される開閉自在な収納扉であって、扉本体パネルの収納スペース側を向く裏面に吸湿消臭シートを着脱自在に貼着してなる収納扉。
【請求項2】
複数枚の扉本体パネルを折り畳み自在に枢支連結してなる収納扉であって、各扉本体パネルに吸湿消臭シートを貼着配設したことを特徴とする請求項1記載の収納扉。
【請求項3】
いずれも不織布でなる表層、中層、裏層の三層にて吸湿消臭シートの基材を形成し、中層の不織布の密度を表層、裏層の不織布の密度よりも高くすると共に、この中層には吸湿加工及び消臭加工を施して吸湿消臭シートとなし、その裏層側を扉本体パネルに貼着したことを特徴とする請求項1又は2記載の収納扉。
【請求項4】
中層となる不織布に吸湿剤を含浸させて吸湿加工を施し、この中層となる不織布の表側に消臭塗料を塗布して消臭加工を施し、同中層となる不織布の両面側に表層、裏層となる不織布を積層一体化して吸湿消臭シートとなしたことを特徴とする請求項3記載の収納扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−257860(P2006−257860A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272343(P2005−272343)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】