説明

収納棚管理システム及び収納棚管理方法

【課題】作業者による操作が容易であり、作業性を高めることができる収納棚管理システムを提供する。
【解決手段】開口部を有する収納部及びこの開口部を開閉可能としている扉3を有した収納棚と、前記収納部内の収納物を管理する制御コンピュータ6と、扉3に取り付けられた無線ICタグ7と、この無線ICタグ7と無線通信を行うアンテナ5を有している端末4とを備えている。アンテナ5を無線ICタグ7に接近させ、この無線ICタグ7に記憶させてある扉ID番号を当該無線ICタグ7から端末4へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収納棚内の収納物を管理するための収納棚管理システム及びその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収納棚内の収納物を管理するための管理システムとして、例えば、収納棚内のカルテ等の書類を管理するシステムがある(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、作業者が管理用コンピュータに特定書類のID番号を入力すると、主制御手段はその特定書類が収納されている収納棚に対応する表示ランプを点灯する。そして、作業者は表示ランプが点灯している棚へ移動し、副制御手段の表示スイッチを操作する。これにより、副制御手段は前記特定書類が収納されたファイルケースのファイル表示ランプが点灯する。このように、従来の収納棚管理システムは、作業者が管理用コンピュータに特定書類のID番号を入力し、さらに、副制御手段の表示スイッチを操作することにより、特定書類が入ったファイルケースのランプを点灯させ、入力したID番号に対応した特定書類を見つけて取り出すことができる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−86614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の前記収納棚管理システムでは、作業者が操作するためのボタン及びスイッチが多数存在しており、この中から作業者が所定の表示スイッチを操作することにより、特定書類を見つけ出すというような収納物の管理を行っているので、このシステムは繁雑であり作業性が悪いという問題点がある。
【0005】
そこでこの発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、作業者による操作が容易であり、作業性を高めることができる収納棚管理システム及び収納棚管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明の収納棚管理システムは、開口部を有する収納部及びこの開口部を開閉可能としている扉を有した収納棚と、前記収納部内の収納物を管理する制御手段と、前記扉に取り付けられた無線ICタグと、この無線ICタグと無線通信を行うアンテナを有している端末とを備えたものである。
【0007】
また、この収納棚管理システムによる管理方法は、開口部を有する収納部及びこの開口部を開閉可能としている扉を備えた収納棚に収納されている収納物を管理する収納管理方法であって、前記扉に取り付けられた無線ICタグとアンテナを有する端末との間で無線通信させるために、当該アンテナを当該無線ICタグに接近させ、前記無線ICタグに記憶させてある扉ID番号を当該無線ICタグから前記端末へ送信する。
【0008】
これによれば、収納棚の扉に取り付けた無線ICタグに、作業者がアンテナを近づけることで、無線ICタグと端末との間で無線通信を行うことができるので、収納部内の収納物を管理する際に、作業者はアンテナを扉に近づければよく、操作は容易であり、作業性を高めることができる。
【0009】
また、前記収納棚は、閉状態の前記扉を施錠する施錠手段とこの施錠を解除する解除手段とを備え、前記制御手段は、前記無線ICタグが取り付けられている前記扉を開くために、当該無線ICタグから前記端末に送信された情報に基づいて前記解除手段を機能させる扉制御部を有しているのが好ましい。
これによれば、無線ICタグから端末に送信された情報に基づいて収納部内の収納物を管理するための処理として、扉制御部は、閉状態の扉の施錠を解除し、扉を開かせることができる。
【0010】
また、前記収納棚管理システムにおいて、前記扉の施錠が解除された状態であることを検知できる扉センサと、前記扉に取り付けられ、前記端末の前記アンテナと無線通信可能であり、前記扉センサが前記扉の施錠の解除を検知したことを条件として利用可能となる特定操作用の無線ICタグとをさらに備えているのが好ましい。
これによれば、扉の施錠が解除された状態であることを扉センサが検知すると、特定操作用の無線ICタグが利用可能となる。すなわち、扉の施錠が解除された状態にならないと、特定操作用の無線ICタグを利用することができない。なお、扉センサの検知により無線ICタグが利用可能となるが、この「利用可能」には、無線ICタグと端末との間で無線通信が行われるが端末又は制御手段が機能しないことによって無線ICタグが実質的に利用されていないことを含まない。
【0011】
この収納棚管理システムの場合、前記特定操作用の無線ICタグは、前記端末の前記アンテナと無線通信を行うキャンセル用の無線ICタグを含み、前記キャンセル用の無線ICタグと前記端末との間で通信が行われると、実行中の処理をキャンセルする制御手段を有しているのが好ましい。
これによれば、作業者がキャンセル用の無線ICタグを選択する動作として、アンテナをキャンセル用の無線ICタグに接近させると、これらの間で通信が行われ、制御手段は、実行中の処理をキャンセルすることができる。
【0012】
さらに、前記特定操作用の無線ICタグは、前記端末の前記アンテナと無線通信を行う確認用の無線ICタグを含み、前記確認用の無線ICタグと前記端末との間で通信が行われると、実行中の処理を継続して行わせる制御手段を有しているのが好ましい。
これによれば、作業者が確認用の無線ICタグを選択する動作として、アンテナを確認用の無線ICタグに接近させると、これらの間で無線通信が行われ、制御手段は、実行中の処理を継続して行わせることができる。
【0013】
また、前記収納棚管理システムにおいて、前記端末は、前記ICタグ又は前記制御手段から送信された情報を表示する表示部を有しているのが好ましい。そして、この場合において、前記表示部は、前記収納部内の収納物についての情報を表示するのが好ましい。
これによれば、端末の表示部に無線ICタグ又は制御手段から送信された情報を表示でき、作業者はこれを認識することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、収納部内の収納物を管理する際に、作業者はアンテナを扉に近づければよく、操作は容易であり作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の収納棚管理システムが備えている収納棚の実施の一形態を示す斜視図である。図2はこの収納棚の一部を示す正面図である。図3はこの収納棚管理システムのブロック図である。
この収納棚管理システムは、開閉可能な扉3を有している収納棚1と、扉3に取り付けられた複数の無線ICタグ(RFIDタグ:以下、単にICタグという)7,17,18と、これらICタグ7,17,18のそれぞれと無線通信を行うアンテナ5を有しているタグリーダ(端末)4と、このタグリーダ4と情報の送受信を行うと共に各種の制御を行う制御手段(以下、制御コンピュータという)6とを備えている。
【0016】
〔収納棚について〕
図1と図2とにおいて、収納棚1は、前方に開口している開口部2aを有した収納部(収納ボックス)2を有しており、扉3がこの開口部2aを開閉可能として収納部2に設けられている。扉3は収納部2にヒンジ(図示せず)を介して取り付けられている。また、この収納棚1は複数の収納部2を有しており、収納部2のそれぞれに対して一つの扉3が設けられている。図1では、収納部2は縦方向に5個横方向に8個存在しており、合計40個設けられている。そして、扉3のそれぞれにICタグ7,17,18が取り付けられている。
【0017】
図2において、収納棚1の収納部2は、閉状態の扉3を施錠する施錠手段11aと、この施錠を解除する解除手段11bとを備えている。施錠手段11aと解除手段11bとは、収納部2の上部に設けられた制御ボックス部2bに設けられている。図示しないが、収納棚1は、扉3が開く方向へ当該扉3を付勢する弾性部材が設けられている。そして、施錠手段11aは、扉3の裏面に設けた受け部材3cに係合する係合部材(爪部材)を有しており、解除手段11bは、この係合部材を動作させるソレノイドを有している。したがって、係合部材が扉3の裏面に設けた受け部材3cに係合することで、扉3は施錠され閉状態に維持される。そして、後述する制御コンピュータ6の扉制御部12の制御信号に基づいて、ソレノイドが係合部材を動作させると、係合部材と扉3との間の係合が解け、弾性部材が扉3を開方向へ付勢し、自動的に扉3が開いた状態となる。このように施錠手段11aは、扉3を閉状態に維持するロック状態とし、解除手段11bは、扉3を開状態とさせることができるロック解除状態とすることができる。なお、前記弾性部材を省略し、施錠が解除されているが閉状態にある扉3を作業者が手動によって開状態としてもよい。
なお、開いた状態にある扉3を閉じる操作は、作業者が手動により(前記弾性部材の弾性力に抗して)扉3を閉じた状態とすることによって、係合部材が自動的に扉3の受け部材3cに係合し、扉3は施錠状態に維持される。
【0018】
さらに、収納棚1には、扉3の施錠が解除された状態にあることを検知できる扉センサ14が設けられている。図例の扉センサ14は、前記制御ボックス部2bに設けられており、扉3が開状態にあると、扉センサ14は制御コンピュータ6へ検出信号を出力する。
【0019】
〔ICタグについて〕
ICタグ7,17,18はそれぞれ、扉3の裏面3aに取り付けられている。ICタグ7,17,18はそれぞれ電波を利用することでタグリーダ4と無線通信を行うものであり、従来知られているパッシブタグとすることができる。図2の扉3には、三つのICタグ7,17,18が取り付けられており、第一のICタグ7として扉開閉用のもの、第二のICタグ17として確認用(確認操作用)のもの、及び第三のICタグ18としてキャンセル用(キャンセル操作用)のものがある。これらICタグ7,17,18は、誤動作を防止するために、相互離して設けられている。
【0020】
複数の収納部2(扉3)にはそれぞれ相異するID情報(扉ID番号;収納部ID番号)が設定されており、各収納部2の扉3に取り付けられている扉開閉用のICタグ7には、その収納部2(扉3)のID情報(扉ID番号)が記憶されている。そして、タグリーダ4のアンテナ5との無線通信により、このID情報がタグリーダ4へ送信される。なお、このICタグ7は、扉3の裏面3aに取り付けられているが、その取り付け位置は予め設定された所定位置であり、作業者は閉じている扉3の表面からその所定位置にアンテナ5を接近させることができる。または、取り付け位置に対応する扉3の表面の該当箇所に印(目印)を設けてもよい。なお、変形例としてICタグ7を扉3の表面に取り付けてもよい。
【0021】
また、確認用のICタグ17には、後述する制御コンピュータ6の判定部13に所定の操作を行わせるための操作信号(確認信号)を含む情報が記憶されており、タグリーダ4のアンテナ5との通信により、この情報がタグリーダ4へ送信される。さらに、キャンセル用のICタグ18には、後述する制御コンピュータ6の判定部13に所定の操作を行わせるための操作信号(キャンセル信号)を含む情報が記憶されており、タグリーダ4のアンテナ5との通信により、この情報がタグリーダ4へ送信される。
【0022】
扉開閉用のICタグ7は、扉3が閉じた状態においてタグリーダ4のアンテナ5と無線通信することによって利用されるものである。
一方、確認用のICタグ17及びキャンセル用のICタグ18は、後にも説明するが、前記扉センサ14が扉3の施錠の解除を検知したことを条件として、制御コンピュータ6の判定部13の機能により利用可能となる特定操作用のものである。すなわち、扉3の施錠が解除されたことを扉センサ14が検知すると、特定操作用のこれらICタグ17,18は利用可能となる。言い換えれば、扉3の施錠が解除された状態にならないと、これら特定操作用のICタグ17,18を利用することができない。なお、確認用のICタグ17及びキャンセル用のICタグ18とタグリーダ4との間で無線通信が行われているが、タグリーダ4又は制御コンピュータ6によって、それぞれの機能を奏しておらず、ICタグ17,18が実質的に利用されていない場合は、前記「利用可能」になっているとはいえない。
【0023】
〔タグリーダについて〕
図4はタグリーダ4の使用状態を示す説明図である。タグリーダ4は、前記アンテナ5と、本体部9とを有しており、本体部9は、アンテナ5を利用してICタグ7,17,18との間の情報通信を制御する制御手段8を内蔵している。制御手段8とアンテナ5とは信号線26によって繋がっている。制御手段8は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、ICタグ7,17,18との通信の制御処理を行ったり、各IDタグから受けた情報を記憶したりすることができる。アンテナ5にはリング状の取付部5aが設けられており、アンテナ5は作業者の指(手)に付けられている。本体部9は作業者の手首にベルト9aによって取り付けられている。
【0024】
さらに、タグリーダ4の本体部9は、文字や図形を表示させる液晶ディスプレイからなる表示部10を備えている。表示部10は、各ICタグ又は制御コンピュータ6から送信された情報を表示することができ、作業者はこれを視覚により認識することができる。例えば、後述するが収納部2内の収納物WにICタグ19(図5参照)が付けられており、このICタグ19から送信される情報は収納物Wについての情報とすることができ、タグリーダ4とこのICタグ19との通信により、前記情報を表示部10に表示することができる。または、収納物Wについての情報は制御コンピュータ6のデータベースに記憶されており、このデータベースからの情報が表示部10に表示されてもよい。
また、本体部9は前記制御手段8によって制御されるスピーカ(図示せず)を備えている。これにより、タグリーダ4を利用して行う各種制御の際に、音声を発生させることができる。例えば、所定の操作が行われなかった際に、エラー信号としてビープ音を発生させることができる。
【0025】
〔制御コンピュータについて〕
図3において、制御コンピュータ6は、タグリーダ4と無線又は有線によって情報通信を行うものであり、ICタグ7,17,18からタグリーダ4に送信された情報に基づいて、収納部2内の収納物Wについての各種管理の制御を行うことができる。制御コンピュータ6は記憶部15を有し、この記憶部15には、収納部2とこれに対応する前記扉ID番号について、及び、収納物Wについてのデータベースが記憶されている。制御コンピュータ6は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなものよりなり、タグリーダ4との通信の制御及び収納棚1に設けた前記解除手段11bの動作の制御を行う。また、制御コンピュータ6は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部として扉制御部12及び判定部13を備えている。
【0026】
前記扉制御部12は、収納部2内の収納物Wを管理するために、つまり、扉開閉用のICタグ7が取り付けられている扉3を開くために、当該ICタグ7からタグリーダ4に送信された情報に基づいて、前記解除手段11bを機能させる制御を行うことができる。すなわち、使用者の指に付けたタグリーダ4のアンテナ5を、扉3に取り付けた扉開閉用のICタグ7に接近させると、このICタグ7から当該扉3(この扉3のある収納部2)についての扉ID番号をタグリーダ4は受けることができる。そして、この扉ID番号をタグリーダ4から制御コンピュータ6が受けると、扉制御部12は前記データベースに基づいて、解除手段11bを利用し、前記扉ID番号に対応した扉3、つまり、作業者がアンテナ5を近づけた扉3をロック状態からロック解除状態とすることができ、その扉3を自動的に開いた状態とすることができる。このように、扉制御部12は、収納部2内の収納物Wの管理として、当該収納部2の扉3の開閉を制限するという管理を行うことができる。
【0027】
前記判定部13は、扉3が開状態にあると前記扉センサ14から出力される検出信号を受けることができる。また、扉3が開いた状態において、確認用のICタグ17とタグリーダ4との間で通信が行われると、判定部13はタグリーダ4を利用した実行中の処理を継続して行わせることができる。一方、キャンセル用のICタグ18とタグリーダ4との間で通信が行われると、判定部13はタグリーダ4を利用した実行中の処理をキャンセル(無効)することができる。なお、扉3が閉じた状態では、たとえ、確認用のICタグ17及びキャンセル用のICタグ18とタグリーダ4との間で無線通信が成されても、判定部13はこれらICタグ17,18及びタグリーダ4を利用して行う処理を実行しない。
【0028】
判定部13は、扉3が開いた状態において、作業者が当該扉3の裏面3aにある確認用のICタグ17を選択する動作として、アンテナ5を確認用のICタグ17に接近させると、この確認用のICタグ17とタグリーダ4との間で通信が行われ、このICタグ17から確認信号がタグリーダ4へ送られ、タグリーダ4からこの確認信号を制御コンピュータ6は受信する。タグリーダ4に入力されている入力情報を制御コンピュータ6は受信しており、判定部13が前記確認信号を受信することにより、判定部13は、前記入力情報を記憶部15に登録(記憶)させるために実行中の処理を継続して行うことができる。
一方、作業者がキャンセル用のICタグ18を選択する動作として、アンテナ5をキャンセル用のICタグ18に接近させ、キャンセル用のICタグ18とタグリーダ4との間で通信が行われると、このICタグ18からキャンセル信号がタグリーダ4へ送られ、タグリーダ4からこのキャンセル信号を制御コンピュータ6は受信する。判定部13がこのキャンセル信号を受信することにより、判定部13は、前記入力情報を制御コンピュータ6の記憶部15へ登録(記憶)させるために実行中の処理をキャンセルすることができる。
【0029】
以下、前記実施形態の収納棚管理システムによって行われる収納棚1の管理についての具体例を説明する。収納棚管理システムを病院に使用した場合であり、収納棚1に収納されている収納物Wを、診察用のカルテを綴じたファイル20(図5参照)として説明する。カルテ21及びファイル20は患者毎に用意されており、収納棚1の各収納部2内に複数のファイル20が収納されている。また、収納棚1には、患者の名前の頭文字についてアルファベット順に並べた状態でファイル20が収納されており、各収納部2に区分けされた状態にある。例えば、図1において、最上段で最も右端の収納部2には名前の頭文字が「A」である患者のファイル20(図示せず)が収納されている。そして、病院側においてこの収納棚1を管理する作業者(管理者)の指にタグリーダ4のアンテナ5を付ける。また、この病院の制御コンピュータ6の記憶部15のデータベースには、患者名と、その患者のファイル20のファイルID情報と、そのファイル20が収納されている収納部2の扉ID番号とが関連付けられて記憶されている。さらに、このデータベースには、収納部2それぞれに収納されているファイル20についての情報、例えば、各収納部2の扉ID番号と、その収納部2に収納されている患者のファイル20についての情報(ファイルID情報)が関連付けられて記憶されている。
【0030】
そして、ファイル20にはそれぞれ収納物用のICタグ19が取り付けられている。このICタグ19にはそのファイル20についてのファイルID情報が記憶されており、ICタグ19はタグリーダ4のアンテナ5と無線通信し、ファイルID情報の送信を行うことができる。
【0031】
〔扉開操作〕
図6は扉3を開く操作を説明するフロー図である。
収納棚1には複数の収納部2が設けられているが、このうち各作業者が管理できる(扉3を開くことができる)収納部2については、制御コンピュータ6において予め設定されており、この設定は制御コンピュータ6に記憶されている。つまり、各作業者には個人ID番号が割り当てられており、各個人ID番号とその作業者に管理権限が与えられている扉3の扉ID番号とが関連付けられ、これが関連情報として制御コンピュータ6に予め記憶されている。
【0032】
まず、作業者は収納棚1の管理作業を行うにあたり、制御コンピュータ6に自己の個人ID番号を入力する(ステップS1)。そして、この作業者は、病院に診察に来た患者の名前から判断して、その患者のファイル20が収納されている収納部2の前に立ち、その収納部2の扉3に取り付けられているICタグ7に、指に付けたアンテナ5を接近させる(ステップS2)。これにより、このICタグ7に記憶させてある当該扉3の扉ID番号が送信される(ステップS3)。この扉ID番号はアンテナ5からタグリーダ4の制御手段8に入力され(ステップS4)、扉ID番号はタグリーダ4から制御コンピュータ6へ送信される(ステップS4)。扉ID番号を制御コンピュータ6が受信すると(ステップS5)、制御コンピュータ6の扉制御部12は、受けた扉ID番号とステップS1において入力された個人ID番号との関係が、前記関連情報に含まれているか否かについて判定する(ステップS6)。制御コンピュータ6の扉制御部12が、関連情報に含まれていると判定すると(図6のOKの場合)、扉制御部12の制御信号に基づいて前記解除手段11bを利用して(ステップS7)、扉3が開いた状態(施錠が解除された状態)となる(ステップS8)。一方、扉制御部12が、関連情報に含まれていないと判定すると(図6のNGの場合)解除手段11bを機能させず、扉3は閉じたまま(施錠されたまま)の状態である(ステップS9)。
【0033】
なお、この扉開操作において、作業者がアンテナ5を扉3のICタグ7に接近させる(ステップS2)前に、予め制御コンピュータ6に患者の名前が入力されており、制御コンピュータ6の扉制御部12が、前記データベースからその患者のファイル20が収納されている収納部2の扉3の扉ID番号を抽出しているのが好ましい。そして、制御コンピュータ6がICタグ7から送られた扉ID番号を受信すると(ステップS5)、扉制御部12は、先に抽出した扉ID番号と比較し、両者が一致していると判定した場合にのみ解除手段11bを利用してその扉3を開けるのが好ましい。
【0034】
さらに、作業者が扉3を開ける前(施錠を解除する前)の管理操作として、または、扉開操作とは別個独立した管理操作として、作業者は、収納部2内の収納物Wの内容をタグリーダ4の表示部10に表示させることができる。この内容物表示操作について図7により説明する。
まず、作業者は収納棚1の管理作業を行うにあたり、制御コンピュータ6に自己の個人ID番号を入力する(ステップS51)。そして、作業者が収納物Wの内容を知りたい収納部2の前に立ち、その収納部2の扉3に取り付けられている扉開閉用のICタグ7に、指に付けたアンテナ5を接近させる(ステップS52)。これにより、このICタグ7に記憶させてある当該扉3の扉ID番号が送信される(ステップS53)。この扉ID番号はアンテナ5からタグリーダ4の制御手段8に入力され(ステップS54)、この扉ID番号はタグリーダ4から制御コンピュータ6へ送信される(ステップS54)。扉ID番号を制御コンピュータ6が受信すると(ステップS55)、制御コンピュータ6の扉制御部12は、受けた扉ID番号とステップS51において入力された個人ID番号との関係が、前記関連情報に含まれているか否かについて判定する(ステップS56)。制御コンピュータ6の扉制御部12が、関連情報に含まれていると判定すると(図7のOKの場合)、制御コンピュータ6の扉制御部12は、受けた扉ID番号に基づいて、前記データベースからその扉ID番号に関連付けられている患者のファイル20についての情報(ファイルID情報)を抽出し、この情報をタグリーダ4に送信する(ステップS57)。そして、タグリーダ4はその表示部10にその情報を表示する(ステップS58)。一方、扉制御部12が、関連情報に含まれていないと判定すると(図7のNGの場合)、患者のファイル20についての情報をタグリーダ4に送信しない(ステップS59)。
なお、この内容物表示操作において、扉開閉用のICタグ7を用いているが、タグリーダ4に設けた切り換えスイッチによって、扉開操作と内容物表示操作とを切り換えることができる。つまり、制御コンピュータ6に行わせる機能を切り換えることができる。
【0035】
〔ファイル取り出し操作〕
図8と図9とは扉3が開いた後、その扉3の収納部2からファイル20を取り出す操作を説明するフロー図である。
前記扉開操作において、予め制御コンピュータ6に患者の名前が入力されており(ステップS11)、制御コンピュータ6の判定部13が、前記データベースからその患者のファイル20のファイルID情報を抽出している(ステップS12)。
扉3が開いた状態になると、作業者は収納部2内に複数あるファイル20の中から目的のファイル20を取り出すことができる。前記のとおりファイル20にはICタグ19が取り付けられており、このICタグ19には、当該ICタグ19が取り付けられているファイル20についてのファイル情報が記憶されている。このファイル情報にはそのファイルID情報及び患者の名前についての情報が含まれている。
【0036】
そして、作業者がファイル20を手で掴んで取り出すことにより、その手に付けたアンテナ5とファイル20のICタグ19とが接近し(ステップS21)、これにより、このICタグ19に記憶させてある前記ファイル情報が送信される(ステップS22)。そして、手に付けたアンテナ5によって収納物用のICタグ19のファイル情報をタグリーダ4は受信する(ステップS23)。このファイル情報は制御コンピュータ6に送信される(ステップS24)。このように、作業者が収納部2からファイル20を取り出す際に、自然な動作によって、収納物用のICタグ19と、作業者に付けられたアンテナ5との間で無線通信が行われ、タグリーダ4及び制御コンピュータ6はファイル情報を得ることができる。また、タグリーダ4の表示部10にファイル情報として患者名が表示される。
【0037】
そして、目的としたファイル20を取り出したことを作業者が表示部10を見ることにより確認できると、手に付けたアンテナ5を、開いた扉3に取り付けられた確認用のICタグ17に近づける(ステップS25)。これにより、確認用のICタグ17とタグリーダ4との間で通信が行われ、この確認用のICタグ17から確認信号をタグリーダ4は受信し(ステップS26、S27)、この確認信号は制御コンピュータ6に送られる(ステップS28)。判定部13は、確認信号を受信すると前記ファイル情報を制御コンピュータ6に登録するようにプログラムされているので、このファイル情報の登録の処理を実行させる。つまり、判定部13は、確認信号を受信すると(ステップS28)、タグリーダ4から受信したファイル情報(ステップS24)に含まれるファイルID情報と、先にデータベースから抽出(ステップS12)したファイルID情報とが一致しているか否かを判定する(ステップS29)。一致していると判定した場合、判定部13は、ファイル情報を記憶部15へ記憶させる処理を行う(ステップS30)。ファイルID情報が不一致していると判定した場合、エラー信号としてタグリーダ4のスピーカからビープ音を発生させる(ステップS31)。
【0038】
一方、作業者が目的としたファイル20ではなく誤ったファイル20を掴んだことに気が付き、目的としないファイル情報をタグリーダ4が受信している場合、作業者は、手に付けたアンテナ5を、開いた扉3に取り付けられた前記キャンセル用のICタグ18に近づける(ステップS45)。これにより、キャンセル用のICタグ18とタグリーダ4との間で通信が行われ、このキャンセル用のICタグ18からキャンセル信号をタグリーダ4は受信し(ステップS46、S47)、このキャンセル信号がタグリーダ4から制御コンピュータ6に送られる(ステップS48)。なお、この場合であっても、ファイル情報がタグリーダ4から制御コンピュータ6へ送られていてもよい(ステップS24)。そして、判定部13は、キャンセル信号を受信するとファイル情報の制御コンピュータ6への登録をキャンセルするようにプログラムされているので、誤ってタグリーダ4に入力された前記ファイル情報を制御コンピュータ6へ記憶させることがない(ステップS49)。
以上のように、確認用のICタグ17及びキャンセル用のICタグ18は、ファイル20を取り出した操作後の確認ボタンとして機能することができ、判定部13は、収納部2内のファイル20の管理として、扉3が開いた状態において作業者がファイル20を扱う(取り出す)動作を管理する機能を有している。
【0039】
さらに、作業者は、前記扉開操作の前に、制御コンピュータ6に作業者の個人ID番号を入力し、判定部13によって登録した各種情報を、この個人ID番号と関連付けて制御コンピュータ6は記憶(登録)させるのが好ましい。この場合、個人ID番号と、この個人ID番号の作業者が記憶させた各種情報との履歴を後に見ることができる。さらに、作業者として予め認定した登録ID番号が制御コンピュータ6に記憶されており、作業者によって入力される個人ID番号と登録ID番号とが一致すると、前記各種処理を行わせるように制限する制御を、制御コンピュータ6は行うのが好ましい。つまり、制御コンピュータ6は権限管理を行うことができる。
【0040】
以上のように、この発明によれば、収納棚1の扉3に取り付けたICタグ7,17,18のそれぞれに、作業者がタグリーダ4のアンテナ5を近づけることで、ICタグ7,17,18のそれぞれとタグリーダ4との間で無線通信を行い、収納部2内の収納物Wを管理する操作として、施錠状態にある扉3の施錠を解除したり、収納部2から取り出した収納物Wの情報を制御コンピュータ6へ登録させたりすることができる。そして、作業者はアンテナ5を扉3に近づければこれら操作を行うことができるので、その操作は容易であり、作業性を向上させることができる。
【0041】
また、ICタグ7,17,18のそれぞれは、作業者に付けたアンテナ5との間で無線通信を行っているので、扉3と収納部2との間に信号線を配線しなくてもよい。これにより、収納部2とこれに対して開閉動作する扉3との間の接続構造(例えばヒンジ部)が、信号線の存在により複雑化することを防止できる。つまり、例えば扉に電気的なオンオフ切り換えスイッチを取り付けた構造では、扉から収納部へ信号線を配線する必要があり、この信号線が扉の開閉により噛み込まないようにヒンジ部の構造を複雑にする必要があるが、この発明によればこの必要がない。
【0042】
また、本発明は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。各ICタグは、扉3の表面に取り付けてもよいが、扉3の内部に埋め込んだり、前記実施形態のように扉3の裏面3aに貼り付けたりするのが、外観上好ましい。また、ICタグはパッシブタグとするのが好ましいが、アクティブタグであってもよい。
さらに、特定操作用のICタグとして、確認用のICタグ17及びキャンセル用ICタグ18を含む場合を説明したが、これ以外に、特定操作用のICタグとして、テンキーとして機能するICタグをさらに複数個取り付けてもよい。つまり、作業者がテンキーとして機能するICタグに接近させることで、タグリーダ4に数値の入力が可能となる。
【0043】
また、扉制御部12と判定部13との双方又は一方をタグリーダ4の制御手段6が備えている構成としてもよい。
また、前記実施形態では、扉3のICタグを三つとしたが、扉開閉用のICタグ7を、確認用のICタグ17又はキャンセル用のICタグ18として用いてもよい。つまり、扉センサ14を利用して扉3が閉じていることを扉制御部12が検知した状態では、確認用のICタグ17又はキャンセル用のICタグ18が、扉開閉用のICタグ7として機能し、扉3が開いていることを検知した状態では、確認用のICタグ17及びキャンセル用のICタグ18は、それぞれの確認操作の機能及びキャンセル操作の機能を発揮するように、タグリーダ4(及び制御コンピュータ6)を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の収納棚管理システムが備えている収納棚の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】この収納棚の一部を示す正面図である。
【図3】この収納棚管理システムのブロック図である。
【図4】タグリーダの使用状態を示す説明図である。
【図5】ファイルの説明図である。
【図6】扉を開く操作を説明するフロー図である。
【図7】内容物表示操作を説明するフロー図である。
【図8】収納部からファイルを取り出す操作を説明するフロー図である。
【図9】収納部からファイルを取り出す操作を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 収納棚
2 収納部
2a 開口部
3 扉
4 タグリーダ(端末)
5 アンテナ
6 制御コンピュータ(制御手段)
7 扉開閉用の無線ICタグ
8 制御手段
11a 施錠手段
11b 解除手段
12 扉制御部
13 判定部
14 扉センサ
17 確認用の無線ICタグ
18 キャンセル用の無線ICタグ
19 収納物用の無線ICタグ
W 収納物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する収納部及びこの開口部を開閉可能としている扉を有した収納棚と、前記収納部内の収納物を管理する制御手段と、前記扉に取り付けられた無線ICタグと、この無線ICタグと無線通信を行うアンテナを有している端末と、を備えていることを特徴とする収納棚管理システム。
【請求項2】
前記収納棚は、閉状態の前記扉を施錠する施錠手段とこの施錠を解除する解除手段とを備え、
前記制御手段は、前記無線ICタグが取り付けられている前記扉を開くために、当該無線ICタグから前記端末に送信された情報に基づいて前記解除手段を機能させる扉制御部を有している請求項1に記載の収納棚管理システム。
【請求項3】
前記扉の施錠が解除された状態であることを検知できる扉センサと、
前記扉に取り付けられ、前記端末の前記アンテナと無線通信可能であり、前記扉センサが前記扉の施錠の解除を検知したことを条件として利用可能となる特定操作用の無線ICタグと、
をさらに備えている請求項1又は2に記載の収納棚管理システム。
【請求項4】
前記特定操作用の無線ICタグは、前記端末の前記アンテナと無線通信を行うキャンセル用の無線ICタグを含み、
前記キャンセル用の無線ICタグと前記端末との間で通信が行われると、実行中の処理をキャンセルする制御手段を有している請求項3に記載の収納棚管理システム。
【請求項5】
前記特定操作用の無線ICタグは、前記端末の前記アンテナと無線通信を行う確認用の無線ICタグを含み、
前記確認用の無線ICタグと前記端末との間で通信が行われると、実行中の処理を継続して行わせる制御手段を有している請求項3又は4に記載の収納棚管理システム。
【請求項6】
前記端末は、前記無線ICタグ又は前記制御手段から送信された情報を表示する表示部を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の収納棚管理システム。
【請求項7】
前記表示部は、前記収納部内の収納物についての情報を表示する請求項6に記載の収納棚管理システム。
【請求項8】
開口部を有する収納部及びこの開口部を開閉可能としている扉を備えた収納棚に収納されている収納物を管理する収納管理方法であって、
前記扉に取り付けられた無線ICタグとアンテナを有する端末との間で無線通信させるために、当該アンテナを当該無線ICタグに接近させ、
前記無線ICタグに記憶させてある扉ID番号を当該無線ICタグから前記端末へ送信することを特徴とする収納棚管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−120546(P2008−120546A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307813(P2006−307813)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(505406523)株式会社スミタシステム (6)
【Fターム(参考)】