説明

収納袋

【課題】 収穫後も呼吸を行うキノコを品質低下が極めて起きにくい状態で収納する収納袋を提供するものである。
【解決手段】 キノコ1を収納するキノコ用の収納袋2であって、前記収納袋2には開孔部4が設けられ、この開孔部4には前記収納袋2に収納されたキノコ1の呼吸作用を制限せしめる所定の通気性を有する通気材3が設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮度良くキノコを収納することができるキノコ用の収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫したキノコを収納する収納袋は、キノコが収穫した後も呼吸を行っているため、一般的に通気性のあるものが採用されている。
【0003】
即ち、キノコを仮に非通気性の袋体で密封すると、キノコの呼吸作用により袋体内の二酸化炭素濃度と酸素濃度が大きく変化し、これにより、該キノコの代謝作用が変化して発酵作用が行われ、異臭,異味物質が生産されたり、また、キノコから発散される水分が袋体内に溜まって結露を生じ、この結露がキノコに付着することで、結露の付着部分からキノコの腐敗が生じてしまう等の問題が生ずる。
【0004】
キノコを仮に非通気性の袋体で密封しても、5℃以下の低温で保管するのであれば上述したような問題が生じることはない。しかし、店頭においては袋体に入れたキノコが室温で保管される場合が往々にしてあるため、とりわけ呼吸作用の盛んなキノコ(例えばエリンギ等)において上述したような問題が顕著に現れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通気性を有する袋体としては、例えばプラスチックフィルム製の袋に孔を複数設けることで該袋体内と外気とを通気可能に形成したものが採用されている。
【0006】
しかしながら、プラスチックフィルム製の袋に単に孔をあけただけでは、該袋体内と外気との通気が良好過ぎて、キノコが乾燥し易くなったり、雑菌が繁殖するなどの問題がある。
【0007】
また、通気が良すぎることで、袋体内の酸素濃度が高い状態(二酸化炭素濃度が低い状態)となり、これにより、キノコから菌糸が伸びだし商品価値が低下する等の問題がある。
【0008】
このような問題を解決するためには、例えば袋体に設ける孔を極めて微小に形成したり、また、該孔の数を減らすことが考えられるが、この場合には、結局、上記非通気性の袋体を採用した場合と同様の問題が生じる。即ち、袋体内と外気との通気が不十分であると、袋体内の二酸化炭素濃度が過度に高い状態になったり該袋体内の酸素濃度が過度に低い状態になったりし、これらが原因してキノコの代謝作用が変化し、発酵作用を誘発する等して異臭,異味が発生してしまう問題が生じる。また、袋体内と外気との通気が不適当となり、これにより、キノコから蒸発した水分が袋体内に過度に残存して結露が生じ、この結露がキノコに付着することで、結露の付着部分からキノコの腐敗が生じる等の問題が生じる。
【0009】
従って、従来の袋体では、キノコの品質低下を招き易く、該キノコを鮮度良く保存できないといえる。
【0010】
本発明は、収穫後も呼吸を行うキノコを品質低下が極めて起きにくい状態で収納できる収納袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
キノコ1を収納するキノコ用の収納袋2であって、前記収納袋2には開孔部4が設けられ、この開孔部4には前記収納袋2に収納されたキノコ1の呼吸作用を制限せしめる所定の通気性を有する通気材3が設けられていることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の収納袋において、前記開孔部4は、収納袋2の周囲にして該収納袋2に収納されたキノコ1が位置しない部位に設けられていることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0014】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の収納袋において、前記開孔部4は、複数であることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の収納袋において、前記通気材3は、キノコ1を収納した前記収納袋2内の二酸化炭素及び酸素の各濃度が所定の範囲に保持される通気性を有していることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の収納袋において、前記通気材3は、収納袋2に収納するキノコ1の種類若しくはキノコ1の保存温度に応じて選択されたものであることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0017】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の収納袋において、前記収納袋2は前記開孔部4に設けられる通気材3とは異なる通気性を有する通気材5により形成されていることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0018】
また、請求項6記載の収納袋において、前記開孔部4に設けられる通気材3は、通気度が50秒/100cc〜200秒/100ccであり、前記収納袋2を形成する通気材5は、23℃における酸素透過度が1800nmol/m2・s・100kPa〜4000nmol/m2・s・100kPaであり、且つ、23℃における二酸化炭素透過度が5800nmol/m2・s・100kPa〜16000nmol/m2・s・100kPaであることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の収納袋において、前記収納袋2は非通気材6により形成されていることを特徴とする収納袋に係るものである。
【0020】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載の収納袋において、キノコ1としてエリンギが採用されていることを特徴とする収納袋に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、収穫後も呼吸作用が盛んなキノコを品質低下が極めて起きにくい状態で収納できる収納袋となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、収納袋2に設けられた開孔部4に、キノコ1の呼吸作用を適度に制限せしめる所定の通気性を有する通気材3を設けた為、キノコ1の代謝作用が変化したり、また、結露に起因する腐敗が生じたり、また、キノコ1が過度に乾燥したり、また、キノコ1に雑菌が繁殖したり、また、キノコ1から菌糸が伸びだしたりせず、よって、この収納袋2に収納されるキノコ1は品質低下を極めて起こしにくい。
【0023】
本発明は上述のように構成したから、鮮度の良い状態でキノコ1を良好に収納することができる極めて実用性に秀れた収納袋となる。
【実施例1】
【0024】
図1,2に基づいて本発明の実施例1を説明する。
【0025】
実施例1は、キノコ1として呼吸作用が盛んなキノコとして知られるエリンギを採用し、該エリンギを収納して包装するキノコ用の収納袋に関するものであり、この収納袋2には開孔部4が設けられ、この開孔部4には、エリンギの呼吸作用を適度に制限せしめる所定の通気性を有する通気材3が設けられたものである。
【0026】
実施例1の収納袋2は、非通気材6により形成されている。非通気材6としては、プラスチックフィルムが採用されている。
【0027】
収納袋2は、有底筒状で上部に開口部が設けられた構成とし、エリンギ等のキノコ1を収納した後、開口部は熱溶着等の適宜な手段で閉塞される。
【0028】
また、この収納袋2には、開孔部4が1箇所設けられ、該開孔部4は通気材3により隠蔽されている。
【0029】
開孔部4は、一辺がおよそ1cm〜数cmの方形状、若しくは、直径がおよそ1cm〜数cmの円形状に構成されている。
【0030】
また、開孔部4は、収納袋2に収納されたキノコ1が位置しない部位に設けられている。即ち、開孔部4は、該開孔部4の真下若しくは近傍にキノコ1が配設されることのないように、収納袋2の周囲、具体的には角隅部に設けられている。収納袋2の開孔部4の真下若しくは近傍にキノコ1が配設されると、通気材3の近傍の空気組成は外気の組成に近く、酸素濃度が高くなって、キノコから菌糸が伸びだしたりする場合があり、これを防止する為、開孔部4は収納袋2の周囲に設ける。
【0031】
図1は、収納袋2の一箇所に開孔部4を設け、この開孔部4に通気材3を設けた構成であり、必要に応じて、収納袋2の複数箇所に開孔部4及び通気材3を設ける構成としても良い。図2は収納袋2の周囲部の三箇所に開孔部4を設け、該開孔部4に通気材3を設けた場合を示している。
【0032】
通気材3は開孔部4に、熱溶着若しくは接着剤等、常法手段により設けられる。
【0033】
例えば、通気材3に適宜な接着剤や接着部を設ければ、開孔部4に該通気材3を貼り付けるだけで良く、量産性に優れ、また、通気材3をロール状に構成し、必要な長さだけ該通気材3を引き出して切断する構成とすれば、開孔部4に通気材3を設ける作業を自動化でき、量産性に優れる。
【0034】
通気材3は、エリンギを収納した収納袋2内の二酸化炭素と酸素の各濃度が所定の範囲に保持され得る通気性を有しているものを採用している。
【0035】
即ち、この通気材3は、収納袋2内を大気よりも二酸化炭素濃度が高く、また、大気よりも酸素濃度が低い状態に保持する通気性を有するものが採用されている。
【0036】
詳細には、通気材3は、通気度が50秒/100cc〜200秒/100ccである不織布,プラスチックフィルム等が採用されている。尚、この通気度の測定は、JIS P 8117に準拠した測定方法により行ったものである。
【0037】
具体的には、収納袋2の外形が10cm×20cmの場合、面積が1cm2〜2cm2の開孔部4を1個設け、該開孔部4にJIS P 8117に準拠した通気度が50秒/100cc〜200秒/100ccの範囲の通気材3、具体的には不織布のフィルターを設ける。
【0038】
また、通気材3は、収納袋2に収納するキノコの種類に応じて選択する。例えば、実施例1ではキノコ1としてエリンギを採用したが、エリンギ以外の例えば椎茸,シメジ,なめこ等を採用する場合には、そのキノコに応じた通気材3を選択する。そして、この選択した通気材3を単に開孔部4に例えば貼り付けるだけでよく、よって種々のキノコに容易に対応することができる。尚、この場合、収納袋2自体は、種々のキノコに共用することができる為、それだけコスト安に種々のキノコに対応し得る。
【0039】
また、通気材3は、収納袋2に収納するキノコの保存温度に応じて選択する。
【0040】
実施例1によれば、収納袋2内にエリンギを収納すると、該エリンギの呼吸によって、該収納袋2内の空気は二酸化炭素と酸素の各濃度が徐々に変化するが、通気材3を介して収納袋2内と外気とが適度に通気されることで、エリンギの呼吸と通気材3の通気とが釣り合った状態、即ち、収納袋2内の空気組成は、大気よりも二酸化炭素濃度が高く、また、大気よりも酸素濃度が低い状態で安定化する。
【0041】
実施例1は上述のように構成したから、収納袋2内においてエリンギの呼吸作用を制限せしめると同時に発酵作用の誘発を抑制でき、よって、エリンギを鮮度の良い状態で良好に収納することができる。
【0042】
従来では、エリンギの盛んな呼吸作用により収納袋2内の二酸化炭素と酸素の各濃度が過度に変化し、エリンギに発酵作用などが誘発され、その結果生じる物質により異臭,異味を呈したり、また、細胞壊死が生じ農産物に外観変化が生じたりしていた。
【0043】
この点、実施例1では、収納袋2内にエリンギが収納された直後は、該エリンギの呼吸作用によって収納袋2内の二酸化炭素と酸素の各濃度が変化するが、通気材3を介して収納袋2内と外気とが適度に通気されることで、収納袋2内は、大気よりも二酸化炭素濃度が高く、また、大気よりも酸素濃度が低い状態となり、過度な高二酸化炭素状態や低酸素状態が生ぜず、エリンギの鮮度が良好に保持される。
【0044】
また、通気材3を介して収納袋2内と外気とが適度に通気されることで、エリンギから蒸発した水分が収納袋2内で結露することが緩和されて、これにより、結露水がエリンギに付着することにより生じる前述した品質低下も抑制される。
【実施例2】
【0045】
図3,4に基づいて本発明の実施例2を説明する。
【0046】
実施例2は、収納袋2として、実施例1の通気材3とは異なる通気性を有する通気材5により形成されたものが採用された収納袋に関するものである(図3参照)。
【0047】
この収納袋2を形成する通気材5としては、23℃における酸素透過度が1800nmol/m2・s・100kPa〜4000nmol/m2・s・100kPaであり、且つ、23℃における二酸化炭素透過度が5800nmol/m2・s・100kPa〜16000nmol/m2・s・100kPaであるものが採用されている。
【0048】
好ましくは、23℃における酸素透過度が2500nmol/m2・s・100kPaで、二酸化炭素透過度が9500nmol/m2・s・100kPaである通気材5を採用することが望ましい。
【0049】
具体的には、実施例2の通気材5は、二村化学工業株式会社製の商品名PORO FRESHを採用している。
【0050】
このような通気材5を用いた収納袋2を採用する為、実施例1と同様、エリンギを品質低下させることなく収納できる。
【0051】
尚、上記二酸化炭素透過度及び酸素透過度の測定は、JIS K 7126に準拠した測定方法(即ち、23℃差圧法。)により行ったものである。
【0052】
収納袋2には図4に図示したように開孔部4を設けてもよく、この開孔部4には収納袋2を形成する上記通気材5とは異なる通気性を有する実施例1と同様の、通気度が50秒/100cc〜200秒/100ccである通気材3が設けられている(図4参照)。
【0053】
この場合には、収納袋2全体で適度な通気が可能となり、更に通気材3からも適度な通気が可能となる為、実施例1と同様、エリンギを品質低下させることなく良好に収納でき、また、エリンギの呼吸量が比較的激しい状態、即ち、エリンギが比較的高い温度状態下で保存される場合に、該エリンギを一層鮮度良く保存できる。
【0054】
尚、その余は実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1に係る収納袋を示す説明図である。
【図2】実施例1の別例の説明図である。
【図3】実施例2に係る収納袋を示す説明図である。
【図4】実施例2の別例の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 キノコ
2 収納袋
3 通気材
4 開孔部
5 通気材
6 非通気材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコを収納するキノコ用の収納袋であって、前記収納袋には開孔部が設けられ、この開孔部には前記収納袋に収納されたキノコの呼吸作用を制限せしめる所定の通気性を有する通気材が設けられていることを特徴とする収納袋。
【請求項2】
請求項1記載の収納袋において、前記開孔部は、収納袋の周囲にして該収納袋に収納されたキノコが位置しない部位に設けられていることを特徴とする収納袋。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の収納袋において、前記開孔部は、複数であることを特徴とする収納袋。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の収納袋において、前記通気材は、キノコを収納した前記収納袋内の二酸化炭素及び酸素の各濃度が所定の範囲に保持される通気性を有していることを特徴とする収納袋。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の収納袋において、前記通気材は、収納袋に収納するキノコの種類若しくはキノコの保存温度に応じて選択されたものであることを特徴とする収納袋。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の収納袋において、前記収納袋は前記開孔部に設けられる通気材とは異なる通気性を有する通気材により形成されていることを特徴とする収納袋。
【請求項7】
請求項6記載の収納袋において、前記開孔部に設けられる通気材は、通気度が50秒/100cc〜200秒/100ccであり、前記収納袋を形成する通気材は、23℃における酸素透過度が1800nmol/m2・s・100kPa〜4000nmol/m2・s・100kPaであり、且つ、23℃における二酸化炭素透過度が5800nmol/m2・s・100kPa〜16000nmol/m2・s・100kPaであることを特徴とする収納袋。
【請求項8】
請求項1〜5いずれか1項に記載の収納袋において、前記収納袋は非通気材により形成されていることを特徴とする収納袋。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の収納袋において、キノコとしてエリンギが採用されていることを特徴とする収納袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−96402(P2006−96402A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286802(P2004−286802)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(593084915)株式会社雪国まいたけ (30)
【Fターム(参考)】