説明

取付具付き筐体

【課題】壁面に取り付けられる筐体において、取り付け及び取り外しが容易であり、かつ筐体の保持力に優れる取付金具付き筐体を提供する。
【解決手段】電子機器を収容する本体部2と、該本体部2を壁面に取り付けるための取付具3とからなる取付具付き筐体1であって、前記本体部2は、線状の第1ガイド溝及び線状の第2ガイド溝を背面に備え、前記取付具3は、前記第1ガイド溝にスライド可能に嵌入される第1保持部と、前記第2ガイド溝にスライド可能に嵌入される第2保持部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器(ハードディスクドライブ、無線LAN装置、ターミナルアダプター装置、ルーター装置等)を収容可能な筐体に関する。詳しくは、壁面への取り付けが可能な取付具付き筐体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に電子機器を収容可能な筐体は、床面や机上に載置されたり(いわゆる縦置きや横置き)、壁に取り付け(いわゆる壁掛け)されたりする。例えば、筐体の底面(下面)や背面(裏面)にスタンドを取り付けることにより筐体を床面等に安定して載置することが行われている。また、壁に直接ビス等を取り付け、筐体の背面に設けた凹部又は孔にビスの頭部を引っ掛けることにより筐体を壁面に取り付けることも行われている。さらに、2種類以上の載置態様を実現できるものもある。例えば、特許文献1には、縦置き、横置き、壁掛けのいずれの態様も選択可能な筐体保持用のスタンドが開示されている。この例では、凸部を有する同一形状の1組の樹脂製スタンドを使用する。そして筐体の側面、前面及び背面に孔を設けて、各スタンドの凸部を筐体の孔に挿入するとともに当該スタンドで筐体を挟み込むという保持構造を備えることにより、縦置き、横置き及び壁掛けのいずれの設置態様も選択可能としている。特許文献2には、筐体に底面と側面に跨る開口部と天面と側面に跨る開口部を設けて、係る開口部に連結される係止側片を備える取付具により、卓上面若しくは壁面に取り付けられる取付具付き筐体が開示されている。かかる筐体では、開口部が天面、底面及び側面のいずれにも設けられており、取付具をこれらのいずれの面にも取り付けが可能であるため、縦置き、横置き及び壁掛けのいずれの設置態様も選択可能となる。
【特許文献1】特開2005−157834号公報
【特許文献2】特許第3465231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術のように、壁に取り付けたビスを利用して筐体を取り付ける方法では、通常、複数のビスを使用する。そのため、筐体の凹部又は孔の位置に合わせてビスの取り付け位置(ビスの間隔)を調整する必要があり取り付けにくい。さらに筐体を取り付ける際はビスと凹部が見えづらいため取り付けにくい。また、ビスが金属製の場合は、取り付けの際に凹部周辺にビス頭部が接触し、筐体に傷がつくことがある。このような傷は筐体の破損、保持力の低下を引き起こすため好ましくない。特に筐体が樹脂製の場合には、この問題が顕著になる。一方、樹脂製のスタンドを使用する特許文献1の構成では、筐体に大きな力が加わると樹脂製スタンドの凸部が破損する虞がある。特に壁掛け状態でこのような破損が生じると、筐体の破損や収容する電子機器の故障を招く。また、当該スタンドは2個の部材を一組として使用するものであるから、壁掛けの場合にはそれぞれの部材を筐体背面の凹部の位置に合わせて取り付ける必要があり、取り付け作業が煩雑となる。特許文献2の構成では、取付具を樹脂製とすれば、特許文献1と同様に、係止側片の破損の虞があることに加え、取付具を金属製とした場合においては、取り付けの際に係止側片が筐体に接触することにより筐体に傷がつきやすい。また、この構成においても、取付具は2個の部材からなり、壁掛けの場合にはその位置決めが必要となる。
そこで、本発明は壁に取り付けられる筐体において、取り付け及び取り外しが容易であり、かつ、壁への筐体の保持力に優れる構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の構成は次の通りである。即ち、
電子機器を収容する本体部と、該本体部を壁面に取り付けるための取付具とからなる取付具付き筐体であって、
前記本体部は、線状の第1ガイド溝及び線状の第2ガイド溝を背面に備え、
前記取付具は、前記第1ガイド溝にスライド可能に嵌入される第1保持部と、前記第2ガイド溝にスライド可能に嵌入される第2保持部とを備え、
前記第1保持部及び前記第2保持部はそれぞれ、ビスが挿通される孔を有するビス受座と、該ビス受座を挟んで前記スライドする方向に沿って設けられる一対のガイド部とを備え、
前記ビス受座は、前記スライドする方向に垂直な方向の長さが前記ビスの軸部の径よりも大きく且つ前記ビスの頭部の径よりも小さく、前記孔にビスを挿通したとき、該ビスの頭部の頂点を前記一対のガイド部の頂点位置よりも低い位置に維持し、
前記第1ガイド溝は前記第1保持部を収納する第1収納部を一端側に備え、該第1収納部は、前記第1保持部の前記ビス受座の孔に挿通されたビス頭部の裏面である座面の一部に対する当接面を備え、
前記第2ガイド溝は前記第2保持部を収納する第2収納部を一端側に備え、該第2収納部は、前記第2保持部の前記ビス受座の孔に挿通されたビス頭部の裏面である座面の一部に対する当接面を備える、
取付具付き筐体である。
【0005】
本発明の取付具付き筐体は、第1保持部及び第2保持部は孔を有する受座を備える。取り付けの際、まず、当該受座の孔を介してビスにより取付具を壁面に固定する。そして、本体部の第1ガイド溝に取付具の第1保持部を、第2ガイド溝に第2保持部をそれぞれ嵌入させた後、本体部をスライドさせて本体部を壁面に固定する。即ち、取付具に対してスライドさせるだけで本体部を取り付けることができる。取り外す際は本体部を取り付け時と反対方向にスライドさせるだけでよい。このように本体部の取り付け及び取り外しが容易である。また、第1保持部及び第2保持部の受座が有する孔を利用して取付具をビス止めするため、ビスの取り付け位置(ビスの間隔)の調整が不要である。そのため取り付け作業が容易となる。さらに、ビスの頭部は、第1保持部において、ガイド部の頂点位置よりも低い位置にあるため、本体部の取り付け時において、ビスの頭部が本体部の背面に直接接触せず、本体部の背面に傷をつけない。
本体部を取り付けたとき、第1保持部は第1収納部に、第2保持部は第2収納部にそれぞれ収納される。ここで、第1保持部のビス受座の孔に挿通されたビス頭部の裏面である座面が第1収納部の当接面に当接するように、第1保持部のビス受座によりビスが所定高さに維持されている。同様に、第2保持部のビス受座の孔に挿通されたビス頭部の裏面である座面が第2収納部の当接面に当接するように、第2保持部のビス受座によりビスが所定高さに維持されている。即ち、ビス頭部の裏面である座面の位置が当該第1収納部及び第2収納部の当接面の高さと一致するように、ビスの頭部が底上げされている。これにより、ビス頭部の裏面である座面と第1収納部及び第2収納部の当接面とが面同士で当接することとなり、本体部が高い保持力を持って壁面に取り付けられる。このように、高い保持力で取り付けられるため、本体部に外力がかかったときに本体部が破損しにくい。
【0006】
本発明の第2の構成では、第1の構成に加えて、第1ガイド溝と第2ガイド溝が一列に配列されており、壁面への取り付けの際、本体部は下方に向かってスライドされて固定される。かかる構成によれば、本体部は下方、即ち、重力方向にスライドさせればよいため、取り付けが一層容易となる。さらに、取り付けた状態では本体部には常に重力方向に力がかかるため、保持力が一層高まる。
【0007】
本発明の第3の構成では、第1の構成又は第2の構成に加えて、本体部がその下面に、取付具の第1保持部が嵌入される第1凹部と、取付具の第2保持部が嵌入される第2凹部とを備える。取付具の第1保持部を本体部の第1凹部に嵌入し、取付具の第2保持部を本体部の第2凹部に嵌入して、取付具を本体部の下面に取り付け、取付具を第1保持部及び第2保持部が設けられる側と反対側が床面と接するように床面に設置することによって、本体部を床面に設置することが可能である。このように本体部は取付具を介して床面にも設置することができ、壁掛けと床置きの両用の取付具付き筐体となり、使い勝手がよい。さらに、このような構成によれば、本体部を前記取付具に容易に取り付けることができるため、取り付け作業が一層容易となる。また、本体部には固定用の突起部が設けられないため、破損等が生じにくく、見栄えもよい。
以下、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例に係る取付具付き筐体1の背面斜視図を図1に示す。取付具付き筐体1は、LANルーター又は無線アクセスポイント用の筐体である。図1に示すように、取付具付き筐体1は本体部2と取付具3からなる。なお、図1は本体部2の背面に取付具3を取り付けた状態を示し、図中矢印Bは壁面への取り付け方向を示す。
図2に本体部2の背面斜視図を示す。図2を参照しながら、本体部2について説明する。この例では本体部2の材料にはABS樹脂を用いた。本体部2の形状は概ね平面視で一辺が約200mmの矩形であって、左右側辺は若干内側に湾曲した凹曲面となっている。本体部2の背面には、第1ガイド溝11、第2ガイド溝12、係合孔13が設けられる。第1ガイド溝11は、仮想中央線110に沿う方向に延在する凹部であって、ビス頭部挿入部14、ビス軸部ガイド部15、ビス頭部収納部16、及びガイド凹部17からなる。なお、仮想中央線110は本体部2の背壁の中心を通り本体部2の縦方向に平行な仮想線である。ビス頭部挿入部14は直径約10mm、深さ約10mmの部分円筒形の凹部であって、その直径は後述のビスの頭部の直径よりも若干大きい。これにより、ビス頭部挿入部14に後述のビスの頭部を挿入することができる。ビス頭部挿入部14の上端側にはビス軸部ガイド部15がビス頭部挿入部14に連続するように形成されている。ビス軸部ガイド部15は仮想中央線110に沿って延在する長さ約15mm、幅約3mm、深さ約10mmの帯状の凹部であって上端は円弧状の凹曲面となっている。後述の第1保持部51を挿入しやすいようにビス頭部挿入部14及びビス軸部ガイド部15の壁面は第1保持部51の側面に合わせて若干内側にテーパーしている。
【0009】
図2において符号141で示すように、ビス頭部挿入部14の壁面の内、平面視で上半分は切り欠かれており、ビス頭部挿入部14の上段半分の厚さaは約2mmである。同様に、符号151で示すようにビス頭部挿入部14の上側に連続するビス軸部ガイド部15の側壁も切り欠かれており、当該ビス軸部ガイド部15の側壁の厚さbは約2mmである。これにより、ビス頭部挿入部14の上段半分及びビス軸部ガイド部15の背後にビス頭部収納部16が形成される。このようにビスの頭部を収納するためのビス頭部収納部16が第1ガイド溝11の上端に備えられている。
ビス頭部挿入部14の下側にはガイド凹部17が形成されている。ガイド凹部17は仮想中央線110に沿って延在する長さ約5mm、幅約3mm、深さ約10mmの帯状のガイド凹部171と、その下方に連続する長さ約35mm、幅約3mm、深さ約1mmの帯状のガイド凹部172からなる。ガイド凹部172の上端173は平面視で直線状となっており、下端は円弧状の凹曲面となっている。このように形成されたガイド凹部17では、後述の第1保持部51(図3参照)を第1ガイド溝11に挿入する際、第1保持部51が当該ガイド凹部17に沿ってビス頭部挿入部14側に移動するためのガイドとして機能する。
【0010】
図2に示すように、第2ガイド溝12は第1ガイド溝11と同様に仮想中央線110に沿う方向に延在する凹部であり、第2ガイド溝12は第1ガイド溝11と一列に配列している。第2ガイド溝12はビス頭部挿入部18、ビス軸部ガイド部19、ビス頭部収納部20、及びガイド凹部21からなる。ビス頭部挿入部18、ビス軸部ガイド部19及びビス頭部収納部20はそれぞれ、第1ガイド溝11のビス頭部挿入部14、ビス軸部ガイド部15、ビス頭部収納部16と同様に形成されている。ガイド凹部21は仮想中央線110に沿って延在する長さ約10mm、幅約3mm、深さ約10mmの帯状のガイド凹部211と、その下方に連続する長さ約20mm、幅約3mm、深さ約1mmの帯状のガイド凹部212からなる。ガイド凹部211の下端213は平面視で円弧状の凹曲面となっている。このように形成されたガイド凹部21では、後述の第2保持部52(図3参照)を第2ガイド溝12に挿入する際、第2保持部52が当該ガイド凹部21に沿ってビス頭部挿入部18側に移動するためのガイドとして機能する。第1ガイド溝11の上方には係合孔13が、仮想中央線110を対称軸として線対称に2個設けられる。係合孔13は深さ約10mmの凹部であって、その内腔が上方に向かってL字型に屈曲している。後述のように、係合孔13には後述の係合突起部54(図3参照)が挿入され、本体部2を下方にスライドするのに伴って当該係合突起部54が係合孔13に係合する。
【0011】
図2に示すように、本体部2の下面には、係合孔40、第1凹部41、第2凹部42、係止凹部43が設けられる。係合孔40は本体部2の側面(紙面右)側に2個設けられる。第1凹部41は後述の第1保持部51(図3参照)の外形よりも若干大きい形状の凹部である。第2凹部42は後述の第2保持部52(図3参照)の外形に沿って形成されている。第2凹部42の、係合孔40と反対側の側部には、2つの係止爪44が対向するように形成されている。
【0012】
取付具3について図3及び図4を参照しながら説明する。図3に取付具3の斜視図を示し、図4にビス止めされた状態の取付具3の正面図を示す。取付具3はABS樹脂製である。図3に示すように、取付具3は枠状部4と固定部5とからなる。枠状部4の外形は、平面視で概ね縦長の矩形で、上端辺がその中央位置で上方へ突出するようになだらかに湾曲している。枠状部4の裏面41は平面となっており、使用時に壁面又は床面と面同士で接する。固定部5は枠状部4の長手方向に沿って、枠状部4の中央に帯状に設けられる。固定部5は第1保持部51、第2保持部52、固定部係合爪53、係合突起部54を備える。第1保持部51は、固定部5の中央を通って固定部5の長手方向に平行な仮想中央線501上で且つ、取付具3の上部に配置される。第1保持部51は、前方ガイド部511、後方ガイド部512、及びビス受座513からなる。前方ガイド部511の形状は固定部5の正面から略垂直に突出した柱状体であって、その高さeは約10mm、幅dは約3mmである。前方ガイド部511はその頂点に向かって若干先細りとなるように側面が若干テーパーしている。後方ガイド部512はビス保持部51の下端に設けられる。後方ガイド部512の形状も前方ガイド部511と同様に固定部5の正面から略垂直に突出した柱状体であって、その高さ及び幅は前方ガイド部511と同一である。ビス受座513の形状は固定部5の正面から膨出した帯形状であって高さcは約2mm、幅dは約3mmである。ビス受座513の中央にはビス取り付け用孔514が穿孔されている。ビス取り付け用孔514は直径約3mmの貫通孔である。以上の配置により、前方ガイド部511、後方ガイド部512はビス受座513を挟んで、後述のように本体部2をスライドする方向に平行な直線状に設けられることとなる。
【0013】
図3に示すように、第2保持部52は仮想中央線501上で且つ取付具3の下部に配置される。第2保持部52は、前方ガイド部521、後方ガイド部522、及びビス受座523からなる。ビス受座523にはビス取り付け用孔524が設けられている。前方ガイド部521、後方ガイド部522、ビス受座523、及びビス取り付け用孔524はそれぞれ、第1保持部51の前方ガイド部511、後方ガイド部512、ビス受座513、及びビス取り付け用孔514と同様に形成される。なお、後方ガイド部522の形状は、後方ガイド部512よりも下端が下方に延出した形状となっており、当該延出部の根本部は左右から切り欠かれて係止凹部525が形成されている。
【0014】
図3に示すように、係合突起部54は第1保持部51の上方に、仮想中央線501を対称軸として左右対称に2個設けられる。係合突起部54はその高さが約10mmで、L字型に上方へ屈曲している。係合突起部54は既述のように係合孔13(図2参照)に挿入されてこれに係合する。固定部係合爪53は仮想中央線501上で且つ、第1保持部51の前方ガイド部511の下方に形成されている。
【0015】
次に取付具付き筐体1を壁面へ取り付ける場合について説明する。まず、図3に示すように、取付具3の第1のビス取り付け用孔514と第2のビス取り付け用孔524に、図4に示すようにビス100を挿通して取付具3を壁面に固定する。なお、本実施例ではビス100のビス頭はなべ型のものを採用したが、これに限定されず、さら型、トラス型など、公知のものを採用することができる。ビス100のビス頭の直径fは約10mmであり、前方ガイド部511及び後方ガイド部512の幅d(3mm)よりも大きい。次に本体部2の第1ガイド溝11(図2参照)に第1保持部51が嵌入し、第2ガイド溝12(図2参照)に第2保持部52が嵌入するように、本体部2を取付具3にあてがう。その後、本体部2を下方にスライドさせることにより、本体部2が取付具3に取り付けられる(図1参照)。これにより、本体部2が矢印B(図1参照)で示す方向にある壁面に固定されることとなる。このように本体部2はスライドさせるだけで壁面に取り付けできる。取り外す際は本体部2(図2参照)を上方にスライドさせ、第1ガイド溝11(図2参照)に嵌入されている第1保持部51及び、第2ガイド溝12(図2参照)に嵌入されている第2保持部52をそれぞれ取り外すだけでよい。このように本体部2の取り付け及び取り外しが容易である。
【0016】
図5に第1ガイド溝11に第1保持部51が嵌入した状態を示す図4におけるA−A線位置の断面図を示し、図6に第1ガイド溝11に第1保持部51が嵌入した後、本体部2を下方にスライドさせた状態を示す図4におけるA−A線位置の線断面図を示す。図5、図6を参照しながら本体部2の取り付け方法をより詳細に説明する。図5に示すように、ビス100の頭部は第1保持部51のビス受座513により底上げされた状態となっており、ビス100の座面(頭部の裏面)101は、図5の符号aで示すように固定部5の上面から約2mm高い位置で維持されている。第1保持部51を第1ガイド溝11に嵌入することにより、ビス100の頭部が第1ガイド溝11のビス頭部挿入部14を介して本体部2の内側に挿入される。次に、本体部2を下方にスライドさせると、図6に示すように、第1保持部51が第1ガイド溝11内を上方にスライドし、第1保持部51の前方ガイド511がビス軸部ガイド部15の上側面152に当接する。これにより、ビス100は第1ガイド溝11に沿って、ビス軸部ガイド部15に移動し、ビス100の頭部がビス頭部収納部16に収納される。その結果、ビス100の座面101と固定部5の上面との間にビス頭部収納部16の嵌入部160が嵌入する。ビス軸部ガイド部15の側壁の厚さb、即ちビス頭部収納部16の嵌入部160の厚さbは約2mmであり、座面101は固定部5の上面から約2mm高い位置で維持されているため、座面101と固定部5の上面との間に嵌入した嵌入部160の上面(当接面)161が座面101に面同士で当接することとなる。これにより、上面(当接面)161はビス100の座面101に対する受座として機能し、ビス100により本体部2が固定されることとなる。その結果、本体部2が壁面へ高い保持力をもって取り付けされる。高い保持力で取り付けられるため、本体部2に外力がかかったときに本体部2が破損しにくい。第2ガイド溝12(図2参照)においても第1ガイド溝11と同様にして、ビス100がビス頭部収納部20に収納され、ビス100により本体部2が固定される。このように2箇所で固定することにより、本体部2の保持力が向上するとともに安定性が向上する。また、本体部2が固定された状態において、固定部係合爪53(図3参照)はガイド凹部172の上端173(図2参照)に係合する。これにより、本体部2が上方へ不用意に位置ずれすることが防止され、一層安定して固定されることとなる。さらに、第1保持部51及び第2保持部52を第1ガイド溝11及び第2ガイド溝12へそれぞれ挿入する際、係合突起部54(図3参照)が係合孔13(図2参照)に挿入され、本体部2を下方にスライドするのに伴って係合孔13に係合する。このように、係合突起部54及び係合孔13は本体部2を下方にスライドする際のガイドとして機能する。これにより、本体部2を取り付ける際、スムーズに本体部2をスライドさせることができ、一層容易に取り付けることができる。また、取り付け後の安定性が向上する。
【0017】
図5に示すように、第1保持部51において、前方ガイド部511の頂部はビス100の頭部よりも固定部5から突出している(図示しないが、後方ガイド部512の頂部も同様にビス100の頭部よりも固定部5から突出している)。これにより、本体部2を取り付ける際に、ビス100の頭部が本体部2に接触せず、本体部2に傷をつけない。従って、破損や保持力の低下を防止できる。第1保持部11と同様に第2保持部12もビス100の頭部が本体部2に接触せず、本体部2に傷をつけない。
【0018】
図7に床置き状態の取付具付き筐体1の斜視図を参照しながら、取付具付き筐体1を床面に設置する場合について説明する。まず、取付具3の裏面41(図3参照)が床面側となるように取付具3を床面に設置する。続いて、本体部2の底面の係合孔40(図2参照)に、取付具3の係合突起部54(図3参照)を係合させた後、当該係合部を支点として本体部2を取付具3側に回動させる。これにより、第1保持部51(図3参照)が第1の凹部41(図2参照)に嵌入し、第2保持部52(図3参照)が第1の嵌入孔42(図2参照)に嵌入して、本体部2の底面が取付具3の固定部5に当接し、図7に示すように本体部2が床に縦置きされることとなる。さらに、第2の凹部42に設けられた2つの係止爪44(図2参照)が、第2保持部52の係止凹部525(図3参照)に係止して、本体部2から取付具3が容易に脱落することが防止される。また、取付具3の固定部係合爪53(図3参照)が係止凹部43(図2参照)に係止される。これにより、本体部2の位置ずれが防止される。このように、取付具付き筐体1は簡易な構成にもかかわらず、壁掛けと床置きの両用となる。実施態様では床に設置したがこれに限定されず、机や棚などの水平な面上であれば設置することができる。
【0019】
本実施例では、本体部2の背面の仮想中央線110に沿って設けた第1ガイド溝51及び第2ガイド溝52(図2参照)により本体部2を固定したが、第1ガイド溝及び第2ガイド溝の配置はこれに限定されない。本発明の第1の変形態様である取付具付き筐体の本体部180の背面図を図8に示し、取付具190の正面図を図9に示す。
図8に示すように、本体部180の背面には、第1ガイド溝181、第2ガイド溝182、係合孔183が設けられる。第1ガイド溝181及び第2ガイド溝182の構成は、本体部2の第2ガイド部12(図3参照)の構成と同様である。本体部2の第2ガイド部12は仮想中央線110に沿って設けられるが、第1ガイド溝181は本体部180の背面の中心を通って本体部180の幅方向に平行に延びる仮想線184上の本体部180の背面左側部に設けられ、仮想線184に垂直に延びる仮想線185に沿って形成されている。一方、第2ガイド溝182は仮想線184上の本体部180の背面右側部に設けられ、仮想線184に垂直に延びる仮想線186に沿って形成されている。係合孔183は本体部180の背面中央に形成されている。なお、当該変形例では、仮想線184は本体部180の背面の中心を通って本体部180の幅方向に平行に延びるが、これに限定されず、本体部180の背面の中心と本体部180の上端との間の任意の位置を通って本体部180の幅方向に平行に延びることにしてもよい。また、係合孔183は本体部180の背面中央に形成したが、これに限定されるものではなく、後述の固定部係合爪185(図9参照)の配置に対応する位置に設けられるものである。
【0020】
図9に示すように、取付具190は枠状部191、固定部192からなり、その外形は取付具3と略同一である。固定部192には第1保持部193、第2保持部194、固定部係合爪195が設けられる。第1保持部193、第2保持部194の構成は、取付具3の第1保持部51(図3参照)と同様である。第1保持部51は仮想中央線501に沿って設けられるが、第1保持部193は固定部192の中心を通り固定部192の長手方向に平行な仮想中央線196上の取付具190の右側部に設けられ、仮想中央線196に垂直に延びる仮想線197に沿って形成されている。第2保持部194は仮想中央線196上の取付具190の左側部に設けられ、仮想中央線196に垂直に延びる仮想線198に沿って形成されている。このように形成された第1保持部193、第2保持部194はそれぞれ、本体部180の背面の第1ガイド溝181、第2ガイド溝182に対応する位置に設けられる。固定部係合爪195は固定部192の中心に形成される。なお、固定部係合爪195の配置はこれに限定されず、本体部180の係合孔183(図8参照)の位置を考慮して固定部192の任意の位置に設けることができる。
【0021】
次に本体部180の取付方法を説明する。まず、図9に示すように、取付具190をビス200で壁面に固定し、本体部180の第1ガイド溝181に第1保持部193を嵌入させ、第2ガイド溝182に第2保持部194を嵌入させた後、本体部180を下方にスライドする。これにより本体部180が壁面に固定される。尚、本変形態様の取付具付き筐体においても、取付具付き筐体1と同等の効果を奏する。
【0022】
次に、本発明の他の変形態様である取付具付き筐体について説明する。当該取付具付き筐体は図10に示す本体部300と、図11に示す取付具400からなる。
図10に示すように、本体部300は概して平面視で矩形であって、左右側辺が若干内側に湾曲している。本体部300の背面には、第1保持部310、第2保持部320が設けられる。第1保持部310は、本体部300の中央を通り本体部300の上下方向に平行な仮想中央線301に沿って、本体部300の背面の上部に設けられる。第1保持部310は取付具付き筐体1の本体部2における第2保持部12(図2参照)と同様の構成であって、第1保持部310のビス頭部挿入部311、ビス軸部ガイド部312、ビス頭部収納部313及びガイド凹部314はそれぞれ、第2保持部12(図2参照)のビス頭部挿入部18、ビス軸部ガイド部19、ビス頭部収納部20及びガイド凹部21に対応する。
一方、第2保持部320は、仮想中央線301に沿って、本体部300の背面の下部に設けられる。第2保持部320も取付具付き筐体1の本体部2における第2保持部12(図2参照)と同様の構成であって、第2保持部320のビス頭部挿入部321、ビス軸部ガイド部322、ビス頭部収納部323及びガイド凹部324はそれぞれ、第2保持部12(図2参照)のビス頭部挿入部18、ビス軸部ガイド部19、ビス頭部収納部20及びガイド凹部21に対応する。
【0023】
次に図11に示すように、取付具400は枠状部401と固定部402からなる。枠状部401の形状は略矩形の枠状で、上部及び下部が外側にわずかに湾出した形状である。固定部402の形状は帯状であって、中央を通って枠状部401の上下方向に平行に設けられる。固定部402には、第1ガイド部403と第2ガイド部404が設けられる。第1ガイド部403は、固定部402の中心を通り、固定部402の長手方向に平行な仮想中央線405に沿って、固定部402の上部に設けられる。第1ガイド部403は、取付具付き筐体1の取付具3における第1ガイド部51(図3参照)と同様の構成であって、第1ガイド部403の前方ガイド部406、後方ガイド部407、ビス受座408及びビス取り付け用孔409はそれぞれ、第1ガイド部51(図3参照)の前方ガイド部511、後方ガイド部512、ビス受座513及びビス取り付け用孔514に対応する。
一方、第2ガイド部404は、固定部402の中心を通り、固定部402の長手方向に平行な仮想中央線405に沿って、固定部402の下部に設けられる。第1ガイド部403も付具付き筐体1の取付具3における第1ガイド部51(図3参照)と同様の構成であって、第2ガイド部404の前方ガイド部410、後方ガイド部411、ビス受座412及びビス取り付け用孔413はそれぞれ、第1ガイド部51(図3参照)の前方ガイド部511、後方ガイド部512、ビス受座513及びビス取り付け用孔514に対応する。以上のように設けられた第1ガイド部403と第2ガイド部404はそれぞれ、本体部300(図10参照)の第1保持部310、第2保持部320に対応する位置に設けられることとなる。
以上に示した本体部300(図10参照)と取付具400からなる取付具付き筐体は、取付具付き筐体1(図1参照)と同様に壁面に取り付けられ、取付具付き筐体1と同等の効果を奏する。
【0024】
上記3つの実施例では、本体部を下方にスライドさせる構成を示したが、これに限定されず、本体部を横方向、斜め方向にスライドさせる構成を採用することもできる。また、第1ガイド溝及び第2ガイド溝を所定の仮想円に沿って形成して、これに対応するように取付具に第1保持部及び第2保持部を設けて、本体部を回転方向にスライドさせる構成とすることもできる。また、本体部が第3ガイド溝、第4ガイド溝をさらに備え、これに対応するように取付具が第3保持部、第4保持部を備える構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の筐体は、ハードディスクドライブ、無線LAN装置、ターミナルアダプタ装置、ルーター装置等、各種電子機器を収容する筐体として利用可能である。
【0026】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は取付具付き筐体1を壁面に取り付けた状態における一部透過背面斜視図である。
【図2】図2は本体部2の背面斜視図である。
【図3】図3は取付具3の斜視図である。
【図4】図4はビス止めされた状態の取付具3の正面図である。
【図5】図5は第1ガイド溝11に第1保持部51が嵌入した状態を示す図4におけるA−A線位置の断面図である。
【図6】図6は第1ガイド溝11に第1保持部51が嵌入した後、本体部2を下方にスライドさせた状態を示す図4におけるA−A線位置の線断面図である。
【図7】図7は床置き状態の取付具付き筐体1の斜視図である。
【図8】図8は本体部180の背面図である。
【図9】図9は取付具190の正面図である。
【図10】図10は本体部300の背面図である。
【図11】図11は取付具400の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 取付具付き筐体
2、180、300 本体部
3、190、400 取付具
4、181、401 枠状部
5、182、402 固定部
11、181、310 第1ガイド溝
12、182、320 第2ガイド溝
13、183 係合孔
14、18、311、321 ビス頭部挿入部
15、19、312、322 ビス軸部ガイド部
16、20、313、323 ビス頭部収納部
17、171、172、21、211、212、314、324 ガイド凹部
40 係合孔
41 第1凹部
42 第2凹部
43 係止凹部
51、193、403 第1保持部
52、194、404 第2保持部
53、195 固定部係合爪
54 係合突起部
511、521、406、410 前方ガイド部
512、522、407、411 後方ガイド部
513、523、408、412 ビス受座
514、524、409、413 ビス取り付け用孔
100、200 ビス
101 ビスの座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容する本体部と、該本体部を壁面に取り付けるための取付具とからなる取付具付き筐体であって、
前記本体部は、線状の第1ガイド溝及び線状の第2ガイド溝を背面に備え、
前記取付具は、前記第1ガイド溝にスライド可能に嵌入される第1保持部と、前記第2ガイド溝にスライド可能に嵌入される第2保持部とを備え、
前記第1保持部及び前記第2保持部はそれぞれ、ビスが挿通される孔を有するビス受座と、該ビス受座を挟んで前記スライドする方向に沿って設けられる一対のガイド部とを備え、
前記ビス受座は、前記スライドする方向に垂直な方向の長さが前記ビスの軸部の径よりも大きく且つ前記ビスの頭部の径よりも小さく、前記孔にビスを挿通したとき、該ビスの頭部の頂点を前記一対のガイド部の頂点位置よりも低い位置に維持し、
前記第1ガイド溝は前記第1保持部を収納する第1収納部を一端側に備え、該第1収納部は、前記第1保持部の前記ビス受座の孔に挿通されたビス頭部の裏面である座面の一部に対する当接面を備え、
前記第2ガイド溝は前記第2保持部を収納する第2収納部を一端側に備え、該第2収納部は、前記第2保持部の前記ビス受座の孔に挿通されたビス頭部の裏面である座面の一部に対する当接面を備える、
取付具付き筐体。
【請求項2】
前記第1ガイド溝と前記第2ガイド溝が一列に配列されており、壁面への取り付けの際、前記本体部は下方にスライドされて固定されることを特徴とする、請求項1に記載の取付具付き筐体。
【請求項3】
前記本体部がその下面に、前記取付具の前記第1保持部が嵌入される第1凹部と、前記取付具の前記第2保持部が嵌入される第2凹部と、を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の取付具付き筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−67631(P2010−67631A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229856(P2008−229856)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】