説明

取引システム

【課題】渉外員が顧客の元に出向き出金取引を行う場合であっても、出金取引処理が完遂できる取引システムを提供する。
【解決手段】可搬型取引装置30と上位装置6とを通信回線で接続し、今回の取引が出金取引である場合に可搬型取引装置30は、本人確認情報取得部18が取引伝票9から取得した本人確認情報と、本人確認情報データベース26の顧客口座情報に記憶されている本人確認情報とが一致し、且つ、伝票情報認識部17が取引伝票9から読み取った出金金額以上の預貯金残高が顧客情報データベース25にある場合、少なくとも今回の取引に基づく取引情報を通帳処理部14により通帳8に印字し、現金保管部15からの出金処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型取引装置と該可搬型取引装置と接続された上位装置とから構成される取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関においては、渉外員が顧客先に出向いて出金取引を行う場合がある。このような場合、始めに、渉外員は顧客に対して出金用の伝票を渡す。顧客はこの伝票に出金情報(取引日、氏名、口座番号、出金金額)を記入し、届出印を押印して通帳と共に渉外員に渡す。渉外員は受け取った伝票と通帳を銀行まで持ち帰り、銀行で伝票に押印されている印鑑の印影と予め銀行に登録されている印鑑の印影とを照合し、一致した場合に出金の手続きを行っていた。そして出金の手続き、及び通帳への取引の記帳を行った後、顧客の元に現金、及び通帳を届けていた。
【0003】
また近年、渉外業務端末で依頼書を画像として取得するとともに、渉外業務受付端末との間で必要な情報を授受し、印鑑照合や記入事項の形式点検等を渉外員が顧客の元で行うことができる渉外業務システムがあり、形式点検の結果、依頼書の記入内容が具備されていれば、渉外員は当該依頼書を受け付けて営業店等へと持ち帰り処理するものがある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−049751号公報(第6頁、段落0041〜0042)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の渉外業務システムにおいては、印鑑照合や記入事項の形式点検等は渉外員が顧客の元で行うが、取引が出金取引の場合、渉外員は営業店等に戻り、出金手続きと通帳への記帳を行い、再度顧客を訪問して現金、及び通帳を顧客に渡していた。従って、渉外員が顧客から出金取引のために伝票を受け取ってから顧客に現金を受け渡すまでに時間がかかってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明で設けた解決手段は、取引伝票に記入された顧客口座情報と取引情報を読み取る伝票情報認識部と、取引伝票から本人確認情報を取得する本人確認情報取得部と、取引に供する現金を保管する現金保管部と、通帳への情報印字が可能な通帳処理部とを備えた可搬型取引装置と設ける。さらに、顧客口座情報別に少なくとも暗証情報と預貯金残高情報を記憶した顧客情報データベースと、顧客口座情報別に本人確認情報を記憶する本人確認情報データベースとを備えた上位装置とを設ける。そして、可搬型取引装置と上位装置とを通信回線で接続する。
今回の取引が出金取引である場合に可搬型取引装置は、本人確認情報取得部が取得した本人確認情報と、本人確認情報データベースの顧客口座情報に記憶されている本人確認情報とが一致し、且つ、伝票情報認識部が取引伝票から読み取った出金金額以上の預貯金残高が顧客情報データベースにある場合、少なくとも今回の出金取引に基づく取引情報を通帳処理部により通帳に印字すると共に、現金保管部からの出金処理を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本人確認情報取得部が取引伝票から取得した本人確認情報と、本人確認情報データベースの今回の取引口座に記憶されている本人確認情報とが一致し、且つ伝票情報認識部が取引伝票から読み取った出金金額以上の預貯金残高が顧客情報データベースの取引口座にある場合、可搬型取引装置は、少なくとも今回の取引に基づく情報を通帳処理部により通帳に印字すると共に、現金保管部から出金金額分の現金を繰り出して出金処理を行うことにより、渉外員が顧客の元に出向き出金取引を行う場合、そのまま顧客の元で現金の受け渡しと通帳への記帳を行うことができる。その結果、出金取引処理が顧客元にて完結可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1は取引システムの構成を示す説明図である。図2は可搬型取引装置の構成を示す外観図である。図3は可搬型通帳伝票記帳機の機構配置を示す概念図である。なお、各図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【0008】
図1において、取引システム1は、渉外員が携帯可能な可搬型取引装置(以後、取引装置とする)30と、基地局4と、通信制御装置5と、上位装置である集中制御装置6とから構成されている。なお、取引装置30は可搬型通帳伝票記帳機(以後、通帳伝票記帳機とする)2と可搬型情報端末装置(以後、情報端末装置とする)3とから構成されており、通帳伝票記帳機2と情報端末装置3はケーブル7で接続されている。そしてこの取引装置30には渉外員が携帯するために、図示しない取手や運搬用ベルト類が装着される。情報端末装置3と基地局4とは無線により通信可能となっており、基地局4と集中制御装置6は通信制御装置5を介して接続されている。
8は予め顧客に支給されている通帳であり、9は取引依頼を行う取引伝票(以後、伝票とする)である。
なお、情報端末装置3は図2に示す一点鎖線3aの位置への埋込みや収納する形態でも良いし、PDA(Personal Digital Assistance)や携帯電話器のような通信機器でも良い。
【0009】
通帳伝票記帳機2は、全体の動作を制御する制御部であるコントローラ部10と、コントローラ部10や機構部のアクチュエータ等に電力を供給する電源部11、そして機構部がある。機構部としては、イメージ読取部12, 磁気ストライプリーダ・ライタ部13,通帳処理部としてのプリンタ部14および現金保管部15により構成される。更にコントローラ部10からの指示で各種の処理を行う部位として、入出金情報管理部16,文字認識部17,本人確認情報取得部である印鑑認識部18,紙幣認識部19がある。
なお、電源部11は充電可能なバッテリー方式とするが、家庭用電源の供給を可能にしたものでも良い。
【0010】
イメージ読取部12は、伝票9に記入された顧客口座情報(例えば、口座番号等)、出金金額、氏名等の文字情報や印影を画像情報として読み取るものであり、ここで読み取られた画像情報を文字認識部17、印鑑認識部18,紙幣認識部19が解析する。磁気ストライプリーダ・ライタ部13は通帳8に設けられた情報記憶領域である磁気ストライプに情報を書き込む、あるいは磁気ストライプから顧客口座情報(口座番号等)を読み取る。プリンタ部14は通帳8に取引情報を印字したり、伝票9に取引情報や認証印字を行う部位であり、例えば、ラインサーマルヘッドと熱転写インクリボン等を備えた印字機能を有する部位である。
【0011】
現金保管部15は、現金としての紙幣を集積保管し、積層保管された紙幣の分離、及び繰り出し機能を備えている。各紙幣の金種(千円、二千円、五千円、一万円)を問わず、真券と判定されたものを混在収納する。更に図3に示すように現金保管部15を単一のものとしたのは、複数の金種を区分けして収納できる構成にすることによる重量増や大型化要因を避けるためである。
なお、本実施の形態では現金として紙幣のみ保管するが、硬貨も合わせて保管し入出金できるようにすることも可能である。しかしながら、可搬型の機器のため軽量化の観点から、硬貨は取り込まない構造とする。更には、通帳伝票記帳機2から開錠操作により脱着可能とすると良い。
【0012】
入出金情報管理部16は、主に現金保管部15内の現金有高や積層される紙幣金種とその積層順位を記憶、管理する。よって、現金保管部15から紙幣の繰り出しが行われると、有高は減算され、取り込みが行われると加算されることになる。
文字認識部17は、イメージ読取部12が取り込んだ通帳8や伝票9に記入または印刷されている文字情報を解析し、各フォーマット情報に従って文字認識する部位であり、辞書部も有している。
【0013】
印鑑認識部18は、イメージ読取部12が取り込んだ伝票9に押印されている印影イメージ情報に対して、所定の閾値で二値化して印影イメージ画像を生成するものである。
なお、印影が薄い場合などには閾値を切り替えて、鮮明なイメージ画像とする。
紙幣認識部19は、紙幣の鑑別機能を有する部位であり、イメージ読取部12が取り込んだ紙幣全体のイメージ画像から予め定めた特徴点を解析し、紙幣の真偽、金種を判定する。
また、文字認識部17と印鑑認識部18および紙幣認識部19は個別に記載したが、イメージ読取部12からのイメージ情報を画像解析するという点で同一機能でもあるので、図1に破線で併記した部分を一体化しても良い。
【0014】
次に、通帳伝票記帳機2について、図2、図3を使用して更に説明する。
図3において左側方から順に、磁気ストライプリーダ・ライタ部13、イメージ読取部12、プリンタ部14そして現金保管部16が配置されている。これらの各部は搬送路201で接続されており、挿入排出口202から通帳8や伝票9を矢印A方向に挿入すると図示しない搬送モータや検出器により搬送路201内を往復搬送可能となる。
203は搬送路201の内部(本実施例ではプリンタ部の後方)で分岐する退避路であって、通帳8や伝票9の下端近傍を印字する際に、それらの先端側が現金保管部15に入り込まないようするものである。この分岐部には図示しない搬送方向の切替手段を有する。なお、これらの退避路203への誘導については、本発明に関係しないため以後の説明は省略する。
【0015】
情報端末装置3は、通信制御部24と、情報端末装置3全体の動作を制御する制御部である情報処理部20と、データ保存部21と、タッチパネル機能を備えた表示部22と、渉外員が情報の入力を行う情報入力部としての入力部23とから構成されている。
なお、通信制御部24は通帳伝票記帳機2及び基地局4及び通信制御装置5を介して集中制御装置6とのデータの送受信を制御する。
【0016】
集中制御装置6には、顧客情報データベース25と、本人確認情報データベースである印鑑情報データベース26と、集中制御装置6全体の動作を制御する制御部であるコントローラ部27が設けられている。
顧客情報データベース25には、顧客口座情報別に氏名と預貯金残高と暗証情報としての暗証番号と、未記帳データとして取引日と取引種別と取引金額が記憶される。また、印鑑情報データベース26には、顧客口座情報別に予め届出登録された本人確認情報である印鑑の印影画像が記憶されている。
【0017】
次に上記構成における取引システムの出金取引動作について説明する。図4は本実施の形態の表示部に表示された画面を示す説明図である。
始めに、渉外員は顧客に対して出金取引用の伝票9を手渡す。顧客はこの伝票9に出金取引情報(氏名、口座番号、取引金額)を記入し、届出印を押印して通帳8と共に渉外員に渡す。渉外員は情報端末装置3の入力部23の出金取引ボタンを押下する。
出金取引ボタンが押下されたことが入力部23から情報処理部20へと送信され、情報処理部20は出金取引が行われることを通信制御部24により通帳伝票記帳機2に送信する。
【0018】
そして、通帳伝票記帳機2のコントローラ部10は、情報端末装置3から出金取引が行われることを示すデータを受信すると出金取引モードとして伝票9が挿入されるのを待つ。伝票9が挿入排出口202から挿入されると、図示せぬ検出器がこれを検出し、搬送路201内に取り込む。
搬送路201内を搬送される伝票9はイメージ読取部12を通過する。ここで読み取られたイメージ画像を文字認識部17で解析し、伝票9に記入された顧客口座情報と出金金額と氏名情報を文字認識する。また印鑑認識部18では伝票9に押印された印影をイメージ情報として認識する。なお、文字認識範囲や印影イメージの採取範囲は予め伝票9毎に定めてある。
【0019】
コントローラ部10は読み取った顧客口座情報と出金金額と氏名は文字コード化し、また印影はイメージ画像として情報端末装置3に送信する。
情報端末装置3の情報処理部20は、通信制御部24により顧客口座情報と出金金額と氏名と、印影のイメージ画像を受信すると、データ保存部21に記憶する。
続いて、集中制御装置6への問い合わせの準備ができると、情報処理部20は表示部22に図4に示す画面を表示させる。ここで渉外員が照会ボタン28aを押下すると、情報処理部20は、データ保存部21に保存されている今回の取引に関するデータの内、顧客口座番情報及び出金金額を問い合わせ情報として通信制御部24により基地局4を介して通信制御装置5へと送信し、通信制御装置5は更に集中制御装置6へと送信する。
なお、取り消しボタン28bが押下されると、伝票9を排出すると共にデータ保存部21に記憶した情報を消去する。
【0020】
集中制御装置6のコントローラ部27は問い合わせ情報を受信すると、該受信した問い合わせ情報の顧客口座情報に基づき、顧客情報データベース25から預貯金残高情報を読み出し、受信した出金金額情報との比較を行い、出金取引可であるか否かの判断を行う。そして出金取引可と判断した場合、出金取引後の預貯金残高を算出し、未確定の出金金額と出金取引後残高として顧客情報データベース25の該当する顧客口座情報に対応させて仮記憶する。
また、コントローラ部27は顧客口座情報に基づき、印鑑情報データベース26に記憶されている届出印鑑の印影画像を読み出す。そしてコントローラ部27は顧客口座情報と共に、前記「出金取引可であるか否か」いずれかの判断結果と、出金可であった場合の出金取引後の残高と、印影の画像を通信制御装置5及び基地局4を介して情報端末装置3へと送信する。
【0021】
情報端末装置3の情報処理部20は通信制御部24により「出金取引可であるか否か」のいずれかの判断結果と、出金可であった場合に受信する出金取引後の預貯金残高と、登録印影の画像を受信すると、受信したデータを既に同一の顧客口座情報に対応させて記憶してあるデータと共にデータ保存部21に保存する。情報処理部20は受信した情報から出金取引が「可」、あるいは「否」のいずれであるかを判断し、「否」であった場合、表示部22に残高不足で出金取引ができないこと等を表示させて、また伝票9を装置外に排出して今回の取引を不成立として終了する。
【0022】
一方「可」であった場合、情報処理部20は集中制御装置6から受信した登録印影の画像と、伝票9から読み取った印影画像との照合を行う。ここで集中制御装置6から受信した登録印影画像と、伝票9から読み取った印影画像とが一致すれば照合OKとし、一方、一致しなければ照合NGと判断する。なお、照合方法は特に限定しないが、画像の重ね合わせによる一致率(%)が規定値以上であれば「一致」と判定するもので良い。
照合NGであった場合、情報処理部20は表示部22に印影が一致しなかったことを表示させて、また伝票9を装置外に排出する。
更に情報処理部20は顧客口座情報と、今回の取引を保留とすることを示すデータを通信制御部24により基地局4を介して通信制御装置5へと送信し、通信制御装置5は更に集中制御装置6へと送信する。
今回の取引が保留となったことを示すデータを受信すると、今回の取引を一旦中断し、情報処理部20は異なる印鑑を用いて伝票9に押印してしまったと仮定して別処理を行う。この場合の説明は後述する。
【0023】
集中制御装置6のコントローラ部27は顧客口座情報と、今回の取引が保留となったことを示すデータを受信すると、顧客情報データベース25の該当する口座に未確定の出金金額と出金取引後残高として記憶されている情報を消去する。そして集中制御装置6は今回の取引を中断する。なお、コントローラ部27は所定時間が経過しても何らかの指示が発生しない場合は強制終了する。
【0024】
一方、集中制御装置6から受信した登録印影の画像と、伝票9から読み取った印影の画像とが一致し、照合OKであった場合、情報処理部20は顧客口座情報と、今回の取引が確定されたことを示すデータを通信制御部24により基地局4を介して通信制御装置5へと送信し、通信制御装置5は更に集中制御装置6へと送信する。
集中制御装置6のコントローラ部27は顧客口座情報と、今回の取引が確定されたことを示すデータを受信すると、顧客情報データベース25の該当する口座に未確定の出金金額と出金取引後残高として仮記憶されている情報を確定された出金金額と出金取引後残高として記憶する。
【0025】
また、照合OKであった場合、情報処理部20はデータ保存部21に記憶してある顧客口座情報と確定した出金金額と氏名情報に取引日時情報を加える。情報処理部20は出金取引情報を通帳伝票記帳機2に送信する。通帳伝票記帳機2のコントローラ部10は情報端末装置3から取引日と顧客口座情報と出金金額と氏名および出金取引後の残高情報を受信すると通帳伝票記帳機2に挿入され、待機している伝票9に対して、プリンタ部14により伝票9の所定欄に取引印字して挿入排出口202から排出する。
【0026】
伝票9への印字、排出が終了すると、コントローラ部10は伝票9への印字処理が終了し、排出したことを示すデータを情報端末装置3に送信する。情報端末装置3の情報処理部20は、コントローラ部10により伝票9への印字が終了したことを示す信号を受信すると、通帳8を通帳伝票記帳機2に挿入することを促す表示を表示部22に行わせる。また、それと共に情報処理部20は通帳受け入れ状態とする指示を通信制御部24により通帳伝票記帳機2へと送信する。
【0027】
通帳伝票記帳機2は情報端末装置3から通帳受け入れ状態とする指示を受信すると、コントローラ部10は通帳8が挿入待ちとする。通帳8が挿入排出口202に挿入されたことが検出されると搬送路201内への搬送を開始する。搬送により磁気ストライプリーダ・ライタ部13で通帳8に設けられた磁気ストライプから顧客口座情報を読み取る。ここで通帳8を装置内に保持した状態で、コントローラ部10は通帳8の磁気ストライプから読取った顧客口座情報を情報端末装置3に送信する。
【0028】
情報端末装置3の情報処理部20は、通信制御部24により顧客口座情報を受信するとデータ保存部21に記憶し、伝票9から読み取り、データ保存部21に記憶されている顧客口座情報と、通帳8から読み取った顧客口座情報との照合を行う。
ここで伝票9から読み取った顧客口座情報と、通帳8から読み取った顧客口座情報とが一致すれば照合OKとし、一方、一致しなければ照合NGと判断する。そして照合NGであった場合、情報処理部20は表示部22に挿入された通帳8が出金取引を行う通帳8ではないので、異なる通帳8が通帳伝票記帳機2に挿入されたことを表示させる。
通信制御部24により通帳伝票記帳機2内の通帳8を排出することを示すデータを送信する。通帳伝票記帳機2はこのデータを受信すると、通帳伝票記帳機2内に保持されている通帳8を挿入排出口202から排出する。排出が完了すると、通帳8の再挿入を促し、前述した通帳受け入れ待ち状態にする。
【0029】
一方、顧客口座情報が一致し照合OKと判断した場合、情報処理部20はデータ保存部21から今回の取引の顧客口座情報を読み出し、該読み出した顧客口座情報と共に未記帳データを要求する信号を通信制御部24により基地局4へと送信する。該基地局4は顧客口座情報と未記帳データを要求する信号を受信すると通信制御装置5へと送信し、通信制御装置5は更に集中制御装置6へと送信する。
【0030】
集中制御装置6のコントローラ部27は顧客口座情報と未記帳データを要求する信号を受信すると、該顧客口座情報に基づき顧客情報データベース25から未記帳データを読み出す。
なお、この未記帳データは今回の出金取引における出金金額と出金取引後の預貯金残高を含んでいる。そしてコントローラ部27はこの未記帳データ、例えば、今回の取引以前の取引でまだ記帳されていない取引履歴情報があれば、その取引の取引日と取引種別と取引金額と、加えて、今回の出金取引の取引日と取引金額と出金取引後残高情報を通信制御装置5及び基地局4を介して情報端末装置3へと送信する。
【0031】
情報端末装置3の情報処理部20は、通信制御部24により顧客口座情報と未記帳データを受信すると、該未記帳データを既に同一の顧客口座情報に対応させて記憶してあるデータと共にデータ保存部21に保存する。
その後、情報処理部20は未記帳データを通信制御部24により通帳伝票記帳機2へと送信する。
【0032】
通帳伝票記帳機2のコントローラ部10は情報端末装置3から未記帳データを受信すると、受信した未記帳データをプリンタ部14で通帳8に印字する。そしてコントローラ部10は磁気ストライプリーダ・ライタ部13で磁気ストライプに対して今回の取引による情報の更新を行う。そして通帳8を通帳伝票記帳機2から排出し、コントローラ部10は通帳記帳が終了したことを示すデータを情報端末装置3に送信する。また、コントローラ部10は通帳伝票記帳機2の動作を停止する。
【0033】
情報端末装置3の情報処理部20は、通信制御部24により通帳記帳が終了したことを示すデータを受信すると、データ保存部21の未記帳データを消去する。データ保存部21に記憶されている今回の取引における確定した出金金額を読み出して、出金指示を示す信号と確定した出金金額を通信制御部24により通帳伝票記帳機2へと送信する。
【0034】
通帳伝票記帳機2のコントローラ部10は出金金額情報を受信すると、入出金情報管理部16に送信する。コントローラ部10は該入出金情報管理部16の有高情報に従って現金保管部15を制御し、当該金額の紙幣を現金保管部15から繰り出し、装置外に排出する(出金動作の詳細については後述する)。
入出金情報管理部16は現金保管部15から出金金額分の紙幣の排出が行われたことを認識すると、出金完了通知をコントローラ部10に送信する。コントローラ部10は出金完了通知を受信すると、入出金情報管理部16の有高情報を更新すると共に、出金が完了したことを示すデータを情報端末装置3に送信する。
【0035】
情報端末装置3の情報処理部20は、通信制御部24により出金が完了したことを示すデータを受信すると、データ保存部21の該当する顧客口座情報に出金が完了したことを示すデータを付加して記憶する。
【0036】
渉外員は一連の処理が終了した時点で、入力部23から集中制御装置6へのデータの送信を入力する。この情報の入力は入力部23から情報処理部20へと送信され、情報処理部20は、データ保存部21に保存されている今回の取引に関するデータ(取引日時と顧客口座情報と未記帳データの通帳8への印字が終了したことと、および出金処理が実行されたこと)を取引完了情報として通信制御部24により基地局4へと送信する。該基地局4は取引完了情報を受信すると通信制御装置5へと送信し、通信制御装置5は更に集中制御装置6へと送信する。
【0037】
集中制御装置6のコントローラ部27は取引完了情報を受信すると、該受信した取引完了情報に基づき、顧客情報データベース25に仮記憶されている該当する顧客口座情報の取引情報の更新を行う。
そしてコントローラ部27は認証印字情報、例えば、取引日時と処理通番と顧客口座情報と出金金額と氏名、及び出金取引後の残高情報を通信制御装置5及び基地局4を介して情報端末装置3へと送信する。そして集中制御装置6は今回の出金取引を成立とする。
【0038】
情報端末装置3は通信制御部24により認証印字情報を受信すると、該認証印字情報を既に同一の顧客口座情報に対応させて記憶してあるデータと共にデータ保存部21に保存する。その後、情報処理部20は認証印字を指示するデータと、データ保存部21から取得した認証印字情報と、伝票受け入れ状態とする指示を通信制御部24により通帳伝票記帳機2へと送信する。また、それと共に情報処理部20は表示部22に対して伝票9の裏側を印字面として通帳伝票記帳機2内に挿入することを促す表示を行う。
【0039】
通帳伝票記帳機2のコントローラ部10は情報端末装置3から認証印字を行うことを示すデータと、認証印字情報と伝票受け入れ状態とする指示を受信すると、受信した該認証印字情報をプリンタ部14により印字することになる。この認証印字情報としては取引日時と通番、顧客口座情報、出金金額と、氏名、出金取引後の預貯金残高情報を伝票9に印字させて装置外に排出する。
そして、コントローラ部10は通帳伝票記帳機2の機械動作を停止する。またコントローラ部10は認証印字が終了したことを示すデータを情報端末装置3に送信する。そしてコントローラ部10は今回の出金取引を終了する。
【0040】
情報端末装置3の情報処理部20は、通信制御部24により認証印字が終了したことを示すデータを受信すると、データ保存部21の認証印字情報を消去する。そして情報処理部20は出金取引の終了を表示部22に表示させ、渉外員に知らせる。これにより今回の出金取引は完結する。
【0041】
次に、現金の出金処理について説明する。
図5は可搬型取引装置の動作フローチャートであり、図6は表示部に表示される画面を示す説明図である。なお、図6(a)に示すように、出金取引額は万円紙幣で10枚を指定したものとして説明する。また、Sは動作ステップを意味する。
S1:伝票9への印字、排出および通帳8への取引情報印字と磁気ストライプの更新が行われて、通帳伝票記帳機2の挿入排出口202から通帳8が抜き取られると、コントローラ部10は現金の出金動作を開始させる。
【0042】
S2:コントローラ部10は、入出金情報管理部16に記憶されている紙幣情報に対して、金種と積層順位を読み出し、上層より万円紙幣が10枚目となる層までの繰り出しを指示する。例えば、万円紙幣10枚以外に千円紙幣が3枚積層(混在)されていても、それらの3枚を計数的には無視しての出金金額に相当する万円紙幣で10枚とする。
S3:現金保管部15から1枚づつ分離繰り出された紙幣は搬送路201を挿入排出口202側に向かって搬送され、イメージ読取部12を通過する。ここで紙幣からイメージ画像が読み取られ、紙幣認識部19で真偽と金種判定が行われる。
渉外員は挿入排出口202に紙幣1枚が排出されると、その紙幣を抜き取る、すると、次ぎの紙幣の分離繰り出しが開始される。この動作を繰り返して、万円紙幣が10枚となるまで続ける。この時点で万円紙幣以外の紙幣、例えば千円紙幣が繰り出されても挿入排出口202まで搬送し排出して渉外員に抜き取らせる。
【0043】
S4:出金金額(万円紙幣で10枚)が計数されると、コントローラ部10は万円紙幣以外の金種が繰り出された(過払出し)か否かを判定する。
S5:過払出しが発生している場合には、それらの紙幣を現金保管部15に戻すことを指示する。即ち、挿入排出口202より紙幣を投入するよう誘導する。本実施例では、千円紙幣が3枚存在するので、図6(b)に示すように過払出しがあることを表示部22に表示する。特に、注意文言29cを点滅表示する。
コントローラ部10は通帳伝票記帳機2を紙幣取込モードに設定する。
S6:渉外員は万円紙幣10枚を手捲り操作で確認し、それらの紙幣を顧客に引き渡す。言うまでも無く、千円紙幣3枚は渉外員の手元に残すことになる。
【0044】
S7:紙幣取込モードになった通帳伝票記帳機2は、紙幣(千円)の投入を待つ。渉外員が千円紙幣1枚を挿入排出口202から挿入すると、これを検知して搬送路201内に取り込む。
イメージ読取部12ではここで紙幣(千円)のイメージ画像が読み取られ、紙幣認識部19で真偽と金種判定が行われる。
正券かつ金種判定された紙幣(千円)は現金保管部15に格納される。なお、偽券と判定された場合は挿入排出口202に戻して、その旨を表示部22に表示する。
S8:このようにして、通帳伝票記帳機2側が過払出しと認識している金種・紙幣枚数が現金保管部15に戻される。
【0045】
S9:コントローラ部10は過払出し分の紙幣を取り込む毎に、結果を表示部22に表示する。図6(c)に示す表示例は、千円紙幣を2枚取り込み、残1枚の取込待ちを意味するものである。
S10:過払出し分の紙幣(千円券3枚)が現金保管部15に収納されると、入出金情報管理部16は、収納されている紙幣の有高と積層順位情報を更新する。この時点では現金保管部15において、最上位から3枚は少なくとも千円紙幣となっていることになる。
【0046】
このように、金種を混在して収納保管する場合でも、顧客に支払うべき現金以外は渉外員が通帳伝票記帳機から現金保管部に返却操作を行うことで、機器の大型化や重量増とならずに軽量化した通帳伝票記帳機を提供できる。
【0047】
次に、印鑑照会について説明する。
先に述べたように、伝票からイメージ読取部が読み取ったイメージ画像としての印影と、印鑑情報データベースに登録されている登録印影とが不一致の場合である。この事象は顧客が誤った印鑑を使用して押印したものと判断することになる。なお、近時、通帳には届出印が押印されていないものが普及している。
まず、渉外員は、新たに伝票を起票してもらうことが望ましいが、顧客にとっては煩わしい。そこで、本実施の形態では登録されている印影と同一の印影のみを追加押印することで、出金取引を許容する。
【0048】
図7は可搬型取引装置の動作フローチャートであり、図8は表示部に表示される画面を示す説明図である。
S11:伝票9に押印した印影が、印鑑情報データベース26に登録されている印影と異なることが表示部22に表示されると、渉外員は顧客に「印鑑」が異なる旨を告げる。ここで、顧客が他の印鑑を準備できれば、その印鑑を伝票9に押すことになる。この際には、先の印影の近傍に重ならない位置に押すことになる。
顧客がどの印鑑を使用したらよいか把握できない場合が、本動作フローチャートの中心的な流れである。
S12:渉外員は入力部23から印鑑照会を行うべく、所定のキーを押下すると、表示部22に口座番号と氏名情報を表示するとともに、暗証番号を入力するよう誘導表示が行われる。
【0049】
S13:渉外員は情報端末装置3を顧客が操作できるように向きなどを変えるとともに、暗証番号の入力を求める。ここで、顧客が予め登録されている暗証番号を入力することになる。
S14:暗証番号が入力部23から入力されると、通信制御部24は集中制御装置6に暗証番号情報を送信する。なお、通信回線が切断している場合には、顧客口座情報などと共に送信する。
顧客情報データベース25は、受信した暗証番号が顧客口座情報に登録されている暗証情報を一致するか否かを判定する。
S15:一致する場合には、集中制御装置6は情報端末装置3に、「印影表示可」を意味する信号を返信する。
【0050】
S16:通信制御部24が「印影表示可」電文を受信すると、情報処理部20はデータ保存部21に格納している登録印鑑の印影を表示部22に表示させる。この表示が図8に示すようなものである。ここで、確認ボタン28aが押下されれば、通帳伝票記帳機2は伝票9の再挿入待ちとなる。
S17:ステップS13において、暗証番号を忘れてしまい入力できない場合やステップS15における暗証番号が不一致となった場合には印影表示不可を表示部22に表示する。渉外員は口頭で顧客にその旨を告げることになる。
【0051】
こうして登録印影を把握した顧客が、その印影を追加押印した伝票9を渉外員に渡す。渉外員は元の印影には無効線(例えば、斜線や×印)を重ね書きして通帳伝票記帳機2に挿入する。イメージ読取部12は2個の印影イメージ画像を印鑑認識部18に送信する。印鑑認識部18では、無効線の付加された印影を無視(抹消と判定)し、他の印影を解析することになる。
以後の印影照合は前記した通りである。
【0052】
よって、顧客にとっては誤った印鑑を使用して伝票を起票しても、登録印鑑を並列押印することで取引が許容され、万一、複数保有する印鑑の中で、どの印鑑を届出印としたかを忘れても、暗証番号により容易に知ることができ利便性がよい。
【0053】
なお、本実施の形態においては本人確認手段として印鑑の印影を利用しているが、本人確認手段として暗証番号やサイン等でも良い。この場合、印影と同様に予め集中制御装置に暗証番号やサイン等を記憶しておき、取引装置が顧客から暗証番号又はサインを取得して集中制御装置に記憶されている情報との照合を行い、本人確認を行う。
【0054】
以上本発明の実施の形態においては、印鑑認識部が伝票から読み取った印影と、印鑑情報データベースの取引口座に記憶されている登録印影とが一致し、且つ、文字認識部が伝票から読み取った出金金額以上の残高が顧客情報データベースの取引口座にある場合、取引装置は、少なくとも今回の取引に基づく情報を通帳伝票記帳機により通帳に印字し、該通帳の磁気ストライプに対して今回の取引に基づく情報の更新を行うと共に、現金保管部から出金金額分の現金を繰り出して装置外へと排出して出金処理を行う。よって、渉外員が顧客の元に出向き出金取引を行う場合、出金取引のための伝票を顧客から受け取ると、そのまま顧客の元で現金の受け渡し、及び通帳への記帳を行うことができる。その結果、迅速な出金取引処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態の取引システムの構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態の可搬型取引装置の構成を示す外観図である。
【図3】実施の形態の可搬型通帳伝票記帳機の機構配置を示す概念図である。
【図4】実施の形態の表示部に表示された画面を示す説明図である。
【図5】実施の形態の可搬型取引装置の動作フローチャートである。
【図6】実施の形態の表示部に表示される画面を示す説明図である。
【図7】実施の形態の可搬型取引装置の動作フローチャートである。
【図8】実施の形態の表示部に表示される画面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 取引システム
2 可搬型通帳伝票記帳機(通帳伝票記帳機)
3 可搬型情報端末装置(情報端末装置)
6 集中制御装置(上位装置)
8 通帳
9 取引伝票(伝票)
10 コントローラ部
12 イメージ読取部
14 通帳処理部(プリンタ部)
15 現金保管部
17 伝票情報認識部(文字認識部)
16 入出金情報管理部
18 本人確認情報取得部(印鑑認識部)
19 紙幣認識部
20 情報処理部
25 顧客情報データベース
26 本人確認情報データベース(印鑑情報データベース)
30 可搬型取引装置(取引装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引伝票に記入された顧客口座情報と取引情報を読み取る伝票情報認識部と、前記取引伝票から本人確認情報を取得する本人確認情報取得部と、取引に供する現金を保管する現金保管部と、通帳への情報印字が可能な通帳処理部とを備えた可搬型取引装置と、
顧客口座情報別に少なくとも暗証情報と預貯金残高情報を記憶する顧客情報データベースと、顧客口座情報別に本人確認情報を記憶した本人確認情報データベースとを備えた上位装置とを配し、
前記可搬型取引装置と前記上位装置とを通信回線で接続し、
今回の取引が出金取引である場合に前記可搬型取引装置は、
前記本人確認情報取得部が取得した本人確認情報と、前記本人確認情報データベースの前記顧客口座情報に記憶されている本人確認情報とが一致し、且つ、前記伝票情報認識部が取引伝票から読み取った出金金額以上の預貯金残高が前記顧客情報データベースにある場合、
少なくとも今回の出金取引に基づく取引情報を前記通帳処理部により通帳に印字すると共に、前記現金保管部からの出金処理を行うことを特徴とする取引システム。
【請求項2】
前記現金保管部は、
複数の金種の貨幣を混在収納する単一の現金保管部であり、指定される金種による現金が出金額と一致するまで繰り出し、その後、過払い分が存在するときは前記現金保管部内に返却させる請求項1記載の取引システム。
【請求項3】
前記可搬型取引装置は、
今回の取引が成立したことを確認するための認証印字を可能とした請求項1記載の取引システム。
【請求項4】
前記本人確認情報は印鑑の印影であり、前記本人確認情報データベースには顧客口座情報別に印鑑登録した印影を記憶しておき、
前記本人確認情報取得部は取引伝票に押印された印影を読み取り、
本人確認は、前記取引伝票に押印された印影と、前記本人確認情報データベースに記憶されている印鑑登録した印影とが一致するか否かにより行われる請求項1記載の取引システム。
【請求項5】
前記可搬型取引装置には情報入力部と表示部とを設け、
伝票に押印された印影と、前記本人確認情報データベースに記憶されている印鑑登録の印影とが一致しないとき、
前記情報入力部から暗証情報を入力させ、前記顧客情報データベース内の暗証情報と一致するとき、前記本人確認情報データベースに記憶されている印鑑登録の印影を前記表示部に表示できる請求項4記載の取引システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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