説明

取引処理装置及び取引処理方法

【課題】自動取引時に第三者により不正に有価媒体が取得されてしまうのを防止しつつ、利用者にとって使い勝手の良い取引ができる取引処理装置及び取引処理方法を提供する。
【解決手段】利用者を検知するCCDカメラ等の画像取得機構部18と、払い出される紙幣を保留する紙幣入出金口21と、この紙幣入出金口21から紙幣を抜き取り可能に開放するシャッタ6aと、利用者が本人であることを確認する静脈認証機構部10とを備え、前記シャッタ6aを開ける前に、前記画像取得機構部18が取引途中で利用者を検知できなくなった場合、または画像取得機構部18が利用者の入れ替わりを検知した場合、前記静脈認証機構部10により本人であることを再確認しなれければ、前記シャッタ6aを閉じたままとするATM1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばコンビニエンスストアなどに設置されるATM(現金自動預払機)などで扱われる紙幣、硬貨、証券、通帳、カード等の有価媒体を処理する取引処理装置及び取引処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動取引装置の急速な普及に伴い、銀行等の金融機関だけでなくコンビニエンスストアなどではATM、出金専用機等の取引処理装置が広く使用されている。以下、自動取引の一例として紙幣の出金取引を例にとって説明すると、出金取引時に取引利用される媒体の確認や暗証番号の確認など本人の確認が正常に行われると、その後、利用者により出金取引額を入力操作させて出金取引を開始させている。
【0003】
この際、取引処理装置の内部では出金要請された取引額の紙幣を紙幣入出金口へと搬送して出金準備が開始される。そして、紙幣の出金準備が完了すると、紙幣入出金口のシャッタを開けて利用者による紙幣の取り出しを許可する。これにより、利用者は取引要請した出金額の紙幣を取得している。
【0004】
しかしながら、コンビニエンスストアのような不特定多数の利用者が多く集まる場所では、利用者の不注意により取引途中で利用者が取引処理装置の前から一時的に離れた場合、また取引している利用者の注意をそらすめくらまし行為等が第三者により行われた場合に、紙幣入出金口に出金された紙幣が第三者によって不正に取得されてしまうおそれがあった。
【0005】
この種の不正行為を防ぐ手段として、紙幣入出金口のシャッタを専用に開閉操作するシャッタ開閉スイッチを設け、このシャッタ開閉スイッチを利用者が押下したとき、シャッタを開けて紙幣入出金口に出金待機されている紙幣を利用者が取り出せるようにした自動取引装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この場合は、紙幣入出金口のシャッタが自動的に開放されないため、第三者による不正行為が低減すると考えられる。
【0006】
しかし、このような利用者専用のシャッタ開閉スイッチを備えた場合は、不正行為のおそれが全くない場合でも必ずシャッタ開閉スイッチのスイッチ操作を要することになり、利用者の取引操作が煩雑で利用者の取引時間が長くなる。しかも、取引処理装置の稼動率が低下して他の利用者の待ち時間が長くなる原因となる。また、シャッタ開閉スイッチを備えることで取引処理装置のコストが高くなる問題を有していた。
【0007】
このようなことから紙幣入出金口の自動開放を阻止もしくは中止できるようにし、自動開放が阻止もしくは中止されたシャッタを開放する条件として再度の個人認証の入力が必要になるようにして第三者に対する不正を防止する防止対策を備えた自動取引装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。これによると、本人の再確認操作が必要になるため第三者によって出金された紙幣が不正に取得されてしまうような不測の事故を防ぐことができる。
【0008】
しかしながら、取引処理装置で本人確認が正常に行われ、出金取引が選択された取引の途中で利用者がその場を離れた際は、紙幣入出金口のシャッタが常に自動で開放される。このため、出金された紙幣を第三者によって不正に取得されてしまう問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−65810号公報
【特許文献2】特開2008−59357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこでこの発明は、自動取引時に放出された有価媒体が第三者により不正に取得されないように防止しつつ、利用者にとって使い勝手の良い取引操作ができる取引処理装置及び取引処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、利用者を検知する検知手段と、払い出される有価媒体を保留する払出用保留部と、前記払出用保留部から有価媒体を抜き取り可能に放出する放出手段と、利用者が本人であることを確認する本人確認手段とを備え、前記放出手段で放出する前に、前記検知手段が取引途中で利用者を検知できなくなった場合、または前記検知手段が利用者の入れ替わりを検知した場合、前記本人確認手段により本人であることを再確認しなれければ、前記放出手段が有価媒体を放出しない構成とした取引処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、自動取引時に放出された有価媒体が第三者により不正に取得されないように防止しつつ、利用者にとって使い勝手の良い取引操作ができる取引処理装置及び取引処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ATMとホストコンピュータとの接続構成図。
【図2】ATM内部の紙幣処理構造を示す内部構成図。
【図3】ATMとホストコンピュータとの構成図。
【図4】ICカードに備えられているICチップのデータ構成図。
【図5】ATMの出金取引処理動作を示すフローチャート。
【図6】ATMのカード挿入画面とデータ読出中画面と認証誘導画面とを表わした表示図。
【図7】ATMの認証中画面と出金額入力画面と待機画面とを表わした表示図。
【図8】ATMの認証再誘導画面と認証中画面とカード返却画面とを表わした表示図。
【図9】ATMの紙幣放出案内画面と取引不可画面とを表わした表示図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は取引処理装置の一例として銀行などの金融機関システムに採用される現金自動預払機(以下ATMと称す)1を示し、このATM1は通信網20を介してホストコンピュータ11に接続されている。
【0016】
図2は紙幣を入出金処理するATM1の内部構造を示し、21は顧客が紙幣の預け入れや払い出しを行う取扱口となる紙幣入出金口、22は紙幣の金種、真偽などを判別する識別部、23は計数した紙幣を一時的に収納する一時保留部である。
【0017】
前記紙幣入出金口21は、ATM正面の接客パネルの一部に開閉されるシャッタ6aを隔てた内部に、入金される紙幣を一時保留する受入用保留部として、または出金される紙幣を一時保留する払出用保留部として内部構成されている。
【0018】
また、一時保留部23はATM1の奥部に配置して構成されており、ここで入金または出金される紙幣を取引確定するまで一時保留する機能を有している。
【0019】
24a〜24dは紙幣を金種別に収納する収納庫、25は識別部によってリジェクトされた紙幣を収納する回収庫、26は顧客が取り忘れた紙幣を収納するリジェクト庫、27は収納先に紙幣を搬送する搬送路、28は紙幣の通過を検知する通過センサ、29は紙幣の搬送ルートを切り替えるゲートである。前記収納庫24a〜24dは、多数枚の紙幣を上下方向に積層して収納する縦長の空間を有し、搬送路27との接続部位には紙幣を1枚ずつ出し入れする独立した出入機構30を備えている。
【0020】
このような構造を有するATM1は、上部側に紙幣を搬送処理する紙幣搬送群を設け、下部側に紙幣を収納する紙幣収納群を設けて、該ATM1の上下を搬送系と収納系とに分離して内部構造の簡素化を図っている。
【0021】
図3はATM1とホストコンピュータ11の概要を示す構成図を表わしている。このATM1とホストコンピュータ11とは、ATM1の回線接続部8とホストコンピュータ11の回線接続部12間で通信可能に接続している。
【0022】
次に、図1〜図3を参照してATM1が処理する制御機能及び構造について説明する。
ATM1は利用者の取引操作に基づいて、現金の入金や出金等の利用者が要求する種々の取引を自動的に実行する装置であり、操作部(入力兼表示部)3、カード/明細票機構部4、通帳機構部5、紙幣入出金機構部6、硬貨入出金機構部7、回線接続部8、音声案内ガイダンス部9、静脈認証機構部10、画像取得機構部18、タイマ機構部19、そしてこれら各部を制御する制御部2とで構成されている。
【0023】
以下に各部位の説明を行う。
操作部3は、利用者に取引手順等を表示案内し、かつ利用者の入力を受け付ける部位であり、画面表示、キー入力検知機能を有している。主に取引操作の誘導画面を表示したり、暗証番号など利用者の入力操作や指で押されたキー入力を受け付ける操作部分である。なお、この操作部3はタッチパネル等により構成された入力兼表示部であり、取引に伴う様々な情報を表示し、この表示内容に含まれる各項目へのタッチ入力も同時に検知する。
【0024】
カード/明細票機構部4は、利用者が取引利用するカードの挿入/排出動作、カードの磁気ストライプまたはICチップへの読取/書込処理、カードエンボス部分のイメージ読取処理機能などを有している。また、このカード/明細票機構部4には取引した内容を明細票に印字し、印字した明細票をATM1から排出する処理機能も有している。
【0025】
通帳機構部5は、通帳の挿入/排出動作、磁気ストライプの読取/書込動作、通帳への印字処理機能などを有している。
【0026】
紙幣入出金機構部6は、紙幣の入金/出金機能、紙幣の識別や搬送/収納機能を有している。この紙幣入出金機構部6は、ATM1に格納されている入出金用の収納庫24a〜24dと、利用者が紙幣を出し入れするATM正面の紙幣入出金口21との間を接続して紙幣を入出金可能に搬送処理する機能を有している。
【0027】
通常、紙幣入出金口21の上面開口部は開閉式のシャッタ6aにより閉じられている。このシャッタ6aを開けることにより取引指定された金額の出し入れが許可される。ここでは、放出手段として開閉式のシャッタ6aで紙幣入出金口21の上面を開閉して出金取引時の紙幣の放出を規制/許可する構成としたが、シャッタ6aを用いず、プレゼンタータイプの一時保留部に紙幣を保留しておいて、出金時にスリット状の開口部から紙幣を抜き取り可能に押し出して取り出せるように構成してもよい。また、出金される紙幣を利用者の手の届かないATM1の内部に一時的に保留することでシャッタ6aの代替として使用することも可能である。
【0028】
硬貨入出金機構部7は、硬貨の入金/出金機能、硬貨の識別や搬送/収納機能を有している。この硬貨入出金機構部7は、ATM1に格納されている入出金用の収納庫(図面省略)と、利用者が硬貨を出し入れするATM正面の硬貨入出金口(図面省略)との間を接続して硬貨を入出金可能に搬送処理する機能を有している。
【0029】
通常、硬貨入出金口の上面開口部は開閉式のシャッタ7aにより閉じられている。このシャッタ7aを開けることにより取引指定された金額の出し入れが許可される。ここでは、放出手段として開閉式のシャッタ7aで硬貨入出金口の上面を開閉して出金取引時の硬貨の放出を規制/許可する構成としている。また、出金される硬貨を利用者の手の届かないATM1の内部に一時的に保留することでシャッタ7aの代替として使用することも可能である。
【0030】
静脈認証機構部10は、利用者の静脈読取機能と、利用者から読み取った静脈データとICカードに登録されている静脈データとを照合する認証機能とを有している。
【0031】
この静脈認証機構部10は特定の指先の静脈データを測定して生体認証する本人確認手段であり、この本人確認手段として指先を置かせて測定する部分がATM1の接客面に設けられている(図1参照)。これにより、利用者の測定した部位と対応する指先の静脈情報が登録されているICカードを使用して利用者が本人か否かを確認する。ここでは、利用者の本人確認手段として指先の静脈を測定して生体認証を行う構成としたが、別の部位の静脈データの生体認証でもよく、また顔、指紋、声紋、虹彩等の生体認証で構成してもよい。さらに、本人確認手段の他の例として暗証番号入力による本人確認も可能である。
【0032】
画像取得機構部18は、取引利用する利用者の顔を撮影する撮影手段として例えばCCDカメラを使用し、ATM1の正面で対応する利用者本人の顔の画像を継続的に取得し続ける機能を有している。この画像取得機構部18はCCDカメラを使用し、このCCDカメラの画像により利用者がATM1の前に居ること、また利用者の入れ替わりがないことを検知する。
【0033】
タイマ機構部19は、出金取引時に利用者が静脈認証等により本人であることが確認された場合、タイマを起動し、出金準備ができるまでを計時する出金紙幣の処理状態を計時する機能を有している。
【0034】
制御部2は、CPUやメモリ等のハード構成と、プログラムやデータ等のソフト構成とからなり、各種の処理、取引を制御する。以下、制御部2による制御機能について説明する。
この制御部2は、紙幣の出金取引時に取引が確定し出金準備が完了すると、シャッタ6aを開ける。ところが、シャッタ6aを開ける前、つまり出金準備が完了するまでに画像取得機構部18が取引中の利用者を検知できなくなった場合、または利用者の入れ替わりを検知した場合、静脈認証機構部10により本人であることを再確認して本人か否かを判定する再確認機能を有している。そして、再確認しなれければ、紙幣入出金口21のシャッタ6aを開けないように制御する制御機能を有している。
【0035】
このように制御部2はATM1で利用者が出金取引を選択した後に、その利用者がATM1の正面より一時的に離れた場合、第三者による不正な取り出しを防止するため紙幣入出金口21のシャッタ6aを自動的に開放せず、出金紙幣に対して取り出し規制をかけるようにしている。
【0036】
具体的には、シャッタ6aを開ける前に画像取得機構部(CCDカメラ)18が取引途中で利用者を検知できなくなった場合、または画像取得機構部18が利用者の入れ替わりを検知した場合、利用者を確認する必要があるため利用者の指データを取得する静脈認証機構部10により、本人であることを再確認する。
【0037】
このとき、再確認できなれければ、シャッタ6aを閉じたままとし、紙幣を放出しない。このため、紙幣入出金口21に放出された出金紙幣はシャッタ6aにより閉じられたままであるため、第三者により取り出されるおそれがなく、セキュリティ性の高いATM1の出金取引を確保できる。
【0038】
さらに、制御部2は静脈認証機構部10で本人を確認した際に、本人であることを確認しなれければ、シャッタ6aを閉じるだけでなく、紙幣入出金口21に出金待機させている紙幣をATM1の奥部に備えられている一時保留部23に移動させる紙幣保護機能を有している。
【0039】
これにより、紙幣は一旦、一時保留部23に全て回収されるため、第三者によりシャッタ6aが破壊されて紙幣が抜き取られるといった不正行為が完全に解消される。この結果、紙幣の受け渡し管理が適切で高セキュリティの出金取引を確保できる。
【0040】
一方、ATM1と接続するホストコンピュータ11は、ATM1の回線制御部8と接続し、ATM1とのデータの送信または受信を行う回線接続部12と、利用者の口座情報などを記憶する口座情報ファイル16及び各種ファイル17を格納しているファイル部14と、そのファイル部14を制御する口座情報ファイル制御部13と、これらを制御するホストコンピュータ制御部15とを有している。
【0041】
そして、ホストコンピュータ制御部15によりATM1で取引利用される全ての取引に対処できるようにデータ管理及びデータ制御する構成を有している。
【0042】
図4はICカードに備えられているICチップ(400)のデータ構成例である。全銀行ICアプリケーションプログラム(401)とはICカードに記憶されている例えば金融機関の一例として取引銀行別に定められたキャッシュカード情報を管理しているプログラムである。静脈認証プログラム(402)とはICチップのデータで静脈認証をするプログラムである。登録生体データ(403)とは予めICカードに登録されている認証用の指が何指であるかを示す指情報である。前処理データ(404)とは静脈認証機構部10に指を置いたときに、正しく指が置かれているか否かを判断するための情報である。静脈データ(405)とはICチップに予め登録されている個人を特定するための認証情報である。
【0043】
このように利用者のICカードには利用者本人を特定する生体情報としての静脈データが予め登録されており、静脈認証機構部10で読み取った利用者の静脈データとを照合することにより本人か否かを識別できるようにしている。
【0044】
次に、利用者がATM1で出金取引する場合の出金取引処理動作を図5のフローチャート及び図6〜図9の表示画面を参照して説明する。
ATM1の操作部3に設けられている入力兼表示部の誘導画面では、出金取引選択後に、利用者が出金取引に利用するカードの挿入を促すカード挿入画面(図6a)が表示される。このとき、カード明細票/機構部4はカードを受け付けるカード挿入待機状態を維持する(ステップS500)。
【0045】
利用者が取引利用するカードをカード挿入口に挿入すると、カード明細票/機構部4では、まず挿入されたカードの磁気ストライプの情報を読み取る。このとき、制御部2は操作部3にデータ読出中画面(図6b)を表示させるとともに、挿入されたカードに記録されている生体情報を読み出す(ステップS501)。さらに、制御部2は生体認証用に例えば親指を置く旨の認証誘導画面(図6c)を操作部3に表示する。
【0046】
利用者の生体情報を静脈認証機構部10が取得すると、制御部2は操作部3に利用者の生体情報が登録済みの生体情報と照合確認していることを表わす認証中画面(図7a)を表示する。
【0047】
この際、静脈認証機構部10が、かざされた指に関する生体情報を読取り、ICカードの登録生体データ403からは、かざされた指の種類の照合を、ICカードの前処理データ404からは正しく指がかざされているかの照合を、ICカードの静脈データ405からは個人データの一致に関する照合をそれぞれ行う。
【0048】
さらには、かざされた指の情報がカードに記録された登録済みの情報と一致するか否かの照合を行い、それらの照合結果から本人か否かの認証を行う(ステップS502)。なお、照合結果が不一致の場合はカードを返却し、処理を終了する。
【0049】
生体認証して本人を確認すると、制御部2は取引を許可する。これに基づいて画像取得機構部18はATM正面で取引操作する利用者本人の顔の画像をCCDカメラにより継続的に撮影し、その撮影した画像データをファイルに取得する(ステップS503)。このとき取得する画像データは、例えば動画データとする。また、利用者の不在や入れ替わりを検知した場合、不在情報や入れ替わり情報を制御部2のメモリ内に記憶しておく。またこのとき、制御部2はタイマを起動して計時開始する(ステップS504)。
【0050】
また、制御部2は操作部3に出金取引額の入力画面(図7b)を表示させる(ステップS505)。この表示案内にしたがって利用者は出金取引する金額を入力した後、出金額の確定を行うと、制御部2はホストコンピュータ11に出金可否の問い合わせを行う。
【0051】
ホストコンピュータ11が出金取引を了承すると、その出金額などの取引内容を登録して出金取引許可の指示を出力する。この場合、制御部2は操作部3に「しばらくお待ちください」などの待機画面(図7c)を表示させ、収納庫24a〜24dの何れかから対応する金種の紙幣を一時保留部23に一旦搬送して一時保留させる。その後、利用者が要請する出金額の紙幣を一時保留部23から紙幣入出金口21へと搬送する(ステップS506)。このとき、シャッタ6aは閉状態のままであり、紙幣入出金口21の紙幣を取り出せないようにしている。
【0052】
なお、この紙幣出金時の搬送に際して、収納庫24a〜24dから紙幣を一時保留部23に搬送する場合、さらに一時保留部23から紙幣を紙幣入出金口21へと搬送する場合に利用者の不在や入れ替わりを検知しても、内部での紙幣の搬送を途中で止めないようにしている。これにより、搬送動作が中断することによる紙詰まりが生じないようにしている。
【0053】
また、ホストコンピュータ11が出金取引不可と判定して出金取引不可の指示を出力した場合、制御部2はカードを返却し、出金取引処理を終了する。
【0054】
一方、出金取引許可されると、制御部2は操作部3にカード返却などの待機画面(図8c)を表示し、制御部2はカード/明細票機構部4より利用者のカードを返却する(ステップS507)。
【0055】
この返却されたカードが利用者に抜き取られると、制御部2はタイマ機構部19で起動していたタイマを停止させ、タイマ起動からタイマ停止したときまでの経過時間を算出する(ステップS508)。また、引き続き画像取得機構部(CCDカメラ)18が継続的に取得していた利用者本人の画像の取得処理を止める(ステップS509)。
【0056】
このようにCCDカメラで利用者の顔画像データを取得している間(ステップS503〜ステップS509)に利用者の不在や利用者の入れ替わりを検知すると、制御部2によりその検知したデータが記憶されている。
【0057】
制御部2は返却されたカードが規定時間を超えても抜き取られない場合は(ステップS510:Yes)、操作部3に認証再誘導画面(図8a)を表示させる。そして、利用者の親指の静脈データ(生体情報)を静脈認証機構部10により取得させ、本人の再確認を行う(ステップS512)。その間、制御部2は操作部3に利用者の生体情報を照合確認していることを表わす認証中画面(図8b)を表示する。
【0058】
また、タイムオーバせずに(ステップS510:No)、利用者がATM1の前から離れたり、画像取得機構部18が最後に取得した利用者の顔画像が、最初の本人確認時の画像(ステップS502)と比較して異なっている場合、利用者の入れ替わりが発生したとして(ステップS511:Yes)、制御部2は操作部3に認証再誘導画面(図8a)を表示させる。
【0059】
そして、前記ステップS512と同様に本人の再確認を実施する(ステップS512)。そして、本人が確認されたとき、取引成立して(ステップS513:Yes)、制御部2は一時保留部23に出金取引される紙幣が保留されていれば全て紙幣入出金口21に搬送する(ステップS514)。
【0060】
最後に、制御部2は紙幣入出金口21のシャッタ6aを開ける(ステップS515)とともに、操作部3に「紙幣をお取りください」などの紙幣受取画面(図9a)を表示して利用者に対する紙幣の受け取りを促し、利用者が紙幣を取り出すことで一出金取引が終了する。
【0061】
一方、前記ステップS513で本人の再確認したとき、暗証番号の誤入力操作が生じてホストコンピュータ11が本人でないと判定した場合(ステップS513:No)、さらには暗証番号の誤入力操作が例えば3回以上と規定回数を超えた場合は(ステップS516:Yes)、制御部2が操作部3に取扱不可画面(図9b)を表示させ、紙幣入出金口21に待機されている紙幣を内部の回収庫25に全て回収し(ステップS517)、ホストコンピュータ11に情報を登録する。
【0062】
さらに、暗証番号の誤入力操作が規定回数を超えていなければ(ステップS516:No)、制御部2は紙幣入出金口21に待機されている紙幣を一時保留部23へ移送させた後(ステップS518)、ステップS512以降の本人再確認処理を繰り返し実行する(ステップS512〜ステップS513)。
【0063】
そして、本人を再確認し、利用者に再度の暗証番号の入力操作を要求して正しく入力された場合は、取引が成立して一時保留部23から紙幣入出金口21に紙幣を搬送し、搬送完了後、シャッタ6aを開けて利用者に紙幣を受け取らせる(ステップS514〜ステップS515)。
【0064】
このように、一旦一時保留部23へ搬送することにより、シャッタ6aが第三者により破壊されて紙幣が抜き取られるといった不正行為を完全に防止できる。このため、セキュリティの高い出金取引ができる。
【0065】
上述のように、ATMで利用者が出金取引を選択した後に、利用者がATMの接客位置から一時的に離れた場合、あるいは利用者の入れ替わりを検知した場合は、紙幣入出金口を閉じているシャッタを自動的に開放させず、開放するには利用者本人の確認が必要となり、利用者本人の最適なタイミングでシャッタを開操作することができる。このため、第三者によって紙幣が不正に取得されなくなる。
【0066】
換言すれば、取引途中で利用者が接客面より離れるという不正行為を誘起しやすい取引不安定な状態が発生した時は、その取引不安定な状態に応じて対処することができる信頼性の高いプログラムに自動的に変更することができる。
【0067】
さらに、シャッタ開閉スイッチやそのスイッチ操作を要しない構造であっても高セキュリティ性を維持できるため、部品点数を削減してATMの低コスト化を図ることができる。また、シャッタを開ける際は、スイッチを操作するような手動操作を省略して自動化できるため使い勝手がよく、取引操作が円滑化し、取引時間が長くなることもない。
【0068】
また、ステップS503〜509の処理中に不在や入れ替わりを並列処理で判定してメモリに記憶しておくため、ステップS511では短時間で判定を行える。これにより、待ち時間の発生を防止できる。
【0069】
また、ステップS503〜509で不在や入れ替わりを検知しても、紙幣の搬送を止めることなく継続するため、紙詰まりの発生を防止でき、良好な運用を行える。
【0070】
この発明は上述の実施例に記載された構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術思想に基づいて応用することができる。
例えば、上述の実施例では有価媒体の一例に紙幣を例にとって説明したが、これに限らず、硬貨、カード、通帳、証券、金券等の有価媒体についても、上述の紙幣と同様に制御することにより、第三者による有価媒体の不正な抜き取りを未然に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
有価媒体を扱うATM、両替機、券売機などの自動取引する装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…ATM
2…制御部
3…操作部(入力兼表示部)
6…紙幣入出金機構部
6a…シャッタ
10…静脈認証機構部
18…画像取得機構部
21…紙幣入出金口
23…一時保留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を検知する検知手段と、
払い出される有価媒体を保留する払出用保留部と、
前記払出用保留部から有価媒体を抜き取り可能に放出する放出手段と、
利用者が本人であることを確認する本人確認手段とを備え、
前記放出手段で放出する前に、前記検知手段が取引途中で利用者を検知できなくなった場合、または前記検知手段が利用者の入れ替わりを検知した場合、前記本人確認手段により本人であることを再確認しなれければ、前記放出手段が有価媒体を放出しない構成とした
取引処理装置。
【請求項2】
前記本人確認手段を、
利用者が本人であることを少なくとも生体認証を実施して確認する生体認証手段で構成した
請求項1に記載の取引処理装置。
【請求項3】
前記検知手段を、
接客位置の利用者を検知する撮影手段で構成した
請求項1または2に記載の取引処理装置。
【請求項4】
前記放出手段を、
前記払出用保留部を開閉するシャッタで構成した
請求項1、2または3に記載の取引処理装置。
【請求項5】
前記本人確認手段により本人であることを確認しなれければ、前記払出用保留部に保留している有価媒体を一時保留部に移動させる構成とした
請求項1〜4の何れか1項に記載の取引処理装置。
【請求項6】
利用者を検知する検知手段と、
払い出される有価媒体を保留する払出用保留部と、
前記払出用保留部から有価媒体を抜き取り可能に放出する放出手段と、
利用者が本人であることを確認する本人確認手段とを備え、
前記放出手段で放出する前に、前記検知手段が取引途中で利用者を検知できなくなった場合、または前記検知手段が利用者の入れ替わりを検知した場合、前記本人確認手段により本人であることを再確認しなれければ、前記放出手段が有価媒体を放出しない
取引処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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