説明

取引支援システム及びそのプログラム

【課題】温室効果ガスの排出権付きの商品若しくはサービスを実現する。
【解決手段】排出権と交換可能な兌換ポイントを保有者の提供者ID、需要者IDに関連付けて記憶する付与ポイント記憶部103と、商品若しくはサービスの取引がされた場合に付与する兌換ポイントの基準量を商品IDに関連付けて記憶する基準ポイント記憶部104と、取引された商品若しくはサービスの商品IDと提供者ID及び需要者IDとを取得する取引履歴取得部105と、取引履歴取得部105で取得した商品IDに関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部104から読み出してこれを基に提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部105で取得した提供者IDに関連付けられる兌換ポイントに加増する提供者ポイント書込部106と、兌換ポイントに加増する需要者ポイント書込部107とを具備するシステムを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室効果ガスの排出権付きの商品若しくはサービスを実現し、個人や中小企業等が京都メカニズムに具体的に関わる機会を与えるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動枠組み条約第3回締約国会合(COP3)において採択された京都議定書により、先進諸国は温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パープルオロカーボン、六フッ化硫黄等)の排出量の削減が義務づけられた。そして、京都議定書には、各国が排出量削減の数値目標を達成するための補助的手段として、市場原理を活用した京都メカニズムの枠組みが盛り込まれている。
【0003】
京都メカニズムでは、温室効果ガスの排出枠ないし削減量を、国際間または企業間で流通させる排出権(クレジット)として取り扱う。排出権の単位は、1クレジット=1t(二酸化炭素換算)である。一つ一つのクレジットには、それぞれ一意の識別番号(シリアルナンバー)が付与される。クレジットの種類には、初期割当分(AAU)、国内吸収源活動による吸収量(RMU)、共同実施事業による排出削減単位(ERU)、及びクリーン開発メカニズムによる認証された排出削減量(CER)がある。
【0004】
クレジットは電子的に管理することを前提としており、各国は国別登録簿システムの整備を進めている。国別登録簿システムは、国際間のクレジットの移転情報とともに、自国内のクレジットの移転情報をも記録する。各企業は、自国の登録簿システム上に自己の口座を開設し、その口座で自己の保有するクレジットを管理する。他者との間でクレジットの取引等が発生、成立した暁には、登録簿システム上の自己口座と他者口座との間でクレジットの移動を行う(以上、下記非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】“国別登録簿システム”、[online]、[平成20年4月7日検索]、インターネット<URL HYPERLINK "http://www.registry.go.jp/" http://www.registry.go.jp/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地球温暖化対策の推進に関する法律にいう特定排出者(温室効果ガスを相当程度多く排出する者)は、既に自らの温室効果ガスの排出量を算定して国に報告する活動を行っており、程なく京都メカニズムに組み込まれることになるだろう。一方、殆どの個人や中小企業等にとっては京都メカニズムは未だなじみが薄いのが現状であり、登録簿システムに自己口座を開設してクレジットをやりとりするインセンティブも低い。
【0006】
本発明は、個人や中小企業等が実際に排出権に触れる機会を創出することで温室効果ガスの排出量削減問題への関心を高め、以て京都メカニズムへの参加を促進することを目的としており、その初段として排出権付きの商品若しくはサービスを実現できるシステムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、商品若しくはサービスの提供(商品の有償譲渡、無償譲渡、有償貸与若しくは無償貸与、またはサービスの有償提供若しくは無償提供)者と、提供者が提供する商品若しくはサービスの需要者と、提供者、需要者のそれぞれに温室効果ガスの排出権を分与する管理者とが関与するシステムであって、各提供者及び各需要者に付与した、温室効果ガスの排出権の兌換ポイント(排出権の一部のないし全部に対応する、または排出権の一部ないし全部と交換することが可能なポイント)を、各提供者及び各需要者の識別情報に関連付けて記憶する付与ポイント記憶部と、提供者と需要者との間で商品若しくはサービスが取引された場合に当該提供者及び当該需要者に付与するべき兌換ポイントの基準量を、各商品若しくはサービスの識別情報に関連付けて記憶する基準ポイント記憶部と、提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの識別情報と、当該提供者の識別情報と、当該需要者の識別情報とを取得する取引履歴取得部と、取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部から読み出してこれを基に提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した提供者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む提供者ポイント書込部と、取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部から読み出してこれを基に需要者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した需要者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む需要者ポイント書込部とを具備する取引支援システムを構成した。
【0008】
本取引支援システムの管理者は、排出権の現物を調達する。即ち、登録簿システム上に自己口座を開設してクレジットを取得するか、自己口座を持つ第三者が保有しているクレジットの供与を受ける。そして、提供者と需要者との間で商品若しくはサービスが取引されたことに応じて、両者にクレジットの一部ないし全部に相当し得る兌換ポイントを付与する。各提供者及び各需要者が得た兌換ポイントは、自身の事業活動や生活の中で不可避的に発生する温室効果ガスの排出枠に充当してもよく、他者に譲渡してもよい。とりわけ、国家に寄付(国の償却口座に移転)することが考えられる。
【0009】
このようなものであれば、国別登録簿システムに自己口座を開設したり、他者口座から自己口座にクレジットを振り替えたりする煩瑣な申請手続きを強いることなしに、実際に排出権に触れる機会を創出できる。個人や中小企業等にとって敷居が低く、また彼等が本取引支援システムを利用して排出権兌換ポイント付きの商品若しくはサービスを容易に実現することが可能となる。排出権兌換ポイント付きの商品若しくはサービスは、特に環境意識の高い需要者に対する訴求力、付加価値を高める。
【0010】
上記では、各商品若しくはサービス毎に設定された基準量を基に提供者、需要者に付与する兌換ポイントを決定するとしていたが、商品若しくはサービスの取引金額または取引数量の多寡に応じて提供者、需要者に付与する兌換ポイントを決定しても構わない。この場合、各商品若しくはサービス毎の基準量を記憶する基準ポイント記憶部は必須構成要件でなくなる。
【0011】
加えて、付与ポイント記憶部に記憶している各提供者または各需要者の兌換ポイントを、提供者または需要者の閲覧に供するべく提供者側または需要者側に向けて送信するポイント情報出力部をも具備するシステムとすれば、提供者、需要者が自身の保有する兌換ポイントの量を容易に知ることができ、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温室効果ガスの排出権付きの商品若しくはサービスを実現でき、個人や中小企業等が実際に排出権に触れる機会を創出して温室効果ガスの排出量削減問題への関心を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の取引支援システムは、管理者の管理運営下に置かれるサーバコンピュータ1を主体とする。サーバコンピュータ1は、図1に示すように、インターネット、WAN、LAN等の電気通信回線3を介して、商品若しくはサービスの提供者や、商品若しくはサービスの提供を受ける需要者が使用するクライアントコンピュータ2と通信可能に接続する。このサーバコンピュータ1は、既存の電子商取引システムの如く、商品若しくはサービスを紹介しその注文を受け付けるウェブサイトをネットワーク3上に公開する役割を担う。
【0014】
サーバコンピュータ1は、例えば、図2に示すように、プロセッサ1a、メインメモリ1b、補助記憶デバイス1c、表示制御デバイス1d、ディスプレイ1e、操作入力デバイス1f、通信インタフェース1g等のハードウェア資源を備え、これらがコントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)1hにより制御されて連携動作するものである。補助記憶デバイス1cは、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、光学ディスクドライブ等である。表示制御デバイス1dは、プロセッサ1aより受けた描画指令を基に表示させるべき画像データを生成してディスプレイ1eに向けて送出するビデオチップ(グラフィクスチップ)、画像データ等を一時的に格納しておくビデオメモリ等を要素とする。操作入力デバイス1fは、手指で操作可能な押下ボタン、キーボードや、マウス、トラックパッド、タッチパネル等のポインティングデバイスである。通信インタフェース1gは、電気通信回線3を介した情報通信を行うためのデバイスであり、NIC(Network Interface Card)や無線LANトランシーバに代表されるが、これら以外にUSB、IEEE1394等のインタフェースを採用することもできる。
【0015】
通常、プロセッサ1aによって実行されるべきプログラムが補助記憶デバイス1cに格納されており、プログラムの実行の際には補助記憶デバイス1cからメインメモリ1bに読み込まれ、プロセッサ1aによって解読される。本実施形態では、既知のOSプログラムやこれに付帯する各種デバイスドライバプログラム等が予めインストールされ、他のプログラムによる上記ハードウェア資源の利用を仲介する。その上で、取引支援システムを構成するために必要となるプログラム(ウェブサーバプログラム、データベースプログラム等を含む)がインストールされており、これらプログラムに従いハードウェア資源を作動して、図3に示す商品情報記憶部101、クレジット記憶部102、付与ポイント記憶部103、基準ポイント記憶部104、取引履歴取得部105、提供者ポイント書込部106、需要者ポイント書込部107、ポイント情報出力部108としての機能を発揮する。
【0016】
商品情報記憶部101は、メインメモリ1bまたは補助記憶デバイス1cの記憶領域を利用して、提供者が提供する商品若しくはサービスに関する情報を記憶する。商品情報記憶部101は、図4に示すように、商品若しくはサービスの名称、価額、内容を紹介する文章や画像、提供者の名称等のデータを、商品ID(当該商品若しくはサービスを識別する識別情報)及び提供者ID(当該提供者を識別する識別情報)に関連づけて格納する。
【0017】
クレジット記憶部102は、メインメモリ1bまたは補助記憶デバイス1cの記憶領域を利用して、図5に示すように、管理者が調達した、または調達予定であるクレジットの識別番号を記憶する。
【0018】
付与ポイント記憶部103は、各提供者及び各需要者が保有している兌換ポイントの額を記憶する。兌換ポイントとは、温室効果ガスの排出権の一部のないし全部に対応する、または排出権の一部ないし全部と交換することが可能なポイントである。以降、兌換ポイントをCCP(Charity Carbon Point)と呼称する。CCPは、排出権のクレジットの一部に該当するもので、管理者が調達するクレジットに裏付け(保証)されている。本実施形態では、1CCP=1kg(二酸化炭素換算)=0.001クレジットに設定している。提供者及び需要者はそれぞれ、商品若しくはサービスの取引を行ったときにCCPを獲得することができる。獲得したCCPは、自身の事業活動や生活の中で不可避的に発生する温室効果ガスの排出枠に充当することができ、他者に譲渡することもできる。原則として、提供者は保有するCCPを自身の事業活動のために使用するが、保有するCCPの一部ないし全部を売却等して現金化してもよい。他方、需要者、特に個人ユーザは保有するCCPを自身のために使用せず、自動的に国家に寄付するものとする。国家への寄付は、管理者の責任において、複数の需要者の保有CCPの合計に相当する量のクレジットを国の償却口座に移転することによって行う。あるいは、需要者が、保有するCCPを各種活動(例えば、子供の養育、教育、医療や貧困対策、植林、緑化等)を行う団体に寄付することもできる。この場合、需要者の保有するCCPを管理者が時価で現金換算の上、その金子を上記活動団体に寄付する。無論、提供者が保有するCCPの一部ないし全部を国家や上記活動団体に寄付してもよいし、需要者が保有するCCPの一部ないし全部を自身のために使用してもよい。付与ポイント記憶部103は、図6に示すように、各提供者及び各需要者に付与したCCP、タイムスタンプ及び/またはCCPの有効期限を、その保有者を表す提供者IDまたは需要者ID(需要者を識別する識別情報)に関連づけて格納する。さらに、付与ポイント記憶部103は、各CCPを裏付けるクレジットの識別番号をも記憶している。
【0019】
基準ポイント記憶部104は、メインメモリ1bまたは補助記憶デバイス1cの記憶領域を利用して、ある商品若しくはサービスが取引された場合に提供者及び需要者に付与するCCPの基準量を記憶する。基準量は、商品若しくはサービス毎に設定できる。例えば、商品を生産若しくはサービスを提供することにより排出される温室効果ガスの量を当該商品若しくはサービスの提供者に申告させ、その排出量に応じた基準量を設定する。この際、温室効果ガスの排出量が比較的少ない商品若しくはサービスについて基準量を多くする(温室効果ガスの排出抑制を促す)考え方もあれば、温室効果ガスの排出量が比較的多い商品若しくはサービスについて基準量を多くする(提供者の事業コストを緩和する)考え方もある。基準ポイント記憶部104は、図7に示すように、提供者と需要者との間で商品若しくはサービスが取引されたときに当該提供者及び当該需要者に付与するべきCCPの基準量を、取引対象となった商品若しくはサービスを表す商品IDに関連づけて格納する。
【0020】
取引履歴取得部105は、提供者と需要者との取引履歴の情報を取得する。取引履歴の要素には少なくとも、取引対象となった商品若しくはサービスを表す商品IDと、当該商品若しくはサービスの提供者を表す提供者IDと、当該商品若しくはサービスの需要者を表す需要者IDとが含まれる。取引履歴の取得にあたり、サーバコンピュータ1が実行する処理の手順を、図8に示す。サーバコンピュータ1は、図12に例示するようなウェブサイトをネットワーク3上に公開している。当該ウェブサイトの基礎となるHTMLデータ、スクリプト等は、予め補助記憶デバイス1cに格納している。各商品若しくはサービスに関する情報は商品情報記憶部101に格納しており、各商品若しくはサービスを購入等したときに需要者が獲得することのできるCCPの値は基準値記憶部に格納している。需要者は、クライアントコンピュータ2及びウェブブラウザプログラム等の機能を用いて、サーバコンピュータ1が公開している上記ウェブサイトにアクセス(上記ウェブサイトのデータをダウンロード)する。そして、所望の商品若しくはサービスを選択し、サーバコンピュータ1に商品若しくはサービスを発注する。このとき、クライアントコンピュータ2とサーバコンピュータ1との間で、発注者を表す需要者ID、所望された商品若しくはサービスを表す商品ID、商品若しくはサービスの発注数量等が送受信される。サーバコンピュータ1は、通信インタフェース1gの機能を利用して、需要者ID、商品ID及び発注数量を受信する(ステップS1)。並びに、商品IDをキーとして商品情報記憶部101に記憶している情報を検索し、所望された商品若しくはサービスの提供者のID及び価額を読み出す(ステップS2)。但し、提供者IDや代金額がクライアントコンピュータ2とサーバコンピュータ1との間で送受信されてもよいし、商品ID、提供者ID、需要者ID、発注数量または価額が操作入力デバイス1fを介して手入力されサーバコンピュータ1がこれを受け付けるものとしてもよい。しかして、サーバコンピュータ1は、図4に示しているように、これら商品ID、提供者ID、需要者ID、発注数量及び代金額(単価及び/または合計金額)を取引履歴としてメインメモリ1bまたは補助記憶デバイス1cに格納しておき(ステップS3)、CCP付与処理時にこれを読み出す(ステップS4)。取引履歴に、タイムスタンプを付加してもよい。
【0021】
提供者ポイント書込部106は、提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスに応じて提供者に付与するべきCCPの量を決定し、そのCCPの情報を付与ポイント記憶部103に書き込む。CCPの付与にあたり、サーバコンピュータ1が実行する処理の手順を、図9に示す。サーバコンピュータ1は、先に取得した取引履歴に含まれる商品IDをキーとして基準ポイント記憶部104を検索し、その商品IDに関連付けられたCCPの基準量を読み出す(ステップS5)。そして、読み出した基準量を基に、商品若しくはサービスの提供者に付与するべきCCPの加増量を決定する(ステップS6)。ステップS6では、基準量をそのままCCPの加増量としてもよく、所定の計算式に基準量を代入して加増量を演算してもよい。あるいは、基準量の数値条件とその条件を満足する場合の加増量とを規定する所定の条件式に基準量を代入して、基準量が何れの範囲内にあるかによって加増量を決定してもよい。本実施形態では、ある商品若しくはサービスが取引されたとき、提供者には基準量の半分のCCPを付与するものとし、基準量×0.5を加増量として算出する。同一種類の商品若しくはサービスが複数個取引された場合には、取引履歴に含まれる発注数量を加増量に積算する。また、複数種類の商品若しくはサービスが取引された場合には、商品若しくはサービスの種類毎に加増量を決定してそれらを合算する。次いで、提供者に付与するCCPの裏付けとなるクレジットを選出する(ステップS7)。ステップS7では、クレジット記憶部102及び付与ポイント記憶部103を参照し、クレジット毎に裏付けているCCPの合計を順次演算し、加増量を新たに加味しても裏付けるCCPが1000ポイントを超えないクレジットの識別番号を抽出する。このとき、加増量の一部をあるクレジットに、残りを別のクレジットに紐付けるというように、加増量を複数のクレジットにまたがって裏付けさせてもよい。しかる後、図6に示しているように、決定したCCPの加増量と、CCPの付与先を表す提供者IDと、タイムスタンプ及び/またはCCPの有効期限と、CCPの加増量を裏付けるクレジットの識別番号とを、付与ポイント記憶部103に書き込む(ステップS8)。
【0022】
需要者ポイント書込部107は、提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスに応じて需要者に付与するべきCCPの量を決定し、そのCCPの情報を付与ポイント記憶部103に書き込む。CCPの付与にあたり、サーバコンピュータ1が実行する処理の手順は、図9に示した通りである。即ち、サーバコンピュータ1は、先に取得した取引履歴に含まれる商品IDをキーとして基準ポイント記憶部104を検索し、その商品IDに関連付けられたCCPの基準量を読み出す(ステップS5)。そして、読み出した基準量を基に、商品若しくはサービスの需要者に付与するべきCCPの加増量を決定する(ステップS6)。本実施形態では、ある商品若しくはサービスが取引されたとき、需要者には基準量のCCPを付与するものとしており、基準量をそのまま加増量とする。次いで、需要者に付与するCCPの裏付けとなるクレジットを選出する(ステップS7)。しかる後、決定したCCPの加増量と、CCPの付与先を表す需要者IDと、タイムスタンプ及び/またはCCPの有効期限と、CCPの加増量を裏付けるクレジットの識別番号とを、付与ポイント記憶部103に書き込む(ステップS8)。
【0023】
ポイント情報出力部108は、付与ポイント記憶部103に記憶している各提供者または各需要者のCCPの情報を、提供者または需要者の閲覧に供するべく出力する。CCPの閲覧情報の出力にあたり、サーバコンピュータ1が実行する処理の手順を、図10に示す。自身の保有しているCCPの情報の閲覧を希望する提供者または需要者は、クライアントコンピュータ2及びウェブブラウザプログラム等の機能を用いて、サーバコンピュータ1が公開しているウェブサイトにアクセスする。そして、CCPの情報の閲覧を要求する。このとき、クライアントコンピュータ2とサーバコンピュータ1との間で、CCPの閲覧希望者を表す提供者IDまたは需要者IDが送受信される。サーバコンピュータ1は、通信インタフェース1gの機能を利用して、提供者IDまたは需要者IDを受信する(ステップS9)。そして、受信した提供者IDまたは需要者IDをキーとして付与ポイント記憶部103に記憶している情報を検索し、当該提供者または当該需要者が保有するCCPの情報を読み出す(ステップS10)。しかして、サーバコンピュータ1は、読み出したCCPの情報を表示するウェブページのデータを、クライアントコンピュータ2に向けて返信する(ステップS11)。これを受信したクライアントコンピュータ2は、図13に示すような閲覧情報をディスプレイの画面に表示させる。サーバコンピュータ1が出力する閲覧情報は、提供者または需要者の獲得したCCPの合計、及び/または、個々の取引機会を通じて獲得したCCPの一覧を含む。
【0024】
本実施形態によれば、各提供者及び各需要者に付与した、温室効果ガスの排出権の兌換ポイントを、各提供者及び各需要者の識別情報に関連付けて記憶する付与ポイント記憶部103と、提供者と需要者との間で商品若しくはサービスが取引された場合に当該提供者及び当該需要者に付与するべき兌換ポイントの基準量を、各商品若しくはサービスの識別情報に関連付けて記憶する基準ポイント記憶部104と、提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの識別情報と、当該提供者の識別情報と、当該需要者の識別情報とを取得する取引履歴取得部105と、取引履歴取得部105で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部104から読み出してこれを基に提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部105で取得した提供者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部103に書き込む提供者ポイント書込部106と、取引履歴取得部105で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部104から読み出してこれを基に需要者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部105で取得した需要者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部103に書き込む需要者ポイント書込部107とを具備する取引支援システムを構成したため、国別登録簿システムに自己口座を開設したり、他者口座から自己口座にクレジットを振り替えたりする煩瑣な申請手続きを強いることなしに、個人や中小企業等が実際に排出権に触れる機会を創出できる。また、個人や中小企業等が本取引支援システムを利用して排出権兌換ポイント付きの商品若しくはサービスを容易に実現することが可能となる。
【0025】
加えて、付与ポイント記憶部103に記憶している各提供者または各需要者の兌換ポイントを、提供者または需要者の閲覧に供するべく提供者側または需要者側に向けて送信するポイント情報出力部108をも具備するシステムとしているため、提供者、需要者が自身の保有する兌換ポイントの量を容易に知ることができ、利便性が向上する。
【0026】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、各商品若しくはサービス毎に設定された基準量を基に提供者、需要者に付与する兌換ポイントたるCCPを決定するとしていたが、商品若しくはサービスの取引金額または取引数量の多寡に応じて提供者、需要者に付与するCCPを決定しても構わない。即ち、基準ポイント記憶部104は必須構成要件でない。
【0027】
提供者ポイント書込部106は、提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの代金額または発注数量に基づいて提供者に付与するべきCCPの量を決定し、そのCCPの情報を付与ポイント記憶部103に書き込む。この場合にサーバコンピュータ1が実行する処理の手順を、図11に示す。サーバコンピュータ1は、取引履歴取得部105で取得した取引履歴に含まれる代金額または発注数量を基に、商品若しくはサービスの提供者に付与するべきCCPの加増量を決定する(ステップS12)。ステップS12では、所定の計算式に代金額または発注数量を代入して加増量を演算することができ、あるいは、代金額または発注数量の数値条件とその条件を満足する場合の加増量とを規定する所定の条件式に代金額または発注数量を代入し、代金額または発注数量が何れの範囲内にあるかによって加増量を決定することもできる。ここでは、例えば、取引金額が300円〜500円の場合に加増量を0.5ポイント、500円〜1000円の場合に加増量を1ポイント、……とする。ある商品若しくはサービスが取引されたとき、提供者には基準量の半分のCCPを付与する点は上記実施形態と同様である。同一種類の商品若しくはサービスが複数個取引された場合には、その合計金額または合計数量を基に加増量を決定する。また、複数種類の商品若しくはサービスが取引された場合には、その合計金額または合計数量を基に加増量を決定するか、商品若しくはサービスの種類毎に加増量を決定してそれらを合算する。次いで、提供者に付与するCCPの裏付けとなるクレジットを選出する(ステップS13)。しかる後、図6に示しているように、決定したCCPの加増量と、CCPの付与先を表す提供者IDと、タイムスタンプ及び/またはCCPの有効期限と、CCPの加増量を裏付けるクレジットの識別番号とを、付与ポイント記憶部103に書き込む(ステップS14)。
【0028】
需要者ポイント書込部107は、提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの代金額または発注数量に基づいて需要者に付与するべきCCPの量を決定し、そのCCPの情報を付与ポイント記憶部103に書き込む。CCPの付与にあたり、サーバコンピュータ1が実行する処理の手順は、図11に示した通りである。即ち、サーバコンピュータ1は、先に取得した取引履歴に含まれる代金額または発注数量を基に、商品若しくはサービスの需要者に付与するべきCCPの加増量を決定する(ステップS12)。既述したように、ある商品若しくはサービスが取引されたとき、需要者には提供者の倍のCCPを付与する。次いで、需要者に付与するCCPの裏付けとなるクレジットを選出する(ステップS13)。しかる後、決定したCCPの加増量と、CCPの付与先を表す需要者IDと、タイムスタンプ及び/またはCCPの有効期限と、CCPの加増量を裏付けるクレジットの識別番号とを、付与ポイント記憶部103に書き込む(ステップS14)。
【0029】
また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等に導入されているPOS(Point Of Sales)システムに、本取引支援システムを連結することも可能である。この場合、予め店舗に配備されているPOSレジがクライアントコンピュータ2を代替する。サーバコンピュータ1は、電気通信回線3を介してPOSレジと通信可能に接続し、このPOSレジから取引履歴の要素である需要者ID(需要者が所持する会員カード等からPOSレジが読み出したもの)、商品ID、発注数量、代金額等の情報を受信する。
【0030】
さらには、図3に示す各部の機能を複数のコンピュータに分散させ、それらの協働によって本取引支援システムを成立させる態様を妨げない。
【0031】
その他、各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る取引支援システムを核としたネットワークを示す図。
【図2】本実施形態の取引支援システムが具備するハードウェア資源を示す図。
【図3】同実施形態の取引支援システムの機能ブロック図。
【図4】データベースに蓄積する商品若しくはサービスに関する情報を例示する図。
【図5】データベースに蓄積するクレジットの識別番号を例示する図。
【図6】データベースに蓄積する、提供者または需要者が保有している兌換ポイントの情報を例示する図。
【図7】データベースに蓄積する兌換ポイントの基準量の情報を例示する図。
【図8】同実施形態の取引支援システムがプログラムに従い実行する処理の手順を示すフロー図。
【図9】同実施形態の取引支援システムがプログラムに従い実行する処理の手順を示すフロー図。
【図10】同実施形態の取引支援システムがプログラムに従い実行する処理の手順を示すフロー図。
【図11】同実施形態の取引支援システムがプログラムに従い実行する処理の手順を示すフロー図。
【図12】同実施形態の取引支援システムが発信するウェブサイトを例示する図。
【図13】同実施形態の取引支援システムが発信する兌換ポイントの閲覧情報を例示する図。
【符号の説明】
【0033】
1…サーバコンピュータ(取引支援システム)
103…付与ポイント記憶部
104…基準ポイント記憶部
105…取引履歴取得部
106…提供者ポイント書込部
107…需要者ポイント書込部
108…ポイント情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品若しくはサービスの提供者と、提供者が提供する商品若しくはサービスの需要者と、提供者、需要者のそれぞれに温室効果ガスの排出権を分与する管理者とが関与するシステムであって、
各提供者及び各需要者に付与した、温室効果ガスの排出権の兌換ポイントを、各提供者及び各需要者の識別情報に関連付けて記憶する付与ポイント記憶部と、
提供者と需要者との間で商品若しくはサービスが取引された場合に当該提供者及び当該需要者に付与するべき兌換ポイントの基準量を、各商品若しくはサービスの識別情報に関連付けて記憶する基準ポイント記憶部と、
提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの識別情報と、当該提供者の識別情報と、当該需要者の識別情報とを取得する取引履歴取得部と、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部から読み出してこれを基に提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した提供者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む提供者ポイント書込部と、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部から読み出してこれを基に需要者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した需要者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む需要者者ポイント書込部と
を具備する取引支援システム。
【請求項2】
商品若しくはサービスの提供者と、提供者が提供する商品若しくはサービスの需要者と、提供者、需要者のそれぞれに温室効果ガスの排出権を分与する管理者とが関与するシステムであって、
各提供者及び各需要者に付与した、温室効果ガスの排出権の兌換ポイントを、各提供者及び各需要者の識別情報に関連付けて記憶する付与ポイント記憶部と、
提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの代金額または数量の情報と、当該提供者の識別情報と、当該需要者の識別情報とを取得する取引履歴取得部と、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの代金額または数量の多寡に応じて提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した提供者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む提供者ポイント書込部と、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの代金額または数量の多寡に応じて需要者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した需要者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む需要者者ポイント書込部と
を具備する取引支援システム。
【請求項3】
付与ポイント記憶部に記憶している各提供者または各需要者の兌換ポイントを、提供者または需要者の閲覧に供するべく提供者側または需要者側に向けて送信するポイント情報出力部をさらに具備する請求項1または2記載の取引支援システム。
【請求項4】
請求項1記載の取引支援システムを構成するために用いられるものであって、コンピュータを、
各提供者及び各需要者に付与した、温室効果ガスの排出権の兌換ポイントを、各提供者及び各需要者の識別情報に関連付けて記憶する付与ポイント記憶部、
提供者と需要者との間で商品若しくはサービスが取引された場合に当該提供者及び当該需要者に付与するべき兌換ポイントの基準量を、各商品若しくはサービスの識別情報に関連付けて記憶する基準ポイント記憶部、
提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの識別情報と、当該提供者の識別情報と、当該需要者の識別情報とを取得する取引履歴取得部、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部から読み出してこれを基に提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した提供者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む提供者ポイント書込部、並びに、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの識別情報に関連付けられた基準量を基準ポイント記憶部から読み出してこれを基に需要者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した需要者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む需要者ポイント書込部
として機能させるプログラム。
【請求項5】
請求項2記載の取引支援システムを構成するために用いられるものであって、コンピュータを、
各提供者及び各需要者に付与した、温室効果ガスの排出権の兌換ポイントを、各提供者及び各需要者の識別情報に関連付けて記憶する付与ポイント記憶部、
提供者と需要者との間で取引された商品若しくはサービスの代金額または数量の情報と、当該提供者の識別情報と、当該需要者の識別情報とを取得する取引履歴取得部、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの代金額または数量の多寡に応じて提供者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した提供者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む提供者ポイント書込部、並びに、
取引履歴取得部で取得した商品若しくはサービスの代金額または数量の多寡に応じて需要者に付与するべき兌換ポイントを決定し、その兌換ポイントを取引履歴取得部で取得した需要者の識別情報に関連付けられる兌換ポイントに加増する情報を付与ポイント記憶部に書き込む需要者ポイント書込部
として機能させるプログラム。
【請求項6】
さらに、コンピュータを、付与ポイント記憶部に記憶している各提供者または各需要者の兌換ポイントを、提供者または需要者の閲覧に供するべく提供者側または需要者側に向けて送信するポイント情報出力部としても機能させる請求項4または5記載のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate