取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体
【課題】高速および高精度に注湯することができる取鍋傾動式自動注湯方法を提供する。
【解決手段】ロードセル9によって計測される取鍋3から流出の溶湯の重量と、サーボモータ4,5への入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始する。
【解決手段】ロードセル9によって計測される取鍋3から流出の溶湯の重量と、サーボモータ4,5への入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体に係り、より詳しくは、注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入する取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取鍋傾動式自動注湯方法の代表的なものとして、任意の注湯速度で注湯中に取鍋反転動作を行い、その反転動作の間に注湯される量から予め湯切り注湯予測量を求めておく一方、注湯中の注湯速度を算出し、その注湯速度で反転動作を開始した場合の湯切り注湯予測量と、目標注湯量と現時点の注湯量との差である注湯残量を逐次比較して、注湯残量が湯切り注湯予測量より小さくなる時点で取鍋の反転を行い注湯を終了する方法(特許文献1)や、予めプログラムを設定されたコンピュータによって制御されるサーボモータにより、溶湯入りの取鍋を掛堰側へ傾動させて掛堰から溶湯が溢れ出ない範囲で素早くその上面を目標レベルまで上昇させるようにして注湯を開始し、この注湯の開始、立ち上げの終了時に取鍋から流出する溶湯量と鋳型に流入する溶湯量とをほぼ等しくしかつ掛堰内の溶湯の上面位置をほぼ一定に維持するようにして溶湯を掛堰に注入すべく取鍋の掛堰側への傾動を続け、その後取鍋内の溶湯がスロッシングを発生させないようにして取鍋を掛堰の反対側へ傾動させて湯切りを行い注湯を終了する方法(特許文献2)や、取鍋の前傾動の停止によって出湯口から上部に位置する溶湯の減少する溶湯の高さと取鍋の後傾動の開始によって減少する溶湯の高さとから算出される取鍋の後傾動中の溶湯の高さと、取鍋から鋳型へ注湯される溶湯の鋳込み重量との関係と、取鍋から鋳型に流出する溶湯の鋳込み重量の注湯流量モデルを用いて、取鍋の前傾動から後傾動までの最終鋳込み重量が後傾動の動作開始時の鋳込み重量と後傾動の動作開始以降の鋳込み重量との和であるとして、最終鋳込み重量を予測し,予測した最終鋳込み重量が規定鋳込み重量と等しいか否かを判定したのち、判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始する方法(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−58120
【特許文献2】特開2005−88041
【特許文献3】国際公開番号WO−2008−136202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,特許文献1記載の注湯方法では、制御システム構築に多くの基礎実験を必要とし多大な時間を要し、しかも、高速注湯を行う際に,実験で求めた溶湯に係る予測流出重量と実際の流出重量との誤差が大きくなるため,取鍋の後傾動作を数回に分けて行う必要があり、その上、取鍋の前傾動作が停止する際の反動がロードセルへ影響するため,停止してから数秒待機することが要求される。したがって,後傾動動作時間が長時間となる。さらに,取鍋傾動角度による湯流れ変化の影響が考慮されていないため,取鍋傾動角度によっては溶湯流出重量精度が低下することが問題となる。また、特許文献3では取鍋形状が扇形状に限定されることや繰り返し演算による状態予測式を用いているため、制御器の実時間演算負荷が大きいことが問題となる。加えて、特許文献1や特許文献2,特許文献3記載の注湯方法は,溶湯流出重量を計測するロードセルの応答特性や計測ノイズに流出重量の精度が大きく影響されることが問題となる。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、溶湯を保持した取鍋を傾動することにより鋳型へ注湯に当たり,高速および高精度に注湯することができる取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび、取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1の発明における取鍋傾動式自動注湯方法は、注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入する方法であって,ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,前記取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,溶湯流出重量を計測するロードセルの応答遅れや計測ノイズの影響が大きい場合においても高精度に溶湯流出重量を予測し,予測した流出重量が規定流出重量と等しいか,もしくは規定流出重量を超えた場合に,取鍋の後傾動の動作を開始するため,溶湯流出重量を規定流出重量へ迅速,かつ高精度に注湯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した取鍋傾動式自動注湯装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の取鍋傾動式自動注湯装置を制御するシステムを示すブロック線図である。
【図3】取鍋の位置,角度を高精度に制御するために,取鍋前後移動用モータ,昇降移動用モータ,傾動用モータへの比例制御による位置・角度フィードバック制御システムを示すブロック図である。
【図4】取鍋出湯位置とモータ回転軸中心との位置関係を示す模式図である。
【図5】注湯プロセスパラメータを示す模式図である。
【図6】出湯口パラメータを示す模式図である。
【図7】溶湯流出重量予測制御を示すフローチャート図である。
【図8】自動注湯のプロセスを示すブロック線図である。
【図9】実験に用いた取鍋の内側形状と出湯口形状を示す模式図である。
【図10】図9に示す取鍋の傾動角度に対する取鍋出湯口下部の溶湯体積と溶湯表面積の関係を示すグラフである。
【図11】図9に示す取鍋の出湯口での溶湯高さhと流量係数を1とした注湯流量qfの関係を示すグラフである。
【図12】溶湯を水として実施した実験結果を示すグラフである。
【図13】目標水流出重量5.0[kg]とし,異なる水流出開始傾動角度とした注水実験による水流出重量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した取鍋傾動式自動注湯装置の一実施例について添付図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本自動注湯装置は、注湯機1と、この注湯機1に駆動指令信号を与える制御器2とで構成されている。そして、注湯機1は、矩形出湯口を持つ円筒形状の取鍋3と、この取鍋3を傾動させるサーボモータ4と、サーボモータ5の出力軸の回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構により、取鍋3を垂直方向へ移動させる移動手段6と、サーボモータ7の出力軸の回転運動を直線運動に変換するラックピニオン機構により、取鍋3を水平方向へ移動させる移動手段8と、取鍋3内の溶湯の重量を計測するロードセル9とを備えている。
【0010】
また、ロードセル9はロードセルアンプに接続されている。また、取鍋3の傾動角度や位置は、サーボモータ4、5に取り付けられたロータリーエンコーダ(図示せず)により計測される。
【0011】
また、制御器2には、取鍋3から鋳型に流出する溶湯の注湯流量モデルを記憶する記憶手段と,取鍋3の傾動動作に同期させて取鍋3を前後移動、昇降移動させ,取鍋3の出湯口を傾動中心にする演算手段と,注湯動作開始前にロードセル9によって計測される取鍋3内の溶湯重量から、取鍋3からの溶湯の流出を開始する取鍋3の傾動角度を換算する演算手段と,ロードセル9によって計測される取鍋3から流出の溶湯の重量と、サーボモータ4、5への入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋3の傾動角度,取鍋3の昇降移動位置から、拡張カルマンフィルタを用いて出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋3から流出した溶湯の重量を推定する演算手段と,後傾動作開始以降に取鍋3から流出する溶湯の重量を算出する演算手段と,ロードセル9によって計測される取鍋3内の溶湯重量を取鍋3から鋳型に流出する溶湯の流出重量に換算する演算手段と,取鍋3の前傾動から後傾動までの最終溶湯流出重量が後傾動の動作開始時の溶湯流出重量と後傾動の動作開始以降の溶湯流出重量との和として,最終溶湯流出重量を算出する演算手段と,当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定する判定手段として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0012】
これにより、制御器2は,位置や角度指令に対して高精度な取鍋3の姿勢を実現する取鍋位置・角度制御システムと、取鍋3の傾動中心を出湯口先端に固定する取鍋傾動角度・位置同期化制御システムと、高速・高精度注湯を行うための溶湯流出重量予測制御システムと、計測データから注湯状態を予測する注湯状態推定システムとを構成している(図2参照)。
【0013】
そして、取鍋位置・角度制御システムは、図3に示すように、取鍋3の位置,角度を高精度に制御するために,取鍋前後移動用のサーボモータ7,取鍋昇降移動用のサーボモータ5,取鍋傾動用のサーボモータ4への比例制御システムを構成する。
【0014】
また、取鍋傾動角度・位置同期化制御システムは、取鍋傾動用のサーボモータ4の負荷を軽減するために,図4に示すように、サーボモータ4は取鍋重心付近に取り付けられる。そこで,サーボモータ4の駆動により,取鍋3を傾動させると出湯位置が移動し,これに伴い,取鍋3から流出する溶湯の落下位置が移動する。湯口に正確に落下溶湯を流入させるために,取鍋3の傾動動作に同期して,昇降移動,前後移動を行い,出湯位置を固定させる制御システムを構築する。
なお、図4において,Rは出湯位置とサーボモータ4の回転軸中心との直線距離であり,q0は出湯位置とサーボモータ4の回転軸中心を結ぶ直線と水平線がなす角の角度である。これより,取鍋3の位置同期化制御は(1)式,(2)式のようにそれぞれ示される。
【0015】
【数1】
ここで,rtは取鍋3の傾動角度指令であり,ryは取鍋3の前後位置指令,rzは取鍋3の昇降位置指令である。図2に示すように、傾動角度指令が取鍋傾動角度・位置同期化制御システムに与えられ,(1)式,および(2)式を演算することにより,前後位置指令ry,昇降位置指令rzを生成する。この同期化制御により生成された位置指令を取鍋位置・角度制御システムに与えることにより,取鍋3が前後,昇降移動し,出湯位置が固定され,出湯位置を中心に取鍋が傾動する。
【0016】
また、溶湯流出重量予測制御システムは,既定の溶湯流出重量になるように湯切り時に流出する溶湯重量を予測して,湯切りのための取鍋3の後傾動作の開始タイミングを決定する制御方式である。溶湯流出重量予測制御システムを以下に示す。
まず,注湯流量モデルを(3)式〜(5)式に示す。
【0017】
【数2】
ここで,Vr,Vs,A,h,qf,qは、図5に示すように,取鍋3の出湯口より上部溶湯の体積,下部溶湯の体積,溶湯表面積,上部溶湯高さ,流出流量,取鍋3の傾動角度をそれぞれ示す。
【0018】
また、hb,Lfは、図6に示すように,取鍋3内の溶湯表面からの溶湯深さ,溶湯深さhbにおける出湯口幅をそれぞれ示す。wは取鍋3の傾動角速度であり,gは重力加速度,cは流量係数である。Lpは表面張力などの影響により取鍋3から流出する溶湯の応答遅れを示す。また,流量qfは正値であり,流量係数cは0から1の間の値をとる。流量係数cが1の場合は完全流体を示している。
なお、本注湯流量モデルでは,特願2007−120365(国際公開番号WO−2008−136202)に対して,溶湯の表面張力による応答遅れを示すむだ時間Lpを追加している。
注湯流量モデルにおいて,(4)式に(3)式を代入することで,(6)式となる。
【0019】
【数3】
また,(7)式に示すように,流量qfを時間積分することで,取鍋3から流出する溶湯の流出重量Wを得ることができる。
【0020】
【数4】
ここで,rは溶湯密度であり,時刻t0からt1は溶湯の流出重量取得時間である。
【0021】
(7),(8)式に示す注湯モデルを用いて,溶湯流出重量予測制御システムを構築する。ここで,本制御システムは,湯切り時の取鍋3の後傾動作パターン(取鍋傾動角速度の時間履歴)があらかじめ決められた一意のパターンであることを条件とする。この条件は,シーケンス制御やフィードフォワード制御では一般的な条件である。
また,(7)式に示すように,注湯流量がむだ時間Lpを含んでいる。これは湯切り動作開始時点tsにおいても,注湯流量は取鍋3が傾動停止している間の影響を受けることを意味している。ここで,(8)式に示すように,時刻tにおける注湯流量qf(h(t))とむだ時間内での注湯流量変動Dqfに分離する。
【0022】
【数5】
湯切り開始時点tsにおいて,むだ時間内での注湯流量変動は,時刻tsにおける注湯流量に対して微小(qf(h(ts))>> Dqf)と仮定すると(8)式は(9)式となる。
【0023】
【数6】
(7)式より,溶湯密度r,流量係数c,重力加速度gは定数であり,出湯口幅Lfは出湯口形状で決められることから,流量qfは出湯口上部溶湯高さhに依存し,その流量を時間積分したものが流出重量Wとなる。したがって,湯切り動作時に流出した注湯の流出重量Wbは(10)式となる.
【0024】
【数7】
ここで,fqは取鍋3の出湯口上部溶湯高さhから(5)式を用いて流量qf空間へ写像する写像関数である。また,tsは湯切り動作開始時刻であり,tfは注湯終了時刻である。また,(10)式に(9)式の仮定を代入すると(11)式となる。
【0025】
【数8】
つぎに,湯切り時の取鍋3の後傾動作パターンはあらかじめ決められているという条件から,取鍋3の傾動角速度wは一意であり,湯切り時の傾動角度qb(t)は(9)式より,湯切り開始時の傾動角度qsに依存する。
【0026】
【数9】
(6)式において,取鍋3内の溶湯表面積A,および出湯口下部体積Vsは取鍋3の傾動角度に依存し,qfは取鍋3の出湯口上部溶湯高さhに依存する。また,(9)式の仮定を考慮する。したがって,(12)式,および取鍋3の傾動角速度wは一意であることから,湯切り時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhbは(13)式に示すように湯切り開始時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhsと取鍋3の傾動角度qsによって決定される。
【0027】
【数10】
ここで,fhは湯切り開始時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhs,および取鍋3の傾動角度qsから(6)式を用いて湯切り時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhb空間へ写像する写像関数である。(13)式を(11)式に代入することで,(14)式が得られる。
【0028】
【数11】
(14)式より,湯切り時の取鍋3からの溶湯流出重量Wbは、湯切り動作開始時の取鍋3の傾動角度qsと取鍋3の出湯口上部溶湯高さhsに依存することがわかる。このことから,湯切り時の溶湯流出重量は、湯切り時に傾動角度と溶湯高さを取得することで,予測することができる。
【0029】
しかし,溶湯流出重量予測制御システムを構築する際に,(14)式を実時間処理するが要求されるが,(14)式は(6)式の微分方程式を境界条件である取鍋3の傾動角度qsと溶湯高さhsを用いて求解する必要があり,実時間処理は困難である。そこで,(14)式を多項式近似することで実時間処理を可能にする。湯切り開始時の傾動角度qsを固定して,取鍋3の出湯口上部溶湯高さhsを変動させた場合の溶湯流出重量Wbqの多項式近似を(15)式に示す。
【0030】
【数12】
そして,湯切り開始時の取鍋3の傾動角度qsを変動させて,それぞれの傾動角度qsに(15)式による多項式近似を行い,得られた係数aiを(16)式のように多項式近似を行う。
【0031】
【数13】
(16)式を(15)式に代入することにより,(17)式が得られる。
【0032】
【数14】
(17)式の多項式より,湯切り時の取鍋3からの溶湯流出重量Wbを実時間処理で予測することができる。 そして,注湯中の溶湯流出重量Wと(17)式によって予測された湯切り時の溶湯流出重量Wbが(18)式に示す条件を満たした時点で湯切り動作を開始する。
【0033】
【数15】
【0034】
ここで,溶湯流出重量予測制御システムのフローチャートを図7に示す。図7の制御システムでは,まず,取鍋3が前傾動作を開始する。そして,取鍋3が溶湯流出開始傾動角度に到達し,取鍋3内の溶湯が流出する。溶湯流出重量が判定重量WAに到達した時点で,取鍋3の傾動を停止させる。(17)式の湯切り時の溶湯流出重量予測,および(18)式の湯切り動作開始判別式を実行し,(18)式を満たした時点で湯切りを開始する。このプロセスにより,目標溶湯流出重量へ高精度に注湯することができる。ここで,(17),(18)式の実行において,出湯口上部溶湯高さh,傾動角度q,注湯中の溶湯流出重量Wを検出する必要がある。傾動角度はロータリーエンコーダより計測することができるが,出湯口上部溶湯高さの計測は困難であり,注湯中の溶湯流出重量はロードセルで計測できるが,ロードセルの応答遅れやノイズの影響で精度良く計測することができない。そこで,注湯状態推定システムを構築し,注湯状態量である出湯口上部溶湯高さh,注湯中の溶湯流出重量Wを推定する。
【0035】
注湯状態量推定システムは、溶湯流出重量予測制御システムで必要な注湯状態量を推定する。そして、この注湯状態量推定システムを構築すると、本システムは、拡張カルマンフィルタを用いた注湯状態量推定を行う。注湯状態量推定システムの構築に対して,自動注湯プロセスのモデリングを行う。
図8に自動注湯プロセスのブロック線図を示す。
図8において,取鍋傾動用モータPmに動作指令uが与えられると取鍋3が傾動角速度w,傾動角度qで傾動する。取鍋傾動用モータモデルを(1)式に示す。
【0036】
【数16】
ここで,Tmtは取鍋傾動用モータの時定数,Kmtはゲイン定数である.取鍋3が傾動することで,取鍋3内の溶湯が流出する。
この注湯プロセスPfは,後述の(5),(6)式に示されている。
【0037】
注湯プロセスにおいて,表面張力などの影響による応答遅れをむだ時間Lpで示している。拡張カルマンフィルタにむだ時間を導入するために,(3),(3)式に示すような1次系のパデ近似によりむだ時間を表現する.
【0038】
【数17】
ここで、qf(h(t))は時刻tにおける注湯流量であり,qxはむだ時間を一次系のパデ近似で表現した際の状態量であり,qeは時刻t-Lqにおける注湯流量となる。
【0039】
(6)式において,qe(t)=qf(h(t-Lp))として代入する。また,注湯流量qfを時間積分し,体積から重量変換することで,(7)式に示すように溶湯流出重量Wが得られる。(7)式においても,(6)式と同様に注湯流量のむだ時間をqe(t)=
qf(h(t-Lp))として代入する。一方,取鍋傾動用のサーボモータ4への動作指令は,取鍋傾動角度・位置同期制御システムに用いられる。同期制御Kzは,(1),(2)式に示す。そして,後述の図3に示す取鍋位置制御にて,取鍋昇降用サーボモータPzへ動作指令uzが与えられる。
取鍋昇降用モータモデルを(22)式に示す.
【0040】
【数18】
ここで,Tmzは取鍋昇降用サーボモータ5の時定数,Kmzはゲイン定数,vzは取鍋昇降速度,azは取鍋昇降加速度である。
【0041】
取鍋位置同期化制御システムによって取鍋3が昇降動作を行う。この昇降動作が,図1に示す自動注湯装置に取り付けられたロードセルより計測される溶湯流出重量データに重畳される。Waは溶湯が取鍋3から流出する前のロードセル9の初期ばね上荷重であり,取鍋3から溶湯が流出することにより,荷重が軽減される。また,gは重力加速度である。溶湯流出重量と取鍋3の昇降動作がロードセル9の動特性を経て,計測溶湯流出重量WLとなる。ロードセルモデルを(5)式に示す。
【0042】
【数19】
ここで,TLはロードセル時定数である。
【0043】
(6),(7)式,および(19)〜(23)式を用いて,自動注湯プロセスを状態方程式で示すと(24)式となり,出力方程式は(25)式となる。
【0044】
【数20】
ここで,(24)式の入力ベクトルu(t)はu(t)=(u(t) uz(t))Tである。
(24),(25)式に示す自動注湯プロセスモデルに対して,拡張カルマンフィルタによる注湯状態量推定システムを構築する。まず,オイラー法を用いて(24),(25)式の微分方程式を(26),(27)式に示す差分方程式へ変換する。
【0045】
【数21】
ここで,kはサンプリング番号であり,DTはサンプル時間である。時刻tとは,t=kDTの関係がある。また,入力ベクトルはu(k)=(u(k) uz(k))Tである。(26),(27)式に対して,拡張カルマンフィルタは(28),(29)式のように構成される。
【0046】
【数22】
ここで,K(k)はカルマンゲインである。推定状態変数zenとzepは,演繹的状態変数と帰納的状態変数を示す。そして,(28),(29)式に対して,つぎのように状態推定が行われる。
時間更新:
【0047】
【数23】
線形化:
【0048】
【数24】
計測更新:
【0049】
【数25】
カルマンゲイン:
【0050】
【数26】
線形化:
【0051】
【数27】
ここで,Q,Rはシステムノイズ,および観測ノイズの共分散行列を示し,Pは推定状態量誤差の共分散行列である。(30)〜(36)式のプロセスを実行することで状態量zの推定ができる。また,注湯状態量推定システムは,取鍋傾動角度が出湯開始角度に到達してから実行される。出湯開始角度qspは出湯前のロードセルによって計測される取鍋内溶湯重量Wlqから(37)式のように推定される。
【0052】
【数28】
ここで,fvsは傾動角度qにおける取鍋出湯口下部の溶湯体積Vsから傾動角度qへ写像する写像関数である。(37)式において推定誤差があった場合においても拡張カルマンフィルタは初期値誤差として誤差0へ収束する。
拡張カルマンフィルタによって推定された状態量zeにおいて,出湯口上部溶湯高さheと溶湯流出重量Weが溶湯流出重量予測制御システムに用いられる。
【実施例】
【0053】
実験に用いた取鍋の内側形状と出湯口形状を図9に示す。
図9の取鍋形状より,傾動角度qに対する取鍋出湯口下部の溶湯体積Vs,溶湯表面積Aを求めると図10となる.図10に示す取鍋出湯口下部の溶湯体積と溶湯表面積の関係は,数値積分を用いて求めることができる。または,CADソフトを用いて求めることもできる。ここで,(37)式のfvsは,図10(a)の傾動角度q取鍋出湯口下部の溶湯体積Vsの関係の逆写像である.そして,出湯口での溶湯高さhと流量係数を1とした注湯流量qfの関係を図11に示す。図11の関係は,(5)式より求めることができる。また,流量係数は同定実験よりc=0.64,表面張力による溶湯流動の応答遅れLp=0.45[s],密度r=103[kg/m3]とする。これらのパラメータを自動注湯プロセスモデルに与える。
【0054】
同定実験より,取鍋傾動用モータの時定数Tmt=0.01[s],ゲイン定数Kmt=1.0[deg/sV],取鍋昇降用モータの時定数Tmz=0.01[s],ゲイン定数Kmz=1.0[m/sV]とする。これらを各モータモデルに与える。また,ロードセルの時定数は同定実験より,TL=0.159[s]とする。
【0055】
対象溶湯を水として実施した実験結果を図12に示す。前傾傾動角速度は0.5[deg/s],後傾角速度は2.0[deg/s]で注湯動作を行う。目標流出重量は3.0[kg],取鍋前傾動停止重量は1.0[kg]である。
図12において,(a)は拡張カルマンフィルタによって推定された傾動角速度,(b)は傾動角度,(c)取鍋昇降速度,(d)は取鍋昇降位置,(e)は出湯口上部液体高さ,(f)は液体流出重量である。また,(f)において,細線はロードセルによって計測された計測液体流出重量であり,太線は推定液体流出重量である。拡張カルマンフィルタにより,液体状態量が推定できていることが確認できる。また,図12(f)において,計測液体流出重量はノイズの影響や取鍋昇降動作の影響,ロードセル動特性が重畳されており,実際の液体流出重量の計測が困難であった。これに対して,推定液体流出重量はノイズや取鍋昇降動作の影響を低減し,ロードセル動特性による応答遅れを補償していることが確認できる。推定された注湯状態量を用いて,液体流出重量予測制御を行っているため,目標液体流出重量3.0[kg]に対して,実際の液体流出重量3.05[kg]と高精度に注湯できていることがわかる。
【0056】
目標液体流出重量や液体流出開始傾動角度などの注湯条件を変更した場合における注湯精度を確認する。目標液体流出重量5.0[kg]とし,異なる液体流出開始傾動角度とした注湯実験による液体流出重量を図13(a)に示し,目標液体流出重量10.0[kg]とした注湯実験による液体流出重量を図13(b)に示す。図13(a)(b)において,破線は目標液体流出重量に対して,誤差±3[%]の領域を示しており,丸プロット点は実験により得られた液体流出重量である。異なる目標液体流出重量や液体流出開始傾動角度においても目標液体流出重量に対して0.1[kg]程度の誤差であり,異なる注湯条件においても高精度に注湯できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体に係り、より詳しくは、注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入する取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取鍋傾動式自動注湯方法の代表的なものとして、任意の注湯速度で注湯中に取鍋反転動作を行い、その反転動作の間に注湯される量から予め湯切り注湯予測量を求めておく一方、注湯中の注湯速度を算出し、その注湯速度で反転動作を開始した場合の湯切り注湯予測量と、目標注湯量と現時点の注湯量との差である注湯残量を逐次比較して、注湯残量が湯切り注湯予測量より小さくなる時点で取鍋の反転を行い注湯を終了する方法(特許文献1)や、予めプログラムを設定されたコンピュータによって制御されるサーボモータにより、溶湯入りの取鍋を掛堰側へ傾動させて掛堰から溶湯が溢れ出ない範囲で素早くその上面を目標レベルまで上昇させるようにして注湯を開始し、この注湯の開始、立ち上げの終了時に取鍋から流出する溶湯量と鋳型に流入する溶湯量とをほぼ等しくしかつ掛堰内の溶湯の上面位置をほぼ一定に維持するようにして溶湯を掛堰に注入すべく取鍋の掛堰側への傾動を続け、その後取鍋内の溶湯がスロッシングを発生させないようにして取鍋を掛堰の反対側へ傾動させて湯切りを行い注湯を終了する方法(特許文献2)や、取鍋の前傾動の停止によって出湯口から上部に位置する溶湯の減少する溶湯の高さと取鍋の後傾動の開始によって減少する溶湯の高さとから算出される取鍋の後傾動中の溶湯の高さと、取鍋から鋳型へ注湯される溶湯の鋳込み重量との関係と、取鍋から鋳型に流出する溶湯の鋳込み重量の注湯流量モデルを用いて、取鍋の前傾動から後傾動までの最終鋳込み重量が後傾動の動作開始時の鋳込み重量と後傾動の動作開始以降の鋳込み重量との和であるとして、最終鋳込み重量を予測し,予測した最終鋳込み重量が規定鋳込み重量と等しいか否かを判定したのち、判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始する方法(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−58120
【特許文献2】特開2005−88041
【特許文献3】国際公開番号WO−2008−136202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,特許文献1記載の注湯方法では、制御システム構築に多くの基礎実験を必要とし多大な時間を要し、しかも、高速注湯を行う際に,実験で求めた溶湯に係る予測流出重量と実際の流出重量との誤差が大きくなるため,取鍋の後傾動作を数回に分けて行う必要があり、その上、取鍋の前傾動作が停止する際の反動がロードセルへ影響するため,停止してから数秒待機することが要求される。したがって,後傾動動作時間が長時間となる。さらに,取鍋傾動角度による湯流れ変化の影響が考慮されていないため,取鍋傾動角度によっては溶湯流出重量精度が低下することが問題となる。また、特許文献3では取鍋形状が扇形状に限定されることや繰り返し演算による状態予測式を用いているため、制御器の実時間演算負荷が大きいことが問題となる。加えて、特許文献1や特許文献2,特許文献3記載の注湯方法は,溶湯流出重量を計測するロードセルの応答特性や計測ノイズに流出重量の精度が大きく影響されることが問題となる。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、溶湯を保持した取鍋を傾動することにより鋳型へ注湯に当たり,高速および高精度に注湯することができる取鍋傾動式自動注湯方法、取鍋用傾動制御システムおよび、取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1の発明における取鍋傾動式自動注湯方法は、注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入する方法であって,ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,前記取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,溶湯流出重量を計測するロードセルの応答遅れや計測ノイズの影響が大きい場合においても高精度に溶湯流出重量を予測し,予測した流出重量が規定流出重量と等しいか,もしくは規定流出重量を超えた場合に,取鍋の後傾動の動作を開始するため,溶湯流出重量を規定流出重量へ迅速,かつ高精度に注湯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した取鍋傾動式自動注湯装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の取鍋傾動式自動注湯装置を制御するシステムを示すブロック線図である。
【図3】取鍋の位置,角度を高精度に制御するために,取鍋前後移動用モータ,昇降移動用モータ,傾動用モータへの比例制御による位置・角度フィードバック制御システムを示すブロック図である。
【図4】取鍋出湯位置とモータ回転軸中心との位置関係を示す模式図である。
【図5】注湯プロセスパラメータを示す模式図である。
【図6】出湯口パラメータを示す模式図である。
【図7】溶湯流出重量予測制御を示すフローチャート図である。
【図8】自動注湯のプロセスを示すブロック線図である。
【図9】実験に用いた取鍋の内側形状と出湯口形状を示す模式図である。
【図10】図9に示す取鍋の傾動角度に対する取鍋出湯口下部の溶湯体積と溶湯表面積の関係を示すグラフである。
【図11】図9に示す取鍋の出湯口での溶湯高さhと流量係数を1とした注湯流量qfの関係を示すグラフである。
【図12】溶湯を水として実施した実験結果を示すグラフである。
【図13】目標水流出重量5.0[kg]とし,異なる水流出開始傾動角度とした注水実験による水流出重量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した取鍋傾動式自動注湯装置の一実施例について添付図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本自動注湯装置は、注湯機1と、この注湯機1に駆動指令信号を与える制御器2とで構成されている。そして、注湯機1は、矩形出湯口を持つ円筒形状の取鍋3と、この取鍋3を傾動させるサーボモータ4と、サーボモータ5の出力軸の回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構により、取鍋3を垂直方向へ移動させる移動手段6と、サーボモータ7の出力軸の回転運動を直線運動に変換するラックピニオン機構により、取鍋3を水平方向へ移動させる移動手段8と、取鍋3内の溶湯の重量を計測するロードセル9とを備えている。
【0010】
また、ロードセル9はロードセルアンプに接続されている。また、取鍋3の傾動角度や位置は、サーボモータ4、5に取り付けられたロータリーエンコーダ(図示せず)により計測される。
【0011】
また、制御器2には、取鍋3から鋳型に流出する溶湯の注湯流量モデルを記憶する記憶手段と,取鍋3の傾動動作に同期させて取鍋3を前後移動、昇降移動させ,取鍋3の出湯口を傾動中心にする演算手段と,注湯動作開始前にロードセル9によって計測される取鍋3内の溶湯重量から、取鍋3からの溶湯の流出を開始する取鍋3の傾動角度を換算する演算手段と,ロードセル9によって計測される取鍋3から流出の溶湯の重量と、サーボモータ4、5への入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋3の傾動角度,取鍋3の昇降移動位置から、拡張カルマンフィルタを用いて出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋3から流出した溶湯の重量を推定する演算手段と,後傾動作開始以降に取鍋3から流出する溶湯の重量を算出する演算手段と,ロードセル9によって計測される取鍋3内の溶湯重量を取鍋3から鋳型に流出する溶湯の流出重量に換算する演算手段と,取鍋3の前傾動から後傾動までの最終溶湯流出重量が後傾動の動作開始時の溶湯流出重量と後傾動の動作開始以降の溶湯流出重量との和として,最終溶湯流出重量を算出する演算手段と,当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定する判定手段として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0012】
これにより、制御器2は,位置や角度指令に対して高精度な取鍋3の姿勢を実現する取鍋位置・角度制御システムと、取鍋3の傾動中心を出湯口先端に固定する取鍋傾動角度・位置同期化制御システムと、高速・高精度注湯を行うための溶湯流出重量予測制御システムと、計測データから注湯状態を予測する注湯状態推定システムとを構成している(図2参照)。
【0013】
そして、取鍋位置・角度制御システムは、図3に示すように、取鍋3の位置,角度を高精度に制御するために,取鍋前後移動用のサーボモータ7,取鍋昇降移動用のサーボモータ5,取鍋傾動用のサーボモータ4への比例制御システムを構成する。
【0014】
また、取鍋傾動角度・位置同期化制御システムは、取鍋傾動用のサーボモータ4の負荷を軽減するために,図4に示すように、サーボモータ4は取鍋重心付近に取り付けられる。そこで,サーボモータ4の駆動により,取鍋3を傾動させると出湯位置が移動し,これに伴い,取鍋3から流出する溶湯の落下位置が移動する。湯口に正確に落下溶湯を流入させるために,取鍋3の傾動動作に同期して,昇降移動,前後移動を行い,出湯位置を固定させる制御システムを構築する。
なお、図4において,Rは出湯位置とサーボモータ4の回転軸中心との直線距離であり,q0は出湯位置とサーボモータ4の回転軸中心を結ぶ直線と水平線がなす角の角度である。これより,取鍋3の位置同期化制御は(1)式,(2)式のようにそれぞれ示される。
【0015】
【数1】
ここで,rtは取鍋3の傾動角度指令であり,ryは取鍋3の前後位置指令,rzは取鍋3の昇降位置指令である。図2に示すように、傾動角度指令が取鍋傾動角度・位置同期化制御システムに与えられ,(1)式,および(2)式を演算することにより,前後位置指令ry,昇降位置指令rzを生成する。この同期化制御により生成された位置指令を取鍋位置・角度制御システムに与えることにより,取鍋3が前後,昇降移動し,出湯位置が固定され,出湯位置を中心に取鍋が傾動する。
【0016】
また、溶湯流出重量予測制御システムは,既定の溶湯流出重量になるように湯切り時に流出する溶湯重量を予測して,湯切りのための取鍋3の後傾動作の開始タイミングを決定する制御方式である。溶湯流出重量予測制御システムを以下に示す。
まず,注湯流量モデルを(3)式〜(5)式に示す。
【0017】
【数2】
ここで,Vr,Vs,A,h,qf,qは、図5に示すように,取鍋3の出湯口より上部溶湯の体積,下部溶湯の体積,溶湯表面積,上部溶湯高さ,流出流量,取鍋3の傾動角度をそれぞれ示す。
【0018】
また、hb,Lfは、図6に示すように,取鍋3内の溶湯表面からの溶湯深さ,溶湯深さhbにおける出湯口幅をそれぞれ示す。wは取鍋3の傾動角速度であり,gは重力加速度,cは流量係数である。Lpは表面張力などの影響により取鍋3から流出する溶湯の応答遅れを示す。また,流量qfは正値であり,流量係数cは0から1の間の値をとる。流量係数cが1の場合は完全流体を示している。
なお、本注湯流量モデルでは,特願2007−120365(国際公開番号WO−2008−136202)に対して,溶湯の表面張力による応答遅れを示すむだ時間Lpを追加している。
注湯流量モデルにおいて,(4)式に(3)式を代入することで,(6)式となる。
【0019】
【数3】
また,(7)式に示すように,流量qfを時間積分することで,取鍋3から流出する溶湯の流出重量Wを得ることができる。
【0020】
【数4】
ここで,rは溶湯密度であり,時刻t0からt1は溶湯の流出重量取得時間である。
【0021】
(7),(8)式に示す注湯モデルを用いて,溶湯流出重量予測制御システムを構築する。ここで,本制御システムは,湯切り時の取鍋3の後傾動作パターン(取鍋傾動角速度の時間履歴)があらかじめ決められた一意のパターンであることを条件とする。この条件は,シーケンス制御やフィードフォワード制御では一般的な条件である。
また,(7)式に示すように,注湯流量がむだ時間Lpを含んでいる。これは湯切り動作開始時点tsにおいても,注湯流量は取鍋3が傾動停止している間の影響を受けることを意味している。ここで,(8)式に示すように,時刻tにおける注湯流量qf(h(t))とむだ時間内での注湯流量変動Dqfに分離する。
【0022】
【数5】
湯切り開始時点tsにおいて,むだ時間内での注湯流量変動は,時刻tsにおける注湯流量に対して微小(qf(h(ts))>> Dqf)と仮定すると(8)式は(9)式となる。
【0023】
【数6】
(7)式より,溶湯密度r,流量係数c,重力加速度gは定数であり,出湯口幅Lfは出湯口形状で決められることから,流量qfは出湯口上部溶湯高さhに依存し,その流量を時間積分したものが流出重量Wとなる。したがって,湯切り動作時に流出した注湯の流出重量Wbは(10)式となる.
【0024】
【数7】
ここで,fqは取鍋3の出湯口上部溶湯高さhから(5)式を用いて流量qf空間へ写像する写像関数である。また,tsは湯切り動作開始時刻であり,tfは注湯終了時刻である。また,(10)式に(9)式の仮定を代入すると(11)式となる。
【0025】
【数8】
つぎに,湯切り時の取鍋3の後傾動作パターンはあらかじめ決められているという条件から,取鍋3の傾動角速度wは一意であり,湯切り時の傾動角度qb(t)は(9)式より,湯切り開始時の傾動角度qsに依存する。
【0026】
【数9】
(6)式において,取鍋3内の溶湯表面積A,および出湯口下部体積Vsは取鍋3の傾動角度に依存し,qfは取鍋3の出湯口上部溶湯高さhに依存する。また,(9)式の仮定を考慮する。したがって,(12)式,および取鍋3の傾動角速度wは一意であることから,湯切り時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhbは(13)式に示すように湯切り開始時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhsと取鍋3の傾動角度qsによって決定される。
【0027】
【数10】
ここで,fhは湯切り開始時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhs,および取鍋3の傾動角度qsから(6)式を用いて湯切り時の取鍋3の出湯口上部溶湯高さhb空間へ写像する写像関数である。(13)式を(11)式に代入することで,(14)式が得られる。
【0028】
【数11】
(14)式より,湯切り時の取鍋3からの溶湯流出重量Wbは、湯切り動作開始時の取鍋3の傾動角度qsと取鍋3の出湯口上部溶湯高さhsに依存することがわかる。このことから,湯切り時の溶湯流出重量は、湯切り時に傾動角度と溶湯高さを取得することで,予測することができる。
【0029】
しかし,溶湯流出重量予測制御システムを構築する際に,(14)式を実時間処理するが要求されるが,(14)式は(6)式の微分方程式を境界条件である取鍋3の傾動角度qsと溶湯高さhsを用いて求解する必要があり,実時間処理は困難である。そこで,(14)式を多項式近似することで実時間処理を可能にする。湯切り開始時の傾動角度qsを固定して,取鍋3の出湯口上部溶湯高さhsを変動させた場合の溶湯流出重量Wbqの多項式近似を(15)式に示す。
【0030】
【数12】
そして,湯切り開始時の取鍋3の傾動角度qsを変動させて,それぞれの傾動角度qsに(15)式による多項式近似を行い,得られた係数aiを(16)式のように多項式近似を行う。
【0031】
【数13】
(16)式を(15)式に代入することにより,(17)式が得られる。
【0032】
【数14】
(17)式の多項式より,湯切り時の取鍋3からの溶湯流出重量Wbを実時間処理で予測することができる。 そして,注湯中の溶湯流出重量Wと(17)式によって予測された湯切り時の溶湯流出重量Wbが(18)式に示す条件を満たした時点で湯切り動作を開始する。
【0033】
【数15】
【0034】
ここで,溶湯流出重量予測制御システムのフローチャートを図7に示す。図7の制御システムでは,まず,取鍋3が前傾動作を開始する。そして,取鍋3が溶湯流出開始傾動角度に到達し,取鍋3内の溶湯が流出する。溶湯流出重量が判定重量WAに到達した時点で,取鍋3の傾動を停止させる。(17)式の湯切り時の溶湯流出重量予測,および(18)式の湯切り動作開始判別式を実行し,(18)式を満たした時点で湯切りを開始する。このプロセスにより,目標溶湯流出重量へ高精度に注湯することができる。ここで,(17),(18)式の実行において,出湯口上部溶湯高さh,傾動角度q,注湯中の溶湯流出重量Wを検出する必要がある。傾動角度はロータリーエンコーダより計測することができるが,出湯口上部溶湯高さの計測は困難であり,注湯中の溶湯流出重量はロードセルで計測できるが,ロードセルの応答遅れやノイズの影響で精度良く計測することができない。そこで,注湯状態推定システムを構築し,注湯状態量である出湯口上部溶湯高さh,注湯中の溶湯流出重量Wを推定する。
【0035】
注湯状態量推定システムは、溶湯流出重量予測制御システムで必要な注湯状態量を推定する。そして、この注湯状態量推定システムを構築すると、本システムは、拡張カルマンフィルタを用いた注湯状態量推定を行う。注湯状態量推定システムの構築に対して,自動注湯プロセスのモデリングを行う。
図8に自動注湯プロセスのブロック線図を示す。
図8において,取鍋傾動用モータPmに動作指令uが与えられると取鍋3が傾動角速度w,傾動角度qで傾動する。取鍋傾動用モータモデルを(1)式に示す。
【0036】
【数16】
ここで,Tmtは取鍋傾動用モータの時定数,Kmtはゲイン定数である.取鍋3が傾動することで,取鍋3内の溶湯が流出する。
この注湯プロセスPfは,後述の(5),(6)式に示されている。
【0037】
注湯プロセスにおいて,表面張力などの影響による応答遅れをむだ時間Lpで示している。拡張カルマンフィルタにむだ時間を導入するために,(3),(3)式に示すような1次系のパデ近似によりむだ時間を表現する.
【0038】
【数17】
ここで、qf(h(t))は時刻tにおける注湯流量であり,qxはむだ時間を一次系のパデ近似で表現した際の状態量であり,qeは時刻t-Lqにおける注湯流量となる。
【0039】
(6)式において,qe(t)=qf(h(t-Lp))として代入する。また,注湯流量qfを時間積分し,体積から重量変換することで,(7)式に示すように溶湯流出重量Wが得られる。(7)式においても,(6)式と同様に注湯流量のむだ時間をqe(t)=
qf(h(t-Lp))として代入する。一方,取鍋傾動用のサーボモータ4への動作指令は,取鍋傾動角度・位置同期制御システムに用いられる。同期制御Kzは,(1),(2)式に示す。そして,後述の図3に示す取鍋位置制御にて,取鍋昇降用サーボモータPzへ動作指令uzが与えられる。
取鍋昇降用モータモデルを(22)式に示す.
【0040】
【数18】
ここで,Tmzは取鍋昇降用サーボモータ5の時定数,Kmzはゲイン定数,vzは取鍋昇降速度,azは取鍋昇降加速度である。
【0041】
取鍋位置同期化制御システムによって取鍋3が昇降動作を行う。この昇降動作が,図1に示す自動注湯装置に取り付けられたロードセルより計測される溶湯流出重量データに重畳される。Waは溶湯が取鍋3から流出する前のロードセル9の初期ばね上荷重であり,取鍋3から溶湯が流出することにより,荷重が軽減される。また,gは重力加速度である。溶湯流出重量と取鍋3の昇降動作がロードセル9の動特性を経て,計測溶湯流出重量WLとなる。ロードセルモデルを(5)式に示す。
【0042】
【数19】
ここで,TLはロードセル時定数である。
【0043】
(6),(7)式,および(19)〜(23)式を用いて,自動注湯プロセスを状態方程式で示すと(24)式となり,出力方程式は(25)式となる。
【0044】
【数20】
ここで,(24)式の入力ベクトルu(t)はu(t)=(u(t) uz(t))Tである。
(24),(25)式に示す自動注湯プロセスモデルに対して,拡張カルマンフィルタによる注湯状態量推定システムを構築する。まず,オイラー法を用いて(24),(25)式の微分方程式を(26),(27)式に示す差分方程式へ変換する。
【0045】
【数21】
ここで,kはサンプリング番号であり,DTはサンプル時間である。時刻tとは,t=kDTの関係がある。また,入力ベクトルはu(k)=(u(k) uz(k))Tである。(26),(27)式に対して,拡張カルマンフィルタは(28),(29)式のように構成される。
【0046】
【数22】
ここで,K(k)はカルマンゲインである。推定状態変数zenとzepは,演繹的状態変数と帰納的状態変数を示す。そして,(28),(29)式に対して,つぎのように状態推定が行われる。
時間更新:
【0047】
【数23】
線形化:
【0048】
【数24】
計測更新:
【0049】
【数25】
カルマンゲイン:
【0050】
【数26】
線形化:
【0051】
【数27】
ここで,Q,Rはシステムノイズ,および観測ノイズの共分散行列を示し,Pは推定状態量誤差の共分散行列である。(30)〜(36)式のプロセスを実行することで状態量zの推定ができる。また,注湯状態量推定システムは,取鍋傾動角度が出湯開始角度に到達してから実行される。出湯開始角度qspは出湯前のロードセルによって計測される取鍋内溶湯重量Wlqから(37)式のように推定される。
【0052】
【数28】
ここで,fvsは傾動角度qにおける取鍋出湯口下部の溶湯体積Vsから傾動角度qへ写像する写像関数である。(37)式において推定誤差があった場合においても拡張カルマンフィルタは初期値誤差として誤差0へ収束する。
拡張カルマンフィルタによって推定された状態量zeにおいて,出湯口上部溶湯高さheと溶湯流出重量Weが溶湯流出重量予測制御システムに用いられる。
【実施例】
【0053】
実験に用いた取鍋の内側形状と出湯口形状を図9に示す。
図9の取鍋形状より,傾動角度qに対する取鍋出湯口下部の溶湯体積Vs,溶湯表面積Aを求めると図10となる.図10に示す取鍋出湯口下部の溶湯体積と溶湯表面積の関係は,数値積分を用いて求めることができる。または,CADソフトを用いて求めることもできる。ここで,(37)式のfvsは,図10(a)の傾動角度q取鍋出湯口下部の溶湯体積Vsの関係の逆写像である.そして,出湯口での溶湯高さhと流量係数を1とした注湯流量qfの関係を図11に示す。図11の関係は,(5)式より求めることができる。また,流量係数は同定実験よりc=0.64,表面張力による溶湯流動の応答遅れLp=0.45[s],密度r=103[kg/m3]とする。これらのパラメータを自動注湯プロセスモデルに与える。
【0054】
同定実験より,取鍋傾動用モータの時定数Tmt=0.01[s],ゲイン定数Kmt=1.0[deg/sV],取鍋昇降用モータの時定数Tmz=0.01[s],ゲイン定数Kmz=1.0[m/sV]とする。これらを各モータモデルに与える。また,ロードセルの時定数は同定実験より,TL=0.159[s]とする。
【0055】
対象溶湯を水として実施した実験結果を図12に示す。前傾傾動角速度は0.5[deg/s],後傾角速度は2.0[deg/s]で注湯動作を行う。目標流出重量は3.0[kg],取鍋前傾動停止重量は1.0[kg]である。
図12において,(a)は拡張カルマンフィルタによって推定された傾動角速度,(b)は傾動角度,(c)取鍋昇降速度,(d)は取鍋昇降位置,(e)は出湯口上部液体高さ,(f)は液体流出重量である。また,(f)において,細線はロードセルによって計測された計測液体流出重量であり,太線は推定液体流出重量である。拡張カルマンフィルタにより,液体状態量が推定できていることが確認できる。また,図12(f)において,計測液体流出重量はノイズの影響や取鍋昇降動作の影響,ロードセル動特性が重畳されており,実際の液体流出重量の計測が困難であった。これに対して,推定液体流出重量はノイズや取鍋昇降動作の影響を低減し,ロードセル動特性による応答遅れを補償していることが確認できる。推定された注湯状態量を用いて,液体流出重量予測制御を行っているため,目標液体流出重量3.0[kg]に対して,実際の液体流出重量3.05[kg]と高精度に注湯できていることがわかる。
【0056】
目標液体流出重量や液体流出開始傾動角度などの注湯条件を変更した場合における注湯精度を確認する。目標液体流出重量5.0[kg]とし,異なる液体流出開始傾動角度とした注湯実験による液体流出重量を図13(a)に示し,目標液体流出重量10.0[kg]とした注湯実験による液体流出重量を図13(b)に示す。図13(a)(b)において,破線は目標液体流出重量に対して,誤差±3[%]の領域を示しており,丸プロット点は実験により得られた液体流出重量である。異なる目標液体流出重量や液体流出開始傾動角度においても目標液体流出重量に対して0.1[kg]程度の誤差であり,異なる注湯条件においても高精度に注湯できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入する方法であって,
ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,
前記取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,
当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始することを特徴とする取鍋傾動式自動注湯方法。
【請求項2】
前記取鍋の傾動動作に同期させて取鍋を前後,昇降動作させ,出湯口を取鍋の傾動中心にすることを特徴とする取鍋傾動式自動注湯方法。
【請求項3】
注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入するシステムであって,
取鍋から鋳型に流出する溶湯の注湯流量モデルを記憶する記憶手段と,
前記取鍋の傾動動作に同期させて取鍋を前後移動、昇降移動させ,取鍋の出湯口を傾動中心にする演算手段と,
注湯動作開始前にロードセルによって計測される前記取鍋内の溶湯重量から、取鍋からの溶湯の流出を開始する取鍋の傾動角度を換算する演算手段と,
ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される前記取鍋の傾動角度,取鍋の昇降移動位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと前記取鍋から流出した溶湯の重量を推定する演算手段と,
後傾動作開始以降に前記取鍋から流出する溶湯の重量を算出する演算手段と,
ロードセルによって計測される前記取鍋内の溶湯重量を取鍋から鋳型に流出する溶湯の流出重量に換算する演算手段と,
前記取鍋の前傾動から後傾動までの最終溶湯流出重量が後傾動の動作開始時の溶湯流出重量と後傾動の動作開始以降の溶湯流出重量との和として,前記最終溶湯流出重量を算出する演算手段と,
当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定する判定手段と、
を具備したことを特徴とする取鍋用傾動制御システム。
【請求項4】
注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入するための制御プログラムを記憶した記憶媒体であって,
ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,
前記取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,
当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始することを特徴とする取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項1】
注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入する方法であって,
ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,
前記取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,
当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始することを特徴とする取鍋傾動式自動注湯方法。
【請求項2】
前記取鍋の傾動動作に同期させて取鍋を前後,昇降動作させ,出湯口を取鍋の傾動中心にすることを特徴とする取鍋傾動式自動注湯方法。
【請求項3】
注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入するシステムであって,
取鍋から鋳型に流出する溶湯の注湯流量モデルを記憶する記憶手段と,
前記取鍋の傾動動作に同期させて取鍋を前後移動、昇降移動させ,取鍋の出湯口を傾動中心にする演算手段と,
注湯動作開始前にロードセルによって計測される前記取鍋内の溶湯重量から、取鍋からの溶湯の流出を開始する取鍋の傾動角度を換算する演算手段と,
ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される前記取鍋の傾動角度,取鍋の昇降移動位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと前記取鍋から流出した溶湯の重量を推定する演算手段と,
後傾動作開始以降に前記取鍋から流出する溶湯の重量を算出する演算手段と,
ロードセルによって計測される前記取鍋内の溶湯重量を取鍋から鋳型に流出する溶湯の流出重量に換算する演算手段と,
前記取鍋の前傾動から後傾動までの最終溶湯流出重量が後傾動の動作開始時の溶湯流出重量と後傾動の動作開始以降の溶湯流出重量との和として,前記最終溶湯流出重量を算出する演算手段と,
当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定する判定手段と、
を具備したことを特徴とする取鍋用傾動制御システム。
【請求項4】
注湯プロセスを遂行するプログラムを予め設定したコンピュータによって制御されるサーボモータにより所定の形状の出湯口を有する取鍋を前傾動作後,後傾動作して鋳型に取鍋内溶湯を注入するための制御プログラムを記憶した記憶媒体であって,
ロードセルによって計測される取鍋から流出の溶湯の重量と、前記サーボモータへの入力電圧,ロータリーエンコーダによって計測される取鍋傾動角度,取鍋昇降方向位置から、拡張カルマンフィルタを用いて前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さと取鍋から流出する溶湯の重量を推定し,
前記取鍋の傾動角度と拡張カルマンフィルタにより推定される前記出湯口から上部に位置する溶湯の高さにより予測される後傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量と、拡張カルマンフィルタにより推定される取鍋から流出の溶湯の重量との和を最終溶湯流出重量として予測し,
当該予測した最終溶湯流出重量が規定流出重量以上か否かを判定したのち,該判定結果に基づいて取鍋の後傾動の動作を開始することを特徴とする取鍋用傾動制御プログラムを記憶した記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−253527(P2010−253527A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108601(P2009−108601)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
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