説明

受信装置、受信信号処理方法及び通信システム

【課題】周波数多重信号を受信する受信装置の装置コスト低減を目的とする。
【解決手段】所定の帯域幅を有する個別回線信号が前記帯域幅以上の一定の周波数間隔で連続あるいは不連続に配置された周波数多重信号を受信する装置であって、前記周波数多重信号を受信する受信手段と、所定の個別回線信号が、前記周波数間隔の自然数倍の中心周波数を有する低周波信号、あるいは当該中心周波数より大きく且つサンプリング定理を満足するような中心周波数を有する低周波信号となるように前記周波数多重信号を周波数変換する周波数変換手段と、前記低周波信号から個別回線信号に対応する個別低周波信号を個別受信信号として選択的に弁別する濾波手段と、前記周波数間隔に相当するサンプリング周波数で前記個別低周波信号を各々サンプリングする複数のA/D変換手段と、該各A/D変換手段の出力信号に所定の受信処理を施す信号処理手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、受信信号処理方法及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplex)方式は、所定の周波数帯域を分割して複数の回線に割り当て、各回線の信号(以下、個別回線信号という)を周波数多重信号として送受信する方式である。図7は、このような周波数分割多重方式の内、所定の周波数帯域を等分して複数の個別回線信号に割り当てた場合の周波数多重信号の構成を示すものである。この図に示すように、周波数多重信号Fは、各々に同一の帯域幅fwcを有すると共に中心周波数fc1,fc2,fc3,……,fcnが所定の周波数間隔fint(fint≧fwc)で連続的に配置された複数(n個)の個別回線信号k1〜knから構成されている。なお、図7において、fwsysは無線通信システムが占有する周波数帯域幅であり、fαは無線通信を実現するための任意の周波数である。
【0003】
図8は、上記周波数多重信号Fの受信装置の第1構成例を示すブロック図である。この受信装置は、アンテナAで捉えた上記周波数多重信号Fを個別回線信号k1〜kn毎に設けられたミキサB1〜Bnに並行して供給することによりベースバンド信号t1〜tn毎に周波数変換し、該ベースバンド信号t1〜tnを各ミキサB1〜Bnの後段に各々設けられたバンドパスフィルタD1〜Dnに供給することにより各個別回線信号k1〜knに対応するベースバンド信号u1〜un(個別ベースバンド信号)を選択的に弁別し、さらに当該個別ベースバンド信号u1〜unを上記バンドパスフィルタD1〜Dnの後段に各々設けられたA/DコンバータE1〜Enに供給することにより各個別ベースバンド信号u1〜un(アナログ信号)に対応する個別受信データd1〜dn(デジタル信号)に変換し、各個別受信データd1〜dnをデジタル信号処理部Gでデジタル処理するものである。また、ローカル信号発生器C1〜Cnは、各ミキサB1〜Bn毎に設けられており、個別回線信号k1〜knをベースバンド信号t1〜tnに周波数変換するように周波数が各個別回線信号の中心周波数数fc1,fc2,fc3,……,fcnと同一に設定されたローカル信号を各ミキサB1〜Bnにそれぞれ出力する。例えば、特表2000−506689号公報には、上記と同様に周波数多重信号Fに含まれる個別回線信号の数だけミキサ等の部品が複数使用されている受信装置について開示されている。
【0004】
また、図9は、周波数多重信号Fの受信装置の第2構成例を示すブロック図である。この受信装置は、アンテナAで捉えた周波数多重信号Fを受信してミキサBに出力し、ミキサBは、周波数多重信号Fとローカル信号発生器Cから入力されるローカル信号sとをミキシングして周波数変換を行い、ベースバンド信号tをローパスフィルタDに出力する。ローカル信号発生器Cは、周波数多重信号Fをベースバンド周波数帯まで周波数変換するための周波数に設定されたローカル信号sをミキサBに出力する。ローパスフィルタDは、ベースバンド信号tの高周波成分を除去してA/DコンバータEに出力し、A/DコンバータEは、フィルタリング後のベースバンド信号t(アナログ信号)をデジタル信号dに変換してデジタル信号処理部Gに出力し、デジタル信号処理部Gは、デジタルバンドパスフィルタD’1〜D’nによりデジタル信号dを周波数多重信号Fに含まれる各個別回線信号k1〜knに対応する個別受信データd1〜dnに弁別した後、当該個別受信データd1〜dnの信号処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−506689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記第1構成例では、周波数多重信号Fに含まれる各個別回線信号の数に応じて、ミキサB1〜Bn、ローカル信号発生器C1〜Cn、バンドパスフィルタD1〜Dn及びA/DコンバータE1〜En等のアナログ高周波部品を多数必要とし、回路構成が複雑になり、装置コストが増大するという問題がある。
【0007】
一方、第2構成例では、第1構成例と比較して部品点数を減らすことができるが、A/DコンバータEのサンプリング周波数を、少なくともベースバンド周波数帯(若しくはIF周波数帯)まで周波数変換された周波数多重信号Fの最大周波数の2倍に設定する必要がある(第1構成例では、分離された各個別ベースバンド信号毎の最大周波数の2倍に設定すれば良い)。従って、極めて高速なA/DコンバータEを必要とし、さらに後段のデジタル信号処理部Gも動作速度の速いものを使用しなければならず、比較的高価な部品が要求されることになり、結局装置コストが増大するという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、周波数多重信号を受信する受信装置の装置コスト低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の受信装置では、所定の帯域幅を有する個別回線信号が前記帯域幅以上の一定の周波数間隔で連続あるいは不連続に配置された周波数多重信号を受信する装置であって、前記周波数多重信号を受信する受信手段と、前記個別回線信号が、前記周波数間隔の中心周波数を有する低周波信号、あるいは当該中心周波数より大きく且つサンプリング定理を満足するような中心周波数を有する低周波信号となるように前記周波数多重信号を周波数変換する周波数変換手段と、前記低周波信号から個別回線信号に対応する個別低周波信号を個別受信信号として選択的に弁別する濾波手段と、前記個別回線信号に対応した個別低周波信号を各々サンプリングする複数のA/D変換手段と、該各A/D変換手段の出力信号に所定の受信処理を施す信号処理手段と、を具備し、前記複数のA/D変換手段の全ては、同一のサンプリング周波数で前記個別低周波信号を各々サンプリングする、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明では、受信装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記複数のA/D変換手段は、前記周波数間隔と同一であるサンプリング周波数で前記個別低周波信号を各々サンプリングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受信する周波数多重信号Fに含まれる個別回線信号k1〜knが一定の周波数間隔fintで連続あるいは不連続に配置され、且つ各個別回線信号k1〜knの帯域幅fwc(fint≧fwc)が同一であれば、サンプリング周波数fsを周波数間隔fintと同一に設定することで、A/Dコンバータを全て同一のサンプリング周波数fsに設定することが可能となる。さらに、このサンプリング周波数fsはベースバンド信号または中間周波信号の周波数と同程度であるのでA/Dコンバータを高速化する必要がない。また、A/Dコンバータのサンプリング周波数fsが低ければ、後段の信号処理手段の動作速度も低く抑えることができる。従って、A/Dコンバータ及び信号処理手段の部品コストを低減することが可能である。一方、本受信装置では、フィルタ(濾波手段)の前段に設けられている周波数変換手段は1個で良く、従来より部品点数を少なくでき、装置コスト低減に寄与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態における受信装置の構成ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態における個別ベースバンド信号u1〜unの周波数特性図である。
【図3】本発明の第1実施形態において、個別回線信号k2を間引いた場合の周波数多重信号Fの構成説明図である。
【図4】周波数多重信号Fに含まれる個別回線信号k2を間引いた場合の受信装置の構成ブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態における受信装置の構成ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態における2倍オーバーサンプリングの原理説明図である。
【図7】周波数多重信号Fの構成説明図である。
【図8】従来の受信装置の第1構成例である。
【図9】従来の受信装置の第2構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る受信装置の機能構成を示すブロック図である。この図に示すように、本受信装置は、アンテナ(受信手段)A、ミキサB、ローカル信号発生器C、バンドパスフィルタ(濾波手段)D1〜Dn、A/Dコンバータ(A/D変換手段)E1〜En及びデジタル信号処理部(信号処理手段)Gから構成されている。また、上記ミキサB及びローカル信号発生器Cは周波数変換手段を構成している。なお、本受信装置は、図7に示す周波数多重信号Fの受信及び信号処理を行うものである。
【0014】
図1において、アンテナAは、上記周波数多重信号Fを捉えてミキサBに出力する。ローカル信号発生器Cは、周波数多重信号Fの個別回線信号k1の中心周波数fc1と同一に設定されたローカル周波数を有するローカル信号sをミキサBに出力する。ミキサBは、アンテナAによって捉えられた周波数多重信号Fと、ローカル信号発生器Cから入力されるローカル信号sとをミキシング(乗算)して周波数変換を行い、当該周波数変換後の周波数多重信号(ベースバンド信号)tをバンドパスフィルタD1〜Dnに出力する。
【0015】
バンドパスフィルタD1は、ベースバンド信号tの個別回線信号k1に対応するベースバンド信号(個別ベースバンド信号)u1のみを通過させるよう、その通過帯域周波数が設定されており、上記個別ベースバンド信号u1をA/DコンバータE1に出力する。バンドパスフィルタD2〜Dnも同様に各個別回線信号k2〜knに対応する個別ベースバンド信号u2〜unのみを通過させるよう、その通過帯域周波数が各々設定されており、上記信号個別ベースバンド信号u2〜unをそれぞれA/DコンバータE2〜Enに出力する。
【0016】
A/DコンバータE1は、周波数多重信号Fの周波数間隔fintと同一に設定されたサンプリング周波数fsで、個別ベースバンド信号u1をサンプリングし、アナログ信号である個別ベースバンド信号u1を個別受信データd1に変換してデジタル信号処理部Gに出力する。A/DコンバータE2〜Enも同様に、周波数間隔fintと同一に設定されたサンプリング周波数fsで、個別ベースバンド信号u2〜unをサンプリングして個別受信データd2〜dnにそれぞれ変換してデジタル信号処理部Gに出力する。デジタル信号処理部Gは、上記個別受信データd1〜dnに所定のデジタル信号処理を行う。
【0017】
次に、このように構成された第1実施形態における受信装置の動作について説明する。
【0018】
まず、周波数多重信号Fは、アンテナAによって捉えられた後、ミキサBによってローカル周波数fc1を有するローカル信号sとミキシングされ、ベースバンド信号tに周波数変換される。ここで、ベースバンド信号tにおいて、周波数変換後の各個別回線信号k1〜knの中心周波数をfb1,fb2,fb3,……,fbnとすると、バンドパスフィルタD1〜Dnによってベースバンド信号tから弁別された各個別回線信号k1〜knに対応する個別ベースバンド信号u1〜unは、図2に示すような周波数特性を持つ。
【0019】
図2(a)は、個別回線信号k1に対応する個別ベースバンド信号u1の周波数特性である。図2(b)は、個別回線信号k2に対応する個別ベースバンド信号u2の周波数特性である。図2(c)は、個別回線信号k3に対応する個別ベースバンド信号u3の周波数特性である。図2(d)は、個別回線信号knに対応する個別ベースバンド信号unの周波数特性である。
【0020】
図2(a)に示すように、個別ベースバンド信号u1の中心周波数fb1は0Hzとなり、また、周波数間隔fint≧帯域幅fwcであるので、個別ベースバンド信号u1の最大周波数(中心周波数fb1+帯域幅fwc/2)は、周波数間隔fint/2以下となる。従って、A/DコンバータE1のサンプリング周波数fsを周波数間隔fintと同一に設定することにより、個別ベースバンド信号u1の最大周波数の2倍以上のサンプリング周波数fsを設定したことになり、結果としてサンプリング定理を満足することになる。すなわち、A/DコンバータE1のサンプリング周波数fsを、ベースバンド周波数帯の値に設定可能となる。
【0021】
一方、図2(b)に示すように、個別ベースバンド信号u2の中心周波数fb2は、周波数間隔fint、つまりサンプリング周波数fsと同一となる。この場合、サンプリング定理より、中心周波数fb2がサンプリング周波数fsの自然数倍であれば、図2(a)と同様に、個別ベースバンド信号u2の中心周波数fb2は0Hzへ畳み込まれ、結局、個別ベースバンド信号u2の最大周波数は、周波数間隔fint/2以下として扱うことができる。すなわち、本来ならば個別ベースバンド信号u2の最大周波数は、中心周波数fb2+帯域幅fwc/2となるので、この最大周波数の2倍以上をサンプリング周波数fsとして設定する必要があるが、上記のように中心周波数fb2がサンプリング周波数fsの自然数倍であれば、個別ベースバンド信号u2の最大周波数は、周波数間隔fint/2以下として扱うことができ、A/DコンバータE2のサンプリング周波数fsをA/DコンバータE1のサンプリング周波数fsと同一に設定することが可能となるのである。
【0022】
同様に、図2(c)に示すように、個別ベースバンド信号u3の中心周波数fb3は、2・fint、つまりサンプリング周波数fsの2倍と同一となるが、この場合も、中心周波数fb3がサンプリング周波数fsの自然数倍であるので、個別ベースバンド信号u3の中心周波数fb3は0Hzへ畳み込まれ、結局、個別ベースバンド信号u3の最大周波数は、周波数間隔fint/2以下として扱うことができる。すなわち、A/DコンバータE3のサンプリング周波数fsをA/DコンバータE1及びE2のサンプリング周波数fsと同一に設定することが可能となる。そして、図2(d)に示すように、個別ベースバンド信号unの中心周波数fbnは、(n−1)・fint、つまりサンプリング周波数fsの(n−1)倍と同一となるが、この場合も、中心周波数fbnがサンプリング周波数fsの自然数倍であるので、個別ベースバンド信号unの中心周波数fbnは0Hzへ畳み込まれ、結局、個別ベースバンド信号unの最大周波数は周波数間隔fint/2以下として扱うことができ、A/DコンバータE1〜Enのサンプリング周波数fsを、全て同一のサンプリング周波数fsに設定することが可能となる。
【0023】
以上のように、本第1実施形態によれば、受信する周波数多重信号Fが図7に示すような構成、つまり個別回線信号k1〜knが一定の周波数間隔fint(詳細には周波数間隔fintの自然数倍)で連続的に配置され、且つ各個別回線信号k1〜knの帯域幅fwcが周波数間隔fint以下であれば、最も低い周波数の個別回線信号k1をベースバンド信号に周波数変換するローカル信号sを用い、サンプリング周波数fsを周波数間隔fintと同一に設定することで、A/DコンバータE1〜Enを全て同一のサンプリング周波数fsに設定することが可能となる。さらに、このサンプリング周波数fsは、最も低い周波数を有する個別ベースバンド信号u1の最大周波数の2倍以上に設定されるので、高速なA/DコンバータE1〜Enは必要ない。また、このようにA/DコンバータE1〜Enのサンプリング周波数fsが低ければ、後段のデジタル信号処理部Gの動作速度も低く抑えることができる。従って、A/DコンバータE1〜En及びデジタル信号処理部Gの部品コストを低減することが可能である。一方、図1と図8とを比較してわかるように、本受信装置では、バンドパスフィルタD1〜Dnの前段に設けられているミキサBとローカル信号発生器Cとは一組で良く、従来より部品点数を少なくでき、部品コスト低減に寄与することが可能である。
【0024】
また、従来では、A/Dコンバータの量子化ビット数は、各個別ベースバンド信号の取りうる電力全てに対応しなければならないため、例え1個別ベースバンド信号の通信方式がBPSK(Binary Phase Shift Keying)のような比較的振幅を必要としない方式であったとしても、非常に広いダイナミックレンジ(例えば、16bitで100dB以上)を必要とし、消費電力の増大を招いていた。しかしながら、本受信装置によれば、各A/DコンバータE1〜Enの量子化ビット数は、個別ベースバンド信号k1の取りうる電力に対応すれば良いので、ダイナミックレンジを削減することができ、消費電力の低減が可能である。
【0025】
ところで、今日の周波数混線状況では、既存の他システムへ電波障害を与えないため、または既存システムからの障害を回避するために、図3に示すように特定の周波数(図3では個別回線信号k2)を使用しない周波数多重信号Fが必要な場合がある。このように個別回線信号が不連続な配置であっても、図3に示すように周波数間隔fintの整数倍の配置を維持した状態で、障害のある個別回線信号k2を間引けば、図4に示すような受信装置の構成が可能となる。この図のように、個別回線信号k2が間引かれたことによってバンドパスフィルタD2及びA/DコンバータE2を除去することができ、部品点数をさらに少なくすることが可能である。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0026】
図5は、本発明の第2実施形態に係る受信装置の機能構成を示すブロック図である。この図に示すように、本受信装置は、アンテナA、第1ミキサB1、第2ミキサB2、第1ローカル信号発生器C1、第2ローカル信号発生器C2、バンドパスフィルタD1〜D4、A/DコンバータE1〜E4及びデジタル信号処理部Gから構成されている。なお、本受信装置は、A/DコンバータE1〜E4において、2倍のオーバーサンプリングを行うものである。また、図5において、図1と同じ構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0027】
アンテナAは、上記周波数多重信号Fを捕捉して第1ミキサB1及び第2ミキサB2に出力する。第1ローカル信号発生器C1は、周波数多重信号Fの個別回線信号k1の中心周波数fc1と同一に設定されたローカル周波数を有するローカル信号s1を第1ミキサB1に出力する。第2ローカル信号発生器C2は、周波数多重信号Fの個別回線信号k2の中心周波数fc2と同一に設定されたローカル周波数を有するローカル信号s2を第2ミキサB2に出力する。第1ミキサB1は、アンテナAによって捕捉された周波数多重信号Fと、第1ローカル信号発生器C1から入力されるローカル信号s1とをミキシング(乗算)して周波数変換を行い、ベースバンド信号t1をバンドパスフィルタD1及びD3に出力する。また、図示していないが、バンドパスフィルタは周波数多重信号Fに含まれる個別回線信号の数(n個)だけ備えられており、上記ベースバンド信号t1は、奇数番目のバンドパスフィルタD5、D7…に入力されている。第2ミキサB2は、アンテナAによって捕捉された周波数多重信号Fと、第2ローカル信号発生器C2から入力されるローカル信号s2とをミキシング(乗算)して周波数変換を行い、ベースバンド信号t2をバンドパスフィルタD2及びD4に出力する。また、図示していないが、上記ベースバンド信号t2は、偶数番目のバンドパスフィルタD6、D8…に入力されている。
【0028】
バンドパスフィルタD1〜D4は、各個別回線信号k1〜k4に対応する個別ベースバンド信号u1〜u4のみを通過させるよう、その通過帯域周波数が各々設定されており、上記個別ベースバンド信号u1〜u4をそれぞれA/DコンバータE1〜E4に出力する。また、図示していないが、A/Dコンバータもn個備えられており、個別ベースバンド信号u5〜unは、A/DコンバータE5〜Enにそれぞれ入力されている。
【0029】
A/DコンバータE1〜Enは、周波数間隔fintの2倍に設定されたサンプリング周波数fs(=2fint)で、個別ベースバンド信号u1〜unをサンプリングして個別受信データd1〜dnにそれぞれ変換し、デジタル信号処理部Gに出力する。デジタル信号処理部Gは、上記個別受信データd1〜dnに所定のデジタル信号処理を行う。
【0030】
次に、このように構成された第2実施形態における受信装置の動作について説明する。
【0031】
まず、周波数多重信号Fは、アンテナAによって捕捉された後、第1ミキサB1によってローカル周波数fc1を有するローカル信号s1とミキシングされ、ベースバンド信号t1に周波数変換される。ここで、ベースバンド信号t1において、周波数変換後の各個別回線信号k1〜knの中心周波数をfb1,fb2,fb3,……,fbnとすると、バンドパスフィルタD1、D3、D5…によってベースバンド信号t1から弁別された各個別回線信号k1、k3、k5…に対応する個別ベースバンド信号u1、u3、u5…は、図6(a)に示すような周波数特性を持つ。一方、周波数多重信号Fは、第2ミキサB2によってローカル周波数fc2を有するローカル信号s2とミキシングされ、ベースバンド信号t2に周波数変換される。ここで、ベースバンド信号t2において、周波数変換後の各個別回線信号k1〜knの中心周波数をfb1’,fb2’,fb3’,……,fbn’とすると、バンドパスフィルタD2、D4、D6…によってベースバンド信号t2から弁別された各個別回線信号k2、k4、k6…に対応する個別ベースバンド信号u2、u4、u6…は、図6(b)に示すような周波数特性を持つ。
【0032】
図6(a)に示すように、個別ベースバンド信号u1の中心周波数fb1は0Hzとなり、個別ベースバンド信号u1の最大周波数は、周波数間隔fint/2以下となる。従って、A/DコンバータE1のサンプリング周波数fsを周波数間隔fintの2倍に設定することにより、個別ベースバンド信号u1の最大周波数の4倍以上のサンプリング周波数fsを設定したことになり、結果として2倍のオーバーサンプリングを行うことになる。また、A/DコンバータE3、E5…についても、第1実施形態で説明したように、A/DコンバータE1と同様のサンプリング周波数fsを設定することができ、2倍のオーバーサンプリングを行うことが可能である。
【0033】
一方、図6(b)に示すように、個別ベースバンド信号u2の中心周波数fb2’は0Hzとなり、個別ベースバンド信号u2の最大周波数は、周波数間隔fint/2以下となる。従って、A/DコンバータE2のサンプリング周波数fsを周波数間隔fintの2倍に設定することにより、個別ベースバンド信号u2の最大周波数の4倍以上のサンプリング周波数fsを設定したことになり、結果として2倍のオーバーサンプリングを行うことになる。また、A/DコンバータE4、E6…についても、第1実施形態で説明したように、A/DコンバータE2と同様のサンプリング周波数fsを設定することができ、2倍のオーバーサンプリングを行うことが可能である。
【0034】
以上のように、本第2実施形態によれば、周波数多重信号Fを2系統で周波数変換し、一方の系統で奇数番目の個別ベースバンド信号の弁別を行い、他方の系統で偶数番目の個別ベースバンド信号の弁別を行うことで、2倍の周波数間隔(2fint)を有する個別ベースバンド信号を生成している。これにより、各個別ベースバンド信号の最大周波数は、周波数間隔fint/2以下であるので、各A/Dコンバータのサンプリング周波数fsを周波数間隔fintの2倍に設定することにより、各個別ベースバンド信号の最大周波数の4倍以上のサンプリング周波数fsを設定したことになり、結果として2倍のオーバーサンプリングを行うことが可能である。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0036】
(1)上記第1及び第2実施形態では、周波数多重信号Fをベースバンド信号にまで周波数変換したが、これに限らず、中間周波信号に周波数数変換しても良い。ただし、この場合、サンプリング定理を満足するように周波数変換する必要がある。すなわち、周波数変換後の個別ベースバンド信号の最大周波数が周波数間隔fintの1/2以下になるようにしなければならない。この場合も、もちろん、個別ベースバンド信号の中心周波数は、サンプリング周波数fsの自然数倍であることが必須条件である。
【0037】
(2)上記第2実施形態では、2倍のオーバーサンプリングを行う場合について説明したが、2倍に限らず、2倍以上のオーバーサンプリングについても同様に行うことができる。例えば、3倍のオーバーサンプリングを行いたい場合は、ミキサとローカル信号発生器とで構成される周波数変換手段を3系統用意し、系統1では個別ベースバンド信号u1、u4、u7…の弁別を行い、系統2では個別ベースバンド信号u2、u5、u8…の弁別を行い、系統3では個別ベースバンド信号u3、u6、u9…の弁別を行うことで、各系統の周波数間隔は、fintの3倍となる。従って、各A/Dコンバータのサンプリング周波数fsを周波数間隔fintの3倍に設定することにより、各個別ベースバンド信号の最大周波数の6倍以上のサンプリング周波数fsを設定したことになり、結果として3倍のオーバーサンプリングを行うことが可能である。
【0038】
また、例えば4倍のオーバーサンプリングを行いたい場合は、ミキサとローカル信号発生器とで構成される周波数変換手段を4系統用意し、系統1では個別ベースバンド信号u1、u5、u9…の弁別を行い、系統2では個別ベースバンド信号u2、u6、u10…の弁別を行い、系統3では個別ベースバンド信号u3、u7、u11…の弁別を行い、また、系統4では個別ベースバンド信号u4、u8、u12…の弁別を行うことで、各系統の周波数間隔は、fintの4倍となる。従って、各A/Dコンバータのサンプリング周波数fsを周波数間隔fintの4倍に設定することにより、各個別ベースバンド信号の最大周波数の8倍以上のサンプリング周波数fsを設定したことになり、結果として4倍のオーバーサンプリングを行うことが可能である。
【0039】
(3)上記第1及び第2実施形態では、無線通信システムにおける受信装置として説明したが、これに限らず、有線通信システムの受信装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
A…アンテナ、B、B1、B2…ミキサ、C、C1、C2…ローカル信号発生器、D1〜Dn…バンドパスフィルタ、E1〜En…A/Dコンバータ、G…デジタル信号処理部、F…周波数多重信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の帯域幅を有する個別回線信号が前記帯域幅以上の一定の周波数間隔で連続あるいは不連続に配置された周波数多重信号を受信する装置であって、
前記周波数多重信号を受信する受信手段と、
前記個別回線信号が、前記周波数間隔の中心周波数を有する低周波信号、あるいは当該中心周波数より大きく且つサンプリング定理を満足するような中心周波数を有する低周波信号となるように前記周波数多重信号を周波数変換する周波数変換手段と、
前記低周波信号から個別回線信号に対応する個別低周波信号を個別受信信号として選択的に弁別する濾波手段と、
前記個別回線信号に対応した個別低周波信号を各々サンプリングする複数のA/D変換手段と、
該各A/D変換手段の出力信号に所定の受信処理を施す信号処理手段と、
を具備し、
前記複数のA/D変換手段の全ては、同一のサンプリング周波数で前記個別低周波信号を各々サンプリングする
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記複数のA/D変換手段は、前記周波数間隔と同一であるサンプリング周波数で前記個別低周波信号を各々サンプリングすることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−213364(P2010−213364A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152199(P2010−152199)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2005−218928(P2005−218928)の分割
【原出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】