受信装置及び受信方法
【課題】直交する複数のキャリアを周波数多重した信号に対して、周波数誤差を含む基準搬送波で同期検波した場合に、付加情報を用いることなく各キャリアを変調した方式を精度良く自動識別する。
【解決手段】等化手段(4)から出力される信号の振幅の累乗(5)を平均し(6)、等化手段(4)から出力される信号においてキャリア間隔の1乃至N倍離れたキャリア間の積(14−1〜14−N)の平均を求め(16−1〜16−N2)、該平均をもとに変調方式を識別する変調方式識別手段(7)を備える。
【解決手段】等化手段(4)から出力される信号の振幅の累乗(5)を平均し(6)、等化手段(4)から出力される信号においてキャリア間隔の1乃至N倍離れたキャリア間の積(14−1〜14−N)の平均を求め(16−1〜16−N2)、該平均をもとに変調方式を識別する変調方式識別手段(7)を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及び受信方法に関し、特に受信信号の変調方式を自動識別する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
適応変調方式は、電波環境に応じて送信データを変調する方式(変調方式)を選択する通信システムであり、時間とともに電波環境が変動する環境下で、効率良くデータを伝送することができる。例えば、伝送路環境が悪い場合は、BPSK等伝送レートの低い変調方式を使用し、伝送路環境が良い場合は、64QAM等伝送レート高い変調方式を使用する。
【0003】
適応変調方式を適用する場合、受信機は、受信信号を復調するために、受信信号から変調方式を識別する必要がある。この変調方式の識別を誤ると、復調後のデータにバースト的な誤りが生じるので、精度良く変調方式を識別しなければならない。
【0004】
変調方式の識別方法として、送信機が変調方式に関する付加情報を送信して受信機がこの付加情報をもとに変調方式を識別する方法と、付加情報なしで受信機が受信信号から変調方式を自動識別する方法がある。
【0005】
付加情報を伝送する方法は、自動識別する方法に比べて、識別するための処理が容易であるという利点があるが、付加情報を伝送する分の通信効率が劣化してしまう。また、規格化された通信システムに新たな変調方式を追加する際、付加情報の構成を変更、あるいは拡張する必要があるので汎用性に欠ける。
【0006】
付加情報を用いない変調方式識別法が特許文献1や非特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の変調方式識別法は、変調方式毎に受信信号の振幅の標準偏差と位相差の標準偏差が異なることを利用して変調方式を識別している。また、非特許文献1に記載の変調方式識別法は、変調方式間で受信信号の振幅の高次モーメントの値に差があることを利用して変調方式を識別している。
【0007】
上記の変調方式識別法は、時間軸上で情報を伝送する通信システムを想定している。時間軸上で情報を伝送する通信システムにおいて、受信信号を同期検波する際に使用する搬送波の周波数に誤差が含まれる場合、受信する信号点は時間とともに回転する。特許文献1や非特許文献1に記載の技術は、上記の周波数誤差が存在する場合でも変調方式を正確に識別することが可能である。これは、位相が回転しても、受信信号の振幅の標準偏差や位相差の標準偏差、振幅の高次モーメントに影響しないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−64577号公報(第6頁、第1図)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】新保大介、岡育生、阿多信吾著「振幅モーメントによる直交振幅変調方式の識別」、Vol.J90−B,No.12,pp.1326−1329(第1326頁、式(1))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の変調方式識別法をマルチキャリア伝送方式に適用する場合を考える。マルチキャリア伝送方式とは、直交する複数の狭帯域キャリアに信号を乗せて情報を伝送する方式であり、各キャリアの信号は、キャリア間隔毎に振幅0で交差するため、隣接キャリアに影響を及ぼさない。しかし、受信側で同期検波をする際に用いる基準搬送波の周波数に誤差が含まれる場合、周波数誤差の影響により、各キャリアが周波数誤差分だけシフトし、その結果、各キャリアの信号が隣接するキャリアに干渉してしまう。
【0011】
このように、マルチキャリア伝送方式において、周波数に誤差が存在する場合、受信する各信号点が隣接キャリアからの干渉を受ける。このとき、振幅の標準偏差・位相差の標準偏差、及び振幅の高次モーメントの値には、隣接キャリアからの干渉により干渉成分が含まれる。この干渉成分の影響により、特許文献1や非特許文献1に記載の技術では変調方式を誤判定する確率が高くなる。誤判定した変調方式で受信信号を復調すると、復調後のデータに連続的な誤りが生じてしまう。
【0012】
本発明は、振幅の高次モーメントに含まれる干渉成分を推定・除去することで基準搬送波の周波数に誤差が存在する場合でも変調方式を正しく識別することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の受信装置は、
直交する複数のキャリアを予め定められた複数の変調方式のうち何れかの変調方式で変調して周波数多重した信号を受信する受信装置において、
基準搬送波を用いて受信信号を同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波手段から出力される信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域変換手段から出力される信号をもとに伝送路特性を推定する伝送路推定手段と、
前記伝送路推定手段から出力される信号をもとに周波数領域変換手段から出力される信号の歪みを補正する等化手段と、
前記等化手段から出力される信号の振幅の累乗を計算する振幅累乗計算手段と、
前記振幅累乗計算手段から出力される信号を平均する累乗値平均手段と、
前記等化手段から出力される信号においてそれぞれ互いにキャリア間隔の1乃至N倍(Nは1以上の整数)離れたキャリア間の積を計算する第1〜第Nの乗算手段(14−1〜14−N)と、
前記第1乃至第Nの乗算手段のそれぞれに対応して設けられ、対応する乗算手段から出力される各信号の平均を計算する第1乃至第Nの乗算値平均手段と、
前記第1乃至第Nの乗算値平均手段から出力される信号をもとに変調方式を識別する変調方式識別手段と、
前記等化手段から出力される信号を、前記変調方式識別手段で判定された変調方式で復調する復調手段を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャリアの振幅の累乗の平均値と隣接キャリア間の積の平均値を用いることで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別でき、その結果、正しい変調方式で受信信号を復調するので復調後のデータに連続的な誤りは生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】伝送路推定を行うためのパイロットキャリアの配置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1の受信装置を示すブロック図である。
【図3】(a)及び(b)は、周波数分割多重する信号の周波数誤差とキャリア間干渉の関係を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は、振幅の高次モーメントを示す図である。
【図5】図2の変調方式識別手段の一構成例を示すブロック図である。
【図6】隣接キャリアからの干渉係数を示す図である。
【図7】実施の形態1における振幅モーメント、及び干渉成分の推定値を示す図である。
【図8】図2の変調方式識別手段の別の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態2の受信装置を示すブロック図である。
【図10】図9の変調方式識別手段の一構成例を示すブロック図である。
【図11】(a)及び(b)は、基準搬送波周波数の誤差量とキャリア間干渉の大きさの関係を示した図である。
【図12】実施の形態2における第1及び第2の干渉計算手段の入力と出力の関係を示す図である。
【図13】図9の変調方式識別手段の別の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、直交する複数の狭帯域キャリアを多重化して得られるシンボルを伝送単位とする信号を受信するものとする。また、以下に説明する実施の形態では、図1に示すように、周期的にパイロットキャリアが挿入されるものとする。なお、このパイロットキャリアは、後で述べる伝送路推定を行う際に利用する信号であり、変調方式に関する情報を含む信号ではない。
【0017】
実施の形態1.
図2に本発明の実施の形態1の受信装置を示すブロック図である。
図示の受信装置は、同期検波手段1と、周波数領域変換手段2と、伝送路推定手段3と、等化手段4と、振幅累乗計算手段5と、累乗値平均手段6と、第1の遅延手段12−1と、第2の遅延手段12−2と、第1の乗算手段14−1と、第2の乗算手段14−2と、第1の乗算値平均手段16−1と、第2の乗算値平均手段16−2と、変調方式識別手段7と、復調手段8とを備えている。
【0018】
同期検波手段1は、受信信号と基準搬送波を乗算した後、ローパスフィルタで高周波成分を抑圧することで、同期検波を行う。
周波数領域変換手段2は、同期検波手段1から出力される信号をシンボル毎に周波数領域に変換する。
伝送路推定手段3は、周波数領域変換手段2から出力される、周波数領域に変換された信号からパイロットキャリアを抽出し、パイロットキャリアをもとに伝送路特性を推定する。
等化手段4は、伝送路推定手段3から出力される、伝送路推定結果を表す信号をもとに、周波数領域変換手段2から出力される信号(受信信号)の歪みを補正する。
【0019】
同期検波を行う際に利用する基準搬送波の周波数に誤差が含まれない場合、等化手段4による等化結果は、図3(a)に示すように、隣接キャリア同士で直交している。即ち、各キャリアの信号は、キャリア間隔毎に振幅0で交差するため、隣接キャリアに影響を及ぼさない。一方、基準搬送波に周波数オフセットが含まれる場合、等化結果は、図3(b)に示すように、基準搬送波の周波数誤差分だけシフトし、その結果隣接キャリア間で干渉が生じる。
【0020】
振幅累乗計算手段5は、等化手段4から出力される信号、即ち各キャリアの振幅の累乗(a乗)を計算する。上記の「a」は1より大きい値、例えば2以上の整数である。
【0021】
累乗値平均手段6は、振幅累乗計算手段5から出力される信号を平均する。即ち、累乗値平均手段6は、シンボル内の全キャリア、もしくは周期的に選択したキャリアの平均を計算した後、この結果をシンボル方向に平均する。
累乗値平均手段6から出力される信号、即ち等化手段4から出力される信号のa乗の平均をa次の振幅モーメントと呼ぶ。基準搬送波の周波数に誤差が含まれる場合、振幅モーメントにキャリア間干渉による干渉成分が含まれる。
【0022】
ここで、振幅モーメントについて説明する。図4(a)にキャリア間干渉が存在しない場合の、16QAMと64QAMの振幅a次モーメントを示す(非特許文献1参照)。図4(a)より、次数aが大きくなるにつれて、変調方式間で振幅モーメントの差が大きくなることがわかる。非特許文献1に記載の技術は、この特性を利用して変調方式を識別する。具体的には、次数を10としたとき、図4(a)に示すように閾値を決める。そして、受信信号から計算された振幅の10次モーメントと閾値を比較して、閾値より大きいときは64QAM、小さいときは16QAMと判定する。
【0023】
次に、基準搬送波の周波数誤差の影響によりキャリア間干渉が生じる場合の振幅モーメントを図4(b)に示す。干渉成分がある場合の振幅モーメントは、キャリア間干渉の影響により干渉が存在しない場合の振幅モーメントより大きくなる。受信機は、基準搬送波の周波数に誤差がないものとして識別するので、閾値は、図4(a)と同じ値になる。その結果、16QAMは64QAMと誤判定しやすくなる。
【0024】
本発明では、振幅モーメントに含まれる干渉成分を推定・除去することで変調方式の識別性能の向上を図る。以降、干渉成分の推定・除去、及び変調方式の識別について説明する。
【0025】
第1の遅延手段12−1は、等化手段4から出力される信号を1キャリア分だけ遅延させる。第2の遅延手段12−2は、第1の遅延手段12−1から出力される信号を1キャリア分だけ遅延させる。
【0026】
第1の乗算手段14−1は、等化手段4から出力される信号と第1の遅延手段12−1から出力される信号の乗算を計算する。第2の乗算手段14−2は、等化手段4から出力される信号と第2の遅延手段12−2から出力される信号の乗算を計算する。これにより、乗算手段14−1は、等化手段4から出力される信号における互いに隣り合う(互いにキャリア間隔の1倍隔てられたキャリア相互間の積を計算し、乗算手段14−2は、等化手段4から出力される信号における互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア相互間の積を計算する。
【0027】
第1の乗算値平均手段16−1は、第1の乗算手段14−1から出力される信号を平均する。第2の乗算値平均手段16−2は、第2の乗算手段14−2から出力される信号、即ち互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア相互間の積を平均する。これにより、第1の乗算値平均手段16−1は、互いに隣り合う(互いにキャリア間隔の1倍隔てられたキャリア相互間の積をキャリア方向、及びシンボル方向に平均し、第2の乗算値平均手段16−2は、互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア相互間の積をキャリア方向、及びシンボル方向に平均し、平均値を出力する。
【0028】
なお、本実施の形態において、累乗値平均手段6、並びに乗算値平均手段16−1及び16−2は、まずシンボル内の全キャリアの平均を計算し、この平均結果をシンボル方向に平均しているが、周期的、あるいは非周期的に選択されたキャリアの平均を計算し、この平均結果をシンボル方向に平均してもよい。
【0029】
変調方式識別手段7は、累乗値平均手段6、並びに第1及び第2の乗算値平均手段16−1、16−2から出力される信号をもとに各キャリアを変調した方式を識別する。
復調手段8は、変調方式識別手段7で判定された変調方式で等化手段4から出力される信号を復調する。
【0030】
変調方式識別手段7について図5を用いて説明する。ここでは、識別対象の変調方式を16QAM(第1の変調方式)と64QAM(第2の変調方式)とし、それらのいずれであるかを識別するものであり、以下では、送信機が16QAM(第1の変調方式)を選択して各キャリアを変調した場合を説明する。また、識別に用いる振幅モーメントの次数を4として説明する。
【0031】
図5に示す変調方式識別手段7は、第1の変調方式に対応した第1の推定誤差計算手段7−1と、第2の変調方式に対応した第2の推定誤差計算手段7−2と、最小値検出手段28とを有する。
第1の推定誤差計算手段7−1は、変調方式が第1の変調方式であると仮定したときの信号成分の振幅モーメントの推定誤差を求める。第2の推定誤差計算手段7−2は、変調方式が第2の変調方式であると仮定したときの信号成分の振幅モーメントの推定誤差を求める。
第1の推定誤差計算手段7−1は、第1の干渉成分推定手段22−1と、第1の干渉成分除去手段24−1と、第1の誤差計算手段26−1とを有する。第2の推定誤差計算手段7−2は、第2の干渉成分推定手段22−2と、第2の干渉成分除去手段24−2と、第2の誤差計算手段26−2とを有する。
【0032】
16QAMで変調された信号が受信されている場合、変調方式識別手段7に入力される振幅の4次モーメント(累乗値平均手段6の出力)は、次式のように表される。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、αLは、図6に示すように左隣のキャリアからの干渉係数、αRは右隣のキャリアからの干渉係数であり、式(1)の右辺の第1項、即ち
【数2】
は送信された各キャリアの振幅p次モーメント、つまり雑音や干渉が存在しない場合の振幅p次モーメント(p=2,4)である。式(1)において第2項と第3項が干渉成分を表す。
【0035】
変調方式識別手段7に入力される隣接するキャリア(キャリア間隔の1倍隔てられたキャリア)同士の積の平均(第1の乗算値平均手段16−1の出力)は次式のように表される。
B=αL+αR …(3A)
【0036】
変調方式識別手段7に入力される互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア同士の積の平均(第2の乗算値平均手段16−2の出力)は次式のように表される。
C=αLαR …(3B)
【0037】
図5の第1の干渉成分推定手段22−1は、まず、式(3A)と式(3B)で表される第1の乗算値平均手段16−1の出力と第2の乗算値平均手段16−2の出力から、
αL4+αR4 …(4A)
αL2+αR2+αL2αR2 …(4B)
を計算する(式(4A)、式(4B)で表される値を求める)。
式(4A)及び式(4B)で表される値を求めるには、式(3A)と式(3B)を連立で解いて(αL、αRをB、Cで表す式に変形した上で、式(4A)及び(4B)に代入しても良く、以下のように式を変形した上で計算しても良い。
即ち、
式(3A)、式(3B)から
(B2−2C)2−2C2
={(αL+αR)2−2(αLαR)2}2−2(αLαR)2
=αL4+αR4 …(4C)
また、
B2−C
=(αL+αR)2−αLαR
=αL2+αR2+2αLαR−αLαR
=αL2+αR2+αLαR… …(4D)
式(4C)、式(4D)から、式(4A)、式(4B)の値を求めることができる。
【0038】
そして、上記の計算結果に基づき、受信信号の変調方式が16QAM(第1の変調方式)であると仮定して次式のような干渉成分の推定結果を出力する。
【0039】
【数3】
【0040】
図5の第2の干渉成分推定手段22−2も同様に、まず、式(3A)と式(3B)で表される第1の乗算値平均手段16−1の出力と第2の乗算値平均手段16−2の出力から、
αL4+αR4 …(4A)
αL2+αR2+αL2αR2 …(4B)
を計算し、次に、受信信号の変調方式が64QAM(第2の変調方式)であると仮定して次式のような干渉成分の推定結果を出力する。
【0041】
【数4】
【0042】
図5の第1の干渉成分除去手段24−1は、振幅の4次モーメント(累乗値平均手段6の出力)Aから、第1の干渉成分推定手段22−1の出力D1を減算する。即ち、上記の式で得られるAからD1を引いた値Es1=(A−D1)を求め、求めた差分Es1を、信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
同様に、第2の干渉成分除去手段24−2は、振幅の4次モーメント(累乗値平均手段6の出力)Aから、第2の干渉成分推定手段22−2の出力D2を減算する。即ち、上記の式で得られるAからD2を引いた値Es2=(A−D2)を求め、求めた差分Es2を、信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
【0043】
図5の第1の誤差計算手段26−1は、雑音やキャリア間干渉が存在しない場合の16QAMの振幅モーメント(信号成分の振幅モーメント)
【数5】
と、第1の干渉成分除去手段24−1から出力される信号Es1との差の絶対値Er1を計算して出力する。
第2の誤差計算手段26−2も同様に、キャリア間干渉が存在しない場合の64QAMの振幅モーメント
【数6】
と、第2の干渉成分除去手段24−2から出力される信号Es2との差の絶対値Er2を計算して出力する。
【0044】
式(6)、式(7)の値は、変調方式から一意に決まるものであり、予め算出しし、予め受信機内のROMなどのメモリに保持しおき、必要に応じて読み出すこととすれば良い。
【0045】
図7に、第1の干渉成分推定手段22−1、第2の干渉成分推定手段22−2、第1の干渉成分除去手段24−1、及び第2の干渉成分除去手段24−2から出力される信号について示す。図において、符号Mt1は雑音やキャリア間干渉が存在しない場合の16QAMの振幅4次モーメントの値、符号Mt2は雑音やキャリア間干渉が存在しない場合の64QAMの振幅4次モーメントの値を示す。
【0046】
図7において、16QAMで伝送された信号を受信し、周波数誤差を含む基準搬送波で同期検波した場合の振幅4次モーメントの値(累乗値平均手段6の出力)をMaとする。このとき、Mt1とMaの差がキャリア間干渉成分Dt1であり、Mt2とMaの差がキャリア間干渉成分Dt2である。
【0047】
第1の干渉成分推定手段22−1は、各キャリアの変調方式が16QAMと仮定して干渉成分を推定してD1を出力する。このD1は、Dt1に近い値となるはずである。第1の干渉成分除去手段24−1は、Maから(Dt1に近い値である)D1を減算した結果Es1を信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
一方、第2の干渉成分推定手段22−2は、各キャリアの変調方式が64QAMと仮定して干渉成分を推定しているので、真のキャリ干渉成分Dt2とは必ずしも近くはなく、例えばかなり離れた値D2を出力する。第2の干渉成分除去手段24−2は、MaからD2を減算した結果Es2を信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
【0048】
第1の誤差計算手段26−1はMt1とEs1の差の絶対値Er1、第2の誤差計算手段26−2はMt2とEs2の差の絶対値Er2を出力する。
【0049】
最小値検出手段28は、第1の誤差計算手段26−1と第2の誤差計算手段26−2の出力を比較して、より小さい値を出力した誤差計算手段(26−1又は26−2)に対応する変調方式が受信している信号の変調方式であると判定し、判定結果(変調方式)を表す信号を出力する。
上記の例では、受信信号が16QAMであると仮定して計算された第2の誤差計算手段26−1の結果を選択し、これを変調方式の識別結果として出力する。
【0050】
このように、隣接キャリア間の積の平均値を用いて振幅モーメント(累乗値平均手段6の出力)に含まれる干渉成分を推定・除去することで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別できるという効果がある。
【0051】
図2の復調手段8は、等化手段4からの出力を変調方式識別手段7で判定された変調方式で復調する。
【0052】
上記の例では、識別対象を2種類の変調方式(16QAMと64QAM)としているが、識別対象としての変調方式の数は3以上であっても良い。一般化すれば、識別対象としての変調方式の数がMである場合の変調方式識別手段7の構成は図8に示す如くとなる。図8に示す変調方式識別手段7は、第1乃至第Mの推定誤差計算手段7−1〜7−Mを有する。
【0053】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段7−1〜7−Mは、それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられたものであり、各々変調方式が対応するものであると仮定した場合の振幅モーメント誤差を求める。即ち、第m(m=1〜Mのいずれか)の推定誤差計算手段7−mは、第mの変調方式に対応して設けられたものであり、変調方式が第mの変調方式であると仮定した場合の、振幅モーメント誤差を求める。
【0054】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段7−1〜7−Mの各々は、図5に示す第1又は第2の推定誤差計算手段7−1、7−2と同様である。即ち、第mの推定誤差計算手段7−mは、第mの干渉成分推定手段22−mと、第mの干渉成分除去手段24−mと、第mの誤差計算手段26−mとを有する。
第mの干渉成分推定手段22−mは、第1又は第2の干渉成分推定手段22−1、22−2と同様であり、第mの干渉成分除去手段24−mは、第1又は第2の干渉成分除去手段24−1、24−2と同様であり、第mの誤差計算手段26−mは、第1又は第2の誤差計算手段26−1、26−2と同様である。
【0055】
最小値検出手段28は、第1乃至第Mの誤差計算手段26−1〜26−Mの出力のうちの最小の値を出力する誤差計算手段26が対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定し、判定結果を示す信号出力する。
【0056】
なおまた、上記の例では振幅モーメントの次数を4として説明をしたが、他の次数でも同様にして変調方式を識別することができる。
【0057】
本実施の形態で示したように、隣接キャリア間の積の平均値を用いて振幅モーメントに含まれる干渉成分を推定することで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別でき、その結果、正しい変調方式で受信信号を復調するので復調後のデータに連続的な誤りは生じない。
【0058】
実施の形態2.
図9に本発明の実施の形態2の受信装置を示すブロック図である。図9において、図2と同じ符号は同様の部材を示す。
図9に示す受信装置は、図2に示す受信装置と概して同じであるが、以下の点で異なる。
図2の第1及び第2の遅延手段12−1及び12−2に加えて、第3〜第Nの遅延手段(N≧3)12−3〜12−Nを備え(ただし、これらのうち、第Nの遅延手段12−Nのみを図示している)、第1及び第2の乗算手段14−1及び14−2に加えて、第3乃至第Nの乗算手段14−3〜14−Nを備え(ただし、これらのうち、第Nの乗算手段14−Nのみを図示している)、第1及び第2の乗算値平均手段16−1及び16−2に加えて、第3乃至第Nの乗算値平均手段16−3〜16−Nを備えている(ただし、これらのうち、第Nの乗算値平均手段16−Nのみを図示している)。これらと対比して言えば、実施の形態1の構成は、N=2である場合に相当する。また、図2の変調方式識別手段7の代わりに、変調方式識別手段9が設けられている。
【0059】
第3乃至Nの遅延手段12−3〜12−Nの各々、即ち第nの遅延手段12−nは、第(n−1)の遅延手段12−(n−1)の出力を受けて、1キャリア分だけ遅延させる。
第n(nは1乃至Nのいずれか)の乗算手段14−nは、等化手段4の出力と第nの遅延手段12−nの出力を乗算し、これによりキャリア間隔のn倍隔てられたキャリア相互間の積を求める。
第nの乗算値平均手段16−nは、第nの乗算手段14−nから出力される信号を平均する。即ち、第nの乗算手段16−nは、互いにキャリア間隔のn倍隔てられたキャリア相互間の積をキャリア方向、及びシンボル方向に平均し、平均値を出力する。
【0060】
変調方式識別手段9は、第1乃至第Nの乗算値平均手段16−1〜16−Nから出力される信号をもとに各キャリアを変調した方式を識別する。
復調手段8は、変調方式識別手段9で判定された変調方式で等化手段4から出力される信号を復調する。
【0061】
以下では、一例として、変調方式の識別対象を16QAM(第1の変調方式)と64QAM(第2の変調方式)として説明する。
【0062】
図中の同期検波手段1、周波数領域変換手段2、伝送路推定手段3、等化手段4、振幅累乗計算手段5、累乗値平均手段6、及び復調手段8は、実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0063】
変調方式識別手段9には、第1乃至第Nの乗算値平均手段16−1〜16−Nで求められた平均値が入力される。図10は、変調方式識別手段9のブロック図である。
【0064】
図10に示す変調方式識別手段9は、第1乃至第Nの絶対値計算手段32−1〜32−Nと、総和計算手段34と、第1及び第2の推定誤差計算手段9−1及び9−2と、最小値検出手段28とを有する。
第1及び第2の推定誤差計算手段9−1及び9−2は、それぞれ第1及び第2の変調方式に対応して設けられたものであり、各々変調方式が対応する変調方式であると仮定した場合の信号成分の振幅モーメントの推定誤差を計算する。
【0065】
第1の推定誤差計算手段9−1は、第1の干渉成分計算手段36−1と、第1の干渉成分除去手段24−1と、第1の誤差計算手段26−1とを有し、第2の推定誤差計算手段9−2は、第2の干渉成分計算手段36−2と、第2の干渉成分除去手段24−2と、第2の誤差計算手段26−2とを有する。
【0066】
第1及び第2の干渉成分計算手段36−1、36−2は、図5の第1及び第2の干渉成分計算手段22−1、22−2と同様のものであるが、総和計算手段34の出力を入力としている点で異なる。
第1及び第2の干渉成分除去手段24−1、24−2及び第1及び第2の誤差計算手段26−1、26−2は、図5に同じ符号で示す部材と同様である。
【0067】
第1乃至第Nの絶対値計算手段32−1〜32−Nの各々、即ち第nの絶対値計算手段32−nは、第nの乗算値平均手段16−nの出力結果の絶対値を計算する。
総和計算手段34は、第1〜第Nの絶対値計算手段32−1〜32−Nから出力される信号の総和を計算する。
【0068】
図11(a)及び(b)は、周波数誤差とキャリア干渉の関係を示す。図11(a)よりも図11(b)の方が、周波数誤差が大きく、キャリア干渉が大きい。
図11(a)及び(b)に示すように、基準搬送波の誤差が大きいほど、各キャリア含まれる隣接キャリアからの干渉成分は大きくなる。その結果、キャリア間の乗算結果の値(第1乃至第Nの絶対値手段32−1〜32−Nの各々、即ち第nの絶対値計算手段32−nの出力も大きくなる。つまり、総和計算手段34から出力される値は、キャリア間干渉の大きさに比例する。
【0069】
第1の干渉成分計算手段36−1は、受信信号の変調方式を16QAM(第1の変調方式)と仮定して、総和計算手段34の出力をもとに振幅モーメントに含まれる干渉成分を計算する。
また、第2の干渉成分計算手段36−2は、受信信号の変調方式を64QAM(第2の変調方式)と仮定して、総和計算手段34の出力をもとに振幅モーメントに含まれる干渉成分を推定する。
【0070】
この干渉成分の推定は、例えば干渉成分計算手段36−1、36−2を変換テーブルを格納した記憶手段で構成し、例えば、図12に示すように、総和計算手段34の出力値Saと、干渉成分D1、D2の関係をあらかじめ計算して、干渉成分計算手段36−1、36−2を構成する記憶手段に保持しておく。
図12は、例えば、総和計算手段34の出力がSa(i)の場合、第1の干渉成分計算手段36−1はD1(i)の値を出力し、第2の干渉成分計算手段36−2はD2(i)の値を出力することを示す。
【0071】
第1の干渉成分除去手段24−1、第2の干渉成分除去手段24−2、第2の誤差計算手段26−1、第2の誤差計算手段26−2、及び最小値検出手段28は実施の形態1と同じであるので、説明を省略する。
【0072】
このように、隣接キャリア間の積の平均値の大きさをもとに、振幅モーメント(累乗値平均手段6の出力)に含まれる干渉成分を推定・除去することで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別できるという効果がある。
【0073】
上記の例では、識別対象を2種類の変調方式(16QAMと64QAM)としているが、識別対象としての変調方式の数は3以上であっても良い。一般化すれば、識別対象としての変調方式の数がMである場合の変調方式識別手段9の構成は図13に示す如くとなる。図13に示す変調方式識別手段9は、第1乃至第Mの推定誤差計算手段9−1〜9−Mを有する。
【0074】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段9−1〜9−Mは、それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられたものであり、各々変調方式が対応するものであると仮定した場合の振幅モーメント誤差を求める。即ち、第m(m=1〜Mのいずれか)の推定誤差計算手段9−mは、第mの変調方式に対応して設けられたものであり、変調方式が第mの変調方式であると仮定した場合の、振幅モーメント誤差を求める。
【0075】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段9−1〜9−Mの各々は、図10に示す第1及び第2の推定誤差計算手段9−1、9−2と同様である。即ち、第m(m=1〜Mのいずれか)の推定誤差計算手段9−mは、第mの干渉成分推定手段36−mと、第mの干渉成分除去手段24−mと、第mの誤差計算手段26−mとを有する。
第mの干渉成分推定手段36−mは、第1又は第2の干渉成分推定手段36−1、36−2と同様であり、第mの干渉成分除去手段24−mは、第1又は第2の干渉成分除去手段24−1、24−2と同様であり、第mの誤差計算手段26−mは、第1又は第2の誤差計算手段26−1、26−2と同様である。
上記以外の点では、実施の形態1について説明したのと同様である。
【0076】
なお、実施の形態2に関し、N=3以上であるとして説明したが、N=2であっても良く、N=1であっても良い。N=1の場合には、総和計算手段は図9において、第1の遅延手段12−1、第1の乗算手段14−1、第1の乗算値平均手段16−1のみが用いられ(第2〜第Nの遅延手段12−2〜12−N,第2の乗算手段14−2〜14−N、及び第2の乗算値平均手段16−2〜16−Nが不要となり)、第1の乗算値平均手段16−1の出力がそのまま総和計算手段34の出力となる。
【0077】
以上本発明を受信装置として説明したが、受信装置を用いて実施される受信方法も本発明の一部を成す。
【符号の説明】
【0078】
1 同期検波手段、 2 周波数領域変換手段、 3 伝送路推定手段、 4 等化手段、 5 振幅累乗計算手段、 6 累乗値平均手段、 7 変調方式識別手段、 7−1〜7−M 推定誤差計算手段、 8 復調手段、 9 変調方式識別手段、 9−1〜9−M 推定誤差計算手段、 12−1 第1の遅延手段、 12−2 第2の遅延手段、 12−N 第Nの遅延手段、 14−1 第1の乗算手段、 14−2 第2の乗算手段、 14−N 第Nの乗算手段、 16−1 第1の乗算値平均手段、 16−2 第2の乗算値平均手段、 16−N 第Nの乗算値平均手段、 22−1 第1の干渉成分推定手段、 22−2 第2の干渉成分推定手段、 22−M 第Nの干渉成分推定手段、 24−1 第1の干渉成分除去手段、 24−2 第2の干渉成分除去手段、 24−M 第Mの干渉成分除去手段、 26−1 第1の誤差計算手段、 26−2 第2の誤差計算手段、 26−M 第Mの誤差計算手段、 28 最小値検出手段、 32−1 第1の絶対値計算手段、 32−2 第2の絶対値計算手段、 32−N 第Nの絶対値計算手段、 34 総和計算手段、 36−1 第1の干渉成分計算手段、 36−2 第2の干渉成分計算手段、 36−M 第Mの干渉成分計算手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及び受信方法に関し、特に受信信号の変調方式を自動識別する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
適応変調方式は、電波環境に応じて送信データを変調する方式(変調方式)を選択する通信システムであり、時間とともに電波環境が変動する環境下で、効率良くデータを伝送することができる。例えば、伝送路環境が悪い場合は、BPSK等伝送レートの低い変調方式を使用し、伝送路環境が良い場合は、64QAM等伝送レート高い変調方式を使用する。
【0003】
適応変調方式を適用する場合、受信機は、受信信号を復調するために、受信信号から変調方式を識別する必要がある。この変調方式の識別を誤ると、復調後のデータにバースト的な誤りが生じるので、精度良く変調方式を識別しなければならない。
【0004】
変調方式の識別方法として、送信機が変調方式に関する付加情報を送信して受信機がこの付加情報をもとに変調方式を識別する方法と、付加情報なしで受信機が受信信号から変調方式を自動識別する方法がある。
【0005】
付加情報を伝送する方法は、自動識別する方法に比べて、識別するための処理が容易であるという利点があるが、付加情報を伝送する分の通信効率が劣化してしまう。また、規格化された通信システムに新たな変調方式を追加する際、付加情報の構成を変更、あるいは拡張する必要があるので汎用性に欠ける。
【0006】
付加情報を用いない変調方式識別法が特許文献1や非特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の変調方式識別法は、変調方式毎に受信信号の振幅の標準偏差と位相差の標準偏差が異なることを利用して変調方式を識別している。また、非特許文献1に記載の変調方式識別法は、変調方式間で受信信号の振幅の高次モーメントの値に差があることを利用して変調方式を識別している。
【0007】
上記の変調方式識別法は、時間軸上で情報を伝送する通信システムを想定している。時間軸上で情報を伝送する通信システムにおいて、受信信号を同期検波する際に使用する搬送波の周波数に誤差が含まれる場合、受信する信号点は時間とともに回転する。特許文献1や非特許文献1に記載の技術は、上記の周波数誤差が存在する場合でも変調方式を正確に識別することが可能である。これは、位相が回転しても、受信信号の振幅の標準偏差や位相差の標準偏差、振幅の高次モーメントに影響しないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−64577号公報(第6頁、第1図)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】新保大介、岡育生、阿多信吾著「振幅モーメントによる直交振幅変調方式の識別」、Vol.J90−B,No.12,pp.1326−1329(第1326頁、式(1))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の変調方式識別法をマルチキャリア伝送方式に適用する場合を考える。マルチキャリア伝送方式とは、直交する複数の狭帯域キャリアに信号を乗せて情報を伝送する方式であり、各キャリアの信号は、キャリア間隔毎に振幅0で交差するため、隣接キャリアに影響を及ぼさない。しかし、受信側で同期検波をする際に用いる基準搬送波の周波数に誤差が含まれる場合、周波数誤差の影響により、各キャリアが周波数誤差分だけシフトし、その結果、各キャリアの信号が隣接するキャリアに干渉してしまう。
【0011】
このように、マルチキャリア伝送方式において、周波数に誤差が存在する場合、受信する各信号点が隣接キャリアからの干渉を受ける。このとき、振幅の標準偏差・位相差の標準偏差、及び振幅の高次モーメントの値には、隣接キャリアからの干渉により干渉成分が含まれる。この干渉成分の影響により、特許文献1や非特許文献1に記載の技術では変調方式を誤判定する確率が高くなる。誤判定した変調方式で受信信号を復調すると、復調後のデータに連続的な誤りが生じてしまう。
【0012】
本発明は、振幅の高次モーメントに含まれる干渉成分を推定・除去することで基準搬送波の周波数に誤差が存在する場合でも変調方式を正しく識別することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の受信装置は、
直交する複数のキャリアを予め定められた複数の変調方式のうち何れかの変調方式で変調して周波数多重した信号を受信する受信装置において、
基準搬送波を用いて受信信号を同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波手段から出力される信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域変換手段から出力される信号をもとに伝送路特性を推定する伝送路推定手段と、
前記伝送路推定手段から出力される信号をもとに周波数領域変換手段から出力される信号の歪みを補正する等化手段と、
前記等化手段から出力される信号の振幅の累乗を計算する振幅累乗計算手段と、
前記振幅累乗計算手段から出力される信号を平均する累乗値平均手段と、
前記等化手段から出力される信号においてそれぞれ互いにキャリア間隔の1乃至N倍(Nは1以上の整数)離れたキャリア間の積を計算する第1〜第Nの乗算手段(14−1〜14−N)と、
前記第1乃至第Nの乗算手段のそれぞれに対応して設けられ、対応する乗算手段から出力される各信号の平均を計算する第1乃至第Nの乗算値平均手段と、
前記第1乃至第Nの乗算値平均手段から出力される信号をもとに変調方式を識別する変調方式識別手段と、
前記等化手段から出力される信号を、前記変調方式識別手段で判定された変調方式で復調する復調手段を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャリアの振幅の累乗の平均値と隣接キャリア間の積の平均値を用いることで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別でき、その結果、正しい変調方式で受信信号を復調するので復調後のデータに連続的な誤りは生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】伝送路推定を行うためのパイロットキャリアの配置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1の受信装置を示すブロック図である。
【図3】(a)及び(b)は、周波数分割多重する信号の周波数誤差とキャリア間干渉の関係を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は、振幅の高次モーメントを示す図である。
【図5】図2の変調方式識別手段の一構成例を示すブロック図である。
【図6】隣接キャリアからの干渉係数を示す図である。
【図7】実施の形態1における振幅モーメント、及び干渉成分の推定値を示す図である。
【図8】図2の変調方式識別手段の別の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態2の受信装置を示すブロック図である。
【図10】図9の変調方式識別手段の一構成例を示すブロック図である。
【図11】(a)及び(b)は、基準搬送波周波数の誤差量とキャリア間干渉の大きさの関係を示した図である。
【図12】実施の形態2における第1及び第2の干渉計算手段の入力と出力の関係を示す図である。
【図13】図9の変調方式識別手段の別の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、直交する複数の狭帯域キャリアを多重化して得られるシンボルを伝送単位とする信号を受信するものとする。また、以下に説明する実施の形態では、図1に示すように、周期的にパイロットキャリアが挿入されるものとする。なお、このパイロットキャリアは、後で述べる伝送路推定を行う際に利用する信号であり、変調方式に関する情報を含む信号ではない。
【0017】
実施の形態1.
図2に本発明の実施の形態1の受信装置を示すブロック図である。
図示の受信装置は、同期検波手段1と、周波数領域変換手段2と、伝送路推定手段3と、等化手段4と、振幅累乗計算手段5と、累乗値平均手段6と、第1の遅延手段12−1と、第2の遅延手段12−2と、第1の乗算手段14−1と、第2の乗算手段14−2と、第1の乗算値平均手段16−1と、第2の乗算値平均手段16−2と、変調方式識別手段7と、復調手段8とを備えている。
【0018】
同期検波手段1は、受信信号と基準搬送波を乗算した後、ローパスフィルタで高周波成分を抑圧することで、同期検波を行う。
周波数領域変換手段2は、同期検波手段1から出力される信号をシンボル毎に周波数領域に変換する。
伝送路推定手段3は、周波数領域変換手段2から出力される、周波数領域に変換された信号からパイロットキャリアを抽出し、パイロットキャリアをもとに伝送路特性を推定する。
等化手段4は、伝送路推定手段3から出力される、伝送路推定結果を表す信号をもとに、周波数領域変換手段2から出力される信号(受信信号)の歪みを補正する。
【0019】
同期検波を行う際に利用する基準搬送波の周波数に誤差が含まれない場合、等化手段4による等化結果は、図3(a)に示すように、隣接キャリア同士で直交している。即ち、各キャリアの信号は、キャリア間隔毎に振幅0で交差するため、隣接キャリアに影響を及ぼさない。一方、基準搬送波に周波数オフセットが含まれる場合、等化結果は、図3(b)に示すように、基準搬送波の周波数誤差分だけシフトし、その結果隣接キャリア間で干渉が生じる。
【0020】
振幅累乗計算手段5は、等化手段4から出力される信号、即ち各キャリアの振幅の累乗(a乗)を計算する。上記の「a」は1より大きい値、例えば2以上の整数である。
【0021】
累乗値平均手段6は、振幅累乗計算手段5から出力される信号を平均する。即ち、累乗値平均手段6は、シンボル内の全キャリア、もしくは周期的に選択したキャリアの平均を計算した後、この結果をシンボル方向に平均する。
累乗値平均手段6から出力される信号、即ち等化手段4から出力される信号のa乗の平均をa次の振幅モーメントと呼ぶ。基準搬送波の周波数に誤差が含まれる場合、振幅モーメントにキャリア間干渉による干渉成分が含まれる。
【0022】
ここで、振幅モーメントについて説明する。図4(a)にキャリア間干渉が存在しない場合の、16QAMと64QAMの振幅a次モーメントを示す(非特許文献1参照)。図4(a)より、次数aが大きくなるにつれて、変調方式間で振幅モーメントの差が大きくなることがわかる。非特許文献1に記載の技術は、この特性を利用して変調方式を識別する。具体的には、次数を10としたとき、図4(a)に示すように閾値を決める。そして、受信信号から計算された振幅の10次モーメントと閾値を比較して、閾値より大きいときは64QAM、小さいときは16QAMと判定する。
【0023】
次に、基準搬送波の周波数誤差の影響によりキャリア間干渉が生じる場合の振幅モーメントを図4(b)に示す。干渉成分がある場合の振幅モーメントは、キャリア間干渉の影響により干渉が存在しない場合の振幅モーメントより大きくなる。受信機は、基準搬送波の周波数に誤差がないものとして識別するので、閾値は、図4(a)と同じ値になる。その結果、16QAMは64QAMと誤判定しやすくなる。
【0024】
本発明では、振幅モーメントに含まれる干渉成分を推定・除去することで変調方式の識別性能の向上を図る。以降、干渉成分の推定・除去、及び変調方式の識別について説明する。
【0025】
第1の遅延手段12−1は、等化手段4から出力される信号を1キャリア分だけ遅延させる。第2の遅延手段12−2は、第1の遅延手段12−1から出力される信号を1キャリア分だけ遅延させる。
【0026】
第1の乗算手段14−1は、等化手段4から出力される信号と第1の遅延手段12−1から出力される信号の乗算を計算する。第2の乗算手段14−2は、等化手段4から出力される信号と第2の遅延手段12−2から出力される信号の乗算を計算する。これにより、乗算手段14−1は、等化手段4から出力される信号における互いに隣り合う(互いにキャリア間隔の1倍隔てられたキャリア相互間の積を計算し、乗算手段14−2は、等化手段4から出力される信号における互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア相互間の積を計算する。
【0027】
第1の乗算値平均手段16−1は、第1の乗算手段14−1から出力される信号を平均する。第2の乗算値平均手段16−2は、第2の乗算手段14−2から出力される信号、即ち互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア相互間の積を平均する。これにより、第1の乗算値平均手段16−1は、互いに隣り合う(互いにキャリア間隔の1倍隔てられたキャリア相互間の積をキャリア方向、及びシンボル方向に平均し、第2の乗算値平均手段16−2は、互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア相互間の積をキャリア方向、及びシンボル方向に平均し、平均値を出力する。
【0028】
なお、本実施の形態において、累乗値平均手段6、並びに乗算値平均手段16−1及び16−2は、まずシンボル内の全キャリアの平均を計算し、この平均結果をシンボル方向に平均しているが、周期的、あるいは非周期的に選択されたキャリアの平均を計算し、この平均結果をシンボル方向に平均してもよい。
【0029】
変調方式識別手段7は、累乗値平均手段6、並びに第1及び第2の乗算値平均手段16−1、16−2から出力される信号をもとに各キャリアを変調した方式を識別する。
復調手段8は、変調方式識別手段7で判定された変調方式で等化手段4から出力される信号を復調する。
【0030】
変調方式識別手段7について図5を用いて説明する。ここでは、識別対象の変調方式を16QAM(第1の変調方式)と64QAM(第2の変調方式)とし、それらのいずれであるかを識別するものであり、以下では、送信機が16QAM(第1の変調方式)を選択して各キャリアを変調した場合を説明する。また、識別に用いる振幅モーメントの次数を4として説明する。
【0031】
図5に示す変調方式識別手段7は、第1の変調方式に対応した第1の推定誤差計算手段7−1と、第2の変調方式に対応した第2の推定誤差計算手段7−2と、最小値検出手段28とを有する。
第1の推定誤差計算手段7−1は、変調方式が第1の変調方式であると仮定したときの信号成分の振幅モーメントの推定誤差を求める。第2の推定誤差計算手段7−2は、変調方式が第2の変調方式であると仮定したときの信号成分の振幅モーメントの推定誤差を求める。
第1の推定誤差計算手段7−1は、第1の干渉成分推定手段22−1と、第1の干渉成分除去手段24−1と、第1の誤差計算手段26−1とを有する。第2の推定誤差計算手段7−2は、第2の干渉成分推定手段22−2と、第2の干渉成分除去手段24−2と、第2の誤差計算手段26−2とを有する。
【0032】
16QAMで変調された信号が受信されている場合、変調方式識別手段7に入力される振幅の4次モーメント(累乗値平均手段6の出力)は、次式のように表される。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、αLは、図6に示すように左隣のキャリアからの干渉係数、αRは右隣のキャリアからの干渉係数であり、式(1)の右辺の第1項、即ち
【数2】
は送信された各キャリアの振幅p次モーメント、つまり雑音や干渉が存在しない場合の振幅p次モーメント(p=2,4)である。式(1)において第2項と第3項が干渉成分を表す。
【0035】
変調方式識別手段7に入力される隣接するキャリア(キャリア間隔の1倍隔てられたキャリア)同士の積の平均(第1の乗算値平均手段16−1の出力)は次式のように表される。
B=αL+αR …(3A)
【0036】
変調方式識別手段7に入力される互いにキャリア間隔の2倍隔てられたキャリア同士の積の平均(第2の乗算値平均手段16−2の出力)は次式のように表される。
C=αLαR …(3B)
【0037】
図5の第1の干渉成分推定手段22−1は、まず、式(3A)と式(3B)で表される第1の乗算値平均手段16−1の出力と第2の乗算値平均手段16−2の出力から、
αL4+αR4 …(4A)
αL2+αR2+αL2αR2 …(4B)
を計算する(式(4A)、式(4B)で表される値を求める)。
式(4A)及び式(4B)で表される値を求めるには、式(3A)と式(3B)を連立で解いて(αL、αRをB、Cで表す式に変形した上で、式(4A)及び(4B)に代入しても良く、以下のように式を変形した上で計算しても良い。
即ち、
式(3A)、式(3B)から
(B2−2C)2−2C2
={(αL+αR)2−2(αLαR)2}2−2(αLαR)2
=αL4+αR4 …(4C)
また、
B2−C
=(αL+αR)2−αLαR
=αL2+αR2+2αLαR−αLαR
=αL2+αR2+αLαR… …(4D)
式(4C)、式(4D)から、式(4A)、式(4B)の値を求めることができる。
【0038】
そして、上記の計算結果に基づき、受信信号の変調方式が16QAM(第1の変調方式)であると仮定して次式のような干渉成分の推定結果を出力する。
【0039】
【数3】
【0040】
図5の第2の干渉成分推定手段22−2も同様に、まず、式(3A)と式(3B)で表される第1の乗算値平均手段16−1の出力と第2の乗算値平均手段16−2の出力から、
αL4+αR4 …(4A)
αL2+αR2+αL2αR2 …(4B)
を計算し、次に、受信信号の変調方式が64QAM(第2の変調方式)であると仮定して次式のような干渉成分の推定結果を出力する。
【0041】
【数4】
【0042】
図5の第1の干渉成分除去手段24−1は、振幅の4次モーメント(累乗値平均手段6の出力)Aから、第1の干渉成分推定手段22−1の出力D1を減算する。即ち、上記の式で得られるAからD1を引いた値Es1=(A−D1)を求め、求めた差分Es1を、信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
同様に、第2の干渉成分除去手段24−2は、振幅の4次モーメント(累乗値平均手段6の出力)Aから、第2の干渉成分推定手段22−2の出力D2を減算する。即ち、上記の式で得られるAからD2を引いた値Es2=(A−D2)を求め、求めた差分Es2を、信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
【0043】
図5の第1の誤差計算手段26−1は、雑音やキャリア間干渉が存在しない場合の16QAMの振幅モーメント(信号成分の振幅モーメント)
【数5】
と、第1の干渉成分除去手段24−1から出力される信号Es1との差の絶対値Er1を計算して出力する。
第2の誤差計算手段26−2も同様に、キャリア間干渉が存在しない場合の64QAMの振幅モーメント
【数6】
と、第2の干渉成分除去手段24−2から出力される信号Es2との差の絶対値Er2を計算して出力する。
【0044】
式(6)、式(7)の値は、変調方式から一意に決まるものであり、予め算出しし、予め受信機内のROMなどのメモリに保持しおき、必要に応じて読み出すこととすれば良い。
【0045】
図7に、第1の干渉成分推定手段22−1、第2の干渉成分推定手段22−2、第1の干渉成分除去手段24−1、及び第2の干渉成分除去手段24−2から出力される信号について示す。図において、符号Mt1は雑音やキャリア間干渉が存在しない場合の16QAMの振幅4次モーメントの値、符号Mt2は雑音やキャリア間干渉が存在しない場合の64QAMの振幅4次モーメントの値を示す。
【0046】
図7において、16QAMで伝送された信号を受信し、周波数誤差を含む基準搬送波で同期検波した場合の振幅4次モーメントの値(累乗値平均手段6の出力)をMaとする。このとき、Mt1とMaの差がキャリア間干渉成分Dt1であり、Mt2とMaの差がキャリア間干渉成分Dt2である。
【0047】
第1の干渉成分推定手段22−1は、各キャリアの変調方式が16QAMと仮定して干渉成分を推定してD1を出力する。このD1は、Dt1に近い値となるはずである。第1の干渉成分除去手段24−1は、Maから(Dt1に近い値である)D1を減算した結果Es1を信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
一方、第2の干渉成分推定手段22−2は、各キャリアの変調方式が64QAMと仮定して干渉成分を推定しているので、真のキャリ干渉成分Dt2とは必ずしも近くはなく、例えばかなり離れた値D2を出力する。第2の干渉成分除去手段24−2は、MaからD2を減算した結果Es2を信号成分の振幅の4次モーメントの推定値として出力する。
【0048】
第1の誤差計算手段26−1はMt1とEs1の差の絶対値Er1、第2の誤差計算手段26−2はMt2とEs2の差の絶対値Er2を出力する。
【0049】
最小値検出手段28は、第1の誤差計算手段26−1と第2の誤差計算手段26−2の出力を比較して、より小さい値を出力した誤差計算手段(26−1又は26−2)に対応する変調方式が受信している信号の変調方式であると判定し、判定結果(変調方式)を表す信号を出力する。
上記の例では、受信信号が16QAMであると仮定して計算された第2の誤差計算手段26−1の結果を選択し、これを変調方式の識別結果として出力する。
【0050】
このように、隣接キャリア間の積の平均値を用いて振幅モーメント(累乗値平均手段6の出力)に含まれる干渉成分を推定・除去することで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別できるという効果がある。
【0051】
図2の復調手段8は、等化手段4からの出力を変調方式識別手段7で判定された変調方式で復調する。
【0052】
上記の例では、識別対象を2種類の変調方式(16QAMと64QAM)としているが、識別対象としての変調方式の数は3以上であっても良い。一般化すれば、識別対象としての変調方式の数がMである場合の変調方式識別手段7の構成は図8に示す如くとなる。図8に示す変調方式識別手段7は、第1乃至第Mの推定誤差計算手段7−1〜7−Mを有する。
【0053】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段7−1〜7−Mは、それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられたものであり、各々変調方式が対応するものであると仮定した場合の振幅モーメント誤差を求める。即ち、第m(m=1〜Mのいずれか)の推定誤差計算手段7−mは、第mの変調方式に対応して設けられたものであり、変調方式が第mの変調方式であると仮定した場合の、振幅モーメント誤差を求める。
【0054】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段7−1〜7−Mの各々は、図5に示す第1又は第2の推定誤差計算手段7−1、7−2と同様である。即ち、第mの推定誤差計算手段7−mは、第mの干渉成分推定手段22−mと、第mの干渉成分除去手段24−mと、第mの誤差計算手段26−mとを有する。
第mの干渉成分推定手段22−mは、第1又は第2の干渉成分推定手段22−1、22−2と同様であり、第mの干渉成分除去手段24−mは、第1又は第2の干渉成分除去手段24−1、24−2と同様であり、第mの誤差計算手段26−mは、第1又は第2の誤差計算手段26−1、26−2と同様である。
【0055】
最小値検出手段28は、第1乃至第Mの誤差計算手段26−1〜26−Mの出力のうちの最小の値を出力する誤差計算手段26が対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定し、判定結果を示す信号出力する。
【0056】
なおまた、上記の例では振幅モーメントの次数を4として説明をしたが、他の次数でも同様にして変調方式を識別することができる。
【0057】
本実施の形態で示したように、隣接キャリア間の積の平均値を用いて振幅モーメントに含まれる干渉成分を推定することで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別でき、その結果、正しい変調方式で受信信号を復調するので復調後のデータに連続的な誤りは生じない。
【0058】
実施の形態2.
図9に本発明の実施の形態2の受信装置を示すブロック図である。図9において、図2と同じ符号は同様の部材を示す。
図9に示す受信装置は、図2に示す受信装置と概して同じであるが、以下の点で異なる。
図2の第1及び第2の遅延手段12−1及び12−2に加えて、第3〜第Nの遅延手段(N≧3)12−3〜12−Nを備え(ただし、これらのうち、第Nの遅延手段12−Nのみを図示している)、第1及び第2の乗算手段14−1及び14−2に加えて、第3乃至第Nの乗算手段14−3〜14−Nを備え(ただし、これらのうち、第Nの乗算手段14−Nのみを図示している)、第1及び第2の乗算値平均手段16−1及び16−2に加えて、第3乃至第Nの乗算値平均手段16−3〜16−Nを備えている(ただし、これらのうち、第Nの乗算値平均手段16−Nのみを図示している)。これらと対比して言えば、実施の形態1の構成は、N=2である場合に相当する。また、図2の変調方式識別手段7の代わりに、変調方式識別手段9が設けられている。
【0059】
第3乃至Nの遅延手段12−3〜12−Nの各々、即ち第nの遅延手段12−nは、第(n−1)の遅延手段12−(n−1)の出力を受けて、1キャリア分だけ遅延させる。
第n(nは1乃至Nのいずれか)の乗算手段14−nは、等化手段4の出力と第nの遅延手段12−nの出力を乗算し、これによりキャリア間隔のn倍隔てられたキャリア相互間の積を求める。
第nの乗算値平均手段16−nは、第nの乗算手段14−nから出力される信号を平均する。即ち、第nの乗算手段16−nは、互いにキャリア間隔のn倍隔てられたキャリア相互間の積をキャリア方向、及びシンボル方向に平均し、平均値を出力する。
【0060】
変調方式識別手段9は、第1乃至第Nの乗算値平均手段16−1〜16−Nから出力される信号をもとに各キャリアを変調した方式を識別する。
復調手段8は、変調方式識別手段9で判定された変調方式で等化手段4から出力される信号を復調する。
【0061】
以下では、一例として、変調方式の識別対象を16QAM(第1の変調方式)と64QAM(第2の変調方式)として説明する。
【0062】
図中の同期検波手段1、周波数領域変換手段2、伝送路推定手段3、等化手段4、振幅累乗計算手段5、累乗値平均手段6、及び復調手段8は、実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0063】
変調方式識別手段9には、第1乃至第Nの乗算値平均手段16−1〜16−Nで求められた平均値が入力される。図10は、変調方式識別手段9のブロック図である。
【0064】
図10に示す変調方式識別手段9は、第1乃至第Nの絶対値計算手段32−1〜32−Nと、総和計算手段34と、第1及び第2の推定誤差計算手段9−1及び9−2と、最小値検出手段28とを有する。
第1及び第2の推定誤差計算手段9−1及び9−2は、それぞれ第1及び第2の変調方式に対応して設けられたものであり、各々変調方式が対応する変調方式であると仮定した場合の信号成分の振幅モーメントの推定誤差を計算する。
【0065】
第1の推定誤差計算手段9−1は、第1の干渉成分計算手段36−1と、第1の干渉成分除去手段24−1と、第1の誤差計算手段26−1とを有し、第2の推定誤差計算手段9−2は、第2の干渉成分計算手段36−2と、第2の干渉成分除去手段24−2と、第2の誤差計算手段26−2とを有する。
【0066】
第1及び第2の干渉成分計算手段36−1、36−2は、図5の第1及び第2の干渉成分計算手段22−1、22−2と同様のものであるが、総和計算手段34の出力を入力としている点で異なる。
第1及び第2の干渉成分除去手段24−1、24−2及び第1及び第2の誤差計算手段26−1、26−2は、図5に同じ符号で示す部材と同様である。
【0067】
第1乃至第Nの絶対値計算手段32−1〜32−Nの各々、即ち第nの絶対値計算手段32−nは、第nの乗算値平均手段16−nの出力結果の絶対値を計算する。
総和計算手段34は、第1〜第Nの絶対値計算手段32−1〜32−Nから出力される信号の総和を計算する。
【0068】
図11(a)及び(b)は、周波数誤差とキャリア干渉の関係を示す。図11(a)よりも図11(b)の方が、周波数誤差が大きく、キャリア干渉が大きい。
図11(a)及び(b)に示すように、基準搬送波の誤差が大きいほど、各キャリア含まれる隣接キャリアからの干渉成分は大きくなる。その結果、キャリア間の乗算結果の値(第1乃至第Nの絶対値手段32−1〜32−Nの各々、即ち第nの絶対値計算手段32−nの出力も大きくなる。つまり、総和計算手段34から出力される値は、キャリア間干渉の大きさに比例する。
【0069】
第1の干渉成分計算手段36−1は、受信信号の変調方式を16QAM(第1の変調方式)と仮定して、総和計算手段34の出力をもとに振幅モーメントに含まれる干渉成分を計算する。
また、第2の干渉成分計算手段36−2は、受信信号の変調方式を64QAM(第2の変調方式)と仮定して、総和計算手段34の出力をもとに振幅モーメントに含まれる干渉成分を推定する。
【0070】
この干渉成分の推定は、例えば干渉成分計算手段36−1、36−2を変換テーブルを格納した記憶手段で構成し、例えば、図12に示すように、総和計算手段34の出力値Saと、干渉成分D1、D2の関係をあらかじめ計算して、干渉成分計算手段36−1、36−2を構成する記憶手段に保持しておく。
図12は、例えば、総和計算手段34の出力がSa(i)の場合、第1の干渉成分計算手段36−1はD1(i)の値を出力し、第2の干渉成分計算手段36−2はD2(i)の値を出力することを示す。
【0071】
第1の干渉成分除去手段24−1、第2の干渉成分除去手段24−2、第2の誤差計算手段26−1、第2の誤差計算手段26−2、及び最小値検出手段28は実施の形態1と同じであるので、説明を省略する。
【0072】
このように、隣接キャリア間の積の平均値の大きさをもとに、振幅モーメント(累乗値平均手段6の出力)に含まれる干渉成分を推定・除去することで、基準搬送波の周波数に誤差がある場合でも精度よく変調方式を識別できるという効果がある。
【0073】
上記の例では、識別対象を2種類の変調方式(16QAMと64QAM)としているが、識別対象としての変調方式の数は3以上であっても良い。一般化すれば、識別対象としての変調方式の数がMである場合の変調方式識別手段9の構成は図13に示す如くとなる。図13に示す変調方式識別手段9は、第1乃至第Mの推定誤差計算手段9−1〜9−Mを有する。
【0074】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段9−1〜9−Mは、それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられたものであり、各々変調方式が対応するものであると仮定した場合の振幅モーメント誤差を求める。即ち、第m(m=1〜Mのいずれか)の推定誤差計算手段9−mは、第mの変調方式に対応して設けられたものであり、変調方式が第mの変調方式であると仮定した場合の、振幅モーメント誤差を求める。
【0075】
第1乃至第Mの推定誤差計算手段9−1〜9−Mの各々は、図10に示す第1及び第2の推定誤差計算手段9−1、9−2と同様である。即ち、第m(m=1〜Mのいずれか)の推定誤差計算手段9−mは、第mの干渉成分推定手段36−mと、第mの干渉成分除去手段24−mと、第mの誤差計算手段26−mとを有する。
第mの干渉成分推定手段36−mは、第1又は第2の干渉成分推定手段36−1、36−2と同様であり、第mの干渉成分除去手段24−mは、第1又は第2の干渉成分除去手段24−1、24−2と同様であり、第mの誤差計算手段26−mは、第1又は第2の誤差計算手段26−1、26−2と同様である。
上記以外の点では、実施の形態1について説明したのと同様である。
【0076】
なお、実施の形態2に関し、N=3以上であるとして説明したが、N=2であっても良く、N=1であっても良い。N=1の場合には、総和計算手段は図9において、第1の遅延手段12−1、第1の乗算手段14−1、第1の乗算値平均手段16−1のみが用いられ(第2〜第Nの遅延手段12−2〜12−N,第2の乗算手段14−2〜14−N、及び第2の乗算値平均手段16−2〜16−Nが不要となり)、第1の乗算値平均手段16−1の出力がそのまま総和計算手段34の出力となる。
【0077】
以上本発明を受信装置として説明したが、受信装置を用いて実施される受信方法も本発明の一部を成す。
【符号の説明】
【0078】
1 同期検波手段、 2 周波数領域変換手段、 3 伝送路推定手段、 4 等化手段、 5 振幅累乗計算手段、 6 累乗値平均手段、 7 変調方式識別手段、 7−1〜7−M 推定誤差計算手段、 8 復調手段、 9 変調方式識別手段、 9−1〜9−M 推定誤差計算手段、 12−1 第1の遅延手段、 12−2 第2の遅延手段、 12−N 第Nの遅延手段、 14−1 第1の乗算手段、 14−2 第2の乗算手段、 14−N 第Nの乗算手段、 16−1 第1の乗算値平均手段、 16−2 第2の乗算値平均手段、 16−N 第Nの乗算値平均手段、 22−1 第1の干渉成分推定手段、 22−2 第2の干渉成分推定手段、 22−M 第Nの干渉成分推定手段、 24−1 第1の干渉成分除去手段、 24−2 第2の干渉成分除去手段、 24−M 第Mの干渉成分除去手段、 26−1 第1の誤差計算手段、 26−2 第2の誤差計算手段、 26−M 第Mの誤差計算手段、 28 最小値検出手段、 32−1 第1の絶対値計算手段、 32−2 第2の絶対値計算手段、 32−N 第Nの絶対値計算手段、 34 総和計算手段、 36−1 第1の干渉成分計算手段、 36−2 第2の干渉成分計算手段、 36−M 第Mの干渉成分計算手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する複数のキャリアを予め定められた複数の変調方式のうち何れかの変調方式で変調して周波数多重した信号を受信する受信装置において、
基準搬送波を用いて受信信号を同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波手段から出力される信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域変換手段から出力される信号をもとに伝送路特性を推定する伝送路推定手段と、
前記伝送路推定手段から出力される信号をもとに周波数領域変換手段から出力される信号の歪みを補正する等化手段と、
前記等化手段から出力される信号の振幅の累乗を計算する振幅累乗計算手段と、
前記振幅累乗計算手段から出力される信号を平均する累乗値平均手段と、
前記等化手段から出力される信号においてそれぞれ互いにキャリア間隔の1乃至N倍(Nは1以上の整数)離れたキャリア間の積を計算する第1〜第Nの乗算手段(14−1〜14−N)と、
前記第1乃至第Nの乗算手段のそれぞれに対応して設けられ、対応する乗算手段から出力される各信号の平均を計算する第1乃至第Nの乗算値平均手段と、
前記第1乃至第Nの乗算値平均手段から出力される信号をもとに変調方式を識別する変調方式識別手段と、
前記等化手段から出力される信号を、前記変調方式識別手段で判定された変調方式で復調する復調手段を備える
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
N=2であり、
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別手段が、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記第1の乗算値平均手段と前記第2の乗算値平均手段から出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を推定する第1乃至第Mの干渉成分推定手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分推定手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分推定手段から出力される信号をもとに前記累乗値平均手段から出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去手段から出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算手段と、
前記第1乃至第Mの誤差計算手段から出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算手段に対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別手段が、
それぞれ第1乃至第Nの乗算値平均手段に対応して設けられ、それぞれ対応する乗算値平均手段から出力される信号の絶対値を計算する第1乃至第Nの絶対値計算手段と、
前記第1乃至第Nの絶対値計算手段から出力される信号の総和を計算する総和計算手段と、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記総和計算手段から出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を計算する第1乃至第Mの干渉成分計算手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分計算手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分計算手段から出力される信号をもとに前記累乗値平均手段から出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去手段から出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算手段と、
前記第1乃至第Mの誤差計算手段から出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算手段に対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記振幅累乗計算手段が前記等化手段から出力される振幅のa乗を計算するものであり、aが2以上の整数であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
直交する複数のキャリアを予め定められた複数の変調方式のうち何れかの変調方式で変調して周波数多重した信号を受信する受信方法において、
基準搬送波を用いて受信信号を同期検波する同期検波ステップと、
前記同期検波ステップから出力される信号を周波数領域に変換する周波数領域変換ステップと、
前記周波数領域変換ステップから出力される信号をもとに伝送路特性を推定する伝送路推定ステップと、
前記伝送路推定ステップから出力される信号をもとに周波数領域変換ステップから出力される信号の歪みを補正する等化ステップと、
前記等化ステップから出力される信号の振幅の累乗を計算する振幅累乗計算ステップと、
前記振幅累乗計算ステップから出力される信号を平均する累乗値平均ステップと、
前記等化ステップから出力される信号においてそれぞれ互いにキャリア間隔の1乃至N倍離れたキャリア間の積を計算する第1〜第N(Nは1以上の整数)の乗算ステップと、
前記第1乃至第Nの乗算ステップのそれぞれに対応して設けられ、対応する乗算ステップから出力される各信号の平均を計算する第1乃至第Nの乗算値平均ステップと、
前記第1乃至第Nの乗算値平均ステップから出力される信号をもとに変調方式を識別する変調方式識別ステップと、
前記等化ステップから出力される信号を、前記変調方式識別ステップで判定された変調方式で復調する復調ステップを備える
ことを特徴とする受信方法。
【請求項6】
N=2であり、
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別ステップが、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記第1の乗算値平均ステップと前記第2の乗算値平均ステップから出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を推定する第1乃至第Mの干渉成分推定ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分推定ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分推定ステップから出力される信号をもとに前記累乗値平均ステップから出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去ステップから出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算ステップと、
前記第1乃至第Mの誤差計算ステップから出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算ステップに対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出ステップと
を備えることを特徴とする請求項5に記載の受信方法。
【請求項7】
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別ステップが、
それぞれ第1乃至第Nの乗算値平均ステップに対応して設けられ、それぞれ対応する乗算値平均ステップから出力される信号の絶対値を計算する第1乃至第Nの絶対値計算ステップと、
前記第1乃至第Nの絶対値計算ステップから出力される信号の総和を計算する総和計算ステップと、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記総和計算ステップから出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を計算する第1乃至第Mの干渉成分計算ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分計算ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分計算ステップから出力される信号をもとに前記累乗値平均ステップから出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去ステップから出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算ステップと、
前記第1乃至第Mの誤差計算ステップから出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算ステップに対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出ステップと
を備えることを特徴とする請求項5に記載の受信方法。
【請求項8】
前記振幅累乗計算ステップが前記等化ステップから出力される振幅のa乗を計算するものであり、aが2以上の整数であることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の受信方法。
【請求項1】
直交する複数のキャリアを予め定められた複数の変調方式のうち何れかの変調方式で変調して周波数多重した信号を受信する受信装置において、
基準搬送波を用いて受信信号を同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波手段から出力される信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域変換手段から出力される信号をもとに伝送路特性を推定する伝送路推定手段と、
前記伝送路推定手段から出力される信号をもとに周波数領域変換手段から出力される信号の歪みを補正する等化手段と、
前記等化手段から出力される信号の振幅の累乗を計算する振幅累乗計算手段と、
前記振幅累乗計算手段から出力される信号を平均する累乗値平均手段と、
前記等化手段から出力される信号においてそれぞれ互いにキャリア間隔の1乃至N倍(Nは1以上の整数)離れたキャリア間の積を計算する第1〜第Nの乗算手段(14−1〜14−N)と、
前記第1乃至第Nの乗算手段のそれぞれに対応して設けられ、対応する乗算手段から出力される各信号の平均を計算する第1乃至第Nの乗算値平均手段と、
前記第1乃至第Nの乗算値平均手段から出力される信号をもとに変調方式を識別する変調方式識別手段と、
前記等化手段から出力される信号を、前記変調方式識別手段で判定された変調方式で復調する復調手段を備える
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
N=2であり、
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別手段が、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記第1の乗算値平均手段と前記第2の乗算値平均手段から出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を推定する第1乃至第Mの干渉成分推定手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分推定手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分推定手段から出力される信号をもとに前記累乗値平均手段から出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去手段から出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算手段と、
前記第1乃至第Mの誤差計算手段から出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算手段に対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別手段が、
それぞれ第1乃至第Nの乗算値平均手段に対応して設けられ、それぞれ対応する乗算値平均手段から出力される信号の絶対値を計算する第1乃至第Nの絶対値計算手段と、
前記第1乃至第Nの絶対値計算手段から出力される信号の総和を計算する総和計算手段と、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記総和計算手段から出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を計算する第1乃至第Mの干渉成分計算手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分計算手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分計算手段から出力される信号をもとに前記累乗値平均手段から出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去手段と、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去手段に対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去手段から出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算手段と、
前記第1乃至第Mの誤差計算手段から出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算手段に対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記振幅累乗計算手段が前記等化手段から出力される振幅のa乗を計算するものであり、aが2以上の整数であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
直交する複数のキャリアを予め定められた複数の変調方式のうち何れかの変調方式で変調して周波数多重した信号を受信する受信方法において、
基準搬送波を用いて受信信号を同期検波する同期検波ステップと、
前記同期検波ステップから出力される信号を周波数領域に変換する周波数領域変換ステップと、
前記周波数領域変換ステップから出力される信号をもとに伝送路特性を推定する伝送路推定ステップと、
前記伝送路推定ステップから出力される信号をもとに周波数領域変換ステップから出力される信号の歪みを補正する等化ステップと、
前記等化ステップから出力される信号の振幅の累乗を計算する振幅累乗計算ステップと、
前記振幅累乗計算ステップから出力される信号を平均する累乗値平均ステップと、
前記等化ステップから出力される信号においてそれぞれ互いにキャリア間隔の1乃至N倍離れたキャリア間の積を計算する第1〜第N(Nは1以上の整数)の乗算ステップと、
前記第1乃至第Nの乗算ステップのそれぞれに対応して設けられ、対応する乗算ステップから出力される各信号の平均を計算する第1乃至第Nの乗算値平均ステップと、
前記第1乃至第Nの乗算値平均ステップから出力される信号をもとに変調方式を識別する変調方式識別ステップと、
前記等化ステップから出力される信号を、前記変調方式識別ステップで判定された変調方式で復調する復調ステップを備える
ことを特徴とする受信方法。
【請求項6】
N=2であり、
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別ステップが、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記第1の乗算値平均ステップと前記第2の乗算値平均ステップから出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を推定する第1乃至第Mの干渉成分推定ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分推定ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分推定ステップから出力される信号をもとに前記累乗値平均ステップから出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去ステップから出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算ステップと、
前記第1乃至第Mの誤差計算ステップから出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算ステップに対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出ステップと
を備えることを特徴とする請求項5に記載の受信方法。
【請求項7】
前記複数の変調方式が第1乃至第Mの変調方式であり、
前記変調方式識別ステップが、
それぞれ第1乃至第Nの乗算値平均ステップに対応して設けられ、それぞれ対応する乗算値平均ステップから出力される信号の絶対値を計算する第1乃至第Nの絶対値計算ステップと、
前記第1乃至第Nの絶対値計算ステップから出力される信号の総和を計算する総和計算ステップと、
それぞれ第1乃至第Mの変調方式に対応して設けられ、
前記総和計算ステップから出力される信号をもとに、各キャリアを変調した方式が対応する変調方式であると仮定して干渉成分を計算する第1乃至第Mの干渉成分計算ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分計算ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分計算ステップから出力される信号をもとに前記累乗値平均ステップから出力される信号に含まれる干渉成分を除去する第1乃至第Mの干渉成分除去ステップと、
それぞれ前記第1乃至第Mの干渉成分除去ステップに対応して設けられ、各々対応する干渉成分除去ステップから出力される信号と予め計算された期待値との誤差を計算して、計算された誤差を表す推定誤差信号を出力する第1乃至第Mの誤差計算ステップと、
前記第1乃至第Mの誤差計算ステップから出力される推定誤差信号のうち、最も値の小さい推定誤差信号を出力した誤差計算ステップに対応する変調方式が、受信している信号の変調方式であると判定する最小値検出ステップと
を備えることを特徴とする請求項5に記載の受信方法。
【請求項8】
前記振幅累乗計算ステップが前記等化ステップから出力される振幅のa乗を計算するものであり、aが2以上の整数であることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の受信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−188278(P2011−188278A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51868(P2010−51868)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]